(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160544
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】車両用アクティブサスペンション装置
(51)【国際特許分類】
B60G 17/015 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
B60G17/015 B
B60G17/015 A
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070976
(22)【出願日】2022-04-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】715000027
【氏名又は名称】井尻 正裕
(72)【発明者】
【氏名】井尻 正裕
【テーマコード(参考)】
3D301
【Fターム(参考)】
3D301AA03
3D301AA04
3D301AA05
3D301AA48
3D301CA01
3D301DA08
3D301DA27
3D301DA33
3D301EA04
3D301EA05
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3D301EA43
3D301EA52
3D301EA82
3D301EB09
3D301EB23
3D301EB34
3D301EB37
3D301EC01
3D301EC05
3D301EC53
(57)【要約】
【課題】従来のアクティブサスペンションは、車高制御の油圧用に、油圧ポンプ、複雑な油圧配管が必要で、コストアップと油圧ポンプを駆動するエネルギ消費の問題があり、従来の減衰力を制御するセミアクティブサスペンションは、減衰力を制御する特殊な構造の制御機構が必要である。
【解決手段】ショックアブソーバのロッドの伸縮による油量変動を吸収するアキュムレータを分離し、ショックアブソーバの上に電磁弁を備えた連結カバを介してアクチュエータおよび/またはアキュムレータを連結し、前記連結カバを油圧マニホールドブロックとして全ての油圧回路を集約形成して管状の油圧配管を不要とし、各車軸で油圧回路を簡素な構造に完結する。作用は、走行中の振動により伸縮するショックアブソーバのロッドの伸縮で発生する油圧を利用するので、油圧ポンプもその駆動エネルギ消費も不要である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ショックアブソーバとばねで構成するサスペンションをアクチュエータ(例えば、油圧シリンダ)で車高を制御する出力手段を各車軸に設けたアクティブサスペンションにおいて、
前記ショックアブソーバのロッドの往復動による油量調整のアキュムレータを分離し、
前記ショックアブソーバと前記アクチュエータを連結する連結カバと、
前記アキュムレータに連通するアキュムレータ連通管と、
前記ショックアブソーバと逆止弁を介して順方向と逆方向に連通するショックアブソーバ連通管と、
前記アクチュエータに連通するアクチュエータ連通管と、
前記すべての連通管を開閉制御する電磁弁とで構成する出力手段を各車軸に設け、前記アクティブサスペンションの制御装置にて前記電磁弁を制御して、前記各車軸の車高を制御することを特徴とする車両用アクティブサスペンション装置。
【請求項2】
前記電磁弁を前記連結カバに設置し、前記ショックアブソーバ連通管と、前記アクチュエータ連通管と、前記アキュムレータ連通管とを前記連結カバの内部に形成することを特徴とする請求項1に記載の車両用アクティブサスペンション装置。
【請求項3】
各車軸の前記電磁弁の両方のコイル(またはピエゾ素子)を並列に配線し、前記配線に設けたダイオードにより、前記配線の一方に正圧を印加した場合には、一方のコイルのみが作動し、前記配線の他方に正圧を印加した場合には、他方のコイルのみが作動する回路とし、前記配線に印加する電圧の正圧と負圧を切り替えて前記電磁弁を制御することを特徴とする請求項1または2に記載の車両用アクティブサスペンション装置。
【請求項4】
各車軸の前記アクティブサスペンションの前記電磁弁の、車高上昇用のコイル(U)の励磁時に、前記ばねの伸長時は励磁を停止し、車高下降用のコイル(Ⅾ)の励磁時に、前記ばねの圧縮時は励磁を停止することを特徴とする請求項1~3に記載の請求項の車両用アクティブサスペンション装置。
【請求項5】
ショックアブソーバとばねで構成するサスペンションの減衰力を変化させるセミアクティブサスペンションにおいて、
前記ショックアブソーバのロッドの往復動による油量調整のアキュムレータを分離し、
前記ショックアブソーバの上に設けた前記アキュムレータを連結する連結カバと、
前記ショックアブソーバと前記アキュムレータに連通するアキュムレータ連通管と、
前記ショックアブソーバの上部と下部を、直接または逆止弁を介して連通するバイパスと、
前記バイパスを開閉制御および/または流量制御する電磁弁と、で構成するセミアクティブサスペンションを各車軸に設け、前記セミアクティブサスペンションの制御装置にて前記電磁弁を制御し、前記ショックアブソーバの減衰力を制御することを特徴とする車両用アクティブサスペンション装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両のショックアブソーバの上に連結カバを備え、車高制御用アクチュエータの油圧動力源をショックアブソーバとする、アクティブサスペンション装置及び、ショックアブソーバの減衰力を電磁弁で制御するパッシブ要素のセミアクティブサスペンション装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ばねとショックアブソーバで構成されるサスペンションは自動車の各車軸に設けられ、地面の凹凸などからの衝撃、加減速、コーナリングなどにより変動する各車軸に掛かる車重や慣性力等の作用力をばねが受け止め、作用力の変動等により発生する振動をショックアブソーバで減衰する。
