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特開2023-160583有機物分解方法および有機物分解装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160583
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】有機物分解方法および有機物分解装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/72 20230101AFI20231026BHJP
   B01J 23/755 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C02F1/72 Z ZAB
B01J23/755 M
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071031
(22)【出願日】2022-04-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-10-20
(71)【出願人】
【識別番号】505247867
【氏名又は名称】Jトップ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100143498
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 健
(72)【発明者】
【氏名】仲喜 治一
(72)【発明者】
【氏名】増田 真哉
(72)【発明者】
【氏名】松尾 俊宏
(72)【発明者】
【氏名】山本 俊
【テーマコード(参考)】
4D050
4G169
【Fターム(参考)】
4D050AA12
4D050AB13
4D050AB14
4D050AB15
4D050AB17
4D050AB19
4D050BB08
4D050BB09
4D050BC01
4D050BC02
4D050BC06
4D050BC07
4D050BD02
4G169AA02
4G169AA03
4G169BC31B
4G169BC68B
4G169CA05
4G169CA07
4G169CA10
4G169CA11
4G169DA06
4G169EA02Y
4G169EA06
4G169EA18
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、有機物を含む被処理液に過酸化水を加えてその被処理液を触媒に接触させて有機物を分解する場合に比べて有機物の分解にかかるコストをできるだけ抑えることができる有機物分解処理方法および有機物分解装置を提供することである。
【解決手段】本発明に係る有機物分解方法は、有機物含む被処理液に過酸化水素および硝酸を加えてその被処理液を触媒に接触させる。また、本発明に係る有機物分解方法において、前記過酸化水素および前記硝酸を加えた後の被処理液の温度は、0℃以上200℃以下の範囲内であると好適である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む被処理液に過酸化水素および硝酸を加えてその被処理液を触媒に接触させる、
有機物分解方法。
【請求項2】
前記過酸化水素および前記硝酸を加えた後の被処理液の温度は、0℃以上200℃以下の範囲内である、
請求項1に記載の有機物分解方法。
【請求項3】
有機物を含む被処理液を触媒に供給する第1供給部と、
前記被処理液が前記触媒に至るまでに前記被処理液に対して過酸化水素および硝酸を供給する第2供給部と
を備える、有機物分解装置。
【請求項4】
前記触媒が固定される反応器をさらに備え、
前記第1供給部は、出口が前記反応器の入口に接続され、
前記第2供給部は、出口が前記第1供給部に接続される
請求項3に記載の有機物分解装置。
【請求項5】
前記第1供給部、前記第2供給部および前記反応器の少なくともいずれかを加熱する加熱部をさらに備える、
請求項4に記載の有機物分解装置。
【請求項6】
前記加熱部は、前記過酸化水素および前記硝酸を加えた後の被処理液が前記触媒に接触している状態において前記過酸化水素および前記硝酸を加えた後の被処理液の温度が0℃以上200℃以下の範囲内になるように、前記第1供給部、前記第2供給部および前記反応器の少なくともいずれかを加熱する、
請求項5に記載の有機物分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物分解方法および有機物分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に「酸化銅からなる触媒及び過酸化水素の存在下に、有機ハロゲン化合物を100℃から200℃に加熱して、フェントン法を利用した水熱酸化反応を行わせることを特徴とする有機ハロゲン化合物の分解処理方法」が提案されている(例えば、再表2014/080739号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】再表2014/080739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような分解処理方法を用いて被処理液中の有機物(例えば、PRTR制度の対象となる1,4-ジオキサンなどの有機物)を十分に分解する場合、被処理液に対して多量の過酸化水素を加えた上でその被処理液を触媒に接触させる必要があった。このため、上述のような分解処理方法では、有機物の分解にかかるコストが高くなる問題が生じていた。
【0005】
本発明の課題は、有機物を含む被処理液に過酸化水素を加えてその被処理液を触媒に接触させて有機物を分解する場合に比べて有機物の分解にかかるコストをできるだけ抑えることができる有機物分解処理方法および有機物分解装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1局面に係る有機物分解方法は、有機物を含む被処理液に過酸化水素および硝酸を加えてその被処理液を触媒に接触させる。有機物は、例えば、PRTR制度の対象となる1,4-ジオキサンなどである。触媒は、例えば、フェントン触媒(例えば、硫酸第一鉄などの鉄化合物、酸化銅などの銅化合物、銅および銅以外の金属元素(例えば、ニッケルなど)の混合物など)などである。
【0007】
本願発明者らの鋭意検討の結果、有機物を含む被処理液に過酸化水素だけではなく硝酸も加えることで、硝酸を加えない場合に必要となる過酸化水素よりも少量の過酸化水素で、硝酸を加えない場合と同等またはそれ以上の有機物分解能力を示すことが明らかとなった。硝酸を加える場合における過酸化水素量および硝酸量の価格は、硝酸を加えない場合における過酸化水素量の価格よりも低い。このため、この有機物分解方法では、有機物を含む被処理液に過酸化水素を加えてその被処理液を触媒に接触させて有機物を分解する場合に比べて有機物の分解にかかるコストをできるだけ抑えることができる。
【0008】
本発明の第2局面に係る有機物分解方法は、第1局面に係る有機物分解方法であって、過酸化水素および硝酸を加えた後の被処理液の温度は、0℃以上200℃以下の範囲内である。
【0009】
本願発明者らの鋭意検討の結果、過酸化水素および硝酸を加えた後の被処理液の温度を0℃以上200℃以下の範囲内にすることによって、触媒を失活させることなく有機物の分解をより促進させることができることが明らかになった。
【0010】
本発明の第3局面に係る有機物分解装置は、第1供給部と第2供給部とを備える。第1供給部は、有機物を含む被処理液を触媒に供給する。第2供給部は、被処理液が触媒に至るまでに被処理液に対して過酸化水素および硝酸を供給する。
【0011】
本願発明者らの鋭意検討の結果、有機物を含む被処理液に過酸化水素だけではなく硝酸も加えることで、硝酸を加えない場合に必要となる過酸化水素よりも少量の過酸化水素で、硝酸を加えない場合と同等またはそれ以上の有機物分解能力を示すことが明らかとなった。硝酸を加える場合における過酸化水素量および硝酸量の価格は、硝酸を加えない場合における過酸化水素量の価格よりも低い。このため、この有機物分解装置では、有機物を含む被処理液に過酸化水素を加えてその被処理液を触媒に接触させて有機物を分解する場合に比べて有機物の分解にかかるコストをできるだけ抑えることができる。
【0012】
本発明の第4局面に係る有機物分解装置は、第3局面に係る有機物分解装置であって、反応器をさらに備える。反応器では、触媒が固定される。また、第1供給部は、出口が反応器の入口に接続される。第2供給部は、出口が第1供給部に接続される。
【0013】
上記構成によれば、反応器では触媒が固定される。このため、この有機物分解装置では、被処理液に含まれる有機物の分解処理を連続的に行うことができる。
【0014】
本発明の第5局面に係る有機物分解装置は、第4局面に係る有機物分解装置であって、加熱部をさらに備える。加熱部は、第1供給部、第2供給部および反応器の少なくともいずれかを加熱する。
【0015】
上記構成によれば、有機物の分解を促進させることができる。
【0016】
本発明の第6局面に係る有機物分解装置は、第5局面に係る有機物分解装置であって、加熱部は、過酸化水素および硝酸を加えた後の被処理液が触媒に接触している状態においてその被処理液の温度が0℃以上200℃以下の範囲内になるように第1供給部、第2供給部および反応器の少なくともいずれかを加熱する。
【0017】
上記構成によれば、触媒を失活させることなく有機物の分解をより促進させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る有機物分解装置の正面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る有機物分解装置の左側面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る有機物分解装置の右側面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る有機物分解装置の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<本発明の実施の形態に係る有機物分解方法の説明>
本発明の実施の形態に係る有機物分解方法は、有機物を含む被処理液に過酸化水素および硝酸を加え、その被処理液を触媒に接触させる。例えば、過酸化水素および硝酸を加えた後の被処理液が入った容器に触媒を投入したり、過酸化水素および硝酸を加えた後の被処理液を触媒が入った容器に流入させたりすることで、過酸化水素および硝酸を加えた後の被処理液を触媒に接触させることができる。過酸化水素および硝酸を加えた後の被処理液が触媒に接触することで、有機物が分解される。有機物は、例えば、PRTR制度の対象となる1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、四塩化炭素、1,2-ジクロロプロパン、1,3-ジクロロプロペン、ブロモジクロロメタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ダイオキシン類、1,2-エポキシブタン、クロロジフルオロメタン、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、ペルフルオロ、フェノール、N,N-ジメチルホルムアミド、ホルムアルデヒド、トルエンなどである。触媒は、例えば、フェントン触媒(例えば、硫酸第一鉄などの鉄化合物、酸化銅などの銅化合物、銅および銅以外の金属元素(例えば、ニッケルなど)の混合物など)などである。なお、本発明の実施の形態に係る有機物分解方法では、過酸化水素および硝酸を加えた後の被処理液の温度は、0℃以上200℃以下の範囲内であることが好ましく、50℃以上200℃以下の範囲内であることがより好ましく、100℃以上200℃以下の範囲内であることがより好ましく、150℃以上200℃以下の範囲内であることがさらに好ましく、180℃以上200℃以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0020】
本発明の実施の形態に係る有機物分解方法を使用して被処理液に含まれる有機物を分解する場合、図1図4に示される有機物分解装置1が用いられることが好ましい。以下、有機物分解装置1について説明する。
【0021】
<本発明の一実施例の形態に係る有機物分解装置の構成>
有機物分解装置1は、図1図4に示されるように、主に、被処理液流通部100、添加液流通部200、反応器300、処理液流通部400、被処理液用加圧ポンプPO1、添加液用加圧ポンプPO2、安全弁SV、第1空気抜弁AV1、第2空気抜弁AV2、残圧抜弁PV、背圧弁BV、ヒータ(図示せず)および制御装置(図示せず)から構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0022】
1.被処理液流通部
被処理液流通部100は、被処理液を反応器300に導くためのものであって、金属(例えば、ステンレスなど)などから形成されており、図1図4に示されるように、主に、第1流通部110および第2流通部120から構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0023】
(1)第1流通部
第1流通部110は、被処理液を第2流通部120に導くためのものであって、図1図4に示されるように、主に、給液配管LP1、左側配管LP2、前側配管FP1~FP5、右側配管RP1、後側配管BP1,BP2および連結配管CP1~CP5から構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0024】
給液配管LP1は、図1および図2に示されるように、有機物分解装置1のうち左側に配置されている。給液配管LP1の入口は、被処理液の供給口として使用され、有害物質を含む被処理液が貯留された被処理液タンク(図示せず)に連結されている。給液配管LP1の出口は、図1および図2に示されるように左側配管LP2の入口にフランジ接続されている。
