(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160630
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】増幅装置及び機器
(51)【国際特許分類】
H03F 1/26 20060101AFI20231026BHJP
H03F 3/45 20060101ALI20231026BHJP
H01L 27/06 20060101ALI20231026BHJP
H01L 21/8238 20060101ALI20231026BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
H03F1/26
H03F3/45 210
H01L27/06 311Z
H01L27/092 Z
H01L27/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071108
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000279
【氏名又は名称】弁理士法人ウィルフォート国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桑名 諒
(72)【発明者】
【氏名】増永 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】原 勲
【テーマコード(参考)】
5F038
5F048
5J500
【Fターム(参考)】
5F038AV06
5F038BH01
5F038BH07
5F038BH19
5F038DF09
5F048AA06
5F048AB10
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5F048BA14
5J500AA01
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5J500AK01
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5J500AQ01
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5J500DP01
5J500RU02
(57)【要約】
【課題】耐放射線性を向上させつつ、ノイズの低減化を図ることが可能な増幅装置を提供する。
【解決手段】増幅装置100の差動増幅部200における差動信号に含まれる各入力信号が入力される複数のMOSトランジスタは、チャネルをSiよりもバンドギャップが大きいワイドバンド半導体材料で形成したn型MOSトランジスタであるSiC-nMOS1及び2で構成される。また、SiC-nMOS1及び2のドレイン電流は、SiC-nMOS1及び2のノイズ密度とドレイン電流との関係を表す関数とチャネルを同じワイドバンド半導体材料で形成したp型MOSトランジスタであるSiC-pMOS1のノイズ密度とドレイン電流との関係を表す関数との交点におけるドレイン電流の値である基準値よりも低い。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動信号に含まれる各入力信号の電圧差を増幅する差動増幅部を有する増幅装置であって、
前記差動増幅部は、
差動信号に含まれる各入力信号が入力される複数のMOSトランジスタを有し、
前記MOSトランジスタは、チャネルをケイ素よりもバンドギャップが大きいワイドバンド半導体材料で形成したn型MOSトランジスタであり、
前記n型MOSトランジスタのドレイン電流は、当該n型MOSトランジスタのノイズ密度とドレイン電流との関係を表す関数とチャネルを前記ワイドバンド半導体材料で形成したp型MOSトランジスタのノイズ密度とドレイン電流との関係を表す関数との交点における前記ドレイン電流の値である基準値よりも低い、増幅装置。
【請求項2】
前記基準値は、50μAから200μAまでの範囲に含まれる、請求項1に記載の増幅装置。
【請求項3】
前記増幅装置は、前記差動増幅部のn型MOSトランジスタを含む、チャネルが前記ワイドバンド半導体材料で形成されたワイドバンドn型MOSトランジスタ及びワイドバンドp型MOSトランジスタを有し、前記ワイドバンドn型MOSトランジスタの数が前記ワイドバンドp型MOSトランジスタの数よりも多い、請求項1に記載の増幅装置。
【請求項4】
前記ワイドバンド半導体材料は、炭化ケイ素である、請求項1に記載の増幅装置。
【請求項5】
所定の物理量を計測したアナログ信号を出力する計測部と、
前記アナログ信号に対して所定の処理を行う制御部と、を有し、
