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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160733
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】電力取引方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/06 20120101AFI20231026BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20231026BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20231026BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
G06Q50/06
H02J3/00 180
H02J3/38 120
H02J3/32
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023038461
(22)【出願日】2023-03-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2022069888
(32)【優先日】2022-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022127850
(32)【優先日】2022-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】517150009
【氏名又は名称】株式会社MR Japan
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】平林 真人
【テーマコード(参考)】
5G066
5L049
【Fターム(参考)】
5G066HB02
5G066HB06
5G066HB09
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】電力の安定供給を可能とする電力取引方法を提供する。
【解決手段】本発明の電力取引方法は、取引される電力の情報として再生可能エネルギーによって生成された電力であるかを識別する再生可能エネルギー識別情報が付与されている電力取引市場において電力の取引を行う電力取引方法であり、電力取引市場における電力の価格、容量、および再生可能エネルギー識別情報に基づいて、電力取引を行う電力取引市場を決定し、蓄電システムの蓄電状況に基づいて電力の取引を行う。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
卸電力市場、容量市場、および需給調整市場を含み、取引される電力の情報として再生可能エネルギーによって生成された電力であるかを識別する再生可能エネルギー識別情報が付与されている電力取引市場において、電力の取引を行う電力取引システムにおける電力取引方法であって、
前記電力取引市場における電力の価格、容量、および前記再生可能エネルギー識別情報に基づいて、前記卸電力市場、容量市場、および需給調整市場のうち電力取引を行う電力取引市場を決定する第1ステップと、
電力系統に接続された複数の蓄電システムの蓄電状況を管理する電力管理システムから受信した前記蓄電システムの放電電力または充電電力の対応能力に基づいて、充電または放電を行う時間と電力の容量を決定する第2ステップと、
前記第1ステップで決定した前記電力取引市場において、前記第2ステップで決定した充電または放電を行う時間と電力の容量に基づいて、電力の取引を行う第3ステップと、
前記第3ステップにおける電力の取引結果を、前記電力管理システムに通知する第4ステップと
を含む電力取引方法。
【請求項2】
前記第3ステップにおいて、前記再生可能エネルギー識別情報に基づいて、前記再生可能エネルギーによって生成された電力のみを指定して電力の取引を行う
