特開 2023-160750 塗布具

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2023160750

(43)【公開日】2023-11-02

(54)【発明の名称】塗布具

(51)【国際特許分類】

   B43K 8/04 20060101AFI20231026BHJP

   A45D 34/04 20060101ALI20231026BHJP

   B43K 8/02 20060101ALI20231026BHJP

   B05C 17/00 20060101ALI20231026BHJP

   B43K 8/03 20060101ALI20231026BHJP

【ＦＩ】

B43K8/04

A45D34/04 525A

B43K8/02 100

B05C17/00

B43K8/03 100

【審査請求】未請求

【請求項の数】3

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2023061822

(22)【出願日】2023-04-06

(31)【優先権主張番号】P 2022069828

(32)【優先日】2022-04-21

(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP

(71)【出願人】

【識別番号】000005511

【氏名又は名称】ぺんてる株式会社

(72)【発明者】

【氏名】林 佑美

(72)【発明者】

【氏名】米田 晶

(72)【発明者】

【氏名】小澤 崇将

(72)【発明者】

【氏名】丸山 美祐

【テーマコード（参考）】

2C350

4F042

【Ｆターム（参考）】

2C350GA05

2C350GA06

2C350HA14

2C350HA15

2C350KA10

4F042AA01

4F042AB00

4F042BA12

4F042CA01

4F042CB18

4F042FA22

4F042FA24

4F042FA25

4F042FA30

4F042FA32

4F042FA43

(57)【要約】      （修正有）

【課題】開示されている塗布具では、塗布体が塗布液吸蔵体を貫通しない構成にしようとすると、塗布液が塗布体側に流れにくく、塗布体と塗布液吸蔵体の境界の毛管力が低下し、塗布液が吐出しにくくなるという問題があった。本発明は、塗布液の吐出が良好な塗布具を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、塗布液吸蔵体が、少なくとも塗布体後方が挿入され、当該塗布体後方が挿入される軸方向範囲が径方向内側に向かって圧縮されて配置される塗布具１を第１の要旨とする。
【選択図】図１

【特許請求の範囲】

【請求項1】

塗布液を直接収容する塗布液タンクと、塗布液を塗布する塗布体と、塗布液タンクから塗布体側へ塗布液を自由状態で供給する塗布液供給管と、塗布液供給管から塗布体へ塗布液を供給する塗布液吸蔵体が配置された塗布具であって、塗布液吸蔵体は、少なくとも塗布体後方が挿入され、当該塗布体後方が挿入される軸方向範囲が径方向内側に向かって圧縮されて配置される塗布具。

【請求項2】

前記塗布液吸蔵体は、塗布体後方と塗布液供給管前方とが挿入され、塗布体後端面と塗布液供給管前端面とに押圧されることで内部に圧縮部が形成される、請求項１に記載の塗布具。

【請求項3】

前記塗布液吸蔵体が、塗布体後方が挿入される軸方向範囲において塗布体後方側から塗布体前方側に向かって径方向内側に向かう圧縮の程度が大きくなるよう配置される、請求項１または請求項２に記載の塗布具。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、塗布液タンク内に収容された塗布液を、塗布液吸蔵体を介して塗布先へ供給可能な塗布具に関するものである。

【背景技術】

【0002】

従来から、筆記用、描画用、化粧用、医療用など様々な用途の塗布具が存在する。そして、その用途、塗布液の種類、使用場面などに応じて、様々な内部構造の塗布具が開示されている。例えば特許文献１には、塗布体が塗布液吸蔵体に挿入されて配置され、塗布液吸蔵体を収容する空間が、塗布体側から塗布液タンク側に向かって漸次小径となる塗布具が開示されている。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0003】

【特許文献1】特開平１１－７８３５２号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0004】

特許文献１に開示されている塗布具では、塗布体が塗布液吸蔵体を貫通しない構成にしようとすると、塗布液が塗布体側に流れにくく、塗布体と塗布液吸蔵体の境界の毛管力が低下し、塗布液が吐出しにくくなるという問題があった。

