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特開2023-160546通気シート設置方法、建物の通気構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160546
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】通気シート設置方法、建物の通気構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/70 20060101AFI20231026BHJP
   E04B 1/64 20060101ALI20231026BHJP
   E04B 1/76 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
E04B1/70 A
E04B1/64 E
E04B1/76 500Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070979
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】511004542
【氏名又は名称】株式会社アイ・レック
(74)【代理人】
【識別番号】100112689
【弁理士】
【氏名又は名称】佐原 雅史
(74)【代理人】
【識別番号】100128934
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128141
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 圭一
(72)【発明者】
【氏名】池村 博海
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DB02
2E001DB05
2E001DD01
2E001EA01
2E001FA03
2E001FA18
2E001GA12
2E001GA24
2E001HA32
2E001HA33
2E001HC14
2E001HD03
2E001HD08
2E001HD09
2E001HD11
2E001NA07
(57)【要約】
【課題】通気シートの湾曲を制限可能か、又は、通気シートの位置決めが容易な通気シートの設置方法を提供する。
【解決手段】本発明の通気シート設置方法は、建物の設置面に設置されると、前記建物の設置面との間に通気路を形成する通気シートを前記建物の設置面に設置する通気シート設置方法であって、前記建物の設置面に間隔を空けて複数の第一断熱材を設置して前記建物の設置面に複数の前記第一断熱材を固定する第一断熱材設置工程と、間隔を空けて設置された複数の前記第一断熱材の間に形成される領域において、前記通気シートを前記建物の設置面に設置する通気シート設置工程と、設置された前記通気シート上に第二断熱材を設置しつつ、該第二断熱材を隣接する前記第一断熱材に固定して、前記通気シートを前記建物の設置面に押さえ付ける第二断熱材設置工程と、を備える。
【選択図】 図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の設置面に設置されると、前記建物の設置面との間に通気路を形成する通気シートを前記建物の設置面に設置する通気シート設置方法であって、
前記建物の設置面に間隔を空けて複数の第一断熱材を設置して前記建物の設置面に複数の前記第一断熱材を固定する第一断熱材設置工程と、
間隔を空けて設置された複数の前記第一断熱材の間に形成される領域において、前記通気シートを前記建物の設置面に設置する通気シート設置工程と、
設置された前記通気シート上に第二断熱材を設置しつつ、該第二断熱材を隣接する前記第一断熱材に固定して、前記通気シートを前記建物の設置面に押さえ付ける第二断熱材設置工程と、
を備えることを特徴とする、
通気シート設置方法。
【請求項2】
前記通気シートは、少なくとも一方の平面に複数の凸部が分布し、
前記通気シート設置工程では、前記領域において、前記通気シートの前記凸部が前記建物の設置面に接触するように前記通気シートを設置し、
前記通気シートの一方の前記平面と前記建物の設置面との間に前記通気路が形成されることを特徴とする、
請求項1に記載の通気シート設置方法。
【請求項3】
前記第一断熱材設置工程において、複数の前記第一断熱材のうち少なくとも一部は、前記建物の設置面に沿う第一方向に沿って間隔を空けて前記建物の設置面に設置されて前記第一方向に沿う前記第一断熱材の列(以下、第一方向列と呼ぶ。)が設けられると共に、該第一方向列が並列に複数設けられるように設置されることを特徴とする、
請求項1に記載の通気シート設置方法。
【請求項4】
前記第一断熱材設置工程において、複数の前記第一断熱材のうち少なくとも一部は、隣接する前記第一方向列同士の間に間隔を空けて、隣接する前記第一方向列同士の間に前記第一方向に沿って延びる第一延在領域が形成されるように設置され、
前記通気シート設置工程において、前記第一延在領域には、前記通気シートが設置されることを特徴とする、
請求項3に記載の通気シート設置方法。
【請求項5】
前記第一断熱材設置工程において、複数の前記第一断熱材のうち少なくとも一部は、前記建物の設置面に沿うと共に前記第一方向に直交する第二方向に沿って間隔を空けて前記建物の設置面に設置されて前記第二方向に沿う前記第一断熱材の列(以下、第二方向列と呼ぶ。)が設けられると共に、該第二方向列が並列に複数設けられるように設置されることを特徴とする、
請求項4に記載の通気シート設置方法。
【請求項6】
前記第一断熱材設置工程において、複数の前記第一断熱材のうち少なくとも一部は、隣接する前記第二方向列同士の間に間隔を空けて、隣接する前記第二方向列同士の間に前記第二方向に沿って延びつつ、前記第一延在領域に交差してその交差する部分で前記第一延在領域に重畳する重畳領域を有する第二延在領域が形成されるように設置され、
前記通気シート設置工程において、前記第二延在領域には、前記通気シートが設置されることを特徴とする、
請求項5に記載の通気シート設置方法。
【請求項7】
前記通気シートは、シート幅が一定幅である帯状に構成され、且つロール状に巻かれた状態にあり、
前記通気シートをロール状に巻かれた状態から引き出して、前記通気シートのシート幅は一定幅のままの状態で所定の長さの位置で切断して前記第一延在領域に設置するための帯状の前記通気シートを設ける通気シート加工工程を備え、
前記通気シートに前記第二断熱材が重ねられる方向を積層方向と定義した際、
前記第一断熱材設置工程では、前記積層方向から前記第一延在領域を平面視した際、前記第一延在領域が前記通気シートのシート幅と一致しつつ、一定幅を有する帯状領域となるように、前記建物の設置面に複数の前記第一断熱材が設置されることを特徴とする、
請求項4に記載の通気シート設置方法。
【請求項8】
前記第二断熱材は、前記通気シートのシート幅と一致する幅を有しつつ、一定幅を有するよう構成され、
前記第二断熱材設置工程では、前記通気シートよりも上層側において前記第一断熱材と前記第二断熱材が敷き詰められるように複数の前記第二断熱材が設置されることを特徴とする、
請求項7に記載の通気シート設置方法。
【請求項9】
前記第一断熱材、前記第二断熱材、及び前記通気シートは、前記通気シートの厚みと前記第二断熱材の厚みの和が前記第一断熱材の厚みとなるように構成され、
前記第二断熱材設置工程において、前記第二断熱材を設置すると、前記第二断熱材の前記通気シートを向く側とは反対側の面と、前記第一断熱材設置工程で設置した前記第一断熱材の前記建物の設置面を向く側とは反対側の面は、同一平面となることを特徴とする、
請求項1又は8に記載の通気シート設置方法。
【請求項10】
建物の設置面に設置されると、前記建物の設置面との間に通気路を形成する通気シートを前記建物の設置面に設置する通気シート設置方法であって、
前記建物の設置面に間隔を空けて複数の第一部材を設置して前記建物の設置面に複数の前記第一部材を固定する第一部材設置工程と、
間隔を空けて設置された複数の前記第一部材の間に形成される領域において、前記通気シートを前記建物の設置面に設置する通気シート設置工程と、
