IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーニング インコーポレイテッドの特許一覧

特開2023-160790光センサ用の選択的にパターン形成された不透明層を備えたガラス物品およびそれを備えた表示システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160790
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】光センサ用の選択的にパターン形成された不透明層を備えたガラス物品およびそれを備えた表示システム
(51)【国際特許分類】
   C03C 17/32 20060101AFI20231026BHJP
   G09F 9/00 20060101ALN20231026BHJP
【FI】
C03C17/32 B
G09F9/00 302
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023069116
(22)【出願日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】63/333,231
(32)【優先日】2022-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】シンホア リー
(72)【発明者】
【氏名】ヤーウェイ スゥン
【テーマコード(参考)】
4G059
5G435
【Fターム(参考)】
4G059AA01
4G059AA08
4G059AB07
4G059AC08
4G059AC20
4G059FA15
4G059FA17
4G059FA21
4G059FB03
5G435AA09
5G435DD10
5G435EE49
5G435FF13
5G435GG43
5G435HH05
5G435LL17
(57)【要約】

【課題】 半透明インク層を使用せずに、ディスプレイに使用されるセンサを隠す。
【解決手段】 ガラス物品400は、第1の主面470および第1の主面470と反対にある第2の主面480を有するガラス基板450を備える。不透明層500が第2の主面480上に配置されている。不透明層500は、不透明層500で覆われたガラス基板450の部分が、400nmから700nmの光について0.5%以下の平均光学透過率を有するように、3.0超の光学密度を有する。ガラス物品400のセンサ領域560内で、不透明層500は、センサ領域560内のガラス物品400の平均光学透過率が、複数の除去部分562の結果として、400nmから700nmの光について1.0%以上であるように、複数の除去部分562を含む。
【選択図】 図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の主面および該第1の主面と反対にある第2の主面を有するガラス基板、および
前記第2の主面上に配置された不透明層、
を備えたガラス物品であって、
前記不透明層は、該不透明層で覆われたガラス基板の部分が、400nmから700nmの光について0.5%以下の平均光学透過率を有するように、3.0超の光学密度を有し、
前記ガラス物品のセンサ領域内で、前記不透明層は複数の除去部分を含み、
前記センサ領域内の前記ガラス物品の平均光学透過率は、前記複数の除去部分の結果として、400nmから700nmの光について1.0%以上である、ガラス物品。
【請求項2】
前記複数の除去部分の各々に、前記不透明層の残りを構成する材料が完全にない、請求項1記載のガラス物品。
【請求項3】
前記複数の除去部分の各々内で、前記不透明層の材料が、該不透明層が該複数の除去部分の各々において、該材料の少なくともいくらかから作られるように部分的にだけ除去されている、請求項1記載のガラス物品。
【請求項4】
前記複数の除去部分の各々が、前記第2の主面と平行な方向に測定して、100μm以下の最大横寸法を有する、請求項1から3いずれか1項記載のガラス物品。
【請求項5】
前記複数の除去部分の隣接する除去部分が、前記最大横寸法以上の最小エッジ間分離距離だけ互いから離れている、請求項4記載のガラス物品。
【請求項6】
前記複数の除去部分の総表面積が、前記センサ領域の全表面積の50%以下を占める、請求項1から3いずれか1項記載のガラス物品。
【請求項7】
前記複数の除去部分の総表面積が、前記センサ領域の全表面積の25%以下を占める、請求項6記載のガラス物品。
【請求項8】
前記不透明層が、硬化性インクから作られ、25μm以下の厚さを有する、請求項1から3いずれか1項記載のガラス物品。
【請求項9】
前記不透明層が、該不透明層で覆われていない画像領域と、該不透明層で覆われた前記ガラス物品の周辺領域との間の境界を描くエッジを構成し、
前記センサ領域が、前記周辺領域の部分領域を構成する、請求項1から3いずれか1項記載のガラス物品。
【請求項10】
センサであって、前記第1の主面に最初に入射する光が、該センサに入射する前に、前記ガラス基板と前記複数の除去部分を伝播するように該ガラス基板の背後に配置されたセンサ、および
前記ガラス基板の背後に位置付けられ、前記センサにより制御されるディスプレイモジュール、
をさらに含む、請求項9記載のガラス物品。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本明細書は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2022年4月21日に出願された米国仮特許出願第63/333231号の米国法典第35編第119条の下で優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、センサに関連する検出波長で比較的高い光学透過率を有する領域を提供するために選択的にパターン形成された不透明層を備えたガラス物品、およびそれを備えた表示システムに関する。
【背景技術】
【0003】
ディスプレイを含む様々な用途で、ディスプレイの動作を制御するのに使用できる様々な入力を提供するために環境光センサを利用することが望ましい。環境光センサで検出される環境光の量が増加すると、例えば、ディスプレイは、画像の視認性を改善するために、輝度を高めて動作させることができる。そのような環境光センサが使途を見出される状況に1つに、自動車の車内があり、この場合、アンビエント照明条件は、位置と時刻に応じて劇的に変わり得る。
【0004】
環境光センサが、このセンサで制御されるディスプレイが遭遇する照明条件を精密に表すものを測定するように、このセンサをディスプレイの近くに配置することが一般に有益である。例えば、ディスプレイに関連するカバーガラスの背後に環境光センサを配置することが有益であろう。環境光センサをそのように配置することは、ディスプレイを制御する観点から有益であるが、ディスプレイの外観に悪影響を及ぼすことがある。例えば、環境光センサの外観を隠すために追加の対策を取らなければ、そのセンサは、カバーガラスの背後に配置された場合、視聴者に見えるであろう。センサを隠す既存の手法では、カバーガラス上にスクリーン印刷された半透明インク層が用いられることがある。その半透明インク層は、カバーガラスの光学透過率を、環境光センサの視認性を隠すのに十分な程度まで低下させ、それでも、環境光センサの動作を促進するのに十分に高い透過率を有するであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、そのような半透明インク層は、一般に、カバーガラスにスクリーン印刷され、これにより、製造プロセスが複雑になり、製造費が増してしまう。
【0006】
したがって、ディスプレイに使用されるセンサを隠すための代わりのプロセスが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の態様(1)は、第1の主面およびこの第1の主面と反対にある第2の主面を有するガラス基板、および第2の主面上に配置された不透明層を備えたガラス物品であって、不透明層は、この不透明層で覆われたガラス基板の部分が、400nmから700nmの光について0.5%以下の平均光学透過率を有するように、3.0超の光学密度を有し、このガラス物品のセンサ領域内で、不透明層は複数の除去部分(ablated portions)を含み、センサ領域内のガラス物品の平均光学透過率は、複数の除去部分の結果として、400nmから700nmの光について1.0%以上である、ガラス物品に関する。
【0008】
本開示の態様(2)は、センサ領域内のガラス物品の平均光学透過率が、400nmから700nmの光について1.0%以上かつ20%以下である、態様(1)によるガラス物品に関する。
【0009】
本開示の態様(3)は、複数の除去部分の各々に、不透明層の残りを構成する材料が完全にない、態様(1)~(2)のいずれかによるガラス物品に関する。
【0010】
本開示の態様(4)は、複数の除去部分の各々内で、不透明層の材料が、その不透明層が複数の除去部分の各々において、その材料の少なくともいくらかを含むように部分的にだけ除去されている、態様(1)~(2)のいずれかによるガラス物品に関する。
【0011】
本開示の態様(5)は、複数の除去部分の各々が、第2の主面と平行な方向に測定して、100μm以下の最大横寸法を有する、態様(1)~(4)のいずれかによるガラス物品に関する。
【0012】
本開示の態様(6)は、最大横寸法が、70μm以下である、態様(5)によるガラス物品に関する。
【0013】
本開示の態様(7)は、複数の除去部分の除去部分が、最大横寸法以上の最小エッジ間分離距離だけ互いから離れている、態様(5)~(6)のいずれかによるガラス物品に関する。
【0014】
本開示の態様(8)は、複数の除去部分が、不透明層に形成された複数の別個の孔からなる、態様(7)によるガラス物品に関する。
【0015】
本開示の態様(9)は、複数の除去部分の総表面積が、センサ領域の全表面積の50%以下を占める、態様(1)~(8)のいずれかによるガラス物品に関する。
【0016】
本開示の態様(10)は、複数の除去部分の総表面積が、センサ領域の全表面積の25%以下を占める、態様(9)によるガラス物品に関する。
【0017】
本開示の態様(11)は、不透明層が、硬化性インクから作られ、25μm以下の厚さを有する、態様(1)~(10)のいずれかによるガラス物品に関する。
【0018】
本開示の態様(12)は、不透明層が、不透明層で覆われていない画像領域と、不透明層で覆われたガラス物品の周辺領域との間の境界を描くエッジを構成し、センサ領域が、周辺領域の部分領域を構成する、態様(1)~(11)のいずれかによるガラス物品に関する。
【0019】
本開示の態様(13)は、車室システム用のディスプレイであって、第1の主面およびこの第1の主面と反対にある第2の主面を有するガラス基板、第2の主面上に配置された不透明層、および第1の主面に最初に入射する光が、センサに入射する前に、ガラス基板と不透明層を伝播するようにガラス基板の背後に配置されたセンサを備え、そのセンサは、関心のある波長範囲内の光を検出するように作られ、ガラス物品のセンサ領域内で、不透明層は、第1の主面に最初に入射する光が、複数の除去部分の1つを通ってセンサに伝播するように、センサを含む光路に沿って位置付けられた複数の除去部分を含み、不透明層の材料は、関心のある波長範囲内の光について0.5%未満の平均透過率を有し、除去部分の結果として、センサ領域は、関心のある波長範囲内の光について1.0%以上の平均光学透過率を有する、ディスプレイに関する。
【0020】
本開示の態様(14)は、センサ領域が、関心のある波長範囲内の光について5.0%以上かつ20%以下の平均光学透過率を有する、態様(13)によるディスプレイに関する。
【0021】
本開示の態様(15)は、関心のある波長範囲が、400nmから700nmである、態様(13)~(14)のいずれかによるディスプレイに関する。
【0022】
本開示の態様(16)は、複数の除去部分の各々内で、不透明層の材料が少なくとも部分的に除去されている、態様(13)~(15)のいずれかによるディスプレイに関する。
【0023】
本開示の態様(17)は、複数の除去部分の各々が、第2の主面と平行な方向に測定して、100μm以下の最大横寸法を有する、態様(13)~(16)のいずれかによるディスプレイに関する。
【0024】
本開示の態様(18)は、複数の除去部分の総表面積が、センサ領域の全表面積の50%以下を占める、態様(13)~(17)のいずれかによるディスプレイに関する。
