(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160756
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】中性電極の電極タイプを決定するための電気外科システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 18/16 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
A61B18/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023063845
(22)【出願日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】22169248
(32)【優先日】2022-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】592245823
【氏名又は名称】エルベ エレクトロメディジン ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Erbe Elektromedizin GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【弁理士】
【氏名又は名称】新居 広守
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ・マイヤー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK24
4C160KK27
4C160KK33
4C160KK36
4C160MM32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】本発明は、電気外科システムおよび方法に関する。
【解決手段】電気外科システム(15)は、使用される中性電極(23)の電極タイプ(T1、T2、T3)を決定するように構成される。このために、交流測定信号(M)が、少なくとも2つの異なる測定周波数(f1、f2)において中性電極(23)に印加される。各測定周波数(f1,f2)において、少なくとも1つのインピーダンス絶対値(ZN
abs)および少なくとも1つの位相値(φ)が、中性電極(23)の中性電極インピーダンス(ZN)について決定される。少なくとも1つのインピーダンス絶対値(ZN
abs)および少なくとも1つの位相値(φ)に基づいて、接続された中性電極(23)の電極タイプ(T1、T2、T3)は、特に少なくとも1つのインピーダンス絶対値(ZN
abs)および少なくとも1つの位相値φについての既知の比較値との比較によって決定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気外科システム(15)であって、中性点接続部(18)と、前記中性点接続部(18)に接続された中性電極(23)とを有する供給装置(16)を備え、前記中性電極(23)が、患者に導電的に接続されるように構成され、
前記供給装置(16)が、少なくとも2つの異なる測定周波数(f1、f2)において交流測定信号(M)を前記中性点接続部(18)に印加し、前記測定周波数(f1、f2)の少なくとも1つについて前記中性電極(23)の中性電極インピーダンス(ZN)の少なくとも1つのインピーダンス絶対値(ZNabs)を決定し、前記測定周波数(f1、f2)の少なくとも1つについて前記中性電極インピーダンス(ZN)の少なくとも1つの位相値(φ)を決定し、前記少なくとも1つのインピーダンス絶対値(ZNabs)および前記少なくとも1つの位相値(φ)に基づいて、前記接続された中性電極(23)の電極タイプ(T1、T2、T3)を決定するように構成される、電気外科システム。
【請求項2】
前記供給装置(16)が、第1の測定周波数(f1)についての前記中性電極インピーダンス(ZN)のインピーダンス絶対値(ZNabs)および第2の測定周波数(f2)についての前記中性電極インピーダンス(ZN)の位相値(φ)を決定するように構成され、前記第2の測定周波数(f2)が、前記第1の測定周波数(f1)よりも小さい、請求項1に記載の電気外科システム。
【請求項3】
前記第1の測定周波数(f1)が、5.0kHz~1.0MHzの範囲内である、請求項2に記載の電気外科システム。
【請求項4】
前記第2の測定周波数(f2)が、100Hz~5.0kHzの範囲内である、請求項2または3に記載の電気外科システム。
【請求項5】
前記中性電極(23)の各電極タイプ(T1、T2、T3)が、導電性の第1の電極セクション(37)と導電性の第2の電極セクション(38)とを備え、前記第1および第2の電極セクションの電位は、互いに分離されている、請求項1に記載の電気外科システム。
【請求項6】
前記第1の電極セクション(37)および前記第2の電極セクション(38)が、基準面(B)に関して対称的に配置されている、請求項5に記載の電気外科システム。
【請求項7】
前記中性電極(23)の前記電極タイプ(T1)の少なくとも1つが、導電性の第3の電極セクション(41)を備え、その電位は、前記第1の電極セクション(37)および前記第2の電極セクション(38)の電位から分離される、請求項5に記載の電気外科システム。
【請求項8】
前記第3の電極セクション(41)が、前記第1の電極セクション(37)および前記第2の電極セクション(38)を取り囲む、請求項7に記載の電気外科システム。
【請求項9】
前記中性電極(23)の前記電極タイプ(T1)の少なくとも1つの前記第1の電極セクション(37)および前記第2の電極セクション(38)が、互いから外方を向く側に、弧形状に湾曲した外縁部(42)を備える、請求項5から8のいずれか一項に記載の電気外科システム。
【請求項10】
前記中性電極(23)の前記電極タイプ(T2、T3)の少なくとも1つの前記第1の電極セクション(37)および前記第2の電極セクション(38)が、互いから外方を向く側に、直線の部分である外縁部(42)を備える、請求項5から8のいずれか一項に記載の電気外科システム。
【請求項11】