を備えることを特徴とする、
通気シート設置方法。
【請求項11】
設置された前記通気シート上に第二部材を設置しつつ、該第二部材を隣接する前記第一部材に固定して、前記通気シートを前記建物の設置面に押さえ付ける第二部材設置工程を備えることを特徴とする、
請求項10に記載の通気シート設置方法。
【請求項12】
建物の設置面に間隔を空けて設置され、該建物の設置面に固定される複数の第一部材と、
間隔を空けて設置された複数の前記第一部材の間の領域において前記建物の設置面に設置され、前記建物の設置面との間に通気路を形成する通気シートと、
前記通気シート上に設置されつつ、隣接する前記第一部材に固定されて、前記通気シートを押さえ付ける第二部材と、
を備え、
前記通気シートは、少なくとも一方の平面に複数の凸部が分布し、前記凸部が前記建物の設置面に接触するように設置されて、前記建物の設置面との間に前記通気路を形成することを特徴とする、
建物の通気構造。
【請求項13】
前記建物の設置面を向く側とは反対側の前記第一部材の面と、前記通気シートを向く側とは反対側の前記第二部材の面は、同一平面であり、
前記建物の設置面は、前記第一部材、前記通気シート及び前記第二部材により敷き詰められることを特徴とする、
請求項12に記載の建物の通気構造。
【請求項14】
前記第一部材及び前記第二部材は、断熱材であることを特徴とする、
請求項12又は13に記載の建物の通気構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通気シートを建物の表面に設置する通気シート設置方法、及び、建物の通気構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の鉄筋建造物の屋上等の構造は、コンクリート下地に、絶縁機械固定工法により防水層を施工したものが多く見られる。しかしながら、上記のような構造の場合、外気とコンクリート下地との温度差により防水層の裏面に結露が発生するおそれがある。この状態が進行すると、コンクリート下地と防水層の間に水分層が生じてしまう。そして、コンクリート下地が経年劣化すると、コンクリート下地のクラックから水分が侵入し、建造物内に雨漏り、カビ、結露を生じさせる。また、防水層自身も経年劣化によりクラックを生じ、そのクラック部分から水(例えば、雨水)が侵入してしまっている。この現象も上記と同様に建造物内に雨漏り、カビ、結露を生じさせる。
【0003】
以上のような問題点を解決するため、建造物に含まれる水分を水蒸気として、効率良く移動させて外部へ排出する水分除去装置が本願発明者により提案されている(例えば、特許文献1参照)。その水分除去装置は、設置面に複数の凸部を有し、被設置面である前記建造物の表面と前記複数の凸部を有する設置面とで形成された空間を、蒸気通路にさせるように構成された凸部材と、該凸部材の上面に設置される断熱材と、前記蒸気通路内に吸気流を発生させて、前記被設置面である前記建造物の表面を通じて前記建造物に含まれる蒸気化した水分を外部へ排出する吸気部と、を備える。
【0004】
上記水分除去装置における凸部材がポリプロピレン等の樹脂により帯状の凸部付きの通気シートとして構成される場合、通気シートは、ロール状に巻いたロール体の状態で施工現場に持ち運びされる。施工現場では、ロール体から必要な長さの通気シートを引き出して切断する。そして、適当な長さに切断された通気シートを建物の施工対象領域の端から順に並べて、施工対象領域全体に敷き詰める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-140801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記通気シートがロール状に巻かれると、上記通気シートには、湾曲した癖が付きやすい。また、上記通気シートは、外気温が高いと、それに起因する熱などで反ったりして湾曲しやすい。そして、上記水分除去装置では、断熱材が上記通気シートの上に載っているが、上記通気シートの湾曲を制限するように構成されていない。また、建物の施工対象領域の面積が大きい場合、上記通気シートを並べている最中に隣接する通気シートに設置面に沿う方向の外力が加わると、上記通気シートの位置ずれが生じたりして位置決めが面倒であった。
【0007】
本発明は、斯かる実情に鑑み、通気シートの湾曲を制限可能な通気シートの設置方法、及び、通気シートの位置決めが容易な通気シートの設置方法の少なくとも一方、並びに、通気シートの湾曲を制限可能な建物の通気構造を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の通気シート設置方法は、建物の設置面に設置されると、前記建物の設置面との間に通気路を形成する通気シートを前記建物の設置面に設置する通気シート設置方法であって、前記建物の設置面に間隔を空けて複数の第一断熱材を設置して前記建物の設置面に複数の前記第一断熱材を固定する第一断熱材設置工程と、間隔を空けて設置された複数の前記第一断熱材の間に形成される領域において、前記通気シートを前記建物の設置面に設置する通気シート設置工程と、設置された前記通気シート上に第二断熱材を設置しつつ、該第二断熱材を隣接する前記第一断熱材に固定して、前記通気シートを前記建物の設置面に押さえ付ける第二断熱材設置工程と、を備えることを特徴とする。上記通気シート設置方法によれば、通気シートの湾曲を制限することが可能となる。
【0009】
本発明の通気シート設置方法では、前記通気シートは、少なくとも一方の平面に複数の凸部が分布し、前記通気シート設置工程では、前記領域において、前記通気シートの前記凸部が前記建物の設置面に接触するように前記通気シートを設置し、前記通気シートの一方の前記平面と前記建物の設置面との間に前記通気路が形成されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の通気シート設置方法では、前記第一断熱材設置工程において、複数の前記第一断熱材のうち少なくとも一部は、前記建物の設置面に沿う第一方向に沿って間隔を空けて前記建物の設置面に設置されて前記第一方向に沿う前記第一断熱材の列(以下、第一方向列と呼ぶ。)が設けられると共に、該第一方向列が並列に複数設けられるように設置されることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の通気シート設置方法では、前記第一断熱材設置工程において、複数の前記第一断熱材のうち少なくとも一部は、隣接する前記第一方向列同士の間に間隔を空けて、隣接する前記第一方向列同士の間に前記第一方向に沿って延びる第一延在領域が形成されるように設置され、前記通気シート設置工程において、前記第一延在領域には、前記通気シートが設置されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の通気シート設置方法では、前記第一断熱材設置工程において、複数の前記第一断熱材のうち少なくとも一部は、前記建物の設置面に沿うと共に前記第一方向に直交する第二方向に沿って間隔を空けて前記建物の設置面に設置されて前記第二方向に沿う前記第一断熱材の列(以下、第二方向列と呼ぶ。)が設けられると共に、該第二方向列が並列に複数設けられるように設置されることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の通気シート設置方法では、前記第一断熱材設置工程において、複数の前記第一断熱材のうち少なくとも一部は、隣接する前記第二方向列同士の間に間隔を空けて、隣接する前記第二方向列同士の間に前記第二方向に沿って延びつつ、前記第一延在領域に交差してその交差する部分で前記第一延在領域に重畳する重畳領域を有する第二延在領域が形成されるように設置され、前記通気シート設置工程において、前記第二延在領域には、前記通気シートが設置されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の通気シート設置方法は、前記通気シートは、シート幅が一定幅である帯状に構成され、且つロール状に巻かれた状態にあり、前記通気シートをロール状に巻かれた状態から引き出して、前記通気シートのシート幅は一定幅のままの状態で所定の長さの位置で切断して前記第一延在領域に設置するための帯状の前記通気シートを設ける通気シート加工工程を更に備え、前記通気シートに前記第二断熱材が重ねられる方向を積層方向と定義した際、前記第一断熱材設置工程では、前記積層方向から前記第一延在領域を平面視した際、前記第一延在領域が前記通気シートのシート幅と一致しつつ、一定幅を有する帯状領域となるように、前記建物の設置面に複数の前記第一断熱材が設置されることを特徴とする。上記通気シート設置方法によれば、通気シートの位置決めを容易にする。
