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特開2023-160646電子回路体、半導体装置および半導体装置の製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160646
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】電子回路体、半導体装置および半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/48 20060101AFI20231026BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20231026BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20231026BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
H01L23/48 P
H01L23/30 B
H01L21/78 Q
H01L23/28 A
H01L23/48 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071138
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000233273
【氏名又は名称】株式会社 日立パワーデバイス
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】長坂 優樹
(72)【発明者】
【氏名】新屋 翔太郎
(72)【発明者】
【氏名】中村 真人
【テーマコード(参考)】
4M109
5F063
【Fターム(参考)】
4M109AA02
4M109BA01
4M109CA21
4M109DA07
4M109DB02
4M109EA02
4M109EA11
5F063AA02
5F063BA17
5F063CA04
5F063CA06
(57)【要約】
【課題】リードフレームに設けられたスリット開口部とはんだとの間にボイドが発生しない電子回路体、半導体装置および半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る電子回路体1は、一面側2aからその裏面となる他面側2bにかけて貫通するスリット開口部9を少なくとも1つ有するリードフレーム2と、スリット開口部9を間に挟んで一面側2aに固定された複数の半導体素子3、4と、半導体素子3、4のそれぞれにはんだ付けされた別個のソースリード5、6と、リードフレーム2に対向する対向面5a、6aを露出させつつ、ソースリード5、6および一面側2aに配置された複数の半導体素子3、4を封止する第1樹脂7と、を備え、他面側2bにおけるスリット開口部9と重なる位置および方向に、スリット開口部9から第1樹脂7が露出する深さの溝部17が、少なくとも一つの側面7aまで連通して形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面側からその裏面となる他面側にかけて貫通するスリット開口部を少なくとも1つ有するリードフレームと、
前記スリット開口部を間に挟んで前記一面側に固定された複数の半導体素子と、
前記複数の半導体素子のそれぞれにはんだ付けされた別個のソースリードと、
前記ソースリードにおける、前記半導体素子に固定されていない前記リードフレームに対向する対向面を露出させつつ、前記ソースリードおよび前記一面側に配置された前記複数の半導体素子を封止する第1樹脂と、
を備え、
前記他面側における前記スリット開口部と重なる位置および方向に、前記スリット開口部から前記第1樹脂が露出する深さの溝部が、少なくとも一つの側面まで連通して形成されている
ことを特徴とする電子回路体。
【請求項2】
請求項1において、
前記溝部が、前記リードフレームの厚さ未満の深さ、かつ前記リードフレームの一部を前記対向面側に屈曲させてなる屈曲部に達しない深さで形成されていることを特徴とする電子回路体。
【請求項3】
請求項1において、
前記溝部が、前記スリット開口部の幅よりも大きい幅で形成されていることを特徴とする電子回路体。
【請求項4】
請求項1に記載の電子回路体と、
前記電子回路体の前記リードフレームと接するようにはんだ付けされた第1外部電極と、
前記第1樹脂から露出した前記ソースリードの対向面と接するようにはんだ付けされた第2外部電極と、
前記第1外部電極にはんだ付けされた前記電子回路体および前記電子回路体にはんだ付けされた前記第2外部電極における前記電子回路体との接続部を封止する第2樹脂と、
