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特開2023-160809自閉症スペクトラム障害および同様に落ち着きのなさ、興奮性、睡眠障害、および潜在的な常同症を伴う他の神経行動障害の治療における使用のためのN-パルミトイルエタノールアミドおよびメラトニン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160809
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】自閉症スペクトラム障害および同様に落ち着きのなさ、興奮性、睡眠障害、および潜在的な常同症を伴う他の神経行動障害の治療における使用のためのN-パルミトイルエタノールアミドおよびメラトニン
(51)【国際特許分類】
   C07C 233/18 20060101AFI20231026BHJP
   A61K 31/164 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231026BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20231026BHJP
   A61K 31/202 20060101ALI20231026BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231026BHJP
   A61P 25/22 20060101ALI20231026BHJP
   A23L 33/115 20160101ALI20231026BHJP
【FI】
C07C233/18
A61K31/164
A61P25/18
A61P43/00 121
A61K31/405
A61K31/202
A61K31/4045
A61P25/20
A61P25/08
A61P25/28
A61P25/22
A23L33/115
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023070154
(22)【出願日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】102022000007952
(32)【優先日】2022-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】515128150
【氏名又は名称】エピテック・グループ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】EPITECH GROUP S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 信彦
(72)【発明者】
【氏名】デッラ ヴァッレ,ラッファエッラ
(72)【発明者】
【氏名】デッラ ヴァッレ,マリア フェデリカ
(72)【発明者】
【氏名】マルコロンゴ,ガブリエーレ
(72)【発明者】
【氏名】ゴミエロ,キアーラ
(72)【発明者】
【氏名】クッツォクレア,サルヴァトーレ
(72)【発明者】
【氏名】カリニャーノ,アントニオ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアーノ,クラウディア
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018MD11
4B018MD18
4B018MD19
4B018ME14
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC13
4C086BC14
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA13
4C086MA23
4C086MA31
4C086MA35
4C086MA37
4C086MA41
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA05
4C086ZA06
4C086ZA15
4C086ZA18
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206AA03
4C206DA05
4C206GA03
4C206GA26
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA04
4C206MA33
4C206MA43
4C206MA51
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA61
4C206NA05
4C206NA10
4C206NA14
4C206ZA05
4C206ZA06
4C206ZA15
4C206ZA18
4C206ZC75
4H006AA03
4H006AB21
4H006BN10
4H006BV22
(57)【要約】
【課題】本発明は、自閉症スペクトラム障害(ASD)および同様に落ち着きのなさ、興奮性、睡眠障害、および潜在的な常同症を伴う他の神経行動障害の治療における、メラトニンまたはその天然前駆体と併用したN-パルミトイルエタノールアミド(PEA)の使用に関する。
【解決手段】特に、本発明は、ASDの治療におけるメラトニンと併用したPEAの使用に関し、ここで、パルミトイルエタノールアミドは、メラトニン、トリプトファン(TRP)または5-ヒドロキシトリプトファン(5H-TRP)と併用して投与され、ここで、投与は、別々、組み合わせ、または同時である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自閉症スペクトラム障害(ASD)の治療における使用のための、パルミトイルエタノールアミドであって、ここで、パルミトイルエタノールアミドは、メラトニンまたはその前駆体であるトリプトファン(TRP)もしくは5-ヒドロキシトリプトファン(5H-TRP)と併用して投与され、ここで、該投与は、別々、組み合わせ、または同時である、使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項2】
パルミトイルエタノールアミドが、体積百分率として定義され、レーザー光散乱法で測定され、10ミクロンを超える、好ましくは20ミクロンを超える最頻値を有する分布曲線で表される粒径分布を有する非微粒子化形態である、請求項1に記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項3】
パルミトイルエタノールアミドが、体積百分率として定義され、レーザー光散乱法で測定され、6ミクロン~10ミクロンの間の最頻値を有する分布曲線で表される粒径分布を有する微粒子化形態である、請求項1に記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項4】
パルミトイルエタノールアミドが、体積百分率として定義され、レーザー光散乱法で測定され、6ミクロン未満および0.5ミクロンを超える最頻値を有する分布曲線で表される粒径分布を有する超微粒子化形態である、請求項1に記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項5】
フラウンホーファー計算アルゴリズムを備えたMalvern Mastersizer 3000機器で測定した上記で定義された粒径分布を有し、少なくとも95体積%、より好ましくは少なくとも99体積%の粒子が、6ミクロン未満の粒径を有する、請求項4に記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項6】
フラウンホーファー計算アルゴリズムを備えたMalvern Mastersizer 3000機器で測定した上記で定義された粒径分布を有し、2~4ミクロンの間の最頻値を有し、100体積%の粒子は10ミクロン未満であり、少なくとも60体積%の粒子は3ミクロン未満である、請求項4に記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項7】