振動を減衰するショックアブソーバは、弁が付いたピストンがロッドによりシリンダ内を往復動し、この時の動圧抵抗により衝撃エネルギを熱エネルギに変換する。
ショックアブソーバのシリンダ構造には、二重シリンダの間に設けたリザーバ室を有する複筒式と、フリーピストンにより分離されたガス室(高圧窒素ガス)を有する単筒式とがある。
ショックアブソーバ本体にピストンのロッドが沈み込み、ロッドの体積膨張分だけの作動油は、アキュムレータである前記リザーバ室またはガス室の圧縮ガスが収縮する。
本発明は、アクチュエータによる車高制御を行うフルアクティブサスペンションと、時々刻々と変化する路面からの入力に対してリアルタイムに減衰力 を制御する、セミアクティブサスペンションである。
【0003】
自転車やオートバイは、カーブ走行時に発生する横方向に働く遠心力に釣り合わせるために、旋回内側に車体を傾けて遠心力と重力の合力に適応する体勢が可能である。
体勢を傾けられない、自動車や船(タンカー等を除く)等は、接触面である地面あるいは海面より重心が上にあるので、カーブ走行時に遠心力により体勢が旋回外側に傾くので、本来好ましい旋回内側とは逆の方向に体勢が傾くので、乗員の姿勢の維持が困難になり、乗り物酔い等の不都合が生ずる。
これらの問題点を解決するために、自動車では車高調整を油圧で制御するアクティブサスペンションがあるが、油圧ポンプ、電磁弁、油圧配管等の油圧機器と電気制御が必要となるので、コストアップの問題と、油圧ポンプを駆動するエネルギ消費の問題がある。
具体的には、多くのアクティブサスペンションは、油圧ポンプで発生した油圧を電磁弁で制御することにより、油圧シリンダをアクチュエータとして車高制御を行うので、油圧ポンプが1基の場合は、各車軸まで吐出用と戻り用の複雑で長い油圧配管が必要となる。
また、各車軸に油圧ポンプを設ける場合は、電気配線を伴う4基の油圧ポンプが必要となるので、両者とも、油圧ポンプと複雑な油圧配管等によるコストアップの問題がある。
更に、車高制御の油圧は、制御中は常に作り続けなくてはならず、油圧ポンプを回すモータ等の動力源と、車重により増減するが油圧ポンプを回す数kW程度のエネルギ消費を伴い、特に小型車には燃費を悪化させる大きな問題となる。
従って、現状ではアクティブサスペンションは、一部の高級車に搭載されている程度で、小型車には搭載されない。
【0004】
アクティブサスペンションの従来技術として、電気-油圧弁2による油圧シリンダ4、ピストン5への油圧制御によりレベル制御を行い、油圧­-空気圧蓄圧器28を介した油圧圧力の制御により、管状フランジ8と動作室シリンダハウジング9の緩衝支柱の高さを変更する能動振動減衰方法及び装置(特許文献1)がある。
管状フランジ8と動作室シリンダハウジング9の緩衝支柱の高さを油圧で変更するので、油圧ポンプと油圧配管が必要で、コストアップの問題点と油圧ポンプの駆動のエネルギ消費の問題点がある。
【0005】
インナシリンダ2と、これに摺動可能に嵌合しこれと共働して第一及び第二の油室8、10を郭定するピストン6と、第一の油室8に第一の管路30を介して連通する第一の副油室20と第一の副油室20に第一のフリーピストン18を介して隣接する第一のガス室22とからなる流体ばね室と、第一の油室8に第二の管路32を介して連通接続する第二の副油室28と第二の副油室28に第二のフリーピストン24を介して隣接する第二のガス室26とからなるリザーバ室と、第二の管路32の途中に配置されモータ36により駆動される油圧ポンプ34を含むアクティブサスペンションユニットが車輌の各車輪に独立に設けられるよう構成されるアクティブサスペンションユニット(特許文献2)がある。
油圧ポンプは対応する一つの油圧シリンダに対してのみ送油するので四つのシリンダに対して送油する従来のポンプに比して低キャパシティにて効率的に作動する。又、配管が単純で短いので送油の際の油の圧損が小さいが、油圧ユニット(油圧ポンプ34とモータ36)が4組必要であり、コストアップの問題点と油圧ポンプの駆動のエネルギ消費の問題点がある。
【0006】
ドライバDRの出力により油圧ポンプPを介して伸縮制御される油圧シリンダ100を上下室A,Bに区画された複動型に構成し、同じくドライバの出力により吐出方向と起動と停止を制御される油圧ポンプを正逆転両用型として構成し、上記制御弁を油圧シリンダの上下室からタンクTへの還流通路中に設けた一対の電磁比例圧力制御弁7,8で構成し、上記ドライバと、油圧ポンプと、油圧シリンダと、電磁比例圧力制御弁とを各車輪に独立して配設し、上記電磁比例圧力制御弁は油圧シリンダの上下室の圧力を制御して当該油圧シリンダの伸縮を抑制する制御力を発生させ、更に上記ドライバの出力により制御された油圧ポンプからの吐出油を、チェック弁3,4を介して前記油圧シリンダの上下室のいずれか一方に選択的に供給して車両の姿勢を制御するアクティブサスペンションの制御装置(特許文献3)がある。
長い油圧配管をなくし、しかも必要に応じて間欠的に制御力調整及び姿勢制御を行い、動力損失を低減するアクティブサスペンションの制御装置であるが、正逆転両用型の油圧ポンプと電動機が4組必要であり、コストアップの問題点と油圧ポンプの駆動のエネルギ消費の問題点がある。
【0007】
サスペンションストラットのピストンロッドに油圧アクチュエータを取り付け、この油圧アクチュエータを、パワーステアリング装置のコントロールバルブと接続し、運転者のステアリングホイール操作によるパワーステアリング装置のコントロールバルブの動作に伴って動作するようにし、車両の旋回時に搭乗者のロール感を向上させる前下がりモードのロール挙動を十分な応答性を確保しつつ安価に構成することができ、しかも燃費への影響の無いサスペンション装置(特許文献4)がある。
自動車の挙動には、ローリング、ピッチング、ヨーイングがあり、ハンドル操作に連動するのでコーナリング時のローリングには対応できるが、ピッチング、ヨーイングには対応が困難であり、各車軸の油圧アクチュエータへの往復2本の油圧配管が必要となり、コストアップの問題点がある。
