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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160535
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】滅菌システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
A61B6/03 321Z
A61B6/03 323Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070954
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石川 優介
(72)【発明者】
【氏名】五反田 克己
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093CA17
4C093EC47
4C093ED06
4C093EE30
(57)【要約】
【課題】診断機器の滅菌作業の負担を軽減するとともに、滅菌の精度を向上させること。
【解決手段】実施形態の滅菌システムは、滅菌部と、滅菌制御部とを持つ。滅菌部は、診断装置の架台および寝台の少なくとも一方に設置可能であり、診断装置の対象部位の滅菌処理を行う。滅菌制御部は、架台の傾斜を変更可能な架台駆動部および滅菌部を制御する。滅菌制御部は、架台駆動部を制御して架台を傾斜させて滅菌部と対象部位との距離を近づけた状態で、滅菌部に滅菌処理を行わせる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断装置の架台および寝台の少なくとも一方に設置可能であり、前記診断装置の対象部位の滅菌処理を行う滅菌部と、
前記架台の傾斜を変更可能な架台駆動部および前記滅菌部を制御する滅菌制御部と、
を備え、
前記滅菌制御部は、前記架台駆動部を制御して前記架台を傾斜させて前記滅菌部と前記対象部位との距離を近づけた状態で、前記滅菌部に前記滅菌処理を行わせる、
を備える滅菌システム。
【請求項2】
前記滅菌制御部は、さらに、前記寝台の高さを変更可能な寝台駆動部を制御して前記寝台の高さを上げて前記滅菌部と前記対象部位との距離を近づけた状態で、前記滅菌部に前記滅菌処理を行わせる、
請求項1に記載の滅菌システム。
【請求項3】
前記滅菌制御部は、前記寝台を前記架台に接近する方向および前記架台から離れる方向に移動可能な前記寝台駆動部を制御して前記寝台を移動させながら、前記滅菌部に前記滅菌処理を行わせる、
請求項2に記載の滅菌システム。
【請求項4】
前記滅菌部は、紫外線の照射により前記滅菌処理を行う、
請求項1に記載の滅菌システム。
【請求項5】
前記診断装置の周囲の所定の範囲内における人の存在を検知する検知部をさらに備え、
前記滅菌制御部は、前記検知部により人の存在が検知された場合、前記滅菌部による紫外線の照射を停止させる、または、前記滅菌部による紫外線の照射方向を調整する、
請求項4に記載の滅菌システム。
【請求項6】
前記滅菌制御部は、前記診断装置の前記対象部位と前記滅菌部との間の距離に応じて、前記架台駆動部を制御して前記架台の傾斜角度を調整する、
請求項1に記載の滅菌システム。
【請求項7】
前記滅菌部は、前記架台に設けられており、前記寝台の滅菌処理を行う、
請求項1から6のいずれか一項に記載の滅菌システム。
【請求項8】
前記滅菌部は、前記寝台に設けられており、前記架台の滅菌処理を行う、
請求項1から6のいずれか一項に記載の滅菌システム。
【請求項9】
前記滅菌部は、前記寝台および前記架台の両方に設けられており、前記架台に設けられた前記滅菌部は前記寝台の滅菌処理を行い、前記寝台に設けられた前記滅菌部は前記架台の滅菌処理を行う、
請求項1から6のいずれか一項に記載の滅菌システム。
【請求項10】
前記滅菌部は、前記滅菌処理における滅菌方向を変更可能な傾斜機構を備える、
請求項1から6のいずれか一項に記載の滅菌システム。
【請求項11】
診断装置の架台および寝台の少なくとも一方に設置可能であり、前記診断装置の対象部位の滅菌処理を行い、滅菌方向を変更可能な傾斜機構を備える滅菌部と、
前記滅菌部を制御する滅菌制御部と、
を備え、
前記滅菌制御部は、前記傾斜機構を制御して前記滅菌部の滅菌方向を前記対象部位に向けた状態で、前記滅菌部に滅菌処理を行わせる、
を備える滅菌システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、滅菌システムに関する。
【背景技術】
【0002】
病院内での感染防止の観点から、X線CT(Computed Tomography)装置、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置等の診断機器を清掃して、消毒および滅菌を行う頻度が増大している。清掃方法としては、アルコール除菌、オゾン照射、UV(Ultraviolet)照射等の様々な方法が用いられている。各病院では、対象となる診断機器の種類や使用状況等に応じて清掃方法や清掃頻度を定め、診断機器の操作者が清掃機器を用いて或いは操作者が手動で清掃作業を行う運用がなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-14262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アルコール除菌については、操作者がアルコール消毒液を診断機器に塗布し、雑巾等を用いて手で直接拭く方式が採用される場合が多いが、この方式は手間がかかる上、拭きムラが発生しやすかった。また、オゾン照射については、長期的に見ると診断機器やその他の室内器具の劣化に繋がる恐れがあり、使用方法に制限がかかっていた。UV照射については、照射距離が近いほど滅菌効果は高まるが、人体への影響を考慮すると照射距離を長めに取るか、誰もいない空間で照射をする必要があった。また、近距離でUV照射を行うと照射範囲が狭くなるため、X線CT装置のような大型医療機器を消毒する際には複数個のUV照射器を用いる必要があった。