【0025】
本開示の態様(19)は、ガラス物品を製造する方法であって、ガラス基板の主面上に配置された不透明層のセンサ領域内に複数の除去部分を、不透明層をレーザビームに曝露してその不透明層の材料を除去することによって形成する工程を有してなり、不透明層は、その不透明層で覆われていないガラス基板の部分が、400nmから800nmの光について0.5%以下の平均光学透過率を有するように、3.0超の光学密度を有し、センサ領域内のガラス物品の平均光学透過率が、複数の除去部分の結果として、400nmから700nmの光について1.0%以上である、方法に関する。
【0026】
本開示の態様(20)は、レーザビームをレーザ光源で生成する工程をさらに含み、このレーザ光源が、COレーザ、紫外線レーザ、または赤外線レーザを含む、態様(19)による方法に関する。
【0027】
本開示の態様(21)は、複数の除去部分を形成する工程が、センサ領域に亘りレーザビームを走査パターンで走査する工程を含む、態様(19)~(20)のいずれかによる方法に関する。
【0028】
本開示の態様(22)は、レーザビームが、複数の除去部分の内の1つの除去部分の形成中に、ガラス基板に対して動かされる、態様(21)による方法に関する。
【0029】
本開示の態様(23)は、ガラス基板が、複数の除去部分の形成中に静止している、態様(19)~(22)のいずれかによる方法に関する。
【0030】
本開示の態様(24)は、ガラス基板が、複数の除去部分の形成中に動かされる、態様(19)~(22)のいずれかによる方法に関する。
【0031】
先の一般的な説明および以下の詳細な説明の両方とも、例示に過ぎず、請求項の性質および特徴を理解するために概要または骨子を提供する意図があることを理解すべきである。添付図面は、さらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に組み込まれ、その一部を構成する。図面は、1つ以上の実施の形態を示しており、説明と共に、様々な実施の形態の原理および動作を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本明細書に組み込まれ、その一部を形成する添付図面は、本発明のいくつかの態様を示しており、説明と共に、本発明の原理を説明する働きをする。
図1】本開示の1つ以上の実施の形態による、車両表示システムを備えた車室の斜視図
図2A】本開示の1つ以上の実施の形態による、図1の線II-IIを通る車室表示システムのディスプレイの概略断面図
図2B】本開示の1つ以上の実施の形態による、図2Aに示されたガラス物品の概略平面図
図2C】本開示の1つ以上の実施の形態による、図2Aおよび2Bに示されたガラス物品に関連する不透明層の除去部分のアレイを示す概略図
図3A】本開示の1つ以上の実施の形態による、表示システムを製造する方法の流れ図
図3B】本開示の1つ以上の実施の形態による、ガラス物品の不透明層内に除去部分のアレイを形成するために使用できる装置の説明図
図4A】本開示の1つ以上の実施の形態による、COレーザで形成された不透明層内の第1の例示の除去部分のアレイを示す説明図
図4B】本開示の1つ以上の実施の形態による、紫外線レーザで形成された不透明層内の第2の例示の除去部分のアレイを示す説明図
図5A】本開示の1つ以上の実施の形態による、COレーザで形成された例示の除去部分を示す説明図
図5B】本開示の1つ以上の実施の形態による、紫外線レーザで形成された例示の除去部分を示す説明図
図5C】本開示の1つ以上の実施の形態による、赤外線レーザで形成された例示の除去部分を示す説明図
図6A】本開示の1つ以上の実施の形態による、各除去部分内で、不透明層がガラス物品から完全に除去されている、不透明層内の例示の除去部分のアレイを示す説明図
図6B】本開示の1つ以上の実施の形態による、各除去部分内で、不透明層がガラス物品から完全には除去されていない、不透明層内の例示の除去部分のアレイを示す説明図
図7】本開示の1つ以上の実施の形態による、基板を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0033】
広く図を参照すると、ガラス物品の光学透過率が高い領域である除去部分のアレイを含むように選択的に除去されている不透明層を備えたガラス物品の実施の形態が、ここに記載される。光学透過率が高い領域において、ガラス物品は、ガラス物品に近接して配置されたセンサに関連する関心のある波長範囲の光を透過させることができる。例えば、実施の形態において、光学透過率が高い領域は、センサが、ガラス物品に入射する可視光の相対強度を検出できるように(例えば、センサが環境光センサである場合)、可視スペクトル(例えば、400nmから700nm)に亘り1%以上(例えば、5%以上、10%以上、15%以上、20%超)の平均光学透過率を提供することがある。実施の形態において、不透明層は、比較的高い光学密度(例えば、3.0超、または4.0以上、または5.0以上)を有し、したがって、可視光がガラス物品を伝播するのを実質的に遮断することがある。不透明層は、ガラス物品に関連する様々なコンポーネントを視界から隠すのに使用されることがあり、一方で、除去部分のアレイは、ガラス物品を通る十分な量の光がセンサにより検出できるようにする。
【0034】
態様において、除去部分のアレイは、センサの外観を隠しつつ、それでも、センサの動作を促進するのに十分な光学透過率を提供するように作ることができる。実施の形態において、例えば、除去部分のアレイは、センサと重複するガラス物品のセンサ領域に広がる。実施の形態において、除去部分のアレイが複数の除去部分(すなわち、2つ以上の除去部分)を含む場合、その除去部分のアレイは、センサ領域におけるガラス基板の少なくとも50%(例えば、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%)がまだ不透明層で覆われるように作られている(例えば、配列されている、間隔が空けられている、サイズになっている)。言い換えると、センサ領域内では、不透明層の50%以下(例えば、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下)が、ここに記載された過程により除去されている。除去部分は、100μm以下(例えば、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、35μm以下)である最大横寸法(ガラス基板の主面に対して平行な方向に測定される)を有するようなサイズであることもある。除去部分のアレイは、除去部分の最大横寸法より大きい(例えば、少なくとも1.25倍大きい、少なくとも1.5倍大きい、少なくとも2.0倍大きい、少なくとも2.5倍大きい、少なくとも3.0倍大きい)、隣接する除去部分を隔てる最小エッジ間分離距離も有することがある。除去部分のそのように制限されたサイズは、それらの間の間隔と共に、センサ領域に含まれる残りの不透明層によってセンサを隠すのに役立つ。
【0035】
態様において、ここに記載された不透明層における除去部分のアレイは、どの適切なレーザプロセスを使用して形成してもよい。実施の形態において、不透明層は、紫外線(「UV」)から赤外線(「IR」)スペクトルに及ぶ光を吸収する。例えば、実施の形態において、ここに記載された不透明層は、適切なエポキシ、アクリル、ポリウレタン、またはラテックス塗料またはインクから形成されることがある。それゆえ、ガラス物品の選択された領域から不透明層の材料を除去するのに十分に大きい程度まで不透明層の部分を選択的に加熱することによって、不透明層を除去するために、その波長範囲で光を放出するどの適切なレーザ光源を使用してもよい。不透明層の材料の除去閾値より高い光を生成できるどのレーザ光源(例えば、パルスレーザ光源、連続波レーザ光源)を使用してもよい。さらに、ガラス物品とレーザビームとの間の相対運動を提供する様々な適切な機構(例えば、レーザ光源に対するガラス基板の運動、ガラス基板に対してレーザビームを動かすための走査型光学系、またはその組合せ)が、考えられ、本開示の範囲に含まれる。除去部分のアレイを作るために、既存のレーザマーキングシステムを用いてもよい。それゆえ、ここに記載された除去部分のアレイは、ガラス物品の背後からのセンサ(例えば、環境光センサ)の操作を促進しつつ、それでも、追加の半透明膜またはインク層を使用せずに、センサを視界から隠す。本開示のガラス物品は、ディスプレイの外観に対する影響を最小にしつつ、センサの組込みを容易にする。
【0036】
ここに用いられているように、「光学透過率」および「透過率百分率」または「透過率」という用語は、交換可能に使用され、関心のある波長範囲に亘る物品を透過する光の百分率を称する。特定の波長範囲の光に関する「平均光学透過率」は、測定した光学透過率をその波長範囲内の整数波長の全てで平均化することによって、決定される。特に明記のない限り、平均光学透過率値は、物品全体に入射する環境光に関し、これは、CIE D65光源で近似されるであろう。
【0037】
ここに用いられているように、特に明記のない限り、「可視スペクトル」という用語は、400nmから700nmの波長範囲を称する。
【0038】
図1は、例示の実施の形態による、ディスプレイ110を備えた車両表示システム100を示している。車両表示システム100は、人が操縦するビークル、半自律型ビークルおよび完全自立型ビークルを含む、列車、自動車(例えば、乗用車、トラック、バスなど)、船舶(例えば、ボート、船、潜水艦など)、および航空機(例えば、ドローン、飛行機、ジェット機、ヘリコプターなど)などのビークルに組み込むことができる。車両表示システム100は、車両のセンターコンソール、ダッシュボード、またはハンドルなど、車両ベース105を含む。実施の形態において、車両ベース105は、アームレスト、ピラー、背もたれ、床板、ヘッドレスト、ドアパネル、または車両内部の任意の部分など、様々な他の車両部分を含むことがある。ここでの記載は、主に、車両ディスプレイにおけるガラス物品の使用に関するが、ここに論じられる様々な実施の形態は、どのタイプのディスプレイ用途に使用されてもよいことを理解すべきである。本開示は、ディスプレイ用途に限定されず、均一な外観が望まれる、互いに近接した光源とセンサを含むどの用途に使用しても差し支えない。
【0039】
実施の形態において、車両表示システム100は、車両の電子システムと統合することができる、または車両表示システム100は、それから独立していてもよい。ディスプレイ110は、車両の一部として製造されても、または後付けされてもよい。実施の形態において、ディスプレイ110は、車両ベース105上に搭載された適切な支持構造に取り付けられる。実施の形態において、ディスプレイ110の背面は、車両の乗員がディスプレイ110上の画像を見られるように、ディスプレイ110のユーザに面する前面(例えば、ここに記載された第1の主面470に相当する)が車室に面するように支持構造と接触していることがある。実施の形態において、ディスプレイ110は、車両ベース105の一部を形成するように配置することができ、その形状と輪郭にしたがうことができる。
【0040】
ディスプレイ110の様々な構造が考えられ、本開示の範囲に含まれる。例えば、図1に示されるように、ディスプレイ110は、センターコンソールである車両ベース105に組み込まれている。ディスプレイ110は、実装に応じて、平らであっても、湾曲していても差し支えない。実施の形態において、ディスプレイ110は、冷間曲げガラス基板または平坦ガラス基板などのガラス基板、およびディスプレイモジュール(バックライトユニットおよび第2のガラス基板を含むことがある)を備える。冷間成形ガラス基板を組み込んだ湾曲した実施の形態は、ここに全てが引用される、「Laminating thin strengthened glass to curved molded plastic surface for decorative and display cover application」と題する米国特許出願公開第2019/0329531A1号、「Cold-formed glass article and assembly process thereof」と題する米国特許出願公開第2019/0315648A1号、「Vehicle interior systems having a curved cover glass and a display or touch panel and methods for forming the same」と題する米国特許出願公開第2019/0012033A1号、および「Curved glass constructions and methods for forming same」と題する米国特許出願第17/214124号の各明細書に記載された技術のいずれを利用して形成されてもよい。実施の形態において、ディスプレイ110は、ここに全て引用される、「Dynamically Adjustable Display System and Methods of Dynamically Adjusting a Display」と題する米国特許出願第17/295502号の明細書に記載されているような、形状および/または位置が操作できるフレキシブルディスプレイである。