【0015】
また、本発明の通気シート設置方法では、前記第二断熱材は、前記通気シートのシート幅と一致する幅を有しつつ、一定幅を有するよう構成され、前記第二断熱材設置工程では、前記通気シートよりも上層側において前記第一断熱材と前記第二断熱材が敷き詰められるように複数の前記第二断熱材が設置されることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の通気シート設置方法では、前記第一断熱材、前記第二断熱材、及び前記通気シートは、前記通気シートの厚みと前記第二断熱材の厚みの和が前記第一断熱材の厚みとなるように構成され、前記第二断熱材設置工程において、前記第二断熱材を設置すると、前記第二断熱材の前記通気シートを向く側とは反対側の面と、前記第一断熱材設置工程で設置した前記第一断熱材の前記建物の設置面を向く側とは反対側の面は、同一平面となることを特徴とする。
【0017】
また、本発明の通気シート設置方法は、建物の設置面に設置されると、前記建物の設置面との間に通気路を形成する通気シートを前記建物の設置面に設置する通気シート設置方法であって、前記建物の設置面に間隔を空けて複数の第一部材を設置して前記建物の設置面に複数の前記第一部材を固定する第一部材設置工程と、間隔を空けて設置された複数の前記第一部材の間に形成される領域において、前記通気シートを前記建物の設置面に設置する通気シート設置工程と、を備えることを特徴とする。上記通気シート設置方法によれば、通気シートの位置決めを容易にする。
【0018】
また、本発明の通気シート設置方法は、設置された前記通気シート上に第二部材を設置しつつ、該第二部材を隣接する前記第一部材に固定して、前記通気シートを前記建物の設置面に押さえ付ける第二部材設置工程を更に備えることを特徴とする。上記通気シート設置方法によれば、通気シートの位置決めを容易にしつつ、更に、通気シートの湾曲を制限することが可能となる。
【0019】
また、本発明の建物の通気構造は、建物の設置面に間隔を空けて設置され、該建物の設置面に固定される複数の第一部材と、間隔を空けて設置された複数の前記第一部材の間の領域において前記建物の設置面に設置され、前記建物の設置面との間に通気路を形成する通気シートと、前記通気シート上に設置されつつ、隣接する前記第一部材に固定されて、前記通気シートを押さえ付ける第二部材と、を備え、前記通気シートは、少なくとも一方の平面に複数の凸部が分布し、前記凸部が前記建物の設置面に接触するように設置されて、前記建物の設置面との間に前記通気路を形成することを特徴とする。
【0020】
また、本発明の建物の通気構造では、前記建物の設置面を向く側とは反対側の前記第一部材の面と、前記通気シートを向く側とは反対側の前記第二部材の面は、同一平面であり、前記建物の設置面は、前記第一部材、前記通気シート及び前記第二部材により敷き詰められることを特徴とする。また、本発明の建物の通気構造では、前記第一部材及び前記第二部材は、断熱材であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明の通気シート設置方法によれば、通気シートの位置決めを容易にすることができるか、及び/又は、通気シートの湾曲を制限することができる。また、本発明の建物の通気構造によれば、通気シートの湾曲を制限することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(A)は、本発明の実施形態における建物の通気構造の断面図である。(B),(C)は、本発明の実施形態における建物の通気構造の第一断熱材、及び第二断熱材の変形例の断面図である。
図2】本発明の実施形態における建物の通気構造の一部を成す第一断熱材を建物の屋上面に設置した際の平面図である。
図3】(A)~(D)は、本発明の実施形態における建物の通気構造の一部を成す第一断熱材の建物の屋上面における配置態様の変形例を示す平面図である。
図4】(A)は、本発明の実施形態における建物の通気構造の一部を成す通気シートの斜視図である。(B)は、本発明の実施形態における建物の通気構造の一部を成す通気シートの平面図である。
図5】(A)は、本発明の実施形態における建物の通気構造の一部を成す通気シートの断面図であり、図4(A)の点線領域RにおけるF-F矢視断面図である。(B)は、本発明の実施形態における建物の通気構造の一部を成す通気シートの第一変形例の断面図である。(C)は、本発明の実施形態における建物の通気構造の一部を成す通気シートの第二変形例の断面図である。
図6】本発明の実施形態における建物の通気構造の一部を成す第一断熱材及び通気シートを建物の屋上面に設置した際の平面図である。
図7】(A)は、本発明の実施形態における建物の通気構造の一部を成す通気シートを重ね合わせる様子を表す斜視図である。(B)は、本発明の実施形態における建物の通気構造の一部を成す通気シートの凸部を通気シートの凹部に挿入した際の斜視図である。(B)は、本発明の実施形態における建物の通気構造の一部を成す通気シートの凸部を通気シートの凹部に挿入した際の断面図である。
図8】本発明の実施形態における建物の通気構造の一部を成す第一断熱材及び通気シートを図5とは別の配置態様で建物の屋上面に設置した際の平面図である。
図9】(A)は、本発明の実施形態における建物の通気構造の一部を成す第一断熱材及び通気シートを建物の屋上面に設置した際の断面図である。(B)は、本発明の実施形態における建物の通気構造の一部を成す第一断熱材、通気シート、及び第二断熱材を建物の屋上面に設置した際の断面図である。
図10】本発明の実施形態における建物の通気構造の一部を成す第一断熱材及び第二断熱材を建物の屋上面に設置した際の平面図である。
図11】(A)は、本発明の実施形態における建物の通気構造の断面図である。(B)は、本発明の実施形態における建物の通気構造の変形例の断面図である。
図12】(A)~(D)は、本発明の実施形態における通気シートの設置方法を時系列に並べた断面図である。
図13】本発明の実施形態における通気シートがロール状に巻かれたロール体と、ロール体から切断された通気シートを示す斜視図である。
図14】本発明の実施形態における建物の通気構造の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。図1図12は発明を実施する形態の一例であって、図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表わす。また、図1図12は、本発明を説明するための概略図であって、各部の厚みは、正確なものではなく、様々な厚みを有したものも本発明の範囲に含まれる。
【0024】
<通気構造の全体構成>
本発明の実施形態における建物900の通気構造1について説明する。本実施形態における建物900の通気構造1は、通気構造1を設置する建物900の設置面に、通気のための通気路を設けるものである。本実施形態において建物900は、陸屋根を有するコンクリート製の建物であり、建物900の設置面は、図1に示す建物900の屋上面910であるものとして説明する。ただし、建物900の設置面は、建物900の外部側のもののみならず、建物900の壁、壁の内部、床、床の内部等の建物900の内部側のものも含む。このため、以下における建物900の屋上面910を用いた建物900の通気構造1についての説明は、建物900のその他の設置面に読み替えることにより建物900の他の設置面にも適用できる。
【0025】
