(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160573
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】ヒンジ並びにこのヒンジを用いた事務機器
(51)【国際特許分類】
G03B 27/62 20060101AFI20231026BHJP
F16C 11/04 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
G03B27/62
F16C11/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071015
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】513014628
【氏名又は名称】株式会社ナチュラレーザ・ワン
(74)【代理人】
【識別番号】100076831
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 捷雄
(72)【発明者】
【氏名】小川 覚司
(72)【発明者】
【氏名】山元 建彦
【テーマコード(参考)】
2H012
3J105
【Fターム(参考)】
2H012CB12
3J105AA02
3J105AB14
3J105AB50
3J105AC06
3J105DA15
3J105DA23
(57)【要約】
【課題】スライド部材が上昇及び下降する際の圧縮バネの負荷を分散させる。
【解決手段】ヒンジ100は、本体2に固定される中空の本体部10と、原稿圧着板3に固定されるとともに本体部10にヒンジシャフト15を介して回動可能に連結され、本体部10の側にカム部36が形成される支持部材30と、カム部36に対して近接離間する方向に移動可能に本体部10に収容され、カム部36の側にカム面43が形成されるスライド部材40と、スライド部材40と本体部10の底部との間に介挿され、スライド部材40をカム部36に接近する方向に付勢することにより、スライド部材40をカム部36に接触させる3個の圧縮バネ51、52、53と、を備える。カム部36と接するカム面43は、3個の圧縮バネ51、52、53の内の2個の圧縮バネ52、53の上側に位置させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置本体に固定され、底部を有する中空の本体部と、
原稿圧着板に固定されると共に前記本体部にヒンジシャフトを介して回動可能に連結され、前記本体部の側にカム部が形成される支持部材と、
前記支持部材の前記カム部に対して近接離間する方向に移動可能に前記本体部に収容され、前記カム部の側にカム面が形成されるスライド部材と、
前記スライド部材と前記本体部の前記底部との間に介挿され、前記スライド部材を前記カム部に接近する方向に付勢することにより、前記スライド部材を前記カム部に接触させる少なくとも3個の圧縮バネと、
を備えるヒンジであって、
前記3個の圧縮バネは、前記ヒンジシャフトに近い側から配置された第1圧縮バネ、第2圧縮バネ、及び第3圧縮バネであり、
前記カム面は、前記第2圧縮バネ及び前記第3圧縮バネの上側に位置する、
ヒンジ。
【請求項2】
前記第2圧縮バネは、前記第1圧縮バネと前記第3圧縮バネを結ぶ線に対し、前部側乃至後部側から見て左右いずれかの側にずれている、請求項1に記載のヒンジ。
【請求項3】
前記スライド部材には、その上部前側から上方へ向けて汚れ防止板が設けられている、請求項1に記載のヒンジ。
【請求項4】
前記カム面は、前記スライド部材の、前記カム部の側の面の一部であり且つ前記カム部に向かって凸の面である、請求項1に記載のヒンジ。
【請求項5】
前記支持部材が前記本体部を閉塞する場合、前記カム部と前記カム面とが接触する位置は、前記第2圧縮バネの上側に位置する、請求項1又は請求項2に記載のヒンジ。
【請求項6】