車体のローリング等を低減させるためにショックアブソーバの弾性特性を固めに設定すると、微小変位時の動ばね特性(動的弾性特性)が強すぎるため、車輪から車体への振動伝達の吸収が悪くなるので乗り心地が悪くなる問題点がある。このため、このアクティブサスペンションは、車輪と車体の間に、伸縮を弾性的に許容するオリフィスを備えた減衰力可変式ダンパにより、この伸縮時の弾性を変更するアクティブサスペンション(特許文献5)がある。
減衰力可変式ダンパは、コントローラから出された制御信号により、回転可能な開閉板のオリフィス開度を制御するので、複雑な回転機構が必要で、減衰力の制御構造が異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭54-55913号公報
【特許文献2】特開平6-72126号広報
【特許文献3】特開2000-264034号広報
【特許文献4】特開2003-220814号広報
【特許文献5】実全平01-098713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のアクティブサスペンションは、車高制御を各車軸の油圧アクチェータで行うために油圧ポンプと複雑な油圧配管が必要であり、運転中は油圧ポンプを駆動するエネルギ消費の問題がある。油圧ポンプが一基の場合は、長い往復の油圧配管が必要であり、油圧ポンプを各車軸に設ける場合は、油圧配管は短くなるが複数の油圧ポンプが必要であり、両者ともコストアップ、複雑な油圧配管等の問題がある。
従来のセミアクティブサスペンションは、減衰力を制御する複雑な構造が必要で、信頼性とコストアップの問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1は、ショックアブソーバ2とばね13で構成するサスペンション1をアクチュエータ4(例えば、油圧シリンダ)で車高を制御する出力手段を各車軸に設けたアクティブサスペンションにおいて、前記ショックアブソーバ2のロッド23の往復動による油量調整のアキュムレータ3を分離し、前記ショックアブソーバ2と前記アクチュエータ4を連結する連結カバ16と、前記アキュムレータ3に連通するアキュムレータ連通管56と、前記ショックアブソーバ2と逆止弁52、53を介して順方向と逆方向に連通するショックアブソーバ連通管57と、前記アクチュエータ4に連通するアクチュエータ連通管55と、前記すべての連通管を開閉制御する電磁弁51(例えば、4ポート3位置方向制御弁)とで構成する出力手段を各車軸に設け、前記アクティブサスペンション1の制御装置6にて前記電磁弁51を制御して、前記各車軸の車高を制御する車両用アクティブサスペンション装置である。
【0011】
請求項2は、前記電磁弁51を前記連結カバ16に設置し、前記ショックアブソーバ連通管57と、前記アクチュエータ連通管55と、前記アキュムレータ連通管56とを前記連結カバ16の内部に形成する請求項1に記載の車両用アクティブサスペンション装置である。
【0012】
請求項3は、各車軸の車高を昇降させる前記電磁弁51の両方のコイル(D)、(U)を並列に配線し、前記配線に設けたダイオード517により、前記配線の一方に正圧を印加した場合には、一方のコイルのみが作動し、前記配線の他方に正圧を印加した場合には、他方のコイルのみが作動する回路とし、前記配線に印加する電圧の正圧と負圧を切換えて前記電磁弁51を制御する請求項1または2に記載の車両用アクティブサスペンション装置である。
【0013】
請求項4は、各車軸の前記アクティブサスペンション1の前記電磁弁51の、車高上昇用のコイル(U)の励磁時に、前記ばね13の伸長時は励磁を停止し、車高下降用のコイル(Ⅾ)の励磁時に、前記ばね13の圧縮時は励磁を停止する請求項1~3に記載の車両用アクティブサスペンション装置である。
【0014】
請求項5は、ショックアブソーバP2とばねP13で構成するサスペンションの減衰力を変化させるセミアクティブサスペンションP1において、前記ショックアブソーバP2のロッドP23の往復動による油量調整のアキュムレータP3を分離し、前記ショックアブソーバP2の上に設けた前記アキュムレータP3を連結する連結カバP16と、前記ショックアブソーバP2と前記アキュムレータP3に連通するアキュムレータ連通管P56と、前記ショックアブソーバP2の上部と下部を、直接または逆止弁を介して連通するバイパスP58、P59と、前記バイパスP58、P59を開閉制御および/または流量制御する電磁弁P51と、で構成するセミアクティブサスペンションP1を各車軸に設け、前記セミアクティブサスペンションP1の制御装置P6にて前記電磁弁P51を制御し、前記ショックアブソーバP2の減衰力を制御する車両用アクティブサスペンション装置である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1は、ショックアブソーバ2とばね13で構成するサスペンション1をアクチュエータ4(例えば、油圧シリンダ)で車高を制御する出力手段を各車軸に設けたアクティブサスペンションにおいて、前記ショックアブソーバ2のロッド23の往復動による油量調整のアキュムレータ3を分離し、前記ショックアブソーバ2と前記アクチュエータ4を連結する連結カバ16と、前記アキュムレータ3に連通するアキュムレータ連通管56と、前記ショックアブソーバ2と逆止弁52、53を介して順方向と逆方向に連通するショックアブソーバ連通管57と、前記アクチュエータ4に連通するアクチュエータ連通管55と、前記すべての連通管を開閉制御する電磁弁51(例えば、4ポート3位置方向制御弁)とで構成する出力手段を各車軸に設け、前記アクティブサスペンション1の制御装置6にて前記電磁弁51を制御して、前記各車軸の車高を制御する車両用アクティブサスペンション装置である。
本発明により、車高上昇時にショックアブソーバ2を往復動油圧ポンプとして利用するので油圧ポンプと、油圧ポンプの回転駆動装置が不要となり、油圧回路が各車軸で独立しているので長い油圧配管も不要となるコストダウン効果とメンテナンス性の向上効果と、油圧ポンプを駆動するエネルギ消費の問題が解消される。
【0016】