前記供給装置(16)が、供給接続部(17)と、前記供給接続部(17)に電気的に接続された作用電極(22)を有する器具(19)とを備え、前記供給装置(16)および/または前記器具(19)が、前記作用電極(22)に作用電圧(UA)および/または作用電流(IA)を提供するように構成される、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気外科システム。
【請求項12】
前記供給装置(16)が、作用電圧(UA)および作用電流(IA)が前記作用電極(22)に供給されない場合、前記中性点接続部(18)にのみ測定信号(M)を印加するように構成される、請求項11に記載の電気外科システム。
【請求項13】
前記供給装置(16)が、前記作用電極(22)に作用電圧(UA)および/または作用電流(IA)が供給されている間に測定信号(M)が前記中性点接続部(18)に印加される場合、前記作用電圧(UA)および/または前記作用電流(IA)の作用周波数とは異なる前記測定信号(M)の前記測定周波数(f1、f2)を選択するように構成される、請求項11に記載の電気外科システム。
【請求項14】
認識された前記電極タイプ(T1、T2、T3)に依存する動作モードを事前定義するように構成され、前記動作モードが、前記電極タイプ(T1、T2、T3)に適合され、手動または自動で設定することができる、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気外科システム。
【請求項15】
中性電極(23)の電極タイプ(T1、T2、T3)を決定するための方法であって、
前記中性電極(23)と患者との間に導電性接続が存在するように前記中性電極(23)を前記患者に取り付けるステップと、
交流測定信号(M)を少なくとも2つの異なる測定周波数(f1、f2)において前記中性電極(23)にそれぞれ印加するステップと、
前記測定周波数(f1、f2)の少なくとも1つについて前記中性電極(23)の中性電極インピーダンス(ZN)の少なくとも1つのインピーダンス絶対値(ZNabs)を決定するステップと、
前記測定周波数(f1、f2)の少なくとも1つについて前記中性電極(23)の前記中性電極インピーダンス(ZN)の少なくとも1つの位相値(φ)を決定するステップと、
前記少なくとも1つのインピーダンス絶対値(ZNabs)および前記少なくとも1つの位相値(φ)に基づいて、接続された前記中性電極(23)の電極タイプ(T1、T2、T3)を決定するステップとを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中性電極の電極タイプを決定するための電気外科システムおよび方法に関する。電気外科システムは、特に、電気外科システムの供給装置に接続することができるか、または接続される単極器具および中性電極を有するシステムである。中性電極は、例えば接着接続によって、導電的に患者に取り付けられるように構成される。本方法は、本発明による電気外科システムを使用して実施することができる。電気外科システムは、特に、本発明による方法を実施するように構成することができる。
【背景技術】
【0002】
患者の治療中、電気外科システムでは、供給装置から器具の作用電極へ、そしてそこから供給装置に戻る電流回路を閉じる必要がある。この目的のために、単極器具では、中性電極として示すことができる追加の電極を患者に取り付けることができる。したがって、電流は、供給装置から作用電極に流れ、作用電極から患者に流れ、患者の組織を通って中性電極に流れ、そこから供給装置に戻ることができる。
【0003】
単極器具を有する電気外科システムでは、中性電極の異なる種類の電極または電極タイプを使用することができる。異なる電極タイプの中性電極は、患者と接触している異なるサイズの少なくとも1つの導電性電極セクションの表面積(接触面積)を含むことができる。中性電極の少なくとも1つの導電性電極セクションはまた、異なる電極タイプに対して長手方向および/または横方向に異なる幾何学的形状または寸法を有することができる。
【0004】
電気外科システムの動作中に内因性の火傷を回避するために、中性電極での電流密度は高くなりすぎてはならない。
【0005】
特許文献1は、中性電極インピーダンスに依存する医療装置の制御を記載している。インピーダンスは所定の閾値と比較され、電気外科システムまたは治療器具の動作は、中性電極のインピーダンスが所定の範囲内、例えば最大140オーム内にある場合にのみ可能にされる。そうすることで、中性電極が患者に正しく取り付けられているかどうか、および患者への十分に良好な電気的接続が存在するかどうかを試験することができる。
【0006】
生体組織のインピーダンスの測定は、インピーダンス分光法の分野で知られている。インピーダンス分光法では、電気外科システムの電気外科器具によって治療される組織のタイプが区別される。例えば、特許文献2は、そのような方法を記載している。この器具により、試験信号が、異なる周波数において、治療される組織に印加され、測定されたインピーダンスに基づいて、組織が特徴付けられる。このようにして、異なる組織タイプの区別が可能である。同様の方法が、特許文献3にも記載されている。
【0007】
特許文献4から知られている方法では、電気パルスが患者の組織内に供給され、供給されたパルスの反射が検出される。反射に基づいて、健康な組織が、悪性組織とリアルタイムで区別される。
【0008】
測定ユニットを有する電気外科システムが、特許文献5に記載されている。そこでは、治療される組織のインピーダンス測定が、測定デバイスによって異なる周波数において実施される。測定信号は、測定デバイスによって組織に印加することができる。スイッチングデバイスは、組織の治療のための電圧と測定信号との間で切り替えるように機能する。測定信号によって、組織のインピーダンスが異なる周波数において決定される。
【0009】
身体組織の局所組織タイプを決定するための方法およびそれぞれの電気外科システムが、特許文献6に記載されている。組織決定のために、測定信号(交流電圧または交流電流)が、組織内に結合される。測定信号の周波数は変化し得る。それに基づいて、インピーダンススペクトルを決定することができ、そこから組織タイプを順に導出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2537479号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1289415号明細書
