(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160785
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】インダクタレス電力変換器
(51)【国際特許分類】
H02M 3/07 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
H02M3/07
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023068505
(22)【出願日】2023-04-19
(31)【優先権主張番号】2031660
(32)【優先日】2022-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(71)【出願人】
【識別番号】517438583
【氏名又は名称】ネクスペリア ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル フェルデン ヨラム ピーテル
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA14
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS17
5H730BB02
5H730BB03
5H730BB57
5H730BB86
5H730BB88
5H730BB98
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電力変換器の全体のエネルギー損失を改善することができるインダクタレス電力変換器に関する。
【解決手段】インダクタレス電力変換器1は、複数のカスケード接続キャパシタステージCS
n(n=1~4)を備え、各キャパシタステージは、キャパシタステージCS
nの入力端子対と出力端子対とにわたって並列接続されたフライングキャパシタC
nを備える。各カスケード接続ステージ間には、スイッチングブロックSB
m(m=1~n+1)が設けられる。各スイッチングブロックSB
mは、入力端子対と出力端子対と、スイッチングブロックの入力端子の1つを出力端子の1つと接続し、それぞれのキャパシタステージのキャパシタのトッププレート又はボトムプレートの一方を、それぞれの後続のカスケード接続キャパシタステージのキャパシタのトッププレート又はボトムプレートと接続するためのスイッチング手段と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子の入力電圧を出力端子の出力電圧に変換するために、前記入力電圧と出力電圧との間の変換比を有するインダクタレス電力変換器であって、前記電力変換器は、複数のカスケード接続キャパシタステージを備え、各キャパシタステージは、前記キャパシタステージの入力端子対と出力端子対とにわたって並列接続されたフライングキャパシタを備え、各カスケード接続ステージ間には、スイッチングブロックが設けられ、前記スイッチングブロックは、入力端子対と出力端子対と、前記スイッチングブロックの前記入力端子の1つを前記出力端子の1つと接続し、それぞれのキャパシタステージのキャパシタのトッププレート又はボトムプレートの一方を、それぞれの後続のカスケード接続キャパシタステージのキャパシタのトッププレート又はボトムプレートと接続するためのスイッチング手段と、を備え、前記電力変換器は、それぞれが異なる変換比を表し、前記スイッチングブロックのそれぞれの接続状態を構成する予定変換比設定のリストの選択された変換比設定に従って、各スイッチングブロックの前記スイッチング手段を操作するように配置される制御ユニットをさらに備え、前記予定変換比設定は、各フライングキャパシタの定常電圧が、各変換比設定の間で等しく、前記変換比設定の間でロスなく切り替えることができる、インダクタレス電力変換器。
【請求項2】
前記変換器は、4つのカスケード接続キャパシタステージを備える、請求項1に記載のインダクタレス電力変換器。
【請求項3】
前記変換器は、5つのスイッチングブロックを備える、請求項1又は2に記載のインダクタレス電力変換器。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記予定変換比設定のリストを格納するためのメモリユニットを備え、前記予定変換比設定のリストは、可能な全ての変換比設定のサブ選択である、請求項1~3のいずれか一項に記載のインダクタレス電力変換器。
【請求項5】
