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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160537
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】電動式作業機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/00 20060101AFI20231026BHJP
   E02F 9/08 20060101ALI20231026BHJP
   B60R 16/04 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
E02F9/00 C
E02F9/08 Z
B60R16/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070961
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 浩太郎
(57)【要約】
【課題】振動が生じてもバッテリユニットを機体フレーム上に安定して支持することができる電動式作業機械を提供する。
【解決手段】電動式作業機械としての油圧ショベルは、電動モータと、機体フレームと、電動モータを駆動するための電力を蓄えるバッテリユニットと、バッテリユニットを機体フレームに固定する固定機構と、を備える。固定機構は、バッテリユニットを上下方向から挟む上板および下板と、下板を機体フレーム上に支持する支持部と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動モータと、
機体フレームと、
前記電動モータを駆動するための電力を蓄えるバッテリユニットと、
前記バッテリユニットを前記機体フレームに固定する固定機構と、を備え、
前記固定機構は、
前記バッテリユニットを上下方向から挟む上板および下板と、
前記下板を前記機体フレーム上に支持する支持部と、を有する、電動式作業機械。
【請求項2】
前記支持部は、防振部材を含む、請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項3】
前記バッテリユニットの上面は、前記上板に接触して固定され、
前記バッテリユニットの下面は、前記下板に接触して固定される、請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項4】
前記固定機構は、連結部材を有し、
前記連結部材は、前記上板と前記下板とを連結する、請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項5】
前記連結部材は、前記バッテリユニットから離れた位置で、前記上板と前記下板とを連結する、請求項4に記載の電動式作業機械。
【請求項6】
前記上板および前記下板は、複数の前記バッテリユニットを前記上下方向から挟み、
複数の前記バッテリユニットは、前記下板上で一方向に平行に位置するとともに、前記一方向と垂直な方向に並んで位置し、
複数の前記バッテリユニットの少なくとも1つは、前記下板上で、他のバッテリユニットと、前記一方向に互いにずれて位置し、
前記固定機構は、前記連結部材を複数有し、
複数の前記連結部材の少なくともいずれかは、前記下板上で、上方から見て、前記一方向にずれて位置する2つのバッテリユニットの互いに垂直に交わる2面と隣り合って位置する、請求項4に記載の電動式作業機械。
【請求項7】
前記固定機構は、前記連結部材として、第1連結部材、第2連結部材、および第3連結部材を有し、
前記第1連結部材、前記第2連結部材、および前記第3連結部材は、上方から見て、複数の前記バッテリユニットを囲む外周に沿って、互いに離れて位置する、請求項6に記載の電動式作業機械。
【請求項8】
複数の前記バッテリユニットは、前記下板上で前記一方向としての左右方向に平行に位置するとともに、前記一方向と垂直な前後方向に並んで位置し、
前記第1連結部材は、複数の前記バッテリユニットのうち、最も前方に位置するバッテリユニットよりも前方に位置し、
前記第2連結部材は、前記第1連結部材よりも後方で、かつ、隣り合う2つ以上のバッテリユニットの各側面と対向して位置し、
前記第3連結部材は、前記第2連結部材よりも後方で、かつ、前記第1連結部材と複数の前記バッテリユニットを介して位置する、請求項7に記載の電動式作業機械。