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題は、診断機器の滅菌作業の負担を軽減するとともに、滅菌の精度を向上させることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の滅菌システムは、滅菌部と、滅菌制御部とを持つ。滅菌部は、診断装置の架台および寝台の少なくとも一方に設置可能であり、診断装置の対象部位の滅菌処理を行う。滅菌制御部は、架台の傾斜を変更可能な架台駆動部および滅菌部を制御する。滅菌制御部は、架台駆動部を制御して架台を傾斜させて滅菌部と対象部位との距離を近づけた状態で、滅菌部に滅菌処理を行わせる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】第1の実施形態に係るX線CT装置1の一例を示す図。
図2】第1の実施形態に係る第1UV照射器19-1および第2UV照射器19-2の配置位置の一例を示す図。
図3】第1の実施形態に係る第1UV照射器19-1および第2UV照射器19-2の照射範囲の一例を示す図。
図4】第1の実施形態に係るX線CT装置1による第1の滅菌処理の一例を示すフローチャート。
図5A】第1の実施形態に係る第1の滅菌処理の開始時における回転フレーム17および天板33の位置関係を説明する図。
図5B】第1の実施形態に係る第1の滅菌処理のステップS101における回転フレーム17および天板33の位置関係を説明する図。
図5C】第1の実施形態に係る第1の滅菌処理のステップS103における回転フレーム17および天板33の位置関係を説明する図。
図5D】第1の実施形態に係る第1の滅菌処理のステップS105における回転フレーム17および天板33の位置関係を説明する図。
図5E】第1の実施形態に係る第1の滅菌処理のステップS105における回転フレーム17および天板33の位置関係を説明する図。
図6】第2の実施形態に係る第3UV照射器19-3および第4UV照射器19-4の配置位置および照射範囲の一例を示す図。
図7A】第2の実施形態に係る第2の滅菌処理の開始時における回転フレーム17および天板33の位置関係を説明する図。
図7B】第2の実施形態に係る第2の滅菌処理のステップS101における回転フレーム17および天板33の位置関係を説明する図。
図7C】第2の実施形態に係る第2の滅菌処理のステップS103における回転フレーム17および天板33の位置関係を説明する図。
図7D】第2の実施形態に係る第2の滅菌処理のステップS105における回転フレーム17および天板33の位置関係を説明する図。
図7E】第2の実施形態に係る第2の滅菌処理のステップS105における回転フレーム17および天板33の位置関係を説明する図。
図8】第3の実施形態に係るUV照射器19の配置位置および照射範囲の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、実施形態の滅菌システムについて説明する。滅菌システムは、例えば、UV照射器(UVライト)を使用した診断装置の滅菌に使用される。滅菌システムは、滅菌作業を自動化することで滅菌作業の負担を軽減することができるとともに、滅菌作業を短時間で完了させて効率化し、滅菌の精度を向上させることができる。
【0009】
診断装置は、例えば、X線CT装置、PET(Positron Emission Tomography)-CT装置、MRI装置、核医学診断装置、X線透視撮影装置等の医用画像診断装置である。以下においては、診断装置がX線CT装置であり、滅菌システムがX線CT装置のコンソール装置に組み込まれる場合を例に挙げて説明する。X線CT装置の場合、例えば、架台のフロント部またはリア部、寝台の前面部等にUV照射器を設けることで、架台、寝台において特に接触回数が多い箇所を紫外線の照射範囲に設定することができる。例えば、コンソール装置からの信号(滅菌指示)に応じてUV照射を制御することで、X線CT装置が自動で滅菌作業を行うことができ、最短時間でX線CT装置の滅菌作業を完了させることができる。
【0010】
<第1の実施形態>
[X線CT装置の構成]
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置1の一例を示す図である。X線CT装置1は、例えば、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。図1では、説明の都合上、架台装置10をZ軸方向から見た図とX軸方向から見た図の双方を掲載しているが、実際には、架台装置10は一つである。第1の実施形態では、非チルト状態での回転フレーム17の回転軸または寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対して水平である軸をX軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対して垂直である方向をY軸方向とそれぞれ定義する。
【0011】
架台装置10は、例えば、X線管11と、ウェッジ12と、コリメータ13と、X線高電圧装置14と、X線検出器15と、データ収集システム(以下、DAS:Data Acquisition System)16と、回転フレーム17と、制御装置18と、UV照射器19(第1UV照射器19-1、第2UV照射器19-2)、カメラ20と、架台駆動装置21とを有する。
【0012】
X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極(フィラメント)から陽極(ターゲット)に向けて熱電子を照射することでX線を発生させる。X線管11は、真空管を含む。例えば、X線管11は、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管である。
【0013】
ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量を調節するためのフィルタである。ウェッジ12は、X線管11から被検体Pに照射されるX線量の分布が予め定められた分布になるように、自身を透過するX線を減衰させる。ウェッジ12は、ウェッジフィルタ(wedge filter)、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。ウェッジ12は、例えば、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したものである。
【0014】
コリメータ13は、ウェッジ12を透過したX線の照射範囲を絞り込むための機構である。コリメータ13は、例えば、複数の鉛板の組み合わせによってスリットを形成することで、X線の照射範囲を絞り込む。コリメータ13は、X線絞りと呼ばれる場合もある。コリメータ13の絞り込み範囲は、機械的に駆動可能であってよい。
