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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160572
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】アレイアンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/08 20060101AFI20231026BHJP
   H01Q 21/06 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
H01Q13/08
H01Q21/06
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071014
(22)【出願日】2022-04-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-24
(71)【出願人】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100206081
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 央
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【弁理士】
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 雄大
【テーマコード(参考)】
5J021
5J045
【Fターム(参考)】
5J021AA04
5J021AA05
5J021AA07
5J021AA09
5J021AB06
5J021CA03
5J021GA08
5J045DA10
5J045EA08
5J045FA02
5J045HA03
(57)【要約】
【課題】アレイアンテナ装置のアンテナ特性の向上を目的とする。
【解決手段】アレイアンテナ装置1は、給電配線層4においてX軸方向に延伸する第3給電線23を分岐させ、第1枝線41、第2枝線42を第1スロット31、第2スロット32を通りすぎるようにあえて少し遠回りをさせてから折り返すことで、第3給電線23の引き回しを簡易にして、等距離かつ同一方向から第1スロット31、第2スロット32に給電する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ層、グランド層、給電配線層が、この順に、間に誘電体層を挟んで積層され、
前記アンテナ層には、第1アンテナ素子、第2アンテナ素子、第3アンテナ素子、第4アンテナ素子が、この順に、平面視で第1方向に配置されたアンテナ素子列が形成され、
前記第1アンテナ素子と前記第2アンテナ素子が、前記第1方向に延びる第1給電線で接続され、
前記第3アンテナ素子と前記第4アンテナ素子が、前記第1方向に延びる第2給電線で接続され、
前記グランド層には、平面視で前記第1給電線と重なり、且つ、前記第1アンテナ素子及び前記第2アンテナ素子と等距離に形成された第1スロットと、平面視で前記第2給電線と重なり、且つ、前記第3アンテナ素子及び前記第4アンテナ素子と等距離に形成された第2スロットと、が形成され、
前記給電配線層には、前記第1スロット及び前記第2スロットを介して前記第1給電線及び前記第2給電線に電磁結合し、前記アンテナ素子列の各アンテナ素子に給電する第3給電線が形成され、
前記第3給電線は、前記アンテナ素子列に沿って前記第1方向に延伸する延伸部と、前記延伸部から分岐すると共に、平面視で、前記第1スロットに重なる第1枝線と、前記第2スロットに重なる第2枝線と、を有し、
前記第1枝線の前記第1スロットまでの長さと、前記第2枝線の前記第2スロットまでの長さは、等しく、
さらに、
平面視で、前記第1枝線の先端部が前記第1スロットに進入する方向と、前記第2枝線の先端部が前記第2スロットに進入する方向は、前記第1方向において前記延伸部が延伸する方向と逆方向である、
アレイアンテナ装置。
【請求項2】
前記第3給電線の前記延伸部は、前記アンテナ素子列に対し、平面視で前記第1方向と交差する第2方向の一方側に配置されている、
請求項1に記載のアレイアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1枝線は、前記第2枝線との分岐位置から前記延伸部と同じ前記第1方向の一方側に延伸する第1直線部と、前記第1直線部に対し前記第2方向の他方側に屈曲して延伸する第2直線部と、前記第2直線部から前記第1方向の他方側に屈曲して延伸する第3直線部と、を有し、
