(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160608
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】耐火建築物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20231026BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
E04B1/94 L
E04B1/94 W
E04B1/82 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071072
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】馬場 峰雄
(72)【発明者】
【氏名】仁部 数典
(72)【発明者】
【氏名】文 正柱
(72)【発明者】
【氏名】兼 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】小濱 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】牛山 歩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 沙帆
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DE01
2E001DF02
2E001FA06
2E001GA12
2E001HA03
2E001HA07
(57)【要約】
【課題】耐火性を有する界壁の納まり構造において施工性の向上を図ることが可能な耐火建築物を提供する。
【解決手段】耐火建築物1は、屋根40と、屋根を支持する屋根支持部材と、耐火性を有する界壁10とを備えている。屋根支持部材は、界壁10に対向する高さ位置に配置され、界壁10とは交差方向に延びている第1の支持部材8を有している。第1の支持部材8のうち、第1の支持部材の延出方向において界壁10に対応する部分には、界壁10を通すための隙間8cが形成されている。界壁10は、耐火性を有する界壁パネル11を有している。界壁パネル11は、耐火建築物1の床下から屋根裏まで達するように延びており、第1の支持部材8に形成された隙間8cを通過して、第1の支持部材8よりも上方まで延びている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根と、
前記屋根を支持する屋根支持部材と、
耐火性を有する界壁と、備えた耐火建築物であって、
前記屋根支持部材は、前記界壁に対向する高さ位置に配置され、前記界壁とは交差方向に延びている第1の支持部材を有し、
前記第1の支持部材のうち、前記第1の支持部材の延出方向において前記界壁に対応する部分には、前記界壁を通すための隙間が形成され、
前記界壁は、耐火性を有する界壁パネルを有し、
前記界壁パネルは、
前記耐火建築物の床下から屋根裏まで達するように延びており、
前記第1の支持部材に形成された前記隙間を通過して、前記第1の支持部材よりも上方まで延びていることを特徴とする耐火建築物。
【請求項2】
前記第1の支持部材は、
前記屋根及び前記屋根の延出方向に延びている垂木を支持し、前記垂木とは交差方向に延びている母屋であって、あるいは、
前記屋根としての屋根パネルを支持し、前記屋根パネルの下地材とは交差方向に延びている母屋であって、
前記界壁パネルは、
前記垂木又は前記下地材の延出方向に沿って延出し、前記母屋の延出方向とは交差方向に延出し、
前記母屋に形成された前記隙間を通過し、前記垂木又は前記下地材に対向する高さ位置まで延出し、複数の前記垂木又は前記下地材の間に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の耐火建築物。
【請求項3】
前記界壁は、前記界壁の厚み方向において前記界壁パネルを間に挟む位置に設けられ、遮音性を有する第1ボード及び第2ボードを有し、
前記界壁のうち、前記界壁パネルは、前記耐火建築物の床下から屋根裏まで達するように延びており、
前記第1ボード及び前記第2ボードは、前記界壁において前記屋根裏まで達しない位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐火建築物。