を備えることを特徴とする半導体装置。
【請求項5】
一面側からその裏面となる他面側にかけて貫通するスリット開口部を少なくとも1つ有し、かつ前記スリット開口部を間に挟んで前記一面側に固定された複数の半導体素子を有するリードフレームをセットし、前記複数の半導体素子のそれぞれに別個のソースリードをはんだ付けする1次はんだ付け工程と、
前記ソースリードにおける、前記半導体素子に固定されていない前記リードフレームに対向する対向面を露出させつつ、前記ソースリードおよび前記一面側に配置された前記複数の半導体素子を第1樹脂で封止して封止体を得る1次封止工程と、
前記封止体のダイシングを行い、電子回路体を得るダイシング工程と、
を含み、
前記ダイシング工程において、前記他面側における前記スリット開口部と重なる位置および方向に、前記スリット開口部から前記第1樹脂が露出する深さの溝部を、前記電子回路体の少なくとも1つの側面まで連通するように形成する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記ダイシング工程後、
得られた前記電子回路体の前記リードフレームと接するように第1外部電極をはんだ付けするとともに、前記第1樹脂から露出した前記ソースリードの対向面と接するように第2外部電極をはんだ付けする2次はんだ付け工程と、
前記第1外部電極にはんだ付けされた前記電子回路体および前記電子回路体にはんだ付けされた前記第2外部電極における前記電子回路体との接続部を第2樹脂で封止して半導体装置を得る2次封止工程と、
を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記ダイシング工程と前記2次はんだ付け工程との間に、
前記電子回路体を加熱して前記第1樹脂からガスを発生させてガス抜きを行うガス抜き工程を含むことを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項8】
請求項5において、
前記溝部が、前記リードフレームの厚さ未満の深さ、かつ前記リードフレームの一部を前記対向面側に屈曲させてなる屈曲部に達しない深さで形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項9】
請求項5において、
前記溝部が、前記スリット開口部の幅よりも大きい幅で形成されることを特徴とする半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子回路体、半導体装置および半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の背景技術として、特許文献1がある。この文献には、第1電極面部を有する第1外部電極と、第2電極面部を有する第2外部電極と、電子回路体と、を備えた半導体装置が記載されている。この半導体装置は、前記第1外部電極と前記第2外部電極との間に前記電子回路体を有している。そして、この半導体装置において、前記第1電極面部は、前記電子回路体の第1の面に接続され、前記第2電極面部は、前記電子回路体の第2の面に接続されている。さらに、この電子回路体は、スイッチング素子を有するトランジスタ回路チップと、前記スイッチング素子を制御する制御回路チップと、前記トランジスタ回路チップの第一の主面に接した第1内部電極と、前記トランジスタ回路チップの第二の主面に接した第2内部電極と、を含んで一体的に樹脂で覆われて構成されている。そして、この半導体装置は、前記第1内部電極および前記第2内部電極のいずれか一方と、前記第1外部電極とが、接続され、前記第2内部電極および前記第1内部電極のいずれか他方と、前記第2外部電極とが、接続されている。
この半導体装置は、電子回路体を上下反転して用いることで、正座と逆座とを使い分けることができる。また、この半導体装置は、そのような態様を低コストで、複雑な製造工程を必要とせず、簡便に実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-98276号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、正座と逆座とを使い分けることができる特許文献1に記載の発明を、複数の半導体素子を備えた電子回路体およびこれを用いた半導体装置に適用してみた。その結果、複数の半導体素子をリードフレームに固定させたり、樹脂で封止したりする際に半導体素子がずれて相互に接触するなどの好ましくない事態が発生することが確認された。
【0005】