前記第2枝線は、前記分岐位置から前記延伸部に対し前記第2方向の他方側に屈曲して延伸する第4直線部と、前記第4直線部から前記第1方向の他方側に屈曲して延伸する第5直線部と、を有する、
請求項2に記載のアレイアンテナ装置。
【請求項4】
前記第2直線部の長さと、前記第4直線部の長さは、等しく、
前記第1直線部と前記第3直線部の合計の長さと、前記第5直線部の長さは、等しい、
請求項3に記載のアレイアンテナ装置。
【請求項5】
平面視で、前記第1枝線の先端部は前記第1スロットを横切って延伸し、前記第2枝線の先端部は前記第2スロットを横切って延伸し、
前記第1枝線の前記第1スロットを横切った先の長さと、前記第2枝線の前記第2スロットを横切った先の長さは、等しい、
請求項1~4のいずれか一項に記載のアレイアンテナ装置。
【請求項6】
前記アンテナ素子列、前記第1給電線、前記第2給電線、前記第1スロット、前記第2スロット、及び、前記第3給電線を含む、複数のアンテナ列構造が、平面視で、並列に配置されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載のアレイアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレイアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、複数のアンテナ素子が誘電体基板の平面方向に配列されたアレイアンテナ基板が開示されている。このアレイアンテナ基板は、各アンテナ素子に給電する分波配線(給電線)を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-57890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、給電線を直線状に延ばし、各アンテナ素子を直列に接続する場合、各アンテナ素子に給電される位相が周波数により変化するため、一番強く放射される方向が周波数に依存して変化してしまう。また、給電線を分岐させて折り曲げ、各アンテナ素子を並列に接続する場合、給電線の引き回しが混雑してしまうと、給電線を折り曲げたことにより近接した自分の給電線、あるいは隣の列の給電線と電磁的に干渉してしまう場合がある。
このようにアレイアンテナ装置では、給電線のレイアウトによるアンテナ特性の低下が課題となっている。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、アレイアンテナ装置のアンテナ特性の向上を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様に係るアレイアンテナ装置は、アンテナ層、グランド層、給電配線層が、この順に、間に誘電体層を挟んで積層され、前記アンテナ層には、第1アンテナ素子、第2アンテナ素子、第3アンテナ素子、第4アンテナ素子が、この順に、平面視で第1方向に配置されたアンテナ素子列が形成され、前記第1アンテナ素子と前記第2アンテナ素子が、前記第1方向に延びる第1給電線で接続され、前記第3アンテナ素子と前記第4アンテナ素子が、前記第1方向に延びる第2給電線で接続され、前記グランド層には、平面視で前記第1給電線と重なり、且つ、前記第1アンテナ素子及び前記第2アンテナ素子と等距離に形成された第1スロットと、平面視で前記第2給電線と重なり、且つ、前記第3アンテナ素子及び前記第4アンテナ素子と等距離に形成された第2スロットと、が形成され、前記給電配線層には、前記第1スロット及び前記第2スロットを介して前記第1給電線及び前記第2給電線に電磁結合し、前記アンテナ素子列の各アンテナ素子に給電する第3給電線が形成され、前記第3給電線は、前記アンテナ素子列に沿って前記第1方向に延伸する延伸部と、前記延伸部から分岐すると共に、平面視で、前記第1スロットに重なる第1枝線と、前記第2スロットに重なる第2枝線と、を有し、前記第1枝線の前記第1スロットまでの長さと、前記第2枝線の前記第2スロットまでの長さは、等しく、さらに、平面視で、前記第1枝線の先端部が前記第1スロットに進入する方向と、前記第2枝線の先端部が前記第2スロットに進入する方向は、前記第1方向において前記延伸部が延伸する方向と逆方向である。
この構成によれば、給電配線層においてアンテナ素子列に沿って第1方向に延伸する第3給電線を分岐させ、各スロットを通りすぎるようにあえて少し遠回りをさせてから折り返すことで、給電線の引き回しを簡易にして、等距離かつ同一方向から各スロットに給電できる。そして、アンテナ層において各スロットからの分岐で逆方向に別々のアンテナ素子に給電することで、全てのアンテナ素子に並列で給電されるため、全ての周波数において同一の位相で給電でき、アンテナ特性が向上する。
