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特開2023-160662ジシクロペンタジエン系樹脂含有成形体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160662
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】ジシクロペンタジエン系樹脂含有成形体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/32 20060101AFI20231026BHJP
   C08G 61/08 20060101ALI20231026BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20231026BHJP
   C08K 7/04 20060101ALI20231026BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20231026BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20231026BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20231026BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20231026BHJP
   B05D 3/02 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C08J9/32 CEZ
C08G61/08
C08L65/00
C08K7/04
B32B27/00 A
B05D7/24 302Z
B05D7/24 303A
B05D7/24 303L
B05D7/24 302Q
B05D1/02 Z
B05D7/00 A
B05D7/00 B
B05D3/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071173
(22)【出願日】2022-04-22
(71)【出願人】
【識別番号】522165027
【氏名又は名称】株式会社創和工技
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前川 高史
【テーマコード(参考)】
4D075
4F074
4F100
4J002
4J032
【Fターム(参考)】
4D075AA01
4D075AC57
4D075AE03
4D075AE19
4D075BB26Z
4D075BB38Z
4D075BB60Z
4D075CA02
4D075CA03
4D075CA47
4D075CA48
4D075CB28
4D075DA04
4D075DA25
4D075DB20
4D075DC16
4D075EA05
4D075EB12
4D075EB14
4D075EB24
4D075EC13
4D075EC22
4D075EC37
4F074AA54
4F074AA56
4F074AE04
4F074BA91
4F074BB23
4F074CA21
4F074CC04Y
4F074CC10X
4F074CC22X
4F074DA02
4F074DA45
4F074DA59
4F100AK02A
4F100AK02B
4F100AK02C
4F100AL05
4F100AT00A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CA23A
4F100CA23B
4F100DE04A
4F100DG01A
4F100DG12A
4F100DG13A
4F100EH61
4F100JA13
4F100JK13A
4J002BG102
4J002CE001
4J002DA067
4J002DL006
4J002DL007
4J002DM006
4J002DM007
4J002FA047
4J002FA102
4J002FA106
4J002FD016
4J002FD017
4J002GF00
4J002GQ00
4J032CA32
4J032CA38
4J032CB01
4J032CB03
4J032CD02
4J032CD03
4J032CD04
4J032CE22
4J032CG06
(57)【要約】
【解決すべき課題】種々の特性を充足しうる、ジシクロペンタジエン系樹脂を用いた成形体を提供する。
【課題を解決するための手段】ジシクロペンタジエン系樹脂を含む成形体に、ジシクロペンタジエン系樹脂と、中空粒子状充填材と、を含有する第1の相を備えるようにする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジシクロペンタジエン系樹脂を含む成形体であって、
ジシクロペンタジエン系樹脂と、中空粒子状充填材と、を含有する第1の相を備える、成形体。
【請求項2】
前記中空粒子状充填材は、軟質中空粒子を含む、請求項1に記載の成形体。
【請求項3】
前記第1の相は、非中空粒子状充填材をさらに含有する、請求項1に記載の成形体。