前記制御部は、前記アナログ信号に応じた差動信号の電圧差を増幅する増幅装置として、請求項1に記載の増幅装置を備える、機器。
【請求項6】
前記物理量は、圧力、温度、流量、水位又は超音波である、請求項5に記載の機器。
【請求項7】
前記アナログ信号の設定周波数よりも低い低周波帯域を減衰させて前記制御部に入力するハイパスフィルタをさらに有する請求項6に記載の機器。
【請求項8】
前記低周波帯域は、前記制御部にて使用される前記アナログ信号の使用周波数帯域よりも低い、請求項8に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、増幅装置及び機器に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラントなどでは、放射線に暴露されている放射線環境において、温度、水位及び放射線量のような様々な物理量を計測することが求められる。しかしながら、物理量を計測するための計測器の電子回路に含まれる半導体素子は、放射線が照射されると、その放射線の電離作用により劣化するため、特に高放射線環境において計測器を安定的に動作させることは難しい。特に、電源回路で一般的に用いられる増幅装置であるオペアンプの放射線劣化による計測器の故障が問題となる。
【0003】
上記の問題に対しては、オペアンプで使用される半導体素子の材料を従来のSi(ケイ素)から放射線耐性に優れるSiC(炭化ケイ素)に変更することが有効である。例えば、特許文献1には、SiCを用いたn型MOSトランジスタ(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Efect Transistor:MOSFET)を差動増幅部に用いたオペアンプが開示されている。
【0004】
しかしながら、SiCを用いた半導体素子であるSiC素子は、Siを用いた半導体素子であるSi素子と比べてノイズの影響を受けやすいという課題がある。
【0005】
これに対して特許文献2には、SiC素子の下部にあるプリント基板内に疑似的な容量を設けることで、外部からのノイズである外来ノイズの増幅装置に対する影響を低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018-042238号公報
【特許文献2】特開2021-28620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本願発明者らは、実験により、引用文献2に記載の技術のように外来ノイズの低減では、SiCを用いた増幅装置の適用先によっては、ノイズ対策が十分でないことを発見した。具体的には、SiC素子自身に起因して発生するフリッカーノイズにより、十分なノイズ低減効果が得られないことがある。
【0008】
また、本願発明者らは、SiCを用いたMOSトランジスタは、従来のSiを用いたMOSトランジスタとは異なるノイズ特性を有していることも発見した。具体的には、本願発明者らは、Siを用いたMOSトランジスタでは、ノイズは、常にn型MOSトランジスタよりもp型MOSトランジスタの方が低いが、SiCを用いたMOSトランジスタでは、ドレイン電流に応じて、ノイズの大きさがn型MOSトランジスタとp型MOSトランジスタとの間で逆転することを発見した。このため、特許文献1に記載の技術のように、SiCを用いたn型MOSトランジスタを差動増幅部に用いると、ドレイン電流によってはノイズが大きくなり、十分なノイズ低減効果が得られないことがある
【0009】
本発明の目的は、耐放射線性を向上させつつ、ノイズの低減化を図ることが可能な増幅装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様に従う増幅装置は、差動信号に含まれる各入力信号の電圧差を増幅する差動増幅部を有する増幅装置であって、前記差動増幅部は、差動信号に含まれる各入力信号が入力される複数のMOSトランジスタを有し、前記MOSトランジスタは、チャネルをケイ素よりもバンドギャップが大きいワイドバンド半導体材料で形成したn型MOSトランジスタであり、前記n型MOSトランジスタのドレイン電流は、当該n型MOSトランジスタのノイズ密度とドレイン電流との関係を表す関数とチャネルを前記ワイドバンド半導体材料で形成したp型MOSトランジスタのノイズ密度とドレイン電流との関係を表す関数との交点における前記ドレイン電流の値である基準値よりも低い。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、耐放射線性を向上させつつ、ノイズの低減化を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の第1の実施形態に係る増幅装置を示す構成図である。
【