【請求項9】
前記固定機構は、前記下板上に固定される位置決め部材をさらに有し、
前記位置決め部材は、前記下板上で、前記バッテリユニットのいずれかの面の底部と接触して位置する、請求項1に記載の電動式作業機械。
【請求項10】
前記上板に配置される電装品をさらに備える、請求項1から9のいずれかに記載の電動式作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動モータを備えた旋回作業機が種々提案されている。電動モータは、バッテリユニットから供給される電力によって駆動される。バッテリユニットは、旋回作業機の旋回台上で支持される。例えば特許文献1の旋回作業機は、バッテリユニットを支持する立設フレームを備える。上記立設フレームは、第1立設部および第2立設部を有する。第1立設部は、旋回台の上部に立設し、バッテリユニットの一側面(例えば左側面)を支持する。第2立設部は、旋回台の上部に立設し、バッテリユニットの他側面(例えば右側面)を支持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-080704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
旋回作業機は不整地で使用されて振動することを考慮すると、バッテリユニットは、立設フレームと一体となって旋回台(機体フレーム)に支持されることが望ましい。特許文献1のように、バッテリユニットを旋回台上で左右方向から支持する構成では、バッテリユニットの上面が何ら支持されていないため、バッテリユニットと立設フレームとの一体性が不十分であり、振動に対してバッテリユニットを安定して支持する点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、振動が生じてもバッテリユニットを機体フレーム上に安定して支持することができる電動式作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る電動式作業機械は、電動モータと、機体フレームと、前記電動モータを駆動するための電力を蓄えるバッテリユニットと、前記バッテリユニットを前記機体フレームに固定する固定機構と、を備え、前記固定機構は、前記バッテリユニットを上下方向から挟む上板および下板と、前記下板を前記機体フレーム上に支持する支持部と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
振動が生じてもバッテリユニットを機体フレーム上に安定して支持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の一形態に係る電動式作業機械の一例である油圧ショベルの概略の構成を示す側面図である。
図2】上記油圧ショベルの電気系および油圧系の構成を模式的に示すブロック図である。
図3】上記油圧ショベルの機関室内を斜め前方から見たときの斜視図である。
図4】上記機関室内を斜め後方から見たときの斜視図である。
図5】下板上でのバッテリユニットの配置を示す平面図である。
図6】第1連結部材の断面図である。
図7】第2連結部材の断面図である。
図8】第3連結部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0010】
〔1.電動式作業機械〕
図1は、本実施形態の電動式作業機械の一例である油圧ショベル(電動ショベル)1の概略の構成を示す側面図である。油圧ショベル1は、下部走行体2と、作業機3と、上部旋回体4と、を備える。
【0011】
ここで、方向を以下のように定義する。上部旋回体4の運転座席41aに着座したオペレータ(操縦者、運転手)が正面を向く方向を前方とし、その逆方向を後方とする。したがって、下部走行体2に対して上部旋回体4が非旋回の状態(旋回角度0°)では、上部旋回体4の前後方向は、下部走行体2が前後進する方向と一致する。また、運転座席41aに着座したオペレータから見て左側を「左」とし、右側を「右」とする。さらに、前後方向および左右方向に垂直な重力方向を上下方向とし、重力方向の上流側を「上」とし、下流側を「下」とする。図面では、下部走行体2に対して上部旋回体4が非旋回の状態で油圧ショベル1を示す。また、図面では、必要に応じて、前方を「F」、後方を「B」、右方を「R」、左方を「L」、上方を「U」、下方を「D」の記号で示す。
【0012】