【0025】
左側配管LP2は、図1および図2に示されるように、有機物分解装置1のうち左側に配置されている。図1および図2に示されるように、左側配管LP2の入口は、給液配管LP1の出口とフランジ接続され、左側配管LP2の出口は、前側配管FP1の入口にフランジ接続されている。なお、図1および図2に示されるように、左側配管LP2には安全弁SVが取り付けられている。
【0026】
前側配管FP1~FP5は、図1図4に示されるように、後側配管BP1~BP5の前側に配置されている。前側配管FP1の入口は、図1および図2に示されるように左側配管LP2の出口にフランジ接続され、前側配管FP1の出口は、図1および図3に示されるように連結配管CP1の入口にフランジ接続されている。前側配管FP2の入口は、図1および図3に示されるように連結配管CP1の出口にフランジ接続され、前側配管FP2の出口は、図1および図2に示されるように連結配管CP2の入口にフランジ接続されている。前側配管FP3の入口は、図1および図2に示されるように連結配管CP2の出口にフランジ接続され、前側配管FP3の出口は、図1および図3に示されるように連結配管CP3の入口にフランジ接続されている。前側配管FP4の入口は、図1および図3に示されるように連結配管CP3の出口にフランジ接続され、前側配管FP4の出口は、図2に示されるように連結配管CP4の入口にフランジ接続されている。前側配管FP5の入口は、図2に示されるように連結配管CP4の出口にフランジ接続され、前側配管FP5の出口は、図1および図3に示されるように右側配管RP1の入口にフランジ接続されている。
【0027】
なお、前側配管FP1は、図1に示されるように、処理液流通部400の前側配管407の左端面および右端面に形成された開口に挿通され、処理液流通部400の前側配管407の内側に配置される。前側配管FP2は、図1に示されるように、処理液流通部400の前側配管406の左端面および右端面に形成された開口に挿通され、処理液流通部400の前側配管406の内側に配置される。前側配管FP3は、図1に示されるように、処理液流通部400の前側配管405の左端面および右端面に形成された開口に挿通され、処理液流通部400の前側配管405の内側に配置される。前側配管FP4は、図1に示されるように、処理液流通部400の前側配管404の左端面および右端面に形成された開口に挿通され、処理液流通部400の前側配管404の内側に配置される。前側配管FP5は、図1に示されるように、処理液流通部400の前側配管403の左端面および右端面に形成された開口に挿通され、処理液流通部400の前側配管403の内側に配置される。
【0028】
右側配管RP1は、図1図3および図4に示されるように、有機物分解装置1のうち右側に配置されている。右側配管RP1の入口は、図1および図3に示されるように前側配管FP5の出口にフランジ接続され、右側配管RP1の出口は、図3および図4に示されるように後側配管BP1の入口にフランジ接続されている。なお、図3および図4に示されるように、右側配管RP1には第1空気抜弁AV1が取り付けられている。
【0029】
後側配管BP1,BP2は、図1図4に示されるように、前側配管FP1~FP5の後側に配置されている。後側配管BP1の入口は、図3および図4に示されるように右側配管RP1の出口にフランジ接続され、後側配管BP1の出口は、図2および図4に示されるように連結配管CP5の入口にフランジ接続されている。後側配管BP2の入口は、図2および図4に示されるように連結配管CP5の出口にフランジ接続され、後側配管BP2の出口は、図3および図4に示されるように連結配管CP6の入口にフランジ接続されている。
【0030】
連結配管CP1は、図1および図3に示されるように、前側配管FP1と前側配管FP2とを連結している。連結配管CP2は、図1および図2に示されるように、前側配管FP2と前側配管FP3とを連結している。連結配管CP3は、図1および図3に示されるように、前側配管FP3と前側配管FP4とを連結している。連結配管CP4は、図2に示されるように、前側配管FP4と前側配管FP5とを連結している。連結配管CP5は、図2および図4に示されるように、後側配管BP1と後側配管BP2とを連結している。
【0031】
(2)第2流通部
第2流通部120は、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液を反応器300に導くためのものであって、図2図4に示されるように、主に、連結配管CP6~CP9および後側配管BP3~BP5から構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0032】
連結配管CP6は、図3および図4に示されるように、後側配管BP2と後側配管BP3とを連結している。なお、図3および図4に示されるように、連結配管CP6の内部には、添加液流通部200の注入部205の出口側の端部が挿通されている。連結配管CP7は、図2および図4に示されるように、後側配管BP3と後側配管BP4とを連結している。連結配管CP8は、図3および図4に示されるように、後側配管BP4と後側配管BP5とを連結している。なお、図3および図4に示されるように、連結配管CP8の内部には、添加液流通部200の注入部206の出口側の端部が挿通されている。連結配管CP9は、図2および図4に示されるように、後側配管BP5と反応器300の第1反応配管301とを連結している。
【0033】
後側配管BP3の入口は、図3および図4に示されるように連結配管CP6の出口にフランジ接続され、後側配管BP3の出口は、図2および図4に示されるように連結配管CP7の入口にフランジ接続されている。後側配管BP4の入口は、図2および図4に示されるように連結配管CP7の出口にフランジ接続され、後側配管BP4の出口は、図3および図4に示されるように連結配管CP8の入口にフランジ接続されている。後側配管BP5の入口は、図3および図4に示されるように連結配管CP8の出口にフランジ接続され、後側配管BP5の出口は、図2および図4に示されるように連結配管CP9の入口にフランジ接続されている。
【0034】
2.添加液流通部
添加液流通部200は、被処理液が触媒に至るまでに過酸化水素および硝酸を被処理液に供給するためのものであって、過酸化水素および硝酸を被処理液流通部100の第2流通部120に導く。また、添加液流通部200は、金属(例えば、ステンレスなど)などから形成されており、図1図4に示されるように、主に、第1配管201、第2配管202、第3配管203、第4配管204、注入部205~207から構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0035】
第1配管201の入口は、被処理液に混合される過酸化水素および硝酸の供給口として使用され、過酸化水素および硝酸が貯留された添加液タンク(図示せず)に連結されている。第1配管201の出口は、図1に示されるように第2配管202の入口にフランジ接続されている。
【0036】
第2配管202の入口は、図1に示されるように第1配管201の入口にフランジ接続され、第2配管202の出口は、図1および図2に示されるように第3配管203の入口にフランジ接続されている。なお、図1に示されるように、第2配管202には残圧抜弁PVが取り付けられている。
【0037】
第3配管203の入口は、図1および図2に示されるように第2配管202の出口にフランジ接続され、第3配管203の出口は、図1および図3に示されるように第4配管204の入口にフランジ接続される。
【0038】
第4配管204の入口は、図1および図3に示されるように、第3配管203の出口にフランジ接続される。なお、第4配管204の出口は、図1および図3に示されるように、上端部、上端部より下側に位置する中間部、および、中間部より下側に位置する下部の3箇所に形成されている。第4配管204の上端部の出口は、図3および図4に示されるように、注入部205の入口に接続されている。第4配管204の中間部の出口は、図3および図4に示されるように、注入部206の入口に接続されている。第4配管204の下部の出口は、図3および図4に示されるように、注入部207の入口に接続されている。
【0039】
注入部205の入口は、図3および図4に示されるように第4配管204の上端部の出口に接続され、注入部205の出口側の端部は、上述したように被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP6の内部に挿通されている。注入部206の入口は、図3および図4に示されるように第4配管204の中間部の出口に接続され、注入部206の出口側の端部は、上述したように被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP8の内部に挿通されている。なお、注入部205を流れる過酸化水素および硝酸は、被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP6に流入した被処理液に加えられ、注入部206を流れる過酸化水素および硝酸は、被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP8に流入した被処理液に加えられる。注入部207の入口は、図3および図4に示されるように第4配管204の下部の出口に接続され、注入部207の出口側の端部は、上述したように反応器300の連結配管303の内部に挿通されている。なお、注入部207を流れる過酸化水素および硝酸は、反応器300の第1反応配管301から流出した被処理液に加えられる。
【0040】
3.反応器
反応器300は、金属(例えば、チタン(チタン合金または純チタン)など)などから形成されており、図4に示されるように、主に、第1反応配管301、第2反応配管302および連結配管303から構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0041】
第1反応配管301の内部には触媒が固定されている。触媒は、例えば、フェントン触媒(例えば、硫酸第一鉄などの鉄化合物、酸化銅などの銅化合物、銅および銅以外の金属元素(例えば、ニッケルなど)の混合物など)などであり、粒状、ペレット状またはハニカム構造などの形状を呈している。また、第1反応配管301の入口は、図4に示されるように被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP9の出口にフランジ接続され、第1反応配管301の出口は、図4に示されるように連結配管303の入口にフランジ接続される。
【0042】
第2反応配管302の内部には触媒が固定されている。触媒は、例えば、フェントン触媒(例えば、硫酸第一鉄などの鉄化合物、酸化銅などの銅化合物、銅および銅以外の金属元素(例えば、ニッケルなど)の混合物など)などであり、粒状、ペレット状またはハニカム構造などの形状を呈している。また、第2反応配管302の入口は、図4に示されるように連結配管303の出口にフランジ接続され、第2反応配管302の出口は、図2および図4に示されるように処理液流通部400の左側配管401の入口にフランジ接続される。
【0043】
連結配管303は、図3および図4に示されるように、第1反応配管301と第2反応配管302とを連結している。なお、上述したように、連結配管303の内部には、添加液流通部200の注入部207の出口側の端部が挿通されている。
【0044】
4.処理液流通部
処理液流通部400は、有害物質が分解された後の被処理液(以下、「処理液」という。)を外部に導くためのものであって、金属(例えば、ステンレスなど)などから形成されており、図1図2および図4に示されるように、主に、左側配管401、前側配管402~407および排液配管408から構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0045】
左側配管401は、図1図2および図4に示されるように、有機物分解装置1のうち左側に配置されている。左側配管401の入口は、図1図2および図4に示されるように反応器300の第2反応配管302の出口とフランジ接続され、左側配管401の出口は、図1および図2に示されるように、前側配管402の入口にフランジ接続されている。
【0046】
前側配管402~407は、図1図4に示されるように、被処理液流通部100の後側配管BP1~BP5の前側に配置されている。前側配管403~407は、左端面および右端面を有する略円筒形状を呈している(図1参照)。これらの左端面および右端面には開口が形成されている。被処理液流通部100の第1流通部110の前側配管FP1は、前側配管407のこの開口に挿通されて前側配管407の内側に配置される。被処理液流通部100の第1流通部110の前側配管FP2は、前側配管406のこの開口に挿通されて前側配管406の内側に配置される。被処理液流通部100の第1流通部110の前側配管FP3は、前側配管405のこの開口に挿通されて前側配管405の内側に配置される。被処理液流通部100の第1流通部110の前側配管FP4は、前側配管404のこの開口に挿通されて前側配管404の内側に配置される。被処理液流通部100の第1流通部110の前側配管FP5は、前側配管403のこの開口に挿通されて前側配管403の内側に配置される。また、図1に示されるように、前側配管403,405,407では、入口形成部が右端部から下方に突出しており、出口形成部が左端部から上方に突出しており、前側配管404,406では、入口形成部が左端部から下方に突出しており、出口形成部が右端部から上方に突出している。
【0047】