【請求項4】
前記界壁パネルは、気泡コンクリートパネル(ALCパネル)であって、
前記第1ボード、前記第2ボードは、それぞれ第1石膏ボード、第2石膏ボードであって、
前記界壁は、前記界壁の厚み方向において前記ALCパネル及び前記第1石膏ボードの間に繊維系断熱材をさらに有していることを特徴とする請求項3に記載の耐火建築物。
【請求項5】
前記屋根支持部材は、前記第1の支持部材を支持し、前記第1の支持部材の延出方向とは交差方向に延びており、前記界壁パネルに隣接して配置されるトラスをさらに有し、
前記第1の支持部材は、前記界壁パネルを間に挟む第1支持部及び第2支持部を有し、
前記界壁パネルは、前記第1支持部及び前記第2支持部の間に形成された前記隙間を通過し、
前記トラスは、前記第1支持部及び前記第2支持部のうち、前記第2支持部のみを支持していることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐火建築物。
【請求項6】
前記第1の支持部材は、前記界壁パネルを間に挟む第1支持部及び第2支持部を有し、
前記界壁パネルは、
前記第1支持部及び前記第2支持部の間に形成された前記隙間を通過し、
前記屋根裏において前記界壁パネルに沿って延出し、繊維系断熱材で覆われる梁によって上方又は下方から支持されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐火建築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐火建築物に係り、特に、耐火性を有する界壁を備えた耐火建築物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、共同住宅や長屋のように住戸同士が連続して存在する建築物が建築されており、当該建築物は、屋根と、屋根を支持する屋根支持部材と、隣接する住戸間を仕切る耐火性を有する界壁と、を備えている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のような界壁を有する建築物では、上記屋根支持部材として屋根を支持し、屋根に沿って延びている垂木と、垂木を支持し、垂木とは直交方向に延びている棟木及び母屋と、棟木及び母屋を支持する小屋束(トラス)及び雲筋交いと、を備えている。
このとき、母屋が界壁に対向する高さ位置に配置され、界壁とは直交方向に延びている場合には、母屋が界壁を貫通する納まり構造となっている。
詳しく述べると、界壁のうち、母屋が干渉する部分には、母屋の形状に合わせて開口穴が切り欠き形成されている。そして、当該開口穴には母屋が貫通した状態で耐火目地材(ロックウール等の耐火被服材)が詰め込まれている。
【0004】
また、上記界壁は、例えば、建築基準法に基づく建設省告示仕様、大臣認定仕様等において所定の耐火性能と、遮音性能とが要求されており、また、建築基準法施行令において準耐火構造とし、小屋裏(屋根裏)又は天井裏に達していることが要求されている。
上記耐火性能及び遮音性能を満たすべく、一般的な界壁では、スタッド付きの界壁フレームの両側に石膏ボードを貼り付けて中空状の石膏ボード壁を形成し、当該石膏ボード壁の内部にグラスウールやロックウールを充填して構成されている。そして、当該界壁が小屋裏又は天井裏まで達するように延びている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-62761号公報
【特許文献2】特開2013-194475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1のような界壁を有する建築物では、界壁を施工した後に、当該界壁に対し母屋の形状、位置に合わせて複雑な開口穴を切り欠き形成する必要があったため、現場の施工作業が煩雑になってしまい、また品質に影響する虞があった。
【0007】
また、特許文献2のような中空状の界壁を有する建築物では、耐火性能及び遮音性能を満足させるべく、例えば、耐火パテを用いて湿式の隙間処理を行い、また石膏ボードを2層張りにする必要があるため、界壁の納まり構造が比較的複雑となっていた。