【0007】
本発明の第2の態様は、第1の態様のアレイアンテナ装置において、前記第3給電線の前記延伸部は、前記アンテナ素子列に対し、平面視で前記第1方向と交差する第2方向の一方側に配置されていてもよい。
【0008】
本発明の第3の態様は、第2の態様のアレイアンテナ装置において、前記第1枝線は、前記第2枝線との分岐位置から前記延伸部と同じ前記第1方向の一方側に延伸する第1直線部と、前記第1直線部に対し前記第2方向の他方側に屈曲して延伸する第2直線部と、前記第2直線部から前記第1方向の他方側に屈曲して延伸する第3直線部と、を有し、前記第2枝線は、前記分岐位置から前記延伸部に対し前記第2方向の他方側に屈曲して延伸する第4直線部と、前記第4直線部から前記第1方向の他方側に屈曲して延伸する第5直線部と、を有してもよい。
【0009】
本発明の第4の態様は、第3の態様のアレイアンテナ装置において、前記第2直線部の長さと、前記第4直線部の長さは、等しく、前記第1直線部と前記第3直線部の合計の長さと、前記第5直線部の長さは、等しくてもよい。
【0010】
本発明の第5の態様は、第1から第4の態様のいずれか一つのアレイアンテナ装置において、平面視で、前記第1枝線の先端部は前記第1スロットを横切って延伸し、前記第2枝線の先端部は前記第2スロットを横切って延伸し、前記第1枝線の前記第1スロットを横切った先の長さと、前記第2枝線の前記第2スロットを横切った先の長さは、等しくてもよい。
【0011】
本発明の第6の態様は、第1から第5の態様のいずれか一つのアレイアンテナ装置において、前記アンテナ素子列、前記第1給電線、前記第2給電線、前記第1スロット、前記第2スロット、及び、前記第3給電線を含む、複数のアンテナ列構造が、平面視で、並列に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明の一態様によれば、アレイアンテナ装置のアンテナ特性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係るアレイアンテナ装置のアンテナ層の平面図である。
図2】一実施形態に係るアレイアンテナ装置の給電配線層の平面図である。
図3図1に示す矢視III-III断面図である。
図4】一実施形態に係る第3給電線を拡大した平面図である。
図5】比較例に係るアレイアンテナ装置のアンテナ層の平面図である。
図6】一実施形態に係るアレイアンテナ装置のアンテナ特性を示すグラフである。
図7】比較例に係るアレイアンテナ装置のアンテナ特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下では、本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、一実施形態に係るアレイアンテナ装置1のアンテナ層2の平面図である。図2は、一実施形態に係るアレイアンテナ装置1の給電配線層4の平面図である。図3は、図1に示す矢視III-III断面図である。
図3に示すように、アレイアンテナ装置1は、アンテナ層2、グランド層3、給電配線層4が、この順に、間に誘電体層5を挟んで積層された構造を有している。
【0015】
以下では、アンテナ層2とグランド層3との間に挟まれた誘電体層5を、第1誘電体層5Aという。また、グランド層3と給電配線層4との間に挟まれた誘電体層5を、第2誘電体層5Bという。
また、アレイアンテナ装置1の各層の積層方向をZ軸方向とし、Z軸方向に直交しかつ互いに直交する2軸方向をX軸方向(第1方向)、Y軸方向(第2方向)という。
【0016】
X軸方向には、特に説明の無い限り、X軸に沿う互いに逆向きの二方向が含まれる。X軸方向のうち、図中矢印の方向を示す場合は、「+X方向」と称する。X軸方向のうち、図中矢印と逆方向を示す場合は、「-X方向」と称する。なお、Y軸方向、Z軸方向においても同様に、特に説明の無い限り、各軸に沿う互いに逆向きの二方向が含まれ、図中矢印の方向を示す場合は、「+Y方向」または「+Z方向」とし、図中矢印と逆方向を示す場合は、「-Y方向」または「-Z方向」と称する。
【0017】
アレイアンテナ装置1の積層構造は、例えば、以下のようにして製造される。