本発明者らは、これを解決するため鋭意研究したところ、図16図17A図17Bおよび図18に示す態様とすることで解消できることを見出した。なお、図16は、一試作例に係る電子回路体101の構成を示す概略構成図である。図17Aは、一試作例に係るリードフレーム102の構成を示す概略平面図である。図17Bは、図17Aのxviib方向から見た概略側面図である。図18は、一試作例に係る電子回路体101の内部構成、すなわち、リードフレーム102に固定される半導体素子103、104などの配置例を示す概略図である。
【0006】
具体的には、一試作例に係る電子回路体101は、図16に示すように、リードフレーム102と、複数の半導体素子103、104と、ソースリード105、106と、第1樹脂107と、を備えている。リードフレーム102は、図16図17A図17Bに示すように、一面側102aからその裏面となる他面側102bにかけて貫通するスリット開口部109を少なくとも1つ有している。複数の半導体素子103、104は、スリット開口部109を間に挟んで一面側102aに1次はんだ110ではんだ付けされている。ソースリード105、106は、複数の半導体素子103、104のそれぞれに、別個に1次はんだ110ではんだ付けされている。第1樹脂107は、ソースリード105における、半導体素子103に固定されていないリードフレーム102に対向する対向面105aを露出させつつ、ソースリード105および一面側102aに配置された半導体素子103を封止している。また、第1樹脂107は、ソースリード106における、半導体素子104に固定されていないリードフレーム102に対向する対向面106aを露出させつつ、ソースリード106および一面側102aに配置された半導体素子104を封止している。
【0007】
また、図17A図17B図18に示すように、電子回路体101の内部は、リードフレーム102がパターンにより概ね2つのパートに分けられている。すなわち、半導体素子103、104が固定されている第1パート102Cと、制御ICチップ111およびコンデンサ112が固定されている第2パート102Dとに分けられている。第2パート102Dは、図17Bに示すように、第1パート102Cよりも電子回路体101の内側に位置するように、一段内側にスライド(屈曲)させて設けられている。そのため、リードフレーム102の第2パート102Dは第1樹脂107に覆われており、電子回路体101の表面に露出しない。リードフレーム102の第1パート102Cのみ電子回路体101の表面に露出し、第1外部電極113(図19A図19B参照)と接続できるようになっている。また、ソースリード105、106の対向面105a、106aが電子回路体101の表面に露出しているので、当該対向面105a、106aによって第2外部電極114(図19A図19B参照)と接続できるようになっている。図19A図19Bに示すように、リードフレーム102と第1外部電極113とは、2次はんだ115ではんだ付けされる。ソースリード105、106の対向面105a、106a(図16参照)と第2外部電極114も同様に2次はんだ115ではんだ付けされる。そして、図19A図19Bに示すように、半導体装置200は、第1外部電極113にはんだ付けされた電子回路体101および電子回路体101にはんだ付けされた第2外部電極114における電子回路体101との接続部を第2樹脂119で封止して形成されている。なお、図19Aは、電子回路体101を用いた一試作例に係る半導体装置200の構成を示す概略断面図である。図19Bは、図19A中のxixb部の拡大図である。
【0008】
しかしながら、電子回路体101は、リードフレーム102に前記したスリット開口部109を設けているので、電子回路体101と第1外部電極113と第2外部電極114とを2次はんだ115ではんだ付けする際に第1樹脂107の未硬化成分や熱分解成分が気化してガスが生じて当該スリット開口部109から排出され、2次はんだ115にボイド116(図19A図19B参照)が発生することがあった。このようにして発生したボイド116がリードフレーム102の面上に存在すると、電気的特性や製品の耐久性に悪影響が出る可能性がある。2次はんだ115ではんだ付けする前に予め空焼きを行い、第1樹脂107の未硬化成分や熱分解成分を気化させてボイド116の発生を予防する対策を行ったが、完全とは言えなかった。また、空焼きを行うと第1樹脂107の分解(劣化)が進むという問題もある。
【0009】