上記した各ヒンジを、その装置本体に対して開閉する原稿圧着板との間に用いている事務機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば事務機器の本体に事務機器の原稿圧着板を開閉可能に連結する等、装置本体に原稿圧着板を開閉可能に連結するヒンジ並びにこのヒンジを用いた事務機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、ファクシミリ、スキャナー等、オフィスで使用される事務機器の多くは、その本体の上面に原稿読み取り部(コンタクトガラス)と、当該原稿読み取り部を覆う原稿圧着板と、を備える。原稿圧着板は、原稿読み取り部に載置された原稿を原稿読み取り部に密着させるとともに原稿読み取り部に対する原稿の位置を保持する。
【0003】
事務機器の本体と原稿圧着板とを連結する器具としては、ヒンジが知られている(例えば、特許文献1参照)。上記ヒンジは、本体部と、本体部に回転軸を介して回動可能に連結される支持部材と、支持部材に形成されるカム部と、本体部に収容され且つカム部と接するカム面が上面に形成されたスライド部材と、スライド部材をカム部に付勢する、回転軸から遠ざかる方向に並んで配置された2個の圧縮バネと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記ヒンジでは、カム部とカム面とが接する位置は、2個の圧縮バネの、回転軸から遠い側(前側)の圧縮バネの上部である。よって、スライド部材が上昇及び下降する際、スライド部材が前側の圧縮バネ側に傾き、前側の圧縮バネの負荷が、後側の圧縮バネの負荷より、大きくなる。
【0006】
本発明は、上記事実に鑑みてなされたもので、スライド部材が上昇及び下降する際の圧縮バネの負荷を分散させることが可能なヒンジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため,本開示の技術の請求項1の発明のヒンジは、装置本体に固定され、底部を有する中空の本体部と、原稿圧着板に固定されると共に前記本体部にヒンジシャフトを介して回動可能に連結され、前記本体部の側にカム部が形成される支持部材と、前記支持部材の前記カム部に対して近接離間する方向に移動可能に前記本体部に収容され、前記カム部の側にカム面が形成されるスライド部材と、前記スライド部材と前記本体部の前記底部との間に介挿され、前記スライド部材を前記カム部に接近する方向に付勢することにより、前記スライド部材を前記カム部に接触させる少なくとも3個の圧縮バネと、を備えるヒンジであって、前記3個の圧縮バネは、前記ヒンジシャフトに近い側から配置された第1圧縮バネ、第2圧縮バネ、及び第3圧縮バネであり、前記カム面は、前記第2圧縮バネ及び前記第3圧縮バネの上側に位置する。
【0008】
請求項2のヒンジは、前記第2圧縮バネは、前記第1圧縮バネと前記第3圧縮バネを結ぶ線に対し、前部側乃至後部側から見て左右いずれかの側にずれている。
【0009】
請求項3のヒンジは、前記スライド部材には、その上部前側から上方へ向けて汚れ防止板が設けられている。
【0010】
請求項4の発明のヒンジは、請求項1の発明において、前記カム面は、前記スライド部材の、前記カム部の側の面の一部であり且つ前記カム部に向かって凸の面である。
【0011】
請求項5の発明のヒンジは、請求項1又は請求項2の発明において、前記支持部材が前記本体部を閉塞する場合、前記カム部と前記カム面とが接触する位置は、前記第2圧縮バネの上側に位置する。
【0012】
請求項6に係る事務機器は、その装置本体と原稿圧着板との間に上記した各ヒンジを用いたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るヒンジは、スライド部材が上昇及び下降する際の圧縮バネの負荷を分散させることできる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態に係るヒンジを備える複写機を示す左側面図である。
【
図2A】実施形態に係るヒンジの閉塞状態における左側斜視図である。
【
図2B】実施形態に係るヒンジの開放状態における左側斜視図である。
【
図4】実施形態に係るヒンジの本体部及びスライド部材の間に圧縮バネを固定する構成を示す図である。
【
図5A】実施形態に係るヒンジに設けられた本体部側のバネ固定部の位置を示す図である。
【