図3】SiC-MOSトランジスタのノイズ特性を示す図である。
【
図4】本開示の第1の実施形態に係る増幅装置のより詳細な構成を示す構成図である。
【
図5】本開示の第2の実施形態に係る応用機器を示す構成図である。
【
図6】本開示の第3の実施形態に係る応用機器を示す構成図である。
【
図7】従来の構成による電圧ノイズ密度と周波数の関係の説明図を示す図である。
【
図8】本開示の構成による電圧ノイズ密度と周波数の関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。ただし、本開示は、以下の実施形態に限らず、本開示の技術的思想から逸脱しない範囲で任意に変形することができる。また、本明細書において、同じ部材には同じ符号を付し、重複する説明を省略することがある。また、図示の内容は、図示の都合上、本開示の趣旨を損なわない範囲で実際の構成から変更することがある。
【0014】
図1は、本開示の第1の実施形態に係る増幅装置を示す構成図である。
【0015】
図1に示す増幅装置100は、差動信号に含まれる1対の入力信号の電圧差を増幅して出力信号として出力するオペアンプである。増幅装置100は、差動信号が入力される2つの入力端子である非反転入力端子IN+及び反転入力端子IN-と、出力信号を出力する出力端子Voutとを有する。また、増幅装置100は、増幅装置100の各回路を駆動させるための電源電圧が入力される電源入力端子Vss及びVddを有する。
【0016】
また、増幅装置100は、差動信号に含まれる1対の入力信号の電圧差を増幅する差動増幅部200を備える。差動増幅部200は、チャネルをSiCで形成したn型MOSトランジスタであるSiC-nMOS1及び2のペアで構成される
【0017】
なお、従来からオペアンプのような増幅装置では、MOSトランジスタなどの半導体素子が使用されている。この半導体素子の絶縁層に放射線が照射されると、コンプトン効果により電子-正孔対が生成され、それにより、絶縁層及び半導体との界面に固定電荷及び界面準位が形成されてしまう。この場合、半導体素子のしきい値電圧の変動が発生し、半導体素子の特性が劣化してしまう。
【0018】
これに対して本実施形態の増幅装置100では、チャネルを形成する半導体材料に耐放射線性能に優れるSiCを用いることで、増幅装置100の耐放射線性能が大幅に向上されている。これについて本願発明者らは、実験により、半導体材料にSiを用いた従来の増幅装置が数kGyの放射線環境で故障するのに対して、半導体材料にSiCを用いた本実施形態の増幅装置100はMGyオーダの放射線環境でも正常に動作することを確認している。
【0019】
なお、増幅装置100内の全てのMOSトランジスタにおいて、チャネルをSiCで形成したSiC-MOSトランジスタを使用することが好ましいが、少なくとも、増幅装置100の特性に対する影響の大きい差動増幅部200のMOSトランジスタにおいて、SiC-MOSトランジスタが使用されればよい。また、チャネルを形成する半導体材料は、バンドギャップが従来のSiよりも大きいワイドバンド半導体材料であれば、SiCに限らない。
【0020】
図2は、半導体材料にSiを用いた従来の増幅装置の構成を示す図である。
【0021】
チャネルをSiで形成した従来のMOSトランジスタでは、フリッカーノイズはn型MOSトランジスタよりもp型MOSトランジスタの方が常に低い。このため、
図2に示す従来の増幅装置100aでは、ノイズの少ない安定的な出力を得るために、差動増幅部200aは、チャネルをSiで形成した従来のp型MOSトランジスタ1a及び2aのペアで構成される。
【0022】
これに対して本実施形態の増幅装置100では、上述したようにMOSトランジスタとして、チャネルをSiCで形成したSiC-MOSトランジスタが使用される。SiC-MOSトランジスタのノイズ特性は従来のMOSトランジスタとは異なるため、そのノイズ特性を考慮して、増幅装置100の差動増幅部200は、
図1に示したように、チャネルをSiCで形成したn型MOSトランジスタであるSiC-nMOS1及び2で構成される。
【0023】
図3は、SiC-MOSトランジスタのノイズ特性を示す図であり、より具体的には、チャネルをSiCで形成したワイドバンドn型MOSトランジスタであるSiC-nMOSと、チャネルをSiCで形成したワイドバンドp型MOSトランジスタであるSiC-pMOSとの電流ノイズ密度を示す図である。なお、
図3に示すノイズ特性は、本願発明者らによる実験にて新たに得られた結果である。
【0024】