また、耐火性能、遮音性能に関する建設省告示仕様、大臣認定仕様に定められた施工現場での適合性確認項目が多く、施工手順が分かりにくいという課題があった。
そのため、耐火性及び遮音性が要求される界壁の納まり構造において施工性の向上を図ることが求められていた。
具体的には、界壁の納まり構造の施工手順を分かり易くし、施工現場での適合性確認を容易にすることが求められていた。より具体的には、界壁及び天井の組み合わせにおいて耐火性を確保するラインと、遮音性を確保するラインとを明確に切り分けて、施工手順、施工現場での適合性確認をシンプルにすることが求められていた。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、耐火性を有する界壁の納まり構造において施工性の向上を図ることが可能な耐火建築物を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、耐火性能及び遮音性能を満たす界壁の納まり構造において施工手順を分かり易くし、施工現場での適合性確認を容易にすることが可能な耐火建築物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題は、本発明の耐火建築物によれば、屋根と、前記屋根を支持する屋根支持部材と、耐火性を有する界壁と、備えた耐火建築物であって、前記屋根支持部材は、前記界壁に対向する高さ位置に配置され、前記界壁とは交差方向に延びている第1の支持部材を有し、前記第1の支持部材のうち、前記第1の支持部材の延出方向において前記界壁に対応する部分には、前記界壁を通すための隙間が形成され、前記界壁は、耐火性を有する界壁パネルを有し、前記界壁パネルは、前記耐火建築物の床下から屋根裏まで達するように延びており、前記第1の支持部材に形成された前記隙間を通過して、前記第1の支持部材よりも上方まで延びていること、により解決される。
【0010】
上記構成により、耐火性を有する界壁の納まり構造において施工性の向上を図ることが可能な耐火建築物を実現できる。
詳しく述べると、屋根支持部材(第1の支持部材)のうち、界壁に対応する部分には、界壁を通すための隙間が形成されており、界壁(界壁パネル)は、屋根裏まで達するように延びており、上記隙間を通過して第1の支持部材よりも上方まで延びている。
そうすることで、従来のように界壁に対し母屋の形状、位置に合わせた切り欠き穴を現場で形成する必要がなくなるため、施工性の向上を図ることができ、また品質の安定化につながる。特に、中実状の界壁パネルを用いる場合には、より一層の施工性の向上を図ることができる。
【0011】
このとき、前記第1の支持部材は、前記屋根及び前記屋根の延出方向に延びている垂木を支持し、前記垂木とは交差方向に延びている母屋であって、あるいは、前記屋根としての屋根パネルを支持し、前記屋根パネルの下地材とは交差方向に延びている母屋であって、前記界壁パネルは、前記垂木又は前記下地材の延出方向に沿って延出し、前記母屋の延出方向とは交差方向に延出し、前記母屋に形成された前記隙間を通過し、前記垂木又は前記下地材に対向する高さ位置まで延出し、複数の前記垂木又は前記下地材の間に配置されていると良い。
上記構成により、界壁に対し母屋に合わせた切り欠き穴を形成する必要なく、界壁を耐火建築物の床下から屋根裏まで延ばすことができる。
また上記構成により、界壁と、垂木(屋根下地材)とが干渉することなく、界壁を耐火建築物の屋根(屋根面材)まで延ばすことができる。
【0012】
このとき、前記界壁は、前記界壁の厚み方向において前記界壁パネルを間に挟む位置に設けられ、遮音性を有する第1ボード及び第2ボードを有し、前記界壁のうち、前記界壁パネルは、前記耐火建築物の床下から屋根裏まで達するように延びており、前記第1ボード及び前記第2ボードは、前記界壁において前記屋根裏まで達しない位置に配置されていると良い。
上記構成により、耐火性能及び遮音性能を満たす界壁の納まり構造において施工手順を分かり易くし、施工現場での適合性確認を容易にすることが可能な耐火建築物を実現できる。
詳しく述べると、界壁が、耐火性を有する界壁パネルと、当該界壁パネルを間に挟む遮音性を有する第1、第2ボードとを有しており、かつ、界壁パネルが床下から屋根裏(小屋裏)まで達するように延びている。
