(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160656
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】RFIDインレイ、構造体及び構造体の製造方法
(51)【国際特許分類】
G06K 19/077 20060101AFI20231026BHJP
B29C 45/14 20060101ALI20231026BHJP
B29C 33/12 20060101ALI20231026BHJP
B29C 49/20 20060101ALI20231026BHJP
B29C 33/14 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
G06K19/077 148
G06K19/077 280
B29C45/14
B29C33/12
B29C49/20
B29C33/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071153
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】品田 英俊
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
4F208
【Fターム(参考)】
4F202AA24
4F202AD03
4F202AD05
4F202AD08
4F202AD16
4F202AD17
4F202AH41
4F202CA11
4F202CA15
4F202CB01
4F202CB12
4F202CQ01
4F206AA24
4F206AD03
4F206AD05
4F206AD08
4F206AD16
4F206AD17
4F206AH33
4F206AH55
4F206JA07
4F206JB12
4F206JB20
4F206JL02
4F206JQ81
4F208AA24
4F208AD03
4F208AD05
4F208AD08
4F208AD16
4F208AD17
4F208AH33
4F208AH55
4F208LA09
4F208LB01
4F208LB12
(57)【要約】
【課題】インモールド成形において、基材の熱膨張率とアンテナの熱膨張率との違いによって生じるRFIDインレイの劣化や変形を防止し、RFIDインレイの通信性能の低下を防止すること。
【解決手段】RFIDインレイは、表面に複数の窪みを有する基材と、導電性材料により形成されており基材の表面及び複数の窪みの内面に沿うように設けられたアンテナと、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に複数の窪みを有する基材と、
導電性材料により形成されており前記基材の表面及び複数の前記窪みの内面に沿うように設けられたアンテナと、
を備えた、RFIDインレイ。
【請求項2】
請求項1に記載のRFIDインレイであって、
前記アンテナが複数の前記窪みに向けて突出して形成された、
RFIDインレイ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のRFIDインレイであって、
前記アンテナの大きさは、温度差における前記基材の膨張量を要求設計値に加算した大きさに形成されており、前記アンテナは、前記アンテナの大きさが前記要求設計値になるように、前記基材に形成された前記窪みに沿って前記基材に貼り付けられている、
RFIDインレイ。
【請求項4】
請求項1に記載のRFIDインレイであって、
前記基材が織物構造を有する、
RFIDインレイ。
【請求項5】
請求項1に記載のRFIDインレイであって、
前記基材が編み目状構造を有する、
RFIDインレイ。
【請求項6】
請求項5に記載のRFIDインレイであって、
前記基材は、ポリエチレンテレフタレートの編み目状シートである、
RFIDインレイ。
【請求項7】
請求項1に記載のRFIDインレイであって、
前記窪みは、前記基材に形成された開口である、
RFIDインレイ。
【請求項8】
請求項7に記載のRFIDインレイであって、
前記基材が多孔質材料である、
RFIDインレイ。
【請求項9】
請求項1に記載のRFIDインレイであって、
前記アンテナは、
ICチップが接続されるICチップ接続部を有するループ部と、
前記ループ部に一方の端部が接続され、前記ループ部から線対称に延びる一対のメアンダと、
前記一対のメアンダにそれぞれ接続されたキャパシタハットと、を備えた、
RFIDインレイ。
【請求項10】
請求項1に記載のRFIDインレイであって、
前記アンテナは、導電性インキにより前記基材に印刷された、