下部走行体2は、左右一対のクローラ21と、左右一対の走行モータ22と、を備える。各走行モータ22は、油圧モータである。左右の走行モータ22が、左右のクローラ21をそれぞれ駆動することにより、油圧ショベル1を前後進させることができる。下部走行体2には、整地作業を行うためのブレード23と、ブレードシリンダ23aとが設けられる。ブレードシリンダ23aは、ブレード23を上下方向に回動させる油圧シリンダである。
【0013】
作業機3は、ブーム31、アーム32、およびバケット33を備える。ブーム31、アーム32、およびバケット33を独立して駆動することにより、土砂等の掘削作業を行うことができる。
【0014】
ブーム31は、ブームシリンダ31aによって回動される。ブームシリンダ31aは、基端部が上部旋回体4の前部に支持され、伸縮自在に可動する。アーム32は、アームシリンダ32aによって回動される。アームシリンダ32aは、基端部がブーム31の先端部に支持され、伸縮自在に可動する。バケット33は、バケットシリンダ33aによって回動される。バケットシリンダ33aは、基端部がアーム32の先端部に支持され、伸縮自在に可動する。ブームシリンダ31a、アームシリンダ32a、およびバケットシリンダ33aは、油圧シリンダにより構成される。
【0015】
上部旋回体4は、下部走行体2の上方に位置し、下部走行体2に対して旋回ベアリング(不図示)を介して旋回可能に設けられる。上部旋回体4には、操縦部41、旋回フレーム42、旋回モータ43、機関室44等が配置される。上部旋回体4は、油圧モータである旋回モータ43の駆動により、旋回ベアリングを介して旋回する。油圧ショベル1は、旋回フレーム42を機体フレームとして備える。
【0016】
上部旋回体4には、油圧ポンプ71(図2参照)が配置される。油圧ポンプ71は、機関室44の内部の電動モータ61(図2参照)によって駆動される。油圧ポンプ71は、油圧モータ(例えば左右の走行モータ22、旋回モータ43)、および油圧シリンダ(例えばブレードシリンダ23a、ブームシリンダ31a、アームシリンダ32a、バケットシリンダ33a)に作動油(圧油)を供給する。油圧ポンプ71から作動油が供給されて駆動される油圧モータおよび油圧シリンダを、まとめて油圧アクチュエータ73(図2参照)と呼ぶ。
【0017】
操縦部41には、運転座席41aが配置される。運転座席41aの周囲には、各種のレバー41bが配置される。オペレータが運転座席41aに着座してレバー41bを操作することにより、油圧アクチュエータ73が駆動される。これにより、下部走行体2の走行、ブレード23による整地作業、作業機3による掘削作業、上部旋回体4の旋回、等を行うことができる。
【0018】
上部旋回体4には、バッテリユニット53が配置される。すなわち、油圧ショベル1は、バッテリユニット53を備える。バッテリユニット53は、例えばリチウムイオンバッテリユニットで構成され、電動モータ61を駆動するための電力を蓄える。バッテリユニット53は、複数のバッテリをユニット化して構成されてもよいし、単一のバッテリセルで構成されてもよい。また、上部旋回体4には、不図示の給電口が設けられる。上記の給電口と、外部電源である商用電源51とは、給電ケーブル52を介して接続される。これにより、バッテリユニット53を充電することができる。
【0019】
上部旋回体4には、鉛バッテリ54がさらに設けられる。鉛バッテリ54は、低電圧(例えば12V)の直流電圧を出力する。鉛バッテリ54からの出力は、制御電圧として例えばシステムコントローラ67(図2参照)、送風ファン(図示せず)などに供給される。
【0020】
油圧ショベル1は、油圧アクチュエータ73などの油圧機器と、電力で駆動されるアクチュエータとを併用した構成であってもよい。電力で駆動されるアクチュエータとしては、例えば、電動走行モータ、電動シリンダ、電動旋回モータがある。
【0021】
〔2.電気系および油圧系の構成〕
図2は、油圧ショベル1の電気系および油圧系の構成を模式的に示すブロック図である。油圧ショベル1は、電動モータ61と、充電器62と、インバータ63と、PDU(Power Drive Unit)64と、ジャンクションボックス65と、DC-DCコンバータ66と、システムコントローラ67と、を備える。システムコントローラ67は、ECU(Electronic Control Unit)とも呼ばれる電子制御ユニットで構成され、油圧ショベル1の各部の電気的な制御を行う。
【0022】