図5B】スライド部材側のバネ固定部の一を下側から見た図である。
【
図6】実施形態に係るヒンジの閉塞状態における断面図である。
【
図7】実施形態に係るヒンジの開放状態における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では
図1を用いて本発明の実施形態に係るヒンジ100を備える事務機器である複写機1について説明する。
【0016】
複写機1は装置本体2および原稿圧着板3を備える。本実施形態において、複写機1がヒンジ100を備える構成とするが、複写機1或は複合機とは異なる他の事務機器がヒンジ100を備える構成とすることも可能である。他の事務機器としては、後述するように、複写機1以外の、例えば、複合機、ファクシミリ、及びスキャナーの各々単体の機器がある。装置本体2および原稿圧着板3はそれぞれの装置本体および原稿圧着板の一例である。
【0017】
装置本体2は原稿読み取り装置、制御装置、印刷装置、表示装置および入力装置を備える。
【0018】
原稿読み取り装置は装置本体2の上面に配置される。原稿読み取り装置は装置本体2の上面に載置された原稿を読み取る(原稿の画像情報を生成する)。
【0019】
制御装置は複写機1の各部の動作、より詳細には原稿読み取り装置、後述する印刷装置
および後述する自動原稿搬送装置(ADF(Auto Document Feeder))の動作を制御する。また、制御装置は原稿読み取り装置が生成した画像情報および装置本体2に接続された回線(インターネット回線等)を通じて取得した画像情報を記憶することが可能である。
【0020】
印刷装置は原稿読み取り装置の下方に配置される。印刷装置は制御装置が記憶した画像情報に基づいて所定の用紙に画像を印刷する。
【0021】
表示装置は例えば液晶パネルからなり、複写機1の動作状況等に係る情報を表示する。
【0022】
入力装置は例えばボタン、スイッチ等からなり、作業者が複写機1に対する指示等を入力する際に操作する。表示装置および入力装置は装置本体2の上面前部に配置される。
【0023】
原稿圧着板3は原稿読み取り装置の上に載置された原稿を原稿読み取り装置に向かって押さえつける(圧着する)ことにより、原稿読み取り装置が原稿を読み取る際に原稿が動く(原稿読み取り装置との相対的な位置が変化する)ことを防止する。
【0024】
原稿圧着板3は、図示しない読取前原稿収容トレイ、ADFおよび読取後原稿収容トレイを備える。
【0025】
ADFは読取前原稿収容トレイに積層状態で収容された複数枚の原稿を一枚ずつ順に取り出して原稿読み取り装置の上の所定の読取位置に載置する。原稿読み取り装置による原稿の読み取りが終了した後、ADFは読取位置に載置された原稿を読取後原稿収容トレイに搬送する。
【0026】
「事務機器」は、少なくとも原稿を読み取る(原稿の画像情報を取得する)機能を備える装置を指す。
【0027】
事務機器の具体例としては、(a)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報を他の機器(例えば、パーソナルコンピュータ)に送信する機能を備えるスキャナー、(b)原稿を読み取る機能、読み取った原稿に係る画像情報を通信回線を介して他の機器に送信する機能および他の機器から取得した画像情報をプリントアウトする機能を備えるファクス、(c)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報をプリントアウトする機能を備えるコピー機、(d)上記スキャナー、ファクス、およびコピー機としての機能を兼ねる複合機、等が挙げられる。
【0028】
以下の説明では、原稿圧着板3が閉じているとき(原稿圧着板3の下面が装置本体2の上面に接触しているとき)の原稿圧着板3の回動角度θ(より厳密には、装置本体2に対する原稿圧着板3の回動角度θ)を「0°」とし、原稿圧着板3が開く方向に回動した場合に回動角度θが増加する(回動角度θが正になる)ように原稿圧着板3の回動角度θを定義する(
図1参照)。複写機1の装置本体2から手前に向く方向を前方向、複写機1の装置本体2から奥(ヒンジ100が設けられている位置)に向く方向を後方向、複写機1の手前から複写機1を見て左右の方向を左右方向、複写機1において上に向く方向を上方向、複写機1において下を向く方向を下方向とする。前後方向、前後方向、及び左右方向は互いに直交する。