図3では、縦軸は電流ノイズ密度、横軸はドレイン電流を表す。また、SiC-nMOSにおけるドレイン電流に対する電流ノイズ密度の変化を表す関数である一次関数301と、SiC-pMOSにおけるドレイン電流にたいする電流ノイズ密度の変化を表す関数である一次関数302とが示されている。なお、比較されているSiC-nMOS及びSiC-pMOSは、チャネルの構造以外の点(例えば、面積など)については互いに等しい。
【0025】
一次関数301及び302にて示されているように、SiC-nMOSとSiC-pMOSとでは、ドレイン電流に対する電流ノイズ密度の傾きが異なり、その傾きはSiC-nMOSの方がSiC-pMOSよりも急峻である。このため、一次関数301と一次関数302とには交点303が存在する。電流ノイズ密度の大きさは、ドレイン電流が交点303におけるドレイン電流の値である基準値よりも低い場合、SiC-nMOSがSiC-pMOSよりも低くなり、反対に、ドレイン電流が基準値よりも高い場合、SiC-pMOSがSiC-nMOSよりも低くなる。
【0026】
したがって、ノイズの低減化の観点から、増幅装置100の差動増幅部200は、SiC-nMOSのペア(SiC-nMOS1及び2)で構成し、そのSiC-nMOSのドレイン電流を基準値以下で駆動させることが好ましい。
図3では、増幅装置100の差動増幅部200にて使用するドレイン電流の範囲である使用領域は、基準値以下としている。
【0027】
基準値は、例えば、MOSトランジスタの規模などの設計条件、及び、MOSトランジスタのSiC半導体基板の欠陥密度などに応じて変化するが、例えば、50μA~200μAの範囲に含まれる。
図3の例では、基準値は100μAである。
【0028】
図4は、本実施形態の増幅装置100のより詳細な構成を示す回路図である。
【0029】
図4に示すように増幅装置100は、
図1に示した各端子に加えて、無信号時に増幅装置100に流すアイドリング電流を入力するための制御端子Isetをさらに有する。
【0030】
また、増幅装置100は、SiC-nMOS1~5と、SiC-pMOS6~8と、コンデンサ9とを有する。
【0031】
SiC-nMOS1及び2は、
図1でも示したように差動増幅部200を構成し、SiC-nMOS1のゲート端子は反転入力端子IN-と接続され、SiC-nMOS2のゲート端子は非反転入力端子IN+と接続される。
【0032】
また、SiC-pMOS6及び7は、カレントミラー回路を構成する。SiC-pMOS6及び7のソース端子は電源入力端子Vddと接続され、SiC-pMOS6及び7のゲート端子は互いに接続され、SiC-nMOS1のドレインと接続される。また、SiC-pMOS6のドレインは、SiC-nMOS1のドレインと接続され、SiC-pMOS7のドレインは、SiC-nMOS2のドレインと接続される。
【0033】
また、SiC-pMOS8のゲートは、SiC-nMOS2のドレイン、SiC-pMOS7のドレイン及びコンデンサ9と接続され、SiC-pMOS8のソースは電源入力端子Vddと接続され、SiC-pMOS8のドレインは、コンデンサ9と出力端子Voutと接続される。
【0034】
また、SiC-nMOS3~5のゲートは、制御端子Isetと接続され、SiC-nMOS3のドレインは制御端子Isetと接続され、SiC-nMOS4のドレインはSiC-nMOS1及び2のソースと接続され、SiC-nMOS5のドレインはSiC-pMOS8のドレインと接続される。SiC-nMOS3~5のソースは、電源入力端子Vssと接続される。
【0035】
以上により差動増幅部200がSiC-nMOS1及び2で構成され、かつ、SiC-nMOS(1~5)の数がSiC-pMOS(6~8)の数よりも多い増幅装置100を構成することができる。
【0036】
以上説明したように本実施形態によれば、増幅装置100の差動増幅部200における差動信号に含まれる各入力信号が入力される複数のMOSトランジスタは、チャネルをSiよりもバンドギャップが大きいワイドバンド半導体材料で形成したn型MOSトランジスタであるSiC-nMOS1及び2で構成される。また、SiC-nMOS1及び2のドレイン電流は、SiC-nMOS1及び2のノイズ密度とドレイン電流との関係を表す関数とチャネルを同じワイドバンド半導体材料で形成したp型MOSトランジスタであるSiC-pMOS1のノイズ密度とドレイン電流との関係を表す関数との交点におけるドレイン電流の値である基準値よりも低い。
【0037】
したがって、フリッカーノイズの影響が最も大きい差動増幅部200を、従来のSiよりも耐放射線性が高いワイドバンド半導体材料でチャネルを形成したSiC-nMOS1及び2で構成し、かつ、フリッカーノイズの低いドレイン電流で駆動することが可能となる。このため、耐放射線性を向上させつつ、ノイズの低減化を図ることが可能となる。
【0038】