電動モータ61は、バッテリユニット53から、ジャンクションボックス65およびインバータ63を介して供給される電力により駆動される。電動モータ61は、永久磁石モータまたは誘導モータで構成される。電動モータ61は、旋回フレーム42上に配置される。
【0023】
充電器62は、図1で示した商用電源51から給電ケーブル52を介して供給される交流電圧を直流電圧に変換する。インバータ63は、バッテリユニット53から供給される直流電圧を、交流電圧に変換して電動モータ61に供給する。これにより、電動モータ61が回転する。インバータ63から電動モータ61への交流電圧(電流)の供給は、システムコントローラ67から出力される回転指令に基づいて行われる。
【0024】
PDU64は、内部のバッテリリレーを制御してバッテリユニット53の入出力を制御するバッテリ制御ユニットである。ジャンクションボックス65は、充電器リレー、インバータリレー、ヒューズ等を含んで構成される。上記した充電器62から出力される電圧は、ジャンクションボックス65およびPDU64を介してバッテリユニット53に供給される。また、バッテリユニット53から出力される電圧は、PDU64およびジャンクションボックス65を介してインバータ63に供給される。
【0025】
DC-DCコンバータ66は、バッテリユニット53からジャンクションボックス65を介して供給される高電圧(例えば300V)の直流電圧を、低電圧(例えば12V)に降圧する。DC-DCコンバータ66から出力される電圧は、鉛バッテリ54からの出力と同様に、システムコントローラ67、送風ファン等に供給される。
【0026】
電動モータ61の回転軸(出力軸)には、複数の油圧ポンプ71が接続される。複数の油圧ポンプ71は、可変容量型ポンプおよび固定容量型ポンプを含む。図2では、例として油圧ポンプ71を1つのみ図示している。各油圧ポンプ71は、作動油を収容(貯留)する作動油タンク74と接続されている。油圧ポンプ71により、作動油タンク74内の作動油が、コントロールバルブ72を介して油圧アクチュエータ73に供給される。これにより、油圧アクチュエータ73が駆動される。コントロールバルブ72は、油圧アクチュエータ73に供給される作動油の流れ方向および流量を制御する方向切替弁である。
【0027】
〔3.バッテリユニットの固定について〕
次に、上記したバッテリユニット53の固定機構について説明する。図3は、油圧ショベル1の機関室44内を斜め前方から見たときの斜視図である。図4は、機関室44内を斜め後方から見たときの斜視図である。
【0028】
これらの図に示すように、油圧ショベル1は、固定機構80を備える。固定機構80は、バッテリユニット53を旋回フレーム42に固定する機構である。本実施形態では、油圧ショベル1は、バッテリユニット53を複数個備える。したがって、固定機構80は、複数のバッテリユニット53を旋回フレーム42に固定する。
【0029】
固定機構80は、上板81および下板82と、支持部83と、を有する。上板81および下板82は、複数のバッテリユニット53を上下方向から挟む。上板81および下板82は、後述する連結部材84によって連結される。
【0030】
上板81は、複数のバッテリユニット53の上方に位置する。下板82は、複数のバッテリユニット53の下方に位置する。複数のバッテリユニット53およびPDU64は、接続ケーブルCAにより接続される。特に、複数のバッテリユニット53は、直列、並列、または直列と並列との組み合わせで接続される。
【0031】
図5は、上板81、連結部材84および接続ケーブルCAを取り除いた状態での、下板82上でのバッテリユニット53の配置を示す平面図である。下板82上には、同じ大きさの4つのバッテリユニット53が配置されている。例えば、2個のバッテリユニット53は直列に接続されて1つのペアを構成し、残りの2個のバッテリユニット53も直列に接続されて1つのペアを構成する。そして、各ペア同士は並列に接続される。なお、4つのバッテリユニットの接続方式は上記の例には限定されない。また、バッテリユニット53の数は、上記の4つには限定されず、バッテリユニット53は少なくとも1個設けられればよい。
【0032】
本実施形態では、複数のバッテリユニット53は、下板82上で一方向に平行に位置するとともに、一方向と垂直な方向に並んで位置する。例えば、複数のバッテリユニット53は、下板82上で、上記一方向としての左右方向に平行に位置するとともに、上記一方向と垂直な前後方向に並んで位置する。
【0033】