そして、前側配管402の入口は、図1および図2に示されるように左側配管401の出口にフランジ接続され、前側配管402の出口は、図1に示されるように前側配管403の入口にフランジ接続される。前側配管403の入口は、図1に示されるように前側配管402の出口にフランジ接続され、前側配管403の出口は、図1および図3に示されるように前側配管404の入口にフランジ接続される。前側配管404の入口は、図1および図3に示されるように前側配管403の出口にフランジ接続され、前側配管404の出口は、図1および図2に示されるように前側配管405の入口にフランジ接続される。前側配管405の入口は、図1および図2に示されるように前側配管404の出口にフランジ接続され、前側配管405の出口は、図1および図3に示されるように前側配管406の入口にフランジ接続される。前側配管406の入口は、図1および図3に示されるように前側配管405の出口にフランジ接続され、前側配管406の出口は、図1に示されるように前側配管407の入口にフランジ接続される。図1に示されるように、前側配管407の入口は、前側配管406の出口にフランジ接続され、前側配管407の出口は、排液配管408の入口にフランジ接続される。
【0048】
排液配管408の入口は、図1に示されるように前側配管407の出口にフランジ接続され、排液配管408の出口は、処理液の排出口として使用される。なお、図1図4に示されるように、排液配管408には第2空気抜弁AV2および背圧弁BVが取り付けられている。
【0049】
5.被処理液用加圧ポンプ
被処理液用加圧ポンプPO1は、被処理液流通部100の第1流通部110の給液配管LP1を介して被処理液タンクの被処理液を被処理液流通部100に流通させる役目などを担っている。なお、被処理液用加圧ポンプPO1は、制御装置に接続されている。
【0050】
6.添加液用加圧ポンプ
添加液用加圧ポンプPO2は、添加液流通部200の第1配管201を介して添加液タンクの過酸化水素および硝酸を添加液流通部200に流通させる役目などを担っている。なお、添加液用加圧ポンプPO2は、制御装置に接続されている。
【0051】
7.安全弁
安全弁SVは、被処理液流通部100、添加液流通部200、反応器300および処理液流通部400の内部(系内)の圧力を開放する役目などを担っており、図2に示されるように、被処理液流通部100の第1流通部110の左側配管LP2に取り付けられている。
【0052】
8.第1空気抜弁
第1空気抜弁AV1は、系内に溜まる空気を外部に排出する役目などを担っており、図3および図4に示されるように、被処理液流通部100の第1流通部110の右側配管RP1に取り付けられている。
【0053】
9.第2空気抜弁
第2空気抜弁AV2は、系内に溜まる空気を外部に排出する役目、系内の圧力を開放する役目などを担っており、図1図2および図4に示されるように、処理液流通部400の排液配管408に取り付けられている。
【0054】
10.残圧抜弁
残圧抜弁PVは、系内の圧力を開放する役目などを担っており、図1に示されるように、添加液流通部200の第2配管202に取り付けられている。
【0055】
11.背圧弁
背圧弁BVは、処理液流通部400の排液配管408の出口から処理液が規定量より過大に吐出されることを防ぐ役目、系内の圧力を一定に保つ役目などを担っており、図2および図4に示されるように、処理液流通部400の排液配管408に取り付けられている。
【0056】
12.ヒータ
ヒータ(図示せず)は、例えばリボンヒータなどであって、被処理液流通部100の後側配管BP1~5の外面および添加液流通部200の第3配管203の外面に取り付けられている。なお、ヒータは、制御装置に接続されている。
【0057】
13.制御装置
制御装置(図示せず)は、上述の通り、被処理液用加圧ポンプPO1、添加液用加圧ポンプPO2およびヒータなどに接続され、これらの電源のオンオフおよび出力などを制御する。
【0058】
<本発明の実施の形態に係る有機物分解装置を用いた有機物分解方法の説明>
以下、有機物分解装置1を用いた有機物分解方法について説明する。
【0059】
まず、被処理液用加圧ポンプPO1が、有害物質を含む被処理液を被処理液流通部100の第1流通部110の給液配管LP1内に流入させる。なお、このとき、系内の圧力は、背圧弁BVによって、1MPa以上2.2MPa以下の範囲内に設定されることが好ましく、1.5MPa以上2.0MPa以下の範囲内に設定されることがより好ましい。そして、被処理液は、被処理液流通部100の第1流通部110の給液配管LP1→左側配管LP2→前側配管FP1→連結配管CP1→前側配管FP2→連結配管CP2→前側配管FP3→連結配管CP3→前側配管FP4→連結配管CP4→前側配管FP5→右側配管RP1→後側配管BP1→連結配管CP5→後側配管BP2→被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP6の順でこれらの内部を流れる。被処理液は、被処理液流通部100の後側配管BP1,BP2を流れている時に加熱部によって加熱される。
【0060】
なお、被処理液が、被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP6内に流入すると、添加液流通部200の注入部205から流出した過酸化水素および硝酸が、被処理液に加えられる。そして、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液は、被処理液流通部100の第2流通部120の後側配管BP3→連結配管CP7→後側配管BP4→連結配管CP8→後側配管BP5→連結配管CP9の順でこれらの内部を流れる。過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液は、被処理液流通部100の後側配管BP3,BP4,BP5を流れている時に加熱部によって加熱される。なお、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が、被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP8内に流入した時、添加液流通部200の注入部206から流出した過酸化水素および硝酸が、被処理液にさらに加えられる。過酸化水素および硝酸は、添加液用加圧ポンプPO2によって添加液流通部200の第1配管201内に流入され、添加液流通部200の第1配管201→第2配管202→第3配管203→第4配管204→注入部205,206,207の順でこれらの内部を流れる。また、過酸化水素および硝酸は、添加液流通部200の第3配管203を流れている時に加熱部によって加熱される。すなわち、加熱された過酸化水素および硝酸が、被処理液に加えられる。
【0061】
そして、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液は、被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP9内から反応器300の第1反応配管301→連結配管303→第2反応配管302の順でこれらの内部を流れる。その被処理液が、反応器300の第1反応配管301および第2反応配管302内の触媒に接触することで、その被処理液に含まれる有害物質が分解される。なお、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内の触媒にその被処理液が接触している状態において、その被処理液の温度は、0℃以上200℃以下の範囲内であることが好ましく、50℃以上200℃以下の範囲内であることがより好ましく、100℃以上200℃以下の範囲内であることがより好ましく、150℃以上200℃以下の範囲内であることがさらに好ましく、180℃以上200℃以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0062】
なお、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が、反応器300の連結配管CP9を流れている時、添加液流通部200の注入部207から流出した過酸化水素および硝酸も、被処理液にさらに加えられる。
【0063】
そして、処理液は、反応器300の第2反応配管302内から処理液流通部400の左側配管401→前側配管402→前側配管403→前側配管404→前側配管405→前側配管406→前側配管407→排液配管408の順でこれらの内部を流れる。なお、より詳細には、前側配管403の内部は、前側配管403の内側且つ被処理液流通部100の前側配管FP5の外側であり、前側配管404の内部は、前側配管404の内側且つ被処理液流通部100の前側配管FP4の外側であり、前側配管405の内部は、前側配管405の内側且つ被処理液流通部100の前側配管FP3の外側であり、前側配管406の内部は、前側配管406の内側且つ被処理液流通部100の前側配管FP2の外側であり、前側配管407の内部は、前側配管407の内側且つ被処理液流通部100の前側配管FP1の外側である。最終的に、処理液は、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出される。
【0064】
<本発明の実施の形態に係る有機物分解方法の特徴>
(1)
本発明の実施の形態に係る有機物分解方法では、有機物を含む被処理液に過酸化水素および硝酸が加えられ、その被処理液が、反応器300の第1反応配管301および第2反応配管302内の触媒に接触させられる。このため、この有機物分解方法では、有機物を含む被処理液に過酸化水素を加えてその被処理液を反応器300の第1反応配管301および第2反応配管302内の触媒に接触させて有機物を分解する場合に比べて有機物の分解にかかるコストをできるだけ抑えることができる。
【0065】
(2)
本発明の実施の形態に係る有機物分解方法では、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が、反応器300の第1反応配管301および第2反応配管302内の触媒に接触している状態において、その被処理液の温度は、0℃以上200℃以下の範囲内である。このため、この有機物分解方法では、触媒を失活させることなく有機物の分解をより促進させることができる。
【0066】
<変形例>
(A)
先の実施の形態に係る有機物分解装置1では、加熱部は、被処理液流通部100の後側配管BP1,BP2,BP3,BP4,BP5の外面および添加液流通部200の第3配管203の外面に取り付けられていた。しかし、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が、反応器300の第1反応配管301および第2反応配管302内の触媒に接触する時に、その被処理液の温度が100℃以上200℃以下の範囲内になるのであれば、加熱部は、これらの配管の少なくとも1つの外面に取り付けられてもよいし、被処理液流通部100のうち後側配管BP1,BP2,BP3,BP4,BP5以外の少なくとも1つの外面に取り付けられてもよいし、添加液流通部200うちの第3配管203以外の少なくとも1つの外面に取り付けられてもよいし、反応器300の外面に取り付けられてもよい。
【0067】
(B)
先の実施の形態に係る有機物分解装置1では言及しなかったが、被処理液流通部100、添加液流通部200、反応器300および処理液流通部400を構成する配管の数は限定されない。
【0068】
(C)
先の実施の形態に係る有機物分解装置1では、系内の圧力は、背圧弁BVによって、1MPa以上2.2MPa以下の範囲内に設定されることが好ましいとされていた。しかし、背圧弁BVによって系内に圧力はかけられなくてもよい。
【0069】
(D)
先の実施の形態に係る有機物分解装置1では、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が、反応器300の第1反応配管301および第2反応配管302内の触媒に接触している状態において、その被処理液の温度は、0℃以上200℃以下の範囲内であることが好ましいとされていた。しかし、触媒が失活しなかったり有機物が十分に分解されたりするのであれば、その被処理液の温度は、同状態において200℃超(例えば、200℃超400℃以下の範囲内、200℃超300℃以下の範囲内など)であってもよい。
【0070】
(E)
先の実施の形態に係る有機物分解装置1では言及しなかったが、反応器300の連結配管303の内部にも触媒が固定されてもよい。
【0071】
(F)
先の実施の形態では、有機物分解装置1を用いることで、本発明に係る有機物分解方法による有機物の分解が実現されていた。しかし、有機物分解装置1を用いずに、本発明に係る有機物分解方法による有機物の分解が実現されてもよい。例えば、有機物を含む被処理液に過酸化水素および硝酸が加えられ、その被処理液および触媒が容器内にまとめて投入されてもよい。そして、容器の外面に取り付けた加熱部によって、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が加熱されてもよい。もしくは、有機物を含む被処理液、過酸化水素および硝酸の少なくとも1つが、有機物を含む被処理液に過酸化水素および硝酸が加えられる前にあらかじめ加熱されていてもよい。
【0072】
(G)
先の実施の形態に係る有機物分解装置1では、過酸化水素および硝酸が、添加液流通部200を流れて被処理液に加えられていた。しかし、添加液流通部200が設けられずに、過酸化水素だけが流れる過酸化水素流通部および硝酸だけが流れる硝酸流通部が設けられてもよい。そして、過酸化水素流通部の出口から流出する過酸化水素が、被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP6,CP8の内部および反応器300の連結配管CP9の内部において被処理液に加えられ、硝酸流通部の出口から流出する硝酸が、被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP6,CP8の内部および反応器300の連結配管CP9の内部において被処理液に加えられてもよい。
【0073】
(H)
先の実施の形態に係る有機物分解装置1では、第1空気抜弁AV1が、被処理液流通部100の第1流通部110の右側配管RP1に取り付けられ、第2空気抜弁AV2が、処理液流通部400の排液配管408に取り付けられていた。しかし、空気抜弁が取り付けられる配管はこれらの配管に限定されない。すなわち、被処理液流通部100、添加液流通部200および処理液流通部400を構成する配管の少なくとも1つに空気抜弁が取り付けられてもよい。
