IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特開2023-160754燃料と空気の混合気に点火するための装置
<>
  • 特開-燃料と空気の混合気に点火するための装置 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160754
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】燃料と空気の混合気に点火するための装置
(51)【国際特許分類】
   F02B 19/12 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
F02B19/12 C
F02B19/12 D
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023063142
(22)【出願日】2023-04-10
(31)【優先権主張番号】10 2022 109 745.5
(32)【優先日】2022-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510238096
【氏名又は名称】ドクター エンジニール ハー ツェー エフ ポルシェ アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Dr. Ing. h.c. F. Porsche Aktiengesellschaft
【住所又は居所原語表記】Porscheplatz 1, D-70435 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100202647
【弁理士】
【氏名又は名称】寺町 健司
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンセンツォ ベヴィラクア
【テーマコード(参考)】
3G023
【Fターム(参考)】
3G023AA01
3G023AB02
3G023AB03
3G023AC03
3G023AD23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】燃料と空気の混合気の点火および燃焼行程をさらに改良することが可能な装置を提供する。
【解決手段】内燃機関(100)のシリンダー(2)の燃焼室(3)内で燃料と空気の混合気に点火するための装置(1)に関し、少なくとも部分的に燃焼室(3)外に配置されており、予燃焼室(12)内で易燃性の燃料と空気の混合気に点火可能である点火装置(13)を有する第1の予燃焼室(12)と、第1の予燃焼室(12)の一部の周囲に延在しており、第1の予燃焼室(12)に流路が接続されている少なくとも1つの第2の予燃焼室(15)とを有し、前記第2の予燃焼室(15)は、完全に燃焼室(3)内に配置されていて、特に円錐台状に形成されており、第1の予燃焼室(12)より大きな容量を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関(100)のシリンダー(2)の燃焼室(3)内で燃料と空気の混合気に点火するための装置(1)であって、
‐少なくとも部分的に前記燃焼室(3)外に配置されており、予燃焼室(12)内で易燃性の燃料と空気の混合気に点火可能である点火装置(13)を有する第1の予燃焼室(12)と、
‐前記第1の予燃焼室(12)の一部の周囲に延在しており、前記第1の予燃焼室(12)に流路が接続されている少なくとも1つの第2の予燃焼室(15)と、を有する装置(1)において、
前記第2の予燃焼室(15)は、完全に前記燃焼室(3)内に配置されており、特に円錐台状に形成されており、かつ前記第1の予燃焼室(12)より大きな容量を有することを特徴とする装置(1)。
【請求項2】
前記装置(1)が、特に円錐台状に形成されており、前記第2の予燃焼室(15)周囲に延在している少なくとも1つの第3の予燃焼室(16)を有することを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項3】
前記第3の予燃焼室(16)が、前記第2の予燃焼室(15)より大きな容量を有するように形成されていることを特徴とする、請求項2に記載の装置(1)。
【請求項4】
前記装置(1)が、k≧1の数のさらなる予燃焼室を有し、前記予燃焼室が、特に円錐台状に形成されており、それぞれ上述の予燃焼室の周囲に延在していることを特徴とする、請求項3に記載の装置(1)。
【請求項5】
前記第kの予燃焼室が、前記第k-1の予燃焼室より大きな容量を有するように形成されていることを特徴とする、請求項4に記載の装置(1)。
【請求項6】
前記装置(1)が、燃料噴射手段、特に燃料噴射ノズル、を有し、前記燃料噴射ノズルが、前記第1の予燃焼室(12)より大きな容量を有する前記予燃焼室(15、16)のいずれかの中に延在しているように配置されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置(1)。
【請求項7】
前記第1の予燃焼室(12)が、少なくとも部分的に円錐状に形成されており、少なくとも部分的に燃焼室(3)の方向に内側から外側へ先細りになるように成形されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置(1)。
【請求項8】