請求項2は、前記電磁弁51を前記連結カバ16に設置し、前記ショックアブソーバ連通管57と、前記アクチュエータ連通管55と、前記アキュムレータ連通管56とを前記連結カバ16の内部に形成する請求項1に記載の車両用アクティブサスペンション装置である。
前記連結カバを油圧マニホールドブロックとして、油圧制御装置5のすべての油圧回路を集約形成するので、油圧配管が一切不要となるコストダウン効果とメンテナンス性向上の効果がある。
【0017】
請求項3は、各車軸の車高を昇降させる前記電磁弁51の両方のコイル(D)、(U)を並列に配線し、前記配線に設けたダイオード517により、前記配線の一方に正圧を印加した場合には、一方のコイルのみが作動し、前記配線の他方に正圧を印加した場合には、他方のコイルのみが作動する回路とし、前記配線に印加する電圧の正圧と負圧を切換えて前記電磁弁51を制御する請求項1または2に記載の車両用アクティブサスペンション装置である。
アクティブサスペンションは、アクチュエータとショックアブソーバのロッドが揺動可能な連結部にて車体に連結されるので導通が不安定であり、各ロッドはオイルシール等の密封要素により絶縁されるので、ボディアースの場合は、可動ケーブルによるアーシングと前記電磁弁の両方のコイルの正圧配線2本が必要となるので、合計3本の可撓性ケーブルが必要であるが、本発明により2本の可撓性ケーブルとなり、コストダウン効果がある。
【0018】
請求項4は、各車軸の前記アクティブサスペンション1の前記電磁弁51の、車高上昇用のコイル(U)の励磁時に、前記ばね13の伸長時は励磁を停止し、車高下降用のコイル(Ⅾ)の励磁時に、前記ばね13の圧縮時は励磁を停止する請求項1~3に記載の車両用アクティブサスペンション装置である。
前記電磁弁の励磁時間が減少するので、電力消費量を削減できる経済効果がある。
【0019】
請求項5は、ショックアブソーバP2とばねP13で構成するサスペンションの減衰力を変化させるセミアクティブサスペンションP1において、前記ショックアブソーバP2のロッドP23の往復動による油量調整のアキュムレータP3を分離し、前記ショックアブソーバP2の上に前記アキュムレータP3を連結する連結カバP16と、前記ショックアブソーバP2と前記アキュムレータP3に連通するアキュムレータ連通管P56と、前記ショックアブソーバP2の上部と下部を、直接または逆止弁を介して連通するバイパスP58、P59と、前記バイパスP58、P59を開閉制御および/または流量制御する電磁弁P51と、で構成するセミアクティブサスペンションP1を各車軸に設け、前記セミアクティブサスペンションP1の制御装置P6にて前記電磁弁P51を制御し、前記ショックアブソーバP2の減衰力を制御する車両用アクティブサスペンション装置である。
前記電磁弁P51以外に可動部を持たない簡素な構造で、ショックアブソーバP2の減衰力を制御できるので、信頼性が高く低コストにできる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の請求項1のアクティブサスペンションを、単輪モデルとして示す図である。
【
図2】
図1のアクティブサスペンションの概略構成図である。
【
図3】
図2のアクティブサスペンションの、油圧制御装置による車高制御(シフト変位)の説明図である。
【
図4】
図3のアクティブサスペンションの車高制御時の、ばね変位とシフトの説明図である。
【
図5】実施例1の、本発明のアクティブサスペンションの情報処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【
図6】前記実施例1の、右カーブ走行時の車高制御の説明図である。
【
図7】実施例2の、本発明の請求項2対応の概略断面図である。
【
図8】前記実施例2の油圧制御装置5sの、連結カバ16sと電磁弁51sの水平断面図である。
【
図9】
図2の油圧制御装置の、電磁弁を分割した場合の概略構成図である。
【
図10】実施例3の、
図9の油圧回路の一例を示す油圧制御装置の水平断面図である。
【
図11】実施例4の、
図10の電磁弁を上下に配置した一例を示す油圧制御装置の水平断面図である。
【
図12】前記実施例4の、アクティブサスペンションの概略断面図である。
【
図13】実施例5の、アクチュエータを連結カバの下に配置したアクティブサスペンションの概略断面図である。
【
図14】本発明のアクティブサスペンションの、実施形態の一例を示す概略構成図である。
【
図15】本発明のアクティブサスペンションの、制御装置の概略構成図である。
【
図16】請求項3対応の、出力手段の一例を示す制御装置の概略構成図である。
【
図17】請求項4対応のアクティブサスペンションの、ばね変位と電磁弁の電圧印加タイミングの説明図である。
【
図18】実施例6の、請求項4対応の情報処理ルーチンのフローチャートの一例である。
【
図19】本発明の請求項5のセミアクティブサスペンションを、単輪モデルとして示す図である。
【
図20】
図19のセミアクティブサスペンションの一例を示す、事例Aと事例Bの概略構成図である。
【
図21】
図19のセミアクティブサスペンションの一例を示す、事例Cと事例Dの概略構成図である。
【
図22】実施例7の、
図20(A)の事例Aの一例を示す概略断面図である。
【
図23】実施例8の、前記実施例7のバイパスチューブを中央に配置した一例を示す概略断面図である。
【
図24】本発明の請求項1(
図1)と請求項5(
図19)に対応したアクティブサスペンションを、単輪モデルとして示す図である。
【
図25】
図24のアクティブサスペンションの一例を示す、概略構成図である。
【
図26】実施例9の、
図25のアクティブサスペンションの一例を示す、概略断面図である。
【
図27】前記実施例9の油圧制御装置の水平断面図である。
【
図28】実施例10の、前記実施例9(
図26)とは別の一例を示す、アクティブサスペンションの概略断面図である。
【
図29】本発明の請求項1と請求項5に対応したアクティブサスペンションの、実施形態の一例を示す概略構成図である。
【
図30】実施例11の、