本発明は前記状況に鑑みてなされたものである。本発明の課題は、リードフレームに設けられたスリット開口部とはんだとの間にボイドが発生しない電子回路体、半導体装置および半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決した本発明に係る電子回路体は、一面側からその裏面となる他面側にかけて貫通するスリット開口部を少なくとも1つ有するリードフレームと、前記スリット開口部を間に挟んで前記一面側に固定された複数の半導体素子と、前記複数の半導体素子のそれぞれにはんだ付けされた別個のソースリードと、前記ソースリードにおける、前記半導体素子に固定されていない前記リードフレームに対向する対向面を露出させつつ、前記ソースリードおよび前記一面側に配置された前記複数の半導体素子を封止する第1樹脂と、を備え、前記他面側における前記スリット開口部と重なる位置および方向に、前記スリット開口部から前記第1樹脂が露出する深さの溝部が、少なくとも一つの側面まで連通して形成されている、という構成を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、リードフレームに設けられたスリット開口部とはんだとの間にボイドが発生しない電子回路体、半導体装置および半導体装置の製造方法を提供できる。
前述した以外の課題、構成および効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る電子回路体1の構成を示す外観斜視図である。
図2図1のii-ii線断面図である。
図3A】本実施形態に係るリードフレーム2の構成を示す概略平面図である。
図3B図3Aのiiib方向から見た概略側面図である。
図4】本実施形態に係る電子回路体1の内部構成、すなわち、リードフレーム2に固定される半導体素子3、4などの配置例を示す概略図である。図4は、リードフレーム2を半導体素子3、4などが配置されている側から見た様子を示している。
図5】本実施形態に係る電子回路体1を図1のv方向から見た概略図である。
図6図5のvi部拡大図である。
図7図5のvii-vii線断面図である。
図8図7のviii部拡大図である。
図9】本実施形態に係る電子回路体1と、はんだ付けを行う2次はんだ15と、を示す外観斜視図である。
図10図9のx-x線断面図である。
図11】電子回路体1を用いた本実施形態に係る半導体装置20の構成を示す概略断面図である。
図12】本実施形態に係る半導体装置20の製造方法の内容を示すフロー図である。
図13A】ダイシング工程S3で封止体21のダイシングを行い、電子回路体1を得る様子を示す説明図である。図13Aは、封止体21の平面図である。
図13B】ダイシング工程S3で封止体21のダイシングを行い、電子回路体1を得る様子を示す説明図である。図13Bは、封止体21の側面図(正面図)である。
図13C】ダイシング工程S3で封止体21のダイシングを行い、電子回路体1を得る様子を示す説明図である。図13Cは、溝部17の形成とダイシングとを行った後の様子を示した説明図である。
図13D】ダイシング工程S3で封止体21のダイシングを行い、電子回路体1を得る様子を示す説明図である。図13Dは、図13Cのxiiid部拡大図である。
図14A】ダイシング工程S3で封止体21のダイシングを行い、電子回路体1を得る様子の他の一例を示す説明図(平面図)である。
図14B】ダイシング工程S3で封止体21のダイシングを行い、電子回路体1を得る様子の他の一例を示す説明図(側面図)である。
図15A】ダイシング工程S3で封止体21のダイシングを行い、電子回路体1を得る様子のさらなる他の一例を示す説明図(平面図)である。
図15B】ダイシング工程S3で封止体21のダイシングを行い、電子回路体1を得る様子のさらなる他の一例を示す説明図(側面図)である。
図16】一試作例に係る電子回路体101の構成を示す概略構成図である。
図17A】一試作例に係るリードフレーム102の構成を示す概略平面図である。
図17B図17Aのxviib方向から見た概略側面図である。
図18】一試作例に係る電子回路体101の内部構成、すなわち、リードフレーム102に固定される半導体素子103、104などの配置例を示す概略図である。
図19A】電子回路体101を用いた一試作例に係る半導体装置200の構成を示す概略断面図である。
図19B図19A中のxixb部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を参照して、本発明に係る電子回路体、半導体装置および半導体装置の製造方法の一実施形態について詳細に説明する。以下の説明において同一の構成要素については同一の符号を付して表し、重複する説明は省略することがある。
【0014】
〔電子回路体1〕
参照する図面において、図1は、本実施形態に係る電子回路体1の構成を示す外観斜視図である。なお、図1は、本実施形態に係る電子回路体1を溝部17が形成されている側から見た様子を示している。図2は、図1のii-ii線断面図である。
【0015】