【0015】
X線高電圧装置14は、例えば、高電圧発生装置と、X線制御装置とを有する。高電圧発生装置は、変圧器(トランス)および整流器等を含む電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生させる。X線制御装置は、X線管11に発生させるべきX線量に応じて高電圧発生装置の出力電圧を制御する。高電圧発生装置は、上述した変圧器によって昇圧を行うものであってもよいし、インバータによって昇圧を行うものであってもよい。X線高電圧装置14は、回転フレーム17に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(不図示)の側に設けられてもよい。
【0016】
X線検出器15は、X線管11が発生させ、被検体Pを通過して入射したX線の強度を検出する。X線検出器15は、検出したX線の強度に応じた電気信号(光信号等でもよい)をDAS16に出力する。X線検出器15は、例えば、複数のX線検出素子列を有する。複数のX線検出素子列のそれぞれは、X線管11の焦点を中心とした円弧に沿ってチャネル方向に複数のX線検出素子が配列されたものである。複数のX線検出素子列は、スライス方向(列方向、row方向)に配列される。
【0017】
X線検出器15は、例えば、グリッドと、シンチレータアレイと、光センサアレイとを有する間接型の検出器である。シンチレータアレイは、複数のシンチレータを有する。それぞれのシンチレータは、シンチレータ結晶を有する。シンチレータ結晶は、入射するX線の強度に応じた光量の光を発する。グリッドは、シンチレータアレイのX線が入射する面に配置され、散乱X線を吸収する機能を有するX線遮蔽板を有する。なお、グリッドは、コリメータ(一次元コリメータまたは二次元コリメータ)と呼ばれる場合もある。光センサアレイは、例えば、光電子増倍管(フォトマルチプライヤー:PMT)等の光センサを有する。光センサアレイは、シンチレータにより発せられる光の光量に応じた電気信号を出力する。X線検出器15は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を有する直接変換型の検出器であってもかまわない。
【0018】
DAS16は、例えば、増幅器と、積分器と、A/D変換器とを有する。増幅器は、X線検出器15の各X線検出素子により出力される電気信号に対して増幅処理を行う。積分器は、増幅処理が行われた電気信号をビュー期間(後述)に亘って積分する。A/D変換器は、積分結果を示す電気信号をデジタル信号に変換する。DAS16は、デジタル信号に基づく検出データをコンソール装置40に出力する。検出データは、生成元のX線検出素子のチャンネル番号、列番号、及び収集されたビューを示すビュー番号により識別されたX線強度のデジタル値である。ビュー番号は、回転フレーム17の回転に応じて変化する番号であり、例えば、回転フレーム17の回転に応じてインクリメントされる番号である。従って、ビュー番号は、X線管11の回転角度を示す情報である。ビュー期間とは、あるビュー番号に対応する回転角度から、次のビュー番号に対応する回転角度に到達するまでの間に収まる期間である。DAS16は、ビューの切り替わりを、制御装置18から入力されるタイミング信号によって検知してもよいし、内部のタイマーによって検知してもよいし、図示しないセンサから取得される信号によって検知してもよい。フルスキャンを行う場合においてX線管11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、全周囲分(360度分)の検出データ群を収集する。ハーフスキャンを行う場合においてX線管11によりX線が連続曝射されている場合、DAS16は、半周囲分(180度分)の検出データを収集する。
【0019】
回転フレーム17は、X線管11、ウェッジ12、およびコリメータ13と、X線検出器15とを対向支持する円環状の部材である。回転フレーム17は、固定フレームによって、内部に導入された被検体Pを中心として回転自在に支持される。回転フレーム17は、更にDAS16を支持する。DAS16が出力する検出データは、回転フレーム17に設けられた発光ダイオード(LED)を有する送信機から、光通信によって、架台装置10の非回転部分(例えば固定フレーム)に設けられたフォトダイオードを有する受信機に送信され、受信機によってコンソール装置40に転送される。なお、回転フレーム17から非回転部分への検出データの送信方法として、前述の光通信を用いた方法に限らず、非接触型の任意の送信方法を採用してよい。回転フレーム17は、X線管11等を支持して回転させることができるものであれば、円環状の部材に限らず、アームのような部材であってもよい。
【0020】
X線CT装置1は、例えば、X線管11とX線検出器15の双方が回転フレーム17によって支持されて被検体Pの周囲を回転するRotate/Rotate-TypeのX線CT装置(第3世代CT)であるが、これに限らず、円環状に配列された複数のX線検出素子が固定フレームに固定され、X線管11が被検体Pの周囲を回転するStationary/Rotate-TypeのX線CT装置(第4世代CT)であってもよい。
【0021】
制御装置18は、例えば、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサを有する処理回路を有する。制御装置18は、コンソール装置40または架台装置10に取り付けられた入力インターフェースからの入力信号を受け付けて、架台装置10および寝台装置30の動作を制御する。例えば、制御装置18は、架台駆動装置21を制御して、回転フレーム17を回転させたり、架台装置10をチルトさせたりする。架台装置10をチルトさせる場合、制御装置18は、入力インターフェースに入力された傾斜角度(チルト角度)に基づいて、架台駆動装置21を制御して、Z軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム17を回転させる。制御装置18は、図示しないセンサの出力等によって回転フレーム17の回転角度を把握している。また、制御装置18は、回転フレーム17の回転角度を随時、スキャン制御機能55に提供する。制御装置18は、架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられてもよい。