RFIDインレイ。
【請求項11】
インモールド成形によりRFIDインレイと一体的に形成された構造体であって、
前記RFIDインレイは、
表面に複数の窪みを有する基材と、
導電性材料により形成されており前記基材の表面及び複数の前記窪みの内面に沿うように設けられたアンテナと、
を備える、
構造体。
【請求項12】
請求項11に記載の構造体であって、
前記構造体は、容器である、
構造体。
【請求項13】
請求項12に記載の構造体であって、
前記アンテナが前記容器の内側に位置するように形成された、
構造体。
【請求項14】
表面に複数の窪みを有する基材と、導電性材料により形成されており前記基材の表面及び複数の前記窪みの内面に沿うように設けられたアンテナとを備えたRFIDインレイを成形型の内面に配置するRFIDインレイ配置工程と、
溶融された成形用樹脂を前記成形型に供給し、前記RFIDインレイを備えた構造体を成形する成形工程と、
を有する構造体の製造方法。
【請求項15】
請求項14に記載の構造体の製造方法であって、
前記RFIDインレイは、
前記アンテナの大きさを前記成形用樹脂の溶融温度における前記基材の膨張量を要求設計値に加算した大きさに設定され、
前記アンテナが、前記基材に貼り付けられた後の前記アンテナの大きさが前記要求設計値になるように、前記窪みに沿うようにして前記基材に貼り付けられる、
構造体の製造方法。
【請求項16】
請求項14又は15に記載の構造体の製造方法であって、
前記RFIDインレイ配置工程では、前記RFIDインレイにおけるICチップが配置された面を前記成形型の内面に向けて熱可塑性接着剤を介して前記成形型の内面に配置する、
構造体の製造方法。
【請求項17】
請求項14に記載の構造体の製造方法であって、
前記成形工程では、射出成形によって前記構造体を成形する、
構造体の製造方法。
【請求項18】
請求項14に記載の構造体の製造方法であって、
前記成形工程では、ブロー成形によって前記構造体を成形する、
構造体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDインレイ、構造体及び構造体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ICチップとアンテナとを備えてなるRFIDインレイを備えたICタグが内蔵されたICタグ付き容器を製造する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、キャビティ内にICタグを配置し、溶融した成形用樹脂をキャビティ内に射出し、その後、成形用樹脂を冷却硬化させるインモールド成形によりICタグ付き容器を製造している。
【0005】
インモールド成形では、溶融温度に達した成形用樹脂が成形型に送られると、成形用樹脂に触れたRFIDインレイの基材が熱膨張を起こすことがある。
【0006】
このとき、基材の熱膨張率とアンテナの熱膨張率との違いによってRFIDインレイの劣化や変形を生じ、RFIDインレイの通信性能を低下させる場合があった。
【0007】
そこで、本発明は、インモールド成形に適用した場合に、基材の熱膨張率とアンテナの熱膨張率との違いによって生じるRFIDインレイの劣化や変形を防止し、RFIDインレイの通信性能の低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様によれば、表面に複数の窪みを有する基材と、導電性材料により形成されており前記基材の表面及び複数の前記窪みの内面に沿うように設けられたアンテナと、を備えた、RFIDインレイが提供される。
【発明の効果】
【0009】
本態様によれば、アンテナが基材の表面に形成された複数の窪みに沿うように形成されているため、インモールド成形時に基材の窪みに沿うように形成されたアンテナの一部分が基材の膨張とともに引き延ばされる。したがって、基材の膨張を許容することができる。
【0010】
これにより、インモールド成形に適用された場合に、基材の熱膨張率とアンテナの熱膨張率との違いによって生じるRFIDインレイの劣化や変形を防止し、RFIDインレイの通信性能の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、第一実施形態に係るRFIDインレイの平面図である。
【
図2】
図2は、
図1のII-II線における断面を拡大して示す断面図である。
【
図3】
図3は、アンテナの基材への配置を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、第二実施形態に係るRFIDインレイを説明する断面図である。
【
図5】
