(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160563
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】保持金具
(51)【国際特許分類】
A62B 35/00 20060101AFI20231026BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
A62B35/00 J
E04G21/32 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071003
(22)【出願日】2022-04-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-09-16
(71)【出願人】
【識別番号】709000723
【氏名又は名称】江藤 豊年
(74)【代理人】
【識別番号】100167690
【弁理士】
【氏名又は名称】横井 直
(72)【発明者】
【氏名】江藤 豊年
【テーマコード(参考)】
2E184
【Fターム(参考)】
2E184JA03
2E184KA06
2E184KA11
2E184LA03
(57)【要約】
【課題】本発明は、簡単に脱着が可能であって保持金具を装着する場所の形状を選ぶことなく取り付けることが可能な保持金具を提供することにある。
【解決手段】安全帯(1)を引っ掛けて使用し、固定する対象物(2、8)の形状に調整し挟み込み固定する保持金具(10)であって、固定する対象物を挟み込むための一対の把持部(21、51)と、両方の把持部によって形成される空間と、その空間内に侵入及び退避が可能であって把持するときの厚みを調整する調整部(80)と、把持部を対象物に挟み込んだ状態を維持する固定部(41)と、を備えたことを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定する対象物の形状に調整し挟み込み固定する保持金具であって、
固定する前記対象物を挟み込むための一対の把持部と、
両方の把持部によって形成される空間と、
その空間内に侵入及び退避が可能であって把持するときの厚みを調整する調整部と、
前記把持部を前記対象物に挟み込んだ状態を維持する固定部と、
を備えたことを特徴とする保持金具。
【請求項2】
前記把持部に設けられた螺合手段によって進退及び固定が可能な前記調整部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の保持金具。
【請求項3】
軸支した軸支部を中心に回転移動によって前記把持部を開閉することが可能な開閉手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の保持金具。
【請求項4】
前記把持部の各々と連結する取っ手部と、その取っ手部の開閉を固定することによって固定を維持する前記固定部と、
固定部によって固定されている場合であっても把持部の間隔を調整可能な第2の開閉調整部と、
を備えたことを特徴とする請求項3に記載の保持金具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業員が安全帯を装着し作業する場合や、荷物等を吊り下げる際に使用する場合や、対象物となる鉄骨や足場のパイプに固定する場合等に使用する保持金具に関する。
【背景技術】
【0002】
落下防止のため従来から安全帯を装着して高所作業等が行われている。安全帯は、先端に引っ掛けるフックが設けられており、そのフックを固定されている保持金具に引っ掛け使用するタイプが一般的に使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1に、足場の縦部材に外嵌可能な環状の取付部2と、安全帯のフックが掛合可能な環状部14と、前記環状部14へ作用する下向き荷重に応じて前記縦部材の外周面を押圧するよう構成された押圧部15とを有する安全帯取付具の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の保持金具は、作業現場で装着するのに手間が掛かっていたり、また、必ずしもパイプ形状の箇所があるとは限らず、保持金具を固定する箇所が限定されてしまう等の問題が発生していた。
【0006】
本発明は、簡単に脱着が可能であって保持金具を装着する場所の形状を選ぶことなく取り付けることが可能な保持金具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
固定する対象物の形状に調整し挟み込み固定する保持金具であって、
固定する前記対象物を挟み込むための一対の把持部と、
両方の把持部によって形成される空間と、