【0022】
UV照射器19は、滅菌効果を有する紫外線(UV)を所定方向に照射する。UV照射器19は、架台装置10(回転フレーム17)のフロント部またはリア部に設けられる。UV照射器19は、例えば、架台装置10の内部または外部に設けられる。図1に示す例では、回転フレーム17のフロント部(内周部)の2か所に、第1UV照射器19-1と、第2UV照射器19-2とが設けられている。第1UV照射器19-1と、第2UV照射器19-2とは、回転フレーム17の回転軸(Z軸)周りに、例えば、所定の角度だけ離れた位置に配置される。第1UV照射器19-1と、第2UV照射器19-2とは、例えば、60~120度だけ離れた位置に配置される。
【0023】
図2は、第1UV照射器19-1および第2UV照射器19-2の配置位置の一例を示す図である。図2に示す例では、第1UV照射器19-1と、第2UV照射器19-2とが、回転フレーム17の内周部の2か所に、回転フレーム17の回転軸(Z軸)周りに、90度だけ離れた位置に配置される。尚、UV照射器19の数および架台装置10上の配置位置は任意である。
【0024】
図3は、第1UV照射器19-1および第2UV照射器19-2の照射範囲の一例を示す図である。図3に示すように、架台装置10が寝台装置30の天板33に向けてチルトされた状態で、滅菌処理(UV照射)が実行される。この場合、第1UV照射器19-1および第2UV照射器19-2の各々は、天板33に向けて紫外線を照射する。これにより、天板33の上面の照射領域RAが滅菌処理される。
【0025】
UV照射器19は、「滅菌部」の一例である。すなわち、UV照射器19(滅菌部)は、X線CT装置1(診断装置)の架台装置10(架台)および寝台装置30(寝台)の少なくとも一方に設置可能であり、診断装置の対象部位の滅菌処理を行う。滅菌部は、紫外線の照射により滅菌処理を行う。滅菌部は、架台に設けられており、寝台の滅菌処理を行う。
【0026】
カメラ20は、X線CT装置1が設置された空間(検査室等)を撮像することで、空間内の人の存在に関する情報を取得する。カメラ20により取得された画像は、後述する検知機能58に提供される。
【0027】
架台駆動装置21は、例えば、モータやアクチュエータを含む。架台駆動装置21は、例えば、回転フレーム17を回転させたり、架台装置10をチルトさせたりする。架台駆動装置21は、入力インターフェースに入力された傾斜角度(チルト角度)や、後述する滅菌制御機能57からの傾斜指示に基づいて、架台装置10の回転フレーム17を、Y軸方向を基準として所定角度傾けることができる。
【0028】
寝台装置30は、スキャン対象の被検体Pを載置して移動させ、架台装置10の回転フレーム17の内部に導入する装置である。寝台装置30は、例えば、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを備える。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向(Y軸方向)に移動可能に支持する筐体を含む。寝台駆動装置32は、モータやアクチュエータを含む。寝台駆動装置32は、天板33を、支持フレーム34に沿って天板33の長手方向(Z軸方向)に移動させる。また、寝台駆動装置32は、天板33を鉛直方向(Y軸方向)に移動させる。天板33は、被検体Pが載置される板状の部材である。
【0029】
寝台駆動装置32は、天板33だけでなく、支持フレーム34を天板33の長手方向に移動させてもよい。また、上記とは逆に、架台装置10がZ軸方向に移動可能であり、架台装置10の移動によって回転フレーム17が被検体Pの周囲に来るように制御されてもよい。また、架台装置10と天板33の双方が移動可能な構成であってもよい。また、X線CT装置1は、被検体Pが立位または座位でスキャンされる方式の装置であってもよい。この場合、X線CT装置1は、寝台装置30に代えて被検体支持機構を有し、架台装置10は、回転フレーム17を、床面に垂直な軸方向を中心に回転させる。
【0030】
コンソール装置40は、例えば、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、ネットワーク接続回路44と、処理回路50とを有する。第1の実施形態では、コンソール装置40は架台装置10とは別体として説明するが、架台装置10にコンソール装置40の各構成要素の一部または全部が含まれてもよい。
【0031】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、検出データや投影データ、再構成画像データ、CT画像データ、被検体Pに関する情報、撮影条件等を記憶する。これらのデータは、メモリ41ではなく(或いはメモリ41に加えて)、X線CT装置1が通信可能な外部メモリに記憶されてもよい。外部メモリは、例えば、外部メモリを管理するクラウドサーバが読み書きの要求を受け付けることで、クラウドサーバによって制御されるものである。
【0032】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路によって生成された医用画像(CT画像)や、医師、技師等である操作者による各種操作を受け付けるGUI(Graphical User Interface)画像等を表示する。ディスプレイ42は、例えば、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)、有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等である。ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)であってもよい。
【0033】