【0041】
図1に示されるように、車両表示システム100は、センサ150を備えている。センサ150は、ディスプレイ110に近接して配置されている。実施の形態において、センサ150は、ディスプレイ110の操作を制御するために車両表示システム100に関連する制御システム(図示せず)により使用される。実施の形態において、センサ150は、そこに入射する光に応答して電気信号を生成するように作られた光検出器を含む。そのような実施の形態において、センサ150は、ディスプレイに入射する光を検出して、環境光状態を決定するために使用することができる。例えば、環境光が比較的高いと検出された時には、制御システム(例えば、メモリに完納された命令を実行するプロセッサにより)は、ディスプレイ110が生成する画像の輝度を増加させて、その画像を車室内の視聴者にいっそう見やすくすることができる。そのような輝度の動態的調整によって、車室内の環境光状態に関係なく、有益に、画像が視聴者に見やすくなる。
【0042】
実施の形態において、センサ150は、関心のある適切な波長範囲内の光を検出して、環境光状態を決定する。例えば、実施の形態において、センサ150は、可視スペクトル(例えば、400nmから700nm)の全域の光を測定して、環境光条件がディスプレイ110上にグレアを生じそうであるか否かを決定することができる。センサ150が、関心のある他の波長範囲内の光に応答して信号を生成する(例えば、可視スペクトルの外側の光を検出する)実施の形態も考えられ、本開示の範囲に含まれる。さらに、光検出器の例がここに記載されているが、センサ150は、様々な形態(例えば、位置検出器、カメラ、近接センサ)で利用されることがある。図示された例は、1つのセンサ150のみを備えているが、複数のセンサを組み込んだ実施の形態も考えられる。
【0043】
実施の形態において、センサ150は、ディスプレイ110に関連するカバーガラスの背後に位置付けられている。例えば、図2Aは、例示の実施の形態による、図1および2Bに示された線II-IIを通るディスプレイ110の断面図を概略示している。図から分かるように、ディスプレイ110は、概して、ガラス物品400およびディスプレイモジュール540を備えている。実施の形態において、ディスプレイモジュール540は、車室内の視聴者に情報を提供するためにガラス物品400を通じて伝送される光を生成するように作られた光源を含む。1つ以上の実施の形態において、ディスプレイモジュール540は、ディスプレイとタッチパネルを含むタッチ操作式ディスプレイなどのディスプレイを含む。例示のディスプレイとしては、LEDディスプレイ、DLP MEMSチップ、LCD、OLED、透過型ディスプレイなどが挙げられる。それに代えて、またはそれに加え、ディスプレイモジュール540は、別の適切な発光デバイス(例えば、発光ダイオードまたは発光ダイオードアレイ、レーザまたは他の光源)を含む。ガラス物品400は、一般に、保護および他の性能向上属性(例えば、防眩または反射防止)を提供するディスプレイモジュール540用のカバーガラスの働きをする。
【0044】
センサ150は、ガラス物品400の背後であって、ディスプレイモジュール540に近接して配置されているのが示されている。そのような構造は、センサ150が、ディスプレイ110が曝露されている(図1参照)ものをリアルタイムで正確に表す環境状態を検出することができるという点で有益である。さらに、ガラス物品400は、センサ150用の保護カバーの機能も果たし、ここに記載された方法によって、センサ150を視界から隠す。
【0045】
図2Aに示されるように、ガラス物品400は、少なくとも基板450および不透明層500を含む。基板450は、視聴者に面する第1の主面470および上に不透明層500が配置されることのある(少なくとも一部に)第2の主面480を有する。ここに用いられているように、「配置する」という用語は、当該技術分野で任意の公知の方法を使用した、表面上への材料の被覆、堆積および/または形成を含む。配置された材料は、ここに定義されるような、層を構成することができる。ここに用いられているように、「上に配置された」という句は、材料が表面と直接接触するように表面上に材料を形成する例を含み、また、配置された材料と表面との間に1つ以上の介在材料がある状態で、材料が表面上に形成されている例も含む。介在材料は、ここに定義されるような、層を構成することができる。「層」という用語は、単一層を含むことがある、または1つ以上の副層を含むことがある。そのような副層は、互いに直接接触していてもよい。副層は、同じ材料から形成されても、または2つ以上の異なる材料から形成されてもよい。1つ以上の代わりの実施の形態において、そのような副層は、間に配置された異なる材料の介在層を有することがある。1つ以上の実施の形態において、層は、1つ以上の隣接して途切れのない層および/または1つ以上の不連続の断続層(すなわち、互いに隣接して形成された異なる材料を有する層)を含むことがある。層または副層は、個別堆積または連続堆積過程を含む、当該技術分野に公知のどの方法によって形成されてもよい。1つ以上の実施の形態において、層は、連続堆積過程のみ、あるいは、個別堆積過程のみを使用して形成されてもよい。
【0046】
実施の形態において、基板450は、必要に応じて化学的に強化され、0.05から2.0mmの厚さを有するガラス基板である。そのようなガラス基板の構造についての詳細が、図7に関して、本明細書に与えられている。実施の形態において、基板450は、PMMA、ポリカーボネートなどの透明プラスチックであることがある。
【0047】
実施の形態において、ガラス物品400は、機能性表面層490を含む。機能性表面層490は、様々な機能の内の1つ以上を提供するように作ることができる。例えば、機能性表面層490は、洗浄し易い性能、防眩特性、反射防止特性、および/またはハーフミラーコーティングを提供するように作られた光学コーティングであることがある。そのような光学コーティングは、単一層または複数層を使用して作ることができる。反射防止機能性表面層の場合、そのような層は、高屈折率と低屈折率を交互に有する多数の層を使用して形成することができる。低屈折率膜の非限定例としては、SiO、MgF、およびAlが挙げられ、高屈折率膜の非限定例としては、Nb、TiO、ZrO、HfO、およびYが挙げられる。実施の形態において、そのような光学コーティング(防眩表面または滑らかな基板表面を覆って配置されることがある)の総厚は、5nmから750nmである。それに加え、実施の形態において、洗浄し易い性能を提供する機能性表面層490は、タッチパネルにとって向上した感覚および/または指紋を減少させるためのコーティング/処理も提供する。いくつかの実施の形態において、機能性表面層490は、基板の第一面と一体となっている。例えば、そのような機能性表面層は、防眩表面(または、例えば、2%から20%のヘイズ)を提供する基板450の第一面におけるエッチング表面を含み得る。
【0048】
実施の形態において、不透明層500は、基板450の第2の主面480上に印刷されている。不透明層500は、光の透過を遮断するために、不透明層500が比較的高い光学密度(例えば、3超または4以上の光学密度)を有するように適切なインク(例えば、光硬化性インク、熱硬化性インク)から構成されることがある。実施の形態において、不透明層500は、顔料分散体(例えば、カーボンブラックなどの適切な着色剤および単量体を含有する)および結合剤溶液を含む適切なインクから構成される。様々な市販の光硬化性インクおよび放射線硬化性インクが考えられ、本開示の範囲に含まれる。不透明層500を形成するために使用されるインクは、一般に、UVスペクトルから赤外線スペクトルまでの放射線を吸収することがある。
【0049】
実施の形態において、不透明層500は、光がガラス物品400の特定の領域を透過するのを阻止するために使用される。実施の形態において、不透明層500は、ガラス物品400の操作のために設けられた機能性または非装飾要素を目立たなくする。実施の形態において、不透明層500は、バックライトで照らされたアイコンおよび/または他の図形(図示せず)に、そのようなアイコンおよび/または図名のエッジでのコントラストを増すために、輪郭を形成するために設けられる。不透明層500はどの色であっても差し支えない;とはいえ、特定の実施の形態において、不透明層500は黒色または灰色である。実施の形態において、不透明層500は、基板450の第2の主面480を覆って、適切な施用技術(例えば、インクジェット印刷、スクリーン印刷)によって、施される。一般に、不透明層500の厚さは、25μm以下(例えば、1.0μm以上かつ25.0μm以下、5.0μm以上かつ25.0μm以下、5.0μm以上かつ20.0μm以下、5.0μm以上かつ10.0μm以下)である。
【0050】
実施の形態において、不透明層500は、第2の主面480上に直接堆積される。実施の形態において、不透明層500の堆積前に、不透明層500の基板450への接着を促進するために、適切なプライマー(例えば、アクリルオキシシランプライマー)を使用して、第2の主面480に下塗りしてもよい。不透明層500の基板450への接着を促進するために、第2の主面480にどの適切な処理を使用してもよい。
【0051】
実施の形態において、高い光学密度の不透明層500により、不透明層500を組み込んだガラス物品400の区域が、可視スペクトルにおいて比較的低い平均光学透過率(例えば、0.5%以下または0.1%以下の平均透過率)を有する。したがって、不透明層500の境界は、ガラス物品400が比較的高い光学透過率(例えば、可視スペクトルに亘り平均して、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、または90%以上)を示すことができる、画像領域520、およびガラス物品400が、概して、様々なコンポーネントを隠しやすくするように画像領域520におけるよりも低い光学透過率を示す、周辺領域530を画成することができる。図示された実施の形態において、不透明層500は、ディスプレイモジュール540のエッジ550を覆って、第1の主面470を通る視界からエッジ550を隠す。不透明層500は、様々な他のコンポーネント(例えば、電気的接続、機械的筐体など)を視界から見えなくするためにも使用されることがある。不透明層500は、一般に、第1の主面470を見るユーザによりディスプレイモジュール540の所望の部分を見えるように支援する。
【0052】
まだ図2Aを参照すると、不透明層500の不透明度と高い光学密度のために、関心のある波長範囲内の光がセンサ150に到達するのを防ぐことによって、センサ150の動作が妨げられるであろう。したがって、ガラス物品400のセンサ領域560内では、不透明層500の部分が選択的に(少なくとも部分的に)除去されて、センサ150に関連する関心のある波長範囲において比較的高い光学透過率(不透明層500が一部たりとも除去されていないガラス物品400の部分と比べて)の領域を提供する。不透明層500をそのように選択的に除去した結果として、不透明層500は、センサ領域560内に複数の除去部分562を含む。実施の形態において、複数の除去部分562の各々内で、不透明層500が複数の除去部分562内で減少した厚さを有するように、不透明層500の材料の少なくともいくらかが除去されている。実施の形態において、不透明層500の材料の全てが複数の除去部分562の各々内から除去され、よって、複数の除去部分562の各々内で、不透明層500は、不透明層500の残りを構成する材料が完全にない。複数の除去部分562は、不透明層500の材料(例えば、硬化インク)がない空隙からなることがある。実施の形態において、複数の除去部分562は、空気またはディスプレイ110の外部環境の成分である他の気体で満たされている。実施の形態において、複数の除去部分562は、別の材料(例えば、センサ150または支持構造などの他のコンポーネントを取り付けるために使用される光学的に透明な接着剤)で少なくとも部分的に満たされることがある。