そのため、まず、床下から屋根裏まで延びている「耐火性パネル」によって界壁の耐火性能を確保することができる。そして、「耐火性パネル」及び「第1、第2ボード」の組み合わせによって住戸間の界壁(仕切り壁)の遮音性能を確保することもできる。そして、従来のように界壁の構成全体を屋根裏まで延ばす必要はなく、「耐火性パネル」を屋根裏まで延ばすことで足りるため、界壁の納まり構造をシンプルにできる。
すなわち、施工手順を分かり易くし、施工現場での適合性確認を容易にできる。より詳しく述べると、「耐火性パネル」のみを耐火構造として床下から屋根裏まで延ばすことで、建方時の作業によって界壁の防火区画の適合性を確保することができる。
【0013】
このとき、前記界壁パネルは、気泡コンクリートパネル(ALCパネル)であって、前記第1ボード、前記第2ボードは、それぞれ第1石膏ボード、第2石膏ボードであって、前記界壁は、前記界壁の厚み方向において前記ALCパネル及び前記第1石膏ボードの間に繊維系断熱材をさらに有していると良い。
上記のようにALCパネルを採用することで、パテ処理のない乾式工法によって、耐火性能を有する界壁を施工することができる。また、界壁の耐火性能及び遮音性能を高めることができる。
また上記のように繊維系断熱材を含むことで、住戸間の界壁(仕切り壁)の遮音性能をより高めることができる。なお、例えば耐火ロックウールを用いることで乾式工法によって施工することができる。
【0014】
このとき、前記屋根支持部材は、前記第1の支持部材を支持し、前記第1の支持部材の延出方向とは交差方向に延びており、前記界壁パネルに隣接して配置されるトラスをさらに有し、前記第1の支持部材は、前記界壁パネルを間に挟む第1支持部及び第2支持部を有し、前記界壁パネルは、前記第1支持部及び前記第2支持部の間に形成された前記隙間を通過し、前記トラスは、前記第1支持部及び前記第2支持部のうち、前記第2支持部のみを支持していると良い。
上記構成により、母屋のうち第2支持部が、界壁パネルに隣接して配置されるトラスによって支持される納まり構造となる。そうすることで、母屋に対し界壁を通すための隙間を形成した場合であっても、界壁パネルに隣接して配置されるトラスによって母屋の一方側を支持させることができ、屋根支持部材による支持構造を高めることができる。
また上記構成により、例えば界壁パネル及びトラスを連結させることが可能となり、そうすることで界壁及び屋根支持部材の躯体構造を強固にすることができる。
【0015】
このとき、前記第1の支持部材は、前記界壁パネルを間に挟む第1支持部及び第2支持部を有し、前記界壁パネルは、前記第1支持部及び前記第2支持部の間に形成された前記隙間を通過し、前記屋根裏において前記界壁パネルに沿って延出し、繊維系断熱材で覆われる梁によって上方又は下方から支持されていると良い。
上記構成により、建築物の躯体(梁)を界壁の一部として構成することができ、界壁の躯体構造をより強固にすることができる。
また、梁が繊維系断熱材(例えば、耐火被覆材)で覆われているため、梁を界壁の一部として構成した場合であっても、界壁の耐火性能を確保することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の耐火建築物によれば、耐火性を有する界壁の納まり構造において施工性の向上を図ることが可能となる。
また、界壁の納まり構造の施工手順を分かり易くし、施工現場での適合性確認(責任施工範囲の確認)を容易にすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】別の角度から見たときの耐火建築物の躯体の斜視図であって、界壁を含む屋根組み構造を説明する図である。
【
図5】界壁を含む屋根組み構造(小屋裏構造)の側断面図である。
【
図6】第2実施形態の屋根組構造を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について
図1~
図6を参照して説明する。
本実施形態は、耐火性を有する界壁(界壁パネル)を備えた耐火建築物であって、屋根支持部材のうち第1の支持部材が、界壁パネルに対向する高さ位置に配置され、界壁パネルとは交差(直交)方向に延びており、界壁パネルが、耐火建築物の床下から屋根裏まで達するように延びており、第1の支持部材に形成された隙間を通過して第1の支持部材よりも上方まで延びていることを主な特徴とする「耐火建築物」の発明に関するものである。