【特許文献3】欧州特許出願公開第0813387号明細書
【特許文献4】国際公開第03/060462号
【特許文献5】欧州特許出願公開第3496638号明細書
【特許文献6】独国特許出願公開第102019209333号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、中性電極の使用を改善し、特に中性電極を使用する際の安全性を高める電気外科システムおよび方法を提供することにあると考えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1の特徴を有する電気外科システム、ならびに請求項15の特徴を有する方法によって解決される。
【0013】
本発明による電気外科システムは、中性点接続部と、中性点接続部に接続された中性電極とを備える供給装置を備える。中性電極は、患者に導電的に接続されるように構成される。この目的のために、中性電極は、患者の皮膚に接着接続することができ、または他の方法で取り付けることができる。
【0014】
供給装置は、少なくとも2つの異なる測定周波数において、交流測定信号を中性点接続部に印加するように構成することができる。測定信号は、交流電圧測定信号または交流電流測定信号とすることができる。例えば、測定信号は、正弦波または共正弦波形状、三角形形状、鋸歯形状または方形波形状を有することができる。
【0015】
測定信号が印加された交流測定電圧である場合、中性電極または電極電流回路を流れる交流測定電流が、それによって生成される。測定信号が、印加された交流測定電流である場合、中性電極または電極電流回路における交流測定電圧が、それによって生成される。電極電流回路は、供給装置から患者の組織を通って中性電極に、そして供給装置に戻る閉電流回路を備える。好ましくは、器具は電極電流回路の一部ではなく、電極電流回路は、それぞれの場合に供給装置および患者に導電的に接続された中性電極の2つの別個の導電性電極セクションによって閉じられる。そうすることで、電極電流回路は、供給装置の中性点接続部から第1の電極セクションに至り、患者の組織を介して第2の電極セクションに、そして供給装置の中性点接続部に戻ることができる。
【0016】
交流測定信号は、特に周期的に変化する測定信号とすることができる。測定信号は、その極性、したがって電流の流れ方向を交互に変化させることができる。これの代わりに、測定信号はまた、正であるか、または常に負であることができる。
【0017】
したがって、測定信号は、中性電極または供給装置の中性点接続部において交流測定電流および交流測定電圧を生成し、そこから、中性電極の中性電極インピーダンスのインピーダンス絶対値(見かけのインピーダンス)および中性電極インピーダンスの位相値を決定することができる。インピーダンス絶対値は、測定周波数の少なくとも1つについて決定され、位相値は、測定周波数の少なくとも1つについて決定される。使用される測定周波数の各々において、インピーダンス絶対値および/または位相値が、決定される。
【0018】
少なくとも1つのインピーダンス絶対値および少なくとも1つの位相値に基づいて、接続された中性電極の電極タイプを決定または認識することができる。この目的のために、使用される測定周波数における位相値およびインピーダンス絶対値の比較値を(例えば、表の形態で、または1つもしくは複数の比較曲線の形態で)記憶することができ、それにより、中性電極の電極タイプを比較によって認識することができる。
【0019】
電極タイプの認識により、供給装置は、好ましくは自動的にまたは代替的に手動で、中性電極の電極タイプに適合した動作モードに切り替えることができる。複数の動作タイプが可能である場合、これらを選択のためにユーザに提供することができ、および/または標準モードをそこから自動的に選択することができる。電極タイプに適合された少なくとも1つの動作モードによって、電力または作用電流を例えば調整および/または制限することができる。中性電極の下の患者の組織内の電流密度は、電極のタイプ、特に少なくとも1つの導電性電極セクションの総面積含有量に依存する。したがって、電流密度は、電極タイプのサイズおよび/または幾何学的形状に適合されるように制限することができる。例えば、決定された電極タイプに応じて、中性電極を流れる電力および/または電流の制限値を使用することができる。
【0020】
電極タイプの決定は、電流密度の決定または制限に加えて、またはその代わりに、供給装置の動作中に使用することができる少なくとも1つの追加のパラメータの決定を可能にする。例えば、少なくとも1つの追加のパラメータは、以下の群から選択することができる:中性電極が取り付けられている領域内の患者の組織の温度、中性電極と患者との間の有効接触面積の面積含有量、中性電極と患者との間の接触ゲルの存在。
【0021】
供給装置が、少なくとも1つのインピーダンス絶対値とは異なる測定周波数において少なくとも1つの位相値を決定するように構成されている場合、有利である。
【0022】
供給装置が、第1の測定周波数についてインピーダンス絶対値および第2の測定周波数について中性電極インピーダンスの位相値を決定するように構成されている場合、有利である。第2の測定周波数は、第1の測定周波数よりも低い。第1の測定周波数は、好ましくは、5.0kHz~1.0MHzの範囲から選択される。第2の測定周波数は、100Hz~5.0kHzの範囲から選択することができる。任意選択的に、インピーダンス絶対値を第2の測定周波数において決定することもでき、および/または加えて、位相値を第1の測定周波数において決定することもできる。あるいは、第1の測定周波数においてインピーダンス絶対値を専ら決定し、第2の測定周波数において位相値を専ら決定することも可能である。
【0023】
測定信号の振幅は、特に位相値を決定するための測定中、および/または測定周波数の1つ、例えば第2の測定周波数での測定中に制限することができる。交流測定電圧の振幅は、好ましくは、5V未満である。交流測定信号の振幅は、特に1.0mAより小さい。
【0024】