前記変換器は、直流(DC)入力電圧用に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載のインダクタレス電力変換器。
【請求項6】
前記変換器は、10μW~100mWの間、より好ましくは、50μW~50mWの間の電力範囲で入力電圧を出力電圧に変換するために配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載のインダクタレス電力変換器。
【請求項7】
前記変換器は、センサモジュール、IoTデバイス、USBデバイス、又はBluetooth(登録商標)モジュールのうちの1つ以上に給電するために配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載のインダクタレス電力変換器。
【請求項8】
前記変換器は、それぞれが異なる出力電圧レベルを有する複数の出力を備えるマルチ出力電圧レールをさらに備え、各出力は、前記出力上に並列接続された出力キャパシタと、前記電圧レールを前記各出力に接続するためのスイッチング出力手段と、を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のインダクタレス電力変換器。
【請求項9】
各スイッチング出力手段は、前記出力キャパシタのそれぞれを順次充電するために、順次起動される、請求項8に記載のインダクタレス電力変換器。
【請求項10】
前記変換器は、それぞれが異なる入力電圧レベルを有する複数の入力を備えるマルチ入力電圧レールをさらに備え、各入力は、前記入力上に並列接続された入力キャパシタと、前記電圧レールを前記各入力に接続するためのスイッチング入力手段と、を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のインダクタレス電力変換器。
【請求項11】
前記各スイッチング入力手段は、前記入力キャパシタのそれぞれを順次充電するために、順次起動される、請求項10に記載のインダクタレス電力変換器。
【請求項12】
エネルギーハーベスタ配置であって、
周囲エネルギー、好ましくは太陽、熱、運動又は無線周波数エネルギーのうちの1つを収穫し、前記収穫したエネルギーを前記エネルギーハーベスタ配置に入力電圧として提供するためのエネルギー収穫モジュールと、
請求項1~11のいずれか一項に記載のインダクタレス電力変換器と、
を備える、エネルギーハーベスタ配置。
【請求項13】
最大電力点追跡モジュールであって、
前記最大電力点追跡モジュールは、各変換比設定の間で等しくなるように各フライングキャパシタの定常状態電圧に従って選択される最大電力点追跡アルゴリズムに従って、前記電力変換器の各スイッチングブロックのスイッチング手段を動作させるために、前記インダクタレス電力変換器の前記制御ユニットとして動作する、最大電力点追跡モジュール
をさらに備える、請求項12に記載のエネルギーハーベスタ配置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、電力変換器に関する。より具体的には、本発明は、入力電圧を変換比で出力電圧に変換するために、複数ステージのスイッチトキャパシタを有するインダクタレス電力変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換器は、入力電圧を出力電圧に変換するための電気デバイスである。これらの電圧は、変換比に応じて異なる場合があり、入力電流は、形態及び/又は周波数が出力電流と異なることがある。例えば、変換器は、交流(AC)の入力電圧を直流(DC)の出力電圧に、好ましくは異なる電圧差で変換するよう配置される場合がある。
【0003】
このような電力変換器は、電気エネルギーをある電圧レベルから別の電圧レベルに、又はある周波数から別の周波数に、又はあるタイプから別のタイプに変換するために、通常、携帯電話、ラップトップコンピュータ、携帯コンピュータ等の携帯電子デバイスで使用されているが、モノのインターネット(loT)、デバイス又は無線センサノード、WSNでも広く使用されている。このような用途では、主電源は、多くの場合(主に)バッテリから供給されることが、これらのデバイスは、バッテリ充電及び/又は負荷への電力供給のためにエネルギーを採取するエネルギーハーベスティングモジュールをさらに有することが多い。
【0004】
一連のスイッチとキャパシタを中心に設計された電力変換器は、よく知られており、広く使用されている。最近では、複数のステージを有するスイッチトキャパシタ設計が、ますます一般的になってきている。このような設計は、既知のインダクタベースの電力変換器と比較して、磁気部品又は大きなフォームファクタの部品がないため、小型の統合設計又は完全統合実装に適しているという利点がある。
