(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160766
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】計時器用ムーブメントのための三次的なカルーセル
(51)【国際特許分類】
G04B 17/28 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
G04B17/28
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023066178
(22)【出願日】2023-04-14
(31)【優先権主張番号】22169523.2
(32)【優先日】2022-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】594082512
【氏名又は名称】ブランパン・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】カドミエル・ワルトン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】計時器用の三次的なカルーセルを提供する。
【解決手段】三次元的なカルーセル1であって、内側キャリッジ2は、第1の回転軸のまわりを回転して動くことができ、外側キャリッジ3は、第2の回転軸D2のまわりを回転して動くことができ、内側キャリッジ2は、外側キャリッジ3の内側に収容され、駆動手段15は、内側キャリッジ2の回転運動と並行して外側キャリッジ3の回転運動をアクチュエートするように構成しており、駆動手段15によって与えられるトルクの第1の部分は、外側キャリッジ3に伝達され、トルクの第2の部分は、内側キャリッジ2に伝達され、駆動手段15は、さらに、外側キャリッジ3の回転運動と並行して、かつ、内側キャリッジ2の回転運動と並行して、エスケープ機構5をアクチュエートするように構成しており、駆動手段15によって与えられるトルクの第3の部分は、エスケープ機構5に伝達される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バレル(7)とギア列(13)がある駆動手段(15)を備える計時器用ムーブメント(10)用の三次的なカルーセル(1)であって、
前記三次元的なカルーセル(1)は、慣性錘(6)と、前記慣性錘(6)のための弾性戻し手段(4)と、エスケープ機構(5)とを備え、
前記三次元的なカルーセル(1)は、内側キャリッジ(2)と外側キャリッジ(3)を備え、
前記内側キャリッジ(2)は、前記慣性錘(6)と、前記慣性錘(6)のための前記弾性戻し手段と、前記エスケープ機構(5)とを担持し、
前記内側キャリッジ(2)は、第1の回転軸(D1)のまわりを回転して動くことができ、
前記外側キャリッジ(3)は、第2の回転軸(D2)のまわりを回転して動くことができ、
前記内側キャリッジ(2)は、前記外側キャリッジ(3)の内側に収容され、
前記駆動手段(15)は、前記内側キャリッジ(2)の回転運動と並行して前記外側キャリッジ(3)の回転運動をアクチュエートするように構成しており、
前記駆動手段によって与えられるトルクの第1の部分は、前記外側キャリッジ(3)に伝達され、
前記トルクの第2の部分は、前記内側キャリッジ(2)に伝達され、
前記駆動手段(15)は、さらに、前記外側キャリッジ(3)の回転運動と並行して、かつ、前記内側キャリッジ(2)の回転運動と並行して、前記エスケープ機構(5)をアクチュエートするように構成しており、
前記駆動手段(15)によって与えられる前記トルクの第3の部分は、前記エスケープ機構(5)に伝達される
ことを特徴とする三次的なカルーセル。
【請求項2】
前記駆動手段(15)は、前記外側キャリッジ(3)の前記第2の回転軸(D2)のまわりに配置される秒駆動クラウン(20)を備え、
前記秒駆動クラウン(20)は、前記外側キャリッジ(3)と前記内側キャリッジ(2)に並行して、前記駆動手段(15)によって与えられる前記トルクの前記第1の部分と前記第2の部分を伝達するように構成している
ことを特徴とする請求項1に記載の三次的なカルーセル。
【請求項3】
前記秒駆動クラウン(20)の回転によって、さらに、前記外側キャリッジ(3)と前記内側キャリッジ(2)の回転と並行して、前記エスケープ機構(5)をアクチュエートさせる
ことを特徴とする請求項2に記載の三次的なカルーセル。
【請求項4】
前記三次元的なカルーセルは、前記外側キャリッジ(3)又は前記内側キャリッジ(2)によって担持されるキャリッジ駆動車セット(30)を備え、
前記キャリッジ駆動車セット(30)は、前記外側キャリッジ(3)と前記内側キャリッジ(2)に対して自由に回転し、