図29のアクティブサスペンションの、情報処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
前記図面(
図1~29)に従って、本発明の車両用アクティブサスペンション装置の内容と実施例を、以下に説明する。
本発明の請求項1対応の車両用アクティブサスペンションを、単軸モデルを
図1に、概略構成図を
図2に示し、走行中に伸縮するショックアブソーバを往復動油圧ポンプとして作用させるので油圧ポンプが不要となり、各車軸の油圧回路が独立しているので、長い油圧配管も不要である。
油圧回路の作用を電磁弁51の切換えにより行い、油圧制御の作用は、車高制御の停止時を
図2にて、車高制御の昇降時を
図3にて説明する。
電磁弁51の切換えによる具体的な油圧の挙動を、車高のシフトとばね変位の関係を
図4で説明し、本発明のアクティブサスペンションの情報処理ルーチンの一例を示すフローチャートを
図5に示し、シフト制御の一例として、右カーブ走行時の各要素の作動説明図を
図6に示す。
本発明の請求項2対応として、連結カバ16aを油圧マニホールドブロックとして、すべての油圧回路を前記連結カバの内部に集約形成し、油圧配管が一切不要となるアクティブサスペンションの概略断面図を
図7に示し、
図7の油圧制御装置の水平断面図を
図8に示す。
本発明のアクティブサスペンションの、電磁弁の配置の自由度を高くするために、油圧制御装置の電磁弁を2分割した油圧回路図を
図9に示し、
図9の油圧回路の一例である電磁弁を連結カバの両側に配置した油圧制御装置(実施例3)の水平断面図を
図10に示し、更に、油圧制御装置の断面積をコンパクトにするために電磁弁を上下に配置した油圧制御装置の水平断面図を
図11に、そのアクティブサスペンションの概略断面図を
図12に示す。
アクチュエータの配置を連結カバの下にして、車体連結部上11の設置自由度を大きくしたアクティブサスペンションの概略断面図を
図13に示す。
本発明のアクティブサスペンションの実施形態を示す概略構成図を
図14に示し、その制御装置6の概略構成図を
図15に示す。
本発明の請求項3対応として、
図15の電磁弁の両方のコイルの配線を、ボディアースが困難であるので、並列配線にした概略構成図を
図16に示す。
本発明の請求項4対応として、アクティブサスペンションの車高上昇用のコイル(U)の励磁時に前記ばねの伸長時は励磁を停止し、車高下降用のコイル(Ⅾ)の励磁時に前記ばねの圧縮時は励磁を停止する省電力制御の説明図を
図17に示し、その省電力制御の実施例6として、前記実施例1の情報処理ルーチン(
図5)への追加フローチャートの一例を
図18に示す。
請求項1とは別発明であるが、ショックアブソーバの上に設けた連通カバという技術的特徴を持つ、本発明の請求項5対応の減衰力を変化させるセミアクティブサスペンションP1を単輪モデルとして
図19に示す。
油圧回路構成の事例として、ショックアブソーバの減衰力を4段階に制御する事例Aと、減衰力を無段階に制御する事例Bの概略構成図を
図20に、上昇下降時に選択的に減衰力を可変する事例Cと、本発明の請求項1対応に対応できる事例Ⅾの概略構成図を
図21に示し、実施例7として、前記事例A(
図20)の一例であるセミアクティブサスペンションP1aの概略断面図を
図22に示す。
本発明の車高制御を行う請求項1と減衰力を制御する請求項5に対応したアクティブサスペンションAP1の単輪モデルを
図24に示し、その一例であるアクティブサスペンションAP1wの概略構成図を
図25に示し、その一例の概略断面図を実施例9として
図26に示し、その油圧制御装置の水平断面図を
図27に示す。
実施例9とは別の一例として、アクチュエータの配置を連結カバの下にして、車体連結部上11の設置自由度を大きくした、実施例10のアクティブサスペンションの概略断面図を
図28に示す。
一般的なFF車に対応する実施形態の一例として、軸荷重が大きい前輪を本発明の請求項1と請求項5に対応したアクティブサスペンションとし、同乗者数等により軸荷重が大きく変化する後輪を本発明の請求項5対応としたモデルの概略構成図を
図29に、その制御サブルーチンの一例を、実施例11として
図30に示す。
【0022】
図1は、本発明の請求項1のアクティブサスペンションを、単輪モデルとして示す図である。
ショックアブソーバ2とばね13で構成するサスペンションを、アクチュエータ4で車高を制御する出力手段を各車軸に設けたアクティブサスペンション1において、前記ショックアブソーバ2のロッド23の往復動による油量調整のアキュムレータ3を分離し、前記ショックアブソーバ2と前記アクチュエータ4を連結する連結カバ16と、前記アキュムレータ3に連通するアキュムレータ連通管56と、前記ショックアブソーバ2と逆止弁52、53を介して順方向と逆方向に連通するショックアブソーバ連通管57と、前記アクチュエータ4に連通するアクチュエータ連通管55と、前記すべての連通管を開閉制御する電磁弁51(例えば、4ポート3位置方向制御弁)と、で構成する出力手段を各車軸に設け、前記アクティブサスペンション1の図示しない制御装置6にて前記電磁弁51を制御して、前記各車軸の車高を制御することを特徴とする車両用アクティブサスペンション装置である。
図1の単軸モデルから分かるように、連結カバ16から下の構成は通常のサスペンションであり、それに直列にアクチュエータ4が構成されているので、アクチュエータ4には車軸に掛かる車重や慣性力等による作用力Fとその反力である-Fが作用反作用として働いている。
本図の油圧制御装置5に示すように、電磁弁51のコイルが励磁されていない場合は、従来技術と同様に、走行中は作用力Fの変動によりばね13が伸縮し、この振動をショックアブソーバ2のロッド23の往復動に伴う制動力で減衰する。
前記ロッド23の往復動により発生するショックアブソーバ2の作動油の増減は、逆止弁52、53を備えたショックアブソーバ連通管57、電磁弁51、アキュムレータ連通管56を介してアキュムレータ3の空気室の増減にて吸収される。
電磁弁51の切換えにより、車高の上昇(U)と車高の下降(Ⅾ)が可能であり、この車高制御の油圧動力源は、車高の下降(Ⅾ)時は、車軸に掛かる車重等の前記作用力Fによりアクチュエータ4のシリンダ41の作動油が、アキュムレータ3の内圧以上に加圧されるので、