図1(A)に示すように、建物900に設けられる通気構造1は、第一断熱材2と、通気シート3と、第二断熱材4と、遮熱層5と、防水シート6と、を備える。なお、第一断熱材2と、通気シート3と、第二断熱材4とで断熱層が構成される。なお、断熱層を断熱機能のみならず通気機能も有する断熱通気層と適宜読み替えてもよい。
【0026】
<第一断熱材>
図1及び図2を参照して第一断熱材2について説明する。第一断熱材2は、断熱性を有する材料を含む。断熱性を有する材料として、例えば、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバー、インシュレーションボード、押出発泡ポリスチレン、ビーズ法ポリスチレン、硬質ウレタンフォーム、高発泡ポリエチレン等が一例として挙げられる。本実施形態において第一断熱材2は、直方体形状になっているが、これに限定されるものではなく、その他の形状であってもよい。
【0027】
また、第一断熱材2は、図1(B),(C)に示すように、通気シート3を重ねて構成されたものであってもよい。図1(B)に示すように、通気シート3の凸部32の頂部32Aが通気シート3の平面(背面)33に当接するように重ねられてもよいし、図1(C)に示すように、双方の凸部32の凸方向が逆方向になりつつ、通気シート3の平面(背面)33同士が当接するように重ねられてもよい。なお、通気シート3の詳細については後述する。
【0028】
第一断熱材2は、複数あり、建物900の屋上面910に間隔を空けて設置される。そして、複数の第一断熱材2は、固定手段(図示省略)により屋上面910に固定される。固定手段として、例えば、接着剤やアンカーボルト等が挙げられる。固定手段がアンカーボルトであれば、アンカーボルトが第一断熱材2を貫通して、屋上面910に空けられた穴に挿入される。ただ、屋上面910にアンカーボルト用の穴をドリルで開ける必要があるが、穴開けに起因する騒音が発生する。一方、固定手段が接着剤であれば、施工時に、騒音は発生しないため、静音施工の観点から固定手段として接着剤が好ましい。なお、接着剤は、第一断熱材2を建物900の設置面に接着することが可能である全ての接着剤を含む。
【0029】
図2に示すように、本実施形態において複数の第一断熱材2は、建物900の屋上面910に沿う第一方向Aに沿って、建物900の屋上面910に間隔を空けて設置される。結果、複数の第一断熱材2が第一方向Aに沿う列(以下、第一方向列と呼ぶ。)20が設けられる。なお、図2において第一方向列20は、細点線で囲まれた領域において第一方向Aに沿って間隔を空けて並ぶ複数の第一断熱材2の列を指す。本実施形態において第一方向列20において隣接する第一断熱材2同士は、等間隔に並ぶが、これに限定されるものではなく、図3(A)に示すように、不等間隔(図3(A)においてY1>Y2)に並ぶものであってもよい。ちなみに、本実施形態において第一方向Aは、例えば、建物900の桁方向(桁行方向)、又は、梁方向(梁間方向)のいずれか一方であることが想定されるが、これに限定されるものではなく、その他の方向であってもよい。
【0030】
そして、図2に示すように、第一方向列20は、並列に複数設けられる。つまり、第一方向列20は、建物900の屋上面910に沿うと共に、第一方向Aに直交する第二方向Bに沿って並列に複数設けられる。この際、本実施形態では、第二方向Bに沿って建物900の屋上面910に間隔を空けて複数の第一断熱材2が配置されて第二方向Bに沿う列(以下、第二方向列と呼ぶ。)21が形成される。なお、図2において第二方向列21は、細一点鎖線で囲まれた領域において第二方向Bに沿って間隔を空けて並ぶ複数の第一断熱材2の列を指す。ちなみに、本実施形態において第二方向Bは、例えば、第一方向Aが建物900の桁方向(桁行方向)なら梁方向(梁間方向)であり、第一方向Aが建物900の梁方向(梁間方向)なら桁方向(桁行方向)であることが想定されるが、これに限定されるものではなく、その他の方向であってもよい。
【0031】
なお、第一方向列20は、図3(B)に示すように、第二方向Bに沿って建物900の屋上面910に間隔を空けずに、並列に複数設けられてもよい。ただし、図3(B)において桁方向(桁行方向)から第一方向列20を見た際、隣接する第一方向列20の第一断熱材2同士は、重なり合わないように互いにずれた位置に配置される。
【0032】
また、本実施形態において第二方向列21は、図2に示すように、第二方向Bから第二方向列21を見た際、各第一断熱材2全部が重なり合うように設置されているが、これに限定されるものではなく、図3(C)に示すように、第二方向Bから第二方向列21を見た際、各第一断熱材2の一部210が重なり合うように第一断熱材2の少なくとも一部が第一方向Aにずれて設置されてもよい。このことは、第一方向列20についても同様で、第一方向Aから第一方向列20を見た際、各第一断熱材2の一部が重なり合うように第一断熱材2の少なくとも一部が第二方向Bにずれて設置されてもよい。
【0033】
本実施形態において第二方向列21において隣接する第一断熱材2同士は、等間隔に並ぶが、これに限定されるものではなく、図3(A)に示すように、不等間隔(図3(A)においてX1>X2)に並ぶものであってもよい。また、本実施形態において第二方向列21における隣接する第一断熱材2の間隔は、図2に示すように、第一方向列20における隣接する第一断熱材2の間隔と同一でWの大きさを有するが、これに限定されるものではなく、異なっていてもよい(図3(D)においてX3>Y3)。なお、Wは、例えば、1000~2000(mm)の範囲の長さが想定され、特に、1250(mm)程度の長さが好ましい。この際、第一断熱材2の幅は、500~1000(mm)の範囲の長さが想定される。ただし、以上の長さは一例であって、上記長さ以外のものであっても本発明の範囲に含まれる。
【0034】
つまり、本実施形態において複数の第一断熱材2は、第一方向A及び/又は第二方向Bに沿って間隔を空けて(図2では等間隔)建物900の屋上面910に配置されれば、どのように配置されてもよく、様々な配置態様が本発明に含まれる。
【0035】
以上のように複数の第一断熱材2が配置されると、隣接する第一方向列20同士は間隔を空けて配置されているため、隣接する第一方向列20の間には、第一方向Aに沿って延びる第一延在領域23が形成される。図1(A)及び図2に示すように、第一延在領域23は、隣接する第一方向列20において第二方向Bで対向する第一断熱材2のそれぞれの対向面2D(第一断熱材2の側面2Cのうち、側面2CAに相当)により第一延在領域23の幅方向における境界が画定される。つまり、第一延在領域23は、隣接する第一方向列20により自身の幅方向における境界が画定される。そして、本実施形態において第一延在領域23は、第一方向Aに沿って延在し、通気構造1の積層方向(図1(A)の方向S参照)から平面視した際、一定幅を有する帯状領域となるが、これに限定されるものではなく、その他の態様の領域であってもよい。つまり、本実施形態において第一延在領域23は、直方体状の立体領域となる。ちなみに、図2において第一延在領域23は、第一方向列20の脇の細点線で囲まれた領域を指す。また、通気構造1の積層方向とは、断熱層(第一断熱材2、通気シート3、第二断熱材4)、遮熱層5、防水シート6が積層される方向を指し、通気構造1の厚み方向に一致する。そして、後述するように、第一延在領域23には、通気シート3が設置される。この意味で、複数の第一方向列20は、通気シート3の位置決めをするように機能する。
【0036】
また、隣接する第二方向列21同士は間隔を空けて配置されているため、隣接する第二方向列21の間には、第二方向Bに沿って延びる第二延在領域24が形成される。図2に示すように、に示すように、第二延在領域24は、隣接する第二方向列21において第一方向Aで対向する第一断熱材2のそれぞれの対向面2E(第一断熱材2の側面2Cのうち、側面2CBに相当)により第二延在領域24の幅方向における境界が画定される。つまり、第二延在領域24は、隣接する第二方向列21により自身の幅方向における境界が画定される。そして、本実施形態において第二延在領域24は、第二方向Bに沿って延在し、通気構造1の積層方向から平面視した際、一定幅を有する帯状領域となるが、これに限定されるものではなく、その他の態様の領域であってもよい。つまり、本実施形態において第二延在領域24は、直方体状の立体領域となる。ちなみに、図2において第二延在領域24は、第二方向列21の脇の細二点鎖線で囲まれた領域を指す。後述するように、第二延在領域24には、通気シート3が設置される。この意味で、複数の第二方向列21は、通気シート3の位置決めをするように機能する。