前記キャリッジ駆動車セット(30)の回転は、前記エスケープ機構(5)と、前記内側キャリッジ(2)の回転運動を並行してアクチュエートする
ことを特徴とする請求項1に記載の三次的なカルーセル。
【請求項5】
前記秒駆動クラウン(20)は、前記キャリッジ駆動車セット(30)と噛み合う
ことを特徴とする請求項3及び4に記載の三次的なカルーセル。
【請求項6】
前記エスケープ機構は、エスケープ車(25)と、エスケープピニオン(21)と、前記エスケープピニオン(21)と噛み合う中間車(19)とを備え、
前記キャリッジ駆動車セット(30)は、前記エスケープ機構(5)の前記中間車(19)と噛み合う
ことを特徴とする請求項4に記載の三次的なカルーセル。
【請求項7】
前記三次元的なカルーセルは、前記内側キャリッジ(2)を保持するための第1の保持ギア列(40)を備え、
前記第1の保持ギア列(40)は、前記内側キャリッジ(2)内に配置されて、前記エスケープ機構(5)の前記中間車(19)と、そして、前記外側キャリッジ(3)と一体的な車(44)と噛み合って、前記内側キャリッジ(2)が過大な速さで回転しないようにする
ことを特徴とする請求項6に記載の三次的なカルーセル。
【請求項8】
前記三次元的なカルーセルは、前記外側キャリッジ(3)を保持するための第2の保持ギア列(50)を備え、
前記第2の保持ギア列(50)は、前記外側キャリッジ(3)の外側に配置されて、前記秒駆動クラウン(20)と、そして、前記外側キャリッジ(3)と噛み合って、前記外側キャリッジ(3)が過大な速さで回転しないようにする
ことを特徴とする請求項2に記載の三次的なカルーセル。
【請求項9】
前記秒駆動クラウン(20)には、第1の歯列(36)と第2の歯車(37)の2つの歯列があり、
前記第1の歯列(36)は、前記キャリッジ駆動車セット(30)と噛み合い、
前記第2の歯車(37)は、前記第2の保持ギア列(50)と噛み合う
ことを特徴とする請求項8に記載の三次的なカルーセル。
【請求項10】
前記外側キャリッジ(3)を回転可能にするように構成している第1のボールベアリング(33)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の三次的なカルーセル。
【請求項11】
前記秒駆動クラウン(20)を回転可能にするように構成している第2のボールベアリング(38)を備える
ことを特徴とする請求項1に記載の三次的なカルーセル。
【請求項12】
前記外側キャリッジ(3)には、互いに堅く接続された環状上部(24)と環状下部(28)があり、
前記環状上部(24)は、少なくとも1つ、好ましくは2つ、のベアリング(41)によって前記内側キャリッジ(2)を支持し、
前記環状下部(28)には、外側の歯列(32)がある
ことを特徴とする請求項1に記載の三次的なカルーセル。
【請求項13】
前記内側キャリッジ(2)は、上側支持体(8)と下側支持体(9)を備え、
前記慣性錘(6)と、前記慣性錘(6)のための前記弾性戻し手段(4)と、前記エスケープ機構(5)は、前記上側支持体(8)と前記下側支持体(9)の間に懸架される
ことを特徴とする請求項1に記載の三次的なカルーセル。
【請求項14】
前記内側キャリッジ(2)の回転の速さは、前記外側キャリッジ(3)の回転の速さよりも速い
ことを特徴とする請求項1に記載の三次的なカルーセル。
【請求項15】
前記第1の回転軸(D1)は、前記第2の回転軸(D2)に対して実質的に垂直である
ことを特徴とする請求項1に記載の三次的なカルーセル。
【請求項16】
プレートと、駆動手段と、請求項1に記載の三次的なカルーセルとを備える
ことを特徴とする計時器用ムーブメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計時器用ムーブメントのためのトゥールビヨン又はカルーセルタイプの規制メンバーの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
現状のほとんどの機械式の携行型時計(例、腕時計、懐中時計)は、ばね仕掛けバランスとスイス式レバーエスケープ機構を備える規制メンバーを備える。ばね仕掛けバランスは、携行型時計のタイムベースを構成する。ばね仕掛けバランスは、共振器とも呼ばれる。
【0003】
エスケープには、以下の2つの主な機能がある。
- 共振器の繰り返し運動を維持する機能、
- このような繰り返し運動を数える機能
の2つの機能がある。
【0004】
機械式共振器を構成するためには、慣性錘、ガイド、及び弾性戻し要素が必要である。伝統的には、バランスばねは、バランスなどによって構成している慣性錘のための弾性戻し要素として機能する。このバランスは、プレーンルビーベアリング内にて回転するピボットによって回転ガイドされる。
