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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016076
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】木材チップ及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/44 20060101AFI20230126BHJP
【FI】
C10L5/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120132
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陶山 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩田 英治
(72)【発明者】
【氏名】林 和典
(72)【発明者】
【氏名】新屋 智崇
(72)【発明者】
【氏名】宮内 謙史郎
【テーマコード(参考)】
4H015
【Fターム(参考)】
4H015AA13
4H015AB01
4H015BA03
4H015BB10
4H015CB01
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、燃料等様々な用途に有用な木材チップを提供することにある。
【解決手段】本発明は、繊維長1.10mm以下、容積重635kg/m3以上、かつ最大水分率40%以下である、ユーカリ・ペリータとユーカリ・ブラシアーナのハイブリッド等のユーカリ属植物由来の木材チップを提供する。木材チップは、最大含水時の低位発熱量が1800kcal/kg以上であることが好ましい。ユーカリ属植物は、樹齢が2年以上15年以下であることが好ましい。本発明の木材チップは、熱利用用、発電用又は熱電供給用の燃料として用いることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維長1.10mm以下、容積重635kg/m3以上、かつ最大水分率40%以下であるユーカリ属植物由来の木材チップ。
【請求項2】
最大含水時の低位発熱量が1800kcal/kg以上である、請求項1に記載の木材チップ。
【請求項3】
ユーカリ属植物が、ユーカリ・ブラシアーナとユーカリ・ペリータのハイブリッドである請求項1又は2に記載の木材チップ。
【請求項4】
ユーカリ属植物の樹齢が2年以上15年以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の木材チップ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の木材チップと、他の木材チップを含む、木材チップ混合材。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の木材チップ及び請求項5に記載の混合材の少なくともいずれかを含む燃料。
【請求項7】
熱利用用、発電用又は熱電供給用である、請求項6に記載の燃料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材チップ及びその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化防止や持続可能な社会の構築には、温室効果ガスの排出抑制やCO2の吸収・固定の促進、さらには循環型資源であるバイオマスの利用促進が重要である。温室効果ガスの排出抑制には、非化石燃料への燃料転換や省エネルギーの推進が効果的であり、カーボンニュートラルとの考え方からバイオマス燃料は今後重要度が増すと考えられる。また、CO2の吸収・固定やバイオマス資源の増産の手法として大規模な商業植林が有効である。商業植林を実施する場合、低コスト化が必須であり、そのためには、単位面積当たりから得られるバイオマスの収量(重量)増加が課題となる。商業植林により得られた木材チップは、チップ船により輸送する。チップ船の積載容積には限りがあり、同一容積でより大量のチップが積載可能な(輸送コスト削減が可能な)高容積重チップが求められている。
【0003】
非特許文献1には、樹齢7.5年のユーカリクローンの容積重が0.53~0.59g/cm3であったことが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Pereira,B.et al(2012)International Journal of Forestry Research,Vol.2012,Article ID 523025,8 pages doi:10.1155/2012/523025https://downloads.hindawi.com/journals/ijfr/2012/523025.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
