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特開2023-160543反射型マスクブランクの製造方法、反射型マスクブランク、および集束イオンビーム加工装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160543
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】反射型マスクブランクの製造方法、反射型マスクブランク、および集束イオンビーム加工装置
(51)【国際特許分類】
   G03F 1/24 20120101AFI20231026BHJP
   G03F 1/84 20120101ALI20231026BHJP
【FI】
G03F1/24
G03F1/84
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070974
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】500171707
【氏名又は名称】株式会社ブイ・テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110001520
【氏名又は名称】弁理士法人日誠国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水村 通伸
【テーマコード(参考)】
2H195
【Fターム(参考)】
2H195BA02
2H195BA10
2H195BB27
2H195BE08
2H195BE10
2H195CA01
2H195CA11
2H195CA13
2H195CA20
2H195CA22
2H195CA23
(57)【要約】
【課題】基準マークの加工時間を短縮でき、しかも基準マークのエッジ検出精度を向上させる。反射型マスクブランクの製造方法、反射型マスクブランク、および集束イオンビーム加工装置を提供すること。
【解決手段】基板と、前記基板の表面に積層された露光光を反射する反射膜と、を有し、前記反射膜に断面凹溝形状の基準マークが形成された反射型マスクブランクの製造方法であって、前記基準マークの形成予定領域の輪郭に沿って前記反射膜を小電流集束イオンビームで加工する輪郭加工工程と、前記形成予定領域の全域の前記反射膜を大電流集束イオンビームで加工する全域加工工程と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、前記基板の表面に積層された露光光を反射する反射膜と、を有し、前記反射膜に断面凹溝形状の基準マークが形成された反射型マスクブランクの製造方法であって、
前記基準マークの形成予定領域の輪郭に沿って前記反射膜を小電流集束イオンビームで加工する輪郭加工工程と、
前記形成予定領域の全域の前記反射膜を大電流集束イオンビームで加工する全域加工工程と、
を備えることを特徴とする反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項2】
前記輪郭加工工程の後に、前記全域加工工程を行う、請求項1に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項3】
前記全域加工工程の後に、前記輪郭加工工程を行う、請求項1に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項4】
前記輪郭加工工程は、前記全域加工工程で形成された溝底部領域の周縁に沿って前記基板に向けて凹む輪郭溝部が形成されるまで、前記形成予定領域の輪郭に沿って前記小電流集束イオンビームを照射させる、請求項3に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項5】
前記小電流集束イオンビームは、前記反射膜に対して前記形成予定領域の内側方向へ傾く方向から照射される、請求項1に記載の反射型マスクブランクの製造方法。
【請求項6】
基板と、前記基板の表面に積層された露光光を反射する反射膜と、を有し、前記反射膜に断面凹溝形状の基準マークが形成された反射型マスクブランクであって、
前記基準マークの溝底部領域の周縁に沿って前記基板に向けて凹む輪郭溝部が形成されていることを特徴とする反射型マスクブランク。
【請求項7】
基板と、前記基板の表面に積層された露光光を反射する反射膜と、前記反射膜の表面に積層された前記露光光を吸収する吸収層と、を有し、前記反射膜に断面凹溝形状の基準マークを形成する集束イオンビーム加工装置であって、
前記基準マークの形成予定領域の輪郭に沿って加工を行うための小電流集束イオンビームの照射と、前記形成予定領域の全域の加工を行うための大電流集束イオンビームの照射と、が選択可能であることを特徴とする集束イオンビーム加工装置。
【請求項8】
前記小電流集束イオンビームが、前記反射膜に対して前記形成予定領域の内側方向へ傾く方向から照射されるように、前記基板の前記小電流集束イオンビームに対する傾斜角度を相対的に変更させる傾斜角度調整部を備える、請求項7に記載の集束イオンビーム加工装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体製造分野において用いられる、反射型マスクブランクの製造方法、反射型マスクブランク、および集束イオンビーム加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、フォトリソグラフィ技術において、極紫外(Extreme Ultra Violet:以下、EUVという)光を用いた露光技術が有望視されている。EUV光とは、軟X線領域または真空紫外線領域の波長帯域の光であり、その波長は0.2~100nm程度である。このような短波長帯域の光は、光学部材を透過することができないため、これまで利用されていた光透過型マスクでは、EUV光がフォトレジストまで届かなくなってしまう。したがって、このEUV光を用いた露光用マスクとしては、マスク内を光が通り抜けない反射型マスクが用いられる。