図1に示すように、電子回路体1は、リードフレーム2と、リードフレーム2を覆う第1樹脂7とを含んで形成されている。また、電子回路体1は、第1樹脂7からリードフレーム2の一部が露出している面(他面側2b)において、スリット開口部9およびこのスリット開口部9と重なる位置および方向に、スリット開口部9から第1樹脂7が露出する深さの溝部17が、少なくとも一つの側面7aまで連通して形成されている。
【0016】
図2の断面図に示すように、電子回路体1は、リードフレーム2と、複数の半導体素子3、4と、ソースリード5、6と、第1樹脂7と、を備えている。
リードフレーム2は、一面側2aからその裏面となる他面側2bにかけて貫通するスリット開口部9を少なくとも1つ有している。
複数の半導体素子3、4は、スリット開口部9を間に挟んで、リードフレーム2の一面側2aに1次はんだ10ではんだ付けされている。
ソースリード5、6は、複数の半導体素子3、4のそれぞれに、別個に1次はんだ10ではんだ付けされている。
第1樹脂7は、ソースリード5において、半導体素子3に固定されていないリードフレーム2に対向する対向面5aを表面に露出させつつ、ソースリード5およびリードフレーム2の一面側2aに配置された半導体素子3を封止している。
また、第1樹脂7は、ソースリード6において、半導体素子4に固定されていないリードフレーム2に対向する対向面6aを表面に露出させつつ、ソースリード6およびリードフレーム2の一面側2aに配置された半導体素子4を封止している。
【0017】
ここで、図3Aは、本実施形態に係るリードフレーム2の構成を示す概略平面図である。図3Bは、図3Aのiiib方向から見た概略側面図である。図4は、本実施形態に係る電子回路体1の内部構成、すなわち、リードフレーム2に固定される半導体素子3、4などの配置例を示す概略図である。なお、図4は、図2のiv方向から見た概略図である(ただし、図4においては第1樹脂7の図示を省略している)。つまり、図4は、リードフレーム2を半導体素子3、4などが配置されている側から見た様子を示している。
【0018】
図3A図3B図4に示すように、電子回路体1の内部は、リードフレーム2がパターンにより概ね2つのパートに分けられている。すなわち、半導体素子3、4が固定されている第1パート2Cと、制御ICチップ11およびコンデンサ12が固定されている第2パート2Dとに分けられている。この第2パート2Dは、第1パート2Cよりも電子回路体1の内側に位置するように、一段内側にスライド(屈曲)させて設けられている。そのため、図1および図2に示すように、リードフレーム2の第2パート2Dは第1樹脂7に覆われており、電子回路体1の表面に露出しない。リードフレーム2の第1パート2Cのみ電子回路体1の表面に露出し、第1外部電極13(図11参照)と接続できるようになっている。また、ソースリード5、6の対向面5a、6aが電子回路体1の表面に露出しているので、当該対向面5a、6aによって第2外部電極14(図11参照)と接続できるようになっている。
【0019】
ここで、図5は、本実施形態に係る電子回路体1を図1のv方向から見た概略図である。図6は、図5のvi部拡大図である。図7は、図5のvii-vii線断面図である。図8は、図7のviii部拡大図である。
【0020】
前記した溝部17は、ダイシング加工時に、図5図8に示す溝部加工ライン17aで溝加工を行うことにより形成できる。このとき、溝部17は、図7および図8に示すように、リードフレーム2の厚さ未満の深さ、かつリードフレーム2の一部を対向面5a、6a側に屈曲させてなる屈曲部2eに達しない深さで形成することが好ましい。屈曲部2eに達しない深さとは、図6図7Bに示すように、リードフレーム2の一部を対向面5a、6a側(図2参照)に屈曲させてなる部分のうち、リードフレーム2の他面側2bの面が露出しない深さをいう。このようにすると、溝部17が形成されている他面側2bを2次はんだ15(図11参照)で固定しても、リードフレーム2の屈曲部2eに2次はんだ15がつかないので、ショート等することがない。また、十分な深さの溝部17とし得るので、2次はんだ15を行っても溝部17が埋もれ難い。そのため、電子回路体1と第1外部電極13と第2外部電極14とを2次はんだ15ではんだ付けする際に第1樹脂7の未硬化成分や熱分解成分が気化してガスが生じても、当該スリット開口部9、溝部17および側面7aを経由して外部に排出される。具体的には、図1において太い矢印で示すガス抜き方向18に前記ガスが排出される。そのため、2次はんだ15にボイド116(図19A図19B参照)が発生しない。
【0021】