PEAとメラトニンが、少なくとも20:1~5:1、好ましくは少なくとも12:1~8:1の重量比で投与される、請求項1~6のいずれか1つに記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項8】
PEAが超微粒子化形態である場合、PEA/メラトニンの重量比が、少なくとも11:1~8:1の間、または少なくとも10:1~9:1の間であり、PEAが微粒子化形態または非微粒子化形態である場合、PEA/メラトニンの重量比が、少なくとも20:1~10:1、または少なくとも18:1~12:1である、請求項7に記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項9】
併用療法およびPEA/メラトニン組成物の両方において、PEAの最小1日用量が、少なくとも2.5mg/日~120mg/日の間であり、あるいはPEAがum-PEAである場合、um-PEAの最小1日用量が、4mg/日~66mg/日の間であり、またはPEAが非微粒子化PEAまたはm-PEAである場合、最小1日用量が、5mg/日~120mg/日の間であり;およびメラトニンの1日用量が、0.5~6mg/日である、請求項1~8のいずれか1つに記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項10】
PEA/TRPまたはPEA/5H-TRPの重量比が、少なくとも5:1~1:10、または少なくとも3:1~1:6である、請求項1~6のいずれか1つに記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項11】
併用療法およびPEA/TRPまたはPEA/5H-TRP組成物の両方において、PEAの最小1日用量が、少なくとも2.5mg/日~120mg/日の間であり、あるいはPEAがum-PEAである場合、um-PEAの最小1日用量が、4mg/日~66mg/日の間であり、またはPEAが非微粒子化PEAまたはm-PEAである場合、最小1日用量が、5mg/日~120mg/日の間であり;およびPEA/TRPまたはPEA/5H-TRPの1日用量が、30~500mg/日である、請求項10に記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項12】
ドコサヘキサエン酸(DHA)またはDHA中で適切に力価決定された油と併用する、請求項1~11のいずれか1つに記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項13】
PEA/DHAの重量比が、PEAがum-PEAである場合、1:7~1:1、または1:5~1:2であり、またはPEAが非微粒子化PEAまたはm-PEAである場合、1:1~7:1、または2:1~5:1であり、あるいは小児または青年期に投与されるDHAの用量が、700mg/日以下、または500mg/日以下である、請求項12に記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項14】
対象に投与されるPEAの総1日用量が、200~1500mg/日、または400~1200mg/日であり、メラトニンとの併用で、またはメラトニンとの組成物で投与される場合、対象に投与されるメラトニンの1日用量が、0.1mg/日~5mg/日である、請求項1~13のいずれか1つに記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項15】
パルミトイルエタノールアミドと、メラトニン、TRPまたは5H-TRP、および必要に応じてDHAが、医薬製剤または獣医製剤に含まれ、経口、口腔、非経口、直腸、局所または経皮投与用剤形に製剤される、請求項1~14のいずれか1つに記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項16】
パルミトイルエタノールアミドと、メラトニン、TRPまたは5H-TRP、および必要に応じてDHAが、食事療法組成物、食品サプリメント、補完飼料および特殊医療目的食品(FSMP)に含まれる、請求項1~14のいずれか1つに記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項17】
落ち着きのなさ、興奮性、睡眠障害、および潜在的に常同症を伴う神経行動障害が、てんかんを併発している場合を含むがこれらに限定されない、自閉症スペクトラム障害(ASD)および注意欠陥/多動性障害(ADHD)などのヒトおよびペット(イヌおよびネコ)の両方の神経発達障害に関連する、請求項1~16のいずれか1つに記載の使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項18】
パルミトイルエタノールアミドが、メラトニンと併用で、あるいはTRPまたは5H-TRPと併用で投与され、該投与が、別々、組み合わせ、または同時である、落ち着きのなさ、興奮性、睡眠障害、および、潜在的に、不安/恐怖症状態(たとえば、騒音恐怖症、イヌの分離不安など)に関連する常同症、またイヌおよびネコにおける、認知機能障害症候群などの認知症および老人性認知症を伴う神経行動障害の治療における使用のためのパルミトイルエタノールアミド。
【請求項19】
パルミトイルエタノールアミド、好ましくは超微粒子化パルミトイルエタノールアミド、メラトニンまたはTRPまたは5H-TRP、必要に応じてDHAおよび薬学的に許容される賦形剤を含むか、またはからなる組成物であって、PEAが超微粒子化形態である場合、PEA/メラトニンの重量比が、少なくとも11:1~8:1の間、または少なくとも10:1~9:1の間であり、PEAが微粒子化形態または非微粒子化形態である場合、PEA/メラトニンの重量比が、少なくとも20:1~10:1、または少なくとも18:1~12:1であり、あるいはPEA/TRPまたはPEA/5H-TRPの重量比が、少なくとも5:1~1:10、または少なくとも3:1~1:6である、組成物。
【請求項20】
請求項19に記載の組成物を含む、医薬製剤または獣医製剤、食事療法組成物、食品サプリメント、補完飼料および特殊医療目的食品。
【請求項21】
PEAおよびメラトニンを含む、請求項20に記載の製剤であって、PEAが200~1500mgであり、メラトニンが0.1~5mgである、製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自閉症スペクトラム障害(ASD)および同様に落ち着きのなさ、興奮性、睡眠障害、および潜在的な常同症を伴う他の神経行動障害の治療における、メラトニンまたはその天然前駆体と併用したN-パルミトイルエタノールアミド(PEA)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ASDは、社会的相互作用、言語的および非言語的コミュニケーション、活動、および興味の機能障害によって発生する多因子病因の神経発達障害である(米国精神医学会による定義)。症状は特定の出来事の後、生後3年以内に始まり、さまざまな障害領域に適切に介入できるようにするために早期診断が非常に重要である。
【0003】
常同症は、自己刺激行動および自傷行動、興奮、刺激、ストレス、不安、退屈、疲労、社会的孤立などが含まれるASDの主な診断特徴の1つである。
【0004】
自閉症スペクトラム障害に関連する他の神経行動障害は、落ち着きのなさ、興奮性、および睡眠障害である。
【0005】
原因は不明であるが、ASDの出現は、抑制性シナプスと興奮性シナプスの不均衡、ならびに非神経細胞の活性化と病的増殖の原因となる神経炎症によっても引き起こされ、自閉症患者の脳および脳脊髄液にサイトカイン(IL-1α、IL-1β、IL-6、TNF-α)および炎症誘発性ケモカイン(MCP-1、RANTES)を放出することにより、神経炎症過程を悪化させる。
