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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160606
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】部品実装機
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/04 20060101AFI20231026BHJP
   H05K 13/08 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
H05K13/04 A
H05K13/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071069
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100127797
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 晴洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 拓磨
【テーマコード(参考)】
5E353
【Fターム(参考)】
5E353CC04
5E353CC13
5E353EE02
5E353EE33
5E353EE52
5E353EE89
5E353GG01
5E353GG22
5E353HH53
5E353HH55
5E353HH56
5E353JJ02
5E353JJ13
5E353JJ21
5E353JJ28
5E353JJ44
5E353JJ48
5E353KK03
5E353MM04
5E353MM08
5E353QQ01
5E353QQ11
(57)【要約】
【課題】トレイ上の部品収容部に収容された部品を保持する搭載ヘッドの部品保持動作において部品の破損を抑制可能であるとともに、部品保持動作の効率の低下を抑制可能な部品実装機を提供する。
【解決手段】制御部4は、搭載ヘッド251の部品保持動作を推力制限開始高さD5を用いて制御する際に、搭載ヘッド251の保持面251Aがトレイ6上の部品収容部61内の部品に接触するまで搭載ヘッド251を下方向に移動させる移動処理S1と、保持面251Aが部品に接触する部品接触高さD5Tを検出する検出処理S2と、を行う。更新条件D6を満たす特定の部品収容部61に対応して移動処理S1を行う場合、制御部4は、既保持部品P1に対応した部品接触高さD5Tに基づき予測部品接触高さD5T1を算出し、当該予測部品接触高さD5T1に基づき推力制限開始高さD5を更新する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を収容する複数の部品収容部を有するトレイが載置されたパレットを移動させることにより部品を供給する部品供給装置と、
部品を保持する保持面を有し、前記保持面で保持した部品を基板上に搭載する搭載ヘッドであって、前記保持面に垂直な上下方向に移動可能に設けられ、前記保持面が前記部品収容部の上方に位置する基準位置に配置された状態で、前記保持面が部品に接触するまで下方向に移動することにより前記部品収容部内の部品を保持する部品保持動作を、複数の前記部品収容部ごとに行う搭載ヘッドと、
前記搭載ヘッドが前記部品保持動作において下方向に移動するときの推力に制限をかける開始位置を前記パレットからの高さで示す推力制限開始高さと、前記推力制限開始高さを更新する条件を前記搭載ヘッドにより保持済みの既保持部品の数で示す更新条件と、を記憶する記憶部と、
複数の前記部品収容部ごとに前記更新条件を満たすか否かを判定し、前記推力制限開始高さを用いて前記搭載ヘッドの前記部品保持動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記搭載ヘッドが前記基準位置に配置された状態で当該搭載ヘッドを下方向に移動させ、前記保持面が前記推力制限開始高さの位置に到達した場合に前記搭載ヘッドの推力制限を開始し、前記保持面が前記部品収容部内の部品に接触するまで当該推力制限の状態を維持する移動処理と、
前記搭載ヘッドにおける推力制限の状態からの推力の変化に基づいて、前記保持面が前記部品収容部内の部品に接触した位置を前記パレットからの高さで示す部品接触高さを検出する検出処理と、を行い、
前記更新条件を満たす特定の部品収容部に対応して前記移動処理を行う場合、前記既保持部品に対応した前記検出処理において検出された前記部品接触高さに基づいて、前記特定の部品収容部内の部品に対する前記保持面の接触を想定した予測部品接触高さを算出し、当該予測部品接触高さに基づき前記推力制限開始高さを更新する、部品実装機。
【請求項2】
前記制御部は、複数の前記既保持部品に対応した複数の前記部品接触高さに基づいて、最小二乗法によって前記予測部品接触高さを算出する、請求項1に記載の部品実装機。
【請求項3】
前記制御部は、前記予測部品接触高さに一定のマージンを加えた値を更新後の前記推力制限開始高さとして設定する、請求項1に記載の部品実装機。
【請求項4】
前記制御部は、複数の前記既保持部品に対応した複数の前記部品接触高さの中から最大値を示す最大部品接触高さを抽出し、前記最大部品接触高さに基づきマージンを算出し、当該算出したマージンを前記予測部品接触高さに加えた値を更新後の前記推力制限開始高さとして設定する、請求項1に記載の部品実装機。
【請求項5】
前記制御部は、前記更新条件を満たす前記特定の部品収容部に対応して前記移動処理を行うごとに、前記推力制限開始高さを更新する、請求項1に記載の部品実装機。
【請求項6】
複数の前記部品収容部は、前記トレイ上において互いに直交する第1方向と第2方向にマトリクス状に配列され、
前記更新条件は、マトリクス状に配列された複数の前記部品収容部において前記第1方向に沿って配列された各行の部品収容部に対応する前記既保持部品の数により設定される、請求項1~5のいずれか1項に記載の部品実装機。
【請求項7】
前記制御部は、
前記搭載ヘッドの前記部品保持動作の制御において、前記第1方向に沿って配列された第1の行の部品収容部に対応して前記移動処理及び前記検出処理を行った後に、前記第1の行に対して前記第2方向に隣接する第2の行の部品収容部に対応して前記移動処理及び前記検出処理を行う場合、
前記第2の行の部品収容部において前記更新条件を満たさない部品収容部に対しては、前記第2方向に隣接する前記第1の行における部品収容部に対応して前記検出処理において検出された前記部品接触高さに基づいて前記推力制限開始高さを設定して前記移動処理を行い、その後に続く前記検出処理において前記既保持部品に対応した前記部品接触高さを検出し、
前記第2の行の部品収容部において前記更新条件を満たす部品収容部に対しては、前記既保持部品に対応した前記部品接触高さに基づき前記予測部品接触高さを算出し、当該予測部品接触高さに基づく更新後の前記推力制限開始高さを用いて前記移動処理を行う、請求項6に記載の部品実装機。
【請求項8】
複数の前記部品収容部は、前記トレイ上において互いに直交する第1方向と第2方向にマトリクス状に配列され、
前記更新条件は、マトリクス状に配列された複数の前記部品収容部に対応する前記既保持部品の数により設定される、請求項1~5のいずれか1項に記載の部品実装機。
【請求項9】
前記制御部は、
複数の前記部品収容部において前記更新条件を満たさない部品収容部に対しては、前記記憶部に記憶された前記推力制限開始高さをそのまま用いて前記移動処理を行い、その後に続く前記検出処理において前記既保持部品に対応した前記部品接触高さを検出し、
複数の前記部品収容部において前記更新条件を満たす部品収容部に対しては、前記既保持部品に対応した前記部品接触高さに基づき前記予測部品接触高さを算出し、当該予測部品接触高さに基づく更新後の前記推力制限開始高さを用いて前記移動処理を行う、請求項8に記載の部品実装機。
【請求項10】
複数の前記部品収容部は、前記トレイ上において互いに直交する第1方向と第2方向にマトリクス状に配列され、
前記更新条件は、マトリクス状に配列された複数の前記部品収容部において、前記第1方向に沿って配列された各行の部品収容部に対応する前記既保持部品の数を示す第1既保持部品数と、前記第2方向に沿って配列された各列の部品収容部に対応する前記既保持部品の数を示す第2既保持部品数と、により設定される、請求項1~5のいずれか1項に記載の部品実装機。
【請求項11】
前記制御部は、
複数の前記部品収容部において前記更新条件を満たさない部品収容部に対しては、前記記憶部に記憶された前記推力制限開始高さをそのまま用いて前記移動処理を行い、その後に続く前記検出処理において前記既保持部品に対応した前記部品接触高さを検出し、
複数の前記部品収容部において前記更新条件を満たす部品収容部に対しては、前記既保持部品に対応した前記部品接触高さに基づき前記予測部品接触高さを算出し、当該予測部品接触高さに基づく更新後の前記推力制限開始高さを用いて前記移動処理を行う、請求項10に記載の部品実装機。
【請求項12】
複数の前記部品収容部は、前記トレイ上において互いに直交する第1方向と第2方向にマトリクス状に配列され、