燃料バイオマスにおいては、植林地収量(重量)の向上、輸送効率向上だけでなく、燃料適性の向上も重要であるところ、非特許文献1を含め、木材の物性と燃料適性との関連についての報告はされてこなかった。
本発明の目的は、燃料等様々な用途に有用な木材チップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の〔1〕~〔7〕を提供する。
〔1〕繊維長1.10mm以下、容積重635kg/m3以上、かつ最大水分率40%以下 であるユーカリ属植物由来の木材チップ。
〔2〕最大含水時の低位発熱量が1800kcal/kg以上である、〔1〕に記載の木材チップ。
〔3〕ユーカリ属植物が、ユーカリ・ブラシアーナとユーカリ・ペリータのハイブリッドである〔1〕又は〔2〕に記載の木材チップ。
〔4〕ユーカリ属植物の樹齢が2年以上15年以下である〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の木材チップ。
〔5〕〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の木材チップと、他の木材チップを含む、木材チップ混合材。
〔6〕〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の木材チップ及び請求項5に記載の混合材の少なくともいずれかを含む燃料。
〔7〕熱利用用、発電用又は熱電供給用である、〔6〕に記載の燃料。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、燃料等の用途において有用な木材チップが提供される。本発明の木材チップは、容積重、最大水分率及び繊維長が所定の範囲であることにより、単位体積あたりの燃焼カロリーが高いものとなり、燃料等エネルギーとしての利用効率(例えば、ボイラーの生産効率)に優れ、良好な燃料適性を示すことができる。また、本発明の木材チップは、容積重が大きく、かつ水分率が抑えられているため、従来の木材チップと比較して重量に占める木質量が豊富であり、輸送効率を向上させることができる。さらに、本発明の木質チップは、CO2固定量が大きい木材から生産できるため、本発明の木材チップを大規模な商業植林にて大量生産することにより、その材料としての木が育つ過程で空気中の炭酸ガスを効率よく固定できる。そのため、本発明の木材チップは地球環境変動への緩和策、温暖化の抑制策として持続可能な社会の実現に貢献できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔木材チップ〕
本発明の木材チップは、所定の繊維長、容積重、最大水分率を有する。
【0009】
(容積重)
木材チップの容積重は、635kg/m3以上、好ましくは640kg/m3以上、より好ましくは645kg/m3以上、更に好ましくは650kg/m3以上である。容積重が上記の数値を満たすものは、繊維壁が厚く、空隙の少ない構造を持つ傾向にある。木材中の水の多くは空隙に存在するところ、空隙の少ない構造を持つことにより、水を含みにくいものとなり得る。また、容積重が上記の数値を満たすものは、満たさないものと比較して同容積で一度に運べる木質重量が大きいことから、輸送効率を高めることができる。さらに、炭酸ガス固定量がより大きい木材から生産できるので、斯かる木材チップの大量生産の結果炭酸ガス固定量を増やすことができ、地球環境変動への緩和策、温暖化の抑制策として持続可能な社会の実現に貢献できる。上限は、通常800kg/m3以下、好ましくは750kg/m3以下、より好ましくは730kg/m3以下、更に好ましくは720kg/m3以下である。
【0010】
容積重は、体積に対する重量の比率である。容積重の測定は、木材チップを水が入っているメスシリンダーに投入し、その増加した目盛りを読み取り、体積の増加を確認後、チップを乾燥させ、絶乾の重量を測定し算出する方法(JAPAN TAPPI No.3:2000)で行うことができ、後段の実施例の測定方法も同様である。
【0011】
(最大水分率)
木材チップの最大水分率は、40%以下、好ましくは39.5%以下、より好ましくは39%以下である。一般的な木材チップは、最大水分率は40%より高いのに対し、本発明の木材チップは最大水分率及び容積重が上記の数値を満たすことから、発熱量が高く、燃料用途に適したものとなり得る。また、水分含有量が低いので、輸送効率を向上させることができる。下限は特にないが、一般には、35%以上である。
【0012】