電気外科システムは、異なる電極タイプの多数の中性電極を備えることができ、その中から、1つの電極タイプの中性電極を選択し、供給装置に接続することができる。各電極タイプは、複数、例えば2つまたは3つの別個の電極セクションを含むことができる。電極セクションは、中性電極において短絡していない。それらは、異なる電位を有し得る。中性電極内では、好ましくは、電極セクションは、発生する電流および電圧に対して互いに電気的に絶縁されている。2つの電極セクション間の電気的接続は、中性電極が患者に取り付けられている場合、特に患者の組織を介して間接的にのみ存在する。
【0025】
電極タイプは、1つまたは複数のタイプパラメータによって互いに区別することができ、例えば、
-存在する導電性電極セクションの数、
-存在する全ての導電性電極セクションの総面積含有量、
-少なくとも1つの導電性電極セクションの輪郭または幾何学的形状、
-少なくとも1つの電極セクションに使用される導電性材料、
-2つ以上の設けられた電極セクションの互いに対する相対的な位置。
【0026】
例えば、中性電極の少なくとも1つの電極タイプは、正確に2つの導電性電極セクションを備える。中性電極の別の電極タイプは、正確に3つの導電性電極セクションを含む。
【0027】
好ましくは、本電極セクションの少なくとも2つは、いずれの場合も1つの導体によって供給装置の中性点接続部に接続されるか、または接続することができる。例えば、第1の電極セクションは、第1の導体を介して供給装置の中性点接続部と電気的に接続することができ、第2の電極セクションは、第2の導体を介して供給装置の中性点接続部と電気的に接続することができる。2つの導体は、発生する電流および電圧について互いに電気的に絶縁されている。
【0028】
少なくとも1つの電極タイプまたは全ての電極タイプにおいて、第1の電極セクションおよび第2の電極セクションは、基準面に対して対称に配置することができる。
【0029】
一実施形態では、第1の電極セクションおよび第2の電極セクションは、等しい面積含有量および/または同一の幾何学的形状を有することができる。
【0030】
第1の電極セクションおよび第2の電極セクションは、互いに距離を置いて配置することができ、例えば、中性電極の非導電ウェブによって分離することができる。
【0031】
少なくとも1つの電極タイプにおいて、中性電極は、導電性の第3の電極セクションを有する。第3の電極セクションは、発生する電流および電圧について、中性電極内の他の全ての電極セクション、例えば第1の電極セクションおよび第2の電極セクションから電気的に絶縁される。
【0032】
少なくとも1つの電極タイプにおいて、第3の電極セクションは、第1の電極セクションおよび第2の電極セクションを取り囲むことができる。その延長方向において、第3の電極セクションは、好ましくは、複数の部分で湾曲および/または屈曲している。第3の電極セクションが、その2つの端部間でその延長方向に中断することなく実現される場合が好ましい。例えば、第3の電極セクションは、1つの単一の開口部部位で開いている進行部を有することができ、それによって2つの端部は、開口部部位で互いに対向して配置される。例えば、第3の電極セクションは、U字形またはC字形とすることができる。第3の電極セクションの開口部部位に、第3の電極セクションによって取り囲まれた電極セクションのための接続領域、例えば、第1の導体の第1の電極セクションへの接続領域および第2の導体の第2の電極セクションへの接続領域を設けることができる。
【0033】
第3の電極セクションの面積含有量は、任意の他の設けられた電極セクション、特に第1の電極セクションおよび第2の電極セクションの面積含有量よりも小さくすることができる。第3の電極セクションの2つの端部間における延長方向の長さは、この延長方向に直交する最大幅(長さ)の大きさよりも、約10倍または20倍大きいことが好ましくなり得る。
【0034】
異なる電極タイプはまた、第1の電極セクションおよび第2の電極セクションの外縁部がどのように実現されるかで互いに区別することができ、外縁部は、互いに外方を向く電極セクションの外側に存在する。1つの電極タイプでは、これらの外縁部は、弧形状に湾曲することができ、および/または直線セクションを有することができず、および/または基準面に平行に延びるセクションを有することができず、基準面は、2つの電極セクション間の中心に延び、対称面を形成することができる。別の電極タイプでは、外縁部は、直線セクションおよび/または基準面に平行に延びるセクションを有することができる。
【0035】
供給装置が、供給接続部と、供給接続部に接続された、または接続することができる器具とを備える場合、有利である。供給接続部に接続された器具には、供給装置によって作用信号、したがって作用電力が供給され、作用電圧または作用電流を作用信号として印加することができる。器具は、作用信号が供給される作用電極を有する。電気外科システムの使用中、患者の組織を器具によって凝固、切断、アブレーション、または融着することができる。機能に応じて、作用信号(作用電圧および/または作用電流)は、例えば、作用周波数、振幅、波形、またはそれらの任意の組み合わせに関して変化し得る。
【0036】
供給装置は、作用電極に作用電圧および/または作用電流が供給されていない場合にのみ、測定信号を中性点接続部に印加するように構成することができる。したがって、作用電極によって患者の組織内に供給された電流が中性電極を介して逆流しない場合のみ、測定信号は中性電極に印加される。そうすることで、インピーダンス絶対値および位相値の決定は、中性電極を流れる電流を生成する作用電流の影響を受けない。
【0037】
追加的または代替的に、同時に、作用電極によって組織を治療し(電圧が作用電極に印加され、および/または電流が作用電極を通って流れ)、少なくとも段階的に測定信号を中性点接続部に印加することも可能である。治療期間と測定信号の印加とが重複する位相または期間において、測定信号の測定周波数は、作用信号の周波数(作用電圧および/または作用電流)とは異なり得る。そうすることで、交流電圧測定信号によって生成された測定電流または交流電流測定信号によって生成された測定電圧を、例えば周波数の評価によって、中性電極を通って逆流する作用電圧および/または作用電流と区別することができることが保証される。したがって、この場合にも、少なくとも1つのインピーダンス絶対値および/または少なくとも1つの位相値の十分に正確な決定が可能である。
【0038】