その空間内に侵入及び退避が可能であって把持するときの厚みを調整する調整部と、
前記把持部を前記対象物に挟み込んだ状態を維持する固定部と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
以上の特徴によって、本発明は、調整部によって挟み込むときの厚みを容易に調整することが可能であると共に、対象物の形状に合わせて挟み込む空間の形状を変化させることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態の保持金具を使用して安全帯を装着した様子を示す概要図である。
【
図2】実施形態の保持金具を使用して安全帯を装着した様子を示す概要図である。
【
図4】実施形態の保持金具の内部構造を示す正面概要図である。
【
図7】実施形態の保持金具を使用して安全帯を装着した他の例を示す概要図である。
【
図8】実施形態の保持金具を使用して安全帯を装着した他の例を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明にかかる保持金具について、図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態及び図面は、本発明の実施形態の一部を例示するものであり、これらの構成に限定する目的に使用されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更することができる。
【0011】
図1及び
図2は、保持金具10を使用した状態を示している。保持金具10は、断面がエ字状の鉄骨2の片4に上部把持部20及び下部把持部50を挟み込んでいる。また、安全帯1は、金具本体3から延びた支持部7と、バネ構造によってロック部5と密着した状態で付勢され閉じた状態を維持している。
【0012】
安全帯1は、保持金具10に通した輪状のリング6を介して引っ掛けられている。リング6は、一部の片を解放することも可能であり、バネ構造によって付勢された片は、閉じた輪状を維持している。リング6は、バネ構造以外にネジ構造で結合し輪状を形成しても良い。
【0013】
次に、
図3から
図6を参照して保持金具10について詳細に説明する。
図3は、リング6と共に保持金具10の斜視図を示す。
図4は、保持金具の内部構造を示す正面概要図である。
図5及び
図6は、保持金具10を示す斜視図である。
【0014】
図3から
図6に示す保持金具10は、金属性で形成した上部把持部20及び下部把持部50の先端に大小のノコギリ刃状の把持機能を持つ上部把持部筐体21及び下部把持部筐体51を備えている。
【0015】
上部把持部筐体21及び下部把持部筐体51は、保持金具10を閉じた状態にあっては、パイプ等を把持しやすくするために円弧状の空間を設けている。また上部把持部筐体21及び下部把持部筐体51は、断面台形状の突起状である第1突起部23、53を設けている。第1突起部23、53の先端に、更に小さなノコギリ刃状の突起を備えた第2突起22、52を設けている。第2突起22、52は、閉じた状態にあっては、噛み合った状態となっている。
【0016】
上部把持部筐体21及び下部把持部筐体51は、第1突起部23、53の中央に貫通した孔が設けられネジ溝が設けられている。そのネジ溝と螺合するネジ部82を備えた把持部の間隔を調整する回転調整部80を備えている。回転調整部80は、円柱状の支柱81の先端にネジ部82を備え、ネジ部82は、第1突起部23、53の中央に設けられたネジ溝と螺合する。
【0017】
回転調整部80は、上部に貫通した孔に挿入された円柱状の回転ロッド83握り、支柱を回転することによってネジ溝に沿って上下移動する。そして、各々の回転調整部80の間隔を調整することによって把持する間隔を調整することが可能である。
【0018】
回転調整部80は、第2突起22、52と同じ位置に調整することにより、
図4に示すABCの位置についてBの位置を調整することによって(矢印β)、ABCの位置を平坦に構成することができる。通常、平坦な部分は第2突起22、52の小さな範囲であるが、回転調整部80を位置を調整することによってABが平坦になるように調整が可能であるので、
図1及び
図2に示すように鉄骨2の片4の平坦な箇所にも固定が可能である。
【0019】
このように回転調整部80は、挟み込む箇所の形状に合わせて、挟み込む位置や間隔の変更が可能である。尚、回転調整部80は、上下から挟み込むが可能なように対称一対に中心付近に設けたが、一対ではなく複数対やまた一本だけであっても良い。また、回転調整部80は、一本の場合には矢印βの範囲に先端を配置することも可能である。
【0020】
上部把持部20は、