前記更新条件は、マトリクス状に配列された複数の前記部品収容部において、前記制御部による前記搭載ヘッドの制御対象の部品収容部を基準としてその周囲の所定範囲内における前記既保持部品の数により設定される、請求項1~5のいずれか1項に記載の部品実装機。
【請求項13】
前記制御部は、
複数の前記部品収容部において前記更新条件を満たさない部品収容部に対しては、前記記憶部に記憶された前記推力制限開始高さをそのまま用いて前記移動処理を行い、その後に続く前記検出処理において前記既保持部品に対応した前記部品接触高さを検出し、
複数の前記部品収容部において前記更新条件を満たす部品収容部に対しては、前記既保持部品に対応した前記部品接触高さに基づき前記予測部品接触高さを算出し、当該予測部品接触高さに基づく更新後の前記推力制限開始高さを用いて前記移動処理を行う、請求項12に記載の部品実装機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレイ上の各部品収容部に収容された部品を搭載ヘッドにより保持して基板上に搭載する部品実装機に関する。
【背景技術】
【0002】
部品を基板に搭載し部品搭載基板を生産する部品実装機として、部品を収容する複数の部品収容部を有するトレイが載置されたパレットを移動させることにより、搭載ヘッドに部品を供給する部品供給装置を備えた実装機が知られている。この種の部品実装機では、搭載ヘッドは、トレイ上の部品収容部の上方に配置された状態で保持面が部品に接触するまで下方向に移動することにより部品収容部内の部品を保持する部品保持動作を行い、その後、保持した部品を基板上に搭載する部品搭載動作を行う。
【0003】
トレイに反りや傾きなどの変形が生じた場合、当該トレイ上の部品収容部に収容された部品に搭載ヘッドの保持面が接触する高さ位置を示す部品接触高さが部品収容部ごとに異なることがある。このようなトレイの変形を推定して搭載ヘッドの部品保持動作を制御する技術が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示される技術では、搭載ヘッド(吸着ノズル)がトレイ上の部品を保持できなかったときに、トレイの上面高さ又は部品収容部内の部品の上面高さ(部品接触高さ)を測定ヘッドにより測定してトレイの変形を推定し、その推定結果に基づきトレイ上の部品収容部内の部品の上面高さを補正する。そして、補正後の部品の上面高さに基づいて搭載ヘッドの部品保持動作が制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-249704号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、搭載ヘッドが部品保持動作において下方向に移動して部品に接触したときに部品に加わる衝撃力が大きすぎると、部品が破損する虞がある。このため、搭載ヘッドの部品保持動作の制御においては、搭載ヘッドの下方向への移動中に下降速度を減速させて搭載ヘッドの推力に制限をかける制御が行われる。この場合、搭載ヘッドの推力に制限をかける開始位置を示す推力制限開始高さが部品接触高さに基づき予め設定される。この推力制限開始高さの設定については、特許文献1には開示されていない。推力制限開始高さの設定は、搭載ヘッドの部品保持動作を制御する際に重要である。すなわち、搭載ヘッドが移動する上下方向において、推力制限開始高さの位置が部品接触高さの位置に近すぎる場合には、搭載ヘッドの部品保持動作において搭載ヘッドの推力制限が有効に機能せずに部品が破損する。一方、推力制限開始高さの位置が部品接触高さの位置から遠すぎる場合には、搭載ヘッドの部品保持動作において下降速度の減速時間が長くなりすぎて部品保持動作の効率が低下する。
【0006】
本発明の目的は、トレイ上の部品収容部に収容された部品を保持する搭載ヘッドの部品保持動作において部品の破損を抑制可能であるとともに、部品保持動作の効率の低下を抑制可能な部品実装機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の局面に係る部品実装機は、部品を収容する複数の部品収容部を有するトレイが載置されたパレットを移動させることにより部品を供給する部品供給装置と、部品を保持する保持面を有し、前記保持面で保持した部品を基板上に搭載する搭載ヘッドであって、前記保持面に垂直な上下方向に移動可能に設けられ、前記保持面が前記部品収容部の上方に位置する基準位置に配置された状態で、前記保持面が部品に接触するまで下方向に移動することにより前記部品収容部内の部品を保持する部品保持動作を、複数の前記部品収容部ごとに行う搭載ヘッドと、前記搭載ヘッドが前記部品保持動作において下方向に移動するときの推力に制限をかける開始位置を前記パレットからの高さで示す推力制限開始高さと、前記推力制限開始高さを更新する条件を前記搭載ヘッドにより保持済みの既保持部品の数で示す更新条件と、を記憶する記憶部と、複数の前記部品収容部ごとに前記更新条件を満たすか否かを判定し、前記推力制限開始高さを用いて前記搭載ヘッドの前記部品保持動作を制御する制御部と、を備える。前記制御部は、前記搭載ヘッドが前記基準位置に配置された状態で当該搭載ヘッドを下方向に移動させ、前記保持面が前記推力制限開始高さの位置に到達した場合に前記搭載ヘッドの推力制限を開始し、前記保持面が前記部品収容部内の部品に接触するまで当該推力制限の状態を維持する移動処理と、前記搭載ヘッドにおける推力制限の状態からの推力の変化に基づいて、前記保持面が前記部品収容部内の部品に接触した位置を前記パレットからの高さで示す部品接触高さを検出する検出処理と、を行う。前記制御部は、前記更新条件を満たす特定の部品収容部に対応して前記移動処理を行う場合、前記既保持部品に対応した前記検出処理において検出された前記部品接触高さに基づいて、前記特定の部品収容部内の部品に対する前記保持面の接触を想定した予測部品接触高さを算出し、当該予測部品接触高さに基づき前記推力制限開始高さを更新する。
【0008】
この部品実装機によれば、制御部は、トレイ上の部品収容部に収容された部品を保持する搭載ヘッドの部品保持動作を推力制限開始高さを用いて制御する際に、搭載ヘッドの保持面が部品収容部内の部品に接触するまで搭載ヘッドを下方向に移動させる移動処理と、保持面が部品に接触した高さ位置を示す部品接触高さを検出する検出処理と、を行う。制御部は、移動処理において、保持面が推力制限開始高さの位置に到達した場合に搭載ヘッドの下降速度を減速させて搭載ヘッドの推力制限を開始し、保持面が部品収容部内の部品に接触するまで当該推力制限の状態を維持する。これにより、搭載ヘッドが部品保持動作において下方向に移動して部品に接触したときに部品に加わる衝撃力が大きくなるのを抑制できるため、部品の破損を抑制することが可能である。また、制御部は、検出処理において、搭載ヘッドにおける推力制限の状態からの推力の変化に基づいて、搭載ヘッドの保持面が部品収容部内の部品に接触した際の部品接触高さを検出する。これにより、従来技術のように高さ測定専用の測定ヘッドを用いなくても、搭載ヘッドの推力変化に基づき部品接触高さを検出することができる。
【0009】
また、制御部は、トレイ上の各部品収容部に対応して移動処理及び検出処理を行う際に、推力制限開始高さを更新する条件を既保持部品の数で示す更新条件を満たすか否かを判定する。更新条件を満たす特定の部品収容部に対応して移動処理が行われるときには、更新条件で示される数の既保持部品に対応した移動処理及び検出処理が既に実施済みである。更新条件を満たす特定の部品収容部に対応して移動処理を行う場合、制御部は、既保持部品に対応した検出処理において検出された部品接触高さに基づいて、特定の部品収容部内の部品に対する搭載ヘッドの保持面の接触を想定した予測部品接触高さを算出する。予測部品接触高さは、既保持部品に対応した実際の部品接触高さに基づき算出されるため、特定の部品収容部に対応した部品接触高さの予測値として精度の高い予測値となる。
【0010】
そして、制御部は、特定の部品収容部に対応した推力制限開始高さを予測部品接触高さに基づき更新する。これにより、特定の部品収容部に対応した推力制限開始高さを、予測部品接触高さに基づく適切な値に設定することができる。このため、特定の部品収容部に対応した搭載ヘッドの部品保持動作において搭載ヘッドが下方向に移動する際に、更新後の推力制限開始高さの位置から搭載ヘッドの推力制限が有効に機能して部品の破損を抑制可能であるとともに、搭載ヘッドの推力制限の状態における下降速度の減速時間が適切な時間となって部品保持動作の効率の低下を抑制可能である。
【0011】
上記の部品実装機において、前記制御部は、複数の前記既保持部品に対応した複数の前記部品接触高さに基づいて、最小二乗法によって前記予測部品接触高さを算出してもよい。
【0012】
この態様では、制御部は、更新条件を満たす特定の部品収容部に対応した予測部品接触高さを、最小二乗法によって精度よく算出することができる。
【0013】
上記の部品実装機において、前記制御部は、前記予測部品接触高さに一定のマージンを加えた値を更新後の前記推力制限開始高さとして設定してもよい。
【0014】
この態様では、制御部は、更新条件を満たす特定の部品収容部に対応して、予測部品接触高さに一定のマージンを加えた値を推力制限開始高さとして設定することができる。
【0015】