請求項1に記載の装置(1)が形成されていることを特徴とする、前記内燃機関(100)のシリンダー(2)の燃焼室(3)内に燃料と空気の混合気に点火するための装置(1)を備えた内燃機関(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の、内燃機関のシリンダーの燃焼室内で燃料と空気の混合気に点火するための装置に関する。さらに、本発明は、そのような装置を備えた内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術によれば、内燃機関のシリンダーの燃焼室内で燃料と空気の混合気に点火するために設けられている装置が、まったく異なる実施形態で公知である。そのような装置は、予燃焼室を有し、その中に収納された点火装置によって、易燃性の燃料と空気の混合気に点火することができ、この場合、相対的に小さい容量のために、燃料は直接には予燃焼室内に噴射されない(受動的予燃焼室)。
【0003】
いわゆる予燃焼室ジェット点火の場合、燃料と空気の混合気の一部は、内燃機関の圧縮行程中に、予燃焼室内部で燃料と空気の混合気に引火するように予燃焼室に押し出される。この引火は、さらに、内燃機関の燃焼室に伝播する。その結果、燃焼室内での燃料と空気の混合気の燃焼が高速化すると共にノッキング発生が低下する。
【0004】
通常、受動的予燃焼室は、燃焼室内で移動するピストンの上死点時、燃焼室の容量の約2~5%に相当する、相対的に少ない容量を有する。予燃焼室のこの少ない容量によって、予燃焼室内での燃料と空気の混合気の点火によって生じる加速効果は、燃焼行程の最初の段階(総燃焼時間の約0~10%)に制限される。
【0005】
特許文献1によれば、それぞれ主燃焼室に接続されている複数の予燃焼室を備えた内燃機関が公知である。予燃焼室は、予燃焼室ガスバルブによって、燃料ガスおよび空気からなる混合気を収容するために設けられている。各予燃焼室は、さらに、流路開口部を通じて相互に接続され、容量の大きい順に配置されている最大3つの副燃焼室を有する。第1の副燃焼室は、予燃焼室ガスバルブと、燃料ガスおよび空気からなる混合気に点火するための点火装置とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2022/011400号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、燃料と空気の混合気の点火および燃焼行程をさらに改良することが可能な、冒頭に記載の種類の燃料と空気の混合気に点火するための装置を使用できるようにすることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決策によって、請求項1に記載の特徴を備えた内燃機関のシリンダーの燃焼室内で燃料と空気の混合気に点火するためのこの種の装置が提供される。従属請求項は、本発明の有利な発展形態を示す。
【0009】
本発明による、内燃機関のシリンダーの燃焼室内で燃料と空気の混合気に点火するための装置は、第2の予燃焼室が完全に燃焼室内に配置されており、特に円錐台状に形成されており、第1の予燃焼室より大きな容量を有することを特徴とする。
【0010】
予燃焼室点火の加速効果は、燃焼室内で第1の予燃焼室の一部の周囲に延在しており、第1の予燃焼室より大きな容量を有する、特に円錐台状に形成された第2の予燃焼室を設けることによって、著しく増大できることが示される。したがって、第2の予燃焼室から流出して燃焼室に流入する燃焼エネルギーを有利に増大させることができる。流路開口部の孔面と予燃焼室容量との一定の比率が維持されなければならないので、第1の予燃焼室の容量の単なる拡大によっては、同じ効果が得られない。
【0011】
上述の効果をさらに一層強化するために、本装置が、特に円錐台状に形成されており、第2の予燃焼室周囲に延在している少なくとも1つの第3の予燃焼室を有する、という有利な実施形態が提案される。これにより、第3の予燃焼室から流出する燃焼エネルギーをさらに増大させることができる。好ましくは、第3の予燃焼室は、第2の予燃焼室より大きな容量を有するように形成されている。
【0012】
別の有利な一実施形態では、装置は、k≧1の数の予燃焼室を有し、予燃焼室は、特に円錐台状に形成されており、それぞれ上述の予燃焼室の周囲に延在している。例えば、予燃焼室システムは、4つまたは5つの予燃焼室が備えられていることがある。
【0013】
好ましくは、第kの予燃焼室は、第k-1の予燃焼室より大きな容量を有するように形成されている。したがって、内燃機関の燃焼室内に配置されている予燃焼室の容量は、好ましくは、内側から外側に拡大する。
【0014】
従来型の内燃機関では、第1の予燃焼室内の空燃比をコントロールするために(いわゆるラムダコントロール)、第1の予燃焼室の寸法は極めて小さい。有利な一発展形態では、したがって、本装置は、燃料噴射手段、特に燃料噴射ノズル、を有し、その燃料噴射ノズルは、第1の予燃焼室より大きな容量を有する予燃焼室のいずれかの中に延在しているように配置されていることが提案される。多段式予燃焼室システムを導入することによって、燃料噴射手段、特に本装置の燃料噴射ノズル、を大型の予燃焼室内で位置決めすることができ、これにより、有利に、局所的な空燃比を効率的にコントロールすることができるようになる。
【0015】
燃料噴射手段、特に燃料噴射ノズル、の様々な組合せと、異なる数の予燃焼室を基本的に考慮することができる。
【0016】
別の有利な一実施形態では、第1の予燃焼室は、少なくとも部分的に円錐状に形成されており、少なくとも部分的に‐燃焼室の方向に‐内側から外側へ先細りになるように成形されている。
【0017】
好ましくは、第2の予燃焼室と、場合によっては、既存の他の予燃焼室は、燃焼室内に拡張することができる。
【0018】
円錐台状の代わりに、予燃焼室は、別の形状を有することができる。
【0019】
