(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160559
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】抗力型垂直軸風車構造
(51)【国際特許分類】
F03D 3/06 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
F03D3/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022070998
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】390013033
【氏名又は名称】三鷹光器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中村 勝重
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA12
3H178AA22
3H178AA43
3H178BB31
3H178CC05
3H178DD70X
(57)【要約】
【課題】回転方向とは逆側に生じる抗力をほぼ無くし、回転力を増大させて発電能力の更なる向上を図ることができる抗力型垂直軸風車構造を提供する。
【解決手段】抗力ブレード8が回転フレーム6における第1半分領域Aにおいて内側ストッパ11の風上側に当接するため、そこに受ける風Fの抗力により回転して発電することができる。風Fを受けるのは第1半分領域Aだけで、その逆側の第2半分領域Bでは抗力ブレード8は内側ストッパ11にも外側ストッパ12にも当接しないフリー状態で風Fに沿った無抵抗状態となるため、第1半分領域Aだけに発生する抗力により回転力を増大させて発電能力の更なる向上を図ることができる。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直回転軸の上下に垂直回転軸を中心に水平方向に回転する回転フレームを固定し、該上下回転フレーム間の等角度間隔位置に垂直方向に沿う抗力ブレードが複数取付けられ、一定方向に回転する抗力型垂直軸風車構造であって、
前記抗力ブレードは一端の支軸が回転フレームに対して回転自在に支持され、
該回転フレームには垂直回転軸を中心とした放射方向で支軸を挟む位置にそれぞれ内側ストッパと外側ストッパが設けられ、回転フレームにおける風上側中央から回転方向へ向かう第1半分領域において抗力ブレードが内側ストッパの風上側に当接し、
外側ストッパが抗力ブレードに当接して該抗力ブレードの回転範囲を制限し、前記とは逆側の第2半分領域において抗力ブレードが内側ストッパの風上側まで回り込んで内側ストッパと当接するのを防止することを特徴とする抗力型垂直軸風車構造。
【請求項2】
抗力ブレードに支軸から反抗力ブレード側に延びて支軸を中心とした重量バランスを均等にするカウンタウェイトが設けられていることを特徴とする請求項1記載の抗力型垂直軸風車構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は抗力型垂直軸風車構造に関する。
【背景技術】
【0002】
発電用の風車の形式として垂直軸風車が知られている。垂直軸風車はプロペラ型に代表される水平軸風車とは異なり、風の方向に関係なく回転するという利点がある。そして垂直軸風車には、ブレード(羽根)に発生する抗力が回転力となる抗力型と、ブレードに発生する揚力が回転力となる揚力型とがある。
【0003】
抗力型は構造が簡単で、低風速でも回転して発電できるという特性を持つ。従って抗力型の垂直軸風車は、日本国内の都市部や市街地のように風速と風向きが頻繁に変化する地域に適している。
【0004】
このような抗力型垂直軸風車にも課題がある。すなわち、垂直軸風車における風上側中央から回転方向に向かう半分領域では、風を受けてブレードに生ずる抗力がそのまま回転力となるが、その逆側の半分領域ではブレードに風が当たることにより回転方向とは逆側の抗力が発生する。そのため十分な回転力が得られないという構造的な問題を有していた。
【0005】
そこで、特許文献1の風車では回転方向に沿う半分領域では ブレードを抗力が発生しやすい角度に調整し、逆にその反対側の半分領域ではブレードを抗力が発生しにくい角度に調整して、その抗力の差により回転力が得られるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このような関連技術にあっても回転方向とは逆側の半分領域においてブレードに風が当たることは避けられず、どうしても回転方向とは反対方向の抗力が発生してしまうため、得られる回転力に限界があり、発電能力の更なる向上を図ることができなかった。
【0008】
本発明は、このような関連技術に着目してなされたものであり、回転方向とは逆側に生じる抗力をほぼ無くし、回転力を増大させて発電能力の更なる向上を図ることができる抗力型垂直軸風車構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の技術的側面によれば、垂直回転軸の上下に垂直回転軸を中心に水平方向に回転する回転フレームを固定し、該上下回転フレーム間の等角度間隔位置に垂直方向に沿う抗力ブレードが複数取付けられ、一定方向に回転する抗力型垂直軸風車構造であって、前記抗力ブレードは一端の支軸が回転フレームに対して回転自在に支持され、該回転フレームには垂直回転軸を中心とした放射方向で支軸を挟む位置にそれぞれ内側ストッパと外側ストッパが設けられ、回転フレームにおける風上側中央から回転方向へ向かう第1半分領域において抗力ブレードが内側ストッパの風上側に当接し、外側ストッパが抗力ブレードに当接して該抗力ブレードの回転範囲を制限し、前記とは逆側の第2半分領域において抗力ブレードが内側ストッパの風上側まで回り込んで内側ストッパと当接するのを防止することを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の技術的側面によれば、抗力ブレードに支軸から反抗力ブレード側に延びて支軸を中心とした重量バランスを均等にするカウンタウェイトが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の第1の技術的側面によれば、抗力ブレードが回転フレームにおける第1半分領域において内側ストッパの風上側に当接するため、そこに受ける風の抗力により回転して発電することができる。