【0003】
この反射型マスクは、基板の全面に露光光を反射する機能が付与された反射多層膜(例えば、Mo/Si多層膜)が形成され、その上に露光光を吸収する吸収層が回路パターンに対応して形成されている。この反射型マスクに入射したEUV光は、吸収層では吸収され、吸収層のない部分では反射多層膜で反射されて露光材料の表面に結像されることにより、吸収層のパターンが露光材料に転写される。
【0004】
このような、反射型マスクは、上記基板の上に全面に形成される反射多層膜と、さらに反射多層膜の全面に形成された吸収層と、を有する原版としての反射型マスクブランクから作製される。この反射型マスクブランクは、反射多層膜の表面のうち、露光光が入射されるマスク領域よりも外側の領域(周辺領域)に断面形状が凹溝状の基準マークが形成されている(例えば、特許文献1参照)。この基準マークは、後述するように、反射多層膜の欠陥位置の座標を決定する際の基準位置を規定する。
【0005】
反射型マスクブランクにおいて、反射多層膜の表面のわずかな凹凸や反射多層膜の内部にひずみが発生している箇所では光が散乱するため、正反射しない成分が発生するという欠陥になる。この欠陥が存在する位置は、光が散乱するため、その光を上方に配置された光学系で集め、撮像素子に結像させることによってこの欠陥を検出できる。近年、EUV光を用いたフォトリソグラフィ技術においては、無欠陥の反射型マスクの収率向上と、欠陥検出インフラの確立と、が大きな課題となっている。現実的には、欠陥が皆無のマスクブランクを作ることは非常に困難である。そこで、回路パターンに対応する吸収層が欠陥を隠すように、欠陥の上に位置するように回路パターンの制御を行うことにより、その欠陥がもともとなかったことと等価になるようにする、欠陥を緩和する技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-58666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような欠陥を緩和する技術においては、反射型マスクブランクにおける欠陥位置の検出精度の向上が重要な課題となっている。反射多層膜に基準マークを加工する場合、レーザ加工法、ドライエッチング法、および集束イオンビームを用いたFIB(Focused Ion Beam)法が考えられる。レーザ加工法では、金属の熱的な蒸散などのアブレーションが起こるため、ともすると基準マークのエッジ部に凹凸などの粗い構造が発生し易く基準マークとして誤差が大きいものとなる。また、ドライエッチング法では、マスク領域の反射多層膜の表面がプラズマに晒されて反射率が乱されるため、基準マークの加工には用いることができない。
【0008】
FIB法を用いて基準マークを加工した場合、集束したイオンビームを試料表面に照射するため微細な加工が可能である反面、基準マークの検出性が低くなるという課題がある。基準マークの平面形状は、エッジ部を検出し易くするために十字形状が適用されているが、確実な検出を行うためのマークサイズとして数百μmから数mm程度が必要であることから、非常に長い加工時間が必要になる。このため、基準マークの深さを浅く(数十nm程度に)設定せざるを得ない現状である。この程度の深さでは、集束イオンビームのビーム径やビームの広がり角度に起因して、加工溝の側壁の立ち上がり角度(基板面方向と側壁の傾斜面とがなす角度)が数度から10度程度しかなく、基準マークのエッジ検出精度が低下してしまうという問題がある。
【0009】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、基準マークの加工時間を短縮でき、しかも基準マークのエッジ検出精度を向上させる、反射型マスクブランクの製造方法、反射型マスクブランク、および集束イオンビーム加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の態様は、基板と、前記基板の表面に積層された露光光を反射する反射膜と、を有し、前記反射膜に断面凹溝形状の基準マークが形成された反射型マスクブランクの製造方法であって、前記基準マークの形成予定領域の輪郭に沿って前記反射膜を小電流集束イオンビームで加工する輪郭加工工程と、前記形成予定領域の全域の前記反射膜を大電流集束イオンビームで加工する全域加工工程と、を備えることを特徴とする。
【0011】
上記態様としては、前記輪郭加工工程の後に、前記全域加工工程を行うことが好ましい。
【0012】
上記態様としては、前記全域加工工程の後に、前記輪郭加工工程を行うことが好ましい。
【0013】
上記態様としては、前記輪郭加工工程は、前記全域加工工程で形成された溝底部領域の周縁に沿って前記基板に向けて凹む輪郭溝部が形成されるまで、前記形成予定領域の輪郭に沿って前記小電流集束イオンビームを照射させることが好ましい。
【0014】
上記態様としては、前記小電流集束イオンビームは、前記反射膜に対して前記形成予定領域の内側方向へ傾く方向から照射されることが好ましい。
【0015】
本発明の他の態様は、基板と、前記基板の表面に積層された露光光を反射する反射膜と、を有し、前記反射膜に断面凹溝形状の基準マークが形成された反射型マスクブランクであって、前記基準マークの溝底部領域の周縁に沿って前記基板に向けて凹む輪郭溝部が形成されていることを特徴とする。