まず、第2誘電体層5Bの+Z方向を向く面と-Z方向を向く面に、それぞれ導体膜を形成した後、例えば、エッチングなどによって、グランド層3、給電配線層4をパターニングする。さらに、グランド層3上に、第1誘電体層5Aを樹脂接着剤等で貼り合わせる。この後、第1誘電体層5Aの+Z方向を向く面に、導体膜を形成した後、例えば、エッチングなどによって、アンテナ層2をパターニングする。
なお、第1誘電体層5Aにアンテナ層2をパターニングしてから、第1誘電体層5Aとグランド層3を貼り合わせてもよい。
また、アンテナ層2の上に図示しない誘電体層及び寄生素子層をこの順に積層したり、給電配線層4の下に図示しない誘電体層及びグランド層をこの順にさらに積層したりしてもよい。
【0018】
上記の製造方法に限らず、例えば、第1誘電体層5Aの+Z方向を向く面と-Z方向を向く面に、それぞれ導体膜を形成した後、例えば、エッチングなどによって、アンテナ層2と、グランド層3をパターニングしてもよい。さらに、グランド層3の下に第2誘電体層5Bを張り付けてから、第2誘電体層5Bの-Z方向を向く面に、導体膜を形成した後、例えば、エッチングなどによって、給電配線層4をパターニングしてもよい。
また上記同様、アンテナ層2の上に誘電体層及び寄生素子層をこの順に積層したり、給電配線層4の下に誘電体層及びグランド層をこの順にさらに積層したりしてもよい。
【0019】
アンテナ層2の上に誘電体層及び寄生素子層をこの順に積層したり、給電配線層4の下に誘電体層及びグランド層をこの順にさらに積層したりすることにより、アンテナ特性の向上や不要放射の抑圧が期待できる。
【0020】
第1誘電体層5Aは、必要なアンテナ特性に応じて誘電率、層厚が規定された平板状部材である。第1誘電体層5Aは、単層の誘電体で構成されてもよいし、複数の誘電体が貼り合わされて構成されてもよい。単層とするか、複数層とするかは、例えば、材料コストなどを考慮して決められてもよい。
【0021】
第2誘電体層5Bは、後述する給電配線層4から第1スロット31(第2スロット32)を通してアンテナ層2に電磁給電できるように、グランド層3と給電配線層4とを一定の絶縁距離だけ離すために設けられた平板状部材である。第2誘電体層5Bも、単層の誘電体で構成されてもよいし、複数の誘電体が貼り合わされて構成されてもよい。なお、給電効率を向上するため、第2誘電体層5Bの誘電正接はなるべく小さいことが好ましい。
【0022】
アンテナ層2は、第1誘電体層5Aの+Z方向を向く面に形成されている。アンテナ層2は、給電配線層4との電磁結合により給電される平面アンテナを形成している。アンテナ層2には、図1に示すように、第1アンテナ素子11、第2アンテナ素子12、第3アンテナ素子13、第4アンテナ素子14が、この順に、平面視でX軸方向(第1方向)に配置されたアンテナ素子列10が形成されている。
【0023】
本実施形態では、アンテナ素子列10を含むアンテナ列構造6がY軸方向に間隔をあけて4列形成されている。なお、アンテナ列構造6には、アンテナ素子列10だけでなく、後述する第1給電線21、第2給電線22、第1スロット31、第2スロット32、及び、第3給電線23が含まれる。アンテナ素子は、X軸方向及びY軸方向に並ぶ4×4の正方格子状に16個配列されている。なお、アンテナ素子の個数、配列は一例であってこの構成に限定されない。また、アンテナ素子は、X軸方向及びY軸方向にそれぞれ延びる辺を有する方形状に形成されているが、この形状も一例であってこの構成に限定されない。
また、第1アンテナ素子11、第2アンテナ素子12、第3アンテナ素子13、第4アンテナ素子14の+Z方向にそれぞれ図示しない寄生素子を形成してもよい。これにより、比帯域を増加させることができる。
【0024】
第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12は、X軸方向に延びる第1給電線21で互いに接続されている。第1給電線21は、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12の互いに対向する辺の、Y軸方向の中間位置を接続している。また、第3アンテナ素子13と第4アンテナ素子14は、X軸方向に延びる第2給電線22で互いに接続されている。第2給電線22は、第3アンテナ素子13と第4アンテナ素子14の互いに対向する辺の、Y軸方向の中間位置を接続している。
【0025】
グランド層3は、図3に示すように、第1誘電体層5Aと第2誘電体層5Bとの間に配設されている。グランド層3は、第2誘電体層5Bの+Z方向を向く面にパターニングされ、第1誘電体層5Aの-Z方向を向く面と接合されている。グランド層3は、電気的に接地されている。第1スロット31(第2スロット32も同様)は、グランド層3における無導体部である。第1スロット31(第2スロット32も同様)は、図示しないが樹脂接着剤等で充填されていてもよい。