本発明による方法は、例えば上記で説明したように、電気外科システムの任意の実施形態を使用することによって実施することができる。最初に、選択された電極タイプの中性電極が、中性電極と患者との間に導電性接続が存在するように患者に取り付けられる。続いて、特に中性電極と供給装置の中性点接続部との電気的接続を介して、交流測定信号が中性電極に印加される。測定信号は、少なくとも2つの異なる測定周波数で印加される。測定信号に基づいて、中性電極の中性電極インピーダンスの少なくとも1つのインピーダンス絶対値(見かけのインピーダンス)が、測定周波数の少なくとも1つにおいて決定される。また、中性電極インピーダンスの位相値が、少なくとも1つの測定周波数において決定される。各測定周波数について、インピーダンス絶対値および/または位相値が決定される。
【0039】
続いて、接続された中性電極の電極タイプが、少なくとも1つのインピーダンス絶対値および少なくとも1つの位相値に基づいて決定することができる。
【0040】
本発明の有利な構成は、従属請求項、図面、および説明から導かれる。以下において、本発明の好ましい実施形態を添付の図を参照しながら詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】供給装置と、中性電極と、器具とを備える電気外科システムの一実施形態の概略ブロック図様の図である。
【
図2】電気外科システムの一実施形態のブロック図である。
【
図3】本発明による方法の一実施形態の流れ図である。
【
図4】中性電極の第1の電極タイプの実施形態の概略基本図である。
【
図5】中性電極の第2の電極タイプの実施形態の概略基本図である。
【
図6】中性電極の第3の電極タイプの実施形態の概略基本図である。
【
図7】測定周波数に応じた、
図4~
図6による電極タイプのインピーダンス絶対値の典型的な概略図である。
【
図8】測定周波数に応じた、
図4~
図6による電極タイプの位相値の典型的な概略図である。
【
図9】器具の作用電極における作用信号(作用電圧および/または作用電流)ならびに中性電極における測定信号(交流電圧測定信号および/または交流電流測定信号)の典型的な時間依存性の進行を示す図である。
【
図10】器具の作用電極における作用信号(作用電圧および/または作用電流)ならびに中性電極における測定信号(交流電圧測定信号および/または交流電流測定信号)の典型的な時間依存性の進行を示す別の図である。
【
図11】器具の作用電極における作用信号(作用電圧および/または作用電流)ならびに中性電極における測定信号(交流電圧測定信号および/または交流電流測定信号)の典型的な時間依存性の進行を示す別の図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1には、電気外科システム15の一実施形態の基本図が示されている。電気外科システム15は、供給接続部17および中性点接続部18を備える供給装置16を有する。供給接続部17は、器具19を供給装置16に電気的に接続するように機能する。電気的接続は、単極または多極接続とすることができる。接続は、単芯または多芯ケーブル20によって確立することができる。
【0043】
器具19は、患者の生体組織21の電気外科的治療のために構成される。組織21は、ヒトまたは動物の体の生体組織である。組織21の治療のために、器具19は、少なくとも1つまたは正確には1つの作用電極22を備える。組織21の治療のために、作用電極22と組織21との間に導電性接続を確立することができる。
【0044】
図1に示す電気外科システム15では、器具19は、単極器具である。供給装置16から器具19の作用電極22、そして供給装置16に戻る電流回路は、器具19によって確立されるだけではなく、これに加えて、患者に導電的に取り付けられた別個の電極によって確立される。この追加の電極は、中性電極23として示すことができる。中性電極23は、この例によれば、多芯ケーブル24によって、供給装置16の中性点接続部18と電気的に接続されている。ケーブル24は、記載された実施形態では第1の導体25および第2の導体26として示される2つのコアまたは導体を有する(
図2および
図4から
図6)。
【0045】
図2には、
図1による電気外科システム15のブロック図が示されている。この実施形態では、供給装置16は、外部エネルギー供給源、例えばエネルギー供給グリッドのグリッド電圧源31に接続されたインバータ回路30を備える。グリッド電圧源31は、グリッド電圧を供給装置16に提供し、この例によればインバータ回路30に提供する。インバータ回路30は、供給接続部17に対して、または供給接続部において作用信号ASを提供または印加するように構成される。供給装置16によって供給接続部17に提供される作用信号ASは、印加された作用電圧UAまたは印加された作用電流IAとすることができ、作用電圧UAは作用電流IAを生成することができ、または作用電流IAは供給接続部17において作用電圧UAを生成することができる。作用信号ASは高周波信号であり、すなわち、作用電圧UAは高周波電圧であり、および/または作用電流IAは高周波電流である。作用信号ASは、組織21の治療中に作用電極22に供給される。治療中、作用電流IAは、作用電極22を介して組織21内に流れ、中性電極23に流れ、そこから中性点接続部18に戻る。この作用電流回路の全インピーダンスは、作用インピーダンス32として示すことができる。
【0046】
図示の実施形態では、作用信号ASは、ケーブル20の信号線を介して器具19によって供給接続部17において要求される。1つまたは複数の治療期間Pの間、供給接続部17における作用信号ASは、その後、器具の作用電極22に印加される(
図9~
図11)。
【0047】
オプションとして、作用信号ASは、供給接続部17において器具19に対して連続的に提供することもできる。この場合、器具19は、作用信号ASに基づいて治療期間P中に作用電極22に適切な電圧および/または適切な電流を提供するために、スイッチングデバイスを有することができる。スイッチングデバイスは、必要に応じて作用信号ASを変換または修正するために、インバータ回路または別の修正回路を任意選択的に備えることができる。
【0048】
作用電極22に適切な電力を供給するためのこれらの記載された実施形態の組み合わせも可能である。