【0016】
本発明の他の態様は、基板と、前記基板の表面に積層された露光光を反射する反射膜と、前記反射膜の表面に積層された前記露光光を吸収する吸収層と、を有し、前記反射膜に断面凹溝形状の基準マークを形成する集束イオンビーム加工装置であって、前記基準マークの形成予定領域の輪郭に沿って加工を行うための小電流集束イオンビームの照射と、前記形成予定領域の全域の加工を行うための大電流集束イオンビームの照射と、が選択可能であることを特徴とする。
【0017】
上記態様としては、前記小電流集束イオンビームが、前記反射膜に対して前記形成予定領域の内側方向へ傾く方向から照射されるように、前記基板の前記小電流集束イオンビームに対する傾斜角度を相対的に変更させる傾斜角度調整部を備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基準マークの加工時間を短縮でき、しかも基準マークのエッジ検出精度を向上させる、反射型マスクブランクの製造方法、反射型マスクブランク、および集束イオンビーム加工装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の実施の形態に係る集束イオンビーム加工装置の概略構成を示す説明図である。
図2図2は、本発明の実施の形態に係る反射型マスクブランクにおける吸収層を形成する前の状態を示す平面図である。
図3図3は、本発明の実施の形態に係る反射型マスクブランクにおける吸収層を形成した後の状態を示す平面図である。
図4-1】図4-1は、本発明の第1の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法を示し、反射膜における基準マークの形成予定領域の輪郭部に沿って輪郭加工工程を施した後の断面プロファイルを示す図である。
図4-2】図4-2は、本発明の第1の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法を示し、輪郭加工工程の後に、全域加工工程を行った後の断面プロファイルを示す図である。
図5図5は、図2のV-V断面図である。
図6図6は、本発明の第1の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法における輪郭加工工程を示す平面説明図である。
図7図7は、本発明の第1の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法における全域加工工程を示す平面説明図である。
図8図8は、本発明の第1の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法のフローチャートである。
図9-1】図9-1は、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法において、全域加工工程で用いる大電流集束イオンビームのビームプロファイルを示す図である。
図9-2】図9-2は、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法において、反射膜に全域加工した後の断面プロファイルを示す図である。
図10-1】図10-1は、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法における輪郭加工工程で用いる小電流集束イオンビームのビームプロファイルを示す図である。
図10-2】図10-2は、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法において、反射膜に全域加工した後に、輪郭加工を行った後の断面プロファイルを示す図である。
図11図11は、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法のフローチャートである。
図12-1】図12-1は、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法の実施例1および実施例2における全域加工工程に用いる大電流集束イオンビームのビームプロファイルを示す図である。
図12-2】図12-2は、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法の実施例1および実施例2において、反射膜に全域加工した後の断面プロファイルを示す図である。
図13-1】図13-1は、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法の実施例1において、輪郭加工工程に用いる小電流集束イオンビームのビームプロファイルを示す図である。
図13-2】図13-2は、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法の実施例1において、輪郭加工した後の断面プロファイルを示す図である。
図14-1】図14-1は、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法の実施例2において、輪郭加工工程に用いる小電流集束イオンビームのビームプロファイルを示す図である。
図14-2】図14-2は、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法の実施例2において、輪郭加工した後の断面プロファイルを示す図である。