【0053】
実施の形態において、不透明層500内の複数の除去部分562は、不透明層500の残りを構成する、センサ150に関連する関心のある波長範囲内の光を吸収する傾向にある材料をあまり含まない。その結果、複数の除去部分562内では、ガラス物品400は、不透明層500が全厚を構成するガラス物品400の他の部分におけるよりも、関心のある波長範囲内のより高い光学透過率を有する。複数の除去部分562は、関心のある波長範囲において高い光学透過率の領域を含み、それによって、検出できる量の放射線が、センサ領域560内のガラス物品400を伝播してセンサ150に到達し、ディスプレイ110の環境光状態を予測し、したがって、ディスプレイモジュール540を制御するために使用できるセンサ信号を生成することができる。
【0054】
図2Bは、本開示の例示の実施の形態による、ガラス物品400の上面図(例えば、第1の主面470の側からの)を概略示している。図示された実施の形態において、不透明層500により少なくとも一部が画成された画像領域520は、長方形をしている(例えば、図2Aに示されたディスプレイモジュール540により生成される画像に対応するように)。不透明層500の光吸収性材料で覆われたガラス基板450の部分に対応する、周辺領域530は、画像領域520を周囲から取り囲む。実施の形態において、周辺領域530は、ガラス基板450の外周縁から半径方向内側に、不透明層500の内縁まで延在して、画像領域520の外側境界を画成する。画像領域520および周辺領域530の特定の形状とサイズは、特に限定されない。
【0055】
図示された実施の形態において、センサ領域560は、周辺領域530内に含まれている。センサ領域560は、複数の除去部分562における最も外側の除去部分の全ての接線に亘る最小形状に相当する。最も外側の除去部分は、全体として見たときに複数の除去部分562の幾何学的中心(例えば、除去部分のアレイ564の幾何学的中心、図2B参照)から最大の半径方向距離である幾何学的中心を有する。実施の形態において、センサ領域560は、センサ150の検出区域に形状とサイズが対応する(図2A参照)。センサ領域560のサイズと形状は、センサ150が放射線を検出する特定の区域に形状が対応する(例えば、光検出器または光検出器アレイ、もしくはセンサ150内の光学素子により決定される検出区域のサイズに対応する)ことがある。そのような構造は、複数の除去部分562がセンサ150の全検出区域に亘り配置され、センサ領域560が検出区域全体よりも小さい実施の形態を上回る、好ましい感度および広い面積に亘る検出を促進するという点で有益である。センサ領域560がセンサ150よりサイズが小さいかまたは大きい実施の形態も考えられる。実施の形態において、センサ領域の表面積は、例えば、センサ領域560が1つの除去部分しか含まない場合、200μm以上(例えば、300μm以上、500μm以上、600μm以上、700μm以上、800μm以上、200μm以上かつ4000μm以下)であることがある。実施の形態において、例えば、センサ領域が複数の除去部分を含む場合、センサ領域の表面積は、1mm以上(例えば、1.5mm以上、2.0mm以上、2.5mm以上、またさらに大きい)かつ400mm以下(例えば、300mm以下、200mm以下、100mm以下、50mm以下)である。先の範囲のいずれかよりサイズが大きいセンサ領域も考えられ、本開示の範囲に含まれる。
【0056】
実施の形態において、複数の除去部分562は、不透明層500の少なくとも1つ(例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも12、少なくとも14、少なくとも16、少なくとも18、少なくとも20、少なくとも22、少なくとも24、少なくとも26、少なくとも28、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50)の別個の除去部分を含む。複数の除去部分562は、一般に、除去部分のアレイ564に配列されている。除去部分のアレイ564は、どの適切な配列の除去部分を含有してもよい。例えば、図示された実施の形態において、除去部分のアレイ564は、複数の等間隔の列の除去部分を含み、除去部分の各列は複数の等間隔の除去部分を含む。そのような配列は、除去部分をセンサ領域560に亘り均一に分布させており、センサ150による一貫した測定を促進させるであろう。除去部分が不均一にまたは他のパターンで分布している他の配列も考えられ、本開示の範囲に含まれる。実施の形態において、例えば、除去部分のアレイ564は、交互の列の配列で配置され、除去部分の1つおきの列が、列方向に垂直に延在する方向に揃えられているが、隣接する列は、列方向に沿って互いからずれている。除去部分のどの適切なパターンも可能であり、ここに記載された方法にしたがって製造することができる。
【0057】
除去部分のアレイ564は、センサ領域560内で、ガラス物品400が、センサ150に関連する関心のある波長範囲内の0.5%以上(例えば、1.0%以上、1.5%以上、2.0%以上、2.5%以上、3.0%以上、3.5%以上、4.0%以上、4.5%以上、5.0%以上、6.0%以上、7.0%以上、8.0%以上、9.0%以上、10%以上、12%以上、14%以上、16%以上、18%以上、19%以上)の平均光学透過率を有するように構成される。そのような光学透過率により、センサ150は、ガラス物品400を伝播する光から有効検出信号(例えば、センサ150に関連する信号対雑音比より高い)を提供することができる。実施の形態において、除去部分のアレイ564は、センサ領域560内で、ガラス物品400が、可視スペクトルにおいて25%以下(例えば、24%以下、23%以下、22%以下、21%以下、20%以下、19%以下、18%以下、17%以下、15%以下、14%以下、13%以下、12%以下、11%以下、10%以下)の平均光学透過率を有して、センサ150を視界から隠すのに役立つように構成される。それゆえ、実施の形態において、センサ領域560内で、ガラス物品400は、0.5%以上かつ25%以下(例えば、1%以上かつ20%以下、2%以上かつ20%以下、3%以上かつ20%以下、4%以上かつ20%以下、5%以上かつ20%以下)の可視スペクトル(例えば、400nmから700nm)における平均光学透過率を有することがある。そのような光学透過率により、センサ150の動作を促進させつつ、それでも、ディスプレイ110を車両の内部から見たときに、センサ150が視界から隠される。
【0058】
そのような光学透過率を提供するために、不透明層500における除去部分は、センサ領域560内の不透明層500の表面積の大半が除去部分を含まないようなサイズと間隔で構成することができる。実施の形態において、例えば、除去部分のアレイ564が複数の除去部分を含む場合、その複数の除去部分562の合計表面積は、ガラス基板450の第2の主面480に平行に延在する方向(図2A参照)に測定して、センサ領域560の表面積の50%未満(例えば、45%未満、40%未満、35%未満、30%未満、25%未満、10%未満)しか占めない。複数の除去部分562の合計表面積の百分率が大きいほど、関心のある波長範囲および/または可視スペクトルにおける光学透過率が高くなる。それゆえ、除去部分のアレイ564を構成する方法は、ディスプレイ110の構造に応じて様々であろう。例えば、センサ150が光をより反射する傾向にある場合、複数の除去部分562の合計表面積の百分率は、概して、センサを隠すのに役立つように、上記範囲(例えば、30%未満、25%未満、10%未満)の低い方の端にあるであろう。複数の除去部分562の合計表面積の百分率は、センサ150の感度に応じても様々であろう(例えば、感度がより高い検出回路では、互いから大きい距離で間隔が空けられたより小さい除去部分が、センサ150を視界から隠すのに役立つであろう)。
【0059】
図2Cは、除去部分のアレイ564をより詳しく図解している。図示された実施の形態において、複数の除去部分562の各除去部分は、同じ形状をしている。そのような構造では、ここに記載されたように、除去部分を形成する上で一貫したレーザ動作パラメータを使用することによって、除去部分の効率的な実現を促進することができる。除去部分のサイズと形状が互いに異なる実施の形態も考えられるが、そのような実施の形態では、不都合なことに、ここに記載された方法の最中に、より複雑なレーザ制御計画が必要になるであろう。
【0060】
図示された実施の形態において、複数の除去部分562における各除去部分は、形状が実質的に円形である。除去部分の形状は、一般に、複数の除去部分562を形成するために使用されるレーザビームの空間強度分布に対応するであろう。一般に、レーザビームが、不透明層500の材料の除去閾値を上回る強度を有する空間強度分布の形状により、除去部分の形状とサイズが決定される。当然のことながら、除去部分の実際の形状は、レーザのばらつきと除去過程のために、正確な円形からはいくぶん異なるであろう。実施の形態において、複数の除去部分562の各除去部分は、ガラス基板450の第2の主面480に平行に延在する方向(図2A参照)に測定して、100μm以下(例えば、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下、20μm以下)の最大横寸法565を有する。この最大横寸法は、除去部分の内の1つに広がり、除去部分の内の1つの外周縁の2つの異なる部分を接続する最長の真っ直ぐな線の長さに相当する。最大横寸法565を100μm未満に維持することにより、それらを裸眼に見えない状態にするのを手助けし、ディスプレイ110に好ましい外観が与えられる。
【0061】
図2Cに示されるように、除去部分のアレイ564は、第1の方向566に沿って延在する複数の列の除去部分を含む。その複数の列は、第2の方向568に沿って間隔が空けられている。各列の隣接する除去部分は、各除去部分の最大横寸法565以上である第1の方向の最小エッジ間距離570を有することがある。実施の形態において、第1の方向の最小エッジ間距離570は、最大横寸法565の0.9倍以上(例えば、1.0倍以上、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、2.0倍以上)である。除去部分のアレイ564における隣接する列も、第2の方向568に互いに最も近い除去部分が、各除去部分の最大横寸法565以上である第2の方向の最小エッジ間距離572を有するように互いから隔てられることがある。実施の形態において、例えば、第2の方向の最小エッジ間距離572は、最大横寸法565の0.9倍以上(例えば、1.0倍以上、1.1倍以上、1.2倍以上、1.3倍以上、1.4倍以上、1.5倍以上、1.6倍以上、1.7倍以上、1.8倍以上、1.9倍以上、2.0倍以上)である。一般に、除去部分の精密な配列にかかわらず、除去部分は、最小エッジ間分離距離(互いに最も近い一対の除去部分を隔てる第2の主面480に平行に延在する線の長さを測定する)は、最大の0.9倍以上であるように配列される。除去部分のそのような間隔により、不透明層500の存在でセンサ150を視界から隠すのが促進される。
【0062】
除去部分のアレイ564は、等間隔の列の除去部分の長方形の周囲形状を有するが、除去部分の様々な配列が考えられ、本開示の範囲に含まれることを理解すべきである。任意の適切なサイズまたは周囲形状を有する、除去部分の任意の適切な組合せが考えられ、本開示の範囲に含まれる。ここに記載された除去部分は、不透明層500のレーザアブレーションで形成することができるが、除去部分の配列は、具体的に、レーザパラメータの操作によって、使用事例の必要性に応じて、調整することができる。
【0063】
図3Aは、本開示の例示の実施の形態による、環境光センサを備えた表示システムを製造する方法600の流れ図を示す。一例では、方法600は、図1~2Cに関してここに記載されたガラス物品400および/またはディスプレイ110を製造するために使用することができる。方法600は、他のガラス物品を製造するためにも使用できる。方法600の記載に役立つように、図1~2Cに関してここに記載されたような、ディスプレイ110の様々なコンポーネントに言及する。