請求項1に記載の電力取引方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の蓄電システムから電力系統へ供給する、電力系統から複数の蓄電システムに電力を蓄電する電力を管理する蓄電管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、将来のカーボンニュートラルの達成を目的として、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギーの活用が進められている。太陽光発電や風力発電等の再生可能エネルギーは、天候や時間帯等の影響で発電量が変動するため、導入が進むと電力系統の安定性に影響を及ぼす可能性がある。再生可能エネルギーを商用電力系統に接続する場合には、再生可能エネルギーの発電量の変動に対処する必要がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1の電力供給システムでは、送配電網および電力需要家に選択的に電力供給可能に接続された複数の補助電源からなる電源グループの各補助電源に対して発電および電力供給に関する指令を与える制御ユニットを備え、制御ユニットは、電気事業者による電力要請に基づいて、補助電源に対して送配電網へ電力供給させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-043735号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような電力供給システムでは、発電事業者や電気事業者において電力の供給が不足した場合には、電力系統に接続された補助電源から電力を供給することができるので、再生エネルギーの変動等の短期的な電力の供給変動に対処することができる。一方で、将来にわたって電力の安定供給を行うことを目的として、電力取引市場の導入が進められており、電力取引市場における電力取引に対応して電力の需給調整を可能とする技術が求められている。
【0006】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、電力取引市場における電力取引を行うことにより電力の需給調整を可能とし、将来にわたって電力の安定供給を可能とするシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的を達成するために、本発明の電力取引方法は、卸電力市場、容量市場、および需給調整市場を含み、取引される電力の情報として再生可能エネルギーによって生成された電力であるかを識別する再生可能エネルギー識別情報が付与されている電力取引市場において、電力の取引を行う電力取引システムにおける電力取引方法であって、前記電力取引市場における電力の価格、容量、および前記再生可能エネルギー識別情報に基づいて、前記卸電力市場、容量市場、および需給調整市場のうち電力取引を行う電力取引市場を決定する第1ステップと、電力系統に接続された複数の蓄電システムの蓄電状況を管理する電力管理システムから受信した前記蓄電システムの放電電力または充電電力の対応能力に基づいて、充電または放電を行う時間と電力の容量を決定する第2ステップと、前記第1ステップで決定した前記電力取引市場において、前記第2ステップで決定した充電または放電を行う時間と電力の容量に基づいて、電力の取引を行う第3ステップと、前記第3ステップにおける電力の取引結果を、前記電力管理システムに通知する第4ステップとを含む。
【0008】
また、前記第3ステップにおいて、前記再生可能エネルギー識別情報に基づいて、前記再生可能エネルギーによって生成された電力のみを指定して電力の取引を行ってもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、電力取引市場における電力取引を行うことにより電力の需給調整を可能とし、将来にわたって電力の安定供給を可能とするシステムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の実施の形態にかかる蓄電管理システムを用いた電力供給システムのシステム構成図である。
図2図2は、本発明の実施の形態にかかる蓄電管理システムにおける蓄電管理テーブルの一例を示す図である。
図3図3は、本発明の実施の形態にかかる蓄電管理システムの動作シーケンスの一例を示す図である。
図4図4は、本発明の実施の形態にかかる蓄電管理システムの動作シーケンスの他の一例を示す図である。
図5図5は、本発明の実施の形態にかかる蓄電管理システムにおける蓄電システムの構成の一例である。
図6図6は、本発明の実施の形態にかかる電力取引システムにおける電力取引方法の動作シーケンスの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に説明する本発明の実施の形態は本発明を実施するための一例であって、本発明が以下に説明する実施形態に限定されることを意図したものではない。
【0012】
<電力供給システムのシステム構成>
図1を参照して、本発明の実施の形態にかかる蓄電管理システム10を用いた電力供給システム1について説明する。図1は、本発明の実施の形態にかかる蓄電管理システムを用いた電力供給システム1のシステム構成図である。
【0013】
本発明の実施の形態にかかる蓄電管理システム10を用いた電力供給システム1は、電力取引市場70において電力取引を行う電力取引システム40と、商用電力系統60に接続された複数の蓄電システム30と、複数の蓄電システム30の蓄電状況を管理し、各蓄電システム30に対して電力の放電や充電を指示する電力管理システム20とを備える。