図3(1)の油圧回路によりアクチュエータ4の作動油をアキュムレータ3に流出し、車高の上昇(U)時は、ショックアブソーバ2が
図3(2)の油圧回路により往復動油圧ポンプとして機能する。この車高の上昇(U)時は、静的にはアクチュエータ4の作動油はショックアブソーバ2に連通するので、本図に示すように、パスカルの原理により、ショックアブソーバ2のロッド23の断面積(As)とアクチュエータ4のシリンダ41の断面積(Aa)に応じた作用力(F)と((As/Aa)F)が発生し、このアクティブサスペンション1の作用(車高制御時のシフトとばね変位の関係)は、
図4で説明する。
このように、本発明のアクティブサスペンションは、ショックアブソーバをあたかも往復動油圧ポンプとして利用するので、従来技術の油圧ポンプとその回転駆動装置が不要となり、油圧回路が本図に示すように各車軸で独立して完結するので、従来技術のように長い油圧配管が不要となるのでコストダウンとメンテナンス性向上の効果と、油圧ポンプを回すエネルギ消費が不要となる。
【0023】
図2は、
図1のアクティブサスペンションの概略構成図である。
油圧制御装置5を備えたアクティブサスペンション1を各車軸に設け、ショックアブソーバ2とアクチュエータ4を連結カバ16で連結し、電磁弁51の切換えにより、アクチュエータ4のロッド43が伸縮して各車軸の車高調整を行い、車高のシフト量はシフトセンサ71で測定する。
図2は車高制御の停止時で、電磁弁51のコイルに電圧が印加されていないので、ショックアブソーバ2のロッド23は、車軸連結部12を介して、車が走行中の地面の凹凸などからの衝撃や、加速、減速、コーナリングなどの慣性力を受けて、ばね13の変位が発生し、ショックアブソーバ2のロッド23がピストン22に設けた絞り弁24で圧縮された作動油は絞り弁24から噴出し、この時の動圧抵抗により衝撃エネルギを熱エネルギに変換するので作動油の温度は上昇する。
ショックアブソーバ2のロッド23がシリンダ21に沈み込み、ロッド23の往復動によるシリンダ21の作動油の増減は、ショックアブソーバ連通管57、電磁弁51、アキュムレータ連通管56を介してアキュムレータ3が吸収する。
油圧回路図の実線の矢印は、ばね13を圧縮し、ばね変位が(-)方向に変位するときの作動油の移動方向であり、油圧回路の破線の矢印は、ばね13が伸長し、ばね変位が(+)方向に変位するときの作動油の移動方向を示す。
ばね変位、シフト変位、共に(+)方向は車高が上昇する方向で、(-)方向は車高が下降する方向である。
電磁弁51(4ポート3位置方向制御弁)の油圧回路の切換えによる車高制御の詳細は
図3にて説明する。
【0024】
図3は、
図2のアクティブサスペンション1の、油圧制御装置5による車高制御(シフト変位)の説明図である。
上図(1)は、車高制御の4ポート3位置方向制御弁である電磁弁51の下降コイル(D)を励磁して車高下降中の油圧回路図で、下図(2)は、前記電磁弁51の上昇コイル(U)を励磁して車高上昇中の油圧回路図である。
図2と同様に、油圧回路図の実線の矢印は、ばね13を圧縮し、ばね変位が(-)方向に変位するときの作動油の移動方向であり、油圧回路の破線の矢印は、ばね13が伸長し、ばね変位が(+)方向に変位するときの作動油の移動方向を示す。
本図の上図(1)は、図示しない制御装置6からの出力により、電磁弁51のコイル(D)を励磁して油圧回路を車高制御の下降制御に切換えている。
アクチュエータ4のシリンダ41の作動油の圧力は前記作用力Fにより変動するが、単筒式でないアキュムレータ3の内圧より通常は高いので、実線と破線の矢印で示すように、アクチュエータ4の作動油は、アクチュエータ連通管55、電磁弁51、ショックアブソーバ連通管57の逆止弁53と逆止弁52、電磁弁51、アキュムレータ連通管56を経由して連続的にアキュムレータ3に移動するので、アクチュエータ4の作動油が減少することにより、シフト変位の(-)方向に移動して車高は連続的に下降する。
前記下降中は、ショックアブソーバ2のロッド23のシリンダ21への押し込み時は、ばね13が圧縮され、ばね変位が(-)方向に変位するので、ショックアブソーバ2の作動油の加圧により送り出された作動油は、ショックアブソーバ連通管57の逆止弁52、電磁弁51、アキュムレータ連通管56を経由してアキュムレータ3に送られるので、この車高の下降に寄与しない作動油が共通の油路を通過するので、車高制御の下降速度は少し低下する。
ショックアブソーバ2のシリンダ21からロッド23の伸長時は、ばね13が伸長し、ばね変位が(+)方向に変位するので、ショックアブソーバ2のロッド23のシリンダ21からの引き抜きによる作動油の減量分は、前記アクチュエータ4から送られ、アクチュエータ連通管55、電磁弁51、ショックアブソーバ連通管57の逆止弁53、を通った前記作動油の一部が充当されるので、アクチュエータ4からの作動油の流出が促進され、車高制御の下降速度は少し上昇する。このように、ショックアブソーバ2のロッド23の伸縮により下降速度が多少は変化するが、車高は連続下降するので、自車の停車中を含む任意のタイミングで下降可能である。
本図の下図(2)は、図示しない制御装置6からの出力により、電磁弁51の上昇コイル(U)を励磁して油圧回路を車高制御の上昇制御に切換えている。
ばね13の圧縮時は、ばね変位が(-)方向に変位するので、ショックアブソーバ2のロッド23のシリンダ21への押し込みによる作動油の加圧により送り出された作動油は、図の実線矢印で示すように、ショックアブソーバ連通管57の逆止弁52、電磁弁51、アクチュエータ連通管55を経由してアクチュエータ4に送られるので、ばね13の圧縮時は、車高が上昇する。
ばね13の伸長時は、ばね変位が(+)方向に変位するので、ショックアブソーバ2のロッド23のシリンダ21からの引き抜きによる作動油の減圧により、図の破線矢印に示すように、アキュムレータ3から、アキュムレータ連通管56、電磁弁51、ショックアブソーバ連通管57の逆止弁53、を経由して作動油が補充されるので、ばね13の伸長時は、上昇は停止し。車高は保持される。