【0026】
グランド層3には、図1に示すように、平面視で第1給電線21と重なり、且つ、X軸方向において第1アンテナ素子11及び第2アンテナ素子12と等距離に形成された第1スロット31と、平面視で第2給電線22と重なり、且つ、X軸方向において第3アンテナ素子13及び第4アンテナ素子14と等距離に形成された第2スロット32と、が形成されている。
【0027】
第1スロット31及び第2スロット32の開口形状は、平面視で、Y軸方向に延びる長方形状に形成されている。なお、第1スロット31及び第2スロット32の開口形状は、アンテナ層2のインピーダンスと給電配線層4とのインピーダンス整合をとるための形状とされていれば、この形状に限定されない。
【0028】
図2に示すように、給電配線層4には、第1スロット31及び第2スロット32を介して第1給電線21及び第2給電線22に電磁結合し、アンテナ素子列10の各アンテナ素子に給電する第3給電線23が形成されている。第3給電線23は、各アンテナ列構造6に含まれ、本実施形態では4列形成されている。各第3給電線23は、トーナメント式に分岐した第4給電線7によって、給電点7aに対し等距離かつ並列に接続されている。なお、フェーズドアレイアンテナを構成する場合などにおいて、給電点7aは、各第3給電線23に対応して個別に設けられていても構わない。この場合、並列に配置したアンテナ素子列10に任意の位相差を与えてビーム方向を可変とすることができる。
【0029】
第3給電線23は、アンテナ素子列10に沿ってX軸方向に延伸する延伸部40から分岐すると共に、平面視で、第1スロット31に重なる第1枝線41と、第2スロット32に重なる第2枝線42と、を有している。
【0030】
図4は、一実施形態に係る第3給電線23を拡大した平面図である。
図4に示すように、第3給電線23の延伸部40は、アンテナ素子列10に対し、平面視でX軸方向と交差するY軸方向(第2方向)の一方側(-Y方向)に配置されている。延伸部40は、平面視でアンテナ素子列10に重ならず、アンテナ素子列10と平行にX軸方向に延びている。
【0031】
この延伸部40から分岐する第1枝線41の第1スロット31までの長さと、第2枝線42の第2スロット32までの長さは、等しく、さらに、平面視で、第1枝線41の先端部が第1スロット31に進入する方向と、第2枝線42の先端部が第2スロット32に進入する方向は、X軸方向において延伸部40が延伸する方向(-X方向)と逆方向(+X方向)となっている。
【0032】
ここで、第1枝線41の第1スロット31までの長さとは、第2枝線42との分岐位置P0から第1スロット31の中心位置P14までの長さをいう。また、第2枝線42の第2スロット32までの長さとは、分岐位置P0から第2スロット32の中心位置P23までの長さをいう。つまり、第1枝線41の分岐位置P0から中心位置P14までの長さと、第2枝線42の分岐位置P0から中心位置P23までの長さは、等しい。
【0033】
なお、第1枝線41の第1スロット31までの長さを、分岐位置P0から第1スロット31の入口位置P13または出口位置P15までの長さで規定しても構わない。また、第2枝線42の第2スロット32までの長さを、分岐位置P0から第2スロット32の入口位置P22または出口位置P24までの長さで規定しても構わない。いずれの位置を基準としても、第1枝線41の第1スロット31までの長さと、第2枝線42の第2スロット32までの長さは、等しくなっている。
【0034】
第1枝線41は、第2枝線42との分岐位置P0から延伸部40と同じX軸方向の一方側(-X方向)に延伸する第1直線部41aと、第1直線部41aに対しY軸方向の他方側(+Y方向)に屈曲して延伸する第2直線部41bと、第2直線部41bからX軸方向の他方側(+X方向)に屈曲して延伸する第3直線部41cと、を有している。
【0035】
第1直線部41a及び第2直線部41bは、平面視で第1スロット31と重ならず、第3直線部41cが、平面視で第1スロット31と重なっている。第1直線部41aと第2直線部41bのなす角度は、90°である。また、第2直線部41bと第3直線部41cのなす角度は、90°である。
【0036】
一方、第2枝線42は、分岐位置P0から延伸部40に対しY軸方向の他方側(+Y方向)に屈曲して延伸する第4直線部42aと、第4直線部42aからX軸方向の他方側(+X方向)に屈曲して延伸する第5直線部42bと、を有している。
【0037】