図15-1】図15-1は、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法の実施例3において、全域加工工程後の断面プロファイルを示す図である。
図15-2】図15-2は、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法の実施例3において、基準マークの形成予定領域の輪郭部(左側エッジ)に沿って輪郭加工を行った後の断面プロファイルを示す図である。
図15-3】図15-3は、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法の実施例4において、基準マークの形成予定領域の輪郭部(左側エッジ)から+0.1μmずらして輪郭加工を行った後の断面プロファイルを示す図である。
図15-4】図15-4は、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法の実施例5において、基準マークの形成予定領域の輪郭部(左側エッジ)から-0.1μmずらして輪郭加工を行った後の断面プロファイルを示す図である。
図16図16は、本発明の第3の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法を示し、基板を水平面に対して角度θだけ傾斜させた状態を示す斜視図である。
図17図17は、本発明の第3の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法における輪郭加工工程を示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施の形態に係る、反射型マスクブランク、反射型マスクブランクの製造方法、および集束イオンビーム加工装置の詳細を図面に基づいて説明する。但し、図面は模式的なものであり、各部材の数、各部材の寸法、寸法の比率、形状などは現実のものと異なることに留意すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率や形状が異なる部分が含まれている。まず、反射型マスクブランクおよび反射型マスクブランクの製造方法の説明に先駆けて、反射型マスクブランクの製造に用いる集束イオンビーム加工装置について説明する。
【0021】
[集束イオンビーム加工装置]
図1に示すように、本実施の形態に係る集束イオンビーム加工装置1は、集束イオンビームカラム(以下、FIBカラムという)2と、搬送ステージ3と、昇降駆動部4と、傾斜角度調整部5と、制御部6と、を備える。また、この集束イオンビーム加工装置1は、イオンビームによるビーム加工により除去された粒子を装置外へ排出するための図示しない排気部を備える。
【0022】
搬送ステージ3は、反射膜積層基板7Aを載せた状態で支持するようになっている。図1に示すように、反射膜積層基板7Aは、本発明おける基板としてのガラス基板8の表面に反射膜9が成膜されている。反射膜9は、共に図示しない、低屈折率層としてのMo層と、高屈折率層としてのSi層と、が交互に繰り返し積層された多層膜構造である。この反射膜9は、露光光であるEUV光を反射させる。
【0023】
搬送ステージ3は、図示しないX-Y搬送機構が制御部6により制御されることにより反射膜積層基板7AをX-Y方向に移動できるように設定されている。傾斜角度調整部5は、制御部6からの制御信号に基づいて搬送ステージ3の傾きを自在に変更、調整できる。昇降駆動部4は、搬送ステージ3側に設けられ、例えば傾斜角度調整部5の下に配置されている。この昇降駆動部4は、制御部6に接続され、制御部6からの制御信号に基づいて搬送ステージ3を上下方向(Z方向)に昇降駆動する。
【0024】
FIBカラム2は、下端部に開口部10Aが形成された鏡筒10と、鏡筒10内に内蔵された集束イオンビーム光学系11と、を備える。FIBカラム2の下端部からは、開口部10Aを通ってイオンビームIbが反射膜積層基板7Aへ向けて出射される。
【0025】
集束イオンビーム光学系11は、イオンビームIbを発生させるイオン源12と、発生したイオンビームIbを集束させるコンデンサレンズ13と、イオンビームIbを走査する偏向器14と、イオンビームIbを集束させる対物静電レンズ15と、絞り16と、を備える。イオン源12としては、主にガリウム(Ga)イオン源を用いるが、アルゴン(Ar)などの希ガスを誘導結合プラズマ(ICP)化したり、ガス電界イオン化したり、希ガスイオン源を用いたりすることも可能である。イオンビームIbのレンズとしては、電界レンズを用いることが好ましい。
【0026】
制御部6は、マイクロコンピュータを含んで構成されたもので、予め記憶したプログラムならびに図示しない操作部からの操作信号などに基づいて制御を行う。この制御部6では、上述の昇降駆動部4および傾斜角度調整部5の制御のほかに、イオン源12、コンデンサレンズ13、偏向器14、対物静電レンズ15、絞り16などに制御信号を出力する。その結果、制御部6は、イオンビームIbの出力およびビーム径の調整を行い、小電流集束イオンビームIb1と、大電流の集束イオンビームIb2と、に切り替える制御を行うように設定されている。ここで、小電流集束イオンビームIb1や大電流集束イオンビームIb2における「電流」とは、FIB法を実施する際のプローブ電流であり、照射電流と同じ意味をもつ。小電流集束イオンビームIb1としては、10~30pAの電流値が適用可能であり、大電流集束イオンビームIb2としては、100~1000pAの電流値が適用可能である。
【0027】
本実施の形態に係る集束イオンビーム加工装置1は、図2に示すような、例えば、反射膜積層基板7Aの四隅の反射膜9の上に、平面形状が十字形状で、断面形状が凹溝形状の基準マーク20を形成することができる。