【0029】
以下では、
図1から
図7を用いてヒンジ100について説明する。
【0030】
ヒンジ100は、装置本体2に固定される底部を有する中空の本体部10と、原稿圧着板3に固定されるとともに本体部10にヒンジシャフト15を介して回動可能に連結され、本体部10の側にカム部36が形成される支持部材30と、支持部材30のカム部36に対して近接離間(上昇及び下降)する方向に移動可能に本体部10に収容され、カム部36の側にカム面43が形成されるスライド部材40と、スライド部材40と本体部10の底部との間に介挿され、スライド部材40をカム部36に接近する方向に付勢することにより、スライド部材40をカム部36に接触させる少なくとも3個、本実施の形態では、3個の圧縮バネ51、52、53と、を備える。
【0031】
スライド部材40は、一つである。3個の圧縮バネ51、52、53は、ヒンジシャフト15に近い側から配設された第1圧縮バネ51、第2圧縮バネ52、及び第3圧縮バネ53である。カム部36と接するカム面43は、3個の圧縮バネ51、52、53の内の2個の第2圧縮バネ52及び第3圧縮バネ53の上側に位置する。
【0032】
図1に示すように、ヒンジ100は複写機1の原稿圧着板3を装置本体2に回動可能に連結する。具体的には、中空且つ有底の本体部10が複写機1の装置本体2に固定され、支持部材30が複写機1の原稿圧着板3に固定されることにより、原稿圧着板3を装置本体2に対して回動可能に連結する。
【0033】
本実施形態においては、原稿圧着板3が閉じているとき(原稿圧着板3の回動角度θ=0°のとき)を、「支持部材30の閉塞状態」とし(
図2A及び
図6を参照)、原稿圧着板3が開いているとき(原稿圧着板3の回動角度θが0°より大きいとき)を、「支持部材30の開放状態」とする(
図2B及び
図7を参照)。
【0034】
図2Aから
図7に示すように、ヒンジ100は、本体部10、本体部10の後側上端部でヒンジシャフト15により回動可能に連結され、本体部10の側(支持部材30の閉塞状態における下側)にカム部36が形成される支持部材30、カム部36に対して近接離間する方向(上下方向)に、本体部10の内部で、移動可能に収容されるスライド部材40、スライド部材40と本体部10の底部との間に介挿される圧縮バネである第1圧縮バネ51、第2圧縮バネ52、及び第3圧縮バネ53等を備える。
【0035】
以下では便宜上、原稿圧着板3が装置本体2に対して閉じているとき(回動角度θ=0°のとき)の複写機1の上下方向、前後方向および左右方向を基準として(原稿圧着板3が装置本体2に対して閉じているときの複写機1の上下方向、前後方向および左右方向をそれぞれヒンジ100の上下方向、前後方向および左右方向に対応させて)ヒンジ100を構成する各部材の形状を説明する。
【0036】
本体部10は上側が開口した中空部材である。
図6と
図7に示されたように、装置本体2に設けた取付穴2a 内へ挿入されると共に、
図4に示すように、本体部10の下部には、ねじ19(
図6及び
図7)が挿入されるねじ孔10Jが形成されている。本体部10は、複写機1の装置本体2の取付穴2a内へ挿入されると共に、
図6と
図7に示されたように、ねじ19により固定される。本体部10は射出成形された樹脂製部材である。本体部10の内側には底部において上方に突出するバネ固定部11・12・13が形成されている。
【0037】
図5Aに示すように、バネ固定部11・12・13は一直線上に並ばず、内側のバネ固定部12の中央位置は、外側のバネ固定部11・13の中央位置を通る直線から所定距離ずれている。
【0038】
また、
図2A及び
図2Bに示すように、本体部10は後側上端部の左右両側で上方に突出する支持板14・14を備える。支持板14・14に軸芯を共通にして設けた挿通孔10H、10Hへヒンジシャフト15が挿通されることにより、本体部10はヒンジシャフト15を支持する。
【0039】
支持部材30は、