【0074】
(I)
先の実施の形態に係る有機物分解装置1では言及しなかったが、被処理液流通部100、添加液流通部200および処理液流通部400を構成する配管の少なくとも1つがチタンから形成されてもよい。例えば、被処理液流通部100、添加液流通部200および処理液流通部400の配管の全部がチタンから形成されてもよいし、被処理液流通部100のうち連結配管CP8、後側配管BP5および連結配管CP9がチタンから形成されてもよいし、添加液流通部200のうち第1配管201、第2配管202、第3配管203および第4配管204がチタンから形成されてもよい。
【0075】
なお、上記変形例は、単独で適用されてもよいし、組み合わせて適用されてもよい。
【0076】
<実施例および比較例>
以下、本発明をより詳細に説明するために実施例および比較例を示すが、本発明がこの実施例に限定されることはない。
【実施例0077】
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表1に示されるように、全有機炭素濃度 (TOC)が1007.4mg/L、1,4-ジオキサン濃度が1600mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、硝酸25mM、過酸化水素100mMとなるように硝酸および過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。また、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内に流入している状態において、反応器300内で気泡がほとんど発生していないことを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表1に示されるように、全有機炭素濃度 が402.5mg/L、1,4-ジオキサン濃度が70mg/Lであった。この結果、TOC除去率は60%、1,4-ジオキサン分解率は95.6%であることが分かる(表1参照)。
【実施例0078】
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表1に示されるように、全有機炭素濃度 (TOC)が1007mg/L、1,4-ジオキサン濃度が1600mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、硝酸25mM、過酸化水素150mMとなるように硝酸および過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。また、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内に流入している状態において、反応器300内で気泡がほとんど発生していないことを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表1に示されるように、全有機炭素濃度 が154.9mg/L、1,4-ジオキサン濃度が6mg/Lであった。この結果、TOC除去率は84.6%、1,4-ジオキサン分解率は99.6%であることが分かる(表1参照)。
【実施例0079】
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表1に示されるように、全有機炭素濃度 (TOC)が1022.2mg/L、1,4-ジオキサン濃度が1700mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、硝酸40mM、過酸化水素150mMとなるように硝酸および過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。また、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内に流入している状態において、反応器300内で気泡がほとんど発生していないことを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表1に示されるように、全有機炭素濃度 が176.4mg/L、1,4-ジオキサン濃度が16mg/Lであった。この結果、TOC除去率は82.7%、1,4-ジオキサン分解率は99.1%であることが分かる(表1参照)。
【実施例0080】
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表1に示されるように、全有機炭素濃度 (TOC)が1029.6mg/L、1,4-ジオキサン濃度が1800mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、硝酸14mM、過酸化水素200mMとなるように硝酸および過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。また、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内に流入している状態において、反応器300内で気泡がほとんど発生していないことを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表1に示されるように、全有機炭素濃度 が401mg/L、1,4-ジオキサン濃度が78mg/Lであった。この結果、TOC除去率は61.1%、1,4-ジオキサン分解率は95.7%であることが分かる(表1参照)。
【実施例0081】
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表1に示されるように、全有機炭素濃度 (TOC)が1020.6mg/L、1,4-ジオキサン濃度が1600mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、硝酸25mM、過酸化水素200mMとなるように硝酸および過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。また、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内に流入している状態において、反応器300内で気泡がほとんど発生していないことを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表1に示されるように、全有機炭素濃度 が14.8mg/L、1,4-ジオキサン濃度が0.06mg/Lであった。この結果、TOC除去率は98.5%、1,4-ジオキサン分解率は約100%(≒99.99・・・%)であることが分かる(表1参照)。
【0082】
(比較例1)
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表1に示されるように、全有機炭素濃度 (TOC)が1034.6mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、過酸化水素100mMとなるように過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、過酸化水素が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表1に示されるように、全有機炭素濃度 が549.3mg/Lであった。この結果、TOC除去率は46.9%であることが分かる(表1参照)。
【0083】
(比較例2)
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表1に示されるように、全有機炭素濃度 (TOC)が1021.8mg/L、1,4-ジオキサン濃度が1900mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、過酸化水素300mMとなるように過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、過酸化水素が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。また、過酸化水素が加えられた後の被処理液が反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内に流入している状態において、反応器300内で気泡が多く発生していることを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表1に示されるように、全有機炭素濃度 が122.5mg/L、1,4-ジオキサン濃度が160mg/Lであった。この結果、TOC除去率は88%、1,4-ジオキサン分解率は91.6%であることが分かる(表1参照)。
【0084】
(比較例3)
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表1に示されるように、全有機炭素濃度 (TOC)が1024.2mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、硫酸10mM、過酸化水素100mMとなるように硫酸および過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、過酸化水素および硫酸が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表1に示されるように、全有機炭素濃度 が755.1mg/Lであった。この結果、TOC除去率は26.3%であることが分かる(表1参照)。
【0085】
(比較例4)
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表1に示されるように、全有機炭素濃度 (TOC)が1025.6mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、硝酸120mMとなるように硝酸を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、硝酸が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表1に示されるように、全有機炭素濃度 が972.8mg/Lであった。この結果、TOC除去率は5.1%であることが分かる(表1参照)。
【0086】
(比較例5)
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表2に示されるように、全有機炭素濃度 (TOC)が34000mg/L、フェノール類濃度が29000mg/L、ホルムアルデヒド濃度が2300mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、過酸化水素300mMとなるように過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、過酸化水素が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表2に示されるように、全有機炭素濃度 が17350mg/L、フェノール類濃度が9600mg/L、ホルムアルデヒド濃度が970mg/Lであった。この結果、TOC除去率は49%、フェノール類分解率は66.9%、ホルムアルデヒド分解率は57.8%であることが分かる(表2参照)。
【0087】
(比較例6)
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表3に示されるように、トルエン濃度が1mg/L、エタノール濃度が40mg/L、N,N-ジメチルホルムアミド濃度が100mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、過酸化水素300mMとなるように過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、過酸化水素が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表3に示されるように、トルエン濃度が0.12mg/L、エタノール濃度が330mg/L、N,N-ジメチルホルムアミド濃度が40mg/L以下であった。この結果、トルエン分解率は88%、N,N-ジメチルホルムアミド分解率は60%であることが分かる。なお、エタノールは反応副産物により増加していると推測される(表3参照)。
【0088】
【表1】
【0089】
【表2】
【0090】
【表3】
【0091】
[実施例および比較例の比較検証]
有機物の分解にかかるコストについて、実施例2と比較例2とを比較検証する。なお、これらの例では、900円/500mL(1.8円/mL)である硝酸(62.5%)、1850円/500mL(3.7円/mL)である過酸化水素(32.8%)が用いられている。実施例2のように、25mM(0.025mol/L)である硝酸および150mM(0.15mol/L)である過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させる場合、以下の計算式から被処理液1Lに対して54.7円が必要となる。
硝酸: 1.8円/mL×63g/mol×0.025mol/L×100÷62.5%÷比重1.38≒3.3円/L
過酸化水素: 3.7円/mL×34g/mol×0.15mol/L×100÷32.8%÷比重1.12≒51.4円/L
合計: 3.3円/L+51.4円/L=54.7円/L
【0092】
そして、比較例2のように、300mM(0.3mol/L)である過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させる場合、以下の計算式から被処理液1Lに対して102.8円が必要となる。
過酸化水素: 3.7円/mL×34g/mol×0.3mol/L×100÷32.8%÷比重1.12≒102.8円/L