【0037】
そして、第一延在領域23と第二延在領域24は交差し、交差する部分(位置)において重畳する重畳領域25を有する。ここで、第二方向列21において隣接する第一断熱材2の間に形成される領域を第一領域26(図2参照)と定義した場合、第一領域26と重畳領域25は、相互に連続しつつ、第一方向Aに沿って交互に並ぶ。そして、第一延在領域23は、第一領域26と重畳領域25が交互に並ぶ領域として構成される。また、第一方向列20において隣接する第一断熱材2の間に形成される領域を第二領域27(図2参照)と定義した場合、第二領域27と重畳領域25は、相互に連続しつつ、第二方向Bに沿って交互に並ぶ。そして、第二延在領域24は、第二領域27と重畳領域25が交互に並んだ領域として構成される。
【0038】
なお、図3(B)に示すように、第一延在領域23は、第一方向Aに沿って直線状に延びるものでなくてもよい。一例を挙げると、例えば、第一延在領域23は、一定幅を維持しつつ、第一方向Aの一方側に延び、途中で第二方向Bの一方側に折れ曲がって第二方向Bの一方側に延び、再度途中で第一方向Aの一方側に折れ曲がって第一方向Aの一方側に延びることを繰り返すように延びる、所謂、ジグザグ状のものであってもよい。同様に、図3(C)に示すように、第二延在領域24も第二方向Bに沿ってジグザグ状に延びるものであってもよい。
【0039】
<通気シート>
図4及び図5を参照して、通気シート3について説明する。通気シート3は、図4(A),(B)に示すように、通気シート3(シート部30)の一方の平面31側に複数の凸部32を有する。具体的に通気シート3は、シート状のシート部30と、凸部32とを有する。図5(A)に示すように、凸部32は、通気シート3(シート部30)の一方の平面31を起点として平面31から離れる方向(例えば、平面31に対して直交する方向)に凸となる。凸部32の高さは、例えば、0.1mm~5mm程度が想定されるが、これに限定されるものではない。すなわち、凸部32の高さが0.1mm以下、または、5mm以上のものも本発明に含まれる。そして、凸部32の形状は、概ね円錐形状又は円錐台形状等の部分錐形状とすることが一例として想定されるが、これに限定されるものではなく、半球形状、六角柱形状等であってもよい。
【0040】
また、図4(A)及び図5(A)に示すように、本実施形態における通気シート3には、通気シート3(シート部30)の凸部32が設けられる側とは反対側の平面33側に凹部34が設けられる。凹部34は、通気シート3(シート部30)の平面33の凸部32に相当する位置に設けられる。つまり、通気シート3を平面視した際、凹部34は凸部32に内包されつつ、凸部32に重なり合う。そして、凹部34は、凸部32が設けられる側とは反対側の平面33を起点として凸部32の凸方向に凹む。凹部34の形状として、概ね円錐形状又は円錐台形状、半球形状等が一例として挙げられる。なお、凸部32および凹部34の形状は、上記とは別のその他の形状であってもよい。なお、通気シート3は、図5(B)に示すように、凹部34がない構成であってもよい。また、通気シート3は、図5(C)に示すように、凹部34がある部分とない部分が混在する構成であってもよい。
【0041】
なお、図1(B),(C)に示すように、凹部34を閉じて閉空間を設けるように通気シート3を重ねると、その閉空間内の空気は流れを生じないので、閉空間内の空気は、断熱機能を発揮する。そのような特徴を生かして通気シート3により断熱材を構成することができる。
【0042】
また、図4(A),(B)に示すように、凸部32は、通気シート3(シート部30)の一方の平面31に分布する。凸部32は、通気シート3の一方の平面31側に概ねマトリクス状に分布させることが一例として挙げられるが、これに限るものではなく、その他の分布態様であってもよい。上記概ねマトリクス状に分布とは、縦横方向にランダムに分布したマトリクス状に近い状態の分布をも含むものである。なお、図4(B)において通気シート3には円形状の部分が複数あるが、これら一つ一つが凸部32に相当する。
【0043】
また、凸部32は、通気シート3におけるシート部30と一体形成されてもよいし、シート部30とは別部材として構成され、シート部30に連結されてもよい。
【0044】
<通気シートの設置>
図1図5を参照して通気シート3の設置態様について説明する。以上のような構成の通気シート3は、図1(A)に示すように、各凸部32の頂部32Aが屋上面910に当接するように設置される。この際、通気シート3と、屋上面910との間に、通気路100が形成される。具体的に通気路100は、図1(A)に示すように、通気シート3のシート部30の一方の平面31と各凸部32の表面32Bと屋上面910とで構成される。例えば、建物900に含まれる水分が蒸気化して、その水蒸気が通気路100で取り囲まれる空間を通じて、図4(B)の矢印に示すように、凸部32と凸部32の間を擦り抜けて移動する。
【0045】
そして、図4(A)及び図5(A)に示すように、シート部30の平面33の面垂直方向Cの上方側から通気シート3に対して外力(例えば、人の体重による荷重(例えば、100~300kg重))が加えられた場合、凸部32が潰れないような強度を凸部32に持たせる必要がある。この強度の観点から、凸部32及びシート部30の材料は、例えば、ポリプロピレン等の樹脂または金属により構成されることが好ましい。また、凸部32の分布態様は、上記強度の観点や、蒸気を効率良く流せるかどうかの観点をも含めて凸部32の配置は決められることが好ましい。
【0046】
通気シート3は、図6に示すように、建物900の屋上面910の第一延在領域23及び第二延在領域24に敷き詰められるように設置される。この際、隣接する通気シート3と第一断熱材2の境界には隙間が生じないか、又は、隙間が出来てもわずかなものである方が好ましい。例えば、図12に示すように、通気シート3が一定のシート幅Wを有する凸部32付き帯状シートとして予め構成され、その凸部32付き帯状シートがロール状に巻かれたロール体300として構成される場合、図6に示すように、通気構造1の積層方向(紙面に垂直な方向)から平面視した際、幅が一定の帯状領域となる第一延在領域23及び第二延在領域24は、双方とも幅がWとなることが好ましい。このように構成すれば、第一延在領域23及び第二延在領域24に通気シート3を敷き詰めるように設置する際、通気シート3のシート幅は一定でWなので、通気シート3のシート幅を変更するような加工を行う必要がなく、ロール体300から必要な長さだけ引き出して切断すればよいので、作業工程を低減することができる。なお、第一延在領域23の幅及び第二延在領域24の幅は、これに限定されるものではなく、いずれか一方がWで残りがWと異なってもよいし、双方ともWと異なっていてもよい。ちなみに、第一延在領域23の幅は、第二方向Bに沿う方向の第一延在領域23の長さであり、第二延在領域24の幅は、第一方向Aに沿う方向の第二延在領域24の長さである。
【0047】
図6に示すように、ロール体300から通気シート3を引き出して、シート幅Wを維持しつつ、複数の第一領域26と複数の重畳領域25に跨る長さの位置で切断された帯状の通気シート3(以下、適宜、第一通気シート3Aと呼ぶ。)を第一延在領域23に設置すると、第一断熱材2との間に隙間を作ることなく、通気シート3を設置することができる。一方、上記のように第一通気シート3Aを設置すると、第二延在領域24の一部をも成す重畳領域25には、上記第一通気シート3Aが既に設置されていることになる。このため、第二延在領域24で空いている領域は、それぞれが連続せず、間隔を空けて位置する各第二領域27となる。図6の一段目の第二延在領域24Aに示すように、ロール体300から通気シート3を引き出して、シート幅Wを維持しつつ、単一の第二領域27の長さに一致する長さの位置で切断された帯状の通気シート3(以下、適宜、第二通気シート3Bと呼ぶ。)を各第二領域27に配置すれば、第一延在領域23及び第二延在領域24全体に通気シート3を設置することができる。