入力インターフェース43は、操作者による各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作の内容を示す電気信号を処理回路50に出力する。例えば、入力インターフェース43は、検出データまたは投影データ(後述)を収集する際の収集条件、CT画像を再構成する際の再構成条件、CT画像から後処理画像を生成する際の画像処理条件、滅菌処理の開始指示等の入力操作を受け付ける。例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、タッチパネル、ドラッグボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック、カメラ、赤外線センサ、マイク等により実現される。入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、入力インターフェース43は、コンソール装置40の本体部と無線通信可能な表示装置(例えばタブレット端末)により実現されてもよい。尚、本明細書において入力インターフェースはマウス、キーボード等の物理的な操作部品を備えるものだけに限られない。例えば、装置とは別体に設けられた外部の入力機器から入力操作に対応する電気信号を受け取り、この電気信号を制御回路へ出力する電気信号の処理回路も入力インターフェースの例に含まれる。
【0034】
ネットワーク接続回路44は、例えば、プリント回路基板を有するネットワークカード、或いは無線通信モジュール等を含む。ネットワーク接続回路44は、接続する対象のネットワークの形態に応じた情報通信用プロトコルを実装する。
【0035】
処理回路50は、X線CT装置1の全体の動作や、架台装置10の動作、および寝台装置30の動作を制御する。処理回路50は、例えば、システム制御機能51、前処理機能52、再構成処理機能53、画像処理機能54、スキャン制御機能55、表示制御機能56、滅菌制御機能57、検知機能58等を実行する。これらの構成要素は、例えば、ハードウェアプロセッサがメモリ41に格納されたプログラム(ソフトウェア)を実行することにより実現される。ハードウェアプロセッサとは、例えば、CPU、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit; ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device; SPLD)または複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device; CPLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array; FPGA))等の回路(circuitry)を意味する。メモリ41にプログラムを記憶させる代わりに、ハードウェアプロセッサの回路内にプログラムを直接組み込むように構成しても構わない。この場合、ハードウェアプロセッサは回路内に組み込まれたプログラムを読み出し実行することで機能を実現する。ハードウェアプロセッサは、単一の回路として構成されるものに限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのハードウェアプロセッサとして構成され、各機能を実現するようにしてもよい。また、複数の構成要素を1つのハードウェアプロセッサに統合して各機能を実現するようにしてもよい。
【0036】
コンソール装置40または処理回路50が有する各構成要素は、分散化されて複数のハードウェアにより実現されてもよい。処理回路50は、コンソール装置40が有する構成ではなく、コンソール装置40と通信可能な処理装置によって実現されてもよい。処理装置は、例えば、一つのX線CT装置と接続されたワークステーション、或いは、複数のX線CT装置に接続され、以下に説明する処理回路50と同等の処理を一括して実行する装置(例えばクラウドサーバ)である。
【0037】
システム制御機能51は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、処理回路50の各種機能を制御する。
【0038】
前処理機能52は、DAS16により出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を行い、投影データを生成する。
【0039】
再構成処理機能53は、前処理機能52によって生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等による再構成処理を行って、CT画像データを生成し、生成したCT画像データをメモリ41に記憶させる。
【0040】
画像処理機能54は、入力インターフェース43が受け付けた入力操作に基づいて、CT画像データを公知の方法により、三次元画像データや任意断面の断面像データに変換する。三次元画像データへの変換は、前処理機能52によって行われてもよい。
【0041】
スキャン制御機能55は、X線高電圧装置14、DAS16、制御装置18、架台駆動装置21、および寝台駆動装置32に指示することで、架台装置10における検出データの収集処理を制御する。スキャン制御機能55は、位置決め画像を収集する撮影、および診断に用いる画像を撮影する際の各部の動作をそれぞれ制御する。
【0042】
表示制御機能56は、各種画像(撮影画像、位置決め画像、入力インターフェース43の受け付けた入力操作結果等)をディスプレイ42に表示させる。
【0043】
滅菌制御機能57は、X線CT装置1の各構成部品(対象部位)を滅菌するための滅菌処理を行う際の各種装置の動作を制御する。滅菌制御機能57は、架台駆動装置21、寝台駆動装置32、UV照射器19、および制御装置18を制御する。滅菌制御機能57の処理の詳細については後述する。
【0044】
滅菌制御機能57は、「滅菌制御部」の一例である。滅菌制御機能57(滅菌制御部)は、架台装置10(架台)の傾斜を変更可能な架台駆動装置21(架台駆動部)およびUV照射器19(滅菌部)を制御する。滅菌制御部は、架台駆動部を制御して架台を傾斜させて滅菌部と対象部位との距離を近づけた状態で、滅菌部に滅菌処理を行わせる。また、滅菌制御部は、さらに、寝台の高さを変更可能な寝台駆動装置32(寝台駆動部)を制御して寝台の高さを上げて滅菌部と対象部位との距離を近づけた状態で、滅菌部に滅菌処理を行わせる。また、滅菌制御部は、寝台を架台に接近する方向および架台から離れる方向に移動可能な寝台駆動部を制御して寝台を移動させながら、滅菌部に滅菌処理を行わせる。
【0045】
検知機能58は、カメラ20により撮像されたX線CT装置1が設置された空間(検査室等)の画像に基づいて、当該空間(X線CT装置1の付近)に存在する人を検知する。検知機能58により人が検知された場合、滅菌制御機能57は、UV照射を停止するための制御を行う。検知機能58の処理の詳細については後述する。
【0046】