上記の部品実装機において、前記制御部は、複数の前記既保持部品に対応した複数の前記部品接触高さの中から最大値を示す最大部品接触高さを抽出し、前記最大部品接触高さに基づきマージンを算出し、当該算出したマージンを前記予測部品接触高さに加えた値を更新後の前記推力制限開始高さとして設定してもよい。
【0016】
この態様では、制御部は、複数の既保持部品に対応した複数の部品接触高さの中の最大部品接触高さに基づいて、マージンを算出することができる。そして、制御部は、更新条件を満たす特定の部品収容部に対応して、算出したマージンを予測部品接触高さに加えた値を推力制限開始高さとして設定することができる。
【0017】
上記の部品実装機において、前記制御部は、前記更新条件を満たす前記特定の部品収容部に対応して前記移動処理を行うごとに、前記推力制限開始高さを更新してもよい。
【0018】
この態様では、制御部は、更新条件を満たす特定の部品収容部ごとに推力制限開始高さを更新する。これにより、特定の部品収容部ごとに、予測部品接触高さに基づく適切な推力制限開始高さを設定することができる。
【0019】
上記の部品実装機において、複数の前記部品収容部は、前記トレイ上において互いに直交する第1方向と第2方向にマトリクス状に配列される。そして、前記更新条件は、マトリクス状に配列された複数の前記部品収容部において前記第1方向に沿って配列された各行の部品収容部に対応する前記既保持部品の数により設定されてもよい。
【0020】
また、上記の部品実装機において、前記制御部は、前記搭載ヘッドの前記部品保持動作の制御において、前記第1方向に沿って配列された第1の行の部品収容部に対応して前記移動処理及び前記検出処理を行った後に、前記第1の行に対して前記第2方向に隣接する第2の行の部品収容部に対応して前記移動処理及び前記検出処理を行う場合、前記第2の行の部品収容部において前記更新条件を満たさない部品収容部に対しては、前記第2方向に隣接する前記第1の行における部品収容部に対応して前記検出処理において検出された前記部品接触高さに基づいて前記推力制限開始高さを設定して前記移動処理を行い、その後に続く前記検出処理において前記既保持部品に対応した前記部品接触高さを検出し、前記第2の行の部品収容部において前記更新条件を満たす部品収容部に対しては、前記既保持部品に対応した前記部品接触高さに基づき前記予測部品接触高さを算出し、当該予測部品接触高さに基づく更新後の前記推力制限開始高さを用いて前記移動処理を行う。
【0021】
この態様では、推力制限開始高さを更新する条件を示す更新条件は、トレイ上にマトリクス状に配列された複数の部品収容部において、第1方向に沿って配列された各行の部品収容部に対応する既保持部品の数により設定される。制御部は、トレイ上にマトリクス状に配列された複数の部品収容部について、第1方向に沿った配列の行ごとに更新条件を満たすか否かを判定して推力制限開始高さを設定し、各部品収容部に対応して移動処理及び検出処理を行う。
【0022】
第1方向に沿って配列された第1の行の部品収容部に対応して移動処理及び検出処理を行った後に、第1の行に対して第2方向に隣接する第2の行の部品収容部に対応して移動処理及び検出処理を行う場合を想定する。この場合、制御部は、第2の行の部品収容部において更新条件を満たさない部品収容部に対しては、第2方向に隣接する第1の行における部品収容部に対応して検出処理において検出された部品接触高さに基づいて推力制限開始高さを設定することができる。そして、制御部は、設定した推力制限開始高さを用いて移動処理を行い、その後に続く検出処理において既保持部品に対応した部品接触高さを検出する。一方、第2の行の部品収容部において更新条件を満たす部品収容部に対しては、制御部は、第2の行における既保持部品に対応した部品接触高さに基づき予測部品接触高さを算出し、当該予測部品接触高さに基づく更新後の推力制限開始高さを用いて移動処理を行う。
【0023】
上記の部品実装機において、複数の前記部品収容部は、前記トレイ上において互いに直交する第1方向と第2方向にマトリクス状に配列される。そして、前記更新条件は、マトリクス状に配列された複数の前記部品収容部に対応する前記既保持部品の数により設定されてもよい。
【0024】
また、上記の部品実装機において、前記制御部は、複数の前記部品収容部において前記更新条件を満たさない部品収容部に対しては、前記記憶部に記憶された前記推力制限開始高さをそのまま用いて前記移動処理を行い、その後に続く前記検出処理において前記既保持部品に対応した前記部品接触高さを検出し、複数の前記部品収容部において前記更新条件を満たす部品収容部に対しては、前記既保持部品に対応した前記部品接触高さに基づき前記予測部品接触高さを算出し、当該予測部品接触高さに基づく更新後の前記推力制限開始高さを用いて前記移動処理を行う。
【0025】
この態様では、推力制限開始高さを更新する条件を示す更新条件は、トレイ上にマトリクス状に配列された複数の部品収容部に対応する既保持部品の数により設定される。この場合、複数の部品収容部において更新条件を満たさない部品収容部に対しては、制御部は、記憶部に記憶された推力制限開始高さをそのまま用いて移動処理を行い、その後に続く検出処理において既保持部品に対応した部品接触高さを検出する。一方、複数の部品収容部において更新条件を満たす部品収容部に対しては、制御部は、既保持部品に対応した部品接触高さに基づき予測部品接触高さを算出し、当該予測部品接触高さに基づく更新後の推力制限開始高さを用いて移動処理を行う。
【0026】
上記の部品実装機において、複数の前記部品収容部は、前記トレイ上において互いに直交する第1方向と第2方向にマトリクス状に配列される。そして、前記更新条件は、マトリクス状に配列された複数の前記部品収容部において、前記第1方向に沿って配列された各行の部品収容部に対応する前記既保持部品の数を示す第1既保持部品数と、前記第2方向に沿って配列された各列の部品収容部に対応する前記既保持部品の数を示す第2既保持部品数と、により設定されてもよい。
【0027】
また、上記の部品実装機において、前記制御部は、複数の前記部品収容部において前記更新条件を満たさない部品収容部に対しては、前記記憶部に記憶された前記推力制限開始高さをそのまま用いて前記移動処理を行い、その後に続く前記検出処理において前記既保持部品に対応した前記部品接触高さを検出し、複数の前記部品収容部において前記更新条件を満たす部品収容部に対しては、前記既保持部品に対応した前記部品接触高さに基づき前記予測部品接触高さを算出し、当該予測部品接触高さに基づく更新後の前記推力制限開始高さを用いて前記移動処理を行う。
【0028】
この態様では、推力制限開始高さを更新する条件を示す更新条件は、トレイ上にマトリクス状に配列された複数の部品収容部において、第1方向に沿って配列された各行の部品収容部に対応する既保持部品の数を示す第1既保持部品数と、第2方向に沿って配列された各列の部品収容部に対応する既保持部品の数を示す第2既保持部品数と、により設定される。この場合、複数の部品収容部において更新条件を満たさない部品収容部に対しては、制御部は、記憶部に記憶された推力制限開始高さをそのまま用いて移動処理を行い、その後に続く検出処理において既保持部品に対応した部品接触高さを検出する。一方、複数の部品収容部において更新条件を満たす部品収容部に対しては、制御部は、既保持部品に対応した部品接触高さに基づき予測部品接触高さを算出し、当該予測部品接触高さに基づく更新後の推力制限開始高さを用いて移動処理を行う。
【0029】
上記の部品実装機において、複数の前記部品収容部は、前記トレイ上において互いに直交する第1方向と第2方向にマトリクス状に配列される。そして、前記更新条件は、マトリクス状に配列された複数の前記部品収容部において、前記制御部による前記搭載ヘッドの制御対象の部品収容部を基準としてその周囲の所定範囲内における前記既保持部品の数により設定されてもよい。
【0030】
また、上記の部品実装機において、前記制御部は、複数の前記部品収容部において前記更新条件を満たさない部品収容部に対しては、前記記憶部に記憶された前記推力制限開始高さをそのまま用いて前記移動処理を行い、その後に続く前記検出処理において前記既保持部品に対応した前記部品接触高さを検出し、複数の前記部品収容部において前記更新条件を満たす部品収容部に対しては、前記既保持部品に対応した前記部品接触高さに基づき前記予測部品接触高さを算出し、当該予測部品接触高さに基づく更新後の前記推力制限開始高さを用いて前記移動処理を行う。
【0031】
この態様では、推力制限開始高さを更新する条件を示す更新条件は、トレイ上にマトリクス状に配列された複数の部品収容部において、制御部による搭載ヘッドの制御対象の部品収容部を基準としてその周囲の所定範囲内における既保持部品の数により設定される。この場合、複数の部品収容部において更新条件を満たさない部品収容部に対しては、制御部は、記憶部に記憶された推力制限開始高さをそのまま用いて移動処理を行い、その後に続く検出処理において既保持部品に対応した部品接触高さを検出する。一方、複数の部品収容部において更新条件を満たす部品収容部に対しては、制御部は、既保持部品に対応した部品接触高さに基づき予測部品接触高さを算出し、当該予測部品接触高さに基づく更新後の推力制限開始高さを用いて移動処理を行う。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、トレイ上の部品収容部に収容された部品を保持する搭載ヘッドの部品保持動作において部品の破損を抑制可能であるとともに、部品保持動作の効率の低下を抑制可能な部品実装機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施形態に係る部品実装機のブロック図である。