【0049】
作用電圧UAは、作用電位と、基準電位例えばグランドGNDとの間の電位差に対応する。
【0050】
この実施形態では、供給装置16は、加えて、測定ユニット33を備える。測定ユニット33は、中性点接続部18において交流測定信号Mを提供または印加するように構成される。測定信号Mは、交流測定電圧UMまたは交流測定電流IMとすることができる。交流測定信号Mの波形および/または測定信号Mの振幅は、変化し得る。例えば、測定信号Mは、正弦波状もしくは共正弦波状、三角形状または方形波状であることができる。測定周波数fは、好ましくは少なくとも100Hzおよび最大1MHzの大きさを有する。
【0051】
交流測定電圧UMまたは交流測定電流IMのどちらが印加されるかに応じて、測定信号Mは、電極電流回路を通る交流測定電流IMまたは電極電流回路における交流測定電圧UMを生成する。電極電流回路は、第1の導体25から中性電極23、患者の組織21を経由して、再度中性電極23および第2の導体26を経由して戻る。電極電流回路における中性電極インピーダンスZNは、インピーダンス絶対値ZNabsおよび位相値φによって特徴付けられる。中性電極インピーダンスZNには、以下が適用される。
【0052】
【0053】
したがって、Re(ZN)は、中性電極インピーダンスZNの実数部であり、Im(ZN)は、中性電極インピーダンスZNの虚数部である。虚数部Im(ZN)および実数部Re(Zn)は、交流測定信号Mの測定周波数fに依存し得る。
【0054】
測定ユニット33は、2つ以上の測定周波数fそれぞれに対する交流測定電圧UMおよび交流測定電流IMに基づいて、インピーダンス絶対値ZNabsおよび/または位相値φを決定するように構成される。交流測定電圧UMと交流測定電流IMとの間の位相シフトは、この例による電極電流回路内の静電容量効果に、特に、中性電極23と患者の組織21との間の静電容量効果に起因する。これらの静電容量効果は、中性電極インピーダンスZNによって特徴付けられる。中性電極インピーダンスZNはまた、オーム抵抗を表し、オプションとして、電極電流回路内の誘起効果も表す。インピーダンス絶対値ZNabsは、見かけのインピーダンスとして表すことができる。
【0055】
電気外科システム15には、異なる電極タイプの中性電極23が設けられている。一例にすぎないが、ここでは3つの異なる電極タイプ、すなわち第1の電極タイプT1(
図4)、第2の電極タイプT2(
図5)ならびに第3の電極タイプT3(
図6)が示されている。
【0056】
二次元中性電極23は、変形していない初期状態で、長手方向Lおよび横方向Qにまたがる平面に実質的に平行に延びる。中性電極23の幾何学的特性の説明は、この初期状態を参照する。
【0057】
この実施形態では、電極タイプT1、T2、T3の各々は、少なくとも2つの導電性電極セクション、すなわち導電性の第1の電極セクション37と、導電性の第2の電極セクション38とを有する。中性電極23の接続領域39において、第1の電極セクション37は、第1の導体25と電気的に接続され、第2の電極セクション38は、第2の導体26と電気的に接続されている。接続領域39において、第1の電極セクション37および第2の電極セクション38はそれぞれ、割り当てられた導体25または26が接続されるストリップ導体状の延長部またはストリップ導体状の拡張部を有する。この延長部は、本明細書に示す実施形態では、中性電極23の長手方向Lに延びる。
【0058】
各電極タイプT1、T2、T3の第1の電極セクション37および第2の電極セクション38は、この実施形態では同一の寸法であり、したがって、等しい面積含有量および同じ幾何学的形状を有する。基準面Bに対して、第1の電極セクション37および第2の電極セクション38は、対称的に配置され、その間に位置するウェブ40によって互いに電気的および空間的に分離されている。基準面Bは、長手方向Lと平行に延び、横方向Qと直交して配向される。
【0059】
第1の電極タイプT1は、第1の電極セクション37および第2の電極セクション38に加えて、導電性の第3の電極セクション41が存在する点で、第2の電極タイプT2および電極タイプT3と区別される。第1の電極タイプT1の中性電極23は、この例によれば正確に3つの電極セクション37、38、41を有するのに対して、第2の電極タイプT2および第3の電極タイプT3の中性電極23は、2つの電極セクション37、38のみを有する。
【0060】
第1の電極タイプT1の中性電極23の第3の電極セクション41は、他の電極セクション37、38とは異なって、供給装置16に電気的に接続されておらず、または接続可能でもない。したがって、その電位は、供給装置16によって直接設定することができない。
【0061】
中性電極23の全ての電極タイプT1、T2、T3の電極セクション37、38、41の全ては、中性電極23内で互いに直接電気的に接続されず、エラーのない通常動作で発生する電圧および電流に関して互いに電気的に絶縁されている。電気的接続は、患者の組織21を介して手術位置で間接的に確立される。中性電極23は、手術位置にある患者の組織21に取り付けられる側に導電性電極セクション37、38、41が設けられている。組織21から外方に面する反対側の裏面は、好ましくは、接触に対する保護が治療関係者に提供されるように電気的に絶縁される。例えば、電極セクション37、38、41は、中性電極23の基板材料上に適用することができ、基板材料またはカバー層によって裏面を覆われ、それによって電気的に絶縁され得る。
【0062】
図4に概略的に示されるように、第3の電極セクション41は、他の電極セクション37、38の形状と著しく区別される。この例によれば、第3の電極セクションは、第1の電極セクション37および第2の電極セクション38の周りに延びており、特に接続領域39においてのみ開口している。第3の電極セクション41の2つの端部は、横方向Qにおいて互いに間隔を空けて配置されている。これら2つの端部間で、第3の電極セクション41は、第1の電極セクション37および第2の電極セクション38の周りに途切れることなく延びている。第3の電極セクション41の2つの端部間におけるその延長方向の長さは、この延長方向に直交する幅よりも少なくとも約10倍または20倍大きい。これにより、第3の電極セクション41は、ライン状の形状を有する。