最大水分率は、木材チップに含まれ得る最大の水分率である。最大水分率の測定は、以下の手順で行うことができる。木材チップ(100g以上が好ましい)を2晩以上水に含侵させたのち、チップ表面の水分を除いて重量(乾燥前の重量(g))を測定する。その後、木材チップを送風乾燥機にて105℃、48時間乾燥させた後、重量(乾燥後の重量(g))を測定する。各重量を下記の式に代入して、最大水分率を求める。
最大水分率(%)=(乾燥前の重量-乾燥後の重量)÷乾燥前の重量×100
【0013】
(最大含水時の低位発熱量)
木材チップの最大含水時の低位発熱量は、好ましくは1800kcal/kg以上、より好ましくは1900kcal/kg以上である。本発明の木材チップは、最大水分率が一般的な木材チップよりも低いため、最大含水時の低位発熱量としては一般的な木材チップよりも高くなる。なお、木材チップの乾燥時の低位発熱量は、一般的なチップと大きな差はない。最大含水時の低位発熱量が上記の数値を満たすものは、一定容積に貯留できる熱量が多く、そのまま燃料用途で使用、もしくは、ペレットに加工後、燃料として用いたときに多くの燃焼エネルギーを得ることができる。また、一定容積に貯留できる熱量が多いので、運搬や貯留効率が向上し得る。
【0014】
最大含水時の低位発熱量は、木材チップが最大水分率まで吸水したときの湿式重量あたりの低位発熱量として表され、以下の式で算出でき、後段の実施例の測定方法も同様である。
最大含水時の低位発熱量(kcal/kg)=
無水ベース低位発熱量(kcal/kg)×固形分(%)÷100-水の蒸発潜熱(kcal/kg)×保持水分(kg)
水の蒸発潜熱=2,250kJ/kg
固形分(%)=100-最大水分率(%)
【0015】
無水ベース低位発熱量(kcal/kg)は、以下の方法で求めることができる。
木材チップを粉砕機にて粉砕し、200meshアンダーにふるい分けを行った木粉を試料とする。石炭類及びコークス類-機器分析装置による元素分析方法(JIS M 8819)に準拠し、NCHアナライザーを用いて窒素分、炭素分、水素分を測定する。それらの数値と灰分以外を酸素分として計算する。灰分については、石炭類及びコークス類-工業分析方法(JIS M 8812)に準拠し測定する。石炭類及びコークス類-ボンブ熱量計による総発熱量の測定方法及び真発熱量の計算方法(JIS M 8814)に準拠し、島津燃研式自動ボンべ熱量計(CA-4PJ)にて高位発熱量を測定し、上記酸素分と灰分を考慮し、低位発熱量を計算する。
【0016】
(繊維長)
木材チップの繊維長は、1.10mm以下、好ましくは1.05mm以下、より好ましくは1.00mm以下である。繊維長が上記の数値を満たし、さらに最大水分率、容積重を満たすものは、燃料として有用である。下限は特に制限はないが、通常、0.50mm以上、好ましくは0.55mm以上、より好ましくは0.60mm以上、更に好ましくは0.65mm以上である。
【0017】
繊維長は、JIS P 8226:2011「パルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法」に準拠しファイバーテスター(Lorentzen&Wettre社製)を用いて長さ加重平均繊維長として測定でき、後段の実施例の測定方法も同様である。
【0018】
(樹木)
木材チップは、木本植物に由来する。木本植物は、通常は山林樹木であり、例えば、ユーカリ、アカシア、シラカバ、ブナなどの広葉樹、アカマツ、スギ、ヒノキなどの針葉樹が挙げられ、好ましくは広葉樹、より好ましくはアカシア(Acacia)属植物及びユーカリ(Eucalyptus)属植物、更に好ましくはユーカリ属植物である。ユーカリ属植物は、成長が早いため木材チップの収穫量も大きくなるため燃料用チップにも適している。また、伐採後、切り株から萌芽更新による再造林も可能なため、持続可能な植林が可能である。
【0019】
ユーカリ属植物としては、例えば、Eucalyptus pellita、Eucalyptus brassiana、Eucalyptus urophylla×Eucalyptus grandis、Eucalyptus pellita×Eucalyptus brassiana、Eucalyptus urophylla、Eucalyptus grandis、Eucalyptus maculata、Eucalyptus tereticornis、Eucalyptus camaldulensis、Eucalyptus rudis、Eucalyptus resinifera、Eucalyptus propinqua、Eucalyptus sideroxylon、Eucalyptus botryoides、Eucalyptus viminalis、Eucalyptus saligna、Eucalyptus ovata、Eucalyptus globulus、Eucalyptus nitens、Eucalyptus saligna、Eucalyptus cladocalyx、これらから選ばれる2以上の樹種のハイブリッドが挙げられる。