図5は、第三実施形態に係るRFIDインレイを説明する断面図である。
【
図6】
図6は、第四実施形態に係るRFIDインレイを説明する断面図である。
【
図7】
図7は、第五実施形態に係るRFIDインレイを説明する断面図である。
【
図8】
図8は、第六実施形態に係るRFIDインレイを説明する断面図である。
【
図9】
図9は、第七実施形態に係るRFIDインレイを説明する断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係る構造体としての容器を説明する外観図である。
【
図11】
図11は、RFIDインレイ配置工程を説明するための模式図である。
【
図12】
図12は、成形工程の第一ステップを説明するための模式図である。
【
図13】
図13は、成形工程の第二ステップを説明するための模式図である。
【
図14】
図14は、成形工程の第三ステップを説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[RFIDインレイ]
<第一実施形態>
第一実施形態に係るRFIDインレイ1について説明する。RFIDインレイ1は、樹脂材料を用いた構造体に、インモールド成形により一体的に内蔵される。
【0013】
本実施形態において、RFIDインレイとは、非接触通信によって情報を送受するRFID(Radio Frequency Identification)技術に対応したインレイであり、基材にアンテナ及びICチップが配置されたものである。
【0014】
図1は、第一実施形態に係るRFIDインレイ1を説明する外観図である。また、
図2は、
図1のII-II線における断面図である。
【0015】
RFIDインレイ1は、基材10と、基材10の一方の表面10aに所定のパターンとして形成されたアンテナ20と、アンテナ20に接続されたICチップ30とを備える。
【0016】
図2に示されるように、第一実施形態において、基材10は、表面10aからRFIDインレイ1の厚み方向(Z方向)に向けて凹んだ複数の窪み11を有する。窪み11による凹みは、緩やかに形成されていることが好ましく、表面10aと窪み11による凹部分との高低差が一定の範囲内に収まることが好ましい。
【0017】
第一実施形態における窪み11は、基材10の表面10aに、エンボス加工或いはインプリント加工等の表面処理を施すことにより形成することができる。
【0018】
基材10として適用可能な材料としては、厚紙、上質紙、中質紙、又はこれらに塗工層を形成したコート紙等の紙基材を用いることができる。
【0019】
また、上述の紙基材のほか、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンナフタレート等の樹脂単体からなる単層の樹脂シート、又はこれら単層シートを複数積層してなる多層の樹脂シートを使用することができる。
【0020】
インモールド成形において用いられる成形用樹脂との、熱膨張率や熱収縮等の性質における適合性や、窪み11を容易に形成することができるという観点から、基材10としてポリエチレンテレフタレートが用いられることが好ましい。
【0021】
上記基材10の材料及び厚さは、インモールド成形において用いられる成形用樹脂に応じて、適宜選択可能である。
【0022】
アンテナ20は、導電性材料が含まれた導電性シートによって形成することができる。導電性シートとしては、金属箔を用いることができ、特に、アルミニウム又は銅を用いることができる。
【0023】
アンテナ20を形成することのできる金属箔の厚さは、RFIDインレイ1の厚さ、及び製造コスト等を考慮して設定することができる。製造コストを抑える観点から、一例として、アルミニウム箔を用いることが好ましい。
【0024】
第一実施形態では、アンテナ20は、
図1に示されるように、ループ部21と、ICチップ30が接続されるICチップ接続部22と、ループ部21から左右対称に延びるメアンダ23,24と、メアンダ23,24の端部に接続されたキャパシタハット25,26を備えるダイポールアンテナである。
【0025】
ICチップ接続部22は、アンテナ20におけるループ部21の一部が切り欠かれて分離された部分であり、ループ部21の切欠端部同士が互いに突き合わされて、ICチップ接続部22を構成している。
【0026】
アンテナ20は、一例として、UHF帯(300MHz~3GHz、特に860MHz~960MHz)に対応したアンテナ長さ及びアンテナ線幅になるように設計されたUHF帯RFIDアンテナであり、粘着剤層Aにより基材10に貼り付けられている。
【0027】