【0064】
ブロック602では、ガラス基板450の上に不透明層500を配置する。ガラス基板450は、どの適切な方法(例えば、フロート法、ダウンドロー法)で製造しても、市販のものを購入してもよい。不透明層500は、例えば、顔料分散体、結合剤系、および光開始剤を含む、適切な硬化性インク(例えば、熱硬化性インクまたは放射線硬化性インク)を堆積することによって、形成されることがある。顔料分散体は、インクが、一旦硬化したら、3以上または4以上の光学密度を提供するように、比較的高い質量百分率(例えば、少なくとも10質量%、少なくとも20質量%、少なくとも30質量%)で適切な着色剤(例えば、カーボンブラック)を含有することがある。インクは、適切な堆積過程(例えば、インクジェット印刷またはスクリーン印刷)を使用して、第2の主面480(またはその上に配置されたプライマー層または他のコーティング)上に堆積されることがある。適切な硬化方法で硬化した後、不透明層500は、400nmから700nmの光について1%以下(例えば、0.5%以下、0.1%以下)の平均光学透過率を有することがある。
【0065】
ブロック604では、不透明層500を光源からの光に曝露し、あるパターンで不透明層を選択的に除去して、不透明層500に透過領域を形成する。実施の形態において、不透明層500の部分は、レーザビームが不透明層500の材料を加熱して、その材料を除去し、複数の除去部分562を形成するように、レーザビームに選択的に曝露される。図3Bは、複数の除去部分562を形成するために使用できる装置610を概略示している。装置610は、レーザ光源612および台座614を備えている。レーザ光源612は、レーザビーム616が不透明層500の材料を除去できるような適切な波長と強度でレーザビーム616を放出するレーザシステムである。ここに記載されたように、不透明層500は、UVからIRスペクトル(例えば、300nmから10,000nm)に亘る光について比較的高い吸光度を示す黒色または灰色インクから形成されることがある。例えば、実施の形態において、不透明層500は、400nmから700nmの光について少なくとも99%の平均吸光度を有するエポキシ系インク、アクリル系インク、ラテックス系インク、またはポリウレタン系インクなどの適切なインクから構成されることがある。不透明層500の材料を除去できる光を放出するために、市販のレーザ光源を使用してもよい。UVレーザ(例えば、355nmを含む線幅を有するレーザビーム616を放出する)、COレーザ(例えば、9.3μmを含む線幅を有するレーザビーム616を放出する)、およびIRレーザ(例えば、1.06μmを含む線幅を有するレーザビーム616を放出する)の使用が考えられ、本開示の範囲に含まれる。そのような波長は、適切な光学系の構成により、ガラス基板450に損傷を与えずに使用できるという点で有益である。
【0066】
除去部分のアレイ564を形成する様々な手法が考えられる。例えば、実施の形態において、台座614は静止している。その結果、ガラス基板450は、台座614上に置かれている場合、レーザビーム616に曝露される際に、静止したままであろう。したがって、除去部分を所望のパターンで形成するために、レーザビーム616は、不透明層500の様々な領域が、不透明層500の材料を除去するのに十分な期間に亘りレーザビーム616に曝露されるように、不透明層500の上で走査されることができる。この点に関して、装置610は光学系618を含むことがある。光学系618は、レーザビーム616を操作し、不透明層500を所望のパターンで走査して、除去部分のアレイ564を形成するための1つ以上の光学素子(例えば、レンズ、鏡など)を含むことがある。例えば、実施の形態において、光学系618は、レーザビーム616の伝播方向を変化させて、不透明層500上のレーザビーム616の入射地点を変えるガルバノメトリックスキャナー(例えば、1Dオプティカルスキャナー、2Dオプティカルスキャナー)を含む。実施の形態において、例えば、レーザビーム616は、最初に、不透明層500の第1の部分に入射することがある。不透明層500は、不透明層500の材料を除去するのに十分に加熱する曝露期間に亘りレーザビーム616に曝露されることがある。曝露期間後、ガルバノメトリックスキャナーは、構成を変更して、レーザビーム616の入射地点を変えて、別の除去部分を形成することができる。そのような過程は、除去部分の所望のパターンが形成されるまで繰り返すことができる。
【0067】
実施の形態において、台座614は、ガラス基板450がレーザビーム616に曝露されている間、動いている。例えば、台座614は、ガラス基板450を搬送方向620に動かすコンベヤベルトである(またはその上に配置される)ことがある。そのような実施の形態において、制御装置(図示せず)が、ガラス基板450の位置を検出し、レーザ光源612を稼働させて、上述したように不透明層500の部分を除去することができる。レーザビーム616の走査パターンは、ガラス基板450の移動速度および方向に基づいて修正されることがある。そのような「オンザフライ(on the fly)」の手法により、ガラス基板450の停止を避けることによって、作業効率が有益に改善される。
【0068】
実施の形態において、光学系618は、レーザビーム616が不透明層500に入射しているときに、レーザビーム616の空間強度分布を操作することができるビーム調整光学素子も備える。例えば、光学系618は、レーザビーム616を集束させて、そのビームの少なくとも一部に、不透明層500の材料の除去閾値を上回る強度を持たせることができる。光学系618は、レーザビーム616の強度分布の形状を操作することによって、除去部分の掲示用を部分的に決定することもできる。
【0069】
実施の形態において、光学系618は、複数の除去部分562の内の1つの除去部分の形成中にレーザビーム616を操作することができる。すなわち、1つの除去部分の形成中、光学系618は、不透明層500上のレーザビーム616の入射地点を変更し、よって、レーザビーム616を走査パターンで走査することによって、除去部分の個々が形成される。そのような手法は、使用されている走査パターンが、除去が行われるのに十分な放射線に曝露される不透明層500の精密な部分を変えることかできるので、形成される除去部分の形状とサイズに融通性を提供する。そのような手法を使用して、レーザビーム616の空間強度分布から、形状を変えられる多種多様な除去部分を形成することができる。円形、楕円形、および平行六面体形の断面の除去部分が考えられ、本開示の範囲に含まれる。
【0070】
実施の形態において、光学系618は、1つ以上の回折光学素子を含むことができる。例えば、実施の形態において、回折光学素子は、レーザビーム616を、各々が不透明層500の材料を除去できる複数の回折ビームに回折できる一次元または二次元回折ビームスプリッターである。このようにして、レーザビーム616を走査せずに、回折によって、除去領域のパターンを形成することができる。実施の形態において、光学系618は、動かずに、レーザビーム616を不透明層500上の複数の焦点に集束させて、除去部分のアレイ564を形成するマイクロレンズアレイを備えることができる。各焦点は、所望の形状の除去部分の形成を促進させる円形または非円形の空間出力分布を有することがある。
【0071】
実施の形態において、光学系618は、幾何学的位相ホログラム、空間光変調器、または他の適切なビーム操作装置を含むことができる。実施の形態において、例えば、ホログラムまたは空間光変調器は、どのような移動部品を含まずに、不透明層500上に所望のパターンを生成して、除去領域のパターンを形成するために、適切な光学系(例えば、レンズ系)との組合せで使用されることがある。パターン生成にさらなる融通性を与えるために、空間光変調器、ホログラム、回折光学素子、またはマイクロレンズアレイを、スキャナーとの組合せで使用できる実施の形態も考えられる。
【0072】
概して図3Bを参照すると、レーザ光源612を動作させて、パルス波または連続波レーザビームを生成し、それでも、本開示による不透明領域に除去部分をうまく生成できることが分かった。実施の形態において、例えば、レーザ光源612は、疑似連続波レーザとして動作されることがあり、この場合、連続波レーザ光源のポンプが、所望の様式で不透明層500を除去するのに十分であると判定された間隔(例えば、0.5ミリ秒以下、0.4ミリ秒以下、0.3ミリ秒以下、0.2ミリ秒以下、0.1ミリ秒以下)に亘り、スイッチが入れられる。一例において、ガウス強度分布を有する9.3μmで動作するCOレーザを動作させて、アクリル不透明層に除去部分を形成した。レーザは、約80μmの焦点でビームサイズ(1/e)に集束させた。4Wの出力で、各除去部分について0.1ミリ秒のオン時間を使用してレーザを動作させた場合、最大横寸法が65μmの除去部分が観察された。別の例では、355nmで動作するパルスUVレーザを使用して、アクリル不透明層に除去部分を生成した。パルス持続時間は、60kHzの繰り返し率で20ナノ秒であった。UVレーザは、ガウス強度分布を有し、レンズを使用して、25μmのスポットサイズに集束させた。実施の形態において、レーザは、ガラス上の焦点をぼかし(例えば、10mm以下、5mm以下、4mm以下、3mm以下だけ)、よって、焦点で観察された最小スポットサイズは、第2の主面480から変位していた。レーザが4mmだけ焦点がぼかされ、1.8ワットの出力を有した場合、ある区域を30パルスに曝露することにより、不透明層が完全に除去された65μmの孔が生じた。このように、レーザビーム616が光学系618によってどのように集束されるかに応じて、様々なレーザシステムを使用して、様々なサイズの除去部分を形成することができる。不透明層の各部分についての曝露期間(例えば、パルスの数または期間)に応じて、除去部分のサイズも変えられる。レーザ光源および光学系の様々な組合せが考えられ、本開示の範囲に含まれる。
【0073】
再び図3Aを参照すると、ブロック606で、ガラス基板450を伝播する光が、複数の除去部分562通じてセンサ150上に伝わるように、ガラス基板450をセンサ150に対して位置付ける。実施の形態において、センサ150が、除去部分のアレイ564を含むセンサ領域560と少なくとも部分的に重複するように、センサ150が不透明層500に(例えば、適切な光学的に透明な接着剤で)取り付けられる。実施の形態において、センサ150は、ディスプレイ110が車両表示システム100に組み込まれたときに車両表示システム100内に位置付けられ、センサ領域560を伝播する光の少なくともいくらかがセンサ150に入射するような光路上に位置付けられる。一例において、ディスプレイモジュール540は、図2Bに示されるように、ガラス基板450に積層されている。次いで、ガラス物品400は、車両表示システム100に搭載するために、支持構造(図示せず)に取り付けることができる。ここに記載されたように、不透明層500における除去部分により、センサ150を視界から隠しながら、都合良くセンサ150を動作させることができる。
【0074】
本開示によるディスプレイ物品は、いくつのセンサ領域を含んでもよいことが認識されよう。実施の形態において、そのようなセンサ領域の各々は、不透明層500の除去部分の異なるアレイを含む。除去部分のアレイは、各センサ領域がその前面に配置されるセンサに応じて様々であろう。多数のセンサの前面に1つのセンサ領域が配置される実施の形態も考えられる。センサを視界から隠しながら、複数のセンサの動作を促進するために、除去部分の1つのアレイを用いてもよい。
【実施例0075】
本開示の実施の形態は、以下の実施例を鑑みて、さらに理解されるであろう。
【0076】
以下の実施例において、市販のインクの不透明層を、ガラス基板上に配置し、図示されたような除去部分を形成するために様々なレーザに曝露した。それらの実施例において、ここに記載された厚さ範囲内のアクリル不透明層をガラス基板上に配置し、様々なレーザ光源からの曝露を行って、図示された除去領域を生成した。
【0077】