これらのうち、植林地の環境に適したもの(例えば、熱帯で植林する場合には、熱帯に適応可能性のある樹種)を選ぶことができるが、E.pellita、E.brassiana、E.urophylla、E.brassianaとE.pellitaのハイブリッド、E.urophyllaとE.pellitaのハイブリッド、これらから選ばれる2以上の樹種のハイブリッドが好ましく、E.brassianaとE.pellitaがより好ましい。E.pellitaやE.brassianaは、いずれも容積重や最大水分率が比較的良いが、更に容積重の高い(例えば、550kg/m3以上)個体同士を交配させ、得られたF1個体を選抜することで優れた形質を有した個体が得られたと考えられる。
【0020】
木材チップの由来植物は、通常はクローン苗及び実生苗から育成した植林木である。樹齢は特に限定されず、木材チップが得られる樹齢であればよく(通常は2年以上)、好ましくは5年以上である。上限は品質面からは特に限定されないが、経済的な観点からは短いほうがよい。ユーカリ属植物の場合、植林地域にもよるが、通常は15年以下であり、好ましくは10年以下である。
【0021】
木材チップは、単一の植物に由来する木材チップでもよいし、樹種、樹齢の異なる植物に由来する2以上の木材チップの組み合わせでもよい。
【0022】
〔木材チップの製造方法〕
木材チップは、その由来植物(例えば、ユーカリ属植物)から常法に従って製造すればよい。例えば、植物を伐採後、木材部分(幹及び枝)から樹皮を取り除き、切削又は破砕してチップを得ることができる。
【0023】
〔木材チップのサイズ・用途〕
木材チップのサイズは、その用途に応じて定めればよく、特に限定されないが、例えば、木材チップを燃料に用いる場合には、必要に応じて、燃焼機への搬送機の仕様にあわせて調整できる。チップの大きさは、一般に、搬送性と燃焼速度と関係することが多い。中でも、搬送トラブルの多くは、搬送機とチップサイズとの不適合によるものであるところ、各燃焼機の搬送機の仕様に合った大きさのチップを選抜することにより、このようなトラブルを回避できる。また、チップのサイズは、機械トラブル、瞬時燃焼による異常高温の発生の抑制、搬送詰まりの抑制、及び切削ロスの抑制の観点から、適宜決定すればよい。木材チップは、必要に応じてペレット化されてもよい。木材チップの用途としては、例えば、燃料用(例えば、発電、熱利用、熱電供給用)、パルプ用(例えば、製紙パルプ用)、木質ボード用(例えば、配向性ストランドボード用(OSB)、パーティクルボード用、中密度繊維板用(MDF))、舗装用、農業用(例えば、堆肥用、菌床用)が挙げられ、好ましくは燃料用である。
【0024】
〔木材チップ混合材〕
上記木材チップは、2以上を組み合わせて用いてもよいし、さらに上記木材チップ以外の他の木材チップと組み合わせて用いてもよい。他の木材チップとしては、繊維長、容積重、及びパルプ収率の少なくともいずれかが異なる木材チップが挙げられる。他の木材チップと組み合わせる場合の配合比率は、用途に応じて適宜定めることができる。木材チップ混合材のサイズ及び用途の例は、木材チップと同様である。木材チップ混合材の製造方法は、混合材を構成する木材チップを混合し混合材を得る工程を含めばよく、特に限定されない。混合は、常法により行えば良い。
【0025】
〔燃料〕
上記木材チップ及び混合剤は、燃料として、例えば、発電、熱利用、熱電供給用とすることができる。燃料として使用する際には、そのまま使用してもよいが、必要に応じて、水分調整処理を行ってもよい。水分調整処理は、木材チップの水分が、木材の重量に対し好ましくは55%以下、より好ましくは35%以下とする処理である。上記木材チップ及び混合剤は、燃料として用いる場合、木材チップ以外の燃料と共に用いてもよい。
【0026】
〔パルプ〕
上記木材チップ及び混合材は、パルプの原料として利用できる。パルプを製造する条件または手法は、上述の木材チップ又は混合材をパルプ化する工程を含めばよく、特に限定されない。パルプ化の方法としては、例えば、クラフト法、サルファイト法、ソーダ法、ポリサルファイド法等の蒸解を行う化学的方法(ケミカルパルプ)、リファイナー、グラインダー等の機器を用いる機械的方法(メカニカルパルプ);薬品による前処理の後機械力によってパルプ化する方法(セミケミカルパルプ)等の製紙業界で一般に用いられるパルプ化法が挙げられるが、これらに限定されない。さらに漂白、叩解等の処理を行ってもよい。得られるパルプは、未晒(漂白前)パルプ、晒(漂白後)パルプ、叩解パルプ、未叩解パルプのいずれであってもよい。ケミカルパルプとしては、例えば、亜硫酸パルプ、クラフトパルプが挙げられ、クラフトパルプが好ましい。
【0027】
〔紙〕