図6に示すように、閉塞状態において下方に突出するカム部36が形成された部材であり、ヒンジシャフト15により本体部10に回動可能に軸支される。カム部36は圧縮バネ(第1圧縮バネ51、第2圧縮バネ52、及び第3圧縮バネ53)によって付勢されるスライド部材40と接触する。支持部材30は射出成形された樹脂製部材である。
【0040】
支持部材30は、
図6及び
図7に示すように、閉塞状態での下方に突出するカム部36を当該カム部36の上側で支持する支持部30Aと、支持部30Aの後側端部において上側に突出する突出部30Bと、支持部30Aの下側に位置し且つカム部36に後側で隣接する隣接部30Eと、を備える。支持部30Aは、閉塞状態での上面30Cを有する。突出部30Bは、支持部30A側に面30Dを有し且つねじ17が挿入される孔30H1が形成されている。
【0041】
原稿圧着板3は、支持部材30に固定するための、閉塞状態(
図6参照)での下面3S1と端面3S2とを有する固定部3Aを備える。
【0042】
原稿圧着板3の固定部3Aの下面3S1と支持部30Aの上面30Cとが接し、且つ、固定部3Aの端面3S2と突出部30Bの面30Dとが接する状態で、ねじ17を、孔30H1を介して原稿圧着板3の固定部3Aに挿入させる。これにより、原稿圧着板3を支持部材30に固定する。
【0043】
なお、隣接部30Eには、ヒンジシャフト15が挿入される孔30H2が形成されている。
【0044】
スライド部材40は
図6及び
図7に示すように、本体部10の内部で摺動可能に収容される樹脂製部材である。スライド部材40は有底の中空部材である。スライド部材40の内部の上底部には、
図5Bに示すように、下方に突出するバネ固定部47・48・49が形成されている。バネ固定部47・48・49のそれぞれの位置は、バネ固定部11・12・13のそれぞれに対応する。上記のように、内側のバネ固定部12の中央位置が、外側のバネ固定部11・13の中央位置を通る直線から所定距離ずれている(
図5A参照)ので、内側のバネ固定部48の中央位置が、外側のバネ固定部47・49の中央位置を通る直線から所定距離ずれている。
【0045】
スライド部材40はカム部36の側である上面にカム面43が形成されている。
【0046】
スライド部材40の上面のカム面43より前側には、上下左右方向に広がる平板状の汚れ防止板42が上方に向かって立設されている。汚れ防止板42は、
図2A及び
図6に示すように、閉塞状態では、本体部10に収容される。一方、汚れ防止板42は、
図2B及び
図7に示すように、開放状態では、本体部10から延出し、装置本体2の原稿読み取り部の側を被覆する。これにより、閉塞状態から開放状態に移行する際に、カム部36とカム面43との接触部分のグリス等が装置本体2の原稿読み取り部に載置した原稿に付着することを防いでいる。また、汚れ防止板42は、カム部36とカム面43との接触部分に異物が入り込むことを防止している。
【0047】
カム面43は、スライド部材40の上面の一部であり、汚れ防止板42の後側に位置する面であり、上側に向かって凸の面である。カム面の下側には、第2圧縮バネ52及び第3圧縮バネ53が位置するが、第1圧縮バネ51は位置しない。
【0048】
スライド部材40と本体部10の底部との間には、圧縮バネである第1圧縮バネ51、第2圧縮バネ52、及び第3圧縮バネ53が介挿される。具体的には
図4、
図6、及び
図7に示すように、ヒンジシャフト15に近い側から順に、第1圧縮バネ51、第2圧縮バネ52、及び第3圧縮バネ53が並んで配設される。第1圧縮バネ51、第2圧縮バネ52、及び第3圧縮バネ53は、それぞれに上下からバネ固定部11・47、バネ固定部12・48、及びバネ固定部13・49が挿入されることにより、本体部10内においてスライド部40に固定される。
【0049】
尚、中央部のバネ固定部12・48は、
図5Aと
図5Bに示すように、バネ固定部11・47及びバネ固定部13・49を結ぶ線よりも一方の側にずれている。このことにより、支持部材39側のカム面36によって押されるスライド部材40の左右のスライド動作がスムーズなものになるものである。尚、バネ固定部12・48をずらす方向はバネ固定部11・13及びバネ固定部47・49の左右どちらの側であってもよい。しかしながら、この実施例は、上下6本のバネ固定部47,48,49・11,12,13の設置をそれぞれ一直線に揃えることを否定するものではない。