図2】部品実装機の実装機本体の構成を示す平面図である。
図3】実装機本体に備えられる部品供給装置の構成を概略的に示す図である。
図4】部品供給装置に用いられるパレットを示す平面図である。
図5】実装機本体に備えられるヘッドユニットを拡大して示す図である。
図6】部品実装機の制御部が搭載ヘッドの部品保持動作を制御する際の、更新条件を満たさない場合の処理を説明する図である。
図7】部品実装機の制御部が搭載ヘッドの部品保持動作を制御する際の、更新条件を満たす場合の処理を説明する図である。
図8】制御部が移動処理を行う際に用いる推力制限開始高さの設定について説明する図である。
図9】制御部が推力制限開始高さを設定する際の第1例を説明する図である。
図10】制御部が推力制限開始高さを設定する際の第1例を説明する図である。
図11】制御部が推力制限開始高さを設定する際の第2例を説明する図である。
図12】制御部が推力制限開始高さを設定する際の第3例を説明する図である。
図13】制御部が推力制限開始高さを設定する際の第4例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態に係る部品実装機について、図面に基づいて説明する。
【0035】
[部品実装機の全体構成]
図1のブロック図に示される部品実装機1は、プリント基板(以下、「基板」と称する)上に電子部品(以下、「部品」と称する)が搭載された電子回路基板を生産する装置である。部品実装機1は、実装機本体2、記憶部3、及び制御部4を備える。実装機本体2は、部品を保持する部品保持動作と、部品を基板に搭載する部品搭載動作とを行う構造部分を構成する。記憶部3は、実装機本体2の部品保持動作及び部品搭載動作の際に参照される管理データD1を記憶する。制御部4は、記憶部3に記憶される管理データD1を読み出して、当該管理データD1に基づき実装機本体2の部品保持動作及び部品搭載動作を制御する。
【0036】
まず、実装機本体2について、図1に加えて図2図5を参照して説明する。なお、以下では、方向関係については水平面上において互いに直交するXY直交座標を用いて説明する。また、X軸方向の一方向側を「+X側」と称し、X軸方向の一方向側とは反対の他方向側を「-X側」と称する。同様に、Y軸方向の一方向側を「+Y側」と称し、Y軸方向の一方向側とは反対の他方向側を「-Y側」と称する。
【0037】
実装機本体2による部品の搭載前において基板PPには、半田ペーストのパターンが印刷されている。つまり、実装機本体2は、パターン形成装置により半田ペーストのパターンが印刷された基板PPに部品を搭載する。実装機本体2は、本体フレーム21と、コンベア23と、部品供給装置24と、ヘッドユニット25と、基板支持ユニット28とを備える。
【0038】
本体フレーム21は、実装機本体2を構成する各部が配置される構造体であり、X軸方向及びY軸方向の両方向と直交する方向(鉛直方向)から見た平面視で略矩形状を呈している。コンベア23は、X軸方向に延び、本体フレーム21に配置される。コンベア23は、基板PPをX軸方向に搬送する。コンベア23上を搬送される基板PPは、所定の作業位置(基板PP上に部品が搭載される部品搭載位置)に、基板支持ユニット28によって位置決めされるようになっている。基板支持ユニット28は、プッシュアップピンにより基板PPを支持することにより、当該基板PPを位置決めする。
【0039】
部品供給装置24は、本体フレーム21におけるY軸方向の+Y側及び-Y側のそれぞれの領域部分に、コンベア23を挟んで配置される。図3及び図4に示されるように、部品供給装置24は、部品Pを収容する複数の部品収容部61を有するトレイ6が載置されたパレット5をY軸方向に移動させることにより部品Pを供給する装置である。なお、実装機本体2は、部品Pを供給するフィーダーとして、テープを担体として部品を供給する方式のテープフィーダー、筒状のスティックに収納された部品を当該スティックから押し出しながら供給する方式のスティックフィーダーなどを備えていてもよい。
【0040】
部品供給装置24は、装置本体241と、パレット収容部242と、パレット載置テーブル243と、収容部移動機構244と、パレット移動機構245と、テーブル移動機構246と、を備える。
【0041】
装置本体241は、パレット収容部242を収容可能な収容空間を有する筐体である。パレット収容部242は、パレット5をX軸方向及びY軸方向の両方向と直交するZ軸方向に複数並んだ状態で収容する構造体である。パレット収容部242は、Z軸方向に移動可能に装置本体241内に収容される。パレット収容部242は、マガジン2421を含む。マガジン2421は、Y軸方向の両端が開口した箱形の構造体である。マガジン2421のX軸方向の両側面には、パレット5をY軸方向に移動可能に支持する支持部242AがZ軸方向に並んで複数設けられている。図4に示されるように、パレット収容部242に収容されるパレット5には、部品Pを収容する複数の部品収容部61を有するトレイ6が載置されている。トレイ6は、平面視で矩形状を呈している。複数の部品収容部61は、トレイ6上において互いに直交するX軸方向(第1方向)とY軸方向(第2方向)にマトリクス状に配列される。
【0042】
収容部移動機構244は、装置本体241内においてパレット収容部242をZ軸方向に移動させる機構である。収容部移動機構244は、ボールねじ軸2441と、ボールナット2442と、駆動モーター2443とを含む。ボールねじ軸2441は、装置本体241内においてZ軸方向に延びるボールねじ軸である。ボールナット2442は、ボールねじ軸2441に螺合されている。駆動モーター2443は、その出力軸がボールねじ軸2441に接続されている。そして、ボールナット2442には、パレット収容部242が取り付けられている。収容部移動機構244では、駆動モーター2443が回転駆動すると、ボールねじ軸2441に沿ってボールナット2442が進退する。これにより、ボールナット2442に取り付けられたパレット収容部242が、Z軸方向に移動する。
【0043】
パレット載置テーブル243は、装置本体241におけるY軸方向に向く側面部から外方に突設されたテーブル支持部2411に、Y軸方向に移動可能に支持される。パレット載置テーブル243は、パレット5を載置可能な平面視矩形状とされ、ヘッドユニット25へのパレット5の供給場となる。
【0044】
パレット移動機構245は、パレット載置テーブル243に配設される。パレット移動機構245は、パレット収容部242とパレット載置テーブル243との間でパレット5を移動させるための機構である。テーブル移動機構246は、パレット載置テーブル243をY軸方向に移動させるための機構である。テーブル移動機構246は、パレット載置テーブル243とパレット収容部242との間でパレット5の移動が行われる位置と、パレット5のヘッドユニット25への供給位置と、の間でパレット載置テーブル243を移動させる。
【0045】
ヘッドユニット25は、移動フレーム27に保持されている。本体フレーム21上には、Y軸方向に延びる固定レール261と、Y軸サーボモータ263により回転駆動されるボールねじ軸262とが配設されている。移動フレーム27は固定レール261上に配置され、この移動フレーム27に設けられたナット部分271がボールねじ軸262に螺合している。また、移動フレーム27には、X軸方向に延びるガイド部材272と、X軸サーボモータ274により駆動されるボールねじ軸273とが配設されている。このガイド部材272にヘッドユニット25が移動可能に保持され、このヘッドユニット25に設けられたナット部分がボールねじ軸273に螺合している。そして、Y軸サーボモータ263の作動により移動フレーム27がY軸方向に移動するとともに、X軸サーボモータ274の作動によりヘッドユニット25が移動フレーム27に対してX軸方向に移動するようになっている。すなわち、ヘッドユニット25は、移動フレーム27の移動に伴ってY軸方向に移動可能であり、且つ、移動フレーム27に沿ってX軸方向に移動可能である。ヘッドユニット25は、部品供給装置24におけるパレット5の供給場となるパレット載置テーブル243とコンベア23により搬送された基板PPの所定の作業位置とにわたって移動可能である。
【0046】
ヘッドユニット25は、図5に示されるように、複数の搭載ヘッド251を備えている。各搭載ヘッド251は、部品供給装置24においてパレット載置テーブル243に供給されたパレット5上のトレイ6の部品Pを保持する部品保持動作を行うとともに、その保持した部品Pを基板PP上に搭載(実装)する部品搭載動作を行う。搭載ヘッド251には、その先端(下端)に保持ノズル2511が装着されている。保持ノズル2511は、パレット5上のトレイ6の部品Pを吸着して保持する保持面251Aを有する保持具である。保持ノズル2511は、電動切替弁を介して負圧発生装置、正圧発生装置及び大気の何れかに連通可能とされている。つまり、保持ノズル2511に負圧が供給されることで当該保持ノズル2511による部品の吸着保持が可能となり、その後、正圧が供給されることで当該部品の吸着保持が解除される。