【0005】
また、このような設計は、ダミー負荷を必要としないため、より幅広い負荷に対応できる。また、このような電力変換器の変換効率は、一般的にインダクタベースの代替品よりも高くなる。全体として、このようなインダクタレス設計は、バッテリ駆動の用途に理想的である。
【0006】
しかしながら、インダクタレス設計は、インダクタベースの代替品と比較して、欠点もある。インダクタベースの電力変換器は、大きな変換比から連続した変換比を有するのに対し、インダクタレス設計は、変換比の離散数が限られており、最大又は最小の変換比が低いからである。さらに、インダクタレス電力変換器は、異なる変換比を有してもよいが、変換比を切り替えると、エネルギーの損失が生じ、変換器の全体的な性能を低下させる。特に、ある変換比から別の変換比に切り替えてもエネルギーの損失が生じないように連続した変換比を有する、インダクタベースの代替品と比較すると、顕著である。
【0007】
したがって、複数の変換比の間で切り替えるように構成され、改善されたインダクタレス電力変換器で、電力変換器の全体のエネルギー損失を改善することが必要とされている。
【発明の概要】
【0008】
第一の態様では、入力端子の入力電圧を出力端子の出力電圧に変換するために、前記入力電圧と出力電圧との間の変換比を有するインダクタレス電力変換器が提供され、この電力変換器は、有し、前記電力変換器は、複数のカスケード接続キャパシタステージを備え、各キャパシタステージは、前記キャパシタステージの入力端子対と出力端子対とにわたって並列接続されたフライングキャパシタを備え、各カスケード接続ステージ間には、スイッチングブロックが設けられ、前記スイッチングブロックは、入力端子対と出力端子対と、前記スイッチングブロックの入力端子の1つを出力端子の1つと接続し、それぞれのキャパシタステージのキャパシタのトッププレート又はボトムプレートの一方を、それぞれの後続のカスケード接続キャパシタステージのキャパシタのトッププレート又はボトムプレートと接続するためのスイッチング手段と、を備え、電力変換器は、それぞれが異なる変換比を表し、前記スイッチングブロックのそれぞれの接続状態を構成する予定変換比設定のリストの選択された変換比設定に従って、各スイッチングブロックのスイッチング手段を操作するように配置される制御ユニットをさらに備え、予定変換比設定は、各フライングキャパシタの定常電圧が、各変換比設定の間で等しく、変換比設定の間でロスなく切り替えることができる。
【0009】
提案する変換器は、入力電圧を出力電圧に変換する直流(DC)から直流(DC)に、DC-DC変換用に構成されたインダクタレス電力変換器である。入力電圧は、入力端子対に供給され、出力電圧は、出力端子対に供給される。入力電圧と出力電圧の比は、変換比を定義し、変換比は1より大きくても1より小さくてもよく、つまり、電圧は、昇圧しても降圧してもよく、したがって、増加しても低下してもよい。
【0010】
変換器は、スイッチトキャパシタ変換器、特にDC-DCスイッチトキャパシタ変換器である。変換器は、それぞれがキャパシタ又はフライングキャパシタを有するカスケード接続ステージと考えられる複数のステージで構成される。キャパシタは、その接続方法によって充電と放電を行ってもよい。キャパシタの接続方法は、フライングキャパシタ(キャパシタステージとも呼ばれる)のそれぞれの間に接続されたスイッチングブロックの動作方法によって規定される。したがって、変換器は、n個のキャパシタステージを有し、それによって、n個のフライングキャパシタを有し、各キャパシタステージの間には、スイッチング手段、例えば、トランジスタのような集積スイッチング手段を備えるスイッチングブロックを有する。スイッチングブロックは、各キャパシタステージと入力端子及び出力端子との間にも存在してよい。
【0011】
各スイッチングブロックのスイッチング手段は、入力端子対と出力端子対の4つの端子を有してもよく、したがって、端子の1つは先行するキャパシタステージのトッププレート(又は最初のスイッチングブロックの入力端子)に接続され、1つは後続するキャパシタステージのトッププレート(又は最後のスイッチングブロックの出力端子)に接続され、1つは先行するキャパシタステージのボトムプレート(又は最初のスイッチングブロックの接地)に、1つは後続するキャパシタステージのボトムプレート(又は最後のスイッチングブロックの接地)に接続される。スイッチング手段は、入力端子対のいずれか1つを出力端子対のいずれか1つと接続するように配置され、したがって、先行するキャパシタステージのトッププレートを後続するキャパシタステージのトッププレートと、又は先行するキャパシタステージのトッププレートを後続するキャパシタステージのボトムプレートと、又は先行するキャパシタステージのボトムプレートを後続するキャパシタステージのトッププレートと、又は先行するキャパシタステージのボトムプレートを後続するキャパシタステージのボトムプレートとの接続のいずれかとなる。