【請求項4】
前記第1の相は、ファイバー状充填材をさらに含有する、請求項1に記載の成形体。
【請求項5】
前記ファイバー状充填材は、相互に分離及び分散可能な多数のファイバーの混合体又は多数のファイバーが編成、織成若しくは交絡されたシート体である、請求項4に記載の成形体。
【請求項6】
ジシクロペンタジエン系樹脂と、非中空粒子状充填材と、を含有する第2の相からなる層を、前記第1の相からなる層に対して、直接又は他の層を介して積層して備える、請求項1に記載の成形体。
【請求項7】
さらに、ジシクロペンタジエン系樹脂を含有し、充填材を含有しない第3の相を備える、請求項1に記載の成形体。
【請求項8】
比重が0.4以上1.0以下である、請求項1に記載の成形体。
【請求項9】
ジシクロペンタジエン系モノマーを含むモノマー成分と、前記ジシクロペンタジエン系モノマーを開環重合するための重合触媒と、中空粒子状充填材と、を含む硬化性組成物を用いて得ようとする成形体の少なくとも一部である前駆体を形成する工程と、
前記前駆体を加熱し、前記ジシクロペンタジエン系モノマーを重合させて、ジシクロペンタジエン系樹脂と前記中空粒子状充填材とを含む相を形成する相形成工程と、
を備える、製造方法。
【請求項10】
前記前駆体形成工程は、表面にファイバー状充填材のシート状体を備えた被加工塗工物の前記シート状体に対して前記硬化性組成物をスプレー塗装する工程である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
ジシクロペンタジエン系モノマーを含むモノマー組成物と、前記ジシクロペンタジエン系モノマーを開環重合するための重合触媒と、中空粒子状充填材と、を含む硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ジシクロペンタジエン系樹脂を含有する成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ジシクロペンタジエン系樹脂は、強度と硬度とのバランスに優れていることが知られている。例えば、特許文献1には、ジシクロペンタジエン系樹脂を用いた成形体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-273796号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ジシクロペンタジエン系樹脂は、他のエンジニアリングプラスチックと比較して、成形体の用途に適合した特性に調節しづらいという特性があった。
【0005】
本明細書は、種々の特性を充足しうる、ジシクロペンタジエン系樹脂を用いた成形体及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、ジシクロペンタジエン系樹脂を用いて種々の特性を充足させるのに適した構成について検討したところ、ジシクロペンタジエン系樹脂と中空粒子状充填材とを含有する相を備えるようにすることで、成形体の強度、比重、靱性等の特性の制御が容易となり、特性の最適化が可能になることを見出し、本発明を完成した。本明細書によれば、これらの知見に基づき、以下の手段が提供される。
【0007】
[1]ジシクロペンタジエン系樹脂を含む成形体であって、
ジシクロペンタジエン系樹脂と、中空粒子状充填材と、を含有する第1の相を備える、成形体。
[2]前記中空粒子状充填材は、軟質中空粒子を含む、[1]に記載の成形体。
[3]前記第1の相は、非中空粒子状充填材をさらに含有する、[1]又は[2]に記載の成形体。
[4]前記第1の相は、ファイバー状充填材をさらに含有する、[1]~[3]のいずれかに記載の成形体。
[5]前記ファイバー状充填材は、相互に分離及び分散可能な多数のファイバーの混合体又は多数のファイバーが編成、織成若しくは交絡されたシート体である、[4]に記載の成形体。
[6]ジシクロペンタジエン系樹脂と、非中空粒子状充填材と、を含有する第2の相からなる層を、前記第1の相からなる層に対して、直接又は他の層を介して積層して備える、[1]~[5]ののいずれかに記載の成形体。
[7]さらに、ジシクロペンタジエン系樹脂を含有し、充填材を含有しない、第3の相を備える、[1]~[6]のいずれかに記載の成形体。
[8]比重が0.4以上1.0以下である、[1]~[7]のいずれかに記載の成形体。
[9]ジシクロペンタジエン系モノマーを含むモノマー成分と、前記ジシクロペンタジエン系モノマーを開環重合するための重合触媒と、中空粒子状充填材と、を含む硬化性組成物を用いて得ようとする成形体の少なくとも一部である前駆体を形成する工程と、
前記前駆体を加熱し、前記ジシクロペンタジエン系モノマーを重合させて、ジシクロペンタジエン系樹脂と中空粒子状充填材とを含む相を形成する相形成工程と、
を備える、製造方法。
[10]前記前駆体形成工程は、表面にファイバー状充填材のシート状体を備えた被加工塗工物の前記シート状体に対して前記硬化性組成物をスプレー塗装する工程である、[9]に記載の製造方法。