【0019】
本実施形態の建築物1は、
図1に示すように、共同住宅や長屋、寄宿舎等のように住戸同士が連続して存在する連棟式の耐火建築物であって、耐火性及び遮音性を有する界壁10を備えている。
「耐火建築物」とは、耐火建築物(建築基準法に基づく耐火構造を持つ建築物)そのもののほか、準耐火建築物(準耐火構造を持つ建築物)、防火建築物(防火構造を持つ建築物)を含むものである。
「耐火性を有する」とは、例えば、建設省告示仕様又は大臣認定仕様において要求される耐火性能の技術的基準を満たすものである。具体的には、界壁を耐火構造とし、界壁が小屋裏(屋根裏)又は天井裏に達していることが挙げられる。
「遮音性を有する」とは、例えば、建設省告示仕様又は大臣認定仕様において要求される遮音性能の技術的基準を満たすものである。具体的には、界壁の遮音構造において振動数の音に対する透過損失が所定の基準値以上であることが挙げられる。
なお、2019年6月施行の建築基準法の改正に伴い、例えば、天井の遮音性能を確保することで、界壁(界壁全体)を小屋裏又は天井裏に達するものとする基準を必ずしも適用させなくても良いこととなっている。
【0020】
建築物1は、
図1、
図3に示すように、建築物1の土台となる鉄筋コンクリート製の基礎2と、床束3と、基礎2の上面に固定され、建築物1の上部構造物を支持する鋼製の柱4及び鋼製の梁5と、柱4及び梁5によって支持され、建築物1の屋根40を支持する屋根支持部材(垂木6、棟木7、母屋8、トラス9)と、基礎2の上面に不図示の界壁取り付け金具を介して取り付けられる界壁10と、を備えている。
また、建築物1は、
図4に示すように、基礎2及び床束3によって下方から支持され、界壁10を間に挟む位置に設けられる第1床20A、第2床20Bと、
図4に示すように、柱4、梁5及び界壁10等によって支持され、界壁10を間に挟む位置に設けられる第1天井30A、第2天井30Bと、を備えている。
また、建築物1は、
図1、
図5に示すように、柱4、梁5、屋根支持部材及び界壁10等によって支持される屋根40(勾配屋根)を備えている。なお、屋根40は、陸屋根であっても良い。
また、建築物1は、
図1に示すように、基礎2の上面に固定され、基礎2、柱4、梁5及び界壁10等によって支持される外壁50を備えている。
【0021】
梁5は、
図1に示すように、建築物1の床を支持する床梁5a(天井梁)と、床梁5aよりも上方位置に配置され、屋根40及び屋根支持部材を支持する小屋梁5bと、を有している。
床梁5a、小屋梁5bは、それぞれ十字状(格子状)に配置されている。
【0022】
屋根支持部材は、
図1、
図2に示すように、屋根40(屋根面材)を支持し、屋根40の延出方向(梁方向)に延びている複数の垂木6と、複数の垂木6を支持し、前記垂木6とは交差方向(桁方向)に延びている棟木7及び複数の母屋8と、棟木7及び複数の母屋8をそれぞれ支持し、母屋8の延出方向とは交差方向(梁方向)に延びている複数のトラス9と、を備えている。
【0023】
母屋8は、
図1、
図2に示すように、界壁10に対向する高さ位置に配置され、界壁10とは交差方向に延びている。なお、本実施形態では、複数の界壁10の並び方向とは交差方向に延びている。
母屋8は、
図2、
図5に示すように、母屋8の延出方向において界壁10を間に挟む第1支持部8a及び第2支持部8bを有している。
つまり、母屋8のうち、母屋8の延出方向において界壁10に対応する部分には、界壁10を通すための隙間8cが形成されている。
【0024】
トラス9は、
図1、
図2、
図5に示すように、梁5(小屋梁5b)上に設けられ、複数の母屋8それぞれに対応する位置に配置され、上方に延びている複数のトラス立設部9aと、トラス立設部9a上に設けられ、複数のトラス立設部9aを連結し、複数の母屋8の並び方向に沿って傾斜しているトラス傾斜部9bと、を有している。
トラス9は、界壁10に対向する高さ位置に配置され、界壁10に沿って(界壁10の並び方向に沿って)延びている。
なお、トラス立設部9aは小屋束とも称され、またトラス傾斜部9bは合掌とも称される屋根支持部材である。
【0025】
界壁10は、
図1、