【0012】
スイッチング手段の制御方法が異なるため、各キャパシタの接続方法が異なることから、キャパシタステージの数、ひいてはスイッチングブロックの数が、変換比の選択肢の数を決定することになる。ステージの数を増やすと、構成可能な変換比の数が増える。
【0013】
スイッチング手段は、複数の変換比設定に従って動作させることができるが、その設定を切り替えると、変換器の効率が低下し得ることが判明している。特に、本発明者は、このような効率損失が、低減され、あるいは場合によっては回避され得ることを見出した。変換比間の切り替えは、各フライングキャパシタの定常電圧が変換比間で等しく保たれる場合に、無損失で達成でき、したがって、効率損失がないか、少なくとも最小限に抑えられるというのが、本発明者の洞察であった。したがって、可能な全ての変換比のうち、この要件が維持される場合にのみ、変換比設定の選択を許可するように制御ユニットが構成されてもよい。したがって、現在の変換比は、各フライングキャパシタの定常電圧が現在の変換比とその後の変換比の間で(したがって、変換比設定が)等しく保たれると判断された全ての変換比設定のリスト又はサブ選択に従って、コントローラによって次の変換比に変更されてもよい。
【0014】
提案された電力変換器では、多数の離散的な変換比に従って、また昇圧又は降圧変換に従って、例えば、変換器を降圧モード又は昇圧モードのいずれかで動作させることにより、変換を達成することができる。提案された電力変換器は、フライングキャパシタの放電及び/又は充電に関連するエネルギー損失が最小限に保たれるか、完全に解決されるという利点を有する。また、フライングキャパシタ又はスイッチングキャパシタに基づく従来の電力変換器は、変換比設定間のセトリング時間を必要とする場合があり、動作有効性と効率が低下する。また、提案された電力変換器は、完全に統合されたIC設計が可能であるという利点もある。
【0015】
一例では、変換器は、4つのカスケード接続キャパシタステージを備える。
【0016】
一例では、変換器は、5つのスイッチングブロックを備える。
【0017】
一例では、制御ユニットは、予定変換比設定のリストを格納するためのメモリユニットを備え、予定変換比設定のリストは、可能な全ての変換比設定のサブ選択である。
【0018】
一例では、変換器は、直流(DC)入力電圧用に配置される。
【0019】
一例では、変換器は、10μW~100mWの間、より好ましくは、50μW~50mWの間の電力範囲で入力電圧を出力電圧に変換するために配置される。
【0020】
一例では、変換器は、センサモジュール、IoTデバイス、USBデバイス、又はBluetooth(登録商標)モジュールのうちの1つ以上に給電するために配置される。
【0021】
一例では、変換器は、それぞれが異なる出力電圧レベルを有する複数の出力を備えるマルチ出力電圧レールをさらに備え、各出力は、出力上に並列接続された出力キャパシタと、電圧レールを各出力に接続するためのスイッチング出力手段と、を備える。
【0022】
一例では、各スイッチング出力手段は、出力キャパシタのそれぞれを順次充電するために、順次起動される。
【0023】
一例では、変換器は、それぞれが異なる入力電圧レベルを有する複数の入力を備えるマルチ入力電圧レールをさらに備え、各入力は、入力上に並列接続された入力キャパシタと、電圧レールを各入力に接続するためのスイッチング入力手段と、を備える。
【0024】
一例では、各スイッチング入力手段は、入力キャパシタのそれぞれを順次充電するために、順次起動される。
【0025】
本開示のさらなる態様では、エネルギーハーベスタ配置が提供され、このエネルギーハーベスタ配置は、
周囲エネルギー、好ましくは太陽、熱、運動又は無線周波数エネルギーのうちの1つを収穫し、収穫したエネルギーをエネルギーハーベスタ配置に入力電圧として提供するためのエネルギーハーベスティングモジュールと、
上記請求事項のいずれかに記載のインダクタレス電力変換器と、
を備える。
【0026】
当業者であれば、上述のエネルギー収穫モジュールが単なる例であり、本開示がこれらの例のみに限定されず、他の任意の種類の適用可能なエネルギー源が適切な種類のエネルギーハーベスティングモジュールとともに使用され得ることを理解するであろう。