【0014】
複数の蓄電システム30は、商用電力系統60に直接接続されており、商用電力系統60に放電し、または商用電力系統60から充電することで、商用電力系統60における電力の需給調整に寄与することができる。
【0015】
商用電力系統60には、発電事業者や電気事業者等の事業者80と電力需要家90が接続されており、事業者80から供給された電力が電力需要家90に供給される。事業者80には、商用電力系統60に再生可能エネルギーを供給する発電事業者も含まれる。
【0016】
電力取引市場70には、例えば、卸電力市場、容量市場、需給調整市場が含まれる。電力取引市場70では、卸電力市場において取引される電力量、容量市場において取引される電力供給力、および需給調整市場において取引される電力調整力の取引が行われる。
【0017】
電力取引システム40は、電力取引市場70を介して、発電事業者、電気事業者を含む事業者80との間で、卸電力市場において取引される電力量、容量市場において取引される電力供給力、および需給調整市場において取引される電力調整力の取引を行う。電力取引システム40は、電力取引市場70における電力の取引結果に基づいて蓄電管理システム10に対して、電力の放電あるいは充電を依頼する。
【0018】
電力管理システム20は、クラウド50を介して複数の蓄電システム30の蓄電状況を管理し、蓄電状況に基づいて電力取引システム40に対して、電力取引への対応能力を通知する。例えば、複数の蓄電システム30の全体で対応可能な放電電力や充電電力の値を電力取引への対応能力として通知する。
【0019】
電力取引システム40は、電力取引市場70において電力取引を行い、電力の取引結果および電力管理システム20からの対応能力に基づいて、電力管理システム20に対して電力の放電あるいは充電の依頼を送信する。
【0020】
電力管理システム20は、電力取引システム40からの電力の放電あるいは充電の依頼を受けて、複数の蓄電システム30の蓄電状況に基づいて、複数の蓄電システム30の各蓄電システムに対する電力の割当を決定し、各蓄電システム30に対して、クラウド50を介して商用電力系統60への電力の放電、または商用電力系統60からの電力の充電を指示する。
【0021】
各蓄電システム30は、クラウド50を介して受信した電力管理システム20からの指示に基づいて、商用電力系統60に電力を放電し、または商用電力系統60から電力を充電する。各蓄電システム30は、商用電力系統60に対して電力を放電し、または商用電力系統60から電力を充電することで、商用電力系統60における電力の需給バランスの調整に寄与することができる。
【0022】
各蓄電システム30は、所定の容量の蓄電池と電力制御装置を備える。電力制御装置は、蓄電池における電力の放電および充電と商用電力系統60との電力の放電および充電を制御する。電力制御装置は、電力管理システム20からの指示に基づいて、蓄電池における電力の放電および充電と、商用電力系統60との間で電力の放電および充電を制御し、蓄電池の充電容量や空き容量等の情報を含む蓄電状況を電力管理システム20に送信する。
【0023】
蓄電システム30は、蓄電池、双方向インバータ及びキュービクルを基本構成とする。双方向インバータは、電力制御装置内に搭載され、双方向で直流電力と交流電力の間で電力の変換を行う装置である。キュービクルは、電力制御装置と商用電力系統あるいは負荷系統との間において電力を変換する装置である。
【0024】
ここで、蓄電池の入出力(充電/放電)スピードは、インバータ容量(インバータの入出力容量)と同一とするのが望ましい。例えば、蓄電池の容量が2000kWh(2MWh)で、インバータ容量が2000kWである場合、蓄電池の入出力スピードは、インバータ容量に対応させて2000kW(C-Rate)とすることが最適である。なお、蓄電池の入出力スピードをインバータ容量に対応させたうえで、蓄電池の容量を、上記の単位で増設することが可能である。蓄電池入出力スピードがインバータ容量より少ない場合は蓄電池を並列に接続する。C-Rateはインバータの容量を超えても意味をなさない。高圧接続(200kW以下)にするために、1台のインバータに、1台の蓄電池(マスター)の蓄電池の下に複数の蓄電池を接続して蓄電池容量を増やすことも可能である。または分散型にして、1台のインバータに1台または複数台の蓄電池を接続することもできる。
【0025】
蓄電池の構成は、20フィートコンテナを使用して、2MWhの蓄電池を搭載するのが望ましい。40フィートコンテナに4MWhの蓄電池を搭載した場合、現行のリチウムイオン蓄電池では重量が重すぎることと長さが長いため運搬時に不都合が生じる場合がある。また、日本の道路事情を考慮すると、40フィートコンテナでは長すぎるという問題もあるので20フィートコンテナを採用することが推奨される。