検知機能58は、「検知部」の一例である。すなわち、検知機能58(検知部)は、診断装置の周囲の所定の範囲内における人の存在を検知する。滅菌制御部は、検知部により人の存在が検知された場合、滅菌部による紫外線の照射を停止させる、または、滅菌部による紫外線の照射方向を調整する。
【0047】
上記構成により、X線CT装置1は、ヘリカルスキャン、コンベンショナルスキャン、ステップアンドシュート等のスキャン態様で被検体Pのスキャンを行う。ヘリカルスキャンとは、天板33を移動させながら回転フレーム17を回転させて被検体Pをらせん状にスキャンする態様である。コンベンショナルスキャンとは、天板33を静止させた状態で回転フレーム17を回転させて被検体Pを円軌道でスキャンする態様である。ステップアンドシュートとは、天板33の位置を一定間隔で移動させて、コンベンショナルスキャンを複数のスキャンエリアで行う態様である。
【0048】
上記の滅菌制御機能57(滅菌制御部)、検知機能58(検知部)、およびUV照射器19(滅菌部)との組み合わせは、「滅菌システム」の一例である。
【0049】
[処理フロー]
次に、第1の実施形態に係るX線CT装置1の第1の滅菌処理の処理フローの一例を説明する。X線CT装置1は、被検体Pのスキャンの停止期間(例えば、被検体の入れ替わりに伴う空き時間等)に滅菌処理を行う。図4は、X線CT装置1による第1の滅菌処理の一例を示すフローチャートである。図4に示す滅菌処理は、例えば、コンソール装置40の操作者が、入力インターフェース43を介して、滅菌処理の開始の指示を行った場合に開始される。
【0050】
まず、コンソール装置40の処理回路50の滅菌制御機能57は、寝台駆動装置32を制御して、天板33を鉛直方向(Y軸方向)に移動させ、天板33の高さ(寝台高さ)を、上限高さに変更する(ステップS101)。図5Aは、第1の滅菌処理の開始時における回転フレーム17および天板33(基準高さBP)の位置関係を説明する図である。図5Bは、第1の滅菌処理のステップS101における回転フレーム17および天板33(上限高さUL)の位置関係を説明する図である。図5Aに示すように、第1の滅菌処理の開始時において、天板33の高さは、基準高さBPである。図5Bに示すように、上記のステップS101において、天板33が鉛直方向(Y軸方向)に移動され、天板33の高さが、上限高さULに変更される。
【0051】
次に、滅菌制御機能57は、架台駆動装置21を制御して、架台装置10を天板33に向けてチルトさせ、架台装置10のチルト角度を、滅菌用角度に変更する(ステップS103)。図5Cは、第1の滅菌処理のステップS103における回転フレーム17(チルト角度θ1)および天板33(上限高さUL)の位置関係を説明する図である。図5Cに示すように、上記のステップS103において、架台装置10が天板33に向けてチルトされ、架台装置10のチルト角度が滅菌用角度(チルト角度θ1)に変更される。滅菌用角度は、例えば、UV照射器19と天板33との間の距離が最短となるような角度に設定される。滅菌用角度は、例えば、架台装置10におけるUV照射器19が設けられている側に最大の傾きとなる角度に設定される。滅菌用角度は、例えば、架台装置10のフロント側(リア側)に設けられている場合には、フロント側(リア側)に最大の傾きとなる角度に設定される。このような滅菌用角度を設定することで、滅菌範囲は狭いが、天板33を往復動作させるため、一定時間後には天板33の全体が滅菌されることになる。チルトさせることで距離が近くなり滅菌時間も短くなる。
【0052】
また、滅菌制御機能57は、架台駆動装置21を制御して、架台装置10の回転フレーム17を回転させて、第1UV照射器19-1および第2UV照射器19-2が、天板33の上部であってY軸およびZ軸により形成される面に対して左右対称な位置(天板33から等距離となる位置)に移動される。
【0053】
次に、滅菌制御機能57は、寝台駆動装置32を制御して、天板33を支持フレーム34に沿って天板33の長手方向(Z軸方向)に往復移動させながら、UV照射器19を制御して、紫外線を天板33に照射する(ステップS105)。図5Dは、第1の滅菌処理のステップS105における回転フレーム17(チルト角度θ1)および天板33(上限高さUL,第1スライド位置IL)の位置関係を説明する図ある。図5Eは、第1の滅菌処理のステップS105における回転フレーム17(チルト角度θ1)および天板33(上限高さUL,第2スライド位置OL)の位置関係を説明する図である。図5Dおよび図5Eに示すように、天板33は、架台装置10への進入方向での限界位置(第1スライド位置IL)と、架台装置10への進入方向とは反対方向での限界位置(第2スライド位置OL)との間を往復移動される。これにより、天板33の上面を漏れなく且つむらなく滅菌することが可能となる。尚、滅菌制御機能57は、寝台駆動装置32を制御して天板33の長手方向に往復移動させながら、対象部位とUV照射器19との距離に応じて架台駆動装置21を制御して架台装置10のチルト角度を調整し、所望の対象部位に紫外線が照射されるように照射方向を調整してもよい。すなわち、滅菌制御部は、診断装置の対象部位と滅菌部との間の距離に応じて、架台駆動部を制御して架台の傾斜角度を調整するようにしてよい。
【0054】
上記のように天板33が往復移動される間、検知機能58は、カメラ20により撮像されたX線CT装置1が設置された空間(検査室等)の画像に基づいて、当該空間(X線CT装置1の付近)に人が存在するか否かを判定する(ステップS107)。検知機能58により人が検知された場合(ステップS107;YES)、滅菌制御機能57は、UV照射器19を制御して、紫外線の照射を停止する(ステップS111)。このように、人の存在が検知された場合に紫外線の照射を停止することで、紫外線の人体への影響を回避することができる。
【0055】
一方、検知機能58により人が検知されない場合(ステップS107;NO)、滅菌制御機能57は、紫外線の天板33への照射を継続し、終了条件を満たすか否かを判定する(ステップS109)。終了条件とは、例えば、天板33の往復移動の回数が、予め定められた回数に到達したこと、紫外線の天板33への照射時間が、予め定められた時間に到達したこと等である。滅菌制御機能57は、終了条件を満たしていないと判定した場合(ステップS109;NO)、上記のステップS105に戻り、紫外線の天板33への照射を継続して、以降の処理を繰り返す。
【0056】