粘着剤層Aを形成可能な粘着剤としては、例えば、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、クロロプレン系、ゴム系等の粘着剤や接着剤が適用可能であり、熱可塑性樹脂接着剤を使用することが好ましい。
【0028】
図3は、第一実施形態に係るアンテナ20の基材10への配置を説明するための模式図である。
【0029】
アンテナ20のX方向におけるアンテナの寸法値(アンテナ長)Lは、インモールド成形における成形用樹脂の溶融温度(特定温度)における基材10の膨張量Δdを要求設計値L0に加算した値(L0+Δd)に設定される。図示されていないが、Y方向においても同様である。換言すれば、アンテナ20の面積値を基材10の膨張量を考慮した面積値に設計しておく。
【0030】
このように設定されたアンテナ20が、基材10の表面10aに形成された窪み11に沿うようにして、貼り付け後のアンテナ20のX方向及びY方向の長さが設計値L0になるように、粘着剤層Aにより貼り付けられている。換言すれば、アンテナ20は、基材10に貼り付けられた状態において、複数の窪み11に向けて突出して形成されている。
【0031】
アンテナ20とICチップ30とは、はんだ付け、或いは、紫外線により硬化する異方導電性材料により接続されている。
【0032】
ICチップ30は、リーダ/ライタ(図示されていない)との間で通信可能に設計された半導体パッケージである。
【0033】
以上の構成を有するRFIDインレイ1は、インモールド成形によって形成される構造体の内部に配置して使用することができる。
【0034】
(作用効果)
インモールド成形では、溶融温度に達した成形用樹脂がモールド内に送られると、成形用樹脂に触れたRFIDインレイの基材が熱膨張を起こすことがある。
【0035】
第一実施形態に係るRFIDインレイ1のアンテナ20は、X方向におけるアンテナ長Lが成形用樹脂の溶融温度における基材10の膨張量Δdを、要求設計値L0に加算した値Lに設定されている。これは、Y方向においても同様である。そして、このように設定されたアンテナ20が基材10の表面10aに形成された窪み11に沿うように、且つX方向及びY方向には設計値L0となるように貼り付けられている。
【0036】
このため、基材10に貼り付けられたアンテナ20は、窪み11に沿った部分が変形代となって、基材10が膨張量Δd分だけ熱膨張することを許容する。成形用樹脂が冷却硬化した後は、アンテナ20は、X方向及びY方向において設計値L0となる状態に戻される。
【0037】
したがって、第一実施形態に係るRFIDインレイ1は、加熱による基材10の熱膨張を許容することができるため、インモールド成形に適用した場合であっても、基材10とアンテナ20との膨張率の違いによって生じるRFIDインレイ1の劣化や変形によるRFIDインレイ1の通信性能の低下を防止することができる。
【0038】
<第二実施形態>
図4は、第二実施形態に係るRFIDインレイ2を説明する断面図である。
【0039】
RFIDインレイ2の外観は、RFIDインレイ1と同じであるため省略する。なお、
図4は、
図1に示したII-II線と同じ位置における断面の一部分を示したものである。以下に示す
図5から
図9も同様である。
【0040】
第二実施形態に係るRFIDインレイ2の基材110は、表面110aに複数の凸部111を有する。基材110は、例えば、微細な凹凸構造をもった金型を基材110に押し当てるエンボス加工或いはインプリント加工により形成することができる。
【0041】
アンテナ210は、第一実施形態と同様に、X方向におけるアンテナ長Lが成形用樹脂の溶融温度における基材110の膨張量Δdを、要求設計値L0に加算した値Lに設定されている。これは、Y方向においても同様である。そして、このように設定されたアンテナ210が、基材110に形成された複数の凸部111と、凸部111同士の谷部分(凹部112を形成する)とによってできる窪みに沿うように、且つ、X方向及びY方向には設計値L0となるように貼り付けられている。また、凸部111と凹部112との高低差は、一定の範囲内に収まるように形成されていることが好ましい。
【0042】
このため、第二実施形態に係るアンテナ210は、凸部111及び凹部112に沿った部分が変形代となり、基材110が膨張量Δd分だけ熱膨張することを許容することができる。成形用樹脂が冷却硬化した後は、アンテナ210は、X方向及びY方向には設計値L0となる状態に戻される。
【0043】
したがって、第二実施形態に係るRFIDインレイ2によれば、加熱による基材110の熱膨張を許容することができるため、インモールド成形に適用した場合であっても、基材110とアンテナ210との膨張率の違いによって生じるRFIDインレイ2の劣化や変形によるRFIDインレイ2の通信性能の低下を防止することができる。