【0005】
規制メンバーの運動に対する望ましくない重力の影響を減らすために、トゥールビヨン又はカルーセルタイプの複雑機構が開発されて、規制メンバーのアセンブリーを回転軸のまわりに回転させている。規制メンバーは、回転軸のまわりを連続的に回転する回転キャリッジ内に配置される。また、これらの複雑機構には、特別な美的魅力があり、このことによって、計時器を非常に魅力的なものにする。
【0006】
トゥールビヨンでは、エスケープ機構とキャリッジ回転機構が直列に配置される。一般的には、ムーブメントを駆動する手段は、キャリッジの回転をアクチュエートし、次に、そのキャリッジの回転は、エスケープ機構をアクチュエートさせる。エスケープ機構は、ムーブメントの固定車と噛み合って、アクチュエートされる。
【0007】
駆動手段によって、キャリッジの回転のアクチュエートと、エスケープ機構のアクチュエートが並行して行われるために、カルーセルには異なるはたらきがある。これらの2つの運動は、互いに独立している。したがって、トゥールビヨンとは異なり、エスケープ機構が阻止されていても、キャリッジが回転することがあり得る。
【0008】
バレルを取り外すときにキャリッジが回ることを防ぐために、カルーセルは、保持ギア列を備え、これによって、エスケープ機構が阻止されているときにキャリッジを阻止する。
【0009】
重力に対する規制メンバーの精度をさらに改善するために、三次的なトゥールビヨンが開発されてきた。このようなトゥールビヨンは、好ましくは互いに垂直である、少なくとも2つの回転軸のまわりを回転する少なくとも2つのキャリッジを備える。
【0010】
しかし、三次的なトゥールビヨンのためのキャリッジの構成をカルーセルに適用させることはできない。なぜなら、カルーセルの特定の構成と動作のためであり、特に、キャリッジとエスケープ機構の回転の並列的なアクチュエートのためである。したがって、三次的なカルーセルは実際には存在しない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上述の課題を解決し、三次的なカルーセルを備える計時器用ムーブメントを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このために、本発明は、バレルとギア列がある駆動手段を備える計時器用ムーブメント用の三次的なカルーセルに関し、前記三次元的なカルーセルは、慣性錘と、前記慣性錘のための弾性戻し手段と、エスケープ機構とを備える。
【0013】
前記三次元的なカルーセルは、内側キャリッジと外側キャリッジを備え、前記内側キャリッジは、前記慣性錘と、バランスの前記弾性戻し手段と、前記エスケープ機構とを担持し、前記内側キャリッジは、第1の回転軸のまわりを回転して動くことができ、前記外側キャリッジは、前記第1の回転軸とは異なる第2の回転軸のまわりを回転して動くことができ、前記内側キャリッジは、前記外側キャリッジの内側に収容され、前記駆動手段は、前記内側キャリッジの回転運動と並行して前記外側キャリッジの回転運動をアクチュエートするように構成しており、前記駆動手段によって与えられるトルクの第1の部分は、前記外側キャリッジに伝達され、前記トルクの第2の部分は、前記内側キャリッジに伝達され、前記駆動手段は、さらに、前記外側キャリッジの回転運動と並行して、かつ、前記内側キャリッジの回転運動と並行して、前記エスケープ機構をアクチュエートするように構成しており、前記駆動手段によって与えられる前記トルクの第3の部分は、前記エスケープ機構に伝達される、という点で画期的である。
【0014】
このように、前記駆動手段に、前記エスケープ機構と、前記外側キャリッジと前記内側キャリッジを並列にアクチュエートさせることによって、カルーセルを得ることができる。
【0015】
具体的には、カルーセルに従って、前記エスケープ機構と、前記外側キャリッジと、前記内側キャリッジのアクチュエートは、互いに独立である。前記駆動手段によって与えられるトルクの第1の部分は、前記外側キャリッジに伝達され、前記トルクの第2の部分は、前記内側キャリッジの回転運動のために伝達され、前記トルクの第3の部分は、前記エスケープ機構に伝達される。
【0016】
また、前記カルーセルは、内側キャリッジと外側キャリッジが2つの異なる回転軸のまわりを回転することができるために、三次元的である。
【0017】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記駆動手段は、好ましくは前記外側キャリッジのまわりに、前記外側キャリッジの前記第2の回転軸のまわりに配置される秒駆動クラウンを備え、前記秒駆動クラウンは、前記外側キャリッジと前記内側キャリッジに並行して、前記駆動手段によって与えられる前記トルクの前記第1の部分と前記第2の部分を伝達するように構成している。