本発明による内燃機関は、請求項8によって、請求項1から7のいずれか一項に記載の装置を有することによって特徴づけられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】内燃機関の燃焼シリンダーの一部を通る縦断面を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のその他の特徴および利点は、内燃機関100の燃焼シリンダー2の一部を通る縦断面を示す添付の図1を参照した、好適な実施例の以下の説明から明らかになる。図1では、内燃機関100の唯一の燃焼シリンダー2のみが示されているが、通常は、そのような燃焼シリンダー2が複数装備されている。
【0022】
燃焼シリンダー2は、燃焼室3を画定し、その中でピストン4は、軸方向に第1の(下)死点から、図1で示すように、第2の(上)死点に、およびその逆に移動可能である。燃焼シリンダー2は、吸気バルブ7が中に配置されている吸気マニホールド5と、排気バルブ8が中に配置されているエキゾーストマニホールド6と、に流体接続されている。
【0023】
燃焼シリンダー2は、第1の収容部90および第2の収容部91が中に形成されているシリンダーヘッド9を有する。第1の収容部90内には、第1の燃料噴射手段10、特に燃料噴射ノズル、が取り付けられており、それによって、内燃機関100の作動中に燃料を燃焼室3に噴射することができる。吸気バルブ7が開かれている状態のとき、燃焼室3内で易燃性の燃料と空気の混合気が発生する。
【0024】
内燃機関100は、さらに、燃焼シリンダー2の燃焼室3内に、易燃性の燃料と空気の混合気に点火することができる、燃料と空気の混合気に点火するための装置1を有する。燃料と空気の混合気の燃焼時に発生する燃焼排気ガスは、排気バルブ8が開いている状態のとき、エキゾーストマニホールド6に流入する。
【0025】
以下では、燃料と空気の混合気に点火するための装置1についての詳細を詳しく説明するものとする。装置1は、第1の予燃焼室12が中に形成されている予燃焼室ハウジング11を有する。さらに、装置1は、予燃焼室ハウジング11内に取り付けられて、第1の予燃焼室12に至る点火装置13、特に点火プラグを有する。第1の予燃焼室12は、部分的に円錐状に形成されており、部分的に内側から外側に‐したがって、燃焼室3の方向に‐先細になっているように成形されている。予燃焼室ハウジング11のシリンダー接続部分14は、シリンダーヘッド9の第2の収容部91内に取り付けられており、部分的に燃焼室3内に延在している。その場合、予燃焼室ハウジング11のシリンダー接続部分14によって封入される容量は、予燃焼室12の総容量の一部を形成する。
【0026】
装置1は、さらに、予燃焼室ハウジング11のシリンダー接続部分14の周囲、ひいては、第1の予燃焼室12の周囲に延在するように、燃焼室3内に第2の予燃焼室15を有する。第2の予燃焼室15は、この実施形態では、円錐台状に形成されており、シリンダーヘッド9から出発して燃焼室3内に拡張するように成形されている。好ましくは、第2の予燃焼室15は、第1の予燃焼室12より大きな容量を有する。この実施例では、装置1は、さらに、第2の予燃焼室15の周囲に延在している第3の予燃焼室16を有する。第3の予燃焼室16は、この実施形態では、同様に、円錐台状に形成されており、第2の予燃焼室15から出発して燃焼室3内にさらに拡張するように成形されている。
【0027】
シリンダー接続部分14の下部領域においては、燃焼室3内で第1の予燃焼室12と第2の予燃焼室15との間の流路接続部を使用することができる複数の流路チャネル140が形成されている。第2の予燃焼室15は、下部領域において、第2の予燃焼室15と第3の予燃焼室16との間の流路接続部を使用することができる複数の流路開口部150を有する。さらに、第3の予燃焼室16は、下部領域において、第3の予燃焼室16と燃焼室3との間の流路接続部を使用することができる複数の流路開口部160を有する。
【0028】
導入目的および使用目的に応じて、同様の方法で、第3の予燃焼室16に第4の予燃焼室が、および場合によっては、好ましくは、同様に円錐台状に形成されており、それぞれ上述の予燃焼室より大きな容量を有する、更なる予燃焼室が接続されていることがある。
【0029】
上述の3つの予燃焼室12、15、16を備えた装置1の予燃焼室システムは、受動的に作動する。これは、3つの予燃焼室12、15、16のうちいずれかでは直接燃料噴射が行われないことを意味する。
【0030】
ここでは明示されていない一発展形態では、装置1自体は、同様に燃料噴射手段、特に燃料噴射ノズル、を有し、その燃料噴射ノズルは、第1の予燃焼室12より大きな容量を有するそれぞれの予燃焼室15、16に至るように配置されていることが可能である。とりわけ、燃料噴射手段、特に燃料噴射ノズルは、第2の予燃焼室15に至るように配置されている。
【0031】
内燃機関100の作動中、この燃料噴射手段、特に燃料噴射ノズルは、該当する予燃焼室15、16に燃料を噴射することができる。この変形形態では、したがって、装置1は、第1の予燃焼室12より大きな容量を有する予燃焼室15、16内で能動的燃料噴射によって作動する。これにより、有利には、該当する予燃焼室15、16内で、燃焼室3よりリッチな混合気を得ることができる。
【0032】
従来型の内燃機関では、第1の予燃焼室12内の空燃比をコントロールするために(いわゆるラムダコントロール)、第1の予燃焼室12の寸法は極めて小さい。好ましくは、大型化した容量を備えた、複数の直列接続の予燃焼室12、15、16を有する多段階式予燃焼室システムによって、燃料噴射手段、特に装置1に割り当てられている燃料噴射ノズルを大型の予燃焼室15、16に位置決めし、局所的なラムダコントロール値を効率的にコントロールすることができる。
【0033】
最終的には、具体的な用途に応じて‐燃料噴射手段の全く異なる組合せと複数の予燃焼室12、15、16が可能であることが見てとれよう。
図1