なお、溝部17の深さが深すぎると、リードフレーム2のパターンを切断してしまうおそれがある。その一方で、溝部17の深さが浅すぎると、2次はんだ15で溝部17が埋もれてしまうおそれがある。この場合、ガスを電子回路体1の外部に排出できなくなり、ボイド116が発生するおそれがある。溝部17の埋もれ易さは2次はんだ15で使用するはんだの種類や溝部17の形状(幅寸法)などによって変わり得る。従って、本実施形態における溝部17の深さは、事前に試験を行うなどしてボイド116が発生せず、また、リードフレーム2のパターンを切断しないこと(リードフレーム2の厚さが若干残ること)を確認して、適宜設定することが好ましい。
【0022】
また、溝部17は、スリット開口部9の幅よりも大きい幅寸法で形成されていることが好ましい。このようにすると、溝部17の幅が広いので、2次はんだ15のはんだ付けで第1樹脂107の未硬化成分や熱分解成分が気化してガスが生じた際に、当該ガスをスリット開口部9からよりスムーズに排出することができる。
【0023】
以上に説明した溝部17を電子回路体1のリードフレーム2の他面側2bに形成すると、電子回路体1を用いて半導体装置20(図11参照)を製造する際に2次はんだ15ではんだ付けした場合、図9および図10に示す状態となる。なお、図9は、本実施形態に係る電子回路体1と、はんだ付けを行う2次はんだ15と、を示す外観斜視図である。この図9は、図1と同様に、本実施形態に係る電子回路体1を溝部17が形成されている側から見た様子を示している。図10は、図9のx-x線断面図である。
【0024】
図9および図10に示すように、電子回路体1の溝部17が形成されている面と、その対向面に2次はんだ15が配置される。電子回路体1には前述した溝部17が形成されているので、図10に示すように、2次はんだ15の一部は溝部17内に侵入し得るものの、完全に塞がれることはなく、ガス抜き方向18(図1参照)に前記ガスが排出される。従って、電子回路体1によればリードフレーム2に設けられたスリット開口部9とはんだ(2次はんだ15)との間にボイド116(図19A図19B参照)が発生しない。
【0025】
〔半導体装置20〕
次に、図11を参照して、本実施形態に係る半導体装置20について説明する。図11は、電子回路体1を用いた本実施形態に係る半導体装置20の構成を示す概略断面図である。図11に示すように、半導体装置20は、電子回路体1と、電子回路体1のリードフレーム2と接続される第1外部電極13と、電子回路体1のソースリード5、6の対向面5a、6a(図2参照)と接続される第2外部電極14と、第2樹脂19と、を備える。
リードフレーム2と第1外部電極13とは、2次はんだ15ではんだ付けされる。ソースリード5、6の対向面5a、6aと第2外部電極14も同様に2次はんだ15ではんだ付けされる。そして、図11に示すように、半導体装置20は、第1外部電極13にはんだ付けされた電子回路体1および電子回路体1にはんだ付けされた第2外部電極14における電子回路体1との接続部を第2樹脂19で封止して形成されている。半導体装置20は、第2樹脂19で封止する前に行う2次はんだ15によるはんだ付け時に生じたガスが溝部17を通じて外部に排出されているので、リードフレーム2と2次はんだ15との間にボイド116(図19A図19B参照)が発生しておらず、良好な状態となっている。
【0026】
以上に説明した本実施形態に係る電子回路体1および半導体装置20を構成する各要素は、一般的な電子回路体や半導体装置に用いられているものと同様のものを用いることができる。例えば、リードフレーム2、ソースリード5、6、第1外部電極13および第2外部電極14は、導電性を有する金属材料、具体的には、金、銀、銅、白金、アルミニウムまたはこれらのうちのいずれかの金属を主成分とする合金を用いて任意の形状に成形したものを用いることができる。リードフレーム2はエッチング、レーザ加工などで任意のパターンに成形可能である。半導体素子3としては、例えば、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET;Metal Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)チップを用いることができる。また、半導体素子4としては、例えば、ダイオードチップを用いることができる。第1樹脂7および第2樹脂19としては、電気絶縁性を有する合成樹脂、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリアミド合成樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などを用いることができる。
【0027】
〔半導体装置の製造方法〕