【0018】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記秒駆動クラウンの回転によって、さらに、前記外側キャリッジと前記内側キャリッジの回転と並行して、前記エスケープ機構をアクチュエートさせる。
【0019】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記三次元的なカルーセルは、前記外側キャリッジ又は前記内側キャリッジによって担持されるキャリッジ駆動車セットを備え、前記キャリッジ駆動車セットは、前記外側キャリッジと前記内側キャリッジに対して自由に回転し、前記キャリッジ駆動車セットの回転は、前記エスケープ機構と、前記内側キャリッジの回転運動を並行してアクチュエートする。
【0020】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記秒駆動クラウンは、前記キャリッジ駆動車セットと噛み合う。
【0021】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記エスケープ機構は、エスケープ車と、エスケープピニオンと、前記エスケープピニオンと噛み合う中間車とを備え、前記キャリッジ駆動車セットは、前記エスケープ機構の前記中間車と噛み合う。
【0022】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記三次元的なカルーセルは、前記内側キャリッジを保持するための第1の保持ギア列を備え、前記第1の保持ギア列は、前記内側キャリッジ内に配置されて、前記エスケープ機構の前記中間車と、そして、前記外側キャリッジと一体的な車と噛み合って、前記内側キャリッジが過大な速さで回転しないようにする。
【0023】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記三次元的なカルーセルは、前記外側キャリッジを保持するための第2の保持ギア列を備え、前記第2の保持ギア列は、前記外側キャリッジの外側に配置されて、前記秒駆動クラウンと、そして、前記外側キャリッジと噛み合って、前記外側キャリッジが過大な速さで回転しないようにする。
【0024】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記秒駆動クラウンには、第1の歯列と第2の歯車の2つの歯列があり、前記第1の歯列は、前記キャリッジ駆動車セットと噛み合い、前記第2の歯車は、前記第2の保持ギア列と噛み合う。
【0025】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記三次元的なカルーセルは、前記外側キャリッジを回転可能にするように構成している第1のボールベアリングを備える。
【0026】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記三次元的なカルーセルは、前記秒駆動クラウンを回転可能にするように構成している第2のボールベアリングを備える。
【0027】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記外側キャリッジには、互いに堅く接続された環状上部と環状下部があり、前記環状上部は、少なくとも1つ、好ましくは2つ、のベアリングによって前記内側キャリッジを支持し、前記環状下部には、外側の歯列がある。
【0028】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記内側キャリッジは、上側支持体と下側支持体を備え、前記慣性錘と、前記慣性錘のための前記弾性戻し手段と、前記エスケープ機構は、前記上側支持体と前記下側支持体の間に懸架される。
【0029】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記内側キャリッジの回転の速さは、前記外側キャリッジの回転の速さよりも速い。
【0030】
本発明の1つの特定の実施形態において、前記第1の回転軸は、前記第2の回転軸に対して実質的に垂直である。
【0031】
本発明は、さらに、前記のような三次的なカルーセルを備える計時器用ムーブメントに関する。
【0032】
添付の図面を参照しながらいくつかの実施形態についての説明を読むことによって、本発明の目的、利点及び特徴が一層明らかになる。なお、これらの実施形態は、説明のためにのみ与えられるものであり、本発明の範囲を限定するように意図されたものではない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明に係る三次元的なカルーセルを備える計時器用ムーブメントの一部を上から見た図を概略的に示している。