また、本実施形態では、増幅装置100に含まれるSiC-nMOSの数は、増幅装置100に含まれるSiC-pMOSの数よりも多い。したがって、フリッカーノイズをより低減化することが可能となる。
【0039】
図5は、本開示の第2の実施形態に係る応用機器を示す構成図である。
【0040】
図5に示す応用機器500は、
図1及び
図4で示した第1の実施形態の増幅装置100を備える機器の一例であり、ここでは、圧力を計測して、その圧力を示す計測信号を出力する圧力計測装置である。
【0041】
応用機器500は、計測部501と、制御部502とを有する。
【0042】
計測部501は、本実施形態では、圧力を計測し、その圧力に応じたアナログ信号を出力する圧力センサである。ただし、計測部501は、圧力センサに限らず、温度、流量、水位又は超音波などの所定の物理量を計測するセンサであればよい。また、ここでは、計測部501は、電源回路を必要するセンシング方式に対応している。
【0043】
制御部502は、計測部501からのアナログ信号に対して所定の処理を行う。より具体的には、制御部502は、
図1に示した増幅装置100を備え、所定の処理は、少なくとも計測部501からのアナログ信号に応じた作動信号を増幅装置100にて増幅する増幅処理を含む。また、所定の処理は、増幅処理を含めば、特に限定されないが、例えば、アナログ信号をデジタル信号の計測信号に変換する処理などである。
【0044】
本実施形態によれば、応用機器500は、増幅装置として
図1に示した増幅装置100を備えるため、応用機器500の耐放射線性を向上させつつ、ノイズの低減化を図ることが可能となる。これにより、計測装置の出力ふらつきが低減し、放射線環境においても正確な計測値を安定して得ることが可能になる。
【0045】
図6は、本開示の第3の実施形態に係る応用機器を示す構成図である。
【0046】
図6に示す応用機器600は、
図5に示した応用機器500と比較して、計測部501と制御部502との間に、ハイパスフィルタ503をさらに備える点で異なる。
【0047】
ハイパスフィルタ503は、計測部501から出力されたアナログ信号における設定周波数よりも低い低周波帯域の信号を減衰させて、設定周波数よりも高い周波数帯域の信号を出力するフィルタである。本実施形態では、ハイパスフィルタ503は、応用機器500で使用するアナログ信号の使用周波数帯域よりの低い低周波帯域の信号を減衰させる。
【0048】
上記構成によれば、低周波数領域で増加するフリッカーノイズを効率的に低減することができるため、放射線環境においても正確な計測値をより安定して提供することができる。
【0049】
図7は、従来の構成による電圧ノイズ密度と周波数の関係の説明図を示す図である。
【0050】
電気回路において生じるノイズは、
図7に示すようにフリッカーノイズとブロードバンドノイズとに大別される。フリッカーノイズは、1/fノイズとも呼ばれ、回路自身に起因して発生するノイズであり、パワーが周波数に反比例する低周波ノイズである。ブロードバンドノイズは、広い範囲の周波数に渡って生じる広帯域ノイズである。
【0051】
本実施形態の応用機器600である圧力計測装置のように、変動が比較的少ない物理量を計測する装置では、特に低周波ノイズであるフリッカーノイズの影響を受けやすいため、正確で安定な計測値を得るためには、フリッカーノイズの低減が必要となる。
【0052】
図8は、本実施形態の構成における電圧ノイズ密度と周波数の関係を示す説明図である。
【0053】
本実施形態では、応用機器600における制御部502に含まれる増幅装置100の差動増幅部200には、SiC-nMOS1及び2が使用され、そのSiC-nMOS1及び2のドレイン電流が基準値以下で駆動されることにより、フリッカーノイズを全体的に低減させている。さらに、ハイパスフィルタ503により、応用機器600の使用周波数帯域よりも低い低周波帯域の信号を減衰させることで、ノイズのより小さい安定した出力が実現されている。
【0054】
以上説明したように本実施形態では、アナログ信号の低周波帯域を減衰させるハイパスフィルタ503が設けられているため、ノイズをより低減化することが可能となる。
【0055】
上述した本開示の実施形態は、本開示の説明のための例示であり、本開示の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本開示の範囲を逸脱することなしに、他の様々な態様で本開示を実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
1~5:SiC-nMOS 6~8:SiC-pMOS 9:コンデンサ 100:増幅装置 200:差動増幅部 500、600:応用機器 501:計測部 502:制御部 503:ハイパスフィルタ