【0047】
搭載ヘッド251は、ヘッドユニット25のフレームに対して保持面251Aに垂直なZ軸方向(上下方向)に移動可能であるとともに、Z軸方向に延びるヘッド軸回りの回転が可能である。搭載ヘッド251は、トレイ6上の部品収容部61の上方に保持面251Aが位置する保持基準位置に配置された状態で、保持面251Aが部品Pに接触するまで下方向に移動することにより部品収容部61内の部品Pを保持する部品保持動作を、複数の部品収容部61ごとに行う。部品Pの保持後の搭載ヘッド251は、保持基準位置に向かって上方向に移動する。更に、搭載ヘッド251は、基板PP上の搭載位置の上方に保持面251Aが位置する搭載基準位置に配置された状態で、基板PPに向かって下方向に移動することにより基板PP上の搭載位置に部品Pを搭載する部品搭載動作を行う。部品搭載後の搭載ヘッド251は、搭載基準位置に向かって上方向に移動する。
【0048】
なお、図2に示されるように、本体フレーム21上において部品供給装置24とコンベア23との間には、第1撮像部29Aが設置されている。第1撮像部29Aは、例えばCMOS(Complementary metal-oxide-semiconductor)やCCD(Charged-coupled device)等の撮像素子を備えた撮像カメラである。第1撮像部29Aは、部品供給装置24から基板PPの作業位置へ向かってヘッドユニット25が移動している間において、搭載ヘッド251の保持ノズル2511によって保持された部品Pを下方側から撮像して部品認識画像を取得する。部品実装機1においては、第1撮像部29Aにより取得された部品認識画像に基づいて、搭載ヘッド251の保持面251Aに保持された部品Pの姿勢などが判定される。
【0049】
また、ヘッドユニット25には、第2撮像部29Bが取り付けられている。第2撮像部29Bは、例えばCMOSやCCD等の撮像素子を備えた撮像カメラである。第2撮像部29Bは、コンベア23により搬送された基板PPの上面に付されたマークなどを上方側から撮像し、基板PPを認識するための基板認識画像を取得する。部品実装機1においては、第2撮像部29Bにより取得された基板認識画像に基づいて、基板PPの原点座標に対する位置ずれ量が検知される。
【0050】
図1に示されるように、記憶部3は、管理データD1を記憶する。管理データD1は、制御部4がヘッドユニット25の搭載ヘッド251を制御する際に参照されるデータであり、部品保持データD2と部品搭載データD7とを含む。
【0051】
部品保持データD2は、制御部4が搭載ヘッド251の部品保持動作を制御する際に参照されるデータである。部品保持データD2としては、部品保持順序D3、部品収容部位置D4、推力制限開始高さD5、及び更新条件D6などが記録されている。部品保持順序D3は、トレイ6上の各部品収容部61内の部品Pについて、搭載ヘッド251による部品Pの保持順序を示す情報である。部品収容部位置D4は、トレイ6上における部品収容部61の位置に関する座標を示す情報である。部品収容部位置D4は、例えば、トレイ6上における部品収容部61のX軸方向の位置に関する座標X、トレイ6上における部品収容部61のY軸方向の位置に関する座標Yを含む。
【0052】
推力制限開始高さD5は、パレット5に載置されたトレイ6上の各部品収容部61内の部品Pを保持する部品保持動作において搭載ヘッド251が下方向に移動するときの推力に制限をかける開始位置をパレット5からの高さで示す情報である。更新条件D6は、推力制限開始高さD5を更新する条件を搭載ヘッド251により保持済みの既保持部品の数で示す情報である。
【0053】
部品搭載データD7は、制御部4が搭載ヘッド251の部品搭載動作を制御する際に参照されるデータである。部品搭載データD7としては、搭載位置D8などが記録されている。搭載位置D8は、基板PP上に設定された部品Pの搭載位置に関する座標を示す情報である。搭載位置D8は、例えば、基板PP上における部品PのX軸方向の搭載位置に関する座標X、基板PP上における部品PのY軸方向の搭載位置に関する座標Yを含む。
【0054】
制御部4は、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、CPUの作業領域として使用されるRAM(Random Access Memory)等から構成されている。制御部4は、CPUがROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、記憶部3に記憶されている管理データD1を参照して、実装機本体2のヘッドユニット25を含む各構成要素の動作を制御する。
【0055】
制御部4は、コンベア23による基板PPの搬送動作を制御するとともに、部品供給装置24のパレット5を移動させることによる部品供給動作を制御する。
【0056】
更に、制御部4は、ヘッドユニット25のX軸方向及びY軸方向の移動動作、搭載ヘッド251のZ軸方向の移動動作及び回転動作を制御することにより、搭載ヘッド251がトレイ6上の部品Pを保持する部品保持動作、搭載ヘッド251が部品Pを基板PPに搭載する部品搭載動作を制御する。この際、制御部4は、記憶部3に記憶されている管理データD1を参照する。
【0057】
制御部4は、部品保持データD2の部品保持順序D3で示される順序に従って部品収容部位置D4に基づいて、搭載ヘッド251による保持対象の部品Pを収容するトレイ6上の部品収容部61の位置を特定し、当該部品収容部61の位置に向けてヘッドユニット25が移動するように、ヘッドユニット25の移動動作を制御する。搭載ヘッド251がトレイ6上の部品収容部61の上方に位置する基準位置に配置されると、制御部4は、トレイ6上の複数の部品収容部61ごとに更新条件D6を満たすか否かを判定し、推力制限開始高さD5を用いて搭載ヘッド251の部品保持動作を制御する。制御部4の部品保持動作の制御の詳細については後述する。
【0058】
搭載ヘッド251の保持面251Aに部品Pが保持されると、制御部4は、部品搭載データD7の搭載位置D8で示される基板PP上における搭載位置に向けてヘッドユニット25が移動するように、ヘッドユニット25の移動動作を制御する。搭載ヘッド251に保持された部品Pに対応した基板PP上の搭載位置の直上にヘッドユニット25が到着すると、制御部4は、基板PP上に部品Pを搭載する搭載ヘッド251の部品搭載動作を制御する。
【0059】
[搭載ヘッドによる部品保持動作の制御について]
制御部4が行う搭載ヘッド251の部品保持動作の制御について、図6図8を参照しながら説明する。
【0060】
パレット5に載置されたトレイ6上の部品収容部61内の部品Pを保持する部品保持動作において搭載ヘッド251が下方向に移動して部品Pに接触したときに部品Pに加わる衝撃力が大きすぎると、部品Pが破損する虞がある。このため、制御部4は、搭載ヘッド251の部品保持動作の制御において、搭載ヘッド251の下方向への移動中に下降速度を減速させて搭載ヘッド251の推力に制限をかける制御を行う。この場合、搭載ヘッド251の推力に制限をかける開始位置を示す推力制限開始高さD5が設定され、当該設定された推力制限開始高さD5は記憶部3に記憶される。
【0061】
推力制限開始高さD5は、搭載ヘッド251の保持面251Aがトレイ6上の部品収容部61内の部品Pに接触する位置をパレット5からの高さで示す部品接触高さD5Tに基づいて、トレイ6に反りや傾きなどの変形が生じた場合も想定して、部品接触高さD5Tよりも十分に大きい値に設定される。搭載ヘッド251が部品保持動作において移動するZ軸方向において、推力制限開始高さD5の位置が部品接触高さD5Tの位置に近すぎる場合には、搭載ヘッド251の推力制限が有効に機能せずに部品Pが破損する。一方、推力制限開始高さD5の位置が部品接触高さD5Tの位置から遠すぎる場合には、搭載ヘッド251の部品保持動作において下降速度の減速時間が長くなりすぎて部品保持動作の効率が低下する。このため、推力制限開始高さD5の設定は、搭載ヘッド251の部品保持動作を制御する際に重要である。
【0062】
制御部4は、搭載ヘッド251がトレイ6上の部品収容部61の上方に位置する基準位置に配置された状態で、搭載ヘッド251の部品保持動作を制御する。搭載ヘッド251が基準位置に配置された状態では、保持面251Aが基準高さD5Sの位置に配置される。制御部4は、搭載ヘッド251の部品保持動作を推力制限開始高さD5を用いて制御する際に、搭載ヘッド251の保持面251Aが部品収容部61内の部品Pに接触するまで搭載ヘッド251を下方向に移動させる移動処理S1と、保持面251Aが部品Pに接触した高さ位置を示す部品接触高さD5Tを検出する検出処理S2と、を行う。
【0063】