【0050】
上記のように、本体部10とスライド部材40との間に第1圧縮バネ51、第2圧縮バネ52、及び第3圧縮バネ53を介挿することで、第1圧縮バネ51、第2圧縮バネ52、及び第3圧縮バネ53の付勢力により、支持部材30が本体部10から離間する回動方向に力を付与される。具体的には
図7に示すように、第1圧縮バネ51、第2圧縮バネ52、及び第3圧縮バネ53からの力がスライド部材40のカム面43を介して支持部材30に配設されているカム部36に伝えられる。これにより、支持部材30の前部が上方に持ち上がる方向に回動する。
【0051】
本実施形態に係るヒンジ100によれば上記のように、ヒンジシャフト15に近い側から順に、第1圧縮バネ51、第2圧縮バネ52、及び第3圧縮バネ53を並んで配設し、これらの第1圧縮バネ51、第2圧縮バネ52、及び第3圧縮バネ53を用いてヒンジトルクを出す構成としている。これにより、三本の圧縮バネ(第1圧縮バネ51、第2圧縮バネ52、及び第3圧縮バネ53)の付勢力によりヒンジ100において充分なヒンジトルクを発揮しつつ、一本あたりの圧縮バネの太さを小さくするとともに、支持部材30のヒンジシャフト15の方向(左右方向)の寸法を圧縮バネ一本分の厚みに抑えることが可能となる。また、第1圧縮バネ51、第2圧縮バネ52、及び第3圧縮バネ53の付勢力はヒンジシャフト15における同じ部分(略中央部)に加わるため、第1圧縮バネ51、第2圧縮バネ52、及び第3圧縮バネ53の弾性力が異なる場合でも、支持部材30がヒンジシャフト15に対して捻れて回動することがない。
【0052】
本実施形態に係るヒンジ100では、上記のようにカム部36と接触するカム面43は、前側の第2圧縮バネ52及び第3圧縮バネ53の上側である。スライド部材40が上昇及び下降する際、スライド部材40が前側に傾くことにより発生する負荷を、前側の第2圧縮バネ52と第3圧縮バネ53とに分散させることできる。
【0053】
本発明では、以下の態様も適用することができる。
【0054】
第1に、圧縮バネは、第1圧縮バネ51、第2圧縮バネ52、及び第3圧縮バネ53の3個に限定されず、4個以上の複数(N個)でもよい。よって、スライド部材40のバネ固定部及び本体部10のバネ固定部もN個でもよい。
【0055】
第2に、スライド部材40のバネ固定部及び本体部10のバネ固定部は、一直線上に配置させても、前後方向に並ぶバネ固定部の1列を左右方向に複数配置してもよい。
【0056】
上記の第1の態様及び第2の態様では、カム部36と接触するカム面43の下側には、複数、より具体的には、2個以上でN-1個以下の圧縮バネが配置される。
具体的には、例えば、圧縮バネが、ヒンジシャフトに近い側から配置された第1圧縮バネ~第4圧縮バネの場合、カム部36と接触するカム面43の下側には、第1に、第2圧縮バネ及び第3圧縮バネ、第2に、第2圧縮バネ~第4圧縮バネ、第3に、第3圧縮バネ及び第4圧縮バネが配置されてもよい。また、圧縮バネが、ヒンジシャフトに近い側から配置された第1圧縮バネ~第5圧縮バネの場合、カム部36と接触するカム面43の下側には、第1に、第2圧縮バネ及び第3圧縮バネ、第2に、第3圧縮バネ及び第4圧縮バネ、第3に、第4圧縮バネ及び第5圧縮バネ、第4に、第2圧縮バネ~第4圧縮バネ、第5に、第3圧縮バネ~第5圧縮バネ、第6に、第2圧縮バネ~第5圧縮バネが配置されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、以上のように構成したので、複数の圧縮バネによって押されるスライド部材の負荷が、前後方向に偏ることのない事務機器のヒンジ、或はこれに加えて左右方向にも偏ることのない事務機器のヒンジを提供できるものである。
【符号の説明】
【0058】
1 複写機
2 装置本体
3 原稿圧着板
10 本体部
15 ヒンジシャフト
30 支持部材
36 カム部
40 スライド部材
42 汚れ防止版
43 カム面
51 第1圧縮バネ
52 第2圧縮バネ
53 第3圧縮バネ
100 ヒンジ