【0028】
(集束イオンビーム加工装置の動作)
この集束イオンビーム加工装置1において、小電流集束イオンビームIb1は、基準マーク20の輪郭に沿って設定された軌道20B(図6参照)に沿って間欠的にまたは連続的に照射されるように設定されている。この小電流集束イオンビームIb1のビーム強度は反射膜9の構成材料に応じて適宜設定するが、大電流集束イオンビームIb2よりも小さく設定されている。小電流集束イオンビームIb1のビーム径は、大電流集束イオンビームIb2よりも小さく設定されている。小電流集束イオンビームIb1のビーム径は、基準マーク20の大きさに応じて決定する。
【0029】
この集束イオンビーム加工装置1において、大電流集束イオンビームIb2は、基準マーク20を決定する形成予定領域20A(図7参照)の全体に亘って間欠的にまたは連続的に照射されるように設定されている。この大電流集束イオンビームIb2は、小電流集束イオンビームIb1よりも反射膜9を削る速度が速い。この大電流集束イオンビームIb2のビーム径は、基準マーク20の大きさに応じて加工効率の良い径寸法に設定されている。これら小電流集束イオンビームIb1および大電流集束イオンビームIb2のビーム径は、偏向器14、静電対物レンズ15、絞り16などを制御部6で制御することにより決定される。
【0030】
(集束イオンビーム加工装置の作用・効果)
本実施の形態に係る集束イオンビーム加工装置1を用いて、小電流集束イオンビームIb1と大電流集束イオンビームIb2とで上記のビーム加工を行うことにより、例えば、図5に示すような断面凹溝形状の基準マーク20を形成することができる。
【0031】
図5に示すように、基準マーク20の輪郭に沿った軌道20B(図6参照)に沿ってガラス基板8に向けて凹む輪郭溝部22が形成される。この輪郭溝部22の断面形状は、小電流集束イオンビームIb1の作用により影響を受けるが、小電流集束イオンビームIb1の照射を行う輪郭加工工程と、大電流の集束イオンビームIb2の照射を行う全域加工工程と、のいずれを先に行うかによって異なった形状となる。また、基準マーク20の形成予定領域20A(図7参照)の全域に亘る大電流集束イオンビームIb2の照射により、溝底部領域21の形状が決定される。この溝底部領域21は、輪郭溝部22よりも上に向けて盛り上がった形状に加工されるため、この溝底部領域21の周縁に形成される輪郭溝部22の外側に位置する側壁23と、溝底部領域21と、の境界が鮮明になる。このため、本実施の形態に係る集束イオンビーム加工装置1によれば、基準マーク20の位置検出の精度を高めることができる。
【0032】
また、小電流集束イオンビームIb1を輪郭に沿った軌道20B上に照射することにより、図5に示す側壁23の立ち上がり角度を大きくすることができるため、基準マーク20全体の深さが浅くても、基準マーク20の検出を容易にすることができる。このため、本実施の形態に係る集束イオンビーム加工装置1によれば、基準マーク20の加工時間を短縮でき、しかも基準マーク20のエッジ検出精度を向上させることができる。
【0033】
図3は、この集束イオンビーム加工装置1を用いて反射膜積層基板7Aに基準マーク20を加工してなる反射型マスクブランク7の上に、吸収層17が成膜された状態を示す。吸収層17は、露光光としてのEUV光を吸収する材料膜からなり、例えば、酸化Ta/窒化Taなどを用いることができる。
【0034】
なお、本実施の形態では、基準マーク20が露呈するように吸収層17が反射膜積層基板7Aの周縁部を覆わないように形成したが、吸収層17で反射膜積層基板7Aの全面を覆うように構成してもよい。その場合は、吸収層17のパターニングの際に、基準マーク20の上の吸収層17を除去して露呈させて用いればよい。
【0035】
なお、吸収層17で反射膜積層基板7Aの全面を覆うように構成しても、吸収層17に基準マーク20が転写されているときは、転写されたマークを位置決めの基準として用いてもよい。
【0036】
上述のように、基準マーク20のエッジ検出精度を高めたことにより、反射膜9の欠陥検出工程において、欠陥位置の位置座標を精度よく把握できる。このため、吸収層17のパターニング工程において欠陥箇所を吸収層17のパターンで覆う補正(欠陥緩和)を精度よく行うことができる。したがって、本実施の形態に係る集束イオンビーム加工装置1によれば、反射型マスクブランク7の歩留まりを高める効果がある。
【0037】
[反射型マスクブランクの製造方法]
以下の反射型マスクブランクの製造方法の説明においては、上述した集束イオンビーム加工装置1を用いて説明するが、集束イオンビームの照射手段としては、この集束イオンビーム加工装置1の構成に限定されるものではない。
【0038】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法について、図8に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0039】
まず、本実施の形態の反射型マスクブランクの製造方法では、図1に示すように、全面に反射膜9が形成された反射膜積層基板7Aを搬送ステージ3の上に載せる(ステップS1)。
【0040】
次に、反射膜9の周縁部における基準マーク20の形成予定領域20A(図7参照)の照射位置がFIBカラム2の下方に位置するように反射膜積層基板7Aを移動、調整する(ステップS2)。なお、本実施の形態では、FIBカラム2の下方の照射位置に、基準マーク20の輪郭に沿うように輪郭上または輪郭の近傍に設定された軌道20B(図6参照)に照射開始位置が配置されるようにする。