制御部4は、移動処理S1において、保持面251Aが推力制限開始高さD5の位置に到達した場合に搭載ヘッド251の下降速度を減速させて搭載ヘッド251の推力制限を開始し、保持面251Aが部品収容部61内の部品Pに接触するまで当該推力制限の状態を維持する。これにより、搭載ヘッド251が部品保持動作において下方向に移動して部品Pに接触したときに部品Pに加わる衝撃力が大きくなるのを抑制できるため、部品Pの破損を抑制することが可能である。また、制御部4は、検出処理S2において、搭載ヘッド251における推力制限の状態からの推力の変化に基づいて、搭載ヘッド251の保持面251Aが部品収容部61内の部品Pに接触した際の部品接触高さD5Tを検出する。これにより、従来技術のように高さ測定専用の測定ヘッドを用いなくても、搭載ヘッド251の推力変化に基づき部品接触高さD5Tを検出することができる。
【0064】
また、制御部4は、トレイ6上の各部品収容部61に対応して移動処理S1及び検出処理S2を行う際に、推力制限開始高さD5を更新する条件を既保持部品P1の数で示す更新条件D6を満たすか否かを判定する。
【0065】
図6に示されるように、更新条件D6を満たさない部品収容部61に対応して移動処理S1が行われるときには、更新条件D6で示される数の既保持部品P1に対応した移動処理S1及び検出処理S2が実施されていない。更新条件D6を満たさない部品収容部61に対応して移動処理S1を行う場合、制御部4は、記憶部3に記憶された推力制限開始高さD5をそのまま用いて移動処理S1を行う。
【0066】
一方、図7に示されるように、更新条件D6を満たす部品収容部61に対応して移動処理S1が行われるときには、更新条件D6で示される数の既保持部品P1に対応した移動処理S1及び検出処理S2が既に実施済みである。更新条件D6を満たす特定の部品収容部61に対応して移動処理S1を行う場合、制御部4は、既保持部品P1に対応した検出処理S2において検出された部品接触高さD5Tに基づいて、特定の部品収容部61内の部品Pに対する搭載ヘッド251の保持面251Aの接触を想定した予測部品接触高さD5T1を算出する。予測部品接触高さD5T1は、既保持部品P1に対応した実際の部品接触高さD5Tに基づき算出されるため、更新条件D6を満たす特定の部品収容部61に対応した部品接触高さの予測値として精度の高い予測値となる。
【0067】
そして、制御部4は、更新条件D6を満たす特定の部品収容部61に対応した推力制限開始高さD51を予測部品接触高さD5T1に基づき更新する。これにより、特定の部品収容部61に対応した推力制限開始高さD51を、予測部品接触高さD5T1に基づく適切な値に設定することができる。このため、特定の部品収容部61に対応した搭載ヘッド251の部品保持動作において搭載ヘッド251が下方向に移動する際に、更新後の推力制限開始高さD51の位置から搭載ヘッド251の推力制限が有効に機能して部品Pの破損を抑制可能であるとともに、搭載ヘッド251の推力制限の状態における下降速度の減速時間が適切な時間となって部品保持動作の効率の低下を抑制可能である。
【0068】
図8に示されるように、制御部4は、更新条件D6を満たす特定の部品収容部61に対応して予測部品接触高さD5T1を算出する際に、複数の既保持部品P1に対応した複数の部品接触高さD5Tに基づいて、最小二乗法によって最小二乗直線LSLを算出する。そして、制御部4は、最小二乗直線LSLに基づいて、更新条件D6を満たす特定の部品収容部61に対応した予測部品接触高さD5T1を算出する。制御部4は、更新条件D6を満たす特定の部品収容部61に対応した予測部品接触高さD5T1を、最小二乗法によって精度よく算出することができる。
【0069】
また、制御部4は、更新条件D6を満たす特定の部品収容部61に対応して予測部品接触高さD5T1に基づき推力制限開始高さD51を更新設定する場合、予測部品接触高さD5T1に一定のマージンMGを加えた値を更新後の推力制限開始高さD51として設定する。或いは、制御部4は、複数の既保持部品P1に対応した複数の部品接触高さD5Tの中から最大値を示す最大部品接触高さを抽出し、最大部品接触高さに基づきマージンMGを算出してもよい。そして、制御部4は、算出したマージンMGを予測部品接触高さD5T1に加えた値を更新後の推力制限開始高さD51として設定してもよい。
【0070】
また、図8に示されるように、制御部4は、更新条件D6を満たす特定の部品収容部61に対応して移動処理S1を行うごとに、推力制限開始高さD51を更新する。これにより、更新条件D6を満たす特定の部品収容部61ごとに、予測部品接触高さD5T1に基づく適切な推力制限開始高さD51を設定することができる。
【0071】
次に、制御部4が推力制限開始高さD5(D51)を設定する際の処理について、複数の例を挙げてより詳細に説明する。
【0072】
(推力制限開始高さの設定に関する第1例)
制御部4が推力制限開始高さD5を設定する際の第1例について、図9及び図10を参照しながら説明する。第1例では、推力制限開始高さD5を更新する条件を示す更新条件D6は、トレイ6上においてマトリクス状に配列された複数の部品収容部61においてX軸方向に沿って配列された各行の部品収容部61に対応する既保持部品P1の数Nxにより設定される。
【0073】
図9及び図10には、トレイ6上の部品収容部61(1)~(10)に対応して、部品保持データD2の部品保持順序D3で示される順序に従って(1)~(10)の順序で移動処理S1及び検出処理S2が行われる例が示されている。この場合、制御部4は、X軸方向に沿って配列された第1の行の部品収容部61(1)~(6)に対応して移動処理S1及び検出処理S2を行った後に、第1の行に対してY軸方向に隣接する第2の行の部品収容部61(7)~(10)に対応して移動処理S1及び検出処理S2を行う。そして、X軸方向に沿った各行の部品収容部61に対応する既保持部品P1の数Nxについて、更新条件D6はNx≧nに設定され、図9には「n=3」の場合が示されている。
【0074】
X軸方向に沿って配列された各行の部品収容部61に対応する既保持部品P1の数Nxにより更新条件D6が設定される場合、制御部4は、トレイ6上にマトリクス状に配列された複数の部品収容部61(1)~(10)について、X軸方向に沿った配列の行ごとに更新条件D6を満たすか否かを判定して推力制限開始高さD5(D50,D51)を設定し、各部品収容部61(1)~(10)に対応して移動処理S1及び検出処理S2を行う。
【0075】
第1の行の部品収容部61(1)~(6)において、例えば、部品収容部61(1)に対応して移動処理S1が行われるときには、移動処理S1及び検出処理S2が実施済みの部品収容部61は存在しない。この場合、部品収容部61(1)に対応して移動処理S1が行われるときには、第1の行における既保持部品P1の数Nxは「0」である。同様に、部品収容部61(2)に対応して移動処理S1が行われるときには、部品収容部61(1)に対する移動処理S1及び検出処理S2については既に実施済みである。この場合、部品収容部61(2)に対応して移動処理S1が行われるときには、第1の行における既保持部品P1の数Nxは「1」である。また、部品収容部61(3)に対応して移動処理S1が行われるときには、部品収容部61(1),(2)に対する移動処理S1及び検出処理S2については既に実施済みである。この場合、部品収容部61(3)に対応して移動処理S1が行われるときには、第1の行における既保持部品P1の数Nxは「2」である。
【0076】
つまり、第1の行の部品収容部61(1)~(6)において、部品収容部61(1)~(3)に対応して移動処理S1が行われるときには、第1の行における既保持部品P1の数Nxは「3」未満である。このため、制御部4は、第1の行の部品収容部61(1)~(3)については、更新条件D6である「Nx≧3」を満たしていないと判定する。一方、第1の行の部品収容部61(1)~(6)において、部品収容部61(4)~(6)に対応して移動処理S1が行われるときには、第1の行における既保持部品P1の数Nxは「3」以上である。このため、制御部4は、第1の行の部品収容部61(4)~(6)については、更新条件D6である「Nx≧3」を満たすと判定する。
【0077】
また、第2の行の部品収容部61(7)~(10)において、部品収容部61(7)~(9)に対応して移動処理S1が行われるときには、第2の行における既保持部品P1の数Nxは「3」未満である。このため、制御部4は、第2の行の部品収容部61(7)~(9)については、更新条件D6である「Nx≧3」を満たしていないと判定する。一方、第2の行の部品収容部61(7)~(10)において、部品収容部61(10)に対応して移動処理S1が行われるときには、第2の行における既保持部品P1の数Nxは「3」以上である。このため、制御部4は、第2の行の部品収容部61(10)については、更新条件D6である「Nx≧3」を満たすと判定する。
【0078】
図10に示されるように、制御部4は、第1の行の部品収容部61(1)~(6)において更新条件D6を満たさない部品収容部61(1)~(3)に対しては、記憶部3に記憶された推力制限開始高さD5をそのまま用いて移動処理S1を行い、その後に続く検出処理S2において既保持部品P1に対応した部品接触高さD5Tを検出する。一方、第1の行の部品収容部61(1)~(6)において更新条件D6を満たす特定の部品収容部61(4)~(6)に対しては、制御部4は、第1の行における既保持部品P1に対応した複数の部品接触高さD5Tに基づき最小二乗法によって最小二乗直線LSLを算出する。そして、制御部4は、最小二乗直線LSLに基づいて更新条件D6を満たす特定の部品収容部61(4)~(6)に対応した予測部品接触高さD5T1を算出し、当該予測部品接触高さD5T1に基づく更新後の推力制限開始高さD51を用いて移動処理S1を行う。