【0093】
以上より、有機物を含む被処理液に過酸化水素および硝酸を加え、その被処理液を触媒に接触させることで、硝酸を被処理液に加えない場合に必要となる過酸化水素の半分量の過酸化水素で、硝酸を加えない場合と同等またはそれ以上の有機物分解能力を示した上で、有機物の分解にかかるコストが約半分になることが明らかとなった。
【0094】
次に、反応器300内における気泡の発生の有無について、実施例1~5と比較例2とを比較検証する。実施例1~5では、上述の通り、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内に流入している状態において、反応器300内で気泡がほとんど発生していないことが確認されている。一方、比較例2では、過酸化水素が加えられた後の被処理液が反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内に流入している状態において、反応器300内で気泡が多く発生していることが確認されている。反応器300内で気泡が多く発生すると、反応器300内に被処理液を流入させることができなくなったり、処理液を反応器300内から流出させることができなくなったりするおそれが生じる。このため、本発明に係る有機物分解方法は、このようなおそれが生じることをできるだけ低減することができる。
【符号の説明】
【0095】
1 有機物分解装置
100 被処理液流通部(第1供給部)
200 添加液流通部(第2供給部)
300 反応器
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-07-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物として少なくとも1,4-ジオキサンを含む被処理液に過酸化水素および硝酸を加えてその被処理液をフェントン触媒としての銅ニッケル触媒に接触させ、
前記過酸化水素および前記硝酸を加えた後の被処理液の温度は、180℃以上200℃以下の範囲内である
有機物分解方法。
【請求項2】
前記過酸化水素のモル濃度は、前記硝酸のモル濃度の150/40倍以上200/14倍以下の範囲内である
請求項1に記載の有機物分解方法。
【請求項3】
有機物として少なくとも1,4-ジオキサンを含む被処理液をフェントン触媒としての銅ニッケル触媒に供給する第1供給部と、
前記被処理液が前記銅ニッケル触媒に至るまでに前記被処理液に対して過酸化水素および硝酸を供給する第2供給部と
前記過酸化水素および前記硝酸を加えた後の被処理液の温度を180℃以上200℃以下の範囲内に調整するための加熱部と
を備える、有機物分解装置。
【請求項4】
前記銅ニッケル触媒が固定される反応器をさらに備え、
前記第1供給部は、出口が前記反応器の入口に接続され、
前記第2供給部は、出口が前記第1供給部に接続される
請求項3に記載の有機物分解装置。
【請求項5】
前記過酸化水素のモル濃度は、前記硝酸のモル濃度の150/40倍以上200/14倍以下の範囲内である
請求項3または4に記載の有機物分解装置
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機物分解方法および有機物分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に「酸化銅からなる触媒及び過酸化水素の存在下に、有機ハロゲン化合物を100℃から200℃に加熱して、フェントン法を利用した水熱酸化反応を行わせることを特徴とする有機ハロゲン化合物の分解処理方法」が提案されている(例えば、再表2014/080739号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】再表2014/080739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述のような分解処理方法を用いて被処理液中の有機物(例えば、PRTR制度の対象となる1,4-ジオキサンなどの有機物)を十分に分解する場合、被処理液に対して多量の過酸化水素を加えた上でその被処理液を触媒に接触させる必要があった。このため、上述のような分解処理方法では、有機物の分解にかかるコストが高くなる問題が生じていた。
【0005】
本発明の課題は、有機物を含む被処理液に過酸化水素を加えてその被処理液を触媒に接触させて有機物を分解する場合に比べて有機物の分解にかかるコストをできるだけ抑えることができる有機物分解処理方法および有機物分解装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1局面に係る有機物分解方法は、有機物として少なくとも1,4-ジオキサンを含む被処理液に過酸化水素および硝酸を加えてその被処理液をフェントン触媒としての銅ニッケル触媒に接触させる。また、過酸化水素および硝酸を加えた後の被処理液の温度は、180℃以上200℃以下の範囲内である。
【0007】
本願発明者らの鋭意検討の結果、有機物を含む被処理液に過酸化水素だけではなく硝酸も加えることで、硝酸を加えない場合に必要となる過酸化水素よりも少量の過酸化水素で、硝酸を加えない場合と同等またはそれ以上の有機物分解能力を示すことが明らかとなった。硝酸を加える場合における過酸化水素量および硝酸量の価格は、硝酸を加えない場合における過酸化水素量の価格よりも低い。このため、この有機物分解方法では、有機物を含む被処理液に過酸化水素を加えてその被処理液を触媒に接触させて有機物を分解する場合に比べて有機物の分解にかかるコストをできるだけ抑えることができる。また、本願発明者らの鋭意検討の結果、過酸化水素および硝酸を加えた後の被処理液の温度を180℃以上200℃以下の範囲内にすることによって、触媒を失活させることなく有機物の分解をより促進させることができることが明らかになった。
【0008】
本発明の第2局面に係る有機物分解方法は、第1局面に係る有機物分解方法であって、過酸化水素のモル濃度は、硝酸のモル濃度の150/40倍以上200/14倍以下の範囲内である。
【0009】
本発明の第3局面に係る有機物分解装置は、第1供給部と第2供給部と加熱部とを備える。第1供給部は、有機物として少なくとも1,4-ジオキサンを含む被処理液をフェントン触媒としての銅ニッケル触媒に供給する。第2供給部は、被処理液が銅ニッケル触媒に至るまでに被処理液に対して過酸化水素および硝酸を供給する。加熱部は、過酸化水素および硝酸を加えた後の被処理液の温度を180℃以上200℃以下の範囲内に調整するためのものである。
【0010】
本願発明者らの鋭意検討の結果、有機物を含む被処理液に過酸化水素だけではなく硝酸も加えることで、硝酸を加えない場合に必要となる過酸化水素よりも少量の過酸化水素で、硝酸を加えない場合と同等またはそれ以上の有機物分解能力を示すことが明らかとなった。硝酸を加える場合における過酸化水素量および硝酸量の価格は、硝酸を加えない場合における過酸化水素量の価格よりも低い。このため、この有機物分解装置では、有機物を含む被処理液に過酸化水素を加えてその被処理液を触媒に接触させて有機物を分解する場合に比べて有機物の分解にかかるコストをできるだけ抑えることができる。また、上記構成によれば、触媒を失活させることなく有機物の分解をより促進させることができる。
【0011】
本発明の第4局面に係る有機物分解装置は、第3局面に係る有機物分解装置であって、反応器をさらに備える。反応器では、銅ニッケル触媒が固定される。また、第1供給部は、出口が反応器の入口に接続される。第2供給部は、出口が第1供給部に接続される。
【0012】
上記構成によれば、反応器では触媒が固定される。このため、この有機物分解装置では、被処理液に含まれる有機物の分解処理を連続的に行うことができる。
【0013】
本発明の第5局面に係る有機物分解装置は、第3局面または第4局面に係る有機物分解装置であって、過酸化水素のモル濃度は、硝酸のモル濃度の150/40倍以上200/14倍以下の範囲内である
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る有機物分解装置の正面図である。
図2】本発明の実施の形態に係る有機物分解装置の左側面図である。
図3】本発明の実施の形態に係る有機物分解装置の右側面図である。
図4】本発明の実施の形態に係る有機物分解装置の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<本発明の実施の形態に係る有機物分解方法の説明>
本発明の実施の形態に係る有機物分解方法は、有機物を含む被処理液に過酸化水素および硝酸を加え、その被処理液を触媒に接触させる。例えば、過酸化水素および硝酸を加えた後の被処理液が入った容器に触媒を投入したり、過酸化水素および硝酸を加えた後の被処理液を触媒が入った容器に流入させたりすることで、過酸化水素および硝酸を加えた後の被処理液を触媒に接触させることができる。過酸化水素および硝酸を加えた後の被処理液が触媒に接触することで、有機物が分解される。有機物は、例えば、PRTR制度の対象となる1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,2-ジクロロエタン、1,1-ジクロロエチレン、ジクロロメタン、クロロホルム、1,1,1-トリクロロエタン、1,1,2-トリクロロエタン、四塩化炭素、1,2-ジクロロプロパン、1,3-ジクロロプロペン、ブロモジクロロメタン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ダイオキシン類、1,2-エポキシブタン、クロロジフルオロメタン、1-クロロ-1,1-ジフルオロエタン、ペルフルオロ、フェノール、N,N-ジメチルホルムアミド、ホルムアルデヒド、トルエンなどである。触媒は、例えば、フェントン触媒(例えば、硫酸第一鉄などの鉄化合物、酸化銅などの銅化合物、銅および銅以外の金属元素(例えば、ニッケルなど)の混合物など)などである。なお、本発明の実施の形態に係る有機物分解方法では、過酸化水素および硝酸を加えた後の被処理液の温度は、0℃以上200℃以下の範囲内であることが好ましく、50℃以上200℃以下の範囲内であることがより好ましく、100℃以上200℃以下の範囲内であることがより好ましく、150℃以上200℃以下の範囲内であることがさらに好ましく、180℃以上200℃以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0016】
本発明の実施の形態に係る有機物分解方法を使用して被処理液に含まれる有機物を分解する場合、図1図4に示される有機物分解装置1が用いられることが好ましい。以下、有機物分解装置1について説明する。
【0017】
<本発明の一実施例の形態に係る有機物分解装置の構成>
有機物分解装置1は、図1図4に示されるように、主に、被処理液流通部100、添加液流通部200、反応器300、処理液流通部400、被処理液用加圧ポンプPO1、添加液用加圧ポンプPO2、安全弁SV、第1空気抜弁AV1、第2空気抜弁AV2、残圧抜弁PV、背圧弁BV、ヒータ(図示せず)および制御装置(図示せず)から構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0018】
1.被処理液流通部
被処理液流通部100は、被処理液を反応器300に導くためのものであって、金属(例えば、ステンレスなど)などから形成されており、図1図4に示されるように、主に、第1流通部110および第2流通部120から構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0019】
(1)第1流通部
第1流通部110は、被処理液を第2流通部120に導くためのものであって、図1図4に示されるように、主に、給液配管LP1、左側配管LP2、前側配管FP1~FP5、右側配管RP1、後側配管BP1,BP2および連結配管CP1~CP5から構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0020】
給液配管LP1は、図1および図2に示されるように、有機物分解装置1のうち左側に配置されている。給液配管LP1の入口は、被処理液の供給口として使用され、有害物質を含む被処理液が貯留された被処理液タンク(図示せず)に連結されている。給液配管LP1の出口は、図1および図2に示されるように左側配管LP2の入口にフランジ接続されている。
【0021】
左側配管LP2は、図1および図2に示されるように、有機物分解装置1のうち左側に配置されている。図1および図2に示されるように、左側配管LP2の入口は、給液配管LP1の出口とフランジ接続され、左側配管LP2の出口は、前側配管FP1の入口にフランジ接続されている。なお、図1および図2に示されるように、左側配管LP2には安全弁SVが取り付けられている。
【0022】
前側配管FP1~FP5は、図1図4に示されるように、後側配管BP1~BP5の前側に配置されている。前側配管FP1の入口は、図1および図2に示されるように左側配管LP2の出口にフランジ接続され、前側配管FP1の出口は、図1および図3に示されるように連結配管CP1の入口にフランジ接続されている。前側配管FP2の入口は、図1および図3に示されるように連結配管CP1の出口にフランジ接続され、前側配管FP2の出口は、図1および図2に示されるように連結配管CP2の入口にフランジ接続されている。前側配管FP3の入口は、図1および図2に示されるように連結配管CP2の出口にフランジ接続され、前側配管FP3の出口は、図1および図3に示されるように連結配管CP3の入口にフランジ接続されている。前側配管FP4の入口は、図1および図3に示されるように連結配管CP3の出口にフランジ接続され、前側配管FP4の出口は、図2に示されるように連結配管CP4の入口にフランジ接続されている。前側配管FP5の入口は、図2に示されるように連結配管CP4の出口にフランジ接続され、前側配管FP5の出口は、図1および図3に示されるように右側配管RP1の入口にフランジ接続されている。
【0023】