第1の実施例において、4Wの有効出力を有する、9.3μmの波長で動作するCOレーザを不透明層上に走査し、不透明層に格子状パターン(均一間隔)の円形孔を生成した。レーザは、ガウス強度分布を有し、約80μmのスポットサイズで不透明層に集束させた。レーザは、除去部分当たり0.1ミリ秒のオン時間で疑似連続波光源として動作させた。そのような手法により、不透明層が完全に除去された除去部分をうまく生成した。孔の直径は60μmであり、0.5秒未満で20×20の格子が生成された。図4Aは、9.3μmおよび2.6Wの出力でCOレーザにより不透明層に形成された除去部分の別の例示のアレイ702を示す。図から分かるように、除去部分は、直径が50.4μmの孔であった。孔の最小エッジ間間隔は、48.7μmであった。それゆえ、孔の直径は、この実施例では、最小エッジ間距離とほぼ等しかった。この実施例にける環境光の平均光学透過率は、表面反射率(可視光で約4%)を考慮せずに、約20%であると計算された。
【0078】
図4Bは、不透明層上を355nmでUVレーザを走査することによって形成された除去部分の別の例示のアレイ704を示す。このレーザは、40kHzの繰り返し率(20ナノ秒のパルス幅)および0.75Wの出力で運転された。レーザビームを、25μmの理論スポットサイズ(1/e)で不透明層上に集束させた。レーザビームを、所望の位置で停止させて、各位置で不透明層を合計4パルスに曝露して、不透明層を除去する格子状パターン(行毎)で走査した。このレーザにより、直径20μmの円形孔である除去部分が生成された。これらの孔のエッジ間間隔は、約77.5μm、または孔の直径の3倍超と測定された。そのような構造により、環境光について約5%の光学透過率の計算値が得られた。図4Aおよび4Bに関してここに記載された実施例は、センサ領域内のガラス物品の透過率を決定するために、どのように孔サイズと間隔を使用できるかを示す。
【0079】
図5A、5B、および5Cは、異なるレーザで形成された除去部分の拡大画像を示す。図5Aは、9.3μmでのCOレーザへの曝露により生成された直径66.3μmの第1の除去部分708を示す。レーザ出力は4.6Wであった。レーザをオンにし、1μmの半径および50mm/秒の速度で円形走査を用いて、除去孔を製造した。図5Bは、355nmでのUVレーザへの曝露により生成された直径64.0μmの第2の除去部分710を示す。レーザ出力は、60kHzの繰り返し率により、2Wで運転された。レーザビームは、25μmの理論ビームサイズ(1/e)で不透明インク層上に集束させた。レーザは、2つの同心円に沿って400mm/秒の速度で走査して、不透明インク層を除去した。これらの同心円の半径は、それぞれ、約32μmと約16μmであった。図5Cは、1.06μmでのIRレーザへの曝露により生成された直径31.8μmの第3の除去部分712を示す。図から分かるように、第3の除去部分712は、第1と第2の除去部分708および710のいずれよりも粗いエッジを有していた。これは、IRレーザの形状の変動、または1.06μmでの不透明層の吸光係数の減少のためであったと考えられる。これらの実施例は、様々な市販のレーザを使用して、除去部分をうまく形成できることを実証している。さらに、これらの実施例は、任意の所望の形状を有する除去部分が形成できるように走査パターンの組合せ(例えば、各除去部分を生成するために1つ以上の円でレーザビームを走査する)を使用して、どのように個々の除去部分を形成できるかも実証している。不透明層を除去するのに必要な走査速度は、レーザ光源の出力およびレーザ光源がパルス波または連続波であるか否かに依存するであろう。
【0080】
図6Aは、不透明層における別の例示の除去部分のアレイ714を示している。図6Bは、不透明層における別の例示の除去部分のアレイ716を示している。両方の実施例における除去部分は、COレーザを使用して形成した。図6Aにおける除去部分は、不透明層の材料が完全に除去された(不透明層の材料が各除去部分内に存在しないように)不透明層中の孔から作られた。この孔は、39.5μmの直径および60.2μmの最小エッジ間距離を有した。図6Bにおける除去部分は、不透明層の材料が部分的にしか除去されていない不透明層中の孔から作られた。すなわち、図6Bにおいて、不透明層の材料のいくらかが、除去部分が不透明層の残り似た外観を有するように除去部分の各々に残っていた。そのような構造は、様々なセンサを隠すのに役立つであろう。図6Bにおける除去部分は、不透明層の除去された材料の浅いピットから作られている。このピットは、円形であり、直径が33.3μmであり、最小エッジ間間隔は42.1μmであった。図6Aにおいて、レーザは、各除去部分について、2Wの出力および0.1ミリ秒のオン時間で動作させた。除去過程は、約0.5秒の間隔でさらに4回繰り返して、各除去部分において不透明層を除去した。図6Bにおいて、レーザ出力は1.8Wであった。レーザは、0.1ミリ秒に亘りオンにした。これを、オン時間の間に7.5秒の間隔で、約14回繰り返した。オン時間の間隔をこのように増加させると、除去閾値にほとんど到達せず、よって、不透明層は完全には除去されなかった。これらの実施例は、インクの除去量を制御して、任意のセンサの視認性を変え、光学透過率性能を変えるために、レーザ動作パラメータ(レーザ出力、パルス持続時間、パルス数、パルス間隔)をどのようにしてわずかに変更できるかを実証している。
【0081】
ガラス材料
図7を参照すると、実施の形態において、ガラス基板450は、ガラス基板450の幅と長さに亘り実質的に一定であり、第1の主面470と第2の主面480との間の距離として定義される厚さtを有する。様々な実施の形態において、tは、ガラス基板450の平均厚さまたは最大厚さを称することがある。それに加え、ガラス基板450は、厚さtに垂直な第1または第2の主面470、480の一方の第1の最大寸法として定義される幅Wおよび厚さと幅の両方に垂直な第1または第2の主面470、480の一方の第2の最大寸法として定義される長さLを有する。他の実施の形態において、WおよびLは、それぞれ、ガラス基板450の平均幅および平均長さであることがあり、他の実施の形態において、WおよびLは、それぞれ、ガラス基板450の最大幅および最大長さであることがある(例えば、可変の幅または長さを有するガラス基板450について)。
【0082】
様々な実施の形態において、厚さtは、2mm以下である。特に、厚さtは、0.30mmから2.0mmである。例えば、厚さtは、約0.30mmから約2.0mm、約0.40mmから約2.0mm、約0.50mmから約2.0mm、約0.60mmから約2.0mm、約0.70mmから約2.0mm、約0.80mmから約2.0mm、約0.90mmから約2.0mm、約1.0mmから約2.0mm、約1.1mmから約2.0mm、約1.2mmから約2.0mm、約1.3mmから約2.0mm、約1.4mmから約2.0mm、約1.5mmから約2.0mm、約0.30mmから約1.9mm、約0.30mmから約1.8mm、約0.30mmから約1.7mm、約0.30mmから約1.6mm、約0.30mmから約1.5mm、約0.30mmから約1.4mm、約0.30mmから約1.4mm、約0.30mmから約1.3mm、約0.30mmから約1.2mm、約0.30mmから約1.1mm、約0.30mmから約1.0mm、約0.30mmから約0.90mm、約0.30mmから約0.80mm、約0.30mmから約0.70mm、約0.30mmから約0.60mm、または約0.30mmから約0.40mmの範囲内にあることがある。他の実施の形態において、tは、この段落に述べられた正確な数値範囲のいずれか1つの範囲内に入る。
【0083】
様々な実施の形態において、幅Wは、5cmから250cm、約10cmから約250cm、約15cmから約250cm、約20cmから約250cm、約25cmから約250cm、約30cmから約250cm、約35cmから約250cm、約40cmから約250cm、約45cmから約250cm、約50cmから約250cm、約55cmから約250cm、約60cmから約250cm、約65cmから約250cm、約70cmから約250cm、約75cmから約250cm、約80cmから約250cm、約85cmから約250cm、約90cmから約250cm、約95cmから約250cm、約100cmから約250cm、約110cmから約250cm、約120cmから約250cm、約130cmから約250cm、約140cmから約250cm、約150cmから約250cm、約5cmから約240cm、約5cmから約230cm、約5cmから約220cm、約5cmから約210cm、約5cmから約200cm、約5cmから約190cm、約5cmから約180cm、約5cmから約170cm、約5cmから約160cm、約5cmから約150cm、約5cmから約140cm、約5cmから約130cm、約5cmから約120cm、約5cmから約110cm、約5cmから約110cm、約5cmから約100cm、約5cmから約90cm、約5cmから約80cm、または約5cmから約75cmの範囲内である。他の実施の形態において、Wは、この段落に述べられた正確な数値範囲のいずれか1つの範囲内に入る。
【0084】
様々な実施の形態において、長さLは、約5cmから約2500cm、約5cmから約2000cm、約4から約1500cm、約50cmから約1500cm、約100cmから約1500cm、約150cmから約1500cm、約200cmから約1500cm、約250cmから約1500cm、約300cmから約1500cm、約350cmから約1500cm、約400cmから約1500cm、約450cmから約1500cm、約500cmから約1500cm、約550cmから約1500cm、約600cmから約1500cm、約650cmから約1500cm、約650cmから約1500cm、約700cmから約1500cm、約750cmから約1500cm、約800cmから約1500cm、約850cmから約1500cm、約900cmから約1500cm、約950cmから約1500cm、約1000cmから約1500cm、約1050cmから約1500cm、約1100cmから約1500cm、約1150cmから約1500cm、約1200cmから約1500cm、約1250cmから約1500cm、約1300cmから約1500cm、約1350cmから約1500cm、約1400cmから約1500cm、または約1450cmから約1500cmの範囲内である。他の実施の形態において、Lは、この段落に述べられた正確な数値範囲のいずれか1つの範囲内に入る。
【0085】
実施の形態において、基板450は、ソーダ石灰ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノホウケイ酸塩ガラス、アルカリ含有アルミノケイ酸塩ガラス、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス、およびアルカリ含有アルミノホウケイ酸塩ガラスを含むどの適切なガラス組成物から形成されてもよい。
【0086】
特に明記のない限り、ここに開示されたガラス組成物は、酸化物基準で分析してモルパーセント(モル%)で記載されている。
【0087】
1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、約66モル%から約80モル%、約67モル%から約80モル%、約68モル%から約80モル%、約69モル%から約80モル%、約70モル%から約80モル%、約72モル%から約80モル%、約65モル%から約78モル%、約65モル%から約76モル%、約65モル%から約75モル%、約65モル%から約74モル%、約65モル%から約72モル%、または約65モル%から約70モル%の範囲、およびそれらの間の全ての範囲と部分的範囲の量でSiOを含むことがある。
【0088】
1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、約4モル%超、または約5モル%超の量でAlを含む。1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、約7モル%超から約15モル%、約7モル%超から約14モル%、約7モル%から約13モル%、約4モル%から約12モル%、約7モル%から約11モル%、約8モル%から約15モル%、9モル%から約15モル%、約9モル%から約15モル%、約10モル%から約15モル%、約11モル%から約15モル%、または約12モル%から約15モル%の範囲、およびそれらの間の全ての範囲と部分的範囲のAlを含む。1つ以上の実施の形態において、Alの上限は、約14モル%、14.2モル%、14.4モル%、14.6モル%、または14.8モル%であることがある。
【0089】