従って、アクティブサスペンション1は、路面からの振動等によるショックアブソーバ2のロッド23の往復動により作動油を加圧して車高を上昇させるので、伸縮するショックアブソーバ2が、あたかも往復動油圧ポンプのように作用し、車高制御は間欠的に上昇する。
【0025】
図4は、
図3のアクティブサスペンション1の車高制御時の、ばね変位とシフトの説明図である。
上図の概略構成図の油圧回路図はシフト停止時(
図2と同じ)であり、中央の(D)の車高下降時の油圧回路図は、
図3(1)と同じであるので省略し、右端の(U)の車高上昇時の油圧回路図は、
図3(2)と同じであるので省略している。
車高制御の中央値およびシフト端にアクチュエータ4を示し、各油圧回路の矢印は、実線が、ばね13の圧縮時で、破線が、ばね13の伸長時の作動油の移動方向である。
下図のタイムチャートの各項目は上から、シフト位置、ばね変位、電磁弁51の各コイル(下降(D)、上昇(U))の電圧の印加状態を示し、横軸は時間軸である。
下図のタイムチャートに示すように、走行中は時間軸に沿って、路面からの時々刻々と変化する入力等により、ばね13が伸縮してばね変位が発生する。具体的には、路面の凹凸、タイヤを含む車軸等に起因する周期的な振動、片勾配(カント)等の路面の状態、更に、カーブでの遠心力等による慣性力によるローリング、ピッチング、ヨーイングにより、振幅や周期が異なる様々な振動が発生し、ショックアブソーバ2のばね13に変位が発生する。
前記振動を減衰するためにピストン22に設けた絞り弁で変位を抑制する。
図1と同様に、上図の概略構成図のハッチングAaは、アクチュエータ4のシリンダ41の断面積で、ハッチングAsは、ショックアブソーバ2のロッド23の断面積である。
下図のタイムチャートの車高下降時(D1)では、図示しない制御装置6の出力により、電磁弁51のコイル(D)に電圧を印加して電磁弁51を下降(D)に切換え、
図3(1)で説明したように、各車軸に掛かる車重等の作用力によりアクチュエータ4のシリンダ41の内力は、アキュムレータ3の内圧より通常は高いので、アクチュエータ4の作動油は連続的にアキュムレータ3に移動し、アクチュエータ4の作動油が減少することによりシフト変位は(-)方向に移動し、車高は連続的に下降する。
図3(1)で説明したように、車高の下降中に、ショックアブソーバ2のロッド23のシリンダ21への押し込み時は、下降速度は少し減少し、ショックアブソーバ2のシリンダ21からロッド23の伸長時は、下降速度は少し増大しながら連続的に車高は下降する。
車高が目標値に達したら、シフトセンサ71の入力情報により電磁弁51のコイル(D)への電圧の印加を停止して車高の下降を停止する。
下図のタイムチャートの時間軸の車高上昇時(U1)では、図示しない制御装置6の出力により、電磁弁51のコイル(U)に電圧を印加して電磁弁51を切換え、
図3の(2)で説明したように、ばね13の圧縮時は、ばね変位が(-)方向に変位するので、ショックアブソーバ2のロッド23の、シリンダ21への押し込みにより送り出された作動油は、アクチュエータ4に送られるので、ばね13の圧縮時は、車高が上昇する。
下図の(U1)に示すように、ばね13の圧縮時は、前記作動油のみが作用するので、ばね変位(Ss1)によるシフト量(Sa1)は、ばね変位(Ss1)の(As/Aa)倍である。
ばね13の伸長時は、ばね変位が(+)方向に変位するので、ショックアブソーバ2のロッド23のシリンダ21からの引き抜きによる作動油の減圧には、アキュムレータ3から、作動油が補充されるので、このばね13の伸長時には、車高は保持され上昇は停止する。従って、ショックアブソーバ2のロッド23の往復動による作動油の加圧により、車高を間欠的に上昇させるので、ショックアブソーバ2が、あたかも往復動油圧ポンプのように作用する。
ショックアブソーバ2のロッド23の断面積(As)が、アクチュエータ4のシリンダ41の断面積(Aa)より小さいことが必要条件であり、面積比(As/Aa)が大きいと車高の上昇量が小さくなり、面積比(As/Aa)が小さいとショックアブソーバ2のロッド23の作用力((As/Aa)×F)が大きくなり、ばね13の圧縮時の減衰機能を阻害させるので、面積比(As/Aa)は、本発明のアクティブサスペンションの性能を左右する重要な設計要素である。
車高の上昇は、ロッド23の伸縮サイクル毎に間欠的に行うので、ショックアブソーバ2の減衰力が強過ぎる過制動であると、本発明のアクティブサスペンションは十分な性能が発揮できないので、臨界制動より減衰振動気味に設定するのが望ましい。
車高の上昇時は、ロッド23にアクチェータ2の内圧が作用して過剰な制動力となる場合は、本発明の請求項5との組み合わせにより制動力を制御することもできる。
【実施例0026】
図5は、実施例1の、本発明のアクティブサスペンションの情報処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。
図14に示す本発明のアクティブサスペンションの制御装置6にて、入力手段である走行状態判定センサ7、外部環境判定センサ8の入力情報を基に、出力手段である各車軸のアクティブサスペンション1の電磁弁51を制御する。
具体的には、
図15に示す入力手段の走行状態判定センサ7の車速センサ74等の入力情報により、自車が走行状態であるかを判断する(ステップS010)。
ここで、走行中でないと判断した場合は、全車軸のアクティブサスペンションの電磁弁51を励磁せず、RETURNに進む(ステップS110)。
一方、走行中であると判断した場合は、各車軸のアクティブサスペンションのシフトセンサ71にてシフト変位を測定し、現状の車高状態を確認する(ステップS020)。
次に、走行状態判定センサ7の車速センサ74、操舵角センサ75、加速度センサ76や、外部環境判定センサ8の車載カメラ81、LIDAR82、ミリ波レーダ83等の入力情報により、現状から予想される、道路状況と運転状況の判定を行う(ステップS030)。