風を受けるのは第1半分領域だけで、その逆側の第2半分領域では抗力ブレードは内側ストッパにも外側ストッパにも当接しないフリー状態で風に沿った無抵抗状態となるため、第1半分領域だけに発生する抗力により確実に回転することができる。特に第2半分領域の抗力ブレードは外側ストッパにより回転範囲が制限されているため、抗力ブレードが内側ストッパの風上側まで回り込んで当接することはない。そのため第2半分領域で抗力ブレードが第1半分領域と同様になることはない。
【0012】
本発明の第2の技術的側面によれば、抗力ブレードにカウンタウェイトが設けられているため、抗力ブレードが支軸を中心に回転する際の勢いが低下し、抗力ブレードが内側ストッパまたは外側ストッパに当接する際の衝撃が緩和される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】架台に収納された抗力型垂直軸風車構造の全体図。
【
図7】回転状態を示す抗力型垂直軸風車構造の概略平面図。
【
図8】外側ストッパを省略した
図7相当の概略平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1~
図8は本発明の好適な実施形態を示す図である。
【0015】
本実施形態の抗力型垂直軸風車構造1は長方形をした架台2の内部に収納されている。架台2は抗力型垂直軸風車装置1ごと上下に積み重ね可能な構造で、四隅には積み重ねるための円柱部3が設けられている。
【0016】
抗力型垂直軸風車構造1は中心に垂直回転軸4を有し、その上下端が架台2の中央に回転自在に支持されている。垂直回転軸4の上部には回転力を取り出して図示せぬ発電機に伝えるためのプーリー5(
図4参照)が設けられている。
【0017】
垂直回転軸4の上下には、垂直回転軸4を中心に水平方向に回転する回転フレーム6が固定されている。上下回転フレーム6間の等角度間隔位置には垂直方向に沿う8枚の抗力ブレード8が設けられている。抗力ブレード8に風Fを受けることによりR方向へ回転を継続するようになっている。この抗力型垂直軸風車構造1は風Fの指向性はなく、どの方向からの風向きに対しても対応して回転することができる。
【0018】
抗力ブレード8は一端の支軸9が回転フレーム6に対して回転自在に支持され、且つ支軸9から反抗力ブレード8側には、支軸9を中心とした重量バランスを均等にするためのカウンタウェイト10が上下に設けられている。
【0019】
そして上下の回転フレーム6にはそれぞれ垂直回転軸4を中心とした放射方向で支軸9を挟む位置に内側ストッパ11と外側ストッパ12が設けられている。また支軸9の回転フレーム6を突き抜けた上下端には抗力ブレード8と同じ方向を向いたピン13が設けられている。
【0020】
回転フレーム6の風上側中央から回転方向Rへ向かう第1半分領域Aでは、前記ピン13(抗力ブレード8)は内側ストッパ11の風上側に当接し、風Fを受け止める(
図7参照)。逆側の第2半分領域Bでは、外側ストッパ12と内側ストッパ11は風向きに対して横並びになるため、ピン13(抗力ブレード8)はどちらにも当接せず、支軸9を先頭にして風Fの方向に沿った状態となる。従って第2半分領域Bでは何らの抗力も発生しない。
【0021】
ここで外側ストッパ12の機能について説明する。外側ストッパ12は抗力ブレード8に当接して抗力ブレード8の回転範囲を制限し、第2半分領域Bにおいて抗力ブレード8が内側ストッパ11の風上側まで回り込んで内側ストッパ11と当接するのを防止する。
【0022】
図8は外側ストッパ12を省略した図であるが、このように外側ストッパ12が存在しないと、抗力ブレード8は不規則に回転し、抗力ブレード8が第2半分領域Bにおいて内側ストッパ11の風上側まで回り込んで当接してしまう。そうすると第2半分領域Bにおいて抗力ブレード8が風Fを受け、本来の回転方向Rとは逆側への抗力が発生して、正常な回転が行えなくなる。
【0023】
またこの実施形態の抗力ブレード8にはカウンタウェイト10が設けられているため、抗力ブレード8が支軸9を中心に回転する際に適度な慣性モーメントの付加により回転速度の急激な変化が安定化されて、ピン13(抗力ブレード8)が内側ストッパ11または外側ストッパ12に当接する際の接触速度が抑制される。さらに重量バランスにより支軸9への力学的負担が小さくなるので、ピン13その他の構造の耐久性を向上させることができる。
【0024】
以上説明したように、本実施形態の抗力型垂直軸風車構造1では、第1半分領域Aだけで抗力ブレード8が風Fを受けるため、回転方向とは逆側の第2半分領域Bに生じる抗力をほぼ無くし、回転力を増大させて発電能力の更なる向上を図ることができる。
【0025】
本実施形態では、抗力ブレード8をピン13を介して内側ストッパ11及び外側ストッパ12へ間接的に当接させる例を示したが、直接的に当接させる構造にしても良い。
【符号の説明】
【0026】
1 抗力型垂直軸風車構造
2 架台
4 垂直回転軸
6 回転フレーム
8 抗力ブレード
9 支軸
10 カウンタウェイト
11 内側ストッパ
12 外側ストッパ
13 ピン
A 第1半分領域
B 第2半分領域