【0026】
本発明の実施の形態に係る蓄電管理システム10は、商用電力系統60に直接接続された複数の蓄電システムの蓄電状況を管理し、電力取引市場70において取引される電力および蓄電状況に基づいて、各蓄電システムに対して、商用電力系統60に電力を放電し、または商用電力系統60から電力を充電するように構成されている。
【0027】
このような構成により、再生エネルギーの変動等の短期的な電力の供給変動に対応するだけでなく、電力取引市場70における取引結果に基づいて、長期的な電力の需給調整が可能となり、将来にわたって電力の安定供給を行うシステムを提供することが可能となる。
【0028】
<蓄電管理テーブル>
図2は、本発明の実施の形態にかかる蓄電管理システムにおける蓄電管理テーブルの一例を示す図である。蓄電管理テーブルは、複数の蓄電システム30の各蓄電システムの蓄電状況を管理するための管理テーブルである。蓄電管理テーブルは、電力管理システム20において管理される。
【0029】
図2の例では、蓄電管理テーブルには、各蓄電システム30の蓄電状況を示す情報として、蓄電池の総容量、蓄電池の充電容量、および空き容量が保存されている。電力管理システム20では、電力取引システム40からの電力の充電あるいは放電の依頼を受けて、蓄電管理テーブルの各蓄電システム30の蓄電状況に基づいて、各蓄電システム30が商用電力系統60に放電するまたは商用電力系統60に充電する電力を決定する。
【0030】
電力管理システム20では、複数の蓄電システム30の各蓄電システムの蓄電状況をまとめて管理しているので、電力取引市場70において取引される電力に対する対応能力を、複数の蓄電システム30の蓄電状況に応じて定めることができ、各蓄電システム30の電力状況に応じて、各蓄電システム30における放電電力や充電電力を決定し、各蓄電システム30に対して放電あるいは充電の指示をすることができる。
【0031】
また、本実施の形態の蓄電管理システム10は、様々な電力取引市場70、例えば、卸電力市場、容量市場、および需給調整市場における取引電力に対応可能である。蓄電管理テーブルも卸電力市場、容量市場、および需給調整市場における電力取引に対応可能に構成されている。
【0032】
例えば、図2に示すように、容量市場における電力供給力や需給調整市場において取引される電力調整力に対応して、所定の電力容量を対応済み容量として、確保しておくことができる。図2の構成例では、各蓄電システム30において、充電容量のうち対応済容量を除いた容量が放電可能な容量となる。また、電力取引市場70において再生エネルギーによって生成された電力を指定して取引した場合には、その容量を再生エネルギー電力容量として保存しておくこともできる。
【0033】
<蓄電管理システムの電力供給動作>
図3を用いて、本実施の形態にかかる蓄電管理システム10の電力供給動作について説明する。図3は、本発明の実施の形態にかかる蓄電管理システムの動作シーケンスの一例を示す図である。
【0034】
各蓄電システム30は、クラウド50を介して蓄電池の蓄電状況を電力管理システム20に提供し(100)、電力管理システム20は、各蓄電システム30の蓄電状況を蓄電管理テーブルに登録する(101)。
【0035】
各蓄電システム30は、蓄電池の蓄電状況に変化があった場合には、蓄電池の蓄電状況を電力管理システム20に提供する。蓄電池の故障等の情報も蓄電状況として提供することができる。
【0036】
電力管理システム20は、蓄電管理テーブルの蓄電状況に基づいて電力取引システム40に対して、電力取引に対応する放電電力あるいは充電電力に関する対応能力を通知する(102)。例えば、複数の蓄電システム30の全体で対応可能な放電電力や充電電力を電力取引への対応能力として通知する。
【0037】
電力取引システム40では、電力取引市場70において、卸電力市場において取引される電力量、容量市場において取引される電力供給力、および需給調整市場において取引される電力調整力の取引を行い、取引電力を決定する(110、111)。
【0038】
電力取引市場70における電力取引には、電力の買い取りと売却が含まれる。電力の買い取りを行う場合には、商用電力系統60から蓄電システム30に充電を行い、電力の売却を行う場合には、蓄電システム30から商用電力系統60に放電を行う。
【0039】
電力取引システム40は、電力取引への対応能力の情報に基づいて、電力取引市場70における電力取引に対応する電力の充電あるいは放電を電力管理システム20に依頼する(120)。電力管理システム20に依頼する充電電力あるいは放電電力は、当該電力管理システム20の対応能力の範囲内で定められる。電力取引システム40は、複数の電力管理システム20の対応能力の情報に基づいて、複数の電力管理システム20に対して取引電力への対応を分散させてもよい。