この道路状況と運転状況の判定により、自車に予想される走行状況を解析し、それに対応した各車軸のアクティブサスペンションの、ロール、ピッチ、ヨー等に最適なシフト変位量(目標値)を算出する(ステップS040)。
具体的には、車速センサ74、加速度センサ76にて現状の速度と各加速度を測定し、アクセル開度センサや車速センサ74にて車速動向を予想し、操舵角センサ75、車載カメラ81、LIDAR82、ミリ波レーダ83および地図情報等により今後の道路の曲率半径等を予想して遠心力等を試算する。更に、車載カメラ81等の外部環境判定センサ8にて道路状況(傾斜や片勾配(カント)等)を予想し、各車軸のアクティブサスペンションの最適なシフト変位量(目標値)を算出する。
ステップS020の各車軸のアクティブサスペンションのシフトセンサ71にて測定したシフト変位(現状値)と、ステップS040にて算出した各車軸のアクティブサスペンションの目標値を比較する(ステップS050)。
ここで、各車軸のアクティブサスペンションのシフト変位の(現状値)と(目標値)の差異が、規定値(誤差レベル等)以下であるかを判断する(ステップS060)。
ここで、各車軸のアクティブサスペンションのシフト変位の(現状値)と(目標値)の差異が、規定値(誤差レベル等)以下である場合は、当該車軸のアクティブサスペンションの電磁弁51を励磁せず(ステップS0100)、RETURNに進む。
一方、各車軸のアクティブサスペンションのシフト変位の(現状値)と(目標値)の差異が、規定値(誤差レベル等)以上であると、各車軸のアクティブサスペンションのシフト変位の(現状値)と(目標値)の比較が、(目標値>現状値)の場合は、当該車軸のアクティブサスペンションの電磁弁51のコイル(U)を励磁し(ステップS080)、RETURNに進む(ステップS070)。
一方、各車軸のアクティブサスペンションのシフト変位の(現状値)と(目標値)の比較が、(目標値<現状値)の場合は、当該車軸のアクティブサスペンションの電磁弁51のコイル(D)を励磁し(ステップS090)、RETURNに進む。
以上の情報処理ルーチンに従って、各車軸の車高制御を行う。
図5のフローチャートは、自車の運転中にアクティブサスペンションの制御装置6にて繰り返し実行される。
【0027】
図6は、前記実施例1の、右カーブ走行時の車高制御の説明図である。
図6の上図は、自車10が右カーブを走行時の模式平面図であり、各放射状の自車10の背面図は、カーブの入り口(C1)、カーブの途中(C2)、カーブの出口(C3)に於ける、本発明のアクティブサスペンションのシフト制御が、OFFの場合とONの場合で、矢印のように車高制御ONにより自車の姿勢が改善する。
図6の下図は、右カーブ走行時の、
図14に示す概略構成図の前輪右側の車軸(1FR)を、
図15に示す前記制御装置6がシフト制御する各要素の作動状況を示すタイムチャートである。
各要素の項目は、上から、シフト位置、ばね変位、電磁弁51の上昇コイル(U)と下降コイル(D)の電圧の印加状態、ハンドル操作の操舵角センサ75、遠心力等の横加速度センサの測定値である
まず、上図の左下の直線の道路からカーブに侵入する直前に、曲がろうとする右方向にハンドル操作が開始され、操舵角センサ75のタイムチャートで低位設定角(TL)を超えると、前記
図5のフローチャートの情報処理ルーチンにより車軸(1FR)のシフト変位の目標値Sh1を横加速度センサの測定値等により試算し、シフトの測定値と比較し、目標値<測定値であるので、車軸(1FR)の電磁弁51のコイル(D)を励磁し、車軸(1FR)の車高の下降制御を開始する。
図4で説明したように、アクチュエータ4の作動油は、電磁弁51、アキュムレータ連通管56等を経由して連続的にアキュムレータ3に移動するので、アクチュエータ4の作動油が減少することにより、シフト変位の(-)方向に移動して車高は連続的に下降する。
ただし、
図4で説明したように、車高の下降制御は、ショックアブソーバ2のロッド23の伸長時はばね13が伸長し、車高制御の下降速度は少し上昇し、ショックアブソーバ2のロッド23の押し込み時はばね13が圧縮され、ばね変位が(-)方向に変位するので、ショックアブソーバ2の作動油の加圧により送り出された作動油はアキュムレータ3に送られるので、車高の下降に寄与しない作動油が共通の油路を通過するので、車高制御の下降速度は少し低下するので下降速度は、ばね13の変位により変動する。
次に、操舵角センサ75のタイムチャートで高位設定角(Th)を超えると、シフト変位の目標値Sh2を試算し、シフト変位の測定値と比較し、目標値<測定値であるので、車軸(1FR)の電磁弁51のコイル(D)の励磁を継続し、車軸(1FR)の車高の下降制御を継続する。
シフト変位の目標値Sh2を試算後、シフトの測定値が目標値に達すると、電磁弁51のコイル(D)の励磁を停止して、車高の下降を停止する。
操舵角センサ75のタイムチャートで、シフト変位の目標値Sh2を試算後、所定時間(t)秒毎に目標値Sh3を試算し、車高制御を前記手順で継続する。
模式平面図の、カーブの途中(C2)以降は、
図4で説明したように、ショックアブソーバ2のロッド23のシリンダ21への押し込みによる作動油の加圧により、ばね13の圧縮時に車高が上昇し、ばね13の伸長時は車高が保持されるので間欠的に上昇する。
車高の下降と上昇で油圧の作動原理は異なるが、車高制御のアルゴリズムは前記車高下降時と同じであるので、説明を省略する。
図6は車高制御の説明を容易にするために、所定時間(t)は長くし、減衰制御を弱めて減衰振動に近い制動として説明している。
加速度センサ76により横加速度を測定できない場合は、カーブの半径を予想して車速センサ74により遠心力を試算する等の方法がある。
横加速度のタイムチャートとシフト変位のタイムチャートは、本来同期しているのが望ましい。実施例1の本図では、シフト変位が遅れて制御されるが、地図情報の活用や、車載カメラ81等の外部環境判定センサ8により、道路のカーブ形状等の進路情報や片勾配等の路面状態を予想して、より正確な目標値にて制制御するのが望ましいので、本発明のアクティブサスペンションは、自動運転との親和性が重要である。