【0063】
したがって、導電性電極セクション37、38、41の数は、異なる電極タイプT1、T2、T3を区別するための識別基準である。追加的または代替的に、電極タイプT1、T2、T3は、以下の顕著な特徴の1つまたは複数によって互いに区別することができる。
【0064】
-1つ、複数、または全ての存在する電極セクション37、38、41の面積含有量、
-1つ、複数、または全ての存在する電極セクション37、38、41の輪郭または幾何学的形状、
-電極セクション37、38、41に使用される導電性材料、
-存在する電極セクション37、38、41の互いに対する相対位置。
【0065】
図示の実施形態では、第1の電極タイプT1はまた、第1の電極セクション37および第2の電極セクション38が異なる幾何学的形状を有するという点で第2の電極タイプT2および第3の電極タイプT3と区別することが明らかである。第1の電極タイプT1では、第1の電極セクション37および第2の電極セクション38は、互いから外方に面する外側に、弧状に、この例によれば、典型的な円弧形状に延びる外縁部42を有する。これに対して、第2の電極タイプT2および第3の電極タイプT3では、外縁部42は、少なくとも部分的に直線状であり、この実施形態では、長手方向Lに延びる。
【0066】
したがって、中性電極23の第1の電極タイプT1では、第1の電極セクション37および第2の電極セクション38はそれぞれ、半円または半楕円の形状を実質的に有し、第2の電極タイプT2および第3の電極タイプT3では、それぞれ、丸みを帯びた縁部を有する正方形または丸みを帯びた縁部を有する長方形の形状を実質的に有する。
【0067】
第2の電極タイプT2および第3の電極タイプT3は、主に電極セクション37、38の寸法によって区別される。第2の電極タイプT2では、電極セクション37、38の横方向Qの幅は、少なくとも電極セクション37、38の長手方向Lの長さと同じ大きさである。これに対して、第3の電極タイプT3では、電極セクション37、38の長手方向Lの長さは、電極セクション37、38の横方向Qの幅よりも大きい。
【0068】
ここに示す電極タイプT1、T2、T3は、可能な異なる電極タイプの例にすぎない。追加的または代替的に、1つまたは複数の追加の電極タイプが存在することができる。例えば、第1の電極セクション37および第2の電極セクション38がここに示される電極タイプT1、T2、T3と幾何学的形状によって区別され、例えば、丸みを帯びた縁部を有するまたは有さない他の多角形形状を含む電極タイプを使用することができる。
【0069】
本発明によれば、中性点接続部18に接続された電極タイプT1、T2、T3は、自動的に決定される。方法50(
図3)では、本発明によれば、第1の方法ステップ51において、それぞれの電極タイプT1、T2、T3の中性電極23は、供給装置16の中性点接続部18に接続され、設けられた電極セクション37、38、および任意選択的に41が患者(特に患者の皮膚)と導電接触するように患者に取り付けられる。中性電極23は、例えば、自己接着性とすることができる。
【0070】
第2の方法ステップ52では、続いて、少なくとも1つのインピーダンス絶対値ZNabsおよび少なくとも1つの位相値φが、決定される。例えば、1つの第1の測定周波数f1に対して1つのインピーダンス絶対値ZNabsを決定し、1つの第2の測定周波数f2に対して1つの位相値φを決定することで十分であることができ、第2の測定周波数f2は、第1の測定周波数f1よりも低い。第1の測定周波数f1および第2の測定周波数f2は、好ましくは、100Hz~1.0MHzの周波数範囲から選択される。第1の測定周波数f1は、最小5.0kHz、例えば14kHz~15kHzの大きさを有することができる。この例によれば、第2の測定周波数f2は、最大5.0kHz、好ましくは最大1.0kHzの大きさを有する。この実施形態では、第2の測定周波数f2は、周波数範囲の下限の近くで選択され、例えば100Hzに等しくすることができ、または100Hz~200Hzの範囲内にすることができる。
【0071】
第3の方法ステップ53では、少なくとも1つのインピーダンス絶対値ZNabsおよび少なくとも1つの位相値φに基づいて、接続された中性電極23の電極タイプT1、T2、T3を決定することができる。
【0072】
接続された中性電極23の電極タイプT1、T2、T3の認識により、供給装置16は、電極タイプT1、T2、T3に適合された少なくとも1つの動作モードを事前設定することができる。動作モードまたは可能な動作モードの1つは、自動的に設定することができ、またはユーザによって手動で選択することができる。例えば、決定された電極タイプT1、T2、T3に応じて、中性電極23を流れる電力および/または電流の制限値を使用することができる。したがって、組織21内の電流密度は、電極タイプT1、T2、T3のサイズおよび/または幾何学的形状に適合するように制限することができる。
【0073】
それぞれ1つの割り当てられた測定周波数f1、f2における少なくとも1つのインピーダンス絶対値ZNabsおよび少なくとも1つの位相値φの決定で、十分である。第1の測定周波数f1および第2の測定周波数f2において、1つのインピーダンス絶対値ZNabsおよび/または1つの位相値φが、それぞれ決定される。ここに示す実施形態の改変例では、3つ以上の測定周波数f1、f2を、少なくとも1つのインピーダンス絶対値ZNabsおよび少なくとも1つの位相値φの決定に使用することもできる。決定されるインピーダンス絶対値ZNabsの数および決定される位相値φの数は、等しいかまたは異なる量であることができる。2つ以上のインピーダンス絶対値ZNabsおよび/または2つ以上の位相値φが決定される場合、2つ以上のインピーダンス絶対値は、異なる測定周波数fにおいて決定され、および/または2つ以上の位相値φは、異なる測定周波数f1、f2において決定される。
【0074】
少なくとも1つのインピーダンス絶対値および少なくとも1つの位相値を決定するために、測定信号Mが、電極電流回路、したがって中性電極23に印加される。説明したように、交流測定信号Mは、印加された交流測定電圧UMまたは印加された交流測定電流IMとすることができる。測定信号Mは、この例によれば、第1の測定周波数f1および第2の測定周波数f2の2つの異なる測定周波数fにおいて少なくとも中性電極23に印加される(