【0044】
<第三実施形態>
図5は、第三実施形態に係るRFIDインレイ3を説明する断面図である。
【0045】
第三実施形態に係るRFIDインレイ3の基材120は、表面120aにブラスト処理等の表面処理により微細な凹凸面121が形成されている。凹凸面121は、凹凸の高低差が一定の範囲内に収まるように形成されていることが好ましい。換言すれば、凹凸面121は、所定粗さに形成されていることが好ましい。
【0046】
アンテナ220は、第一実施形態と同様に、X方向におけるアンテナ長Lが成形用樹脂の溶融温度における基材120の膨張量Δdを、要求設計値L0に加算した値Lに設定されている。これは、Y方向においても同様である。そして、このように設定されたアンテナ220が、基材120に形成された凹凸面121に沿うように、且つ、X方向及びY方向には設計値L0となるように貼り付けられている。
【0047】
このため、第三実施形態に係るアンテナ220は、基材120が膨張量Δd分だけ熱膨張することを許容することができる。
【0048】
したがって、第三実施形態に係るRFIDインレイ3によれば、インモールド成形に適用した場合であっても、基材120とアンテナ220との膨張率の違いによって生じるRFIDインレイ3の劣化や変形によるRFIDインレイ3の通信性能の低下を防止することができる。
【0049】
<第四実施形態>
図6は、第四実施形態に係るRFIDインレイ4を説明する断面図である。
【0050】
第四実施形態に係るRFIDインレイ4の基材130は、多孔質材料から形成されている。すなわち、基材130は、表面130aに、複数の開口部131を有する。
【0051】
アンテナ230は、第一実施形態と同様に、X方向におけるアンテナ長Lが成形用樹脂の溶融温度における基材130の膨張量Δdを、要求設計値L0に加算した値Lに設定されている。これは、Y方向においても同様である。そして、このように設定されたアンテナ230が、基材130に形成された開口部131によってできる窪みに沿うように、且つ、X方向及びY方向には設計値L0となるように貼り付けられている。
【0052】
このため、第四実施形態に係るアンテナ230は、基材130が膨張量Δd分だけ熱膨張することを許容することができる。
【0053】
したがって、第四実施形態に係るRFIDインレイ4によれば、インモールド成形に適用した場合であっても、基材130とアンテナ230との膨張率の違いによって生じるRFIDインレイ4の劣化や変形によるRFIDインレイ4の通信性能の低下を防止することができる。
【0054】
<第五実施形態>
図7は、第五実施形態に係るRFIDインレイ5を説明する断面図である。
【0055】
第五実施形態に係るRFIDインレイ5の基材140は、基材を構成可能な樹脂の単体又は複数を組み合わせて得られた繊維からなる織物構造を有する繊維シートを使用することができる。
【0056】
第五実施形態では、基材140は、繊維糸を縦糸141及び横糸142として用いて織られた編み目状構造を有する繊維シートである。
【0057】
このような繊維シートは、縦糸141及び横糸142の重なり方により、窪み部分が形成される。また、縦糸141と横糸142の互いの間隔が糸の径よりも広い場合には、縦糸141と横糸142の間に隙間(開口)が形成される。
【0058】
繊維シートである基材140によれば、縦糸141及び横糸142のメッシュピッチを適宜設計することにより、アンテナ240の基材140の窪みへの沈み込み量が適量になるように調整することができる。本実施形態では、縦糸141及び横糸142によって形成される凹凸部分の高低差が一定の範囲内に収まるようにメッシュピッチが設計されることが好ましい。
【0059】
インモールド成形により製造される構造体に汎用な成形用樹脂との適合性や、アンテナ20が沿うような窪みを設計しやすいという観点から、基材140として、ポリエチレンテレフタレートの編み目状シートが用いられることが好ましい。
【0060】
アンテナ240は、第一実施形態と同様に、X方向におけるアンテナ長Lが成形用樹脂の溶融温度における基材140の膨張量Δdを、要求設計値L0に加算した値Lに設定されている。これは、Y方向においても同様である。そして、このように設定されたアンテナ240が、基材140に形成された縦糸141と横糸142の間に形成される隙間(開口)による窪みに沿うように、且つ、X方向及びY方向には設計値L0となるように貼り付けられている。
【0061】
このため、第五実施形態に係るアンテナ240は、基材140が膨張量Δd分だけ熱膨張することを許容することができる。