【0005】

本発明は、塗布液の吐出が良好な塗布具を提供することを目的とする。

【課題を解決するための手段】

【0006】

本発明は、塗布液を直接収容する塗布液タンクと、塗布液を塗布する塗布体と、塗布液タンクから塗布体側へ塗布液を自由状態で供給する塗布液供給管と、塗布液供給管から塗布体へ塗布液を供給する塗布液吸蔵体が配置された塗布具であって、塗布液吸蔵体は、少なくとも塗布体後方が挿入され、当該塗布体後方が挿入される軸方向範囲が径方向内側に向かって圧縮されて配置される塗布具を第１の要旨とする。また、前記塗布液吸蔵体は、塗布体後方と塗布液供給管前方とが挿入され、塗布体後端面と塗布液供給管前端面とに押圧されることで内部に圧縮部が形成される塗布具を第２の要旨とする。そして、前記塗布液吸蔵体が、塗布体後方が挿入される軸方向範囲において塗布体後方側から塗布体前方側に向かって径方向内側に向かう圧縮の程度が大きくなるよう配置される塗布具を第３の要旨とする。

【発明の効果】

【0007】

本発明は、塗布液吸蔵体が、塗布体後方が挿入される軸方向範囲が径方向内側に向かって圧縮されて配置されるため、塗布体後方の外周面に塗布側吸蔵体が押し付けられ、塗布体と塗布液吸蔵体との境界の毛管力が高くなる。よって、塗布体後方の端面のみならず、塗布液吸蔵体に挿入される軸方向範囲の外周面からも塗布液が供給されやすくなり、塗布液の吐出が良好な塗布具とすることができる。また第２の要旨にあっては、塗布体後端面と塗布液供給管前端面とで塗布液吸蔵体に圧縮部を形成することで、塗布体後端面は、局所的に毛管力が高く塗布液が豊富に含浸された塗布液吸蔵体と接して配置される。塗布体後方と塗布液吸蔵体との境界も毛管力が高くなっているため、塗布体後方外周面から塗布体へ塗布液がより供給されやすくなり、塗布液の吐出がより良好な塗布具とすることができる。そして第３の要旨にあっては、塗布液吸蔵体に挿入される塗布液後方の軸方向範囲で、塗布液供給管から遠い塗布体前方側ほど塗布体と塗布液吸蔵体との境界の毛管力が高くなるため、塗布体へ供給される塗布液が、より無駄なく塗布体へと供給されるため、塗布液の吐出がより良好な塗布具とすることができる。

【図面の簡単な説明】

【0008】

【図1】塗布具１の外観図

【図2】塗布具１の縦断面図

【図3】他の実施形態に係る塗布具１の縦断面図

【図4】図１のＡ－Ａ´線断面矢視図

【図5】図１のＢ部分拡大図

【発明を実施するための形態】

【0009】

以降、図面を適宜参照しつつ、本発明に係る塗布具の実施形態について説明する。本発明は実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。

【0010】

本発明の塗布具は、筆ペン、フェルトペン、マーキングペンなどの筆記具や描画用具、アイライナー、アイブロウ、アイシャドウなどの化粧用具、衛生消毒用などの薬液を塗布する医療用具などとして使用できる。その塗布具の用途に応じて任意の塗布液を使用できるが、２５℃において、粘度が１．００ｍＰａ・ｓ以上１００ｍＰａ・ｓ以下の比較的低粘度のものや、表面張力が２０．０ｍＮ／ｍ以上６０．０ｍＮ／ｍ以下の濡れ性が比較的高いものの使用が好ましい。

【0011】

図１は本発明の実施形態の１つである塗布具１の外観図、図２は塗布具１の縦断面図である。塗布具１は、毛用用具のアイライナーである。塗布具１は、軸筒２を基礎として各部材が収納、配置されている。軸筒２には、塗布液タンク３、塗布体４、塗布液供給管５、筒体６、塗布液吸蔵体７、などが配置されている。

【0012】

軸筒２は、前軸２ａと後軸２ｂとが結合して構成された部材である。前軸２ａと後軸２ｂとは、いずれもポリプロピレン樹脂製の成形品である。前軸２ａは円筒状の部材であり、軸方向両端が開口し軸方向に貫通した部材である。後軸２ｂは円筒状の部材であり、軸方向の一端が閉塞し、他の一端が開口した有底の部材である。前軸２ａにはキャップ９が着脱可能である。

【0013】

前軸２ａ外壁の軸方向中腹には、周状の突起である鍔部が設けられている。また、前軸２ａ外壁であって鍔部より後方には、周状の突起である前軸２ａ側嵌合部が設けられている。後軸２ｂの内壁には、周状の突起である後軸２ｂ側嵌合部が設けられている。後軸２ｂの開口端部から、前軸２ａの後方が挿入され、前軸２ａ側嵌合部と後軸２ｂ側嵌合部とが互いに乗り越えることで嵌合が完了し、前軸２ａと後軸２ｂとが結合する。このとき、後軸２ｂの開口端部の端面が前軸２ａの鍔部に当接することで、両部材の軸方向の位置決めができる。