[11]ジシクロペンタジエン系モノマーを含むモノマー組成物と、前記ジシクロペンタジエン系モノマーを開環重合するための重合触媒と、中空粒子状充填材と、を含む硬化性組成物。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本明細書に開示される成形体(以下、単に、本成形体ともいう。)及びその製造方法(以下、単に、本製造方法ともいう。)等について説明する。
【0009】
(第1の相)
本明細書に開示される成形体は、ジシクロペンタジエン系樹脂と、中空粒子状充填材と、を含有する第1の相を備える。かかる第1の相を備えることで、成形体の比重、強度、靱性等の特性に貢献することができる。
【0010】
(ジシクロペンタジエン系樹脂)
本成形体は、ジシクロペンタジエン系樹脂を含む成形体である。ここでジシクロペンタジエン系樹脂とは、ジシクロペンタジエン系モノマーを少なくとも含むモノマー組成物を用いて重合した樹脂であって、ジシクロペンタジエン系モノマーのホモポリマー又はコポリマーが挙げられる。ジシクロペンタジエン系樹脂は、ジシクロペンタジエン系モノマーに由来する構成単位、その他の環状オレフィン系モノマーに由来する構成単位などを含んでいる。ジシクロペンタジエン系樹脂は、高強度、強靭性、耐熱性、軽量性であるとともに、硬化前のモノマー及び硬化剤を含む硬化性組成物が極めて低粘度であることや、極性の高い充填材との相溶性も高いことから有利である。
【0011】
ジシクロペンタジエン系モノマーとは、ジシクロペンタジエン、またはその構造中の水素の一部が置換基で置換された3環体の化合物である。ジシクロペンタジエン系モノマーは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等の炭素数1~5のアルキル基;ビニル基等の炭素数2~5のアルケニル基;エチリデン基等の炭素数1~5のアルキリデン基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等の炭素数6~10のアリール基等の置換基を有していてもよい。さらに、これらのモノマーは、置換基として、カルボキシル基、酸無水物、水酸基、エステル基(-C(O)O-)、エーテル基(-O-)、エポキシ基、シアノ基、ハロゲン原子等の極性基を有することができる。こうした極性基を含むモノマーを用いることにより、極性基を有する成分等との相溶性を高めることができる。
【0012】
ジシクロペンタジエン系モノマーの具体例としては、ジシクロペンタジエン、2-メチルジシクロペンタジエン、2,3-ジメチルジシクロペンタジエン、2,3-ジヒドロキシジシクロペンタジエン、ジシクロペンタジエンモノエポキシド、ビニルノルボルネン、及び5-エチリデンノルボルネンなどがの非極性ジシクロペンタジエン類が例示される。
【0013】
ジシクロペンタジエン系樹脂を構成しうるジシクロペンタジエン系モノマー以外の環状オレフィン系モノマーとしては、特に限定するものではないが、例えば、トリシクロペンタジエン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]ペンタデカ-4,10-ジエン、ペンタシクロ[9.2.1.14,7.02,10.03,8]ペンタデカ-5,12-ジエン及びヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]ヘプタデカ-4-エンなどの五環体以上の非極性の環状オレフィン類;
及びテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-エチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-シクロヘキシルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-シクロペンチルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-メチレンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-エチリデンテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-ビニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-プロペニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-シクロヘキセニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、9-シクロペンテニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン及び9-フェニルテトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エンなどの非極性のテトラシクロドデセン類;などが挙げられる。
【0014】