【0006】
睡眠は、脳の発達と成熟に不可欠な要件の1つである。ASDと睡眠障害のある子供は、注意、記憶の固定、気分の調整、および社会的交流などの認知機能の発達遅延が悪化する。
【0007】
さらに、髄鞘形成の変化の関与が、自閉症の実験モデルとヒトのASD患者の両方で近年強調されている。松果体(または骨端)によって天然に生成されるホルモンであるメラトニンの投与は、概日リズムを調節し、睡眠障害、常同的な反復行動、および注意欠陥を軽減するのに役立つことが知られている。
【0008】
内因性分子PEAは、神経炎症の天然の調節機構において重要な役割を果たすことが知られている。前臨床および臨床設定では、PEAの投与は、特に超微粒子化形態(um-PEA)の場合、神経炎症の正常化活性を決定することができる;特に、um-PEAは、類似の自閉症表現型を持つマウスの一般的な神経炎症状態を著しく抑制し、炎症誘発性の海馬ならびに血清サイトカインIL-6、IL-1bおよびTNF-アルファの発現を減少させ、変化した行動状態を調整することが実証されている。臨床的には、自閉症児をum-PEA 600mg/日で3か月間治療すると、悪影響なく攻撃性、認知的および行動的スキル、ならびに意思疎通が改善される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、ASD治療法、特に同様に落ち着きのなさ、興奮性、睡眠障害を伴う神経行動障害に対して、効果的で非侵襲的かつ安全で、可能であれば高用量の活性物質の投与を必要としない治療法を提供する必要がある。実際、そのような治療法が主に小児に特化されることを考慮すると、反復投与および/または大量の剤形(たとえば、高用量の有効成分を経口投与するための大きな錠剤)は、患者による受け入れが難しいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明の概略
本発明は、PEAが、好ましくは超微粒子化された形態で使用される場合、メラトニンと併用して投与される場合、自閉症患者の行動パラメータ、特に、落ち着きのなさ、興奮性、睡眠障害および常同症に関連するパラメータの改善に相乗的に関連する効果を発揮するという驚くべき発見に由来する。
【0011】
したがって、本発明は、ASDの治療に使用するためのPEAに関するものであり、PEAはメラトニンと併用して、別々に、組み合わせて、または同時に投与される。
【0012】
本発明はさらに、特にASDの治療に使用することができる、PEAおよびメラトニンを含む組成物に関する。
【0013】
これらおよびさらなる目的は、添付の特許請求の範囲に概説されているように、以下の説明で説明される。説明の十分性を評価するには、特許請求の範囲のテキストが説明に含まれているとみなされる必要がある。
【0014】
本発明のさらなる特徴および利点は、非限定的な例として挙げられる以下の好ましい実施形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、超微粒子化形態のパルミトイルエタノールアミド (um-PEA) の粒径分布のグラフを示す。
図2図2は、別の活性物質と比較した、本発明による治療後の社交性指数(マウスが新しい仲間のいないエリアといるエリアを探索するのに費やした時間の比)のグラフを示す(***p < 0.001 vs. Sham;#p < 0.05 vs. VPA;##p < 0.01 vs. VPA;###p < 0.001 vs. VPA)。
図3図3は以下のグラフを示す:A)本発明による治療を用いて、見慣れた物体に関して新しい物体(下のヒストグラムAではそれぞれ「物体」と「ストレンジャー」として示されている)を探索する時間を、um-PEA単独(9mg/kg)およびメラトニン単独(1mg/kgおよび10mg/kg)と比較した場合;B)本発明による治療による物体の総探索時間を、um-PEA単独(9mg/kg)およびメラトニン単独(1mg/kgおよび10mg/kg)と比較した(***p < 0.001 vs. Sham;##p < 0.01 vs. VPA;###p < 0.001 vs. VPA)。
図4図4は、μm-PEA単独(9mg/kg)およびメラトニン単独(1mg/kgおよび10mg/kg)と比較した、本発明による治療に対する反応としての常同的な反復行動のグラフを示す;常同的な反復行動は、自己グルーミングのテスト(ヒストグラムA)と、回転および後ずさりなどの不自然な反復動作の分析(ヒストグラムB)を使用して測定される(***p < 0.001 vs. Sham;#p < 0.05 vs. VPA;##p < 0.01 vs. VPA;###p < 0.001 vs. VPA)。
図5図5は、μm-PEA単独(9mg/kg)およびメラトニン単独(1mg/kgおよび10mg/kg)と比較した、本発明による治療による高架式十字迷路(EPM)のオープンアーム内で費やされる時間の増加のグラフを示す(***p < 0.001 vs. Sham;##p < 0.01 vs. VPA;###p < 0.001 vs. VPA)。
図6図6は、痛みに対する感受性(ホットプレート)に関するグラフを示し、VPAによって誘発される潜伏期間の増加が、別の活性物質に関する場合よりも、本発明による治療によって打ち消される程度が高い(***p < 0.001 vs. Sham;##p < 0.01 vs. VPA;###p < 0.001 vs. VPA)。
図7図7は、um-PEA単独(9mg/kg)およびメラトニン単独(1mg/kgおよび10mg/kg)と比較した、本発明による治療による海馬のCA1およびCA3領域における錐体細胞の神経変性の組織学的スコアの減少のグラフを示す(***p < 0.001 vs. Sham;#p < 0.05 vs. VPA;###p < 0.001 vs. VPA)。
図8図8は、um-PEA単独(9mg/kg)およびメラトニン単独(1mg/kgおよび10mg/kg)と比較した、本発明による治療による小脳におけるプルキンエ細胞密度の増加のグラフを示す(***p < 0.001 vs. Sham;##p < 0.01 vs. VPA;###p < 0.001 vs. VPA)。
図9図9は、um-PEA単独(9mg/kg)およびメラトニン単独(1mg/kgおよび10mg/kg)と比較した、本発明による治療によるミエリン鞘の再髄鞘形成のグラフを示す(***p < 0.001 vs. Sham;##p < 0.01 vs. VPA;###p < 0.001 vs. VPA)。
図10図10は、それぞれ特異的マーカーGFAPおよびIba-1のより低い発現によって実証される、海馬および小脳レベルでのVPA誘発性アストログリオーシスおよび小膠細胞症の本発明の組成物による減少に関連するグラフを示す(***p < 0.001 vs. Sham;###p < 0.001 vs. VPA)。
図11図11は、小脳および海馬レベルでの炎症誘発性核因子(NF-κB)およびその「阻害剤」(IkB-α)に対するVPAの効果に対抗する本発明の組成物の能力に関するグラフを示す(***p < 0.001 vs. Sham;###p < 0.001 vs. VPA)。
図12図12は、VPAによって誘発される小脳および海馬の酸化ストレスに対抗する本発明の組成物の能力に関するグラフを示す;マロンジアルデヒド(MDA)(ヒストグラムA、B)および一酸化窒素(NO)(ヒストグラムC、D)のレベルとして測定される脂質過酸化の大幅な減少が認められ、ならびにカタラーゼ抗酸化酵素(CAT)(ヒストグラムEおよびF)およびスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)(ヒストグラムGおよびH)の活性、ならびに還元型グルタチオン(GSH)のレベル(ヒストグラムIおよびJ)の増加が認められる(**p < 0.01 vs. Sham;***p < 0.001 vs. Sham;##p < 0.01 vs. VPA;###p < 0.001 vs. VPA)。