【0062】
したがって、第五実施形態に係るRFIDインレイ5によれば、インモールド成形に適用した場合であっても、基材140とアンテナ240との膨張率の違いによって生じるRFIDインレイ5の劣化や変形によるRFIDインレイ5の通信性能の低下を防止することができる。
【0063】
<第六実施形態>
図8は、第六実施形態に係るRFIDインレイ6を説明する断面図である。
【0064】
RFIDインレイ6は、RFIDインレイ1と同一構成である基材10、粘着剤層A、アンテナ20及びICチップ30に加え、アンテナ20及びICチップ30(
図8には図示されていない)を覆うオーバーコート層40を有する。
【0065】
第六実施形態において、オーバーコート層40は、アンテナ20及びICチップ30が実装された基材10の表面10aに、上述の粘着剤層Aを用いて積層することができる。
【0066】
オーバーコート層40として、構造体の成形用樹脂と同じ樹脂が用いられることが好ましい。これにより、インモールド成形におけるRFIDインレイ6と成形用樹脂との親和性を高めることができる。
【0067】
また、RFIDインレイ6では、アンテナ20及びICチップ30の実装面がオーバーコート層40で覆われる。このため、インモールド成形の成形型において、オーバーコート層40で覆われた面が構造体の外表面になるように配置することができる。これにより、インモールド成形における設計の自由度を向上させることができる。
【0068】
<第七実施形態>
図9は、第七実施形態に係るRFIDインレイ7を説明する断面図である。
【0069】
第七実施形態に係るRFIDインレイ7では、アンテナ250は、導電性インキを基材150の表面150aに印刷することにより形成されている。
【0070】
導電性インキは、金、銀、銅、導電性カーボン等の微粒子がバインダ樹脂中に分散されて、ペースト状に加工されたものである。バインダ樹脂としては、エポキシ樹脂、や熱硬化性フェノール樹脂が使用されている。
【0071】
第七実施形態の場合には、アンテナ250は、印刷後の大きさが設計値L0となるように印刷される。
【0072】
導電性インキは、金属箔に比べて、表面150aに形成された窪み151に追従したアンテナパターンが形成しやすい。また、金属箔に比べて、基材10と熱膨張率差が小さいため、基材10の熱による変形に対して順応しやすい。
【0073】
したがって、第七実施形態に係るRFIDインレイ7によれば、インモールド成形に適用した場合であっても、基材150とアンテナ250との膨張率の違いによって生じるRFIDインレイ7の劣化や変形によるRFIDインレイ7の通信性能の低下を防止することができる。
【0074】
[構造体]
図10は、本発明の実施形態に係る構造体としての容器100を説明する外観図である。
【0075】
本実施形態では、容器100は、食品等が封入される容器であり、底部101と、底部101の縁から底部101の一面に交差する方向に延びて設けられた側部102とを有する逆円錐形の容器である。
【0076】
容器100の側部102の一部に、インモールド成形によりRFIDインレイ1が組み込まれている。
【0077】
本実施形態では、容器100において、RFIDインレイ1は、基材10が容器100の表面側に位置し、アンテナ20が容器100の内側に位置するように配置されている。
【0078】
[構造体の製造方法]
本実施形態に係るRFIDインレイ1を含んだ構造体の一例として、容器100の製造方法について説明する。構造体(容器100)は、射出成形やブロー成形等のインモールド成形により製造することができる。
【0079】
(射出成形)
以下では、インモールド成形のうち射出成形の場合について図面を用いて説明する。
【0080】
本実施形態に係る容器100の製造方法は、RFIDインレイ1を成形型に配置するRFIDインレイ配置工程と、溶融した成形用樹脂を成形型に供給し構造体を形成する成形工程とを有する。これらの工程は、射出成形装置300によって実現される。
【0081】
図11は、RFIDインレイ配置工程を説明するための模式図である。
図12は、成形工程の第一ステップを説明するための模式図である。
図13は、成形工程の第二ステップを説明するための模式図である。
図14は、成形工程の第三ステップを説明するための模式図である。
【0082】
図11に示されるように、RFIDインレイ配置工程では、容器100を成形するための成形型301a,301bと、成形型301bに接続され、成形用樹脂Pを射出するための射出機302とが用いられる。
【0083】