【0027】
一例では、この配置は、
最大電力点追跡モジュールをさらに備え、この最大電力点追跡モジュールは、各変換比設定の間で等しくなるように各フライングキャパシタの定常状態電圧に従って選択される最大電力点追跡アルゴリズムに従って、電力変換器の各スイッチングブロックのスイッチング手段を動作させるために、インダクタレス電力変換器の前記制御ユニットとして動作する。
【0028】
ここで、本発明について、添付の図面を参照して、特定の実施形態によって、より詳細に説明する。同一又は類似のパーツ及び/又は構成要素は、同じ参照番号で示す。本発明は、開示された実施形態に決して限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
ここで、本開示は、第一の態様に従うインダクタレス電力変換器の実施形態、及び第二の態様に従うエネルギーハーベスタ配置の説明によって解説し、その際、以下の図面を参照する。
【0030】
【
図1】本開示の第一の態様に従うインダクタレス電力変換器の一実施形態の概略図を示し、スイッチングブロックのうちの1つの入力端子と出力端子との間の可能な接続を示す。
【
図2】
図1のインダクタレス電力変換器の概略図を示し、スイッチングブロックのうちの1つのスイッチングブロックの一実施形態を示す。
【
図3】4つの異なる変換比に対する本開示の第一の態様に従うインダクタレス電力変換器の構成の一例を示す。
【
図4】本開示の第一の態様に従うインダクタレス電力変換器の他の実施形態の概略図を示す。
【
図5】本開示の第二の態様に従うエネルギーハーベスタ配置の一実施形態の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1及び
図2は、インダクタレス電力変換器1の入力端子における入力電圧V
Aを、インダクタレス電力変換器1の出力端子における出力電圧V
Bに変換するためのインダクタレス電力変換器1を示す。電力変換器1は、4つのカスケード接続キャパシタステージCS
n(n=1~4)を備え、各キャパシタステージは、キャパシタステージCS
nの入力端子対と出力端子対とにわたって、並列接続されたフライングキャパシタC
nを備える。
【0032】
各カスケード接続ステージCS
nの間には、スイッチングブロックSB
m(m=1~n+1)が設けられる。各スイッチングブロックSB
mは、入力端子対と出力端子対と、スイッチングブロックSB
mの2つの入力端子のうちの1つと2つの出力端子のうちの1つを接続するスイッチング手段と、を備える。スイッチングブロックSB
2について、
図1は、それぞれのスイッチングブロックSB
2の入力端子と出力端子との間の4つの可能な接続をより詳細に示しているが、これは、他のスイッチングブロックSB
mにも適用可能である。
【0033】
第一のスイッチングブロックSB1は、第一のスイッチングブロックSB1の出力端子に接続されたキャパシタC1のトッププレート又はボトムプレートのいずれかと、電力変換器1の入力電圧VA又は接地のいずれかとを接続するために配置されている。最後のスイッチングブロックSB5は、最後のスイッチングブロックSB5の入力端子に接続されたキャパシタC4のトッププレート又はボトムプレートのいずれかと、電力変換器1の出力電圧VB又は接地のいずれかを接続するために配置されている。
【0034】
スイッチングブロックSBm(m=2~4)は、それぞれのスイッチングブロックSBmの入力端子に接続されたキャパシタCm-1のトッププレート又はボトムプレートのいずれかと、それぞれのスイッチングブロックSBmの出力端子に接続されたキャパシタCmのトッププレート又はボトムプレートのいずれかを接続するように配置される。
【0035】
電力変換器1の制御ユニット21(
図1~
図3では明確にするために図示せず)は、予定変換比設定のリストのうち選択された変換比設定に従って、各スイッチングブロックSB
mのスイッチング手段を動作させるように配置される。各予定変換比設定は、入力電圧V
Aと出力電圧V
Bとの間の異なる変換比を表し、個々のスイッチングブロックSB
mの各々の接続状態を構成する。予定変換比設定は、各変換比設定間で各フライングキャパシタC
nの定常電圧が等しくなるように定義されており、変換比設定間をロスなく切り替えることができる。
【0036】
図2は、スイッチングブロックSB
mの一実施形態を示し、スイッチングブロックSB
mは、スイッチングブロックSB
mの入力端子及び出力端子のそれぞれを共通の内部ノードV
int,mに接続するための4つのスイッチング手段を備える。スイッチング手段、例えば、トランジスタは、電力変換器1の制御ユニット21によって制御される。