ここで、上記4つのバッテリユニット53を特に区別する場合、それらを前方から後方に向かって順に、第1バッテリユニット53A、第2バッテリユニット53B、第3バッテリユニット53C、第4バッテリユニット53D、と称する。第1バッテリユニット53Aの前方には、上述したPDU64が位置する。PDU64の下面は、支持ステー64a(図3参照)に固定される。支持ステー64aは、下板82上に固定される。
【0034】
図5に示すように、第1バッテリユニット53Aおよび第2バッテリユニット53Bは、下板82上で、左右方向において同じ位置に(左右方向に互いにずれずに)配置される。第3バッテリユニット53Cは、下板82上で、第2バッテリユニット53Bよりも右方向にずれて配置される。第4バッテリユニット53Dは、下板82上で、第3バッテリユニット53Cよりもさらに右方向にずれて配置される。
【0035】
したがって、4つのバッテリユニット53のうち、2つのバッテリユニット53(第3バッテリユニット53Cおよび第4バッテリユニット53D)は、下板82上で、他のバッテリユニット53(第1バッテリユニット53Aおよび第2バッテリユニット53B)と、一方向(左右方向)に互いにずれて位置する、と言える。なお、一方向にずれて位置するバッテリユニット53は、複数のバッテリユニット53のうちのいずれか1つのみであってもよい。すなわち、本実施形態では、複数のバッテリユニット53の少なくとも1つは、下板82上で、他のバッテリユニット53と一方向に互いにずれて位置する。
【0036】
このような複数のバッテリユニット53の配置では、第1バッテリユニット53A~第4バッテリユニット53Dの左端部は、旋回フレーム42の左側部から後端部にかけての縁部42a(図5参照)にほぼ沿って位置する。このように、機関室44内で、旋回フレーム42の縁部42aにできるだけ近い位置に各バッテリユニット53が配置されることにより、機関室44内の空間が有効利用される。
【0037】
各バッテリユニット53と上板81および下板82との一体性を高める観点では、各バッテリユニット53の上面53S1(図5参照)は、上板81(図3参照)に接触して固定され、各バッテリユニット53の下面53S2(図3参照)は、下板82に接触して固定されることが望ましい。
【0038】
寿命、動作不良等による各バッテリユニット53の交換を容易にする観点では、各バッテリユニット53の上面53S1と上板81との固定、および各バッテリユニット53の下面53S2と下板82との固定は、ボルトによる締結であることが望ましい。ボルト締結であれば、両者の固定の解除も容易となる。
【0039】
なお、各バッテリユニット53は、下板82上に、前後方向に平行で、かつ、左右方向に並んで配置されていてもよい。また、各バッテリユニット53は、下板82上に、左右方向と交差する斜め方向に平行で、かつ、上記斜め方向に垂直な方向に並んで配置されていてもよい。さらに、各バッテリユニット53は、下板82上で上下方向に積み重ねられて配置されてもよい。
【0040】
支持部83は、下板82を旋回フレーム42上に支持する。支持部83は、旋回フレーム42上に例えば3つ設けられる。つまり、下板82は、旋回フレーム42上に3つの支持部83によって支持される。なお、支持部83の個数は、上記の3つには特に限定されない。
【0041】
各バッテリユニット53の防振対策として、各バッテリユニット53と下板82との間に防振ゴムなどを配置してもよい。ただし、各バッテリユニット53と下板82との一体性を高めることを優先し、各バッテリユニット53の下面53S2と下板82とを直接接触させて固定する観点では、下板82の下方に位置する支持部83が、防振部材83aを含んで構成されることが望ましい。防振部材83aとしては、防振ゴム、ステー、ハウジング等を組み合わせた防振構造体を用いることができる。
【0042】
本実施形態のように、(複数の)バッテリユニット53を上下方向から上板81および下板82で挟む構成では、バッテリユニット53の上面53S1および下面53S2が上板81および下板82によって支持されるため、バッテリユニット53と上板81および下板82との一体性を高めることができる。これにより、油圧ショベル1の使用時に振動が生じても、バッテリユニット53を、下板82および支持部83を介して旋回フレーム42上に安定して支持することができる。また、支持部83により、旋回フレーム42の強度構造部材42b(図3図5参照)との干渉を回避して(またいで)、固定機構80を設置することができる。なお、強度構造部材42bは、旋回フレーム42上で前後に渡って設置される、旋回フレーム42の補強用の板材である。