図2に示すように、上下方向に長尺な平板状の壁材であって、屋根40の延出方向(建築物1の梁方向)に沿って複数並ぶように配置されている。
本実施形態では、界壁10は、上下方向に複数積むように配置されており、また屋根40の延出方向に複数並ぶように配置されているが、特に限定されるものではない。
例えば、界壁10が上下方向に長尺な1枚の壁材であって、基礎2から屋根まで立ち上がっていても良い。また、界壁10が幅広となる壁材であって、屋根40の延出方向に延びている大型な壁材であっても良い。
【0026】
界壁10は、
図3~
図5に示すように、耐火性を有する界壁パネル11と、界壁10の厚み方向において界壁パネル11を間に挟む位置に設けられ、遮音性を有する第1ボード12A、第2ボード12Bと、界壁パネル11及び第1ボード12Aの間に配置される第1断熱材13Aと、界壁パネル11及び第2ボード12Bの間に配置される第2断熱材13Bと、を有している。
【0027】
界壁パネル11は、プレキャストコンクリート(PC)や気泡コンクリート(ALC)等のセメント系材料から形成される厚形パネルであって、具体的には、厚さ75mm以上、150mm以下の間仕切り壁用のALCパネルである。
ALCパネルを採用することで、界壁10の耐火性能を確保し、さらに遮音性能及び断熱性能を高めることができる。また、比較的軽量であるため、界壁10の施工性を高めることもできる。
なお、上記界壁パネルのほか、木質材料からなるCLTパネル等であっても良い。
【0028】
第1ボード12A、第2ボード12Bは、それぞれ石膏ボードであって、具体的には、それぞれ複数貼り(2層貼り)となっている。そうすることで、遮音性能を確保することができる。
なお、石膏ボードの代わりに合板を採用しても良いし、遮音性能を確保することが可能な他のボードを採用しても良い。
あるいは、上記ボードの代わりに、界壁パネル11の両側にモルタル等のセメント系部材を塗布し、界壁10の遮音性能を確保することにしても良い。
【0029】
第1断熱材13A、第2断熱材13Bは、それぞれ繊維系断熱材であって、具体的には、吹付けタイプのグラスウール又はロックウールである。
なお、吹付けタイプの代わりに巻き付けタイプのグラスウール(ロックウール)を採用しても良い。
【0030】
上記の界壁10のように、遮音性を有する界壁パネル11(ALCパネル)及び遮音性を有するボード12(石膏ボード)を組み合わせることで、特に高域の遮音性能をより高めることができる。そのため、例えば、ボード12の外周部分(四周部分)に対し気密処理(シール処理等)を行うことを不要にすることができる。
また上記の界壁10のように、遮音性を有する界壁パネル11を設けることで、界壁パネル11を挟む位置にあるボード12同士の固体伝搬を抑制することができ、遮音性能をより高めることができる。
【0031】
第1床20A、第2床20Bは、
図3に示すように、それぞれ耐火性を有する床であって、具体的には、複合フローリングを貼り合わせた構造用合板である。
なお、構造用合板の代わりに石膏ボードを採用しても良いし、遮音性能を確保することが可能な他のボードを採用しても良い。
第1床20A、第2床20Bそれぞれの床裏には、繊維系断熱材21が取り付けられている。
繊維系断熱材21は、例えば、グラスウールやロックウールを採用すると良い。
なお、床については、必ずしも耐火性を有する床である必要はなく、また床裏に繊維系断熱材21が取り付けられていなくても良い。
【0032】
第1天井30A、第2天井30Bは、
図4に示すように、それぞれ耐火性を有する天井であって、具体的には、石膏ボードであって、遮音性能を確保するためにそれぞれ複数貼り(2層貼り)となっている。
なお、石膏ボードの代わりに合板を採用しても良いし、遮音性能を確保することが可能な他のボードを採用しても良い。また、天井30A、30Bは、複数貼りのボードに限られず、1層貼りのボードであっても良い。
第1天井30A、第2天井30Bそれぞれの天井裏には、遮音性能を高めるために遮音性を有する繊維系断熱材31が取り付けられている。
繊維系断熱材31は、例えば、グラスウールやロックウールを採用すると良い。
第1床20Aと第1天井30Aが対向する位置に配置され、第2床20Bと第2天井30Bが対向する位置に配置されている。
【0033】
上記構成において、