【
図2】
図1の計時器用ムーブメントの一部の斜視図を概略的に示している。
【
図3】本発明に係る三次元的なカルーセルの一部の上方からの斜視図を概略的に示している。
【
図4】本発明に係る三次元的なカルーセルの一部の下方からの斜視図を概略的に示している。
【
図5】本発明に係る三次元的なカルーセルの一部を上から見た図を概略的に示している。
【
図6】本発明に係る三次元的なカルーセルの一部の上方からの斜視図を概略的に示している。
【
図7】本発明に係る三次元的なカルーセルの一部の上方からの斜視図を概略的に示している。
【
図8】本発明に係る三次元的なカルーセルの外側キャリッジの上方からの斜視図を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明は、三次元的なカルーセル1、及びこのような三次元的なカルーセル1を備える計時器用ムーブメント10に関する。計時器用ムーブメント10には、プレート(図示せず)があり、このプレートは、好ましくは、実質的に1つの平面内にて延在し、このプレートは、ムーブメント10の一部を支持するように構成している。
【0035】
一部を
図1及び2に示しているムーブメント10は、さらに、バレル7とギア列13がある駆動手段15を備え、このギア列13は、針(図示せず)の運動をアクチュエートし、バレル7のばねが与える駆動力を三次元的なカルーセル1に伝達する。
【0036】
三次元的なカルーセル1は、慣性錘6と、ガイドと、慣性錘6の弾性戻し要素4とを備える規制メンバーであり、これらは、三次的なカルーセル1を実質的に1つの平面内で振動させるように構成している。三次的なカルーセルは、さらに、慣性錘6と連係するエスケープ機構5を備える。弾性戻し要素4は、例えば、バランスばねであり、慣性錘6は、振動運動を行うためにバランスばねに関連づけられた環状バランスである。エスケープ機構5は、例えば、エスケープ車25、パレットレバー26、及び中間車19を備える伝統的なエスケープ機構である。エスケープ車25は、パレットレバー26と連係して、所定の振動数で断続的に回転する。パレットレバー26は、バランス車の運動及びエスケープ車25のインパルスのおかげで動くことができる。
【0037】
以下の説明において、駆動手段15は、三次的なカルーセル1が動作するために必要なエネルギーを供給し伝達するための部分を意味する。
【0038】
本発明は、当業者に知られている単純なカルーセルの固有な特徴や動作に特に関連するものではない。
【0039】
図1~8は、特に、三次的なカルーセル1を示している。三次的なカルーセル1には、内側キャリッジ2があり、この三次的なカルーセル1の内側には、慣性錘6、ガイド及び弾性戻し要素4を備える機械式共振器、そして、スイス式レバー26のエスケープ機構5が配置される。
【0040】
内側キャリッジ2には、上側支持体8と下側支持体9があり、これらは、支柱12に挿入されるねじ11によって中間構造57に組み付けられ、この支柱12は、上側支持体8のために2つ、下側支持体9のために3つある。慣性錘6、ガイド、及び弾性戻し要素4を備える機械式共振器は、上側支持体8と中間構造57の間に懸架され、エスケープ機構5は、中間構造57と下側支持体9の間に懸架される。
【0041】
下側支持体9には、互いに接続された複数のセグメント23があるフレーム14があり、これによって、ベアリングを支持するジョイントと、内側キャリッジ2の内側にて機構要素を支持する支柱12を形成する。
【0042】
慣性錘6は、内側キャリッジ2の内側に配置される第1のスタッフ上に配置される。第1のスタッフは、慣性錘6の平面に対して実質的に垂直である。
【0043】
バランスは、外側から見えるように内側キャリッジ2の上部に配置される。バランスは、所定の振動数で内側キャリッジ2内の第1のスタッフのまわりの回転振動運動を行うように構成している。
【0044】
機械式共振器をアクチュエートするために、第1のスタッフと実質的に平行な第2のスタッフ17が内側キャリッジ内に配置される。中間車19は、第2のスタッフ17と一体的となっている。中間車19は、第1のスタッフと第2のスタッフ17に実質的に平行である第3のスタッフ22上に配置されるエスケープピニオン21と噛み合う。第3のスタッフ22は、内側キャリッジ2の内側に配置される。第3のスタッフ22は、さらに、エスケープピニオン21の上に配置されるエスケープ車25を保持する。エスケープ車25は、エスケープ車25の周部に対して垂直に配置されるスイス式レバー26と連係する。パレットレバー26には、第1の端にフォークがある細長い本体があり、このフォークは、バランスの運動と連係する第1のスタッフのピンと連係するように構成している。パレットレバー26の第2の端には、エスケープ車25と連係するように構成している2つのパレットがあり、交互にエスケープ車25の回転を阻止してエスケープ車25を1ステップずつ回転させる。パレットレバー26は、内側キャリッジ2の内側に配置される第4のスタッフ27によって担持される。