【0043】
図3および図4に示すように、固定機構80は、連結部材84を有する。連結部材84は、上板81と下板82とを連結する部材である。上板81と下板82とでバッテリユニット53を上下方向から強く挟む観点、および工場等でバッテリユニット53を移動させるべく、バッテリユニット53とボルト締結された上板81を吊り上げたときに、バッテリユニット53と上板81との接触部(ボルトで締結された部分)にかかる負荷を低減する観点では、本実施形態のように、上板81と下板82とを連結部材84で連結することが望ましい。
【0044】
本実施形態では、固定機構80は、上記の連結部材84として、第1連結部材84-1(図3参照)、第2連結部材84-2(図3参照)、および第3連結部材84-3(図4参照)を有する。なお、連結部材84の数は、上記の3つに限定されるわけではない。
【0045】
図6は、第1連結部材84-1の断面図である。図7は、第2連結部材84-2の断面図である。図8は、第3連結部材84-3の断面図である。各連結部材84は、上板固定部84aと、下板固定部84bと、連結部84cと、を有して構成される。
【0046】
上板固定部84aは、上板81の下方に位置する平板で構成され、上板81とボルトによって締結される。下板固定部84bは、下板82の上方に位置する平板で構成され、下板82とボルトによって締結される。連結部84cは、上板固定部84aおよび下板固定部84bと一体的に構成されており、上板固定部84aと下板固定部84bとを上下方向に連結している。
【0047】
連結部84cは、バッテリユニット53と水平方向(左右方向または前後方向)に隙間を介して位置する。したがって、連結部材84は、バッテリユニット53から離れて位置する。
【0048】
各バッテリユニット53の放熱効率を上げる観点では、図6図8に示すように、連結部材84は、バッテリユニット53から離れた位置で、上板81と下板82とを連結することが望ましい。
【0049】
また、複数のバッテリユニット53を上下方向から挟む上板81と下板82とをバランスよく連結する観点、および、例えば工場などにおいて、複数のバッテリユニット53を上板81および下板82で挟んだ一体物(固定ユニット)を安定して吊り上げる観点では、複数のバッテリユニット53の周囲の少なくとも3か所で、上板81と下板82とが連結部材84によって連結されることが望ましい。この構成を実現するためには、図3および図4に示すように、第1連結部材84-1、第2連結部材84-2、および第3連結部材84-3は、上方から見て、複数のバッテリユニット53を囲む外周に沿って、互いに離れて位置することが望ましい。
【0050】
また、上板81と下板82とを3つの連結部材84でバランスよく連結し、かつ、複数のバッテリユニット53の前後方向の倒れを防ぐ観点では、第1連結部材84-1、第2連結部材84-2、および第3連結部材84-3は、以下のように下板82上に位置することが望ましい。
【0051】
すなわち、図3および図4に示すように、第1連結部材84-1は、複数のバッテリユニット53のうち、最も前方に位置する第1バッテリユニット53Aよりも前方に位置し、第2連結部材84-2は、第1連結部材84-1よりも後方で、かつ、隣り合う2つ以上のバッテリユニット53の各側面と対向して位置し、第3連結部材84-3は、第2連結部材84-2よりも後方で、かつ、第1連結部材84-1と複数のバッテリユニット53(例えば第1バッテリユニット53A~第3バッテリユニット53C)を介して位置することが望ましい。
【0052】
本実施形態では、図5に示すように、下板82上で、第1バッテリユニット53Aおよび第2バッテリユニット53Bと、第3バッテリユニット53Cとは、一方向(左右方向)にずれて位置する。この構成において、第2連結部材84-2(図3参照)は、下板82上で、第1バッテリユニット53Aの右側面53A-Rおよび第2バッテリユニット53Bの右側面53B-Rと、第3バッテリユニット53Cの前面53C-Fとの両方と隣り合って位置する。なお、上記の右側面53A-Rおよび右側面53B-Rと、前面53C-Fとは、下板82上で垂直に交わる位置関係にある。
【0053】