さらに、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4-カルボン酸メチル、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4-メタノール、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4-カルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4,5-ジカルボン酸、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-9-エン-4,5-ジカルボン酸無水物、5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、2-メチル-5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、酢酸5-ノルボルネン-2-イル、5-ノルボルネン-2-メタノール、5-ノルボルネン-2-オール、5-ノルボルネン-2-カルボニトリル、2-アセチル-5-ノルボルネン及び7-オキサ-2-ノルボルネンなどの極性のノルボルネン類が挙げられる。
【0015】
本成形体のジシクロペンタジエン系樹脂に用いる環状オレフィン系モノマーとしては、相溶性等の観点から、非極性ジシクロペンタジエン類及び非極性の環状オレフィン類である。
【0016】
ジシクロペンタジエン系樹脂は、さらに、他の環状ジエン系モノマーに由来する構成及び単位を含むことができる。特に限定するものではないが、例えば、非極性のテトラシクロドデセン類、非極性のノルボルネン類、極性基を含むノルボルネン系モノマー、単環状オレフィン類等が挙げられる。
【0017】
環状オレフィン系モノマーの総量に対するジシクロペンタジエン系モノマーの量は、例えば、55質量%以上95質量%以下であり、また例えば、60質量%以上90質量%以下であり、また例えば、70質量%以上90質量%以下であり、また例えば、80質量%以上90質量%以下である。また、本モノマー組成物が、ジシクロペンタジエン系モノマー以外に環状オレフィンモノマーを含むときは、前記総量に対して、例えば、5質量%以上45質量%以下、また例えば、8質量%以上30質量%以下、また例えば、10質量%以上20質量%以下などである。
【0018】
ジシクロペンタジエン系樹脂は、ジシクロペンタジエン系モノマーを含む環状ジエン系モノマー及び場合によってはその他のモノマーと、ジシクロペンタジエン系モノマーを開環重合できる重合触媒を含有する硬化性組成物を所定の温度条件で重合し硬化することによりジシクロペンタジエン系樹脂を得ることができる。
【0019】
こうした重合触媒としては、公知のメタセシス触媒を用いることができる。メタセシス触媒としては、例えば、遷移金属原子を中心にして、イオン、原子、多原子イオン及び/又は化合物が複数結合してなる錯体が挙げられる。5族、6族及び8族(長周期型周期表、以下同じ)の原子が、遷移金属原子として使用される。それぞれの族の原子は特に限定されないが、好ましい5族の原子はタンタルであり、好ましい6族の原子はモリブデン及びタングステンであり、好ましい8族の原子はルテニウム及びオスミウムである。例えばメタセシス重合触媒は、8族のルテニウム及びオスミウムの錯体であり、また例えば、メタセシス重合触媒は、ルテニウムカルベン錯体である。ルテニウムカルベン錯体は、塊状重合時の触媒活性に優れる。
【0020】
ルテニウムカルベン錯体の具体例は、特開2014-218595号公報等に開示されるもののほか、商業的に入手可能なものを用いることができる。典型的には、ベンジリデン(1,3-ジメシチル-4-イミダゾリジン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3-ジメシチル-4,5-ジブロモ-4-イミダゾリン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4-イミダゾリン-2-イリデン)(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4-イミダゾリジン-2-イリデン)(3-メチル-2-ブテン-1-イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3-ジメシチル-オクタヒドロベンズイミダゾール-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン[1,3-ジ(1-フェニルエチル)-4-イミダゾリン-2-イリデン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3-ジメシチル-2,3-ジヒドロベンズイミダゾール-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4-トリフェニル-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-1,2,4-トリアゾール-5-イリデン)ルテニウムジクロリド、(1,3-ジイソプロピルヘキサヒドロピリミジン-2-イリデン)(エトキシメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,3-ジメシチル-4-イミダゾリジン-2-イリデン)ピリジンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4-イミダゾリジン-2-イリデン)(2-フェニルエチリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4-イミダゾリン-2-イリデン)(2-フェニルエチリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチル-4,5-ジブロモ-4-イミダゾリン-2-イリデン)[(フェニルチオ)メチレン](トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド及び(1,3-ジメシチル-4,5-ジブロモ-4-イミダゾリン-2-イリデン)(2-ピロリドン-1-イルメチレン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどの、ヘテロ原子含有カルベン化合物及び中性電子供与性化合物が各々1つ結合したルテニウム錯体化合物;
【0021】
ベンジリデンビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド及び(3-メチル-2-ブテン-1-イリデン)ビス(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリドなどの、2つの中性電子供与性化合物が結合したルテニウム錯体化合物;
【0022】
ベンジリデンビス(1,3-ジシクロヘキシル-4-イミダゾリジン-2-イリデン)ルテニウムジクロリド及びベンジリデンビス(1,3-ジイソプロピル-4-イミダゾリン-2-イリデン)ルテニウムジクロリドなどの、2つのヘテロ原子含有カルベン化合物が結合したルテニウム錯体化合物;
【0023】
また、(1,3-ジメシチル-4-イミダゾリジン-2-イリデン)(フェニルビニリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(t-ブチルビニリデン)(1,3-ジイソプロピル-4-イミダゾリン-2-イリデン)(トリシクロペンチルホスフィン)ルテニウムジクロリド及びビス(1,3-ジシクロヘキシル-4-イミダゾリン-2-イリデン)フェニルビニリデンルテニウムジクロリドなどである。
【0024】
また、以上の各種化合物と同等又は優れた触媒活性を有する化合物を適宜用いることができる。
【0025】
本硬化性組成物におけるメタセシス重合触媒の使用量は、特に限定するものではないが、例えば、メタセシス重合触媒中の金属原子:環状オレフィンモノマー)のモル比で、(1:2,000)~(1:2,000,000)、好ましくは(1:5,000)~(1:1,000,000)、より好ましくは(1:10,000)~(1:500,000)の範囲である。メタセシス重合触媒の量が上記範囲であることで、好適な重合反応率及び反応速度を確保できる。
【0026】
(中空粒子状充填材)
第1の相は、中空粒子状充填材を含有するため、成形体の比重の減少及び強度の向上に貢献することができる。中空粒子状充填剤としては、中空の内部構造を有していれば特に限定されないで、公知の粒子を用いることができる。例えば、多孔質性粒子、内部に中空部(空気層)を形成する外皮状粒子等が挙げられる。中空の内部構造としては、特に限定するものではないが、例えば、外部とは連通しない独立した内部構造のほか、外部と連通する内部構造であってもよい。典型的には、外部とは連通しない独立した内部構造を有し、内部には、例えば、発泡剤などに由来するガスを保持している。
【0027】
中空粒子状充填材は、中空であるために比重も小さいため、流動性に優れるジシクロペンタジエン系モノマー成分によく分散することができ、均一な分散状態の硬化性組成物を容易に製造することができる。また、膜形成時においても、その分散状態を維持することができる。
【0028】
中空粒子状充填剤の外殻材料としては、セラミックス、ガラス、ポリマーなど、その材料も特に限定するものではないが、ポリマーなどが、軽量性、成形体の可塑性に貢献できるため好適である。なかでも、熱可塑性樹脂であることが、加熱軟化時の弾性、延伸性、ガスバリア性の観点から好適である。熱可塑性樹脂としては、特に限定するものではないが、例えば、(メタ)アクリロニトリルを主要成分とし、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含有しうるの(メタ)アクリロニトリル系ポリマーが挙げられる。かかる外殻材料の中空微粒子状充填剤を用いることで、ジシクロペンタジエン系樹脂に破壊耐性や耐屈曲性等を容易に付与することができる。
【0029】
中空粒子状充填剤の個々の粒子は、概して球状である。中空粒子の平均粒子径は、特に限定するものではないが、例えば、10μm以上500μm以下、また例えば、20μm以上100μm以下、また例えば、30μm以上80μm以下、また例えば、40μm以上60μm以下などとすることができる。なお、中空粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(Microtrac ASVR 日機装社製)を使用して測定することができ、そのD50の値を平均粒子径とすることができる。