図13図13は、アポトーシス促進因子Baxの発現減少および抗アポトーシス因子Bcl-2の発現増加によって実証される、小脳および海馬レベルでのアポトーシス細胞死の本発明の組成物による対比に関連するグラフを示す(***p < 0.001 vs. Sham;###p < 0.001 vs. VPA)。
図14図14は、本発明の組成物によるVPA誘発性のper1、per2、およびnpas2発現の小脳増大の対比に関するグラフを示す(***p < 0.001 vs. Sham;###p < 0.001 vs. VPA)。
図15図15は、対照マウス(C57)と比較した、BTBRマウスにおいて発現される神経行動変化における、より具体的には、社会性相互作用テスト(A)と3室社会性相互作用テスト(B)で測定される社会性、それぞれガラス玉覆い隠しテスト(C)と自己グルーミングテスト(D)で測定される強迫的行動および常同的反復行動における本発明の組成物の効果に関するグラフを示す。**p < 0.01 vs. C57 VEH;****p < 0.0001 vs. C57 VEH;#p < 0.05 vs. BTBR VEH;°°p < 0.01 vs. 空側;°°°p < 0.001 vs. 空側;°°°°p < 0.0001 vs. 空側。
図16図16は、対照マウス(C57)と比較した、神経行動変化を有するマウス(BTBR)におけるMDAレベルとして測定した、本発明の組成物による海馬(A)および小脳(B)の酸化ストレスの増加の対比に関するグラフを示す。*p < 0.05 vs. CTR;#p < 0.05 vs. VEH;##p < 0.01 vs. VEH。
図17図17は、本発明の組成物による、対照(C57)に対するBTBRマウスにおけるper1およびnpas2発現の小脳増加の対比に関するグラフを示す。**p < 0.01 vs. CTR;#p < 0.05 vs. VEH。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な記載
本発明は、第1の態様において、ASDの治療に使用するためのパルミトイルエタノールアミド(PEA)に関し、PEAはメラトニンまたはその天然前駆体と併用して投与され、ここで、投与は、別々、組み合わせて、または同時である。
【0017】
「併用して(in association)」という用語は、併用療法(combination therapy)と、PEAおよびメラトニンまたはその天然前駆体が単一の剤形に含まれる療法の両方を意味する。
【0018】
「別々の」投与とは、PEAとメラトニンまたはその天然前駆体を別々の剤形で投与し、1分~数時間の範囲の異なる時間、たとえば、8時間、12時間または14時間の間隔で投与することを意味する。
【0019】
「組み合わせた」投与とは、PEAとメラトニンまたはその天然前駆体を単一の剤形、すなわち、医薬組成物または獣医学用組成物または製剤、サプリメント、食事療法組成物、または特別な医療目的のための食品に含めて投与することを意味する。
【0020】
「同時」投与とは、PEAとメラトニンまたはその天然前駆体の別々の剤形での投与を意味するが、同時に、すなわちPEAとメラトニンの投与の間の分離時間、またはその逆が、1分を超えない投与を意味する。
【0021】
PEAは、非微粒子化形態、微粒子化形態または超微粒子化形態など、任意の形態で投与することができる。
【0022】
「非微粒子化形態のパルミトイルエタノールアミド(またはPEA)」という用語は、体積百分率として定義され、レーザー光散乱法で測定され、10ミクロンを超える、好ましくは20ミクロンを超える最頻値を有する分布曲線で表される粒径分布を有するPEAを意味する。
【0023】
「微粒子化形態のパルミトイルエタノールアミド(またはPEA)」という用語は、体積百分率として定義され、レーザー光散乱法で測定され、6ミクロンから10ミクロンの間の最頻値を有する分布曲線で表される粒径分布を有するPEAを意味する。
【0024】
「超微粒子化形態のパルミトイルエタノールアミド(またはPEA)」という用語は、体積百分率として定義され、レーザー光散乱法で測定され、6ミクロン未満および0.5ミクロンを超える最頻値を有する分布曲線で表される粒径分布を有するPEAを意味する。
【0025】
好ましくは、PEAは、超微粒子化された形態である。
【0026】
1つの実施形態では、超微粒子化形態のPEAは、フラウンホーファー計算アルゴリズムを備えたMalvern Mastersizer 3000機器で測定した上記で定義された粒径分布を有し、少なくとも95体積%、より好ましくは少なくとも99体積%の粒子が、6ミクロン未満の粒径を有する。
【0027】
特に好ましい実施形態では、超微粒子化形態のPEAは、フラウンホーファー計算アルゴリズムを備えたMalvern Mastersizer 3000装置で測定した上記で定義された粒径分布を有し、2~4ミクロンの間の最頻値を有し、100体積%の粒子は10ミクロン未満であり、少なくとも60体積%の粒子は3ミクロン未満である。
【0028】
微粒子化は、粒子を粉砕するために機械的エネルギーの代わりに運動エネルギーを利用できる圧縮空気または窒素ジェットによるスパイラル技術で動作する流体ジェットシステム(たとえば、Jetmill(登録商標)モデルシステム)で実行することができる。このような装置は従来のものであるため、以下の特徴に関連する場合を除いて、これ以上は説明しない:
- 微粒子化チャンバーの内径は約300mm;
- 流体ジェット圧力10-12bar;
- 製品供給9-12kg/h。
【0029】
メラトニンは、以下の構造式を有する:
【化1】
メラトニン(化学的には、N-アセチル-5-メトキシトリプタミン)は、脳の基部にある松果体(または骨端)で生成されるホルモンである。視床下部に作用し、睡眠-覚醒サイクルを調節する機能がある。ヒトに加えて、他の種の動物、植物(フィトメラトニン)および微生物によっても生成される。低用量メラトニンは睡眠-覚醒サイクル障害の治療に定期的に使用される。
【0030】
メラトニンの「天然前駆体」とは、トリプトファン(TRP)と5-ヒドロキシトリプトファン(5H-TRP)を意味し、それは、セロトニンを生成し、セロトニンがメラトニンに変換される。
【0031】
TRPから5H-TRPおよびセロトニンへの生合成図は次のとおりである:
【化2】
【0032】
TRPから5H-TRPへの変換は、トリプトファンヒドロキシラーゼによって行われ、その後の5H-TRPからセロトニンへの変換は芳香族L-アミノ酸脱炭酸酵素で起こる。
【0033】
メラトニンは、N-アシルトランスフェラーゼおよびアセチルセロトニンO-メチルトランスフェラーゼを介してセロトニンによって最終的に合成される。
【0034】
本発明のさらなる目的は、パルミトイルエタノールアミドおよび上記で定義したメラトニンまたはその天然前駆体を含む組成物である。好ましくは、本発明の組成物は、PEA/メラトニンと薬学的に許容される賦形剤との乾燥混合物からなる。より好ましくは、PEAは、微粒子化(m-PEA)または超微粒子化(um-PEA)の形態であり、さらにより好ましくは、パルミトイルエタノールアミドはum-PEAである。
【0035】
別々に投与する場合でも、単一の製剤として組み合わせて投与する場合でも、PEAとメラトニンは少なくとも20:1~5:1、好ましくは少なくとも12:1~8:1の重量比で投与される。より具体的には、PEAが超微粒子化形態である場合、PEA/メラトニンの重量比は、好ましくは少なくとも11:1~8:1の間、より好ましくは少なくとも10:1~9:1の間である。PEAが微粒子化形態または非微粒子化形態である場合、PEA/メラトニンの重量比は、好ましくは少なくとも20:1~10:1、より好ましくは少なくとも18:1~12:1である。