【0045】
内側キャリッジ2は、外側キャリッジ3の内側の第1の回転軸D1のまわりに回転するように取り付けられる。内側キャリッジ2には、2つのピボット42、43があり、これらの2つのピボット42、43はそれぞれ、外側キャリッジ3のベアリング39、41と連係し、これらのピボット42、43は、内側キャリッジ2の回転軸D1に沿って配置される。各ベアリング39、41には、ピボット42、43を挿入するための穴がある。これらの2つのピボット42、43は、各ベアリング39、41内にて回転することができる。したがって、内側キャリッジ2の第1の回転軸D1は、外側キャリッジ3を通り抜ける。
【0046】
外側キャリッジ3には、環状上部24と環状下部28があり、これらは支柱31によって互いに堅く接続される。この上部24は、互いに対向するように構成しているベアリング39、41を用いて内側キャリッジ2を担持する。下部28には、外側キャリッジ3の回転をアクチュエートするための周部外側歯列32がある。
【0047】
三次的なカルーセル1は、外側キャリッジ3を回転させることを可能にするように構成している第1のボールベアリング33を備える。第1のボールベアリング33は、例えば、プレートやプレートバー(図示せず)に押し込まれる。第1のボールベアリング33は、横方向にて下部28のまわりに配置される。第1のボールベアリング33には、プレートに対して固定されるリングがあり、このプレートがボールを下部28に対して保持する。
【0048】
外側キャリッジ3は、第2の回転軸D2のまわりを回転して動くことができる。内側キャリッジ2と外側キャリッジ3は、計時器用ムーブメントの駆動手段15によってアクチュエートされる。
【0049】
本発明よると、外側キャリッジ3は、駆動手段15によって内側キャリッジ2の回転と並行して回転される。また、駆動手段15は、外側キャリッジ3の回転運動と並行して、かつ、内側キャリッジ2の回転運動と並行して、エスケープ機構5をアクチュエートするように構成している。
【0050】
キャリッジ2、3とエスケープ機構5をアクチュエートするために、三次的なカルーセル1は、第1の回転軸D1のまわりに配置され第1の回転軸D1を中心とするキャリッジ駆動車セット30を備える。キャリッジ駆動車セット30には、キャリッジ駆動ピニオン34とキャリッジ駆動車35がある。キャリッジ駆動車セット30は、内側キャリッジ2によって担持される。キャリッジ駆動車セット30は、内側キャリッジ2と外側キャリッジ3の間にて、第1のベアリング39の内側の近くに、内側キャリッジ2のピボット42のまわりに配置される。キャリッジ駆動ピニオン34は外側キャリッジ3の外側に配置され、キャリッジ駆動車35は外側キャリッジ3の内側に配置される。キャリッジ駆動車セット30は、内側キャリッジ2と外側キャリッジ3に対して自由に回転することができるように取り付けられる。すなわち、キャリッジ駆動車35とキャリッジ駆動ピニオン34は、外側キャリッジ3と内側キャリッジ2と一体的ではない。これらは自由に回転することができ、キャリッジ駆動ピニオン34とキャリッジ駆動車35は互いに一体的にされ、特に互いに一体的に回転する。
【0051】
キャリッジ駆動車35は、エスケープ機構5の中間車19と噛み合う。したがって、エスケープ車25、パレットレバー26、及びバランスの運動は、第3のスタッフ22を回転させる、中間車19とエスケープピニオン21を介して、アクチュエートされる。エスケープ機構5をアクチュエートするために、キャリッジ駆動ピニオン34が噛み合う。
【0052】
このために、三次的なカルーセル1は、秒駆動クラウン20を備え、この秒駆動クラウン20は、外側キャリッジ3の第2の回転軸D2のまわり、好ましくは外側キャリッジ3のまわり、を自転することができるように構成している。秒駆動クラウン20は、第1の上側歯列36と第2の周部歯列37があるリング形状である。第1の上側歯列36には、リング全体の上に対向する歯がある。第2の周部歯列37には、リング全体のまわりにて外側の方を向く歯がある。
【0053】
秒駆動クラウン20が回転すると、上側歯列36は、外側キャリッジ3の外側に配置されるキャリッジ駆動ピニオン34を駆動する。したがって、秒駆動クラウン20は、キャリッジ駆動車セット30のキャリッジ駆動車35を介してエスケープ機構5の中間車19を駆動する。