また、本実施形態では、下板82上で、第3バッテリユニット53Cと、第4バッテリユニット53Dとは、左右方向にずれて位置する。この構成において、第3連結部材84-3(図4参照)は、下板82上で、第3バッテリユニット53Cの後面53C-Bと、第4バッテリユニット53Dの左側面53D-Lとの両方と隣り合って位置する。なお、上記の後面53C-Bと左側面53D-Lとは、下板82上で垂直に交わる位置関係にある。
【0054】
本実施形態のように、隣り合う2つのバッテリユニット53が、下板82上で一方向(例えば左右方向)に互いにずれて位置する構成において、固定機構80が連結部材84を複数有する場合、下板82上の空き領域(バッテリユニット53が配置される領域を除く残余領域)を有効に活用する観点では、複数の連結部材84の少なくともいずれかは、下板82上で、以下のように配置されることが望ましい。すなわち、複数の連結部材84の少なくともいずれかは、下板82上で、上方から見て、一方向にずれて位置する2つのバッテリユニット53の互いに垂直に交わる2面と隣り合って位置することが望ましい。
【0055】
本実施形態の固定機構80は、図3および図4に示すように、位置決め部材85をさらに有する。位置決め部材85は、下板82上に固定される。また、位置決め部材85は、下板82上で、バッテリユニット53のいずれかの面の底部と接触して位置する。
【0056】
例えば、固定機構80は、位置決め部材85として、第1位置決め部材85-1、第2位置決め部材85-2、第3位置決め部材85-3、第4位置決め部材85-4、第5位置決め部材85-5、第6位置決め部材85-6、第7位置決め部材85-7、第8位置決め部材85-8、および第9位置決め部材85-9を有する。
【0057】
図3に示すように、第1位置決め部材85-1は、下板82上で、第1バッテリユニット53Aの前面53A-Fの底部と接触して位置する。第2位置決め部材85-2は、下板82上で、第3バッテリユニット53Cの右側面53C-Rの底部と接触して位置する。第3位置決め部材85-3は、下板82上で、第4バッテリユニット53Dの右側面53D-Rの底部と接触して位置する。
【0058】
図4に示すように、第4位置決め部材85-4および第5位置決め部材85-5は、下板82上で、第4バッテリユニット53Dの後面53D-Bの底部と接触して位置する。第6位置決め部材85-6は、下板82上で、第4バッテリユニット53Dの左側面53D-Lの底部と接触して位置する。第7位置決め部材85-7は、下板82上で、第3バッテリユニット53Cの左側面53C-Lの底部と接触して位置する。第8位置決め部材85-8は、下板82上で、第2バッテリユニット53Bの左側面53B-Lの底部と接触して位置する。第9位置決め部材85-9は、下板82上で、第1バッテリユニット53Aの左側面53A-Lの底部と接触して位置する。
【0059】
下板82に対してバッテリユニット53が位置ズレするおそれを低減し、下板82上の適切な位置にバッテリユニット53を(ボルトなどによって)固定する観点では、固定機構80は、上述の位置決め部材85を有することが望ましい。
【0060】
図3および図4に示すように、本実施形態では、上板81上に、前述のジャンクションボックス65が配置されている。ジャンクションボックス65は、電装品の一種である。上板81の上方の空間を有効活用する観点では、電装品は上板81に配置されること、言い換えれば、油圧ショベル1が、上板81に配置される電装品を備えることが望ましい。なお、上板81に配置される電装品は、上記のジャンクションボックス65には限定されず、PDU64等の他の電装品であってもよい。
【0061】
〔4.付記〕
本実施形態で説明した油圧ショベル1は、以下の付記に示す電動式作業機械と表現することもできる。
【0062】
付記(1)の電動式作業機械は、
電動モータと、
機体フレームと、
前記電動モータを駆動するための電力を蓄えるバッテリユニットと、
前記バッテリユニットを前記機体フレームに固定する固定機構と、を備え、
前記固定機構は、
前記バッテリユニットを上下方向から挟む上板および下板と、
前記下板を前記機体フレーム上に支持する支持部と、を有する。
【0063】
付記(2)の電動式作業機械は、付記(1)に記載の電動式作業機械において、
前記支持部は、防振部材を含む。
【0064】
付記(3)の電動式作業機械は、付記(1)または(2)に記載の電動式作業機械において、
前記バッテリユニットの上面は、前記上板に接触して固定され、
前記バッテリユニットの下面は、前記下板に接触して固定される。
【0065】