【0079】
制御部4は、第2の行の部品収容部61(7)~(10)において更新条件D6を満たさない部品収容部61(7)~(9)に対しては、Y軸方向に隣接する第1の行における部品収容部61(1)~(3)に対応して検出処理S2において検出された部品接触高さD5Tに基づいて推力制限開始高さD50を設定することができる。具体的には、制御部4は、第1の行の部品接触高さD5Tに基づく最小二乗直線LSLに所定のマージンMGSを加えて最小二乗直線LSLに平行なマージン線MGLを算出し、そのマージン線MGL上に各部品収容部61(7)~(9)に対応した推力制限開始高さD50を設定する。或いは、制御部4は、部品収容部61(1)に対応した部品接触高さD5Tに所定のマージンMGSを加えた値を、部品収容部61(1)に対してY軸方向に隣接する部品収容部61(7)に対応した推力制限開始高さD50として設定してもよい。同様に、制御部4は、部品収容部61(2)に対応した部品接触高さD5Tに所定のマージンMGSを加えた値を、部品収容部61(2)に対してY軸方向に隣接する部品収容部61(8)に対応した推力制限開始高さD50として設定し、部品収容部61(3)に対応した部品接触高さD5Tに所定のマージンMGSを加えた値を、部品収容部61(3)に対してY軸方向に隣接する部品収容部61(9)に対応した推力制限開始高さD50として設定する。
【0080】
第2の行の部品収容部61(7)~(10)において更新条件D6を満たさない部品収容部61(7)~(9)に対応して推力制限開始高さD50が設定されると、制御部4は、設定した推力制限開始高さD50を用いて移動処理S1を行い、その後に続く検出処理S2において第2の行における既保持部品P1に対応した部品接触高さD5Tを検出する。一方、第2の行の部品収容部61(7)~(10)において更新条件D6を満たす特定の部品収容部61(10)に対しては、制御部4は、第2の行における既保持部品P1に対応した複数の部品接触高さD5Tに基づき最小二乗法によって最小二乗直線LSLを算出する。そして、制御部4は、最小二乗直線LSLに基づいて更新条件D6を満たす特定の部品収容部61(10)に対応した予測部品接触高さD5T1を算出し、当該予測部品接触高さD5T1に基づく更新後の推力制限開始高さD51を用いて移動処理S1を行う。
【0081】
上記のように、制御部4は、更新条件D6を満たす第1の行における特定の部品収容部61(4)~(6)、第2の行における特定の部品収容部61(10)に対応した推力制限開始高さD51を予測部品接触高さD5T1に基づき更新する。これにより、特定の部品収容部61(4)~(6),61(10)に対応した推力制限開始高さD51を、予測部品接触高さD5T1に基づく適切な値に設定することができる。このため、特定の部品収容部61(4)~(6),61(10)に対応した搭載ヘッド251の部品保持動作において搭載ヘッド251が下方向に移動する際に、更新後の推力制限開始高さD51の位置から搭載ヘッド251の推力制限が有効に機能して部品Pの破損を抑制可能であるとともに、搭載ヘッド251の推力制限の状態における下降速度の減速時間が適切な時間となって部品保持動作の効率の低下を抑制可能である。
【0082】
(推力制限開始高さの設定に関する第2例)
制御部4が推力制限開始高さD5を設定する際の第2例について、図11を参照しながら説明する。第2例では、推力制限開始高さD5を更新する条件を示す更新条件D6は、トレイ6上においてマトリクス状に配列された複数の部品収容部61に対応する既保持部品P1の数Nxyにより設定される。
【0083】
図11には、トレイ6上の部品収容部61(1)~(8)に対応して、部品保持データD2の部品保持順序D3で示される順序に従って(1)~(8)の順序で移動処理S1及び検出処理S2が行われる例が示されている。また、更新条件D6はNxy≧nに設定され、図11には「n=7」の場合が示されている。この場合、制御部4は、トレイ6上にマトリクス状に配列された複数の部品収容部61(1)~(8)について、部品収容部61ごとに更新条件D6を満たすか否かを判定して推力制限開始高さD5(D51)を設定し、各部品収容部61(1)~(8)に対応して移動処理S1及び検出処理S2を行う。
【0084】
トレイ6上の部品収容部61(1)~(8)において、例えば、部品収容部61(6)に対応して移動処理S1が行われるときには、部品収容部61(1)~(5)に対する移動処理S1及び検出処理S2については既に実施済みである。この場合、部品収容部61(6)に対応して移動処理S1が行われるときには、トレイ6上の全ての部品収容部61を対象とした既保持部品P1の数Nxyは「5」である。同様に、部品収容部61(7)に対応して移動処理S1が行われるときには、部品収容部61(1)~(6)に対する移動処理S1及び検出処理S2については既に実施済みである。この場合、部品収容部61(7)に対応して移動処理S1が行われるときには、トレイ6上の全ての部品収容部61を対象とした既保持部品P1の数Nxyは「6」である。つまり、トレイ6上の部品収容部61(1)~(8)において、部品収容部61(1)~(7)に対応して移動処理S1が行われるときには、既保持部品P1の数Nxyは「7」未満である。このため、制御部4は、部品収容部61(1)~(7)については、更新条件D6である「Nxy≧7」を満たしていないと判定する。
【0085】
一方、トレイ6上の部品収容部61(1)~(8)において、部品収容部61(8)に対応して移動処理S1が行われるときには、部品収容部61(1)~(7)に対する移動処理S1及び検出処理S2については既に実施済みである。この場合、部品収容部61(8)に対応して移動処理S1が行われるときには、トレイ6上の全ての部品収容部61を対象とした既保持部品P1の数Nxyは「7」である。このため、制御部4は、部品収容部61(8)については、更新条件D6である「Nxy≧7」を満たすと判定する。
【0086】
図11に示されるように、制御部4は、部品収容部61(1)~(8)において更新条件D6を満たさない部品収容部61(1)~(7)に対しては、記憶部3に記憶された推力制限開始高さD5をそのまま用いて移動処理S1を行い、その後に続く検出処理S2において既保持部品P1に対応した部品接触高さD5Tを検出する。
【0087】
一方、部品収容部61(1)~(8)において更新条件D6を満たす特定の部品収容部61(8)に対しては、制御部4は、既保持部品P1に対応した複数の部品接触高さD5Tに基づき最小二乗法によって最小二乗平面を算出する。そして、制御部4は、最小二乗平面に基づいて更新条件D6を満たす特定の部品収容部61(8)に対応した予測部品接触高さD5T1を算出し、当該予測部品接触高さD5T1に基づく更新後の推力制限開始高さD51を用いて移動処理S1を行う。
【0088】
上記のように、制御部4は、更新条件D6を満たす特定の部品収容部61(8)に対応した推力制限開始高さD51を予測部品接触高さD5T1に基づき更新する。これにより、特定の部品収容部61(8)に対応した推力制限開始高さD51を、予測部品接触高さD5T1に基づく適切な値に設定することができる。このため、特定の部品収容部61(8)に対応した搭載ヘッド251の部品保持動作において搭載ヘッド251が下方向に移動する際に、更新後の推力制限開始高さD51の位置から搭載ヘッド251の推力制限が有効に機能して部品Pの破損を抑制可能であるとともに、搭載ヘッド251の推力制限の状態における下降速度の減速時間が適切な時間となって部品保持動作の効率の低下を抑制可能である。
【0089】
(推力制限開始高さの設定に関する第3例)
制御部4が推力制限開始高さD5を設定する際の第3例について、図12を参照しながら説明する。第3例では、推力制限開始高さD5を更新する条件を示す更新条件D6は、トレイ6上においてマトリクス状に配列された複数の部品収容部61において、X軸方向に沿って配列された各行の部品収容部61に対応する既保持部品P1の数を示す第1既保持部品数Nxと、Y軸方向に沿って配列された各列の部品収容部61に対応する既保持部品P1の数を示す第2既保持部品数Nyと、により設定される。
【0090】
図12には、トレイ6上の部品収容部61(1)~(7)に対応して、部品保持データD2の部品保持順序D3で示される順序に従って(1)~(7)の順序で移動処理S1及び検出処理S2が行われる例が示されている。また、更新条件D6は第1既保持部品数NxがNx≧nに設定されるとともに第2既保持部品数NyがNy≧mに設定され、図12には「n=2、m=1」の場合が示されている。この場合、制御部4は、トレイ6上にマトリクス状に配列された複数の部品収容部61(1)~(7)について、部品収容部61ごとに更新条件D6を満たすか否かを判定して推力制限開始高さD5(D51)を設定し、各部品収容部61(1)~(7)に対応して移動処理S1及び検出処理S2を行う。
【0091】