1つ以上の実施の形態において、ここでのガラス層は、アルミノケイ酸塩ガラス物品として、またはアルミノケイ酸塩ガラス組成物から作られると、記載されている。そのような実施の形態において、ガラス組成物またはそれから形成された物品は、SiOおよびAlを含み、ソーダ石灰ケイ酸塩ガラスではない。その点に関して、このガラス組成物またはそれから形成された物品は、約2モル%以上、2.25モル%以上、2.5モル%以上、約2.75モル%以上、約3モル%以上の量でAlを含む。
【0090】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、B(例えば、約0.01モル%以上)を含む。1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、約0モル%から約5モル%、約0モル%から約4モル%、約0モル%から約3モル%、約0モル%から約2モル%、約0モル%から約1モル%、約0モル%から約0.5モル%、約0.1モル%から約5モル%、約0.1モル%から約4モル%、約0.1モル%から約3モル%、約0.1モル%から約2モル%、約0.1モル%から約1モル%、約0.1モル%から約0.5モル%の範囲、およびそれらの間の全ての範囲と部分的範囲の量でBを含む。1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、Bを実質的に含まない。
【0091】
ここに用いられているように、組成物の成分に関する「実質的に含まない」という句は、その成分が、最初のバッチ配合中に組成物に能動的にまたは意図的に添加されていないが、約0.001モル%未満の量で不純物としてとして存在することがあることを意味する。
【0092】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、P(例えば、約0.01モル%以上)を必要に応じて含む。1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、2モル%まで、1.5モル%まで、1モル%まで、または0.5モル%までのゼロではない量でPを含む。1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、Pを実質的に含まない。
【0093】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、約8モル%以上、約10モル%以上、または約12モル%以上の総量でRO(LiO、NaO、KO、RbO、およびCsOなどのアルカリ金属酸化物の総量)を含むことがある。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、約8モル%から約20モル%、約8モル%から約18モル%、約8モル%から約16モル%、約8モル%から約14モル%、約8モル%から約12モル%、約9モル%から約20モル%、約10モル%から約20モル%、約11モル%から約20モル%、約12モル%から約20モル%、約13モル%から約20モル%、約10モル%から約14モル%、または11モル%から約13モル%の範囲、およびそれらの間の全ての範囲と部分的範囲の総量でROを含む。1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、RbO、CsO、またはRbOとCsOの両方を実質的に含まないことがある。1つ以上の実施の形態において、ROは、その総量のLiO、NaOおよびKOのみを含むことがある。1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、LiO、NaOおよびKOから選択される少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物を含むことがあり、そのアルカリ金属酸化物は、約8モル%以上の量で存在する。
【0094】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、約8モル%以上、約10モル%以上、または約12モル%以上の量のNaOを含む。1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、約8モル%から約20モル%、約8モル%から約18モル%、約8モル%から約16モル%、約8モル%から約14モル%、約8モル%から約12モル%、約9モル%から約20モル%、約10モル%から約20モル%、約11モル%から約20モル%、約12モル%から約20モル%、約13モル%から約20モル%、約10モル%から約14モル%、または11モル%から約13モル%の範囲、およびそれらの間の全ての範囲と部分的範囲でNaOを含む。
【0095】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、約4モル%未満のKO、約3モル%未満のKO、または約1モル%未満のKOを含む。ある場合には、そのガラス組成物は、約0モル%から約4モル%、約0モル%から約3.5モル%、約0モル%から約3モル%、約0モル%から約2.5モル%、約0モル%から約2モル%、約0モル%から約1.5モル%、約0モル%から約1モル%、約0モル%から約0.5モル%、約0モル%から約0.2モル%、約0モル%から約0.1モル%、約0.5モル%から約4モル%、約0.5モル%から約3.5モル%、約0.5モル%から約3モル%、約0.5モル%から約2.5モル%、約0.5モル%から約2モル%、約0.5モル%から約1.5モル%、または約0.5モル%から約1モル%の範囲、およびそれらの間の全ての範囲と部分的範囲の量でKOを含むことがある。1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、KOを実質的に含まない。
【0096】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、LiOを実質的に含まない。
【0097】
1つ以上の実施の形態において、前記組成物中のNaOの量は、LiOの量より多いことがある。ある場合には、NaOの量は、LiOとKOの合計量より多いことがある。1つ以上の代わりの実施の形態において、その組成物中のLiOの量は、NaOの量またはNaOとKOの合計量より多いことがある。
【0098】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、約0モル%から約2モル%の範囲の総量でRO(CaO、MgO、BaO、ZnOおよびSrOなどのアルカリ土類金属酸化物の総量である)を含むことがある。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、約2モル%までのゼロではない量でROを含む。1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、約0モル%から約1.8モル%、約0モル%から約1.6モル%、約0モル%から約1.5モル%、約0モル%から約1.4モル%、約0モル%から約1.2モル%、約0モル%から約1モル%、約0モル%から約0.8モル%、約0モル%から約0.5モル%、およびそれらの間の全ての範囲と部分的範囲の量でROを含む。
【0099】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、約1モル%未満、約0.8モル%未満、または約0.5モル%未満の量でCaOを含む。1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、CaOを実質的に含まない。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、約0モル%から約7モル%、約0モル%から約6モル%、約0モル%から約5モル%、約0モル%から約4モル%、約0.1モル%から約7モル%、約0.1モル%から約6モル%、約0.1モル%から約5モル%、約0.1モル%から約4モル%、約1モル%から約7モル%、約2モル%から約6モル%、または約3モル%から約6モル%、およびそれらの間の全ての範囲と部分的範囲の量でMgOを含む。
【0100】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、約0.2モル%以下、約0.18モル%以下、約0.16モル%以下、約0.15モル%以下、約0.14モル%以下、約0.12モル%以下の量でZrOを含む。1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、約0.01モル%から約0.2モル%、約0.01モル%から約0.18モル%、約0.01モル%から約0.16モル%、約0.01モル%から約0.15モル%、約0.01モル%から約0.14モル%、約0.01モル%から約0.12モル%、または約0.01モル%から約0.10モル%の範囲、およびそれらの間の全ての範囲と部分的範囲でZrOを含む。
【0101】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、約0.2モル%以下、約0.18モル%以下、約0.16モル%以下、約0.15モル%以下、約0.14モル%以下、約0.12モル%以下の量でSnOを含む。1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、約0.01モル%から約0.2モル%、約0.01モル%から約0.18モル%、約0.01モル%から約0.16モル%、約0.01モル%から約0.15モル%、約0.01モル%から約0.14モル%、約0.01モル%から約0.12モル%、または約0.01モル%から約0.10モル%の範囲、およびそれらの間の全ての範囲と部分的範囲でSnOを含む。
【0102】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、ガラス物品に色または色合いを与える酸化物を含むことがある。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、ガラス物品が紫外線に曝露されたときのガラス物品の変色を防ぐ酸化物を含む。そのような酸化物の例としては、制限なく、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ce、W、およびMoの酸化物が挙げられる。
【0103】
1つ以上の実施の形態において、前記ガラス組成物は、Feと表されるFeを含み、Feは、約1モル%まで(含む)の量で存在する。いくつかの実施の形態において、そのガラス組成物は、Feを実質的に含まない。1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、約0.2モル%以下、約0.18モル%以下、約0.16モル%以下、約0.15モル%以下、約0.14モル%以下、約0.12モル%以下の量でFeを含む。1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、約0.01モル%から約0.2モル%、約0.01モル%から約0.18モル%、約0.01モル%から約0.16モル%、約0.01モル%から約0.15モル%、約0.01モル%から約0.14モル%、約0.01モル%から約0.12モル%、または約0.01モル%から約0.10モル%の範囲、およびそれらの間の全ての範囲と部分的範囲でFeを含む。
【0104】
前記ガラス組成物がTiOを含む場合、TiOは、約5モル%以下、約2.5モル%以下、約2モル%以下、または約1モル%以下の量で存在することがある。1つ以上の実施の形態において、そのガラス組成物は、TiOを実質的に含まないことがある。
【0105】
例示のガラス組成物は、約65モル%から約75モル%の範囲の量のSiO、約8モル%から約14モル%の範囲の量のAl、約12モル%から約17モル%の範囲の量のNaO、約0モル%から約0.2モル%の範囲の量のKO、および約1.5モル%から約6モル%の範囲の量のMgOを含む。必要に応じて、SnOが、ここに他に開示された量で含まれることがある。
【0106】
強化ガラスの性質
1つ以上の実施の形態において、ここに開示されたガラス基板450は、強化ガラスシートまたは物品から形成されることがある。1つ以上の実施の形態において、ここに述べられた装飾ガラス構造の層を形成するために使用されるガラス物品は、表面から圧縮深さ(DOC)まで延在する圧縮応力を有するように強化されることがある。圧縮応力領域は、引張応力を示す中央部分によって釣り合わされている。DOCでは、応力は、正の(圧縮)応力から負の(引張)応力に交差する。