付記(4)の電動式作業機械は、付記(1)から(3)のいずれかに記載の電動式作業機械において、
前記固定機構は、連結部材を有し、
前記連結部材は、前記上板と前記下板とを連結する。
【0066】
付記(5)の電動式作業機械は、付記(4)に記載の電動式作業機械において、
前記連結部材は、前記バッテリユニットから離れた位置で、前記上板と前記下板とを連結する。
【0067】
付記(6)の電動式作業機械は、付記(4)または(5)に記載の電動式作業機械において、
前記上板および前記下板は、複数の前記バッテリユニットを前記上下方向から挟み、
複数の前記バッテリユニットは、前記下板上で一方向に平行に位置するとともに、前記一方向と垂直な方向に並んで位置し、
複数の前記バッテリユニットの少なくとも1つは、前記下板上で、他のバッテリユニットと、前記一方向に互いにずれて位置し、
前記固定機構は、前記連結部材を複数有し、
複数の前記連結部材の少なくともいずれかは、前記下板上で、上方から見て、前記一方向にずれて位置する2つのバッテリユニットの互いに垂直に交わる2面と隣り合って位置する。
【0068】
付記(7)の電動式作業機械は、付記(6)に記載の電動式作業機械において、
前記固定機構は、前記連結部材として、第1連結部材、第2連結部材、および第3連結部材を有し、
前記第1連結部材、前記第2連結部材、および前記第3連結部材は、上方から見て、複数の前記バッテリユニットを囲む外周に沿って、互いに離れて位置する。
【0069】
付記(8)の電動式作業機械は、付記(7)に記載の電動式作業機械において、
複数の前記バッテリユニットは、前記下板上で前記一方向としての左右方向に平行に位置するとともに、前記一方向と垂直な前後方向に並んで位置し、
前記第1連結部材は、複数の前記バッテリユニットのうち、最も前方に位置するバッテリユニットよりも前方に位置し、
前記第2連結部材は、前記第1連結部材よりも後方で、かつ、隣り合う2つ以上のバッテリユニットの各側面と対向して位置し、
前記第3連結部材は、前記第2連結部材よりも後方で、かつ、前記第1連結部材と複数の前記バッテリユニットを介して位置する。
【0070】
付記(9)の電動式作業機械は、付記(1)から(8)のいずれかに記載の電動式作業機械において、
前記固定機構は、前記下板上に固定される位置決め部材をさらに有し、
前記位置決め部材は、前記下板上で、前記バッテリユニットのいずれかの面の底部と接触して位置する。
【0071】
付記(10)の電動式作業機械は、付記(1)から(9)のいずれかに記載の電動式作業機械において、
前記上板に配置される電装品をさらに備える。
【0072】
〔5.補足〕
本実施形態では、各バッテリユニット53の大きさ(例えば一方向の長さ)は全て同じとしたが、一部に大きさの異なるバッテリユニット53を用いてもよい。
【0073】
以上では、電動式作業機械として、建設機械である油圧ショベル1を例に挙げて説明したが、電動式作業機械は油圧ショベル1に限定されず、ホイルローダなどの他の建設機械であってもよい。また、電動式作業機械は、コンバイン、トラクタ等の農業機械であってもよい。
【0074】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、例えば建設機械、農業機械などの作業機械に利用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 油圧ショベル(電動式作業機械)
42 旋回フレーム(機体フレーム)
53 バッテリユニット
53A 第1バッテリユニット(バッテリユニット)
53B 第2バッテリユニット(バッテリユニット)
53C 第3バッテリユニット(バッテリユニット)
53D 第4バッテリユニット(バッテリユニット)
53S1 上面
53S2 下面
61 電動モータ
65 ジャンクションボックス(電装品)
80 固定機構
81 上板
82 下板
83 支持部
83a 防振部材
84 連結部材
84-1 第1連結部材
84-2 第2連結部材
84-3 第3連結部材
85 位置決め部材
85-1 第1位置決め部材
85-2 第2位置決め部材
85-3 第3位置決め部材
85-4 第4位置決め部材
85-5 第5位置決め部材
85-6 第6位置決め部材
85-7 第7位置決め部材
85-8 第8位置決め部材
85-9 第9位置決め部材
図1
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