なお、前側配管FP1は、図1に示されるように、処理液流通部400の前側配管407の左端面および右端面に形成された開口に挿通され、処理液流通部400の前側配管407の内側に配置される。前側配管FP2は、図1に示されるように、処理液流通部400の前側配管406の左端面および右端面に形成された開口に挿通され、処理液流通部400の前側配管406の内側に配置される。前側配管FP3は、図1に示されるように、処理液流通部400の前側配管405の左端面および右端面に形成された開口に挿通され、処理液流通部400の前側配管405の内側に配置される。前側配管FP4は、図1に示されるように、処理液流通部400の前側配管404の左端面および右端面に形成された開口に挿通され、処理液流通部400の前側配管404の内側に配置される。前側配管FP5は、図1に示されるように、処理液流通部400の前側配管403の左端面および右端面に形成された開口に挿通され、処理液流通部400の前側配管403の内側に配置される。
【0024】
右側配管RP1は、図1図3および図4に示されるように、有機物分解装置1のうち右側に配置されている。右側配管RP1の入口は、図1および図3に示されるように前側配管FP5の出口にフランジ接続され、右側配管RP1の出口は、図3および図4に示されるように後側配管BP1の入口にフランジ接続されている。なお、図3および図4に示されるように、右側配管RP1には第1空気抜弁AV1が取り付けられている。
【0025】
後側配管BP1,BP2は、図1図4に示されるように、前側配管FP1~FP5の後側に配置されている。後側配管BP1の入口は、図3および図4に示されるように右側配管RP1の出口にフランジ接続され、後側配管BP1の出口は、図2および図4に示されるように連結配管CP5の入口にフランジ接続されている。後側配管BP2の入口は、図2および図4に示されるように連結配管CP5の出口にフランジ接続され、後側配管BP2の出口は、図3および図4に示されるように連結配管CP6の入口にフランジ接続されている。
【0026】
連結配管CP1は、図1および図3に示されるように、前側配管FP1と前側配管FP2とを連結している。連結配管CP2は、図1および図2に示されるように、前側配管FP2と前側配管FP3とを連結している。連結配管CP3は、図1および図3に示されるように、前側配管FP3と前側配管FP4とを連結している。連結配管CP4は、図2に示されるように、前側配管FP4と前側配管FP5とを連結している。連結配管CP5は、図2および図4に示されるように、後側配管BP1と後側配管BP2とを連結している。
【0027】
(2)第2流通部
第2流通部120は、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液を反応器300に導くためのものであって、図2図4に示されるように、主に、連結配管CP6~CP9および後側配管BP3~BP5から構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0028】
連結配管CP6は、図3および図4に示されるように、後側配管BP2と後側配管BP3とを連結している。なお、図3および図4に示されるように、連結配管CP6の内部には、添加液流通部200の注入部205の出口側の端部が挿通されている。連結配管CP7は、図2および図4に示されるように、後側配管BP3と後側配管BP4とを連結している。連結配管CP8は、図3および図4に示されるように、後側配管BP4と後側配管BP5とを連結している。なお、図3および図4に示されるように、連結配管CP8の内部には、添加液流通部200の注入部206の出口側の端部が挿通されている。連結配管CP9は、図2および図4に示されるように、後側配管BP5と反応器300の第1反応配管301とを連結している。
【0029】
後側配管BP3の入口は、図3および図4に示されるように連結配管CP6の出口にフランジ接続され、後側配管BP3の出口は、図2および図4に示されるように連結配管CP7の入口にフランジ接続されている。後側配管BP4の入口は、図2および図4に示されるように連結配管CP7の出口にフランジ接続され、後側配管BP4の出口は、図3および図4に示されるように連結配管CP8の入口にフランジ接続されている。後側配管BP5の入口は、図3および図4に示されるように連結配管CP8の出口にフランジ接続され、後側配管BP5の出口は、図2および図4に示されるように連結配管CP9の入口にフランジ接続されている。
【0030】
2.添加液流通部
添加液流通部200は、被処理液が触媒に至るまでに過酸化水素および硝酸を被処理液に供給するためのものであって、過酸化水素および硝酸を被処理液流通部100の第2流通部120に導く。また、添加液流通部200は、金属(例えば、ステンレスなど)などから形成されており、図1図4に示されるように、主に、第1配管201、第2配管202、第3配管203、第4配管204、注入部205~207から構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0031】
第1配管201の入口は、被処理液に混合される過酸化水素および硝酸の供給口として使用され、過酸化水素および硝酸が貯留された添加液タンク(図示せず)に連結されている。第1配管201の出口は、図1に示されるように第2配管202の入口にフランジ接続されている。
【0032】
第2配管202の入口は、図1に示されるように第1配管201の入口にフランジ接続され、第2配管202の出口は、図1および図2に示されるように第3配管203の入口にフランジ接続されている。なお、図1に示されるように、第2配管202には残圧抜弁PVが取り付けられている。
【0033】
第3配管203の入口は、図1および図2に示されるように第2配管202の出口にフランジ接続され、第3配管203の出口は、図1および図3に示されるように第4配管204の入口にフランジ接続される。
【0034】
第4配管204の入口は、図1および図3に示されるように、第3配管203の出口にフランジ接続される。なお、第4配管204の出口は、図1および図3に示されるように、上端部、上端部より下側に位置する中間部、および、中間部より下側に位置する下部の3箇所に形成されている。第4配管204の上端部の出口は、図3および図4に示されるように、注入部205の入口に接続されている。第4配管204の中間部の出口は、図3および図4に示されるように、注入部206の入口に接続されている。第4配管204の下部の出口は、図3および図4に示されるように、注入部207の入口に接続されている。
【0035】
注入部205の入口は、図3および図4に示されるように第4配管204の上端部の出口に接続され、注入部205の出口側の端部は、上述したように被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP6の内部に挿通されている。注入部206の入口は、図3および図4に示されるように第4配管204の中間部の出口に接続され、注入部206の出口側の端部は、上述したように被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP8の内部に挿通されている。なお、注入部205を流れる過酸化水素および硝酸は、被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP6に流入した被処理液に加えられ、注入部206を流れる過酸化水素および硝酸は、被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP8に流入した被処理液に加えられる。注入部207の入口は、図3および図4に示されるように第4配管204の下部の出口に接続され、注入部207の出口側の端部は、上述したように反応器300の連結配管303の内部に挿通されている。なお、注入部207を流れる過酸化水素および硝酸は、反応器300の第1反応配管301から流出した被処理液に加えられる。
【0036】
3.反応器
反応器300は、金属(例えば、チタン(チタン合金または純チタン)など)などから形成されており、図4に示されるように、主に、第1反応配管301、第2反応配管302および連結配管303から構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0037】
第1反応配管301の内部には触媒が固定されている。触媒は、例えば、フェントン触媒(例えば、硫酸第一鉄などの鉄化合物、酸化銅などの銅化合物、銅および銅以外の金属元素(例えば、ニッケルなど)の混合物など)などであり、粒状、ペレット状またはハニカム構造などの形状を呈している。また、第1反応配管301の入口は、図4に示されるように被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP9の出口にフランジ接続され、第1反応配管301の出口は、図4に示されるように連結配管303の入口にフランジ接続される。
【0038】
第2反応配管302の内部には触媒が固定されている。触媒は、例えば、フェントン触媒(例えば、硫酸第一鉄などの鉄化合物、酸化銅などの銅化合物、銅および銅以外の金属元素(例えば、ニッケルなど)の混合物など)などであり、粒状、ペレット状またはハニカム構造などの形状を呈している。また、第2反応配管302の入口は、図4に示されるように連結配管303の出口にフランジ接続され、第2反応配管302の出口は、図2および図4に示されるように処理液流通部400の左側配管401の入口にフランジ接続される。
【0039】
連結配管303は、図3および図4に示されるように、第1反応配管301と第2反応配管302とを連結している。なお、上述したように、連結配管303の内部には、添加液流通部200の注入部207の出口側の端部が挿通されている。
【0040】
4.処理液流通部
処理液流通部400は、有害物質が分解された後の被処理液(以下、「処理液」という。)を外部に導くためのものであって、金属(例えば、ステンレスなど)などから形成されており、図1図2および図4に示されるように、主に、左側配管401、前側配管402~407および排液配管408から構成されている。以下、これらの構成要素について詳述する。
【0041】
左側配管401は、図1図2および図4に示されるように、有機物分解装置1のうち左側に配置されている。左側配管401の入口は、図1図2および図4に示されるように反応器300の第2反応配管302の出口とフランジ接続され、左側配管401の出口は、図1および図2に示されるように、前側配管402の入口にフランジ接続されている。
【0042】
前側配管402~407は、図1図4に示されるように、被処理液流通部100の後側配管BP1~BP5の前側に配置されている。前側配管403~407は、左端面および右端面を有する略円筒形状を呈している(図1参照)。これらの左端面および右端面には開口が形成されている。被処理液流通部100の第1流通部110の前側配管FP1は、前側配管407のこの開口に挿通されて前側配管407の内側に配置される。被処理液流通部100の第1流通部110の前側配管FP2は、前側配管406のこの開口に挿通されて前側配管406の内側に配置される。被処理液流通部100の第1流通部110の前側配管FP3は、前側配管405のこの開口に挿通されて前側配管405の内側に配置される。被処理液流通部100の第1流通部110の前側配管FP4は、前側配管404のこの開口に挿通されて前側配管404の内側に配置される。被処理液流通部100の第1流通部110の前側配管FP5は、前側配管403のこの開口に挿通されて前側配管403の内側に配置される。また、図1に示されるように、前側配管403,405,407では、入口形成部が右端部から下方に突出しており、出口形成部が左端部から上方に突出しており、前側配管404,406では、入口形成部が左端部から下方に突出しており、出口形成部が右端部から上方に突出している。
【0043】
そして、前側配管402の入口は、図1および図2に示されるように左側配管401の出口にフランジ接続され、前側配管402の出口は、図1に示されるように前側配管403の入口にフランジ接続される。前側配管403の入口は、図1に示されるように前側配管402の出口にフランジ接続され、前側配管403の出口は、図1および図3に示されるように前側配管404の入口にフランジ接続される。前側配管404の入口は、図1および図3に示されるように前側配管403の出口にフランジ接続され、前側配管404の出口は、図1および図2に示されるように前側配管405の入口にフランジ接続される。前側配管405の入口は、図1および図2に示されるように前側配管404の出口にフランジ接続され、前側配管405の出口は、図1および図3に示されるように前側配管406の入口にフランジ接続される。前側配管406の入口は、図1および図3に示されるように前側配管405の出口にフランジ接続され、前側配管406の出口は、図1に示されるように前側配管407の入口にフランジ接続される。図1に示されるように、前側配管407の入口は、前側配管406の出口にフランジ接続され、前側配管407の出口は、排液配管408の入口にフランジ接続される。
【0044】
排液配管408の入口は、図1に示されるように前側配管407の出口にフランジ接続され、排液配管408の出口は、処理液の排出口として使用される。なお、図1図4に示されるように、排液配管408には第2空気抜弁AV2および背圧弁BVが取り付けられている。
【0045】
5.被処理液用加圧ポンプ
被処理液用加圧ポンプPO1は、被処理液流通部100の第1流通部110の給液配管LP1を介して被処理液タンクの被処理液を被処理液流通部100に流通させる役目などを担っている。なお、被処理液用加圧ポンプPO1は、制御装置に接続されている。
【0046】
6.添加液用加圧ポンプ
添加液用加圧ポンプPO2は、添加液流通部200の第1配管201を介して添加液タンクの過酸化水素および硝酸を添加液流通部200に流通させる役目などを担っている。なお、添加液用加圧ポンプPO2は、制御装置に接続されている。
【0047】