トレイ6上の部品収容部61(1)~(7)において、部品収容部61(1),(2)に対応して移動処理S1が行われるときには、X軸方向における第1既保持部品数Nxは「2」未満であり、Y軸方向における第2既保持部品数Nyは「0」であって「1」未満である。このため、制御部4は、部品収容部61(1),(2)については、更新条件D6である「Nx≧2、Ny≧1」を満たしていないと判定する。
【0092】
トレイ6上の部品収容部61(1)~(7)において、部品収容部61(3),(4)に対応して移動処理S1が行われるときには、X軸方向における第1既保持部品数Nxは「2」以上であり、Y軸方向における第2既保持部品数Nyは「0」であって「1」未満である。このため、制御部4は、部品収容部61(3),(4)については、「Nx≧2」を満たしてはいるが「Ny≧1」を満たしていないので、更新条件D6を満たしていないと判定する。
【0093】
トレイ6上の部品収容部61(1)~(7)において、部品収容部61(5),(6)に対応して移動処理S1が行われるときには、X軸方向における第1既保持部品数Nxは「2」未満であり、Y軸方向における第2既保持部品数Nyは「1」であって「1」以上である。このため、制御部4は、部品収容部61(5),(6)については、「Ny≧1」を満たしてはいるが「Nx≧2」を満たしていないので、更新条件D6を満たしていないと判定する。
【0094】
トレイ6上の部品収容部61(1)~(7)において、部品収容部61(7)に対応して移動処理S1が行われるときには、X軸方向における第1既保持部品数Nxは「2」以上であり、Y軸方向における第2既保持部品数Nyは「1」であって「1」以上である。このため、制御部4は、部品収容部61(7)については、更新条件D6である「Nx≧2、Ny≧1」を満たすと判定する。
【0095】
図12に示されるように、制御部4は、部品収容部61(1)~(7)において更新条件D6を満たさない部品収容部61(1)~(6)に対しては、記憶部3に記憶された推力制限開始高さD5をそのまま用いて移動処理S1を行い、その後に続く検出処理S2において既保持部品P1に対応した部品接触高さD5Tを検出する。
【0096】
一方、部品収容部61(1)~(7)において更新条件D6を満たす特定の部品収容部61(7)に対しては、制御部4は、既保持部品P1に対応した複数の部品接触高さD5Tに基づき最小二乗法によって最小二乗平面を算出する。そして、制御部4は、最小二乗平面に基づいて更新条件D6を満たす特定の部品収容部61(7)に対応した予測部品接触高さD5T1を算出し、当該予測部品接触高さD5T1に基づく更新後の推力制限開始高さD51を用いて移動処理S1を行う。
【0097】
上記のように、制御部4は、更新条件D6を満たす特定の部品収容部61(7)に対応した推力制限開始高さD51を予測部品接触高さD5T1に基づき更新する。これにより、特定の部品収容部61(7)に対応した推力制限開始高さD51を、予測部品接触高さD5T1に基づく適切な値に設定することができる。このため、特定の部品収容部61(7)に対応した搭載ヘッド251の部品保持動作において搭載ヘッド251が下方向に移動する際に、更新後の推力制限開始高さD51の位置から搭載ヘッド251の推力制限が有効に機能して部品Pの破損を抑制可能であるとともに、搭載ヘッド251の推力制限の状態における下降速度の減速時間が適切な時間となって部品保持動作の効率の低下を抑制可能である。
【0098】
(推力制限開始高さの設定に関する第4例)
制御部4が推力制限開始高さD5を設定する際の第4例について、図13を参照しながら説明する。第4例では、推力制限開始高さD5を更新する条件を示す更新条件D6は、トレイ6上においてマトリクス状に配列された複数の部品収容部61において、制御部4による搭載ヘッド251の制御対象の部品収容部61を基準としてその周囲の所定範囲内における既保持部品P1の数Nxyにより設定される。具体的には、更新条件D6は、制御部4による搭載ヘッド251の制御対象の部品収容部61を基準としてその周囲のマンハッタン距離L以内における既保持部品P1の数Nxyにより設定される。トレイ6上において2つの部品収容部61間のマンハッタン距離Lは、各部品収容部61の各座標の差の絶対値の総和で示される。例えば、トレイ6上において座標(x1,y1)の部品収容部61と、座標(x2,y2)の部品収容部61との間のマンハッタン距離Lは、「|x1-x2|+|y1-y2|」となる。
【0099】
図13には、トレイ6上の部品収容部61(1)~(18)に対応して、部品保持データD2の部品保持順序D3で示される順序に従って(1)~(18)の順序で移動処理S1及び検出処理S2が行われる例が示されている。また、更新条件D6は、制御対象の部品収容部61を基準としてその周囲の所定範囲内における既保持部品P1の数NxyがNxy≧nに設定され、図13には「n=4」の場合が示されている。なお、制御対象の部品収容部61の周囲の所定範囲は、制御対象の部品収容部61を基準として1個の部品に相当する長さの半径の円で囲まれた範囲として設定される。この場合、制御部4は、トレイ6上にマトリクス状に配列された複数の部品収容部61(1)~(18)について、部品収容部61ごとに更新条件D6を満たすか否かを判定して推力制限開始高さD5(D51)を設定し、各部品収容部61(1)~(18)に対応して移動処理S1及び検出処理S2を行う。
【0100】
トレイ6上の部品収容部61(1)~(18)において、部品収容部61(1)~(7)、部品収容部61(12),(13)、部品収容部61(18)に対応して移動処理S1が行われるときには、移動処理S1の制御対象の各部品収容部61の周囲の所定範囲内における既保持部品P1の数Nxyは「4」未満である。このため、制御部4は、部品収容部61(1)~(7)、部品収容部61(12),(13)、部品収容部61(18)については、更新条件D6である「所定範囲内においてNxy≧4」を満たしていないと判定する。
【0101】
トレイ6上の部品収容部61(1)~(18)において、部品収容部61(8)に対応して移動処理S1が行われるときには、部品収容部61(8)の周囲の所定範囲内における部品収容部61(1)~(3)及び部品収容部61(7)に対応する移動処理S1及び検出処理S2が既に実施済みである。この場合、部品収容部61(8)に対応して移動処理S1が行われるときには、部品収容部61(8)の周囲の所定範囲内における既保持部品P1の数Nxyは「4」であって「4」以上である。このため、制御部4は、部品収容部61(8)については、更新条件D6である「所定範囲内においてNxy≧4」を満たすと判定する。同様に、トレイ6上の部品収容部61(1)~(18)において、部品収容部61(9)~(11)、部品収容部61(14)~(17)に対応して移動処理S1が行われるときには、移動処理S1の制御対象の各部品収容部61の周囲の所定範囲内における既保持部品P1の数Nxyは「4」以上である。このため、制御部4は、部品収容部61(9)~(11)、部品収容部61(14)~(17)については、更新条件D6である「所定範囲内においてNxy≧4」を満たすと判定する。
【0102】
図13に示されるように、制御部4は、部品収容部61(1)~(18)において更新条件D6を満たさない部品収容部61(1)~(7)、部品収容部61(12),(13)、部品収容部61(18)に対しては、記憶部3に記憶された推力制限開始高さD5をそのまま用いて移動処理S1を行い、その後に続く検出処理S2において既保持部品P1に対応した部品接触高さD5Tを検出する。
【0103】
一方、部品収容部61(1)~(18)において更新条件D6を満たす特定の部品収容部61(8)~(11)、(14)~(17)に対しては、制御部4は、既保持部品P1に対応した複数の部品接触高さD5Tに基づき最小二乗法によって最小二乗平面を算出する。そして、制御部4は、最小二乗平面に基づいて更新条件D6を満たす特定の部品収容部61(8)~(11)、(14)~(17)に対応した予測部品接触高さD5T1を算出し、当該予測部品接触高さD5T1に基づく更新後の推力制限開始高さD51を用いて移動処理S1を行う。
【0104】
上記のように、制御部4は、更新条件D6を満たす特定の部品収容部61(8)~(11)、(14)~(17)に対応した推力制限開始高さD51を予測部品接触高さD5T1に基づき更新する。これにより、特定の部品収容部61(8)~(11)、(14)~(17)に対応した推力制限開始高さD51を、予測部品接触高さD5T1に基づく適切な値に設定することができる。このため、特定の部品収容部61(8)~(11)、(14)~(17)に対応した搭載ヘッド251の部品保持動作において搭載ヘッド251が下方向に移動する際に、更新後の推力制限開始高さD51の位置から搭載ヘッド251の推力制限が有効に機能して部品Pの破損を抑制可能であるとともに、搭載ヘッド251の推力制限の状態における下降速度の減速時間が適切な時間となって部品保持動作の効率の低下を抑制可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 部品実装機
2 実装機本体
24 部品供給装置
25 ヘッドユニット
251 搭載ヘッド
251A 保持面
3 記憶部
4 制御部
5 パレット
6 トレイ
61 部品収容部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13