【0014】

前軸２ａと後軸２ｂとは、本実施形態のような乗り越え嵌合の他、圧入関係や螺子螺合などの方法で適宜結合することができる。また、軸筒２、本実施形態のような前軸２ａと後軸２ｂとの２部品の結合ではなく、中空筒状の成形品１部品で構成することもできる。

【0015】

塗布液タンク３には、塗布液Ｌが直接収容されている。塗布液Ｌは、アイライナー用バルクである。本実施形態において塗布液タンク３には、塗布液Ｌの他、撹拌体３ａが収容されている。撹拌体３ａは、ステンレス（ＳＵＳ３０４）製の球体である。塗布液タンク３はポリプロピレン樹脂製の成形品であり、塗布液Ｌとの反応性が低く、撹拌に伴う撹拌体３ａの衝突に対する物理的な強度に優れているため好ましい。塗布液タンク３の内壁面には軸方向に延びるリブ３ｂが周方向等間隔に４本設けられており、塗布液タンク３の成形に際して壁の肉厚が不均一になり表面に凹みができるなどの現象（所謂ヒケ）の抑制と、撹拌体３ａが塗布液タンク３の内壁面に接着してしまうのを防止でき好ましい。

【0016】

塗布液タンク３は円筒状の部材であり、軸方向の一端が閉塞し、他の一端が開口した有底の部材である。前軸２ａの後方開口端部から、塗布液タンク３の開口端部が挿入され、圧入関係で結合される。

【0017】

塗布液タンク３は、本実施形態のように後軸２ｂと別部材とする他、後軸２ｂの内部空間に塗布液Ｌや撹拌体３ａを直接収容して、塗布液タンクとすることもできる。

【0018】

塗布体４は、塗布液Ｌを被塗布面へ塗布するための部材である。本実施形態において塗布体４は、筆穂４ａと、固定管４ｂと、中継芯４ｃとで構成されている。筆穂４ａは、濡れ性に優れた比較的軟質なポリアミド繊維と、耐候性に優れた比較的硬質なポリブチレンテレフタレート繊維とからなる繊維収束体であり、人の肌に触れ眼球付近で繊細な操作性が求められるアイライナーの塗布体４として好ましい。固定管４ｂは筒状部材であり、軸方向両端が開口した部材である。固定管４ｂはポリプロピレン樹脂製の成形品である。

【0019】

筆穂４ａは、前軸２ａの前方開口端部に、固定管４ｂを介して配置される。筆穂４ａの後端部には、中継芯４ｃが挿入されている。中継芯４ｃは、円柱状の繊維収束体である。筆穂４ａ及び中継芯４ｃには、塗布液Ｌが流通し吐出されるための複数の経路が多数存在する。その一部が、塗布液Ｌの吐出と同時になされる空気交換用の経路としても機能する。

【0020】

塗布体４は、本実施形態のように固定管４ｂを介して筆穂４ａを前軸２ａに配置する他、固定管４ｂを設けずに筆穂４ａを前軸２ａに直接配置したり、中継芯４ｃに相当する部位を筆穂３ａに直接設けたりすることもできる。

【0021】

筆穂４ａの材質は、成型性、塗布先乾燥性、書き味などを考慮して公知の材料を選択できる。繊維収束体としては、ポリアミド繊維、ポリエステル（ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなど）繊維、アクリル繊維、ポリウレタン繊維、ポリアクリロニトリル繊維などの合成繊維や、ヤギ、羊、馬、リスなどの天然獣毛などを適宜選択できる。また、多孔質体としては、ウレタンやスポンジなどを適宜選択できる。

【0022】

塗布液供給管５は、塗布液タンク３から塗布体４側へ塗布液Ｌを自由状態で供給するための流路を構成する部材である。塗布液供給管５はステンレス（ＳＵＳ３０４）製の筒状部材であり、軸方向両端が開口し軸方向に貫通した部材である。

【0023】

塗布液供給管５の材質は、成形性や塗布液Ｌとの反応性などを考慮して、ステンレス、鋼、真鍮、黄銅などの金属、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ＡＢＳ樹脂、シリコーン樹脂、エラストマー、又はこれらの樹脂を含む複合材などを適宜選択することができる。