【0040】
電力管理システム20は、電力取引システム40からの依頼に対して、蓄電管理テーブルの蓄電状況を参照し、複数の蓄電システム30の各蓄電システムにおける電力の割当を決定する(121)。電力管理システム20は、各蓄電システム30に対して、クラウド50を介して商用電力系統60への放電または商用電力系統60からの充電を指示する(122)。
【0041】
複数の蓄電システム30の各蓄電システムは、電力管理システム20からの指示に基づいて、商用電力系統60に電力を放電し、または商用電力系統60から電力を充電し(130)、クラウド50を介して最新の蓄電状況を電力管理システム20に送信する(131)。
【0042】
<本発明の実施の形態の効果>
このように、本発明の実施の形態に係る蓄電管理システム10は、商用電力系統60に直接接続された複数の蓄電システムの蓄電状況を管理し、電力取引市場70において取引される電力および蓄電状況に基づいて、各蓄電システムに対して、商用電力系統に電力を放電し、または商用電力系統から電力を充電するように構成されている。このような構成により、再生エネルギーの変動等の短期的な電力の供給変動に対応するだけでなく、電力取引市場70における取引結果に基づいて、長期的な電力の需給調整が可能となり、将来にわたって電力の安定供給を行うシステムを提供することが可能となる。
【0043】
また、本発明の実施の形態に係る蓄電管理システム10は、卸電力市場、容量市場、需給調整市場等の様々な電力取引市場70における電力取引に対応可能である。卸電力市場において取引される電力量、容量市場において取引される電力供給力、および需給調整市場において取引される電力調整力に対応して、長期的な電力の需給調整に寄与し、電力の安定供給に寄与することができる。
【0044】
<実施の形態の拡張>
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。
【0045】
図3のシーケンスでは、電力取引システム40は、電力取引市場70において、取引を行った後に、電力管理システム20から通知された放電または充電する電力の対応能力に応じて、電力管理システム20に対して、電力の充電または放電を依頼するように構成されている。
【0046】
図4は、本発明の実施の形態にかかる蓄電管理システムの動作シーケンスの他の一例を示す図である。図4のシーケンスでは、電力取引システム40は、蓄電システム30の蓄電状況を管理する電力管理システム20から通知される蓄電状況と、電力取引市場における電力の価格および容量に基づいて、電力取引市場において電力の取引を行うように構成されている(202、210、211、212)。
【0047】
図4のシーケンスによれば、電力取引システム40は、蓄電システム30の蓄電状況を踏まえて電力の取引を行うことができるので、電力取引市場70における電力の価格に応じた電力取引、すなわち、電力価格の比較的安い時間帯に電力の買取を行い、電力の買取時における価格よりも高い価格が提示された時に、電力の売却を行うというような電力取引を行うことができる。
【0048】
この場合、電力取引システム40は、電力取引市場における電力の取引の結果に応じて、電力管理システム20に対して、電力の充電または放電を行う時間の情報と、充電または放電する電力量の情報を送信する(220)。このような処理により、電力取引システム40は、蓄電システム30の蓄電状況を踏まえた信頼性のある電力取引を行うことが可能となる。
【0049】
また、電力取引システム40は、電力取引市場70において、再生エネルギーによって生成された電力のみを指定して購入することが可能なように構成してもよい。例えば、再生エネルギーによって生成された電力の価格が比較的安い時間帯に電力の買取を行っておき、電力の価格が比較的高い時間帯に電力の売却を行うというような電力取引を行うことが可能となる。再生エネルギーによって生成された電力を指定して購入し、その購入した電力を蓄電システム30において充電した場合には、図2の蓄電管理テーブルに、その電力の容量を再生エネルギー電力容量として保存しておけばよい。再生可能エネルギーのみでは容量が満たない場合は、再生可能エネルギーのみではなく化石燃料等によるエネルギーを売買として行えばよい。
【0050】
図5は、本発明の実施の形態にかかる蓄電管理システムにおける蓄電システムの構成の一例である。図5の蓄電システム30は、図1の蓄電システム30と比較して、工場やプラント等の負荷が接続されており、蓄電池に充電された電力を自家消費する機能を有している。
【0051】