【0030】
また、中空粒子状充填材としては、例えば、真比重として、0.020以上0.050以下、また例えば、0.020以上0.040以下、また例えば、0.025以上0.035以下程度のものを用いることができる。こうした範囲であると、ジシクロペンタジエン系モノマーなどにおける均一分散性に優れる。真比重は環境温度25℃、相対湿度50%の雰囲気下においてイソプロピルアルコールを用いた液浸法(アルキメデス法)により測定することができる。
【0031】
第1の相における中空粒子状充填材の含有量は、特に限定するものではないが、例えば、第1の相におけるジシクロペンタジエン系樹脂の総量(以下、充填材の含有量について、同じ。)の0.5質量%以上20質量%以下であり、また例えば、1質量%以上10質量%以下であり、また例えば、1質量%以上8質量%以下であり、また例えば、1質量%以上6質量%以下であり、また例えば、1質量%以上4質量%以下であり、また例えば、1質量%以上3質量%以下である。
【0032】
(非中空粒子状充填材)
第1の相は、非中空の粒子状充填材をさらに含有することができる。非中空の粒子状充填材としては、内部に中空構造を有しない、中実状の粒子であれば特に限定するものではないが、ファイバー状充填材など、例えば、アスペクト比が10以上の粒子は包含されない。こうした中実状粒子としては、特に限定するものではないで、公知の、セラミックス、ガラス、無機化合物、ポリマーなど種々の充填材を用いることができる。例えば、炭酸カルシウム、二酸化ケイ素などの無機系粒子の充填材を用いることができる。非中空粒子状充填材は、例えば、球状であり、また例えば、不定形状である。
【0033】
非中空粒子状充填材は、ジシクロペンタジエン系樹脂によく分散保持されるとともに、中空粒子状充填材を安定して第1の相のジシクロペンタジエン系樹脂中に保持する。この結果、第1の相に中空粒子状充填材を優れた分散性で保持できる。
【0034】
非中空粒子状充填剤の平均粒子径は、特に限定するものではないが、例えば、0.1μm以上500μm以下、また例えば、1μm以上300μm以下、また例えば、0.5μm以上200μm以下、また例えば、1μm以上100μm以下などとすることができる。なお、非中空粒子の平均粒子径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(Microtrac ASVR 日機装社製)を使用して測定することができ、そのD50の値を平均粒子径とすることができる。
【0035】
第1の相における非中空粒子状充填材の含有量は、特に限定するものではないが、例えば、ジシクロペンタジエン系樹脂の0.5質量%以上30質量%以下であり、また例えば、1質量%以上30質量%以下であり、また例えば、2質量%以上20質量%以下であり、また例えば、2質量%以上10質量%以下であり、また例えば、3質量%以上7質量%以下である。
【0036】
(ファイバー状充填材)
第1の相は、ファイバー状充填材を含有することができる。ファイバー状充填材としては、特に限定するものではなく、公知の種々のファイバー状充填材を用いることができる。例えば、相互に分離及び分散可能な多数のファイバーの混合体を用いることができる。かかる充填材の場合、ファイバーは、概して、10μm以上数mm以下程度であり、ガラス製、セラミック製、プラスチック製、金属製などの種々のファイバー混合物が挙げられる。こうしたファイバー混合物においては、一部のファイバーが交絡などにより凝集していてもよい。かかるファイバー状充填材を用いることで、第2の層に無方向性の強度を付与することができる。また、用いるファイバー状充填材の比重によっては、第2の層の比重を低下させることができる。
【0037】
第1の相におけるこうした分散性のファイバー状充填材の含有量は、特に限定するものではない。例えば、ジシクロペンタジエン系樹脂の総質量の1質量%以上80質量%以下、2質量%以上70質量%以下、5質量%以上60質量%以下、10質量%以上50質量%以下などの範囲で用いることができる。
【0038】
また、ファイバー状充填材としては、ファイバーが編成、織成若しくは交絡されたシート状体又はネット状体を用いることもできる。シート状体の充填材は、フィラメント糸又はスパン糸を編むか、織るか、交絡させて必要に応じてニードルパンチングしてシート状体としたものである。また、ネット状体とは、フィラメント糸又はスパン糸を交差させつつ部分的に固定して網目を形成したものである。こうしたシート状体又はネット状体を用いることで、第1の相にシート状体又はネット状体の面に沿う強度のほか弾性を向上させることができる。また、シート状体又はネット状体の面を破断、屈曲するような外力への抵抗性を向上させることができる。
【0039】
シート状体としては、例えば、ロービングクロス又はガラスクロスとして入手可能なガラスフィラメントの束を製織したものが挙げられる。ジシクロペンタジエン系樹脂の硬化性組成物は、かかるシート状体に対しても、気泡の形成を抑制又は回避してよく含浸して製織構造の内部にも浸透されるため、シート状体の一体性に優れる第1の相となることができる。