7.安全弁
安全弁SVは、被処理液流通部100、添加液流通部200、反応器300および処理液流通部400の内部(系内)の圧力を開放する役目などを担っており、図2に示されるように、被処理液流通部100の第1流通部110の左側配管LP2に取り付けられている。
【0048】
8.第1空気抜弁
第1空気抜弁AV1は、系内に溜まる空気を外部に排出する役目などを担っており、図3および図4に示されるように、被処理液流通部100の第1流通部110の右側配管RP1に取り付けられている。
【0049】
9.第2空気抜弁
第2空気抜弁AV2は、系内に溜まる空気を外部に排出する役目、系内の圧力を開放する役目などを担っており、図1図2および図4に示されるように、処理液流通部400の排液配管408に取り付けられている。
【0050】
10.残圧抜弁
残圧抜弁PVは、系内の圧力を開放する役目などを担っており、図1に示されるように、添加液流通部200の第2配管202に取り付けられている。
【0051】
11.背圧弁
背圧弁BVは、処理液流通部400の排液配管408の出口から処理液が規定量より過大に吐出されることを防ぐ役目、系内の圧力を一定に保つ役目などを担っており、図2および図4に示されるように、処理液流通部400の排液配管408に取り付けられている。
【0052】
12.ヒータ
ヒータ(図示せず)は、例えばリボンヒータなどであって、被処理液流通部100の後側配管BP1~5の外面および添加液流通部200の第3配管203の外面に取り付けられている。なお、ヒータは、制御装置に接続されている。
【0053】
13.制御装置
制御装置(図示せず)は、上述の通り、被処理液用加圧ポンプPO1、添加液用加圧ポンプPO2およびヒータなどに接続され、これらの電源のオンオフおよび出力などを制御する。
【0054】
<本発明の実施の形態に係る有機物分解装置を用いた有機物分解方法の説明>
以下、有機物分解装置1を用いた有機物分解方法について説明する。
【0055】
まず、被処理液用加圧ポンプPO1が、有害物質を含む被処理液を被処理液流通部100の第1流通部110の給液配管LP1内に流入させる。なお、このとき、系内の圧力は、背圧弁BVによって、1MPa以上2.2MPa以下の範囲内に設定されることが好ましく、1.5MPa以上2.0MPa以下の範囲内に設定されることがより好ましい。そして、被処理液は、被処理液流通部100の第1流通部110の給液配管LP1→左側配管LP2→前側配管FP1→連結配管CP1→前側配管FP2→連結配管CP2→前側配管FP3→連結配管CP3→前側配管FP4→連結配管CP4→前側配管FP5→右側配管RP1→後側配管BP1→連結配管CP5→後側配管BP2→被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP6の順でこれらの内部を流れる。被処理液は、被処理液流通部100の後側配管BP1,BP2を流れている時に加熱部によって加熱される。
【0056】
なお、被処理液が、被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP6内に流入すると、添加液流通部200の注入部205から流出した過酸化水素および硝酸が、被処理液に加えられる。そして、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液は、被処理液流通部100の第2流通部120の後側配管BP3→連結配管CP7→後側配管BP4→連結配管CP8→後側配管BP5→連結配管CP9の順でこれらの内部を流れる。過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液は、被処理液流通部100の後側配管BP3,BP4,BP5を流れている時に加熱部によって加熱される。なお、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が、被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP8内に流入した時、添加液流通部200の注入部206から流出した過酸化水素および硝酸が、被処理液にさらに加えられる。過酸化水素および硝酸は、添加液用加圧ポンプPO2によって添加液流通部200の第1配管201内に流入され、添加液流通部200の第1配管201→第2配管202→第3配管203→第4配管204→注入部205,206,207の順でこれらの内部を流れる。また、過酸化水素および硝酸は、添加液流通部200の第3配管203を流れている時に加熱部によって加熱される。すなわち、加熱された過酸化水素および硝酸が、被処理液に加えられる。
【0057】
そして、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液は、被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP9内から反応器300の第1反応配管301→連結配管303→第2反応配管302の順でこれらの内部を流れる。その被処理液が、反応器300の第1反応配管301および第2反応配管302内の触媒に接触することで、その被処理液に含まれる有害物質が分解される。なお、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内の触媒にその被処理液が接触している状態において、その被処理液の温度は、0℃以上200℃以下の範囲内であることが好ましく、50℃以上200℃以下の範囲内であることがより好ましく、100℃以上200℃以下の範囲内であることがより好ましく、150℃以上200℃以下の範囲内であることがさらに好ましく、180℃以上200℃以下の範囲内であることが特に好ましい。
【0058】
なお、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が、反応器300の連結配管CP9を流れている時、添加液流通部200の注入部207から流出した過酸化水素および硝酸も、被処理液にさらに加えられる。
【0059】
そして、処理液は、反応器300の第2反応配管302内から処理液流通部400の左側配管401→前側配管402→前側配管403→前側配管404→前側配管405→前側配管406→前側配管407→排液配管408の順でこれらの内部を流れる。なお、より詳細には、前側配管403の内部は、前側配管403の内側且つ被処理液流通部100の前側配管FP5の外側であり、前側配管404の内部は、前側配管404の内側且つ被処理液流通部100の前側配管FP4の外側であり、前側配管405の内部は、前側配管405の内側且つ被処理液流通部100の前側配管FP3の外側であり、前側配管406の内部は、前側配管406の内側且つ被処理液流通部100の前側配管FP2の外側であり、前側配管407の内部は、前側配管407の内側且つ被処理液流通部100の前側配管FP1の外側である。最終的に、処理液は、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出される。
【0060】
<本発明の実施の形態に係る有機物分解方法の特徴>
(1)
本発明の実施の形態に係る有機物分解方法では、有機物を含む被処理液に過酸化水素および硝酸が加えられ、その被処理液が、反応器300の第1反応配管301および第2反応配管302内の触媒に接触させられる。このため、この有機物分解方法では、有機物を含む被処理液に過酸化水素を加えてその被処理液を反応器300の第1反応配管301および第2反応配管302内の触媒に接触させて有機物を分解する場合に比べて有機物の分解にかかるコストをできるだけ抑えることができる。
【0061】
(2)
本発明の実施の形態に係る有機物分解方法では、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が、反応器300の第1反応配管301および第2反応配管302内の触媒に接触している状態において、その被処理液の温度は、0℃以上200℃以下の範囲内である。このため、この有機物分解方法では、触媒を失活させることなく有機物の分解をより促進させることができる。
【0062】
<変形例>
(A)
先の実施の形態に係る有機物分解装置1では、加熱部は、被処理液流通部100の後側配管BP1,BP2,BP3,BP4,BP5の外面および添加液流通部200の第3配管203の外面に取り付けられていた。しかし、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が、反応器300の第1反応配管301および第2反応配管302内の触媒に接触する時に、その被処理液の温度が100℃以上200℃以下の範囲内になるのであれば、加熱部は、これらの配管の少なくとも1つの外面に取り付けられてもよいし、被処理液流通部100のうち後側配管BP1,BP2,BP3,BP4,BP5以外の少なくとも1つの外面に取り付けられてもよいし、添加液流通部200うちの第3配管203以外の少なくとも1つの外面に取り付けられてもよいし、反応器300の外面に取り付けられてもよい。
【0063】
(B)
先の実施の形態に係る有機物分解装置1では言及しなかったが、被処理液流通部100、添加液流通部200、反応器300および処理液流通部400を構成する配管の数は限定されない。
【0064】
(C)
先の実施の形態に係る有機物分解装置1では、系内の圧力は、背圧弁BVによって、1MPa以上2.2MPa以下の範囲内に設定されることが好ましいとされていた。しかし、背圧弁BVによって系内に圧力はかけられなくてもよい。
【0065】
(D)
先の実施の形態に係る有機物分解装置1では、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が、反応器300の第1反応配管301および第2反応配管302内の触媒に接触している状態において、その被処理液の温度は、0℃以上200℃以下の範囲内であることが好ましいとされていた。しかし、触媒が失活しなかったり有機物が十分に分解されたりするのであれば、その被処理液の温度は、同状態において200℃超(例えば、200℃超400℃以下の範囲内、200℃超300℃以下の範囲内など)であってもよい。
【0066】
(E)
先の実施の形態に係る有機物分解装置1では言及しなかったが、反応器300の連結配管303の内部にも触媒が固定されてもよい。
【0067】
(F)
先の実施の形態では、有機物分解装置1を用いることで、本発明に係る有機物分解方法による有機物の分解が実現されていた。しかし、有機物分解装置1を用いずに、本発明に係る有機物分解方法による有機物の分解が実現されてもよい。例えば、有機物を含む被処理液に過酸化水素および硝酸が加えられ、その被処理液および触媒が容器内にまとめて投入されてもよい。そして、容器の外面に取り付けた加熱部によって、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が加熱されてもよい。もしくは、有機物を含む被処理液、過酸化水素および硝酸の少なくとも1つが、有機物を含む被処理液に過酸化水素および硝酸が加えられる前にあらかじめ加熱されていてもよい。
【0068】
(G)
先の実施の形態に係る有機物分解装置1では、過酸化水素および硝酸が、添加液流通部200を流れて被処理液に加えられていた。しかし、添加液流通部200が設けられずに、過酸化水素だけが流れる過酸化水素流通部および硝酸だけが流れる硝酸流通部が設けられてもよい。そして、過酸化水素流通部の出口から流出する過酸化水素が、被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP6,CP8の内部および反応器300の連結配管CP9の内部において被処理液に加えられ、硝酸流通部の出口から流出する硝酸が、被処理液流通部100の第2流通部120の連結配管CP6,CP8の内部および反応器300の連結配管CP9の内部において被処理液に加えられてもよい。
【0069】
(H)
先の実施の形態に係る有機物分解装置1では、第1空気抜弁AV1が、被処理液流通部100の第1流通部110の右側配管RP1に取り付けられ、第2空気抜弁AV2が、処理液流通部400の排液配管408に取り付けられていた。しかし、空気抜弁が取り付けられる配管はこれらの配管に限定されない。すなわち、被処理液流通部100、添加液流通部200および処理液流通部400を構成する配管の少なくとも1つに空気抜弁が取り付けられてもよい。
【0070】
(I)
先の実施の形態に係る有機物分解装置1では言及しなかったが、被処理液流通部100、添加液流通部200および処理液流通部400を構成する配管の少なくとも1つがチタンから形成されてもよい。例えば、被処理液流通部100、添加液流通部200および処理液流通部400の配管の全部がチタンから形成されてもよいし、被処理液流通部100のうち連結配管CP8、後側配管BP5および連結配管CP9がチタンから形成されてもよいし、添加液流通部200のうち第1配管201、第2配管202、第3配管203および第4配管204がチタンから形成されてもよい。
【0071】
なお、上記変形例は、単独で適用されてもよいし、組み合わせて適用されてもよい。
【0072】
<実施例および比較例>
以下、本発明をより詳細に説明するために実施例および比較例を示すが、本発明がこの実施例に限定されることはない。
【実施例0073】
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表1に示されるように、全有機炭素濃度 (TOC)が1007.4mg/L、1,4-ジオキサン濃度が1600mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、硝酸25mM、過酸化水素100mMとなるように硝酸および過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。また、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内に流入している状態において、反応器300内で気泡がほとんど発生していないことを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表1に示されるように、全有機炭素濃度 が402.5mg/L、1,4-ジオキサン濃度が70mg/Lであった。この結果、TOC除去率は60%、1,4-ジオキサン分解率は95.6%であることが分かる(表1参照)。