【0036】
重要な相乗効果が強調されているこのような重量比に基づいて、対象において通常安全であると考えられるメラトニンの用量が0.5~6mg/日であることを考慮すると、PEAの最小1日用量は、併用療法およびPEA/メラトニン組成物の両方において、少なくとも2.5mg/日~120mg/日の間になる。um-PEAを使用する場合、um-PEAの最小1日用量は、4mg/日~66mg/日の間であることが好ましく、非微粒子化PEAまたはm-PEAを使用する場合の最小1日用量は、5mg/日~120mg/日の間である。
【0037】
このような用量は対象によって異なり、特に、対象が小児、成人、または高齢者の場合には異なる。実際、このような場合、安全と考えられるメラトニンの1日用量は、小児で1~3mg/日、成人で0.5~5mg/日、高齢者で0.1~2mg/日であり、したがって、これに基づいてPEAの最小1日用量を計算する必要がある。
【0038】
前駆体TRPおよび5H-TRPがメラトニンの代わりに使用される場合、重量比PEA/TRPまたはPEA/5H-TRPは、好ましくは少なくとも5:1~1:10、より好ましくは少なくとも3:1~1:6である。
【0039】
TRPまたは5H-TRPの1日用量は、30~500mg/日であることが好ましく、これにより、上記の重量比に基づいてPEAの最小1日用量を計算することも可能である。
【0040】
文献から広く知られているように、PEAは一般に抗炎症作用があり、中枢性と末梢性の両方で神経炎症に対抗し、そのような分子の毒性が低いことを考慮すると、自閉症スペクトラム障害に対する相乗効果を得るのに十分である、上記の用量よりも高い用量のPEAを使用することが可能になり得る。
【0041】
メラトニンまたはその天然前駆体との相乗的PEAの量に関する追加のPEAは、メラトニン、TRPまたは5H-TRPと組み合わせて使用されるものとは異なる形態で存在することもできる。たとえば、後者がum-PEAの形態である場合、追加のPEAは、um-PEA、m-PEAまたは非微粒子化PEAのいずれかであり得、またはその逆でもよい。
【0042】
したがって、メラトニンもしくはその天然前駆体との併用療法の形態で、またはメラトニンもしくはその天然前駆体との前述の組成物で対象に投与されるPEAの総1日用量は、200~1500mg/日、好ましくは400~1200mg/日であり得る。
【0043】
このような1日用量は、たとえば、1日1回から4回までの投与単位に分割することができる。用量は、選択された投与経路によっても異なる。患者の年齢および体重、また、治療対象の臨床症状の重症度に応じて、用量を継続的に変更する必要がある可能性があることを考慮すべきである。正確な用量と投与経路は、最終的には主治医の裁量によって決まる。
【0044】
特定の実施形態では、本発明は、PEA、メラトニンまたはその天然前駆体と、ドコサヘキサエン酸(DHA)またはDHA中で適切に力価決定された油との併用に関し、ここで、PEA、メラトニンおよびその天然前駆体は、上で定義したとおりである。
【0045】
DHAはセルボン酸とも呼ばれ、オメガ3またはPUFA n-3脂肪酸である。海洋冷水魚にはDHAが豊富に含まれている。冷たい海水に生息する魚や複雑な生物に含まれるDHAのほとんどは、光合成藻類に由来する。DHAは、また、微細藻類であるシゾキトリウム属の微生物であるクリプテコディニウム・コーニーによって商業的に生産されている。微細藻類を利用して生産されるDHAは、植物由来である。
【0046】
この場合も、別々、組み合わせ、または同時投与が可能であり、PEA、メラトニンまたはその天然前駆体とDHAの三成分乾燥混合物を含む組成物を利用可能にすることができ、ここで、PEA/メラトニン、PEA/TRPおよびPEA/5H-TRPの重量比は上記で定義したとおりであり、PEAがum-PEAである場合、PEA/DHAの重量比は、1:7~1:1、好ましくは1:5~1:2であり、PEAが非微粒子化PEAまたはm-PEAである場合、1:1~7:1、より好ましくは2:1~5:1である。
【0047】
好ましくは、小児または青年期の患者に投与されるDHAの用量は、700mg/日以下、より好ましくは500mg/日以下である。
【0048】
本発明の目的のために、PEA単独、メラトニンもしくはその天然前駆体単独、またはPEAおよびメラトニンもしくはその天然前駆体を含有する組成物を、必要に応じてDHAと組み合わせて、医薬製剤または獣医製剤に含めることができ、経口、口腔、非経口、直腸、局所または経皮投与用剤形に製剤することができる。
【0049】
経口投与の場合、本発明の化合物は、たとえば、結合剤(たとえば、アルファ化コーンスターチ、ポリビニルピロリドンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース);充填剤(たとえば、乳糖、微結晶セルロースまたはリン酸水素カルシウム);滑沢剤(たとえば、ステアリン酸マグネシウム、タルクまたはシリカ);崩壊剤(たとえば、ジャガイモデンプンまたはデンプングリコール酸ナトリウム);または阻害剤(たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム)などの薬学的に許容される賦形剤を用いて従来の方法で調製された、錠剤またはハードまたはソフトカプセルの形態で見出すことができる。錠剤は、当技術分野で周知の方法によってコーティングすることができる。経口投与用の液体製剤は、たとえば、溶液、シロップまたは懸濁液の形態であってもよく、または使用前に水または他の適切な媒体で再構成される凍結乾燥または顆粒製品であってもよい。このような液体製剤は、懸濁剤(たとえば、ソルビトールシロップ、セルロース誘導体、または食用硬化油脂);乳化剤(たとえば、レシチンまたはアカシア);非水性ビヒクル(たとえば、アーモンド油、油性エステル、エチルアルコールまたは分別植物油);および保存剤(たとえば、メチル-またはプロピル-p-ヒドロキシベンゾエート、ソルビン酸、安息香酸またはそれらの塩)のような薬学的に許容される添加剤を用いて従来の方法により調製することができる。調製物には、香味料、着色料、および甘味料を都合よく含めることもできる。
【0050】
経口投与用の製剤は、活性成分の制御放出を可能にするために適切に製剤することができる。
【0051】
口腔投与の場合、本発明の化合物は、口腔粘膜レベルでの吸収に適した従来の方法で製剤化された錠剤または丸剤の形態とすることができる。典型的な口腔製剤は、舌下投与用の錠剤である。
【0052】
本発明の化合物は、注射による非経口投与用に製剤することができる。注射製剤は、保存剤を添加したバイアルなどで単回投与として提供することができる。組成物は、油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液、またはエマルジョンなどの形態で現れることができ、懸濁液、安定剤および/または分散剤などの製剤の作用剤を含むことができる。あるいは、有効成分または有効成分の混合物は、使用前に適切なビヒクル、たとえば、滅菌水で再構成される粉末の形態で見出すこともできる。
【0053】
本発明の化合物は、たとえば、ココアバターまたは他のグリセリドなどの一般的な坐剤の基本成分を含む、坐剤または停留浣腸などの直腸製剤に従って製剤することもできる。
【0054】
上述の製剤に加えて、本発明の化合物は、デポ製剤として製剤することもできる。このような長時間作用型製剤は、インプラント(たとえば、皮下、経皮または筋肉内)または筋肉内注射によって投与することができる。したがって、たとえば、組成物は、適切なポリマーまたは疎水性材料(たとえば、適切な油中のエマルジョンの形態)、またはイオン交換樹脂、または最小限に溶解する誘導体を用いて製剤することができる。