第4直線部42aは、平面視で第2スロット32と重ならず、第5直線部42bが、平面視で第2スロット32と重なっている。延伸部40と第1直線部41aとのなす角度は、90°である。また、第4直線部42aと第5直線部42bのなす角度は、90°である。
【0038】
本実施形態では、第2直線部41bの長さと、第4直線部42aの長さは、等しく、第1直線部41aと第3直線部41cの合計の長さと、第5直線部42bの長さは、等しくなっている。ここで、第1直線部41aの長さとは、分岐位置P0から第1枝線41の第1屈曲位置P11までの長さをいう。また、第2直線部41bの長さとは、第1屈曲位置P11から第1枝線41の第2屈曲位置P12までの長さをいう。
【0039】
第3直線部41cの長さとは、第2屈曲位置P12から第1枝線41の先端位置P16までの長さをいう。また、第4直線部42aの長さとは、分岐位置P0から第2枝線42の屈曲位置P21までの長さをいう。また、第5直線部42bの長さとは、第2枝線42の屈曲位置P21から第2枝線42の先端位置P25までの長さをいう。
【0040】
つまり、第1枝線41の第1屈曲位置P11から第2屈曲位置P12までの長さと、第2枝線42の分岐位置P0から第2枝線42の屈曲位置P21までの長さは、等しい。また、第1枝線41の分岐位置P0から第1屈曲位置P11までの長さと、第1枝線41の第2屈曲位置P12から先端位置P16までの長さの合計は、第2枝線42の屈曲位置P21から先端位置P25までの長さと等しくなっている。
【0041】
さらに、第1枝線41の先端部は第1スロット31を横切って延伸し、第2枝線42の先端部は第2スロット32を横切って延伸し、第1枝線41の第1スロット31を横切った先の長さと、第2枝線42の第2スロット32を横切った先の長さは、等しくなっている。ここで、第1枝線41の第1スロット31を横切った先の長さとは、第1スロット31の出口位置P15から第1枝線41の先端位置P16までの長さをいう。また、第2枝線42の第2スロット32を横切った先の長さとは、第2スロット32の出口位置P24から第2枝線42の先端位置P25までの長さをいう。
【0042】
次に、本実施形態のアレイアンテナ装置1の作用について説明する。
図5は、比較例に係るアレイアンテナ装置100のアンテナ層2の平面図である。図6は、一実施形態に係るアレイアンテナ装置1のアンテナ特性を示すグラフである。図7は、比較例に係るアレイアンテナ装置100のアンテナ特性を示すグラフである。なお、図6図7において、横軸はXY面に対する仰角θ(度)、縦軸はゲイン(dBi)である。また、図6図7においては、各アレイアンテナ装置1,100の1列のアンテナ列構造6のアンテナ特性を示している。
【0043】
先ず、アレイアンテナ装置1と対比して説明するための比較例のアレイアンテナ装置100について説明する。
図5に示すように、比較例のアレイアンテナ装置100では、アンテナ素子列10がX軸方向に延びる1本の給電線20で直列に接続されている。また、比較例のアレイアンテナ装置100では、第2アンテナ素子12と第3アンテナ素子13との間に、平面視で給電線20と重なる1つのスロット30を備えている。このスロット30には、図示しないが、給電配線層4において、平面視で1本の分岐しない第3給電線23が重なって配置されている。
【0044】
図6に示すように、本実施形態のアレイアンテナ装置1によれば、少なくとも57GHzから71GHzの間で、図7に示す比較例のアレイアンテナ装置100と比較して、サイドローブが低減され、安定したゲインが得られていることが分かる。これは、図4に示すように、給電配線層4においてX軸方向に延伸する第3給電線23を分岐させ、第1枝線41、第2枝線42を第1スロット31、第2スロット32を通りすぎるようにあえて少し遠回りをさせてから折り返すことで、第3給電線23の引き回しを簡易にして、等距離かつ同一方向から第1スロット31、第2スロット32に給電することに起因するものである。これにより、図1に示すアンテナ層2において第1スロット31、第2スロット32からの分岐で逆方向に別々のアンテナ素子に給電することができ、全てのアンテナ素子に並列で給電されるため、全ての周波数において同一の位相で給電でき、アンテナ特性が向上する。
【0045】