成形型301aは凸型に、成形型301bは凹型に形成されている。これら成形型301a,301bが互いに嵌め合わされた状態で、成形型301aと成形型301bとの間に容器100の形状及び厚みに相当する空間が形成されるようになっている。
【0084】
成形型と接触するRFIDインレイ1の表面は、成形用樹脂Pに触れることがないため、成形用樹脂Pに覆われることなく露呈する。
【0085】
このため、内側に食材等の物品が納められる容器100の場合には、成形型301bの内面にRFIDインレイ1を配置する。これにより、容器100の外表面にRFIDインレイ1の一部が露呈することになり、内容物とRFIDインレイ1とが接触することがなくなる。
【0086】
また、本実施形態では、RFIDインレイ1のアンテナ20及びICチップ30が実装される面の反対面を成形型301bに当ててRFIDインレイ1を配置する。これにより、RFIDインレイ1のアンテナ20及びICチップ30が実装される面が成形用樹脂Pに覆われることになるため、アンテナ20及びICチップ30を保護することができる。
【0087】
RFIDインレイ1を成形型301bの内面に保持するためには、熱可塑性接着剤を用いることができる。
【0088】
続いて、成形工程では、第一ステップとして、
図12に示されるように、成形型301aと成形型301bとを嵌め合わせる。この後、溶融温度に加熱された成形用樹脂Pを射出機302から成形型301bに形成された射出孔303を介して成形型301bに供給する。
【0089】
このとき、成形型301bに配置されたRFIDインレイ1の成形型301bと接する面以外は、成形用樹脂Pに取り込まれ、成形用樹脂Pが冷却硬化することにより、容器100の側部102の一部に組み込まれる。
【0090】
続いて、
図13に示されるように、第二ステップとして、冷却硬化後、成形型301a,301bを分離する。
【0091】
次に、
図14に示されるように、第三ステップとして、成形型301a,301bから離型した硬化後の成形用樹脂Pから、不要樹脂100bを取り除いて、容器100が完成する。
【0092】
RFIDインレイ1によれば、加熱による基材10の熱膨張を許容することができる。このため、基材10とアンテナ20との膨張率の違いによって生じるRFIDインレイ1の劣化や変形によるRFIDインレイ1の通信性能の低下を防止することができる。したがって、上述したインモールド成形に好適に適用可能である。
【0093】
(ブロー成形)
本実施形態では、RFIDインレイ1が含まれた構造体をブロー成形により製造することもできる。この場合にも射出成形の場合と同様に、パリソンのブロー及び冷却硬化の前に、成形型の内側にRFIDインレイ1を貼り付ける。これにより、成形後の構造体にRFIDインレイ1を組み込むことができる。
【0094】
[その他の実施形態]
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0095】
図1に示されるアンテナ20は、RFIDの仕様に応じて、マイクロ波(1~30GHz、特に2.4GHz近傍)、及びHF帯(3MHz~30MHz、特に13.56MHz近傍)等の特定の周波数帯に対応したパターンに設計されてもよい。第二実施形態から第七実施形態においても同様である。
【0096】
第四実施形態において、多孔質材料からなる基材130のかわりに、複数の微細開口が形成された多孔構造を有する基材を使用することもできる。
【0097】
第七実施形態において用いられた導電性インキを第二実施形態から第六実施形態における各アンテナ210,220,230,240の代わりに適用してもよい。
【0098】
本実施形態に係る容器100の製造方法では、RFIDインレイ1のアンテナ20及びICチップ30が実装される面の反対面を成形型301bに当ててRFIDインレイ1を配置しているが、オーバーコート層40を備えたRFIDインレイ6であれば、オーバーコート層40で覆われた面が構造体の外表面になるように成形型に配置することができる。
【符号の説明】
【0099】
1,2,3,4,5,6,7 RFIDインレイ
10,110,120,130,140,150 基材
10a 表面
11 窪み
20,210,220,230,240,250 アンテナ
21 ループ部
22 ICチップ接続部
23,24 メアンダ
25,26 キャパシタハット
40 オーバーコート層
100 容器
100b 不要樹脂
101 底部
102 側部
110a 表面
111 凸部
112 凹部
120a 表面
121 凹凸面
130a 表面
131 開口部
141 縦糸
142 横糸
300 射出成形装置
301a,301b 成形型
302 射出機
303 射出孔
A 粘着剤層