【0055】
本発明の化合物または組成物は、経口スプレーまたは鼻スプレーの形態で投与することもできる。
【0056】
本発明はさらに、ASDの治療に使用するための、PEA、好ましくは超微粒子化PEA、およびメラトニンを含む食事療法組成物、食品サプリメント、補完飼料および特殊医療目的食品(FSMP)に関する。この場合、メラトニンの1日用量は、1mg/日を超えてはならない。
【0057】
「特別な医療目的の食品」という用語は、規則(EU)2016/128 に従って認可された製品を意味する。このような用語は、医学的管理下で投与される製品を示し、したがって、そのようなFSMPは医薬品と同化される。
【0058】
本発明による製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences Handbook、Mack Pub. Co.、N.Y., USA、17th edition、1985 o in Remington、The Science and Practice of Pharmacy、Edited by Allen、Loyd V.、Jr、第22版、2012または後続の版に記載されているような従来の方法に従って調製することができる。
【実施例0059】
実験セクション
微粒子化手順
PEAは、前述のように微粉化した。
超微粒子化は、圧縮空気ジェットで動作する流体ジェットシステム(特に、Jetmill(登録商標)モデルシステム)「スパイラル技術」で行われた。
【0060】
最適微粒子化条件:
- 微粉化チャンバーの内径 300mm;
- 流体ジェット圧力 8bar;
- 製品供給量 9~12kg/h。
【0061】
粒径分布の測定
粒径分布の測定は、1分間の超音波処理後、湿ったサンプルに対して行われた。
LALLS(低角度レーザー光散乱)技術とフラウンホーファー計算アルゴリズムで動作するMalvern Mastersizer 3000機器が使用された。
粒径分布グラフを図1に示す。
【0062】
生物学的実験
a. VPAマウスにおけるPRA-umとメラトニンの混合物
PEA-umとメラトニンの組み合わせの相乗効果を評価するために、バルプロ酸ナトリウム(VPA)の形態でバルプロ酸を単回注射することによって自閉症の表現型を誘発したマウスにum-PEAとメラトニンの混合物(約10:1の比率)を10mg/kgの用量で2週間経口投与(胃管)することにより実験テストを実施した。
【0063】
さらに、ASDタイプの神経行動障害の動物モデルである遺伝子改変BTBR T+tf/J (BTBR)マウスに経口投与されたPEA-メラトニン-DHAの組み合わせの相乗効果を調べる実験テストを実施した。
【0064】
最初の実験では、自由に餌を与えられ、睡眠/覚醒サイクルが制御されたケージに収容された健康な雄の C57/BL6 マウスが使用された。実験を開始する前に、イタリア保健省(イタリア立法 2014/26)および欧州指令(EU指令 2010/63)によって、ならびにARRIVEガイドラインによって承認された実験動物のケアと福祉の原則に準拠したすべての実験手順とプロトコルを考慮して、動物を1週間の順応期間に付した。
【0065】
類似の自閉症表現型を誘導するために、14日齢の動物を、生理食塩水100μl中の濃度400mg/kgのVPAを単回皮下(s.c.)投与して化学処理した。
【0066】
動物を無作為にそれぞれ20匹ずつの6グループに分け、生後15日目から開始して、1.5%カルボキシメチルセルロース(CMC)(分子を懸濁させるビヒクル)、メラトニン(1mg/kgおよび10mg/kg)、um-PEA(9mg/kgおよびum-PEA/メラトニン(10:1の比率で10mg/kg、事前に乾燥混合)を毎日14日間経口投与した:
グループ1:VPA皮下投与を行わず、CMC1.5%、メラトニン(1および10mg/kg)、um-PEA(9mg/kg)およびum-PEA/メラトニン10mg/kg(10:1の比率で10mg/kg、事前に乾燥混合)で処置した。さまざまなシャムグループ間で有意差が検出されなかったため、分析ではシャム+ビヒクルグループのみを考慮した(シャム);
グループ2:マウスにVPAを皮下投与し、1.5% CMC(VPA)で処置した;
グループ3:マウスにVPAを皮下投与し、1.5% CMCに懸濁したメラトニン(1mg/kg)で処置した(メラトニン1mg/kg);
グループ4:マウスにVPAを皮下投与し、1.5% CMCに懸濁したメラトニン(10mg/kg)で処置した(メラトニン10mg/kg);
グループ5:マウスにVPAを皮下投与し、1.5% CMCに懸濁したum-PEA(9mg/kg)で処置した(um-PEA 9mg/kg);
グループ6:マウスにVPAを皮下投与し、1.5% CMCに懸濁したum-PEA/メラトニン(10mg/kg、10:1の比率で、事前に乾燥混合)で処置した。
【0067】
b. BTBRマウスにおけるPEA-um、メラトニンおよびDHAの混合物
PEA-um、メラトニンおよびDHAの組み合わせの相乗効果を確認するために、神経行動障害の研究に有用な別の動物モデル、より正確にはBTBRマウスを使用して2回目の実験を行なった。これらの動物は遺伝的に脳梁を欠いており、海馬交連が著しく減少している。幼児期に匹敵する期間を経て、動物は行動障害、社会的相互作用の減少、遊びの表現の変化、探索行動の減少、異常な発声、および不安を発症する。
【0068】
BTBRマウスを8匹ずつ4つのグループに無作為に分け(コントロールとして使用した健康なC57マウスのグループを含む)、生後4か月から開始して、以下の処置グループに従って10日間連続して毎日経口処置した:
I.1.5%カルボキシメチルセルロース、CMC(CTR)で処置したC57マウス;
II.1.5% CMC(VEH)で処置した BTBR マウス;
III.1.5% CMCに再懸濁したメラトニン0.1mg/kg(Mel)で処置したBTBRマウス;
IV.1.5%CMCに再懸濁したPEA-um 1mg/kg、DHA 5mg/kgおよびメラトニン0.1mg/kg(PEA+DHA+Mel)の組み合わせで処置したBTBRマウス。
【0069】
動物を次のような行動テストに付した:
- 社会的相互作用テストは、3チャンバー社会テスト(図2および図15A、B)とも呼ばれ、i)動物と未知のマウスとの相互作用時間、およびii)社交性指数(マウスが新しい仲間なしで、または新しい仲間と一緒にエリアを探索することによって費やした時間間の比率)を評価する。このようなテストは、 Crawley、J.N. Designing mouse behavioral tasks relevant to autistic-like behaviors. Ment Retard Dev Disabil Res Rev 2004、10、248-258、doi:10.1002/mrdd.20039に記載のように実施された。要するに、中央の開口部を介して互いにコミュニケーションを取る3つのチャンバーで形成された活動領域内にマウスを5分間配置した。この期間中、自発運動および装置のいずれかのアームの可能性がある優先傾向を評価するために、異なるチャンバー内で費やした距離(cm)と時間(秒)を推定した。この適応期間の後、動物を中央のチャンバーに閉じ込め、小さな金属製のケージに入れた未知のマウスを、2つの外側のチャンバーのうちの1つに置いた。同一の空の金属ケージを残りの空きチャンバーに配置した。テストのこの段階では、動物がi)部屋およびii)見慣れないマウスを探索するのに費やした時間などのパラメータを検出した。
【0070】