図4に示す天井裏60では、界壁10のうち、界壁パネル11が上下方向に連続して延びており、下階の天井30、上階の床20及び床パネル22を貫通している。
また、界壁パネル11が、床梁(天井梁)に相当する梁5に隣接し、梁5に当接した状態で梁5によって支持されている。厳密に言うと、界壁パネル11が、L字形状の界壁支持金具を介して梁5と連結されている。
【0034】
<界壁の納まり構造(耐火性能及び遮音性能)>
図3~
図5に示すように、界壁10のうち、界壁パネル11は、建築物1の高さ方向において基礎2から天井裏60を通過し、屋根裏70まで達するように延びている。
具体的には、界壁パネル11のみが、基礎2に対して取り付けられた部分から上方に延びて屋根裏70まで達し、屋根40に対して取り付けられている。
一方で、第1ボード12A及び第2ボード12Bは、界壁10において屋根裏70まで達しない位置に配置されている。
具体的には、第1ボード12Aが、
図4、
図5に示すように、第1床20A及び第1天井30Aの間に配置され、第1床20Aと、第1天井30Aとに取り付けられている。第1断熱材13Aも同様に、第1床20A及び第1天井30Aの間に配置されている。
また、第2ボード12Bが、第2床20B及び第2天井30Bの間に配置され、第2床20Bと、第2天井30Bとに取り付けられている。第2断熱材13Bも同様に、第2床20B及び第2天井30Bの間に配置されている。
言い換えれば、界壁10において第1ボード12A、第1断熱材13A、第2ボード12B、第2断熱材13Bに対して床勝ち、天井勝ちの納まり構造となる。
【0035】
上記界壁10の納まり構造とすることで、基礎2から屋根裏70まで延びている界壁パネル11によって界壁10の「耐火性能」を確保することができる。そして、界壁パネル11及びボード12A、12Bの組み合わせによって住戸間の界壁10の「遮音性能」を確保することができる。
その結果、従来のように界壁の構成全体を屋根裏(小屋裏)まで延ばす必要はなく、界壁パネル11を屋根裏まで延ばすことで足りるため、界壁10の納まり構造をシンプルにすることができる。
【0036】
また、
図5に示すように、屋根裏70における「遮音性能」の確保は、遮音性を有する天井30によって代替することができる。そうすることで、界壁10及び天井30の組み合わせにおいて「耐火性を確保するライン」と、「遮音性を確保するライン」とを明確に切り分けて施工管理することができる。
具体的には、界壁10のうち、耐火性を有する界壁パネル11が屋根裏70まで達するように延びている。当該界壁パネル11の納まりによって界壁10の耐火性を確保するラインが完成する。そして、住戸間の仕切り壁では、遮音性を有するボード12(石膏ボード)の納まりによって遮音性を確保するラインができる。そして、屋根裏70では、遮音性を有する天井30の納まりによって遮音性を確保するラインができる。
なお、基礎2においても、遮音性を有する床20の納まりによって遮音性を確保するラインができる。
【0037】
<界壁の納まり構造(屋根支持部材との取り合い)>
図5に示すように、界壁10のうち、界壁パネル11は、屋根支持部材となる母屋8に形成された隙間8cを通過して、母屋8よりも上方まで延びている。
詳しく述べると、界壁パネル11は、垂木6の延出方向に沿って延出し、母屋8の延出方向とは交差方向に延出している。そして、母屋8に形成された隙間8cを通過し、垂木6に対向する高さ位置まで延出し、複数の垂木6の間に配置されている。
そうすることで、従来のように界壁に対し母屋の形状、位置に合わせた切り欠き穴を現場で形成する必要がなくなる。そのため、施工性の向上を図ることができる。
【0038】
また、
図5に示すように、界壁パネル11は、母屋8のうち第1支持部8a及び第2支持部8bの間に形成された隙間8cを通過するように延びている。
このとき、界壁パネル11に隣接して配置されるトラス9が、第1支持部8a及び第2支持部8bのうち、第2支持部8bのみを支持している。
そうすることで、母屋8に対し界壁10を通すための隙間8cを形成した場合であっても、界壁パネル11に隣接して配置されるトラス9によって母屋8の一方側(一方側の先端部)を支持させることができ、屋根支持部材による支持構造を高めることができる。
なお、界壁パネル11及びトラス9を連結させることで、界壁10及び屋根支持部材の躯体構造を強固にすることができる。