【0048】
また、図6の二段目の第二延在領域24Bに示すように、ロール体300から通気シート3を引き出して、シート幅Wを維持しつつ、第二領域27のみならず第一通気シート3A(重畳領域25)の一部にも重畳する長さの位置で切断された帯状の通気シート3(以下、適宜、第三通気シート3Cと呼ぶ。)を設けて、その第三通気シート3Cが、隣接する第一通気シート3Aの一部に重畳しつつ、第二領域27を埋めるように設置してもよい。なお、第三通気シート3Cは、第二通気シート3Bの長さ方向の長さが延長された長さを有する。そして、第一通気シート3Aと第三通気シート3Cが重なり合う領域(以下、適宜、シート重畳領域と呼ぶ。)35は、図7(A)に示すように、第三通気シート3Cの端部領域を第一通気シート3Aの端部領域に被せることにより設けられる。そして、シート重畳領域35では、図7(B),(C)に示すように、第三通気シート3Cの凸部32が第一通気シート3Aの凹部34に挿入可能なように第一通気シート3Aと第三通気シート3Cの凸部32及び凹部34の位置、大きさ、形状が構成されることが好ましい。以上のように通気シート3が構成された結果、シート重畳領域35の厚みを薄くすることができると共に、第一通気シート3Aと第三通気シート3Cが係合して、互いの相対移動を制限することができる。
【0049】
また、図6の三段目の第二延在領域24Cに示すように、ロール体300から通気シート3を引き出して、シート幅Wを維持しつつ、複数の第二領域27と複数の重畳領域25に跨る長さの位置で切断された帯状の通気シート3(以下、適宜、第四通気シート3Dと呼ぶ。)を設け、第一延在領域23に設置された第一通気シート3Aと重畳領域25全体で重畳するようにその第四通気シート3Dを第二延在領域24に設置してもよい。このように構成すれば、上記第二通気シート3B及び第三通気シート3Cの場合と比較して、用意すべき通気シート3の枚数が減るため、通気シート3を切断する作業工程の数を低減することができる。また、シート重畳領域35において、第四通気シート3Dの凸部32が第一通気シート3Aの凹部34に挿入可能なように第一通気シート3Aと第四通気シート3Dの凸部32及び凹部34の位置、大きさ、形状が構成されれば、シート重畳領域35の厚みを薄くすることができると共に、第一通気シート3Aと第四通気シート3Dが係合して、互いの相対移動を制限することができる。
【0050】
また、図8に示すように、ロール体300から通気シート3を引き出して、シート幅Wを維持しつつ、複数の第二領域27と複数の重畳領域25に跨る長さの位置で切断された帯状の通気シート3を第二延在領域24に設置してもよい。残りの複数の第一領域26に対しては、上記で説明した本実施形態の態様(第二延在領域に対する通気シート3の3種類の配置態様)に習って通気シート3を設置することができる。
【0051】
以上のように設置された通気シート3と屋上面910が協働して設けられる通気路100の出入口は、図6に示すように、建物900の通気構造1の外縁に位置する通気シート3の端部に設けられる開口130及び開口140が成す。つまり、通気路100は、開口130及び開口140を通じて外部に開放される。図6では、通気路100の出入口としての開口130及び開口140は、それぞれ一つずつしか描かれていないが、これに限定されるものではなく、建物900の通気構造1の外縁に位置する通気シート3のその他の端部にも1つずつ又は複数設けられてもよい。
【0052】
なお、開口130及び開口140の代わりに、又は追加して通気シート3を板厚方向に貫通する孔37を少なくとも1つ設けて、そこを通気路100の出入口として用いてもよい。そして、通気シート3よりも上層側には、通気シート3よりも上層側部分(第二断熱材4、遮熱層5、防水シート6)を貫通して外気に開放される外部開放側通気路150(図1参照)が設けられる。孔37は外部開放側通気路150に連続する。結果、通気路100は、外部開放側通気路150を通じて外部に連通する。なお、通気路100の入口及び出口に相当する部分は、それぞれ少なくとも1つ設けられる。通気路100の入口及び出口に相当する部分は、複数の開口130、複数の開口140、複数の孔37及び、複数の孔37に対応する外部開放側通気路150のうち、少なくとも2つにより構成される。
【0053】
また、ファンを含む吸気装置又は送風装置(図示省略)を通気路100の入口及び出口に相当する部分のいずれか一方に導入して、通気路100内に強制的に空気の流れを生成してもよい。いずれにしても通気路100の入口及び出口に相当する部分が少なくとも2つあれば、通気路100内に空気の流れを生成できるので、建物900の通気構造1は、通気路100の入口及び出口を有するように構成されることが好ましい。
【0054】
更に、各第一延在領域23と各第二延在領域24は、各重畳領域25で連続するように構成されている。このため、通気路100は、網目状に連続して広がりつつ、屋上面910の全体において繋がったものとなる。結果、全ての通気路100は、通気路100の出入口を通じて外部に開放された状態となり、通気路100のいずれかの位置において流れる蒸気も通気路100の出口から外に排出することが可能となる。なお、通気路100は、通気路100の一部を構成する第一通気路片(図示省略)と、通気路100の残りを構成し、第一通気路片と繋がらない第二通気路片(図示省略)とに分離されて構成されてもよい。この場合でも、第一通気路片に繋がる第一入口及び第一出口と、第二通気路片に繋がる第二入口及び第二出口が設けられればよい。つまり、通気路100は、第一通気路片、第一入口及び第一出口で構成される第一通気路グループと、第二通気路片、第二入口及び第二出口で構成される第二通気路グループで構成されてもよい。以上の事を拡張して、通気路100が更に複数の通気路グループに分離されたものも本発明の範囲に含まれる。
【0055】
なお、図9(A)に示すように、本実施形態において第一断熱材2の厚みT1と、通気シート3の厚みT2は、T1>T2となる。この場合、建物900の屋上面910に通気シート3を設置しても第一断熱材2の上面2Aと通気シート3の平面33は、同一平面とはならず、第一断熱材2と通気シート3の境界で段差200が形成される。
【0056】
<第二断熱材>
図1図2図9及び図10を参照して第二断熱材4について説明する。第二断熱材4は、断熱性を有する材料を含む。断熱性を有する材料として、例えば、グラスウール、ロックウール、セルロースファイバー、インシュレーションボード、押出発泡ポリスチレン、ビーズ法ポリスチレン、硬質ウレタンフォーム、高発泡ポリエチレン等が一例として挙げられる。本実施形態において第二断熱材4は、直方体形状になっているが、これに限定されるものではなく、その他の形状であってもよい。
【0057】
また、第二断熱材4は、第一断熱材2と同様に、通気シート3を重ねて構成されたものであってもよい。そして、第二断熱材4は、第一断熱材2と同一の材料で構成されることが好ましいが、これに限定されるものではなく、第一断熱材2と異なる材料で構成されてもよい。
【0058】
第二断熱材4は、図9(B)に示すように、第一延在領域23及び第二延在領域24に設置された通気シート3の上面(平面33)に設置される。つまり、第二断熱材4は、第一延在領域23及び第二延在領域24において通気シート3の上面(平面33)に設置される。この際、第二断熱材4の上面4Aと第一断熱材2の上面2Aが同一平面となるように、第二断熱材4の厚みT3は、(T1-T2)となることが好ましい。なお、第一断熱材2の上面2Aとは、建物900の設置面を向く側とは反対側を向く第一断熱材2の面である。また、第二断熱材4の上面4Aとは、通気シート3を向く側とは反対側を向く第二断熱材4の面である。
【0059】