このように、本実施形態に係るアレイアンテナ装置1によれば、アンテナ層2、グランド層3、給電配線層4が、この順に、間に誘電体層5を挟んで積層され、アンテナ層2には、第1アンテナ素子11、第2アンテナ素子12、第3アンテナ素子13、第4アンテナ素子14が、この順に、平面視でX軸方向(第1方向)に配置されアンテナ素子列10が形成され、第1アンテナ素子11と第2アンテナ素子12が、X軸方向に延びる第1給電線21で接続され、第3アンテナ素子13と第4アンテナ素子14が、X軸方向に延びる第2給電線22で接続され、グランド層3には、平面視で第1給電線21と重なり、且つ、X軸方向において第1アンテナ素子11及び第2アンテナ素子12と等距離に形成された第1スロット31と、平面視で第2給電線22と重なり、且つ、X軸方向において第3アンテナ素子13及び第4アンテナ素子14と等距離に形成された第2スロット32と、が形成され、給電配線層4には、第1スロット31及び第2スロット32を介して第1給電線21及び第2給電線22に電磁結合し、アンテナ素子列10の各アンテナ素子に給電する第3給電線23が形成され、第3給電線23は、アンテナ素子列10に沿ってX軸方向に延伸する延伸部40から分岐すると共に、平面視で、第1スロット31に重なる第1枝線41と、第2スロット32に重なる第2枝線42と、を有し、第1枝線41の第1スロット31までの長さと、第2枝線42の第2スロット32までの長さは、等しく、さらに、平面視で、第1枝線41の先端部が第1スロット31に進入する方向と、第2枝線42の先端部が第2スロット32に進入する方向は、X軸方向において延伸部40が延伸する方向(-X方向)と逆方向(+X方向)である。
この構成によれば、図6に示すように、アレイアンテナ装置1のアンテナ特性を向上できる。
【0046】
また、本実施形態のアレイアンテナ装置1では、図2に示すように、第3給電線23の延伸部40は、アンテナ素子列10に対し、平面視でX軸方向と交差するY軸方向(第2方向)の一方側に配置されている。この構成によれば、第3給電線23を含むアンテナ列構造6がY軸方向に間隔をあけて並列に配置されている場合であっても、隣り合う第3給電線23同士が近接しないようにレイアウトすることができる。これにより、第3給電線23同士の電磁的な干渉を抑制することができる。
【0047】
また、本実施形態のアレイアンテナ装置1では、図4に示すように、第1枝線41は、第2枝線42との分岐位置P0から延伸部40と同じX軸方向の一方側(-X方向)に延伸する第1直線部41aと、第1直線部41aに対しY軸方向の他方側(+Y方向)に屈曲して延伸する第2直線部41bと、第2直線部41bからX軸方向の他方側(+X方向)に屈曲して延伸する第3直線部41cと、を有し、第2枝線42は、分岐位置P0から延伸部40に対しY軸方向の他方側(+Y方向)に屈曲して延伸する第4直線部42aと、第4直線部42aからX軸方向の他方側(+X方向)に屈曲して延伸する第5直線部42bと、を有する。この構成によれば、第1枝線41、第2枝線42の屈曲回数を最低限に抑えつつ、等距離かつ同一方向から第1スロット31、第2スロット32に給電することができる。
【0048】
また、本実施形態のアレイアンテナ装置1では、図4に示すように、第2直線部41bの長さと、第4直線部42aの長さは、等しく、第1直線部41aと第3直線部41cの合計の長さと、第5直線部42bの長さは、等しい。この構成によれば、第1枝線41、第2枝線42のY軸方向の幅が同じになるため、アンテナ列構造6のY軸方向の間隔を過剰に広げなくてすむ。
【0049】
また、本実施形態のアレイアンテナ装置1では、平面視で、第1枝線41の先端部は第1スロット31を横切って延伸し、第2枝線42の先端部は第2スロット32を横切って延伸し、第1枝線41の第1スロット31を横切った先の長さと、第2枝線42の第2スロット32を横切った先の長さは、等しい。この構成によれば、第1枝線41と第2枝線42の第1スロット31、第2スロット32を横切った先の長さまでが同じになるため、先の長さが違う場合と比較して反射損失が低減される。
【0050】
また、本実施形態のアレイアンテナ装置1では、アンテナ素子列10、第1給電線21、第2給電線22、第1スロット31、第2スロット32、及び、第3給電線23を含む、複数のアンテナ列構造6が、平面視で、並列に配置されている。この構成によれば、アンテナ素子を平面状に配列して、アンテナ指向性の制御を容易に行える。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態を記載し説明してきたが、これらは本発明の例示的なものであり、限定するものとして考慮されるべきではないことを理解すべきである。追加、省略、置換、及びその他の変更は、本発明の範囲から逸脱することなく行うことができる。従って、本発明は、前述の説明によって限定されていると見なされるべきではなく、特許請求の範囲によって制限されている。