【0054】
代わりに、図示していない代替的実施形態において、秒駆動クラウンは、外側キャリッジの内側に、好ましくは2つのキャリッジの間にて、配置される。
【0055】
三次的なカルーセル1は、第2のボールベアリング38を備え、この第2のボールベアリング38は、秒駆動クラウン20の回転を可能にするように構成している。第2のボールベアリング38は、リング全体に沿って秒駆動クラウンの下に配置される。第2のボールベアリングは、例えば、プレート又はプレートバー(図示せず)内に押し込まれる。
【0056】
この実施形態において、第2のボールベアリング38が第1のボールベアリング33の上に配置されるように、第1のボールベアリング33と第2のボールベアリング38が重ね合わされる。第1のボールベアリング33には第1の周部リング55があり、第2のボールベアリング38には第2の周部リング56があり、第2の周部リング56は、第1の周部リング55とともに組み付けられる。
【0057】
秒駆動クラウン20は、ギアシステム13のギア列を介して駆動手段15によって駆動される。したがって、秒駆動クラウン20の回転によって、駆動手段15によって与えられるトルクのおかげで、エスケープ機構5、及び内側キャリッジ2と外側キャリッジ3の回転がアクチュエートされる。秒駆動用クラウン20は、内側キャリッジ2と外側キャリッジ3、そして、エスケープ機構5に、トルクを伝達する。
【0058】
トルクの第1の部分は、外側キャリッジ3に伝達されて、外側キャリッジ3を第2の回転軸D2のまわりに回転させ、トルクの第2の部分は、内側キャリッジ2に伝達されて、内側キャリッジ2を第1の回転軸D1のまわりに回転させ、トルクの第3の部分は、エスケープ機構に伝達されて、エスケープ車25をアクチュエートする。
【0059】
トルクの第1の部分は、キャリッジ駆動車セット30のピボット42に与えられ、外側キャリッジ3を第2の回転軸D2のまわりに回転させる。
【0060】
トルクの第2の部分は、キャリッジ駆動車セット30を介してエスケープ機構5の中間車19に与えられ、内側キャリッジ2を回転させる。
【0061】
したがって、駆動手段15は、内側キャリッジ2の回転運動と並行して外側キャリッジ3の回転運動をアクチュエートするように構成している。しかし、外側キャリッジ3の回転は、内側キャリッジ2の回転に不可分にリンクされてはいない。したがって、内側キャリッジ2の回転が阻止されていても、外側キャリッジ3は回転し続けることができる。
【0062】
トルクの第3の部分は、エスケープ機構5の中間車19及びキャリッジ駆動車セット30を介してエスケープ車25に与えられる。したがって、中間車19は、自転して、エスケープ機構5を駆動する。
【0063】
したがって、駆動手段15は、さらに、外側キャリッジ3の回転運動と並行して、かつ、内側キャリッジ2の回転運動と並行して、エスケープ機構5をアクチュエートするように構成している。特に、中間車19は、トルクを、一方でエスケープ車25に分配し、他方で後述する第1の保持ギア列40の車45に分配し、この第1の保持ギア列40は、内側キャリッジ2の回転を保持する。しかし、内側キャリッジ2の回転は、エスケープ車25の回転に不可分にリンクされてはいない。したがって、エスケープ車25が阻止されていても、内側キャリッジ2は回転し続けることができる。
【0064】
しかし、エスケープ車25がパレットレバー26によって阻止されているときに、トルクの第2及び第3の部分が内側キャリッジ2にのみ伝達される。特に、中間車19が阻止されているときに、エスケープ車25に与えられるトルクの第3の部分が、少なくとも部分的に内側キャリッジ2に伝達される。この場合、このような構成によって、バレル7が完全にはたらかなくなるまで内側キャリッジ2が回転する。
【0065】
内側キャリッジ2の回転の速さを制御し、内側キャリッジ2が自由に回転しないようにするために、三次的なカルーセル1は、内側キャリッジ2を保持するための第1の保持ギア列40を備え、第1の保持ギア列40は、内側キャリッジ2の内側に配置されて、エスケープ機構5の中間車19と、外側キャリッジと一体的な車44と噛み合うように構成している。外側キャリッジと一体的な車44は、外側キャリッジ3とともに動くことができる。外側キャリッジと一体的な車44は、第1の回転軸D1にセンタリングされ第1の回転軸D1に垂直になるように、外側キャリッジ3の第2のベアリング41に取り付けられる。
【0066】
外側キャリッジと一体的な車44は、内側キャリッジ2の回転を保持するように用いられ、トゥールビヨンにおけるように内側キャリッジ2を回転可能にするために用いられるのではない。
【0067】