一方、滅菌制御機能57は、終了条件を満たしていると判定した場合(ステップS109;YES)、UV照射器19を制御して、紫外線の天板33への照射を停止する(ステップS111)。さらに、滅菌制御機能57は、架台駆動装置21を制御して、架台装置10を天板33から離れる方向にチルトさせて、架台装置10を非チルト角度(基準角度)に変更する(ステップS113)。また、滅菌制御機能57は、寝台駆動装置32を制御して、天板33を鉛直方向(-Y軸方向)に移動させ、天板33の高さを、基準高さに変更する(ステップS115)。尚、これらの制御と並行して、必要に応じて、滅菌制御機能57は、寝台駆動装置32を制御して、天板33を支持フレーム34に沿って天板33の長手方向(Z軸方向)に移動させて、天板33を架台装置10から引き出された位置に移動させる。以上により、本フローチャートの処理が終了する。
【0057】
以上説明した第1の実施形態によれば、診断機器の滅菌作業の負担を軽減するとともに、滅菌の精度を向上させることができる。特に、UV照射器19を架台装置10に設けて、架台装置10をチルトさせた状態で寝台装置30(天板33)に対して紫外線を照射することで、寝台装置30を、滅菌効果が高い条件下で、漏れなく、むらなく、且つ短時間で滅菌することができる。
【0058】
尚、上記の第1の実施形態では、人が検知された場合に、紫外線の照射を停止するとともに架台装置10のチルト角度や天板の高さを基準位置(初期位置)に戻す構成を説明したが、これに限られない。人が検知された場合には、紫外線の照射のみを停止したり、照射範囲が人にかぶらないように照射方向(架台装置10のチルト角度)を変更させるようにしてもよい。
【0059】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、UV照射器19を架台装置10に設けて天板33の滅菌処理を行う構成を説明したが、第2の実施形態では、UV照射器19を寝台装置30に設けて架台装置10の滅菌処理を行う。すなわち、滅菌部は、寝台に設けられており、架台の滅菌処理を行う。以下の説明においては、第1の実施形態と共通する部材や機能については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0060】
[X線CT装置の構成]
図6は、第2の実施形態に係る第3UV照射器19-3および第4UV照射器19-4の配置位置および照射範囲の一例を示す図である。図6に示すように、第3UV照射器19-3および第4UV照射器19-4は、寝台装置30の支持フレーム34の上部の架台装置10に近い位置に設けられる。第3UV照射器19-3および第4UV照射器19-4の各々は、架台装置10に向けて紫外線を照射する。例えば、第3UV照射器19-3は、その照射範囲RA-3が、架台装置10に設けられた操作パネルOP3を包含するような位置に設けられる。また、例えば、第4UV照射器19-4は、その照射範囲RA-4が、架台装置10に設けられた操作パネルOP4を包含するような位置に設けられる。これにより、架台装置10の操作パネルやドーム内が滅菌処理される。尚、UV照射器19の数および寝台装置30上の配置位置は任意である。
【0061】
[処理フロー]
次に、第2の実施形態に係るX線CT装置1の第2の滅菌処理の処理フローの一例を説明する。X線CT装置1は、被検体Pのスキャンの停止期間(例えば、被検体の入れ替わりに伴う空き時間等)に、滅菌処理を行う。第2の滅菌処理の基本的な流れは、第1の実施形態における図4に示す第1の滅菌処理と同じである。このため、図4に示すフローチャートを用いて、第2の滅菌処理の処理フローを説明する。図4に示す第2の滅菌処理は、例えば、コンソール装置40の操作者が、入力インターフェース43を介して、滅菌処理の開始の指示を行った場合に開始される。
【0062】
まず、コンソール装置40の処理回路50の滅菌制御機能57は、寝台駆動装置32を制御して、天板33を鉛直方向(Y軸方向)に移動させ、天板33の高さ(寝台高さ)を、上限高さに変更する(ステップS101)。図7Aは、第2の滅菌処理の開始時における回転フレーム17および天板33(基準高さBP)の位置関係を説明する図である。図7Bは、第2の滅菌処理のステップS101における回転フレーム17および天板33(上限高さUL)の位置関係を説明する図である。図7Aに示すように、第2の滅菌処理の開始時において、天板33の高さは、基準高さBPである。図7Bに示すように、上記のステップS101において、天板33が鉛直方向(Y軸方向)に移動され、天板33の高さが、上限高さULに変更される。
【0063】
次に、滅菌制御機能57は、架台駆動装置21を制御して、架台装置10を天板33に向けてチルトさせ、架台装置10のチルト角度を、滅菌用角度に変更する(ステップS103)。図7Cは、第2の滅菌処理のステップS103における回転フレーム17(チルト角度θ2)および天板33(上限高さUL)の位置関係を説明する図である。図7Cに示すように、上記のステップS103において、架台装置10が天板33に向けてチルトされ、架台装置10のチルト角度が滅菌用角度(チルト角度θ2)に変更される。滅菌用角度は、例えば、UV照射器19と天板33との間の距離が最短となるような角度に設定される。滅菌用角度は、例えば、寝台装置30側に最大の傾きとなる角度に設定される。
【0064】
次に、滅菌制御機能57は、寝台駆動装置32を制御して、天板33を支持フレーム34に沿って天板33の長手方向(Z軸方向)に往復移動させながら、UV照射器19を制御して、紫外線を架台装置10に照射する(ステップS105)。図7Dは、第2の滅菌処理のステップS105における回転フレーム17(チルト角度θ2)および天板33(上限高さUL,第3スライド位置P1)の位置関係を説明する図ある。図7Eは、第2の滅菌処理のステップS105における回転フレーム17(チルト角度θ2)および天板33(上限高さUL,第4スライド位置P2)の位置関係を説明する図である。図7Dおよび図7Eに示すように、天板33は、架台装置10への進入方向での第3スライド位置P1と、架台装置10への進入方向とは反対方向での第4スライド位置P4との間を往復移動される。第3スライド位置P1は、例えば、架台装置10のドーム内でUV照射器19から照射される紫外線が架台装置10に当たる限界位置である。第4スライド位置P2は、例えば、架台装置10のドーム外でUV照射器19から照射される紫外線が架台装置10に当たる限界位置である。これにより、架台装置10の外部(パネル操作部)やドーム内を漏れなく且つむらなく滅菌することが可能となる。尚、滅菌制御機能57は、寝台駆動装置32を制御して天板33の長手方向に往復移動させながら、対象部位とUV照射器19との距離に応じて架台駆動装置21を制御して架台装置10のチルト角度を調整し、所望の対象部位に紫外線が照射されるように照射方向を調整してもよい。