パルプからの紙の製造は、常法により行えばよく、例えば、パルプからシートを形成する工程を含む製造方法が挙げられる。シートの形成は、例えば、日本工業規格(JIS)P 8122「パルプ-試験用手すき紙の調製方法」(1989年版)に従えばよく、パルプを抄紙機でシート状に成形する方法が挙げられる。パルプをシート状に成形する際に、製紙用途で一般に用いられる添加剤をパルプに添加してもよい。該添加剤としては、紙力増強剤、嵩高剤、顔料、歩留り向上剤、ろ水性向上剤、内添サイズ剤(ロジン系サイズ剤、硫酸バンド等)、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤が例示される。該添加剤の使用量は特に限定されず、本発明の効果を損なわない範囲であればよい。シートの形成の際には、パルプ以外の紙原料を用いてもよく、例えば、レーヨン繊維、フィルム等の他の材料が挙げられる。紙原料は、上記ユーカリ属植物より得られるパルプとともに他の材料が予めシート、フィルム、ロール等の形状に成形されたものであってもよい。紙原料は、他の植物を原料とするパルプを含んでいてもよいが、含まないことが好ましい。
【0028】
抄紙機としては、例えば長網式抄紙機、丸網式抄紙機、ギャップフォーマ、ハイブリッドフォーマ、多層抄紙機、これらの中から選ばれる2以上の抄造機における抄紙方式を組合せた公知の抄造機が挙げられる。抄造機におけるプレス線圧、後段でカレンダー処理を行う場合のカレンダー線圧は、いずれも操業性及び得られる可塑化セルロースの性能に支障を来さない範囲内で設定すればよい。
【0029】
紙は、各種用途で利用できるが、地合いが良好であり、印刷時のインキ着肉性を向上させることができ印刷ムラの発生を抑制できるため、印刷適性が良好であるため、印刷用紙として利用できる。また、塗工ムラの発生も抑制できるため、塗工紙として利用できる。
【実施例0030】
実施例1~3及び比較例1~3
熱帯・亜熱帯地域に適応可能な樹種、ハイブリッド種を含むユーカリ属植物約20万個体の苗(実生苗)を作成し、ブラジルの植林地において植栽試験を実施した。実生苗(植え付け時の苗の樹齢:挿し付け後100日目)は播種後約100日間、散水設備のある温室で発根処理を行い(約3週間、高湿度(約100%)、遮光)、順化室(遮光度、湿度を徐々に低下)、野外圃場を経て、雨季(12月末~6月)に植林地に植栽した(植栽密度:1666本/ha)。約4年間保育させた後、材積、樹形にて選抜し約200個体に絞り込みを行った。その後、選抜した個体を伐倒し、萌芽枝からさし木によるクローン苗の増殖を行った。そのクローン苗を砂耕栽培棚に移植し、母樹として枝を伸長させ、その枝を挿し木することでクローン苗の増殖を行った。その後、クローン苗を用いて、2回目の植栽試験を実施した(1系統30本)。4年間保育後、クローンとしての材積、樹形、均一性を確認し、40クローンに絞り込みを行った。その後、砂耕栽培棚の母樹を用いて、大規模な挿し木増殖を行い、3回目の大規模な植栽試験をクローン苗で行った(1系統500本)。4年間保育した後、大面積でのクローンとしての材積、樹形、均一性、病害適性を評価し、10クローンに絞り込みを行った。その後、TAPPI JAPANに準拠したパルプ化適性試験を行い数クローン選抜した。本工程を5年間繰り返し、延べ100万個体から選抜を実施し、6クローンを選抜した。
【0031】
〔木材チップの物性〕
各クローンの木材部分から樹皮を取り除き、切削して木材チップを得た。各木材チップの物性を以下の条件で測定した(表1)。
【0032】
(繊維長)
JIS P 8226:2011「パルプ-光学的自動分析法による繊維長測定方法」に準拠しファイバーテスター(Lorentzen&Wettre社製)を用いて長さ加重平均繊維長として測定した。
【0033】
(容積重)
J TAPPI NO.3:2000「木材チップ-容積重試験方法」に準拠して測定した。
【0034】
(最大含水時の低位発熱量・最大水分率)
前段で説明した手順で測定した。発熱量の測定は、燃研式自動ボンベ熱量計CA-4AJ測定システム(島津製作所製)を用いた。
【0035】
【表1】
【0036】
〔木材チップの経時的な水分率挙動の測定〕
実施例1、比較例1~3の各クローンの木材チップについて、水分率挙動を測定した。すなわちまず、各チップ300BDg(絶乾重量)を2晩以上、水に浸漬し、飽和状態の水分率を測定した。その後、チップを30℃、RH(相対湿度)76%環境下に静置し、1日ごとに水分率を計測した(表2)。なお、0日後の水分率が、最大水分率に相当する。
【0037】
【表2】
【0038】
実施例1のチップは、比較例1~3と比較して、気乾水分率(気乾状態)に至るまでの期間が短く、乾燥が早期に進むことが明らかとなった。
以上の結果は、本発明において、繊維長1.10mm以下、容積重635kg/m3以上、かつ最大水分率が40%以下である木材チップは、良好な燃料特性を示すことが明らかである。