また、図9(B)に示すように、第二断熱材4は、第一延在領域23及び第二延在領域24の幅Wと略同じ幅を有し、且つ一定幅を有することが好ましい。なお、この場合、第二断熱材4の幅は、通気シート3のシート幅とも一致する。そして、第二断熱材4は、第一断熱材2に対する相対位置が固定されるように第二断熱材4の周囲の部材(本実施形態では、第一断熱材2)に固定される。なお、第一断熱材2に対する第二断熱材4の相対位置は、第二断熱材4の下面4Bが通気シート3の上面(平面33)に接触しつつ、第二断熱材4の上面4Aと第一断熱材2の上面2Aが同一平面となるようなものが好ましい。第二断熱材4が固定される相手が第一断熱材2である場合、第一断熱材2と第二断熱材4の固定手段を用いた固定態様は、固定手段として接着剤等の接着手段を用いて第一断熱材2の側面2B、第二断熱材4の側面4C同士を接着させて両者を固定する態様であってもよいし、固定手段として両者のそれぞれに相互に着脱可能な着脱機構が形成されており、該着脱機構を用いて両者を固定する態様であってもよいし、別途、固定手段として連結部材を用いて両者を固定する態様であってもよい。
【0060】
以上のように、第一断熱材2に対する第二断熱材4の相対位置が固定されると、第二断熱材4と屋上面910の対向距離は、通気シート3の厚みT2となるため、第二断熱材4と屋上面910の間には、通気シート3が湾曲可能なだけの余剰空間が形成されない。その結果、通気シート3は、第二断熱材4に接触して、第二断熱材4により屋上面910に押さえ付けられる。これにより、本実施形態における通気構造1は、通気シート3の湾曲を制限することができる。ただし、第二断熱材4は第一断熱材2に固定された上で、通気シート3の湾曲を制限するので、第一断熱材2も第二断熱材4と協働して通気シート3の湾曲を制限していると見做せる。そして、本実施形態における通気構造1によれば、屋上面910に通気路100を形成しつつ、断熱構造を形成することができる。その意味で、通気構造1は、断熱通気構造と読み替えてもよい。
【0061】
また、本実施形態において第一断熱材2と第二断熱材4は、図10に示すように、通気シート3よりも上層側において敷き詰められた状態にある。つまり、第一延在領域23及び第二延在領域24には、複数の第二断熱材4が隣接する第一断熱材2及び第二断熱材4に連続するように敷き詰められる。この際、隣接する第一断熱材2及び第二断熱材4、及び隣接する第二断熱材4同士の間に隙間無く連続することが好ましい。上記説明したように構成された第二断熱材4が予め容易されていれば、その第二断熱材4を通気シート3に設置するだけで、通気シート3よりも上層側において第一断熱材2と第二断熱材4を敷き詰めることができる。なお、第二断熱材4よりも下層側において第一断熱材2と通気シート3は、建物900の屋上面910に敷き詰められた状態にある。結果、建物900の屋上面910は、第一断熱材2、通気シート3及び第二断熱材4により敷き詰められた状態になる。本発明において敷き詰められた状態とは、隣接する第一断熱材2と第二断熱材4、及び隣接する第二断熱材4同士のそれぞれが境界において直接接触している状態、並びに、隣接する第一断熱材2と第二断熱材4、及び隣接する第二断熱材4同士のそれぞれが境界において固定手段を介して間接的に接触していたりしている状態の少なくとも一方を含む。特に、隣接する第一断熱材2と第二断熱材4、及び隣接する第二断熱材4同士のそれぞれの固定手段として接着剤等の接着手段を用いる場合、境界において接着剤等の接着手段を介して隣接する第一断熱材2と第二断熱材4、及び隣接する第二断熱材4同士のそれぞれは間接的に接触する。
【0062】
<遮熱層、防水シート>
図1及び図11を参照して、遮熱層5及び防水シート6について説明する。遮熱層5は、外部からの熱(輻射熱)が第一断熱材2と第二断熱材4へ伝わることを遮るものであり、図1(A)に示すように、第二断熱材4と第一断熱材2を含む断熱層よりも上層側に設けられる。遮熱層5は、遮熱シート51と、通気シート3と、を有する。遮熱シート51は、例えば、輻射熱を反射するものである。遮熱シート51として、例えば、アルミニウムシートやポリエチレンフィルム等を積層させたものが挙げられるが、これに限定されるものではなく、その他の公知の遮熱シートの全てを本発明は含む。
【0063】
通気シート3は、既に説明したものと同様のものである。遮熱シート51は、自身の一方の平面51Aが通気シート3の平面33に当接するように配置される。なお、遮熱シート51は、複数枚積層されてもよい。そして、遮熱層5は、図11(A)に示すように、遮熱シート51の平面51Aとは反対側の平面51Bが第一断熱材2の上面2A、及び第二断熱材4の上面4Aに当接するように設置される。また、遮熱層5の上に防水シート6が設置される。
【0064】
防水シート6は、防水シート6の一方の平面6Aが通気シート3の凸部32の頂部32Aに接触した状態で通気シート3に支持される。この際、防水シート6と通気シート3の間には、通気路110が形成される。通気路110は、防水シート6の一方の平面6Aと、通気シート3の平面31と、凸部32の表面32Bとで構成される。通気路110内の空間が遮熱シート51の空気層としての役割を担う。更に、通気路110は、外部に開放されるために、通気路100に習って、外部に開放される少なくとも2つの開口(図示省略)を有する。このため、通気路110内には、空気の流れが生じる。特に、ファンを用いて通気路110に空気を強制的に循環させれば、通気路110内の温度を低減させることができる。これにより、太陽光等に起因する輻射熱による建物内部への温度の影響を低減することができる。
【0065】
また、図11(B)に示すように、第一断熱材2、及び第二断熱材4と、遮熱シート51との間に、通気シート3を追加設置してもよい。その通気シート3は、凸部32の頂部32Aが第一断熱材2の上面2A、及び第二断熱材4の上面4Aに当接するように設置される。この際、第一断熱材2、及び第二断熱材4と、遮熱シート51の間には、通気路120が形成される。通気路120は、通気シート3の平面31と、凸部32の表面32Bと、第一断熱材2の上面2A、及び第二断熱材4の上面4Aで構成される。更に、通気路120は、外気に開放されるために、通気路100に習って、少なくとも2つの開口(図示省略)を有する。このため、通気路120内には、空気の流れが生じる。特に、ファンを用いて通気路120に空気を強制的に循環させれば、通気路120内の温度を低減させることができる。これにより、太陽光等に起因する輻射熱の発生を更に低減することができる。
【0066】
<通気シート設置方法>
図12を参照して、建物900の屋上面910に対する本実施形態における通気シート3の設置方法について以下説明する。まず、図12(A)に示すように、建物900の屋上面910に第一断熱材2を、間隔を空けて複数設置する(第一断熱材設置工程)。本実施形態では、図2に示すように、第一方向列20及び第二方向列21が形成されるように複数の第一断熱材2を設置する。結果、複数の第一断熱材2の間には、通気構造1の積層方向から平面視した際、通気シート3のシート幅Wと等幅で、且つ一定幅を有する帯状領域となる第一延在領域23及び第二延在領域24が設けられる。なお、第一延在領域23及び第二延在領域24の幅は以上に限定されるものではなく、その他の幅を有してもよい。
【0067】
なお、第一断熱材2は、固定手段(図示省略)を用いて屋上面910に固定される。固定手段として、例えば、接着剤やアンカーボルト等が挙げられる。固定手段がアンカーボルトであれば、屋上面910にアンカーボルト用の穴をドリルで開ける必要があるが、穴開けに起因する騒音が発生する。一方、固定手段が接着剤であれば、施工時に、騒音は発生しないため、固定手段として接着剤が好ましい。
【0068】
次に、図12(B)に示すように、第一延在領域23と第二延在領域24に、通気シート3を設置する(通気シート設置工程)。なお、図13に示すように、本実施形態において、第一延在領域23と第二延在領域24に設置する通気シート3は、ロール体300から所望の長さを引き出して、切断して作成する(通気シート加工工程)。切断された通気シート3は、一定のシート幅Wを有する帯状態様となる。なお、図13では、通気シート3の凸部32は省略して描かれている。
【0069】