図9~
図11)。これにより、設定される測定周波数f1、f2の順番を任意に選択することができる。
図9~
図11に示す測定信号Mの概略的な時間依存の進行では、例としてのみ、第2の測定周波数f2が最初に設定され、第1の測定周波数f1がその後にそれぞれ設定される。
【0075】
図9および
図10に示す例では、測定信号Mは、治療期間Pの外側で中性電極23にそれぞれ印加される。そうすることで、作用信号ASはまた、中性電極23を介して供給装置16への電流逆流を生成するので、作用信号ASと測定信号Mとが互いに影響を及ぼすことが回避される。
【0076】
これに代えて、測定信号Mと治療期間Pとを少なくとも一時的に重複させることも可能である。この場合、治療期間P中に設定される測定周波数fは、作用信号ASの作用周波数(作用電圧UAおよび/または作用電流IA)とは明らかに異なるように選択される。そのような時間的重なりは、例として
図11に示されている。
【0077】
測定信号Mは、実質的に中断することなく、異なる測定周波数f1、f2間で切り替えることができる(
図9および
図11)。これの代わりに、測定信号Mを休止によって中断することもできる(
図10)。この例では、測定信号Mは、1つまたは代替的に複数の治療期間Pによって中断され、したがって、測定信号Mは、時間的距離を置いて異なる測定周波数f1、f2において中性電極23に印加される。
【0078】
各設定測定周波数において、インピーダンス絶対値ZNabsおよび/または位相値φは、測定ユニット33において交流測定電圧UMおよび交流測定電流IMの評価によって決定することができる。その後、少なくとも1つのインピーダンス絶対値ZNabsおよび少なくとも1つの位相値φに基づいて、異なる電極タイプT1、T2、T3の所定の比較値との比較を実施することができ、そこから、接続された電極タイプT1、T2、T3を決定または識別することができる。
【0079】
例として、比較曲線の形態の比較値が、
図7~
図8に概略的に示されている。第1のインピーダンス絶対値曲線Z1は、第1の電極タイプT1についての測定周波数fに依存するインピーダンス絶対値ZN
absを記述する。これと同様に、第2のインピーダンス絶対値曲線Z2は、第2の電極タイプT2のインピーダンス絶対値ZN
absを記述し、第3のインピーダンス絶対値曲線Z3は、第3の電極タイプT3のインピーダンス絶対値ZN
absを記述する。第1の位相曲線φ1は、第1の電極タイプT1についての測定周波数fに依存する位相値を記述する。これと同様に、第2の位相曲線φ2は、第2の電極タイプT2についての位相値φを記述し、第3の位相曲線φ3は、第3の電極タイプT3についての位相値φを記述する。インピーダンス絶対値曲線Z1、Z2、Z3は、
図7に概略的に示されており、位相曲線φ1、φ2、φ3は、概略的に、一例として
図8に示されている。加えて、この例によって使用される測定周波数f1、f2が、
図7および
図8に示されている。
【0080】
説明したように、第1の測定周波数f1における中性電極インピーダンスZNのインピーダンス絶対値ZNabsおよび第2の測定周波数f2における中性電極インピーダンスZNの位相値φを決定するだけで十分であることができる。インピーダンス絶対値および位相の異なる周波数依存値に基づいて、接続された電極タイプT1、T2、T3をその後そこから認識することができる。少なくとも使用される測定周波数f1、f2について、少なくとも1つのインピーダンス絶対値ZNabsおよび少なくとも1つの位相値φに対するそれぞれ割り当てられた比較値は、例えば測定ユニット33において事前定義され、それにより、電極タイプT1、T2、T3は、決定された少なくとも1つのインピーダンス絶対値ZNabsおよび決定された少なくとも1つの位相値φの比較によって認識可能である。
【0081】
ここでも、インピーダンス絶対値および位相値は、それぞれ2つ以上の測定周波数fにおいて決定することもでき、決定されるインピーダンス絶対値および位相値の数は変化し得ることが示されている。
【0082】
本発明は、電気外科システム15および方法50に関する。電気外科システム15および方法50は、使用される中性電極23の電極タイプT1、T2、T3を決定するように構成される。このために、交流測定信号Mが、少なくとも2つの異なる測定周波数f1、f2において中性電極23に印加される。各測定周波数f1、f2において、インピーダンス絶対値ZNabsまたは位相値φまたはその両方が、中性電極23の中性電極インピーダンスZNについて決定される。少なくとも1つのインピーダンス絶対値ZNabsおよび少なくとも1つの位相値φが、決定される。少なくとも1つのインピーダンス絶対値ZNabsおよび少なくとも1つの位相値φに基づいて、接続された中性電極23の電極タイプT1、T2、T3は、特に少なくとも1つのインピーダンス絶対値ZNabsおよび少なくとも1つの位相値φについての既知の比較値との比較によって決定される。
【符号の説明】
【0083】
15 電気外科システム
16 供給装置
17 供給接続部
18 中性点接続部
19 器具
20 器具用ケーブル
21 組織
22 作用電極
23 中性電極
24 中性電極用ケーブル
25 第1の導体
26 第2の導体
30 インバータ回路
31 グリッド電圧源
32 作用インピーダンス
33 測定ユニット
37 第1の電極セクション
38 第2の電極セクション
39 接続領域
40 ウェブ
41 第3の電極セクション
42 外縁部
50 方法
51 第1の方法ステップ
52 第2の方法ステップ
53 第3の方法ステップ
φ 位相値
φ1 第1の位相曲線
φ2 第2の位相曲線
φ3 第3の位相曲線
AS 作用信号
B 基準面
f 測定周波数
f1 第1の測定周波数
f2 第2の測定周波数
GND グランド
IA 作用電流
IM 交流測定電流
L 長手方向
M 測定信号
P 治療期間
Q 横方向
t 時間
T1 第1の電極タイプ
T2 第2の電極タイプ
T3 第3の電極タイプ
UA 作用電圧
UM 交流測定電圧
Z1 第1のインピーダンス絶対値曲線
Z2 第2のインピーダンス絶対値曲線
Z3 第3のインピーダンス絶対値曲線
ZN 中性電極インピーダンス
ZNabs インピーダンス絶対値
【外国語明細書】