図5の蓄電システム30は、電力取引市場70において比較的安い価格で購入した電力や、再生エネルギーで生成された電力のみを購入して、蓄電池に充電しておき、この蓄電池に充電された電力を、商用電力系統60に放電する他、負荷において自家消費することもできる。
【0052】
なお、図5に示すように、蓄電システム30が、UPS(Uninterruptible Power Supply)を備えることにより、商用電力系統60が停電した場合において、電力制御装置の自立運転機能が作動しないように構成することができ、停電時においても、蓄電池に充電されている電力を自家消費することができる。
【0053】
図6は、本発明の実施の形態にかかる電力取引システムにおける電力取引方法の動作シーケンスの一例を示す図である。図6のシーケンスでは、電力取引システム40は、卸電力市場、容量市場、および需給調整市場等の電力取引市場における電力の価格、容量、および再生可能エネルギー識別情報に基づいて、卸電力市場、容量市場、および需給調整市場のうち電力取引を行う電力取引市場を決定する(310、311)。
【0054】
電力取引市場において取引される電力には、取引される電力の情報として再生可能エネルギーによって生成された電力であるかを識別する再生可能エネルギー識別情報が付与されている。電力取引システム40は、再生可能エネルギー識別情報を参照することにより、卸電力市場、容量市場、および需給調整市場のうちどの市場で電力取引を行うかを決定することができ、決定した市場において再生可能エネルギーを特定して電力取引を行うことができる。
【0055】
図6のシーケンスにおいて、電力取引システム40は、蓄電システム30の蓄電状況を管理する電力管理システム20に対して、各蓄電システムの充電あるいは放電する能力を要求し、電力管理システム20から通知される充電あるいは放電する能力と、上記で決定した電力取引市場における電力の価格、容量に基づいて、電力取引市場において電力の取引を行う(312、313、314、315)。
【0056】
電力取引システム40は、電力取引市場における再生可能エネルギー識別子に基づいて、電力取引市場を決定して電力の取引を行うことができるので、再生可能エネルギーによって生成された電力を指定した電力取引を容易に行うことができる。本実施の形態の方法は、再生可能エネルギーによって生成された電力を使用することが義務付けられた場合等に、再生可能エネルギーの使用効果を示す場合に有効である。
【0057】
例えば、再生可能エネルギーによって生成された電力の価格が比較的安い時間帯に電力の買取を行っておき、電力の価格が比較的高い時間帯に電力の売却を行うというような電力取引を容易に行うことが可能となる。これにより、再生可能エネルギーによって生成された電力の使用量が明確となり、再生可能エネルギーの使用効果を客観的に示すことが可能となる。
【0058】
再生可能エネルギーによって生成された電力を指定して取引した場合には、図2の蓄電管理テーブルに、その電力の容量を再生可能エネルギー電力容量として保存しておくことで、再生可能エネルギーを用いて生成した電力とその他の電力を区別して管理することが可能である。
【符号の説明】
【0059】
1…電力供給システム、10…蓄電管理システム、20…電力管理システム、30…蓄電システム、40…電力取引システム、50…クラウド、60…商用電力系統、70…電力取引市場、80…事業者、90…電力需要家。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2023-06-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
卸電力市場、容量市場、および需給調整市場を含み、取引される電力の情報として再生可能エネルギーによって生成された電力であるかを識別する再生可能エネルギー識別情報が付与されている電力取引市場において、電力の取引を行う電力取引システムにおける電力取引方法であって、
前記電力取引市場における電力の前記再生可能エネルギー識別情報を参照することにより、前記卸電力市場、容量市場、および需給調整市場のうち電力取引を行う電力取引市場を決定する第1ステップと、
電力系統に接続された複数の蓄電システムの蓄電状況を管理する電力管理システムから受信した前記蓄電システムの放電電力または充電電力の対応能力に基づいて、充電または放電を行う時間と電力の容量を決定する第2ステップと、
前記第1ステップで決定した前記電力取引市場において、前記第2ステップで決定した充電または放電を行う時間と電力の容量に基づいて、前記再生可能エネルギーによって生成された電力のみを指定して電力の取引を行う第3ステップと、
前記第3ステップにおける電力の取引結果を、前記電力管理システムに通知する第4ステップと
を含む電力取引方法。