【0041】
その後、軌道20Bに沿って、間欠的または連続的に小電流集束イオンビームIb1を照射する輪郭加工工程を行う(ステップS3)。なお、本実施の形態では、軌道20Bに沿って、所定間隔を隔てた位置毎に、それぞれ10回の小電流集束イオンビームIb1の照射を行い、軌道20Bを1周する輪郭加工を行う。
【0042】
図4-1は、反射膜9に上記の輪郭加工を行った後の断面プロファイルを示しており、横軸が座標X(μm)であり、縦軸が深さである。図4-1では、縦軸において0.0の状態(処理前の状態)と、輪郭加工を行って輪郭部分が削られた状態と、を示している。
【0043】
次に、図7に示すように、大電流集束イオンビームIb2を基準マーク20の形成予定領域20Aの全域に亘って所定間隔毎に8回のビーム照射を行う全域加工工程を行って、図4-2に示すような断面プロファイルを有する基準マーク20を形成する(ステップS4)。図4-2に示した断面プロファイルは、例えば図5に示す断面形状と同様または類似する形状になる。図4-2においては、図5に示した同様の箇所には、同一の符号を付している。すなわち、本実施の形態においても、基準マーク20の溝底部領域21と、輪郭溝部22と、側壁23と、が形成される。
【0044】
本実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法においても、ガラス基板8に向けて凹む輪郭溝部22が形成される。この輪郭溝部22の断面形状は、最初に行った小電流集束イオンビームIb1を用いた輪郭加工の作用により決定されている。このように最初に行われた輪郭加工工程での断面形状が、全域に亘る大電流集束イオンビームIb2の全域加工工程による断面形状に影響を与え、輪郭溝部22が溝底部領域21よりも深く尖端状に掘り下げられた形状となる。
【0045】
したがって、この溝底部領域21の周縁に形成される輪郭溝部22の外側に位置する側壁23と、溝底部領域21と、の境界が鮮明になる。このため、本実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法によれば、エッジ検出精度の高い基準マーク20を有する反射膜積層基板7Aを実現できる。
【0046】
本実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法では、最初に輪郭加工工程を行うことにより、輪郭溝部22が形成されるべき座標位置を決定しておくことができる。また、本実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法では、小電流集束イオンビームIb1を輪郭に沿った軌道20B上に照射しておくことにより、側壁23の立ち上がり角度を大きくすることができる。このため、基準マーク20全体の深さが浅くても、基準マーク20の検出を容易にすることができる。
【0047】
したがって、本実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法によれば、基準マーク20の加工時間を短縮でき、しかも基準マーク20のエッジ検出精度の高い反射膜積層基板7Aを提供することができる。
【0048】
なお、図3に示すように、上記の集束イオンビーム加工装置1で作製した反射膜積層基板7Aのように、基準マーク20が露呈するように吸収層17が反射膜積層基板7Aの周縁部を覆わないように形成してもよいし、吸収層17で反射膜積層基板7Aの全面を覆うように構成してもよい。
【0049】
上述の第1の実施の形態においては、輪郭加工工程および全域加工工程に行う集束イオンビームIb1,Ib2の照射回数は、適宜変更が可能であり、数万回の照射も極短時間で行えるため、側壁23の立ち上がり角度が大きく、エッジ精度の高い基準マーク20を迅速に形成できるという効果がある。
【0050】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法について、図11に示すフローチャートを用いて説明する。
【0051】
まず、本実施の形態の反射型マスクブランクの製造方法では、図1に示すように、全面に反射膜9が形成された反射膜積層基板7Aを搬送ステージ3の上に載せる(ステップS11)。
【0052】
次に、反射膜9の周縁部における基準マーク20の形成予定領域20A(図7参照)がFIBカラム2の下方の照射位置に位置するように反射膜積層基板7Aを移動、調整する(ステップS12)。
【0053】
次に、図7に示すように、大電流集束イオンビームIb2を基準マーク20の形成予定領域20Aの全域に亘って所定間隔毎に8回のビーム照射を行う全域加工工程を行う(ステップS13)。図9-1は、大電流集束イオンビームIb2のビームプロファイルを示す図であり、横軸が座標X(μm)、縦軸がビーム強度(任意単位)である。図9-2は、全域加工により基準マーク20の形成予定領域20Aが全体的に削られた状態を示している。図9-2に示すように、このときの側壁の立ち上がり角度θ1は、11.8度であった。
【0054】
上記側壁の立ち上がり角度θ1の求め方は、反射膜積層基板7Aを、基準マーク20を形成した箇所で側壁に直交する方向に切断し、走査型電子顕微鏡(SEM)にて断面像を撮影した画像を分析することにより得られる。
【0055】