【0039】
また、
図5に示すように、トラス9は、繊維系断熱材5cで覆われた梁5によって下方から支持されている。
このとき、梁5を覆う繊維系断熱材5cが、上下方向に分割された界壁パネル11のうち、上方側にある界壁パネル11と、下方側にある界壁パネル11とに跨るように取り付けられている。
そうすることで、界壁パネル11が上下方向に分割されている場合であっても、界壁10の「耐火性能」を確保することができる。
【0040】
<第2実施形態(屋根支持部材との取り合い)>
図6は、第2実施形態の屋根組構造を説明する図である。
界壁パネル11は、複数のパネルから構成されている。
具体的には、界壁パネル11は、屋根裏70において梁5によって上方から支持される第1パネル11Aと、梁5よりも上方位置に配置され、梁5によって支持される第2パネル11Bと、を有している。
梁5は、繊維系断熱材5cによって覆われており、第1パネル11A、第2パネル11Bそれぞれに接合金具を介して連結されている。
上記構成において、第2パネル11Bが、母屋8のうち第1支持部8a及び第2支持部8bの間に形成された隙間8cを通過するように延びている。
【0041】
上記構成であっても、従来のように界壁に対し母屋の形状、位置に合わせた開口穴を現場で形成する必要がなくなり、施工性の向上を図ることができる。
なお、上記実施形態の場合には、第1支持部8a及び第2支持部8b双方の隙間8c側の端部位置に不図示のトラスを配置し、第1支持部8a及び第2支持部8bの躯体構造を強固にすると良い。
【0042】
また上記のように、建築物1の躯体(梁5)を界壁10の一部として構成することで、界壁10の躯体構造をより強固にすることができる。
また、梁5が繊維系断熱材5cで覆われているため、梁5を界壁10の一部として構成した場合であっても、界壁10の「耐火性能」を確保することができる。
【0043】
<その他の実施形態>
上記実施形態では、
図2、
図5に示すように、屋根支持部材のうち、母屋8に対し界壁10を通すための隙間8cが形成されているが、特に限定されるものではない。
例えば、屋根支持部材のうち、棟木7に対し界壁10を通すための隙間が形成されていても良い。あるいは、屋根支持部材のうち、不図示の雲筋交いに対し隙間が形成されていても良い。そのほか、界壁10に対向する屋根支持部材に隙間が形成されていても良い。
【0044】
上記実施形態では、
図3~
図5に示すように、界壁10のうち、界壁パネル11が基礎2から屋根裏70まで達するように延びているが、特に限定されない。
例えば、界壁パネル11が少なくとも床下(1階の床下)から天井裏(最上階の天井裏)まで達するように延びていることとしても良い。
【0045】
上記実施形態では、
図5に示すように、屋根40が例えば屋根面材であって、垂木6が屋根40を支持する部材であるものとして説明している。
一方で、屋根を「屋根パネル」としても良い。その場合には、屋根パネルが、屋根面材40と、屋根面材40の裏面に取り付けられる下地材6と、を有する構成とすることができる。
【0046】
上記実施形態では、主として本発明に係る耐火建築物、耐火建築物の施工方法に関して説明した。
ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0047】
1 建築物(耐火建築物)
2 基礎
3 床束
4 柱
5 梁
5a 床梁
5b 小屋梁
5c 繊維系断熱材
6 垂木(下地材)
7 棟木(第1の支持部材)
8 母屋(第1の支持部材)
8a 第1支持部
8b 第2支持部
8c 隙間
9 トラス
9a トラス立設部(小屋束)
9b トラス傾斜部(合掌)
10 界壁
11 界壁パネル(耐火性パネル、ALCパネル)
11A 第1パネル
11B 第2パネル
12 ボード(石膏ボード)
12A 第1ボード(第1部材、第1石膏ボード)
12B 第2ボード(第2部材、第2石膏ボード)
13 繊維系断熱材
13A 第1断熱材
13B 第2断熱材
20 床
20A 第1床
20B 第2床
21 繊維系断熱材
22 床パネル
30 天井
30A 第1天井
30B 第2天井
31 繊維系断熱材
40 屋根(屋根面材、屋根パネル)
50 外壁
60 天井裏
70 屋根裏(小屋裏)