【0024】

本実施形態においては、塗布液タンク３と、塗布液供給管５及び後述する塗布液吸蔵体７との間には、筒体６が配置されている。筒体６はポリプロピレン樹脂製の筒状部材であり、軸方向両端が開口し軸方向に貫通した部材である。筒体６は外筒６ａと内筒６ｂとが結合した重筒構造である。外筒６ａ内壁と内筒６ｂ外壁との間はいわゆる肉盗みがなされており、いわゆるヒケを防止することができる。筒体６の、外筒６ａと内筒６ｂとの結合部分側の開口端部から、塗布液供給管５の後方が挿入され、筒体６と圧入関係で結合される。筒体６の前端面は、塗布液吸蔵体７の後端面と当接している。なお、筒体６は塗布液供給管５と一体に成型して１部品にて流路を構成することもできる。

【0025】

筒体６は、前軸２ａの後方開口端部から挿入され、圧入関係で前軸２ａと結合される。前軸２ａ内の筒体６が挿入される開口部近傍の内壁には、周状の突起であるエアタイトリブが２条設けられており、前軸２ａと筒体６とが圧入関係で結合されることにより、前軸２ａの内壁と、筒体６ａの外壁とでエアタイトがなされる。

【0026】

図３に示す他の実施形態のように、内筒６ｂの内壁面から突出した周状の突起である塗布液逆流防止部６ｃを設けることもできる。塗布液逆流防止部６ｃが構成する塗布液Ｌの流路は、塗布液供給管５が構成する流路より小さいため、塗布具１を上向きで使用した際（塗布先４が水平より下向きから上向きにした際）に、塗布液供給管５内の塗布液Ｌが塗布液タンク３内に逆流しようとするところ、塗布液逆流防止部６ｃ近傍で塗布液Ｌが受ける管路抵抗が増大し、逆流に伴う空気交換も阻害されるため、塗布液Ｌの逆流を一時的に防止することができる。そのため、上向きで吐出できる塗布液Ｌの量を増やすことができ好ましい。

【0027】

各樹脂成形品の材質は、成形性や塗布液Ｌとの反応性などを考慮して、ポリプロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンナフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、塩化ビニル樹脂、エチレンビニルアルコール共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂、フッ素樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ＡＢＳ樹脂、シリコーン樹脂、エラストマー、またはこれらの樹脂を含む複合材などを適宜選択することができる。また、使用する塗布液Ｌに応じて、反応性や透過性などを考慮して、各部材の内壁面及び／又は外壁面に各種のコーティングや印刷などを施すこともできる。

【0028】

図４は図１のＡ－Ａ´線断面矢視図、図５は図１のＢ部分拡大図である。塗布体４後方である中継芯４ｃ後方は、塗布液吸蔵体５に挿入されている。塗布液吸蔵体７は、後述する塗布液供給管５から中継芯４ｃへ塗布液Ｌを供給するための部材である。また、塗布液Ｌが中継芯４ｃへ過剰に供給されないよう、一時的に塗布液Ｌを保持するバッファとしても機能するものである。塗布液吸蔵体７は、ポリエチレンテレフタレート樹脂製の繊維収束体である。塗布液吸蔵体７は円柱状の部材であり、前軸２ａの内部に収容される。なお、塗布液吸蔵体７は外周にフィルムを巻回することもできる。当該フィルムは例えばポリプロピレン樹脂等の材質のものを用いることができる。

【0029】

塗布液吸蔵体７は、塗布体４後方である中継芯４ｃ後方が挿入される軸方向範囲が、径方向内側に向かって圧縮されて配置されている。そのため、中継芯４ｃ後方の外周面に塗布液吸蔵体７が押し付けられ、中継芯４ｃ後方と塗布液吸蔵体７との境界の毛管力が高くなる。よって、中継芯４ｃには、中継芯４ｃ後方の端面のみならず、塗布液吸蔵体７に挿入される軸方向範囲の外周面からも塗布液Ｌが供給されやすくなり、塗布液Ｌの吐出が良好な塗布具１とすることができる。塗布液吸蔵体７における径方向内側に向かって圧縮されて配置される軸方向範囲は、少なくとも中継芯４ｃ後方が挿入されている範囲が含まれていればよく、それ以上広い範囲が径方向内側に向かって圧縮されていてもよい。

【0030】

また、塗布液吸蔵体７の塗布体４側の繊維密度が大きくなることで、塗布液吸蔵体７全体の毛管力も塗布液タンク３側より塗布体４側の方が大きくなり、塗布液Lの吐出が良好な塗布具１とすることができ好ましい。