【実施例0074】
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表1に示されるように、全有機炭素濃度 (TOC)が1007mg/L、1,4-ジオキサン濃度が1600mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、硝酸25mM、過酸化水素150mMとなるように硝酸および過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。また、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内に流入している状態において、反応器300内で気泡がほとんど発生していないことを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表1に示されるように、全有機炭素濃度 が154.9mg/L、1,4-ジオキサン濃度が6mg/Lであった。この結果、TOC除去率は84.6%、1,4-ジオキサン分解率は99.6%であることが分かる(表1参照)。
【実施例0075】
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表1に示されるように、全有機炭素濃度 (TOC)が1022.2mg/L、1,4-ジオキサン濃度が1700mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、硝酸40mM、過酸化水素150mMとなるように硝酸および過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。また、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内に流入している状態において、反応器300内で気泡がほとんど発生していないことを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表1に示されるように、全有機炭素濃度 が176.4mg/L、1,4-ジオキサン濃度が16mg/Lであった。この結果、TOC除去率は82.7%、1,4-ジオキサン分解率は99.1%であることが分かる(表1参照)。
【実施例0076】
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表1に示されるように、全有機炭素濃度 (TOC)が1029.6mg/L、1,4-ジオキサン濃度が1800mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、硝酸14mM、過酸化水素200mMとなるように硝酸および過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。また、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内に流入している状態において、反応器300内で気泡がほとんど発生していないことを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表1に示されるように、全有機炭素濃度 が401mg/L、1,4-ジオキサン濃度が78mg/Lであった。この結果、TOC除去率は61.1%、1,4-ジオキサン分解率は95.7%であることが分かる(表1参照)。
【実施例0077】
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表1に示されるように、全有機炭素濃度 (TOC)が1020.6mg/L、1,4-ジオキサン濃度が1600mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、硝酸25mM、過酸化水素200mMとなるように硝酸および過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。また、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内に流入している状態において、反応器300内で気泡がほとんど発生していないことを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表1に示されるように、全有機炭素濃度 が14.8mg/L、1,4-ジオキサン濃度が0.06mg/Lであった。この結果、TOC除去率は98.5%、1,4-ジオキサン分解率は約100%(≒99.99・・・%)であることが分かる(表1参照)。
【0078】
(比較例1)
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表1に示されるように、全有機炭素濃度 (TOC)が1034.6mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、過酸化水素100mMとなるように過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、過酸化水素が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表1に示されるように、全有機炭素濃度 が549.3mg/Lであった。この結果、TOC除去率は46.9%であることが分かる(表1参照)。
【0079】
(比較例2)
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表1に示されるように、全有機炭素濃度 (TOC)が1021.8mg/L、1,4-ジオキサン濃度が1900mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、過酸化水素300mMとなるように過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、過酸化水素が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。また、過酸化水素が加えられた後の被処理液が反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内に流入している状態において、反応器300内で気泡が多く発生していることを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表1に示されるように、全有機炭素濃度 が122.5mg/L、1,4-ジオキサン濃度が160mg/Lであった。この結果、TOC除去率は88%、1,4-ジオキサン分解率は91.6%であることが分かる(表1参照)。
【0080】
(比較例3)
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表1に示されるように、全有機炭素濃度 (TOC)が1024.2mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、硫酸10mM、過酸化水素100mMとなるように硫酸および過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、過酸化水素および硫酸が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表1に示されるように、全有機炭素濃度 が755.1mg/Lであった。この結果、TOC除去率は26.3%であることが分かる(表1参照)。
【0081】
(比較例4)
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表1に示されるように、全有機炭素濃度 (TOC)が1025.6mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、硝酸120mMとなるように硝酸を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、硝酸が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表1に示されるように、全有機炭素濃度 が972.8mg/Lであった。この結果、TOC除去率は5.1%であることが分かる(表1参照)。
【0082】
(比較例5)
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表2に示されるように、全有機炭素濃度 (TOC)が34000mg/L、フェノール類濃度が29000mg/L、ホルムアルデヒド濃度が2300mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、過酸化水素300mMとなるように過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、過酸化水素が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表2に示されるように、全有機炭素濃度 が17350mg/L、フェノール類濃度が9600mg/L、ホルムアルデヒド濃度が970mg/Lであった。この結果、TOC除去率は49%、フェノール類分解率は66.9%、ホルムアルデヒド分解率は57.8%であることが分かる(表2参照)。
【0083】
(比較例6)
有機物分解装置1を用いて、被処理液に含まれる有機物の分解を実施した。触媒としては銅ニッケル触媒を用い、背圧弁BVによって系内の圧力を2MPaに設定した上で加熱部への通電を行った。そして、表3に示されるように、トルエン濃度が1mg/L、エタノール濃度が40mg/L、N,N-ジメチルホルムアミド濃度が100mg/Lである被処理液を被処理液流通部100の給液配管LP1内に流入させ、過酸化水素300mMとなるように過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させた。そして、反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内において、過酸化水素が加えられた後の被処理液の温度が180℃以上200℃以下の範囲内で変化していることを確認した。そして、処理液流通部400の排液配管408の出口から排出された処理液を分析したところ、表3に示されるように、トルエン濃度が0.12mg/L、エタノール濃度が330mg/L、N,N-ジメチルホルムアミド濃度が40mg/L以下であった。この結果、トルエン分解率は88%、N,N-ジメチルホルムアミド分解率は60%であることが分かる。なお、エタノールは反応副産物により増加していると推測される(表3参照)。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
[実施例および比較例の比較検証]
有機物の分解にかかるコストについて、実施例2と比較例2とを比較検証する。なお、これらの例では、900円/500mL(1.8円/mL)である硝酸(62.5%)、1850円/500mL(3.7円/mL)である過酸化水素(32.8%)が用いられている。実施例2のように、25mM(0.025mol/L)である硝酸および150mM(0.15mol/L)である過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させる場合、以下の計算式から被処理液1Lに対して54.7円が必要となる。
硝酸: 1.8円/mL×63g/mol×0.025mol/L×100÷62.5%÷比重1.38≒3.3円/L
過酸化水素: 3.7円/mL×34g/mol×0.15mol/L×100÷32.8%÷比重1.12≒51.4円/L
合計: 3.3円/L+51.4円/L=54.7円/L
【0088】
そして、比較例2のように、300mM(0.3mol/L)である過酸化水素を添加液流通部200の第1配管201内に流入させる場合、以下の計算式から被処理液1Lに対して102.8円が必要となる。
過酸化水素: 3.7円/mL×34g/mol×0.3mol/L×100÷32.8%÷比重1.12≒102.8円/L
【0089】
以上より、有機物を含む被処理液に過酸化水素および硝酸を加え、その被処理液を触媒に接触させることで、硝酸を被処理液に加えない場合に必要となる過酸化水素の半分量の過酸化水素で、硝酸を加えない場合と同等またはそれ以上の有機物分解能力を示した上で、有機物の分解にかかるコストが約半分になることが明らかとなった。
【0090】
次に、反応器300内における気泡の発生の有無について、実施例1~5と比較例2とを比較検証する。実施例1~5では、上述の通り、過酸化水素および硝酸が加えられた後の被処理液が反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内に流入している状態において、反応器300内で気泡がほとんど発生していないことが確認されている。一方、比較例2では、過酸化水素が加えられた後の被処理液が反応器300の第1反応配管301内および第2反応配管302内に流入している状態において、反応器300内で気泡が多く発生していることが確認されている。反応器300内で気泡が多く発生すると、反応器300内に被処理液を流入させることができなくなったり、処理液を反応器300内から流出させることができなくなったりするおそれが生じる。このため、本発明に係る有機物分解方法は、このようなおそれが生じることをできるだけ低減することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 有機物分解装置
100 被処理液流通部(第1供給部)
200 添加液流通部(第2供給部)
300 反応器