次に、図12を参照して、本実施形態に係る半導体装置20の製造方法(以下、「本製造方法」と略記することがある)について説明する。図12は、本実施形態に係る半導体装置20の製造方法の内容を示すフロー図である。
本製造方法は、半導体装置20の製造過程で前述した電子回路体1を製造し、これを用いて最終的に半導体装置20を製造するものである。
【0028】
図12に示すように、本製造方法は、1次はんだ付け工程S1と、1次封止工程S2と、ダイシング工程S3と、2次はんだ付け工程S4と、2次封止工程S5と、を含んでいる。これらの工程はこの順序で行う。
また、本製造方法では、必要に応じて、ダイシング工程S3と2次はんだ付け工程S4との間に、ガス抜き工程S31を含ませることもできる。
以下、これらの工程について説明する。
【0029】
1次はんだ付け工程S1では、一面側2aからその裏面となる他面側2bにかけて貫通するスリット開口部9を少なくとも1つ有し、かつスリット開口部9を間に挟んで一面側2aに固定された複数の半導体素子3、4を有するリードフレーム2をはんだ付け装置の所定の位置にセットし、複数の半導体素子3、4のそれぞれに別個のソースリード5、6を1次はんだ10ではんだ付けする。制御ICチップ11およびコンデンサ12のリードフレーム2への固定や各構成要素間のワイヤボンディングは、1次はんだ付け工程S1後に行うことが好ましいが、これに限定されない。
【0030】
次の1次封止工程S2では、ソースリード5、6における、半導体素子3、4に固定されていないリードフレーム2に対向する対向面5aを露出させつつ、ソースリード5、6および一面側2aに配置された複数の半導体素子3、4を第1樹脂7で封止し、封止体21(図13A図14A図15Aなど参照)を得る。封止体21は、1枚のリードフレーム2の所定の位置に半導体素子3、4が多数固定されたものを第1樹脂7で封止したものである。1次封止工程S2は、流動性樹脂を型のゲート(供給口)から封止体21の周囲に供給した後に硬化させるトランスファー方式で行うことができるが、封止体21(電子回路体1)が薄型である場合は、樹脂シートを用いたモールディング方式で行うこともできる。
ここまでの操作、つまり、次に行うダイシング工程S3の前までの操作は、一般的な半導体製造方法と同様にして行うことができる。
【0031】
次のダイシング工程S3では、封止体21のダイシングを行い、前述した本実施形態に係る電子回路体1を得る。
本実施形態では、このダイシング工程S3において、リードフレーム2の他面側2bにおけるスリット開口部9と重なる位置および方向に、スリット開口部9から第1樹脂7が露出する深さの溝部17を、電子回路体1の少なくとも1つの側面7a(図1参照)まで連通するように形成する。
【0032】
ここで、図13A図13B図13C図13Dは、ダイシング工程S3で封止体21のダイシングを行い、電子回路体1を得る様子を示す説明図である。図13Aは、封止体21の平面図であり、図13Bは、封止体21の側面図(正面図)である。図13Cは、溝部17の形成とダイシングとを行った後の様子を示した説明図であり、図13Dは、図13Cのxiiid部拡大図である。図13A図13Dは、ダイシングテープ22に封止体21を貼り付けて、ダイヤモンドソーなどのダイシングソー(図示せず)で溝部17の形成およびダイシングを行う様子を経時的に示している。
【0033】
溝部17の形成は、ダイシング工程S3において、図13A図13B中の破線で示すダイシングライン17bで電子回路体1を封止体21から切り離すときに、封止体21における各スリット開口部9と重なる位置および方向に設定された、同図中の点線で示す溝部加工ライン17aで前述の溝部17をひと続きで形成するとよい。なお、溝部加工ライン17aに沿った溝部17の形成と、ダイシングライン17bに沿ったダイシングとは、どちらを先に行ってもよい。
【0034】
なお、ダイシング工程S3におけるダイシングは前記した態様に限定されない。
例えば、図14Aおよび図14Bは、ダイシング工程S3で封止体21のダイシングを行い、電子回路体1を得る様子の他の一例を示す説明図である。図14Aは封止体21の平面図であり、図14Bはその側面図である。
図14Aおよび図14Bに示す態様では、ダイシングテープ22に替えて吸着テーブル23を使用し、図14B中の矢印方向に真空引きを行って封止体21を固定し、溝部加工ライン17aに沿った溝部17の形成と、ダイシングライン17bに沿ったダイシングとを行う。本製造方法では、このような態様でも好適に封止体21への溝部17の形成とダイシングとを行うことができる。この態様の場合、ダイシングテープ22を使用しないのでランニングコストの低減を図ることができる。
【0035】