【0037】
制御ユニット21は、予定変換比設定のリストを格納するためのメモリユニット23を備え、予定変換比設定のリストは、可能な全ての変換比設定のサブ選択である。
【0038】
各キャパシタの電圧は、それぞれの内部ノード電圧V
int,mから加算又は減算されて、以下の内部ノード電圧V
int,m+1を作成することができる。内部電圧V
int,mについては、以下:
【数1】
が適用される。
【0039】
重み係数w
A、w
B、w
x(x=n=1~4)は、キャパシタがどのように接続されるかを定義する。重み係数w
Aは、接地端子がスイッチングブロックSB
1の入力端子に接続されている場合、0、又は電力変換器1の入力電圧V
AがスイッチングブロックSB
1の入力端子に接続されている場合、1のいずれかにすることができる。重み係数w
Bは、接地端子がスイッチングブロックSB
5の出力端子に接続されている場合、0、又は電力変換器1の出力電圧V
BがスイッチングブロックSB
5の出力端子に接続されている場合、1のいずれかにすることができる。キャパシタ重み係数w
x(x=n)は、キャパシタC
nがバイパスされる場合、0、キャパシタ電圧V
Cnが減算される場合、-1、又はキャパシタ電圧V
Cnが加算される場合、1のいずれかとすることができる。重み係数w
A、w
B、w
xについては、以下:
【数2】
が適用される。
【0040】
前提を以下のようにする。電力変換器1の入力電圧VAは、例えば、バッテリ又は供給レールから供給される固定電圧であり、キャパシタCnにかかる定常電圧は、固定で、電力変換器1の入力電圧VAの分数であると仮定し、VCx=VA・kxであり、電力変換器1の入力電圧VAと電力変換器1の出力電圧VBとの比は、変換比VB=VA・Mで定義される。
【0041】
内部ノード電圧V
int,mに関する式を用いると、以下:
【数3】
が適用される。
【0042】
【0043】
以下の式:
【数5】
は、1つの変換比の各位相に対して有効である。
【0044】
以下の例は、複数の変換比Mを同じkベクトルで作る方法を説明するものであり、kの大きさは、キャパシタの数nに等しい。この例では、電力変換器1は、4つのキャパシタC
n(n=1~4)と、5つのスイッチングブロックSB
m(m=1~5)と、を備える。対応する式は、電力変換器1がキャパシタC
nをより多く備える場合も、より少なく備える場合、適宜拡張することができる。
【数6】
【0045】
図3は、2つのキャパシタC
n(n=1~2)及び3つのスイッチングブロックSB
m(m=1~3)を有し、V
C1=V
A・2/3及びV
C2=V
A・1/3であるようにk=[2/3 1/3]であり、4つの可能な変換比Mを有する電力変換器1についての完全な構成を示す。
【数7】
図4は、本開示の第一の態様に従うインダクタレス電力変換器10の他の実施形態を示す。電力変換器10は、マルチ出力電圧レール15をさらに備える。マルチ出力電圧レール14は、複数の出力y(y=1~N)を備え、そのそれぞれは、異なる出力電圧レベルを有する。各出力yは、出力yにわたって並列に接続された出力キャパシタC
yと、電圧レール14をそれぞれの出力yに接続するためのスイッチング出力手段S
yと、を備える。
【0046】
各スイッチング出力手段Syは、前記出力キャパシタCyのそれぞれを順次充電するために、制御ユニット21によって、順次、起動される。
【0047】
図5は、本開示の第二の態様に従うエネルギーハーベスタ配置100の一実施形態を示す。エネルギーハーベスタ配置100は、周囲エネルギー、好ましくは、太陽、運動又は無線周波数エネルギーのうちの1つを収穫するためのエネルギーハーベスタを備える。収穫されたエネルギーは、上述のように、インダクタレス電力変換器1への入力電圧として提供される。インダクタレス電力変換器1の出力電圧は、バッテリに供給される。
【0048】
エネルギーハーベスタ配置100は、最大電力点追跡(MPPT)モジュール11をさらに備え、MPPTモジュール11は、インダクタレス電力変換器1の制御ユニット21として動作する。MPPTモジュール11は、各変換比設定間で等しくなるように各フライングキャパシタCnの定常電圧に応じて選択される最大電力点追跡アルゴリズムに従って、電力変換器1の各スイッチングブロックSBmのスイッチング手段を制御する。
【0049】