【0040】
こうした、シート状体又はネット状体は、第1の相において1層又は2層以上備えることもできる。
【0041】
第1の相は、中空粒子状充填剤のほか、非中空粒子状充填剤を含むことが好適な場合があり、さらにまた、これらに加えて、シート状体又はネット状体の充填剤を含むことが好適な場合がある。
【0042】
なお、以上のことから、第1の相を形成するための硬化性組成物としては、ジシクロペンタジエン系モノマーを含むモノマー組成物と、メタセシス重合触媒と、中空粒子状充填剤と、を含むことができる。また、非中空粒子状充填剤を含む場合もある。
【0043】
(第2の相)
成形体は、さらに、ジシクロペンタジエン系樹脂と、非中空粒子状充填材と、を含有する第2の相を備えることができる。かかる第2の相を備えることで、第1の相が有する可能性のある中空粒子状充填材などに依拠する表面凹凸などが被覆された外表面を付与することができる。非中空粒子状充填材としては、既に説明した態様の粒子を用いることができる。
【0044】
第2の相における非中空粒子状充填材の含有量は、特に限定するものではないが、例えば、ジシクロペンタジエン系樹脂の0.5質量%以上30質量%以下であり、また例えば、1質量%以上30質量%以下であり、また例えば、2質量%以上20質量%以下であり、また例えば、2質量%以上10質量%以下であり、また例えば、3質量%以上7質量%以下である。
【0045】
(第3の相)
成形体は、さらに、ジシクロペンタジエン系樹脂を含有し、充填材を含有しない、第3の相を備えることができる。かかる第3の相を備えることで、成形体において、ジシクロペンタジエン系樹脂の特性である強度、低温耐衝撃性、耐熱性等の向上向に貢献できる。かかる層を表層に備えることで、表面における強度、低温耐衝撃性及び耐熱性を向上させることができる。第3の相は、既に説明した中空粒子状充填材、ファイバー状充填材及び非中空粒子状充填材のいずれも含有しない層である。
【0046】
(第4の相)
成形体は、さらに、ジシクロペンタジエン系樹脂とゴム系充填材とを含有する第4の相を備えることができる。ゴム成分を含有するため、成形体の抗引張力、抗破断性、靱性の向上に貢献することができる。なお、第4の層は、ジシクロペンタジエン系樹脂とゴム成分のほか、既述の中空粒子状充填剤、非中空粒子状充填剤、ファイバー状充填剤の1種以上を含んでいてもよいが、これらの全てを含んでいなくともよい。
【0047】
ゴム系充填材としては、特に限定するものではなく、公知のゴム粒子を用いることができる。典型的には、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)、イソプレンゴム(IR)、EPM/EPDM(エチレンプロピレンゴム)、アクリロニトリルブタジエンゴム又はニトリルゴム(NBR)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、ウレタンゴム、多硫化ゴム、エピクロルヒドリンゴムなどの各種のゴム粒子を適宜用いることができる。
【0048】
この層におけるゴム系充填材の含有量は、特に限定するものではないが、例えば、ジシクロペンタジエン系樹脂の0.5質量%以上40質量%以下であり、また例えば、1質量%以上30質量%以下であり、また例えば、2質量%以上25質量%以下等である。
【0049】
(本成形体の構造)
本成形体は、第1の相を少なくとも備える成形体であり、本成形体における第1の相が占める形態を特に限定するものではない。本成形体は、好適には、第1の相を層として1個又は2個以上備えることができる積層体である。また、第1の相のほかに本成形体を構成する第2の相、第3の相及び第4の相からなる群から選択される1種又は2種以上の相も、それぞれ層として備える積層体が好適である。第1の相、必要に応じてさらに第2の相、第3の相及び第4の相の1種又は2種以上を組み合わせて積層体とすることで、種々の用途に適合させた、強度、硬度、弾性、比重などを付与することができる。
【0050】
本成形体は、第1の相を1層又は複数層備えることができる。複数層の第1の相が、直接積層されていてもよい。第2の相も、必要に応じて1層又は複数層備えることができる。第2の相は、1つの第1の相又は第1の相が複数層積層されたユニットの表層の少なくとも一部、例えば、全体を被覆するように積層される。また、第2の相は、こうした積層体の最表層、すなわち、積層体の積層方向に沿った最外側になる一方又は双方に備えることができる。
【0051】
第3の相及び第4の相は、必要に応じて、それぞれ1層又は複数層備えることができる。これらの層の積層箇所は特に限定するものではない。これらの相は、適宜中間相などとして用いることができるほか、表層としても用いることができる。
【0052】
成形体の比重は、特に限定するものではないが、例えば、0.4以上1.0以下である。成形体は、第1の相を備えることから、比重が1.0以下であるにも関わらず、優れた強度、靱性、耐熱性、を発揮することができる。また、第2の相及び第3の相を備えることで、ファイバー状充填材に基づく強度、靱性、弾性、減衰性等を発揮することができる。