また、例えば、図15Aおよび図15Bは、ダイシング工程S3で封止体21のダイシングを行い、電子回路体1を得る様子のさらなる他の一例を示す説明図である。図15Aは封止体21の平面図であり、図15Bはその側面図である。
図15Aおよび図15Bに示す態様では、ダイシングソーに替えて、レーザ(図示せず)で封止体21への溝部加工ライン17aに沿った溝部17の形成と、ダイシングライン17bに沿ったダイシングとを行う。本製造方法では、このような態様でも好適に封止体21への溝部17の形成とダイシングとを行うことができる。この態様の場合、レーザを用いるので、より細緻な溝部17の溝加工が行える。そのため、小型の電子回路体1および半導体装置20を好適に製造できる。
【0036】
本製造方法においては、溝部17は、リードフレーム2の厚さ未満の深さ、かつリードフレーム2の一部を対向面5a、6a側に屈曲させてなる屈曲部2eに達しない深さで形成することが好ましい。
また、本製造方法においては、溝部17は、スリット開口部9の幅よりも大きい幅で形成することが好ましい。
【0037】
そして、次の2次はんだ付け工程S4では、得られた電子回路体1のリードフレーム2と接するように第1外部電極13を2次はんだ15ではんだ付けするとともに、第1樹脂7から露出したソースリード5、6の対向面5a、6aと接するように第2外部電極14を2次はんだ15ではんだ付けする。なお、このはんだ付けの際に第1樹脂7の未硬化成分や熱分解成分が気化してガスが生じ得るが、前記したように、電子回路体1にはスリット開口部9と重なる位置および方向に溝部17が形成されているので、当該ガスはこの溝部17を介して外部に排出される。従って、ボイド116(図19A図19B参照)は発生しない。
【0038】
次の2次封止工程S5では、第1外部電極13に2次はんだ15ではんだ付けされた電子回路体1および電子回路体1に2次はんだ15ではんだ付けされた第2外部電極14における電子回路体1との接続部を第2樹脂19で封止して、前述した本実施形態に係る半導体装置20を得る。2次封止工程S5は、1次封止工程S2と同様、流動性樹脂を型のゲート(供給口)から電子回路体1の周囲に供給した後に硬化させるトランスファー方式で行うことができるが、電子回路体1(半導体装置20)が薄型である場合は、樹脂シートを用いたモールディング方式で行うこともできる。
【0039】
また、本実施形態においては、前述したように、ダイシング工程S3と2次はんだ付け工程S4との間に、ガス抜き工程S31を含んでいてもよい。ガス抜き工程S31は任意に行うことのできる工程である。
ガス抜き工程S31では、電子回路体1を加熱して第1樹脂7からガスを発生させてガス抜きを行う。ガス抜き工程S31は、例えば、第1樹脂7からのガスの発生量が多い場合であって、2次はんだ付け工程S4を行う前に、予防的にガス抜きを行った方が好ましい場合に実施するとよい。このようにすると、ボイドの発生がより確実に防止される。
【0040】
以上に説明した本実施形態に係る電子回路体1、半導体装置20および半導体装置20の製造方法によれば、電子回路体1に前述した溝部17が形成されているので、2次はんだ付けを行った際にガス抜き方向18(図1参照)に前記ガスを排出できる。従って、本実施形態に係る電子回路体1、半導体装置20および半導体装置20の製造方法によれば、リードフレーム2に設けられたスリット開口部9とはんだ(2次はんだ15)との間にボイド116(図19A図19B参照)が発生しない。
【0041】
以上、本発明に係る電子回路体、半導体装置および半導体装置の製造方法について実施形態により詳細に説明したが、本発明の主旨はこれに限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 電子回路体
2 リードフレーム
2a 一面側
2b 他面側
2e 屈曲部
2C 第1パート
2D 第2パート
3 半導体素子
4 半導体素子
5 ソースリード
5a 対向面
6 ソースリード
6a 対向面
7 第1樹脂
7a 側面
9 スリット開口部
10 1次はんだ
11 制御ICチップ
12 コンデンサ
13 第1外部電極
14 第2外部電極
15 2次はんだ
17 溝部
17a 溝部加工ライン
17b ダイシングライン
18 ガス抜き方向
19 第2樹脂
20 半導体装置
21 封止体
22 ダイシングテープ
23 吸着テーブル
S1 1次はんだ付け工程
S2 1次封止工程
S3 ダイシング工程
S31 ガス抜き工程
S4 2次はんだ付け工程
S5 2次封止工程
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17A
図17B
図18
図19A
図19B