- 動物が見慣れた物体に対して新しい物体を探索するのに費やした時間を計算することによって、認知と認識記憶を検査するための新しい物体認識テスト(Novel Object Recognition Test)またはNORテスト(図3)。このようなテストは、Lindsay M Lueptow 、Novel Object Recognition Test for the Investigation of Learning and Memory in Mice J Vis Exp. 2017 Aug 30;(126):55718に記載のように実施された。簡単に言うと、テストの前日に、各マウスに活動領域を5分間探索させた。次の日、90分の間隔で互いに異なる2つのテスト(T1とT2)を1回のセッションで実施した。馴化テスト(T1)では、各動物を活動領域に配置し、2つの同一の物体を装置の反対側に配置した。馴化セッションは、動物が両方の物体を探索するまで続いた。探索時間は、マウスが2cm未満の距離で物体を直接見て匂いを嗅いだ瞬間からカウントされた。90分の間隔の後、物体認識テスト(T2)を実施した:各動物を活動領域に再配置し、見慣れた物体の1つを新しい物体に置き換えた。この段階では、動物が見慣れたオブジェクトを探索し、新しいオブジェクトを獲得するのに費やした時間が得られた。
【0071】
- 反復行動(自己グルーミングテスト)(図4Aおよび図15D)および非定型運動常同症(円を描いて歩く、および後ずさり、図4B)。最初のテストは、Pellow S.、Chopin P.、File S.E.、Briley M. (1985)、Validation of open:closed arm entries in an elevated plus-maze as a measure of anxiety in the rat、“J. Neurosci. Methods” 14、pp. 149-67に記載のように実施された。動物を空のプラスチックケージに20分間配置した。10分間の馴化期間の後、頭、体、陰部、尻尾を洗う、前足と後足を舐めるという繰り返しの姿勢を分析することができる特定のソフトウェアを使用して、自己グルーミングに費やした時間を記録した。非定型運動常同症(後ずざり、および円を描いて歩く)の分析は、代わりに専門の検査技師によって観察および記録された。
【0072】
- 動物の不安を測定するための高架式十字迷路(EPM)(図5)。この器具は、2つのオープンアームと2つのクローズドアームを備えた十字型の装置で構成され、地面から約40~70cm持ち上げられる。このテストは、開けた空間に対する嫌悪感と新しい環境を探索したいという本能の間のげっ歯類の葛藤を利用する。テストは、動物を迷路の中心に置き、装置内を自由に探索できるように5分間放置することから始まり、その間、装置の上に設置されたカメラによってセッションがビデオ撮影される。動物の行動は専用ソフトウェアを使用して分析され、それによって4つのアームと中央プラットフォームで費やした時間を定量化することができる。動物の不安状態を示す行動は、オープンアームとクローズドアームでの訪問の潜時、頻度、および持続時間である。オープンアームおよび中央プラットフォーム上で費やす時間が短ければ短いほど、動物の不安は大きい。
【0073】
- 強迫/強迫(obsessive/compulsive)行動を研究するためのガラス玉覆い隠し(図15C)。簡単に説明すると、5cmのきれいなわらで満たされたプレキシガラスケージ内の格子に20個のガラス玉を置いた。各マウスをケージに入れ、15分間のセッションの後、静かに移動させて、覆い隠されたガラス玉の数を数えた。穴を掘るなどの行動の過剰な繰り返しは、新奇性恐怖症および/または強迫様の行動表現型の発現に相当するため、覆い隠されたガラス玉の数が多いほど、強迫性神経行動変化はより重篤になる。
【0074】
- 痛みに対する感受性を測定する熱侵害受容テスト(図6)。このテストでは、動物が熱刺激に対する反応(熱い表面から足を引っ込める)を示すまでにかかる時間を測定することができる。詳しくは、動物は、透明な壁で形成され、上部が開いており、床が恒温ホットプレートに対応し、温度が51.5℃±1℃に維持されたチャンバー内に置かれる。痛みを伴う刺激の知覚は、足を熱源から遠ざけようとする試みによって表される。痛みは、動物がプレートの上に置かれる瞬間から、痛みの知覚を示す行動(動物が飛び跳ねたり、足をなめたりする)が発生する瞬間までの経過時間として測定される (Hargreaves K、Dubner R、Brown F、Flores C、Joris、A new and sensitive method for measuring thermal nociception in cutaneous hyperalgesia、J. Pain. 1988 Jan;32(1):77-88;doi:10.1016/0304-3959(88)90026-7)。
【0075】
行動テストおよび治療の終了後、動物は脳サンプリングのために屠殺され、直ちにホルマリンで固定され、次にヘマトキシリンおよびエオシン(E/E)で染色された矢状切片(7μm)に切断された。
【0076】
プルキンエ細胞層(pcs)の密度および海馬のCA1およびCA3領域の神経損傷における変化を、0~3(0 = 正常、1 = 一部損傷ニューロン (<30%)、2 = 多くの損傷ニューロン (30~70%)、および 3 = 大部分の損傷ニューロン (> 70%))のスコアへの帰属によって研究した(図7~8)。すべての組織学的研究はブラインドで行われた。
【0077】
タンパク質分析(ウェスタンブロッティング)を、一次抗体である抗GFAP(1:500、Santa Cruz Biotechnology)、抗Iba1(1:500、Santa Cruz Biotechnology)、抗IkB-α(1:500、Santa Cruz Biotechnology)、抗NF-kB(1:500、Santa Cruz Biotechnology)、抗Bax(1:1000、Santa Cruz Biotechnology)、抗Bcl-2(1:1000、Santa Cruz Biotechnology)および抗β-アクチン(1:5000、Santa Cruz Biotechnology)を使用して、海馬および小脳組織に対して実行した。タンパク質発現を、デンシトメトリー(BIORAD ChemiDoc(商標) XRS+ソフトウェア)によって定量化し、β-アクチン発現レベルに正規化した。
【0078】
免疫組織化学(IHC)分析を、睡眠の恒常性調節、概日リズムの生成、記憶の固定に関与するタンパク質である一次抗体、抗Period(per)-1、抗per2および抗npas2、に対する陽性細胞の数を評価するために、VPA動物由来の組織の小脳レベルで実施した。
【0079】
BTBR動物の脳には構造的変化が存在するため、一次抗Period(per)-1および抗npas2抗体陽性細胞の数を評価するための免疫組織化学的分析を行うことはできなかった。このため、前述の睡眠遺伝子の遺伝子発現を小脳レベルで定量化して評価するために、リアルタイム(RT)-PCR解析を行なった。
【0080】
簡単に説明すると、小脳の少しの一部をRNALater に保存し、RNA抽出(Trizol、Invitrogen)のために使用した。抽出したRNAをRNAsefree DNAse I(New England Biolabs、Ipswich、MA、USA)で処理し、各サンプルの全RNA 1μgをRevertAid First Strand cDNA Synthesis Kit(Invitrogen)を使用して逆転写した。次に、相補的DNA(cDNA)をテンプレートとして使用して、per1およびnpas2遺伝子のメッセンジャーRNA(mRNA)発現を評価した。すべてのサンプルを3回テストし、b-アクチンをハウスキーピング遺伝子として使用した。
【0081】
以下を評価するために、海馬および小脳組織に対してさらなる分析を行った:
- マロンジアルデヒド(MDA)レベルとして測定された脂質過酸化(Sigma、Italy)。上清の吸光度を、分光光度計を用いて532nmで測定した(Impellizzeri D et al.、Biochem Pharmacol 2016;119:27-41);