そして、通気シート3のシート幅Wは、第一延在領域23の幅及び第二延在領域24の幅と同じである。つまり、第一断熱材設置工程では、通気シート3のシート幅を考慮して、第一延在領域23の幅、及び第二延在領域24の幅が通気シート3のシート幅と一致するように、建物900の屋上面910に複数の第一断熱材2を、間隔を空けて固定してある。なので、本実施形態では、通気シート3のシート幅方向の長さを調整するための切断は必要なく、通気シート3のシート長方向の長さを調整するための切断のみで足りる。このため、本実施形態では、通気シート3の加工の手間を最小限に抑えることができ、作業効率が向上する。また、従来は、通気シート3は、屋上面910の端から並べて敷き詰める必要があり、屋上面910における通気シート3の設置面積が大きい場合、並べている最中に隣接する通気シート3に設置面方向の外力が加わると、通気シート3の位置ずれが生じたりして位置決めが面倒であった。本実施形態によれば、第一方向列20及び第二方向列21により通気シート3の一単位を設置する場所(第一延在領域23及び第二延在領域24)が用意されるので、通気シート3の位置決めが簡単である。
【0070】
第一延在領域23及び第二延在領域24に通気シート3が設置されると、第一断熱材2と通気シート3の表面には、図12(B)に示すように、第一断熱材2と通気シート3の厚みの差に起因して段差200が形成される。この段差200を無くすため、次に、図12(C)に示すように、通気シート3の上面(平面33)に第二断熱材4を設置する(第二断熱材設置工程の仮設置工程:第一工程)。通気シート3の上面(平面33)に第二断熱材4を設置すると、第一断熱材2の上面2Aと第二断熱材4の上面4Aは、同一平面となる。
【0071】
また、第二断熱材4は、段差200が形成される第一延在領域23及び第二延在領域24全体に設置される。そして、図12(C)に示すように、第二断熱材4は、幅がWで第一延在領域23と同一の幅か、又は第一延在領域23よりもわずかに小さい幅を有する。このため、設置された第二断熱材4と両側において隣接する第一断熱材2との間には、隙間が生じないか、又は、仮にわずかに隙間ができても、後述する接着手段等により隙間は埋められる。つまり、設置された第二断熱材4は、下面において通気シート3の上面(平面33)に接触しつつ、側面において第一断熱材2の側面2Cとの間にほとんど隙間が生じない状態となる。この段階で外側から屋上面910を見ると、第一断熱材2と第二断熱材4が屋上面910全体に隙間無く敷き詰められている状態になる。
【0072】
そして、通気シート3の上面(平面33)に設置した第二断熱材4を隣接する第一断熱材2に固定する(第二断熱材設置工程の固定工程:第二工程)。これにより、第一断熱材2に対する第二断熱材4の相対位置が固定される。固定態様は、上記で説明したように、接着手段を用いて両者を固定する態様、着脱機構を用いて両者を固定する態様、別途連結部材を用いて両者を固定する態様のいずれであってもよい。以上のように、第二断熱材設置工程では、設置された通気シート3上に第二断熱材4を設置する設置工程(第一工程)と、設置された第二断熱材4を隣接する第一断熱材2に固定する固定工程(第二工程)がある。その結果、第二断熱材4と屋上面910の対向距離は、通気シート3の厚みと同一となるため、第二断熱材4と屋上面910の間には、通気シート3が湾曲可能なだけの余剰空間が形成されない。このため、通気シート3は、第二断熱材4により屋上面910に押さえ付けられる。これにより、本実施形態における通気構造1は、通気シート3の湾曲を制限することができる。
【0073】
なお、固定態様が接着手段を用いて両者を固定する態様である場合、第一延在領域23及び第二延在領域24側を向く第一断熱材2の側面2B、又は、第一延在領域23及び第二延在領域24に第二断熱材4を設置した際、第一断熱材2の側面2B側を向く第二断熱材4の側面4Cに、接着剤(図示省略)を予め塗布する。そして、第一延在領域23及び第二延在領域24に第二断熱材4を設置すると、第一断熱材2と第二断熱材4は側面において接着するので、両者の相対位置は固定される。結果、通気シート3は、第二断熱材4により屋上面910に押し付けられて固定される。この状態において通気シート3を収容する空間には通気シート3が湾曲するスペースがないので、通気シート3は、湾曲を制限される。なお、通気シート3を収容する空間とは、2つの第一断熱材2の側面2Bと、第二断熱材4の下面4B、屋上面910とで取り囲まれる空間を指す。
【0074】
最後に、第一断熱材2、第二断熱材4及び通気シート3により構成される断熱層よりも上層側に遮熱層5を設け(遮熱層設置工程)、遮熱層5よりも上層側に防水シート6を設置して(防水シート設置工程)、本実施形態における通気構造1が完成する。
【0075】
以上において、通気構造1の第一断熱材2、第二断熱材4のそれぞれを第一部材、及び第二部材に拡張したものも本発明の範囲に含まれる。第一部材、及び第二部材は、断熱を目的としたものに限定されない。第一部材は、少なくとも通気シート3を設置する領域である第一延在領域23や第二延在領域24を設けるための領域設定部材として機能する。建物の設置面に第一延在領域23や第二延在領域24が設けられると、通気シート3の位置決めが容易である。特に、一定幅の帯状の通気シート3を用いる場合、第一延在領域23及び第二延在領域24の幅が通気シート3と同幅となるように第一部材の設置により第一延在領域23及び第二延在領域24の境界を画定すれば、作業効率が向上する。その意味で、第一部材は、領域境界画定部材、又は、通気シート3の位置決め部材としても機能する。
【0076】
一方、第二部材は、通気シート3に設置され、通気シート3を設置面に押さえ付けることにより通気シート3の湾曲を制限する湾曲制限部材として機能する。ただし、第二部材は、第一部材に固定された上で、通気シート3の湾曲を制限するので、第一部材も第二部材と協働して湾曲制限部材として機能していると見做せる。また、図14に示す本実施形態の通気構造1の変形例のように、第二断熱材4を省略してもよい。この場合、第一断熱材2と通気シート3の厚みは略同じとなり、第一断熱材2の上面2Aと通気シート3の平面33は同一平面となる。そして、遮熱層5は、第一断熱材2と通気シート3で構成される通気断熱層よりも上方側において通気断熱層に隣接するように構成され、接着手段等の固定手段により第一断熱材2に固定されつつ、通気シート3に接触して通気シート3を第一断熱材2と協働して設置面に押さえ付ける。それ以外の構成は本実施形態の通気構造1と同様である。なお、この構成の場合、第一断熱材2は第一部材、遮熱層5は第二部材と見做せる。また、第二部材としての遮熱層5は、第一延在領域23及び第二延在領域24の外側の領域に設置されることになる。なお、繰り返しになるが、第一部材、第二部材は、それぞれ第一断熱材2、遮熱層5に限定されるものではなく、その他のもので構成されてもよい。このような全ての構成が本発明の範囲に含まれる。
【0077】
そして、第一部材、及び第二部材は、上記説明した第一断熱材2、第二断熱材4の構成(形状、大きさ等)、設置態様、設置方法の説明を可能な限り適用可能である。この場合、例えば、第一断熱材設置工程は、第一部材設置工程と読み替えられ、第二断熱材設置工程は、第二部材設置工程と読み替えられ、その他においても同様に読み替えられる。
【0078】
尚、本発明の通気構造1及び、通気シート3の設置方法は、上記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0079】
1 通気構造
2 第一断熱材
3 通気シート
3A 第一通気シート
3B 第二通気シート
3C 第三通気シート
3D 第四通気シート
4 第二断熱材
5 遮熱層
6 防水シート
20 第一方向列
21 第二方向列
23 第一延在領域
24,24A,24B,24C 第二延在領域
25 重畳領域
26 第一領域
27 第二領域
30 シート部
32 凸部
34 凹部
35 シート重畳領域
51 遮熱シート
100,110,120 通気路
300 ロール体
900 建物
910 屋上面
A 第一方向
B 第二方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14