以上の説明に基づいて、当業者は、開示された方法及び配置に修正及び追加を提供してもよいが、これらの修正及び追加は、全て添付の特許請求の範囲に含まれる。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子の入力電圧を出力端子の出力電圧に変換するために、前記入力電圧と出力電圧との間の変換比を有するインダクタレス電力変換器であって、前記電力変換器は、複数のカスケード接続キャパシタステージを備え、各キャパシタステージは、前記キャパシタステージの入力端子対と出力端子対とにわたって並列接続されたフライングキャパシタを備え、各カスケード接続ステージ間には、スイッチングブロックが設けられ、前記スイッチングブロックは、入力端子対と出力端子対と、前記スイッチングブロックの前記入力端子の1つを前記出力端子の1つと接続し、それぞれのキャパシタステージのキャパシタのトッププレート又はボトムプレートの一方を、それぞれの後続のカスケード接続キャパシタステージのキャパシタのトッププレート又はボトムプレートと接続するためのスイッチング手段と、を備え、前記電力変換器は、それぞれが異なる変換比を表し、前記スイッチングブロックのそれぞれの接続状態を構成する予定変換比設定のリストの選択された変換比設定に従って、各スイッチングブロックの前記スイッチング手段を操作するように配置される制御ユニットをさらに備え、前記予定変換比設定は、各フライングキャパシタの定常電圧が、各変換比設定の間で等しく、前記変換比設定の間でロスなく切り替えることができる、インダクタレス電力変換器。
【請求項2】
前記変換器は、4つのカスケード接続キャパシタステージを備える、請求項1に記載のインダクタレス電力変換器。
【請求項3】
前記変換器は、5つのスイッチングブロックを備える、請求項1に記載のインダクタレス電力変換器。
【請求項4】
前記制御ユニットは、前記予定変換比設定のリストを格納するためのメモリユニットを備え、前記予定変換比設定のリストは、可能な全ての変換比設定のサブ選択である、請求項1~3のいずれか一項に記載のインダクタレス電力変換器。
【請求項5】
前記変換器は、直流(DC)入力電圧用に配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載のインダクタレス電力変換器。
【請求項6】
前記変換器は、10μW~100mWの間、より好ましくは、50μW~50mWの間の電力範囲で入力電圧を出力電圧に変換するために配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載のインダクタレス電力変換器。
【請求項7】
前記変換器は、センサモジュール、IoTデバイス、USBデバイス、又はBluetooth(登録商標)モジュールのうちの1つ以上に給電するために配置される、請求項1~3のいずれか一項に記載のインダクタレス電力変換器。
【請求項8】
前記変換器は、それぞれが異なる出力電圧レベルを有する複数の出力を備えるマルチ出力電圧レールをさらに備え、各出力は、前記出力上に並列接続された出力キャパシタと、前記電圧レールを前記各出力に接続するためのスイッチング出力手段と、を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のインダクタレス電力変換器。
【請求項9】
各スイッチング出力手段は、前記出力キャパシタのそれぞれを順次充電するために、順次起動される、請求項8に記載のインダクタレス電力変換器。
【請求項10】
前記変換器は、それぞれが異なる入力電圧レベルを有する複数の入力を備えるマルチ入力電圧レールをさらに備え、各入力は、前記入力上に並列接続された入力キャパシタと、前記電圧レールを前記各入力に接続するためのスイッチング入力手段と、を備える、請求項1~3のいずれか一項に記載のインダクタレス電力変換器。
【請求項11】
前記各スイッチング入力手段は、前記入力キャパシタのそれぞれを順次充電するために、順次起動される、請求項10に記載のインダクタレス電力変換器。
【請求項12】
エネルギーハーベスタ配置であって、
周囲エネルギー、好ましくは太陽、熱、運動又は無線周波数エネルギーのうちの1つを収穫し、前記収穫したエネルギーを前記エネルギーハーベスタ配置に入力電圧として提供するためのエネルギー収穫モジュールと、
請求項1に記載のインダクタレス電力変換器と、
を備える、エネルギーハーベスタ配置。
【請求項13】
最大電力点追跡モジュールであって、
前記最大電力点追跡モジュールは、各変換比設定の間で等しくなるように各フライングキャパシタの定常状態電圧に従って選択される最大電力点追跡アルゴリズムに従って、前記電力変換器の各スイッチングブロックのスイッチング手段を動作させるために、前記インダクタレス電力変換器の前記制御ユニットとして動作する、最大電力点追跡モジュール
をさらに備える、請求項12に記載のエネルギーハーベスタ配置。
【外国語明細書】