【0053】
(本成形体の製造方法)
本明細書に開示される成形体の製造方法は、ジシクロペンタジエン系モノマーを含むモノマー成分と、前記ジシクロペンタジエン系モノマーを開環重合するための重合触媒と、中空粒子状充填材と、を含む硬化性組成物を用いて得ようとする成形体の少なくとも一部である前駆体を形成する工程と、前駆体を加熱し、前記ジシクロペンタジエン系モノマーを重合させて、ジシクロペンタジエン系樹脂と中空粒子状充填材とを含む相を形成する相形成工程と、を備えることができる。
【0054】
この製造方法によれば、中空粒子状充填材が、ジシクロペンタジエン系樹脂中に優れた分散状態で保持された層を備える成形体(積層体)を製造することができる。このため、ジシクロペンタジエン系樹脂に軽量性及び強度のほか、弾性や引張特性に優れるジシクロペンタジエン系樹脂の成形体を製造することができる。
【0055】
具体的には、例えば、前駆体の形成工程は、シクロペンタジエン系モノマーを含むモノマー組成物と、前記ジシクロペンタジエン系モノマーを含むモノマー組成物を開環重合するための重合触媒と、中空粒子状充填材と、非中空粒子状充填材と、を含む硬化性組成物を被塗工物にスプレー塗装などにより、塗膜を形成する塗膜形成工程などとすることができる。また、相形成高低は、例えば、前記塗膜を加熱し、塊状重合などにより、ジシクロペンタジエン系樹脂と中空粒子状充填材とを含む層を形成する層形成工程とすることができる。
【0056】
この製造方法においては、塗膜形成工程は、表面にファイバー状充填材のシート状体を備えた被塗工物のファイバー状のシート状体に対して硬化性組成物をスプレー塗装する工程とすることができる。こうすることで、シート状体に、気泡の形成を抑制又は回避して、ジシクロペンタジエン系樹脂が十分に浸透し、中空粒子状充填材と非中空粒子状充填材とが良好に分散されて複合化された層を形成することができる。
【0057】
(繊維強化成形体を製造するための硬化性組成物)
本硬化性組成物は、ジシクロペンタジエン系モノマーを含むモノマー組成物と、ジシクロペンタジエン系モノマーなどを開環重合するための重合触媒と、中空粒子状充填材と、を含むことができる。本硬化性組成物によれば、中空粒子状充填材を含むため、ジシクロペンタジエン系樹脂に対して軽量性及び強度を向上させることができる。本硬化性組成物は、その他、老化防止剤など、この種の硬化性組成物がふくむことができる添加剤や助剤を適宜含むことができる。
【実施例0058】
(表層の準備)
本実施例は、トルソーの製造例である。トルソーの正面及び背面に相当する成形表面を有するトルソー型を準備し、トルソー型の成形表面に、硬化性組成物として、TELENE1800EMS(ジシクロペンタジエン系モノマーを含むモノマー組成物)とTELENE1800CS(メタセシス重合触媒)(いずれもRIMTEC社製)とを質量比で100:3の比率で混合した混合物を、刷毛で塗布した。塗布量は、トルソーの全体で100gとした。この硬化性組成物塗布後のトルソー型を、60℃の硬化炉に導入して30分保持後、炉外にて放置して冷却した。
【0059】
(中間層の準備)
冷却後、硬化した膜の表面に、硬化性組成物として、TELENE1800MS(ジシクロペンジエン系モノマーを含むモノマー組成物、RIMTEC社製)と樹脂バルーン(松本油脂製、シェル組成:アクリロニトリル系樹脂、平均粒子径:40~60μm、真比重0.025~0.035)とTELENE1800CS(メタセシス重合触媒)とを、質量比100:15:3で配合した混合物を、配合比(100:15:3)リシンガンに投入し、吹き付けて塗膜を形成した。吹き付け量は、トルソー全体で1400gとした。この硬化性組成物塗布後のトルソー型を、60℃の硬化炉に導入して30分保持後、炉外にて放置して冷却した。
【0060】
(裏面の準備)
冷却後、トルソー型内で硬化した膜の表面に、硬化性組成物として、表層と同様の硬化性組成物を準備して、刷毛で塗布した。塗布量は、トルソーの全体で150gとした。この硬化性組成物塗布後のトルソー型を、60℃の硬化炉に導入して30分保持後、炉外にて放置して冷却した。
【0061】
トルソー型内にトルソーの正面部分及び背面部分をそれぞれ形成後、両者の接合面に、中間層と同様の硬化性組成物を塗布して、トルソー型をボルト等で型締して、60℃の硬化炉で30分硬化させた。冷却後、脱型し、接合部のバリを除去した憲、110℃の硬化炉にトルソーを導入し、製品温度が100℃を超えた後、10分間さらに硬化させた。炉外にて放置して冷却した。
【0062】
作製したトルソーでは、全体として、平均4mmの厚さの壁部で構成されているため軽量であり、しかも、十分な強度を有していた。
【0063】
以上、本明細書が開示する技術の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。本明細書に説明した技術要素は、単独で、あるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。本明細書に例示した技術は、複数の目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。