図4に示すように金属を折り曲げて形成した上部グリップ筐体25に、カシメ35により上部把持部筐体21をカシメ固定している。下部把持部50は、上部グリップ筐体25の支軸36に下部把持部筐体51を軸支し、また金属を折り曲げて形成した下部グリップ筐体61の下部把持部筐体51を支軸37に軸支している。
【0021】
下部把持部筐体51は、貫通した孔である第1引っ掛け部54及び第2引っ掛け部55を備えている。第1引っ掛け部54及び第2引っ掛け部55は、
図3に示すリング6を引っ掛けることが可能である。
【0022】
下部把持部筐体51は、支軸36を中心に矢印αの方向に回転移動が可能であるため閉じた状態や開いた状態が可能である。また、付勢手段となるスプリングバネ31は、一方を下部把持部筐体51の貫通した支持孔65に挿入して引っ掛けられ、他方を上部グリップ筐体25の内部に折り曲げられ支持片26に引っ掛けられている。スプリングバネ31は、常に下部把持部筐体51を上部グリップ筐体25の方向に引っ張っている。
【0023】
図3から
図5に示すように下部把持部50は、金属を折り曲げた円弧状の取っ手部61を備えている。また、下部把持部50は、取っ手部61の支軸62に金属を折り曲げた円弧状の解除取っ手63を軸支している。
【0024】
金属性の片である開閉調整片48を取っ手部61の支軸66に軸支している。開閉調整片48は、上部グリップ筐体25内に挿入され調整ボルト27の先端と当接している。開閉調整片48は、スプリングバネ31によって調整ボルト27の先端に常に当接している。
【0025】
上部グリップ筐体25の先端は、円筒状に形成した円筒把持部29を形成している。円筒把持部29は、内部にネジ溝を形成している。そのネジ溝と調整ボルト27のネジ溝28とは螺合している。調整ボルト27を回転させることによって左右に移動し、開閉調整片48の先端の開閉調整片当接部69を移動させる。
【0026】
また、開閉調整片48は、移動に伴い、支軸37を左右に移動させる。その支軸37の左右の移動に伴い、下部把持部筐体51は支軸36を中心に矢印αの方向に回転移動が可能であるため、閉じた状態や開いた状態が可能である。
【0027】
このように、調整ボルト27のストロークを変化させることによって、ロック機構部41が取っ手部61を固定した状態とした場合でも、開閉調整片48が移動し、下部把持部筐体51が回転移動し把持する間隔の調整を可能としている。
【0028】
また、解除取っ手63は、開閉調整片48の側辺47と当接しており、支軸62を中心に回転させることによって開閉調整片48の側辺47を押し上げられ、また開閉調整片48が押し上げることによって支軸37の位置が変化し、最大限に下部把持部筐体51を開いた状態に変化させることが可能である。
【0029】
解除取っ手63は、バネ68によって絶えず取っ手部61方向に押されており、開閉調整片48は、ロック機構部41の固定を解除しても、バネ68の不勢力に逆らって解除取っ手63を動かさない限り開いた状態にはならない。
【0030】
また、取っ手部61を握ることによって支軸37の位置が変化し、支軸62を中心に回転し、最大限に下部把持部筐体51を閉じた状態に変化させることが可能である。
上部グリップ筐体25は、下部把持部筐体51の閉じた状態を常に固定することができるように、ロック機構部41を備えている。ロック機構部41は、上部グリップ筐体25に、ビス、溶接、カシメ等の固着手段42によって固定片43を介して固定している。
【0031】
ロック機構部41は、円弧状の金属等で構成し、先端に金属やゴム等で構成したローラ状のローラ部44を備えている。ロック機構部41は、断面が円柱であって円弧状に構成しているが、この形状に限らず片状であっても良く、取っ手部61が開かないように固定できる構造であれば良い。
【0032】
次に、
図7及び
図8は、保持金具10を使用した他の実施例を示している。上述した内容と同じ構成の箇所には同じ符号を付し説明を省略する。保持金具10は、断面が円筒状のパイプ8を上部把持部筐体21及び下部把持部筐体51とにより挟み込んでいる。
【0033】
このとき、上述した回転調整部80の先端を上部把持部筐体21及び下部把持部筐体51内まで退避することによって、保持金具10は、上部把持部筐体21及び下部把持部筐体51の円弧状に空間を最大限に設けることができるので、足場等のパイプや四角柱の厚みがあるものを第1突起部23、53により挟み込むことが可能である。
【0034】
尚、上部把持部筐体21及び下部把持部筐体51が構成する円弧状の空間だけでなく円状、台形状、四角状、又は多角形状等であっても良い。これによって固定する対象物の形状に容易に合わせることが可能である。
【0035】
また、保持金具10は、安全帯1に限らず、荷重のある荷物を吊すための吊り金具や人間の足場として鉄骨2や足場のパイプ8に使用することは可能である。
固定する箇所の形状に合わせて挟み込んで固定することが可能であるため、安全帯1に限らず様々な用途や箇所に利用することが可能である。