その後、基準マーク20の形成予定領域20Aの輪郭に沿うように輪郭上または輪郭の近傍に設定された軌道20B(図6参照)に沿って、間欠的または連続的に小電流集束イオンビームIb1を照射する輪郭加工工程を行う(ステップS14)。なお、本実施の形態では、図10-2に示すように、小電流集束イオンビームIb1を照射させる領域は、mで示す幅を有する範囲であり、この範囲内を小電流集束イオンビームIb1で間欠的または連続的に照射を行った。なお、本実施の形態では、照射を行う各位置では、それぞれ10回の小電流集束イオンビームIb1の照射を行っている。図10-1は、この小電流集束イオンビームIb1のビームプロファイルを示している。この小電流集束イオンビームIb1は、ビーム強度が大電流集束イオンビームIb2の半分程度であり、ビーム径も半分程度に設定されている。なお、これら小電流集束イオンビームIb1および大電流集束イオンビームIb2のビームプロファイルは、形成する基準マーク20の大きさ、深さ、反射膜9の材料、膜構造などに依って適宜調整される。
【0056】
図10-2は、反射膜9に上記の輪郭加工を行った後の断面プロファイルを示している。図10-2に示した断面プロファイルは、例えば図5に示す断面形状と同様または類似する形状になる。すなわち、本実施の形態においても、図5に示す基準マーク20の溝底部領域21と、輪郭溝部22と、側壁23と、に類似する形状が形成される。
【0057】
本実施の形態では、図10-2に示す側壁の立ち上がり角度θ2が19.15度となり、単に大電流集束イオンビームIb2で全域加工したときの側壁の立ち上がり角度θ1に比べて大きい角度にすることができる。したがって、本実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法においても、深く尖端状に掘り下げられた凹部を輪郭に沿って形成できるため、位置検出精度の高い基準マーク20を有する反射膜積層基板7Aを実現できる。以上のステップS14を行うことにより、基準マーク20が形成された反射膜積層基板7Aの製造が終了する。
【0058】
本実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法では、全域加工工程の後に、輪郭加工工程を行うことで、側壁23の立ち上がり角度を大きくしている。特に、基準マーク20全体の深さが浅くても、輪郭加工工程を経ることにより、基準マーク20の検出を容易にすることができる。したがって、本実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法によれば、基準マーク20の加工時間を短縮でき、しかも基準マーク20のエッジ検出精度の高い反射膜積層基板7Aを提供することができる。
【0059】
本実施の形態においても、図3に示すように、基準マーク20が露呈するように吸収層17が反射膜積層基板7Aの周縁部を覆わないように形成してもよいし、吸収層17で反射膜積層基板7Aの全面を覆うように構成してもよい。
【0060】
(実施例1)
次に、図12-1、図12-2、図13-1、および図13-2を用いて、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法の実施例1について説明する。まず、本実施例1では、反射膜9に対して、全域加工工程を行う。ここで、大電流集束イオンビームのビームプロファイルは、図12-1に示す。図7に示すように、大電流集束イオンビームIb2を基準マーク20の形成予定領域20Aの全域に亘って所定間隔毎に2回のビーム照射を行う全域加工工程を行った。図12-2は、全域加工により基準マーク20の形成予定領域20Aが全体的に削られた状態を示している。このときの図12-2に示す側壁の立ち上がり角度θ3は、わずか2.85度であった。
【0061】
次に、図13-1に示すようなビームプロファイルの小電流集束イオンビームIb1を用いて輪郭加工工程を行った。本実施例では、図13-2に示すように、全域加工工程で形成された凹部の一端側の反射膜9の表面(座標10μm)から凹部の一端近傍(座標18μm)までの領域に、輪郭加工を30回の照射で行って彫り進んだ。この結果、図13-2に示すように、P1で示す位置(座標8μm)から座標21μmまでの範囲で輪郭加工の影響を受ける。図13-2に示す一端側の側壁の立ち上がり角度θ4は、18.84度であった。なお、輪郭加工が20回の照射では、立ち上がり角度が、12.86度であり、輪郭加工が10回の照射では、立ち上がり角度が、6.54度であった。
【0062】
(実施例2)
次に、図12-1、図12-2、図14-1、および図14-2を用いて、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法の実施例2について説明する。まず、実施例2では、上記実施例1と同様に、反射膜9に対して、全域加工工程を行う。大電流集束イオンビームのビームプロファイルと全域加工した後の断面プロファイルは、図12-1および図12-2に示す通りである。
【0063】
次に、図14-1に示すようなビームプロファイルの小電流集束イオンビームIb1を用いて輪郭加工工程を行った。本実施例では、図14-2に示すように、全域加工工程で形成された凹部内の側壁(座標10μm、一端の近傍)から凹部の内部(座標18μm)までの領域に、輪郭加工を30回の照射で行って彫り進んだ。この結果、図14-2に示すように、P2で示す位置(座標7μm)から座標21μmまでの範囲で輪郭加工の影響を受ける。図14-2に示す一端側の側壁の立ち上がり角度θ5は、21.31度であった。なお、輪郭加工が20回の照射では、立ち上がり角度が、15.51度であり、輪郭加工が10回の照射では、立ち上がり角度が、9.32度であった。
【0064】
(実施例3)