【符号の説明】
【0052】
1…アレイアンテナ装置、2…アンテナ層、3…グランド層、4…給電配線層、5…誘電体層、5A…第1誘電体層、5B…第2誘電体層、6…アンテナ列構造、7…第4給電線、7a…給電点、10…アンテナ素子列、11…第1アンテナ素子、12…第2アンテナ素子、13…第3アンテナ素子、14…第4アンテナ素子、20…給電線、21…第1給電線、22…第2給電線、23…第3給電線、30…スロット、31…第1スロット、32…第2スロット、40…延伸部、41…第1枝線、41a…第1直線部、41b…第2直線部、41c…第3直線部、42…第2枝線、42a…第4直線部、42b…第5直線部、100…アレイアンテナ装置、P0…分岐位置、P11…第1屈曲位置、P12…第2屈曲位置、P13…入口位置、P14…中心位置、P15…出口位置、P16…先端位置、P21…第2枝線の屈曲位置、P22…入口位置、P23…中心位置、P24…出口位置、P25…先端位置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-10-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンテナ層、グランド層、給電配線層が、この順に、間に誘電体層を挟んで積層され、
前記アンテナ層には、第1アンテナ素子、第2アンテナ素子、第3アンテナ素子、第4アンテナ素子が、この順に、平面視で第1方向に配置されたアンテナ素子列が形成され、 前記第1アンテナ素子と前記第2アンテナ素子が、前記第1方向に延びる第1給電線で接続され、
前記第3アンテナ素子と前記第4アンテナ素子が、前記第1方向に延びる第2給電線で接続され、
前記グランド層には、平面視で前記第1給電線と重なり、且つ、前記第1アンテナ素子及び前記第2アンテナ素子と等距離に形成された第1スロットと、平面視で前記第2給電線と重なり、且つ、前記第3アンテナ素子及び前記第4アンテナ素子と等距離に形成された第2スロットと、が形成され、
前記給電配線層には、前記第1スロット及び前記第2スロットを介して前記第1給電線及び前記第2給電線に電磁結合し、前記アンテナ素子列の各アンテナ素子に給電する第3給電線が形成され、
前記第3給電線は、前記アンテナ素子列に沿って前記第1方向に延伸する延伸部と、前記延伸部から分岐すると共に、当該分岐する分岐位置から前記延伸部と同じ前記第1方向の一方側に延伸した後、前記第1方向の他方側に折り返し、平面視で前記第1スロットに重なる第1枝線と、前記分岐位置から平面視で前記第1方向と交差する第2方向のいずれか一方側に延伸した後、前記第1方向の他方側に延伸し、平面視で前記第2スロットに重なる第2枝線と、を有し、
前記第1枝線の前記第1スロットまでの長さと、前記第2枝線の前記第2スロットまでの長さは、等しく、
さらに、
平面視で、前記第1枝線の先端部が前記第1スロットに進入する方向と、前記第2枝線の先端部が前記第2スロットに進入する方向は、前記第1方向において前記延伸部が延伸する方向と逆方向である、
アレイアンテナ装置。
【請求項2】
前記第3給電線の前記延伸部は、前記アンテナ素子列に対し、前記第2方向の一方側に配置されている、
請求項1に記載のアレイアンテナ装置。
【請求項3】
前記第1枝線は、前記分岐位置から前記延伸部と同じ前記第1方向の一方側に延伸する第1直線部と、前記第1直線部に対し前記第2方向の他方側に屈曲して延伸する第2直線部と、前記第2直線部から前記第1方向の他方側に屈曲して延伸する第3直線部と、を有し、
前記第2枝線は、前記分岐位置から前記延伸部に対し前記第2方向の他方側に屈曲して延伸する第4直線部と、前記第4直線部から前記第1方向の他方側に屈曲して延伸する第5直線部と、を有する、
請求項2に記載のアレイアンテナ装置。
【請求項4】
前記第2直線部の長さと、前記第4直線部の長さは、等しく、
前記第1直線部と前記第3直線部の合計の長さと、前記第5直線部の長さは、等しい、 請求項3に記載のアレイアンテナ装置。
【請求項5】
平面視で、前記第1枝線の先端部は前記第1スロットを横切って延伸し、前記第2枝線の先端部は前記第2スロットを横切って延伸し、
前記第1枝線の前記第1スロットを横切った先の長さと、前記第2枝線の前記第2スロットを横切った先の長さは、等しい、
請求項1~4のいずれか一項に記載のアレイアンテナ装置。
【請求項6】
前記アンテナ素子列、前記第1給電線、前記第2給電線、前記第1スロット、前記第2スロット、及び、前記第3給電線を含む、複数のアンテナ列構造が、平面視で、並列に配置されている、
請求項1~4のいずれか一項に記載のアレイアンテナ装置。