【0036】
(技術的特徴)
以下に本実施形態の技術的特徴点の一例を括弧に内に示すが、特に限定するものでもなく例示しているものであり、これら特徴から考えられる効果についても記載する。
【0037】
<第1の特徴点>
安全帯(例えば、主に安全帯1)を引っ掛けて使用し、固定する対象物(例えば、主に鉄骨2、パイプ8)の形状に調整し挟み込み固定する保持金具(例えば、主に保持金具10)であって、
固定する前記対象物を挟み込むための一対の把持部(例えば、主に上部把持部筐体21及び下部把持部筐体51)と、
両方の把持部によって形成される空間(例えば、主に上部把持部筐体21及び下部把持部筐体51とによって構成される弧状の空間)と、
その空間内に侵入及び退避が可能であって把持するときの厚みを調整する調整部(例えば、主に回転調整部80)と、
前記把持部を前記対象物に挟み込んだ状態を維持する固定部(例えば、主にロック機構部41)と、
を備えたことを特徴とする。
【0038】
以上の特徴によって、本発明は、調整部によって挟み込むときの厚みを容易に調整することが可能であると共に、対象物の形状に合わせて挟み込む空間の形状を変化させることが可能である。
【0039】
<第2の特徴点>
前記把持部に設けられた螺合手段(例えば、主に上部把持部筐体21及び下部把持部筐体51内部のネジ溝)によって進退及び固定が可能な前記調整部を備えたことを特徴とする。
【0040】
以上の特徴によって、本発明は、回転させるだけの簡単な作業によって、挟み込むときの厚みを容易に調整することが可能であると共に、対象物に対して確実に固定することが可能である。
【0041】
<第3の特徴点>
軸支した軸支部(例えば、主に支軸36)を中心に回転移動によって前記把持部を開閉することが可能な開閉手段を備えたことを特徴とする。
【0042】
以上の特徴によって、本発明は、回転移動させるだけの簡単な作業によって、脱着も容易に行うことが可能であると共に、挟み込むときの厚みを容易に調整することが可能である。
【0043】
<第4の特徴点>
前記把持部の各々と連結する取っ手部(例えば、主に取っ手部61、上部グリップ筐体25)と、その取っ手部の開閉を固定することによって固定を維持する前記固定部と、前記固定部によって固定されている場合であっても把持部の間隔を調整可能な第2の開閉調整部(例えば、主に開閉調整片48、調整ボルト27)と、を備えたことを特徴とする。
【0044】
以上の特徴によって、本発明は、固定状態を維持したままでも、挟み込むときの厚みを容易に調整することが可能であると共に、対象物に対して確実に固定することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、大きさ等を変化させれば大きな荷重であっても対応可能であるため、安全帯の保持金具に限らず、荷物を吊るための吊り金具として使用したり、足場のないときに鉄骨やパイプに引っ掛けて足場の代替えとして使用する保持金具として使用することが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1…安全帯、2…鉄骨、8…パイプ、10…安全帯固定装置、20…鼻当接部、
21…上部把持部筐体、25…上部グリップ筐体、36…支軸、27…調整ボルト
51…下部把持部筐体、80…回転調整部41…ロック機構部、61…取っ手部、
48…開閉調整片。
【手続補正書】
【提出日】2022-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定する対象物の形状に調整し挟み込み固定する吊り下げ用の保持金具であって、
固定する前記対象物を挟み込むための一対の把持部と、
円弧状に湾曲した両方の把持部によって形成される空間と、
前記空間の弧の頂点の近傍から両方向に侵入及び退避が可能であって把持するときの厚みを調整する調整部と、
前記把持部を前記対象物に挟み込んだ状態を維持する固定部と、
を備えたことを特徴とする保持金具。
【請求項2】
前記把持部に吊り下げ用のフックを通すための通し孔を備えたことを特徴とする請求項1に記載の保持金具。
【手続補正書】
【提出日】2022-08-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
固定する対象物の形状に調整し挟み込み固定する吊り下げ用の保持金具であって、
固定する前記対象物を挟み込むための一対の把持部と、
円弧状に湾曲した両方の前記把持部によって形成される空間と、
両方の前記把持部に有し前記空間の弧の頂点の近傍から上下方向に侵入及び退避が可能であって把持するときの厚みを調整する調整部と、
前記把持部を前記対象物に挟み込んだ状態を維持する固定部と、
を備えたことを特徴とする保持金具。