次に、図15-1および図15-2を用いて、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法の実施例3について説明する。実施例3では、図15-1に示すように、先ず全域加工工程を8回の照射で行った。その後、図15-2に示すように、輪郭加工工程を10回の照射で行った。この輪郭加工工程では、小電流集束イオンビームIb1を形成された凹部の一端から輪郭加工が及ぶ領域(座標7~13μm)に照射した。このように、輪郭加工工程を10回の照射で行うことにより、側壁が急峻に立ち上がるように形成できた。
【0065】
(実施例4)
図15-3は、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法の実施例4を示す。本実施例では、基準マーク20の形成予定領域20Aの左側の輪郭(エッジ)から+0.1μmずらして輪郭加工を10回の小電流集束イオンビームIb1の照射で行った。この実施例4での全域加工工程は、上記実施例3と同様である。この結果、図15-3に示すように、輪郭部に加工された側壁の立ち上がり角度を大きくすることができた。
【0066】
(実施例5)
図15-4は、本発明の第2の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法の実施例5を示す。本実施例では、基準マーク20の形成予定領域20Aの左側の輪郭(エッジ)から-0.1μmずらして輪郭加工を10回の小電流集束イオンビームIb1の照射で行った。この実施例5での全域加工工程は、上記実施例3と同様である。
【0067】
この結果、図15-4に示すように、輪郭部に加工された側壁の立ち上がり角度を大きくすることができたが、図5に示した輪郭溝部22のような断面形状が得られなかった。このため、本実施例5では、輪郭加工における小電流集束イオンビームIb1の照射回数を増加させることにより、輪郭溝部22のような断面形状が得られると考えられる。
【0068】
上記した第2の実施の形態においても、全域加工工程および輪郭加工工程に行う集束イオンビームIb1,Ib2の照射回数は、適宜変更が可能であり、数万回の照射も極短時間で行えるため、側壁23の立ち上がり角度が大きく、エッジ検出精度の高い基準マーク20を迅速に形成できるという効果がある。
【0069】
(第3の実施の形態)
図16および図17は、本発明の第3の実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法を示す。本実施の形態では、図16に示すように、反射膜積層基板7Aを小電流集束イオンビームIb1に対して傾けた状態で輪郭加工工程を行う。
【0070】
まず、本実施の形態では、反射膜積層基板7Aを水平に置いた状態で、鉛直方向から大電流集束イオンビームIb2を照射して基準マーク20の形成予定領域20Aの全体に凹部を加工しておく。
【0071】
次に、制御部6により、傾斜角度調整部5を駆動制御して搬送ステージの傾斜を調整して、反射膜積層基板7Aの表面である反射膜9の表面9Aを水平面に対してθだけ傾けた状態となるようにする。この結果、図17に示すように、小電流集束イオンビームIb1が、反射膜9に対して形成予定領域20Aの内側方向へ傾く方向から照射されるようになる。
【0072】
このように小電流集束イオンビームIb1と反射膜9とが相対的に傾いた状態で輪郭加工を行うことにより、基準マーク20の側壁の立ち上がり角度を直角に近づけることが可能となる。したがって、全域加工工程の時間を短縮して凹部の深さが浅くなっても、側壁の立ち上がり角度が大きくできるため、基準マーク20の検出精度を高めることができる。
【0073】
なお、本実施の形態に係る反射型マスクブランクの製造方法では、輪郭加工工程のみにおいて斜め方向からの小電流集束イオンビームIb1の照射を行ったが、図16に示すように、大電流集束イオンビームIb2を用いた全域加工工程においても斜め方向からの照射を行ってもよい。
【0074】
(その他の実施の形態)
以上、本発明の実施の形態について説明したが、実施の形態の開示の一部をなす論述および図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。本発明は、付随する様々な実施例や代替手段を包含している。
【0075】
例えば、上記の各実施の形態および実施例では、反射型マスクブランクとして、反射膜積層基板7Aの上に吸収層17を成膜するが、反射膜9の上に保護膜を形成してもよい。この場合は、保護膜および反射膜9に対して、本発明を適用して基準マーク20を形成してもよい。
【0076】
また、上記の各実施の形態および実施例では、基準マーク20を反射膜積層基板7Aの四隅に形成したがこれに限定されるものではなく、また基準マーク20の形状も十字形状に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0077】
1 集束イオンビーム加工装置
2 集束イオンビームカラム(FIBカラム)
3 搬送ステージ
4 昇降駆動部
5 傾斜角度調整部
6 制御部
7 反射型マスクブランク
7A 反射膜積層基板
8 ガラス基板
9 反射膜
10 鏡筒
10A 開口部
11 集束イオンビーム光学系
12 イオン源
13 コンデンサレンズ
14 偏向器
15 対物静電レンズ
16 絞り
17 吸収層
20 基準マーク
20A 形成予定領域
20B 軌道
21 溝底部領域
22 輪郭溝部
23 側壁
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図10-1】
図10-2】
図11
図12-1】
図12-2】
図13-1】
図13-2】
図14-1】
図14-2】
図15-1】
図15-2】
図15-3】
図15-4】
図16
図17