【0031】

本実施形態においては、塗布液吸蔵体７を収容する空間を形成している前軸２ａの内壁に、軸方向に延びるリブ２ａａが６条形成されている。各リブ２ａａの、前軸２ａの径方向内側に突出した天面に、塗布液吸蔵体７の外壁が当接することで、塗布液吸蔵体７を径方向内側に向かって圧縮して配置することができる。
各リブ２ａａは、前軸２ａの内壁において周方向等間隔に離れて配置されている。各リブ２ａａ間においては、塗布液吸蔵体７と、リブ２ａａが形成されていない範囲の前軸２ａの内壁との間に、わずかに空間が生じるため、塗布液Ｌの吐出と同時になされる空気交換用の経路としても機能させることができる。

【0032】

前軸２ａの内壁の形状は、本実施形態のようにリブ２ａａを形成する他、単に前軸２ａの内壁で塗布液吸蔵体７の外壁を径方向内側に押圧できるものとしてもよい。つまり、前軸２ａ及び塗布液吸蔵体７を軸方向視した横断面において、少なくとも塗布液吸蔵体７に中継芯４ｃ後方が挿入される軸方向範囲の前軸２ａの内壁における最大内接円の面積が、塗布液吸蔵体７の、少なくとも塗布液吸蔵体７に中継芯４ｃ後方が挿入される軸方向範囲の横断面積より小さければよい。

【0033】

また、塗布液吸蔵体７の太さより細い空間に、塗布液吸蔵体７の前方であって中継芯４ｃ後方が挿入される軸方向範囲が収まるよう塗布液吸蔵体７が配置されればよいため、塗布液吸蔵体７自体は単一の部材でよく、塗布液吸蔵体７自体の毛管力を左右する繊維密度の過度な調整が不要となるため、比較的簡便な工程で本実施形態の構成を構築可能であり、好ましい。

【0034】

塗布液吸蔵体７には、塗布体４後方である中継芯４ｃ後方の他、塗布液供給管５前方が挿入されている。塗布液吸蔵体７には、中継芯４ｃ後端面と塗布液供給管５前端面とに押圧されることで、圧縮部７ａが形成されている。中継芯４ｃ後端面は、局所的に毛管力が高く塗布液Ｌが豊富に含浸された塗布液吸蔵体７の圧縮部７ａと接して配置される。中継芯４ｃ後方と外周面と塗布液吸蔵体７との境界も毛管力が高くなっているため、塗布体後方外周面から塗布体へ塗布液がより供給されやすくなり、塗布液Ｌの吐出が良好な塗布具１とすることができる。

【0035】

塗布液吸蔵体７は、少なくとも中継芯４ｃ後方が挿入される軸方向範囲において、中継芯４ｃ後方側から中継芯４ｃ前方側（筆穂４ａ側）に向かって、径方向内側に向かう圧縮の程度が大きくなるよう配置されている。このようにすることで、塗布液吸蔵体７に挿入される中継芯４ｃ後方の軸方向範囲で、塗布液供給管５からより遠い中継芯４ｃ前方側ほど、中継芯４ｃと塗布液吸蔵体７との境界の毛管力が高くなり、塗布液Ｌがより無駄なく中継芯４ｃへ供給されるため、塗布液Ｌの吐出が良好な塗布具１とすることができる。

【0036】

本実施形態においては、リブ２ａａの前軸２ａの内壁面からの高さは、塗布液タンク３側から塗布体４側にかけて漸次高くなる、いわゆるテーパー形状をしている。これにより塗布液吸蔵体７は、少なくとも中継芯４ｃ後方が挿入される軸方向範囲において、中継芯４ｃ後方側から中継芯４ｃ前方側に向かうほど径方向内側に押圧され、圧縮の程度が大きくなるよう配置される。

【0037】

前軸２ａの内壁の形状は、本実施形態のようにリブ２ａａの前軸２ａの内壁面からの高さを塗布液タンク３側から塗布体４側にかけて漸次高くする他、径方向の厚みが一定の領域が軸方向に続き、塗布液タンク３側開口端部に向かって段階的に径方向の厚みが小さくなっていく階段状の構造などを採用してもよい。

【0038】

塗布液吸蔵体７の材質は、ポリエステル（ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなど）繊維、ポリアミド繊維、アクリル繊維などを束ねた繊維収束体や、ウレタンやスポンジなどの多孔質体を、適宜選択することができる。

【符号の説明】

【0039】

１ 塗布具
２ 軸筒
２ａ 前軸
２ａａ リブ
２ｂ 後軸
３ 塗布液タンク
３ａ 撹拌体
４ 塗布体
４ａ 筆穂
４ｂ 固定管
４ｃ 中継芯
５ 塗布液供給管
６ 筒体
６ａ 外筒
６ｂ 内筒
６ｃ 塗布液逆流防止部
７ 塗布液吸蔵体
７ａ 圧縮部
Ｌ 塗布液

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】