【0107】
1つ以上の実施の形態において、ここに述べられた装飾ガラス構造の層を形成するために使用されるガラス物品は、ガラスの複数の部分の間の熱膨張係数の不一致を利用して、圧縮応力領域と引張応力を示す中央領域を作ることによって、機械的に強化されることがある。いくつかの実施の形態において、ガラス物品は、ガラスを、ガラス転移温度より高い温度に加熱し、次いで、急冷することによって、熱的に強化されることがある。
【0108】
1つ以上の実施の形態において、ここに述べられた装飾ガラス構造の層を形成するために使用されるガラス物品は、イオン交換によって、化学的に強化されることがある。イオン交換過程において、ガラス物品の表面にある、またはその近くのイオンが、同じ価数または酸化状態を有するより大きいイオンによって、置換される-すなわち、交換される。ガラス物品がアルカリアルミノケイ酸塩ガラスから作られているそれらの実施の形態において、物品の表面層内のイオンおよびより大きいイオンは、Li、Na、K、Rb、およびCsなどの一価のアルカリ金属陽イオンである。あるいは、表面層内の一価陽イオンは、Agなどの、アルカリ金属陽イオン以外の一価陽イオンで置換されてもよい。そのような実施の形態において、ガラス物品中に交換される一価イオン(または陽イオン)により、応力が生じる。
【0109】
イオン交換過程は、典型的に、ガラス物品を、そのガラス物品中のより小さいイオンと交換されるべきより大きいイオンを含有する溶融塩浴(または2つ以上の溶融塩浴)中に浸漬することによって、行われる。水性塩浴も利用してよいことに留意すべきである。それに加え、浴の組成物は、複数の種類のより大きいイオン(例えば、NaとK)または1つのより大きいイオンを含むことがある。以下に限られないが、浴の組成と温度、浸漬時間、塩浴(または複数の浴)中のガラス物品の浸漬回数、多数の塩浴の使用、徐冷、洗浄などの追加の工程を含む、イオン交換過程のパラメータは、一般に、装飾ガラス構造(存在する任意の結晶相および物品の構造を含む)のガラス層の組成、および強化により生じる装飾ガラス構造のガラス層の所望のDOCとCSによって決まることが、当業者に認識されるであろう。
【0110】
例示の溶融塩組成物は、より大きいアルカリ金属イオンの硝酸塩、硫酸塩、および塩化物を含むことがある。典型的な硝酸塩としては、KNO、NaNO、LiNO、NaSOおよびその組合せが挙げられる。溶融塩浴の温度は、一般に、約380℃から約450℃までの範囲にあり、一方で、浸漬時間は、ガラスの厚さ、浴の温度およびガラス(または一価イオン)の拡散性に応じて、約15分から約100時間までに及ぶ。しかしながら、上述したものとは異なる温度と浸漬時間も使用してよい。
【0111】
1つ以上の実施の形態において、装飾ガラスの層を形成するために使用されるガラス物品は、約370℃から約480℃の温度を有する、100%のNaNO、100%のKNO、またはNaNOとKNOの組合せの溶融塩浴中に浸漬されることがある。いくつかの実施の形態において、装飾ガラスのガラス層は、約5%から約90%のKNOと約10%から約95%のNaNOを含む溶融混合塩浴中に浸漬されることがある。1つ以上の実施の形態において、そのガラス物品は、第1の浴中の浸漬後に、第2の浴中に浸漬されることがある。第1と第2の浴は、互いに異なる組成および/または温度を有することがある。第1と第2の浴中の浸漬時間は、様々であってよい。例えば、第1の浴中の浸漬は、第2の浴中の浸漬より長いことがある。
【0112】
1つ以上の実施の形態において、装飾ガラス構造の層を形成するために使用されるガラス物品は、約5時間未満、またさらには約4時間以下に亘り、約420℃未満(例えば、約400℃または約380℃)の温度を有する、NaNOおよびKNO(例えば、49%/51%、50%/50%、51%/49%)を含む溶融混合塩浴中に浸漬されることがある。
【0113】
装飾ガラス構造の結果として得られるガラス層の表面の、またはその近くの応力プロファイルに「スパイク」を与えるために、またはその勾配を増加させるために、イオン交換条件を調整することができる。このスパイクにより、表面CS値をより大きくすることができる。このスパイクは、ここに記載された装飾ガラス構造のガラス層に使用されるガラス組成物の特有の性質のために、単一組成または混合組成を有する、単一浴または複数の浴によって達成することができる。
【0114】
1つ以上の実施の形態において、装飾ガラス構造の層を形成するために使用されるガラス物品中に複数の一価イオンが交換される場合、異なる一価イオンが、ガラス層内で異なる深さまで交換され(異なる深さでガラス物品内に異なる大きさの応力を生じ)ることがある。応力生成イオンの結果として生じる相対的な深さを決定することかでき、それにより、応力プロファイルに異なる特徴が生じる。
【0115】
CSは、有限会社折原製作所(日本国)により製造されているFSM-6000などの市販の機器を使用する表面応力計(FSM)などによって、当該技術分野で公知の手段を使用して測定される。表面応力測定は、応力光学係数(SOC)の精密測定に依存し、この精密測定はガラスの複屈折に関連している。次に、SOCは、その内容がここに全て引用される、「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」と題するASTM基準C770-98(2013)に両方とも記載されている繊維法および四点曲げ法、並びにバルクシリンダ法など、当該技術分野で公知の方法によって測定される。ここに用いられているように、CSは、圧縮応力層内で測定される最高の圧縮応力値である「最大圧縮応力」であることがある。いくつかの実施の形態において、最大圧縮応力は、ガラス物品の表面に位置している。他の実施の形態において、最大圧縮応力は、表面より下のある深さで生じることがあり、圧縮プロファイルに「埋もれたピーク」の外観が与えられる。
【0116】
DOCは、FSMによって、または散乱光偏光器(SCALP)(エストニア国、タリン所在のGlasstress Ltd.から市販されているSCALP-04散乱光偏光器など)によって測定することができる。ガラス物品が、イオン交換処理によって化学的に強化されている場合、どのイオンがガラス物品中に交換されているかに応じて、FSMまたはSCALPを使用することができる。ガラス物品中の応力が、ガラス物品中にカリウムイオンを交換することによって生じている場合、DOCを測定するために、FSMが使用される。応力が、ガラス物品中にナトリウムイオンを交換することによって生じている場合、DOCを測定するために、SCALPが使用される。ガラス物品中の応力が、ガラス物品中にカリウムイオンとナトリウムイオンの両方を交換することによって生じている場合、DOCはSCALPによって測定される。何故ならば、ナトリウムイオンの交換深さはDOCを表し、カリウムイオンの交換深さは圧縮応力の大きさの変化(圧縮から引張の応力の変化ではない)を表すと考えられるからである;そのようなガラス物品中のカリウムイオンの交換深さは、FSMによって測定される。中央張力またはCTは、最大引張応力であり、SCALPによって測定される。
【0117】
1つ以上の実施の形態において、装飾ガラス構造の層を形成するために使用されるガラス物品は、ガラス物品の厚さt(ここに記載されたような)の割合として記載されるDOCを示すように強化されることがある。例えば、1つ以上の実施の形態において、DOCは、約0.05t以上、約0.1t以上、約0.11t以上、約0.12t以上、約0.13t以上、約0.14t以上、約0.15t以上、約0.16t以上、約0.17t以上、約0.18t以上、約0.19t以上、約0.2t以上、約0.21t以上であることがある。いくつかの実施の形態において、DOCは、約0.08tから0.25t、約0.09tから0.25t、約0.18tから0.25t、約0.11tから0.25t、約0.12tから0.25t、約0.13tから0.25t、約0.14tから0.25t、約0.15tから0.25t、約0.08tから0.24t、約0.08tから0.23t、約0.08tから0.22t、約0.08tから0.21t、約0.08tから0.2t、約0.08tから0.19t、約0.08tから0.18t、約0.08tから0.17t、約0.08tから0.16t、または約0.08tから0.15tの範囲にあることがある。ある場合には、DOCは、約20μm以下であることがある。1つ以上の実施の形態において、DOCは、約40μm以上(例えば、約40μmから約300μm、約50μmから約300μm、約60μmから約300μm、約70μmから約300μm、約80μmから約300μm、約90μmから約300μm、約100μmから約300μm、約110μmから約300μm、約120μmから約300μm、約140μmから約300μm、約150μmから約300μm、約40μmから約290μm、約40μmから約280μm、約40μmから約260μm、約40μmから約250μm、約40μmから約240μm、約40μmから約230μm、約40μmから約220μm、約40μmから約210μm、約40μmから約200μm、約40μmから約180μm、約40μmから約160μm、約40μmから約150μm、約40μmから約140μm、約40μmから約130μm、約40μmから約120μm、約40μmから約110μm、または約40μmから約100μm)であることがある。
【0118】
1つ以上の実施の形態において、装飾ガラス構造の層を形成するために使用されるガラス物品は、約200MPa以上、300MPa以上、400MPa以上、約500MPa以上、約600MPa以上、約700MPa以上、約800MPa以上、約900MPa以上、約930MPa以上、約1000MPa以上、または約1050MPa以上のCS(表面またはガラス物品内の深さに見られることがある)を有することがある。
【0119】
1つ以上の実施の形態において、装飾ガラス構造の層を形成するために使用されるガラス物品は、約20MPa以上、約30MPa以上、約40MPa以上、約45MPa以上、約50MPa以上、約60MPa以上、約70MPa以上、約75MPa以上、約80MPa以上、または約85MPa以上の最大引張応力または中央張力(CT)を有することがある。いくつかの実施の形態において、最大引張応力または中央張力(CT)は、約40MPaから約100MPaの範囲にあることがある。
【0120】
特に明記のない限り、ここに述べられたどの方法も、その工程を特定の順序で行うべきことを必要とすると解釈されることは、決して意図されていない。したがって、方法の請求項が、その工程が従うべき順序を実際に列挙していない場合、または工程が特定の順序に限定されていることが、請求項または説明に他に具体的に述べられていない場合、どの特定の順序も暗示されていることは決して意図されていない。それに加え、名詞は、1つまたは複数の成分または要素を含むことが意図されており、ただ1つを意味すると解釈されることは意図されていない。
【0121】
開示された実施の形態の精神または範囲から逸脱せずに、様々な改変および変更を行えることが、当業者に明白であろう。実施の形態の精神および実体を含む開示された実施の形態の改変、組合せ、部分的組合せおよび変更が当業者に想起されるであろうから、開示された実施の形態は、付随の特許請求の範囲およびその等価物の範囲に全てを含むと解釈されるべきである。
【符号の説明】
【0122】
100 車両表示システム
105 車両ベース
110 ディスプレイ
150 センサ
400 ガラス物品
450 基板
470 第1の主面
480 第2の主面
490 機能性表面層
500 不透明層
520 画像領域
530 周辺領域
540 ディスプレイモジュール
550 エッジ
560 センサ領域
562 複数の除去部分
564、702、704、714、716 除去部分のアレイ
565 最大横寸法
566 第1の方向
568 第2の方向
570 第1の方向における最小エッジ間距離
572 第2の方向における最小エッジ間距離
610 装置
612 レーザ光源
614 台座
616 レーザビーム
618 光学系
620 搬送方向
708 第1の除去部分
710 第2の除去部分
712 第3の除去部分
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6A
図6B
図7
【外国語明細書】