第1の保持ギア列40には、互いに噛み合う2つの車セット、すなわち、エスケープ機構5の中間車19と噛み合う第1の車セット45と、外側キャリッジと一体的な車44と噛み合う第2の車セット46がある。これらの2つの車セット45、46はそれぞれ、中間構造57と下側支持体9の間にて、内側キャリッジ2内に取り付けられた異なるスタッフ53、54に取り付けられる。
【0068】
第1の保持ギア列40は、内側キャリッジ2が自由に回転することを防ぐ。特に、第1の保持ギア列40は、パレットレバー26によって阻止されるエスケープ車25によって保持される中間車19によって阻止される。しかし、これらの第1の保持ギア列40は、エスケープ車25がパレットレバー26から解放されているときに、トルクの第2の部分に対応する所定の速さで回転するように構成している。このような場合、第1の保持ギア列40の第2の車セット46は、外側キャリッジと一体的な車44のまわりを回転し、内側キャリッジ2が第1の軸D1のまわりを回転することを可能にする。
【0069】
エスケープ機構5がパレットレバー26によって阻止され、第1の保持ギア列40のために内側キャリッジ2が回転できない場合、全トルクがキャリッジ駆動車セット30のピボット42に与えられる。この場合、このような構成によって、バレル7が完全にはたらかなくなるまで、外側キャリッジ3が回転する。
【0070】
外側キャリッジ3の回転を制御し、外側キャリッジ3が自由に回転することを防ぐために、三次的なカルーセル1は、外側キャリッジ3を保持するための第2のギア列50を備える。第2の保持ギア列50は、秒駆動クラウン20と、そして、外側キャリッジ3と噛み合うように、外側キャリッジ3の外側に配置される。
【0071】
第2の保持ギア列50は、秒駆動クラウン20の第2の周部歯列と噛み合う第1の歯車47と、外側キャリッジ3の下部の外周歯列と噛み合う第2の歯車48がある。第1の歯車47と第2の歯車48は、ピニオン51と第3の歯車52がある接続車セット49によって接続されている。第3の歯車52は、第1の歯車47と噛み合い、ピニオン51は、第2の歯車48と噛み合う。第2の保持ギア列50は、外側キャリッジ3が所望よりも速く回転することを防ぐ。第2の保持ギア列50は、外側キャリッジ3の回転を秒駆動クラウン20に接続する。
【0072】
外側キャリッジ3の回転にフルトルクが与えられているときに、第2の保持ギア列は、外側キャリッジ3の回転を阻止する。
【0073】
したがって、エスケープ車25がパレットレバー26によって交互に阻止されているときに、内側キャリッジ2の回転が一時的に阻止されるだけではなく、外側キャリッジ3の回転も同様に阻止される。
【0074】
第1の保持ギア列40と中間車19とが阻止されているときには、キャリッジ駆動車セット30は自転できなくなる。また、第2の保持ギア列50は、秒駆動クラウン20の回転を防ぐために、外側キャリッジ3の回転を阻止する。
【0075】
本発明に係る三次的なカルーセル1の利点として、内側キャリッジ2と外側キャリッジ3に対して異なる回転の速さを容易に選択し調整することができることがある。
【0076】
内側キャリッジ2と外側キャリッジ3の回転の速さは、秒駆動クラウン20、キャリッジ駆動車セット30、第1及び第2の保持ギア列40、50の歯の大きさと数に依存する。
【0077】
内側キャリッジ2の回転の速さは、第1の保持ギア列40によって、そして、秒駆動車20の回転の速さによって決まる。外側キャリッジ3の回転の速さは、第2の保持ギア列50、そして、秒駆動車20の速さによって決まる。これは、特に、各キャリッジ2、3に対する第1の保持ギア列40と第2の保持ギア列50の歯数に依存する。
【0078】
1つの特定の例において、例えば、外側キャリッジ3は1分間に1回転、内側キャリッジ2は1分間に1.5回転、秒駆動クラウン20は1分間に1.5回転となる。
【0079】
当然、本発明は、図面を参照しながら説明した三次元的なカルーセルの実施形態に限定されず、本発明の範囲を逸脱せずに代替形態を考えることができる。
【符号の説明】
【0080】
1 三次的なカルーセル
2 内側キャリッジ
3 外側キャリッジ
4 弾性戻し手段
5 エスケープ機構
6 慣性錘
7 バレル
8 上側支持体
9 下側支持体
10 計時器用ムーブメント
13 ギア列
15 駆動手段
19 中間車
20 秒駆動クラウン
21 エスケープピニオン
24 環状上部
25 エスケープ車
28 環状下部
30 キャリッジ駆動車セット
33 第1のボールベアリング
36 第1の歯列
37 第2の歯車
38 第2のボールベアリング
40 第1の保持ギア列
41 ベアリング
50 第2の保持ギア列
D1 第1の回転軸
D2 第2の回転軸
【外国語明細書】