【0065】
上記のように天板33が往復移動される間、検知機能58は、カメラ20により撮像されたX線CT装置1が設置された空間(検査室等)の画像に基づいて、当該空間(X線CT装置1の付近)に人が存在するか否かを判定する(ステップS107)。検知機能58により人が検知された場合(ステップS107;YES)、滅菌制御機能57は、UV照射器19を制御して、紫外線の照射を停止する(ステップS111)。このように、人の存在が検知された場合に紫外線の照射を停止することで、紫外線の人体への影響を回避することができる。
【0066】
一方、検知機能58により人が検知されない場合(ステップS107;NO)、滅菌制御機能57は、紫外線の架台装置10への照射を継続し、終了条件を満たすか否かを判定する(ステップS109)。滅菌制御機能57は、終了条件を満たしていないと判定した場合(ステップS109;NO)、上記のステップS105に戻り、紫外線の架台装置10への照射を継続して、以降の処理を繰り返す。
【0067】
一方、滅菌制御機能57は、終了条件を満たしていると判定した場合(ステップS109;YES)、UV照射器19を制御して、紫外線の天板33への照射を停止する(ステップS111)。さらに、滅菌制御機能57は、架台駆動装置21を制御して、架台装置10を天板33から離れる方向にチルトさせて、架台装置10を非チルト角度(基準角度)に変更する(ステップS113)。また、滅菌制御機能57は、寝台駆動装置32を制御して、天板33を鉛直方向(-Y軸方向)に移動させ、天板33の高さを、基準高さに変更する(ステップS115)。尚、これらの制御と並行して、必要に応じて、滅菌制御機能57は、寝台駆動装置32を制御して、天板33を支持フレーム34に沿って天板33の長手方向(Z軸方向)に移動させて、天板33を架台装置10から引き出された位置に移動させる。以上により、本フローチャートの処理が終了する。
【0068】
以上説明した第2の実施形態によれば、診断機器の滅菌作業の負担を軽減するとともに、滅菌の精度を向上させることができる。特に、UV照射器19を寝台装置30に設けて、架台装置10をチルトさせた状態で架台装置10に対して紫外線を照射することで、架台装置10を、滅菌効果が高い条件下で、漏れなく、むらなく、且つ短時間で滅菌することができる。
【0069】
<第3の実施形態>
次に、第3の実施形態について説明する。第1および第2の実施形態では、架台装置10をチルトさせた状態で滅菌処理を行う構成を説明したが、第3の実施形態では、主に、PET-CT装置のようなチルト機構を有さない診断装置を対象として、チルト機構を持つUV照射器19を用いて滅菌処理を行う。すなわち、滅菌部は、滅菌処理における滅菌方向を変更可能な傾斜機構を備える。以下の説明においては、第1および第2の実施形態と共通する部材や機能については同一符号を付して、その説明を省略する。
【0070】
[X線CT装置の構成]
図8は、第3の実施形態に係るUV照射器19の配置位置および照射範囲の一例を示す図である。図8に示すように、UV照射器19は、架台装置10の回転フレーム17のフロント部(リア部)に設けられる。UV照射器19はチルト機構を有しており、X軸回りにチルト可能である。除菌処理の間、滅菌制御機能57は、UV照射器19を制御して、UV照射器19の照射方向が天板33に向くようにUV照射器19のチルト角度を変更する。この場合のチルト制御について、予め設定された角度に自動で動くようにしてもよいし、センサ機能(不図示)を設けて、UV照射器19と対象部位(天板33)との距離が最短になるようにUV照射器19を制御してもよい。さらに、滅菌制御機能57は、寝台駆動装置32を制御して、天板33を鉛直方向(Y軸方向)に移動させ、天板33の高さを上限高さULに変更する。尚、第2の実施形態のように、UV照射器19は、寝台装置30に設けられてもよい。
【0071】
すなわち、滅菌部は、診断装置の架台および寝台の少なくとも一方に設置可能であり、診断装置の対象部位の滅菌処理を行い、滅菌方向を変更可能な傾斜機構を備える。滅菌制御部は、傾斜機構を制御して滅菌部の滅菌方向を対象部位に向けた状態で、滅菌部に滅菌処理を行わせる。
【0072】
以上説明した第3の実施形態によれば、診断機器の滅菌作業の負担を軽減するとともに、滅菌の精度を向上させることができる。特に、UV照射器19を架台装置10または寝台装置30に設けて、UV照射器19をチルトさせた状態で紫外線を照射することで、滅菌効果が高い条件下で、漏れなく、むらなく、且つ短時間で滅菌作業を行うことができる。
【0073】
尚、上記の第1から第3の実施形態の構成は、適宜、組み合わせてもよい。例えば、架台装置10および寝台装置30の両方にUV照射器19を設けて、架台装置10および寝台装置30の滅菌処理を同時に行うようにしてもよい。すなわち、滅菌部は、寝台および架台の両方に設けられており、架台に設けられた滅菌部は寝台の滅菌処理を行い、寝台に設けられた滅菌部は架台の滅菌処理を行うようにしてもよい。
【0074】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0075】
1…X線CT装置,10…架台装置,11…X線管,12…ウェッジ,13…コリメータ,14…X線高電圧装置,15…X線検出器,16…データ収集システム,17…回転フレーム,18…制御装置,19…UV照射器,19-1…第1UV照射器,19-2…第2UV照射器,19-3…第3UV照射器,19-4…第4UV照射器,20…カメラ,21…架台駆動装置,30…寝台装置,31…基台,32…寝台駆動装置,33…天板,34…支持フレーム,40…コンソール装置,41…メモリ,42…ディスプレイ,43…入力インターフェース,44…ネットワーク接続回路,50…処理回路,51…システム制御機能,52…前処理機能,53…再構成処理機能,54…画像処理機能,55…スキャン制御機能,56…表示制御機能,57…滅菌制御機能,58…検知機能
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図8