- Griess-Ilosvoy試薬(Sigma、Italy)を利用して540nmで分光光度法により測定した一酸化窒素(NO)(Tracey WR et al.、J Pharmacol Exp Ther 1995;272:1011-1015);
- カタラーゼ抗酸化酵素(CAT)(Sinha AK.、Anal Biochem 1972;47:389-394)およびスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)(Impellizzeri D et al.、FASEB J 2019;33:11364-1138)の活性;
- 412nmマイクロプレートリーダーを用いた、投与されたグルタチオン(GSH)レベルの低下(Ellman GL.、Arch Biochem Biophys 1959;82:70-77)。
【0082】
最後に、VPAマウス由来の脳の矢状切片をルクソールファストブルー(LFB)技術(Ghasemi-Kasman M et al. In vivo conversion of astrocytes to myelinating cells by miR-302/367 and valproate to enhance myelin repair. J Tissue Eng Regen Med 2018;12:e462-e472)で染色し、ミエリン鞘の脱髄を定量化した(図9)。
【0083】
統計分析
結果で報告されたすべての値は、N個の観察(N=動物の数)の平均値±平均値の標準誤差(SEM)として表された。行動スコアと分子分析におけるVPAマウス実験のグループ間の統計的差異を、ANOVAとそれに続く多重比較のためのボンフェローニの事後検定によって分析した。BTBRマウスで行われた実験では、ANOVA分析とそれに続くTukeyの多重比較検定が使用された。
p値<0.05は、有意とみなされる。
【0084】
実験結果
a.VPAマウスにおけるPEA-umとメラトニンの混合物
上記の実験から、また図2~14のグラフで報告された結果によって示されているように、PEA/メラトニン併用(特に、担体中の懸濁液/溶液として投与される乾燥混合物の形態)は、以下を可能にする:
【0085】
1.図2の別のマウス(ヒストグラムAでは「ストレンジャー」として示される)との相互作用時間を、um-PEA 単独(9mg/kg)およびメラトニン(10mg/kg) よりも有意に増加させること;
【0086】
2.社交性指数(マウスが新しい仲間のいないエリアといるエリアを探索するのに費やした時間の比)を増加させること、VPAマウスでは、um-PEA単独(9mg/kg)およびメラトニン(10mg/kg)よりも有意に減少した:図2のヒストグラム(B);
【0087】
3.um-PEA単独(9mg/kg)およびメラトニン(10mg/kg)よりも、見慣れた物体に関して新しい物体(図3のヒストグラムAでそれぞれ「物体」および「ストレンジャー」として示される)を探索する時間を増加させること;
【0088】
4.um-PEA単独(9mg/kg)およびメラトニン(10mg/kg)よりも、物体を探索する時間を増加させること:図3のヒストグラム(B);
【0089】
5.um-PEA単独(9mg/kg)およびメラトニン(10mg/kg)よりも、常同的な反復行動を有意に減少させること;分析された行動は、自己グルーミング(図4のヒストグラムA)および円を描くように曲がるか、または後ずさりするような不自然な反復動作である(図4のヒストグラムB);
【0090】
6.高架十字迷路(EPM)のオープンアームで過ごす時間が増加したことで実証されたように、um-PEA単独(9mg/kg)およびメラトニン(10mg/kg)よりも自閉症動物の不安を軽減させること、図5
【0091】
7.VPAによって低下した痛覚感受性(ホットプレート)(一部の自閉症の子供に見られるものと同様)を矯正すること。繰り返しになるが、試験中の混合物を用いた処置は、um-PEA単独(9mg/kg)およびメラトニン(10mg/kg)よりもVPA誘発性の変化を減少させる、図6。また、この場合、1mg/kgのメラトニン(上記のすべての評価において不活性であることが示されている)が、VPA誘発性の無痛覚性を改善するよりもむしろ、悪化させることに注目することも興味深い。悪化は有意である;
【0092】
8.海馬のCA1およびCA3領域(これらの領域は、記憶と空間記憶の定着、見当識、新しい情報と動きの学習などの認知プロセスに関与する)における錐体細胞神経変性の兆候を軽減させ、海馬自体の構造的構造(architectural structure)を再編成すること。その効果はum-PEA単独(9mg/kg)およびメラトニン(10mg/kg)よりも大きい、図7
【0093】
9.um-PEA単独(9mg/kg)およびメラトニン(10mg/kg)よりも、VPA注射後に減少した小脳内のプルキンエ細胞の密度を増加させること(プルキンエ細胞は体の運動機能に不可欠である。プルキンエ細胞に関連する障害は通常、患者の動きに悪影響を及ぼす)(図8);
【0094】
10.um-PEA単独(9mg/kg)およびメラトニン(10mg/kg)よりもミエリン鞘の脱髄を有意に抑制すること、図9
【0095】
11.特異的マーカーGFAPおよびIba-1の発現低下によってそれぞれ実証されるように、海馬および小脳におけるVPA誘発性の星状膠症および小膠症を減少させること(図10);
【0096】
12.小脳および海馬レベルで、核炎症誘発因子(NF-kB)およびその「阻害剤」(IkB-α)に対するVPAの効果を弱めること(図11)。特に、混合物は、IkB-αのレベルを上昇させ、NF-kB のレベルを低下させる。
【0097】
13.VPAによって誘発される小脳と海馬の酸化ストレスを弱めること(図12)。特に、混合物は、マロンジアルデヒド(MDA)(ヒストグラムA、B)および一酸化窒素(NO)(ヒストグラムC、D)のレベルとして測定される脂質過酸化を有意に減少させ、一方、カタラーゼ抗酸化酵素(CAT)(ヒストグラムE、F)およびスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)(ヒストグラムG、H)、ならびに還元型グルタチオン(GSH)のレベル(ヒストグラムI、J)の活性を増加させる;
【0098】
14.アポトーシス促進因子Baxの発現減少と抗アポトーシス因子Bcl-2の発現増加によって実証されるように、小脳および海馬レベルでアポトーシスによる細胞死に対抗すること(図13);
【0099】
15.VPAによって誘発されるper1、per2、およびnpas2(「時計タンパク質」、睡眠不足時の転写活性におけるこれらの増加は、長時間の覚醒時のエネルギー不足を引き起こす)の発現増加を抑制すること、図14
【0100】
自閉症のVPA注射モデルにおいて実施された上記の研究では、1mg/kgのメラトニンが活性であることは示さなかったが、実際には無痛覚性が悪化した。
【0101】
「マウス用量」から「ヒト用量」への換算に基づいて(Reagan-Shaw S、et al.、FASEB J. 2008;Nair AB、Jacob S.、J Basic Clin Pharm 2016;7:27-31;FDA Guidelines)、本研究の混合物で使用されるメラトニンの1mg/kg用量は、小児では0.12mg/kgの用量に相当する。したがって、体重10~20kgの小児の場合、um-PEAと混合して投与されるメラトニンの1日量は1.2mg~2.4mgに等しく、これは本発明により想定される1日量の範囲内である。
【0102】
本研究では10mg/kgの用量でメラトニンが活性であることが示されているが、体重が10~20kgの小児では、この用量は非常に高い等価用量に相当し、12~24mgに相当するため、使用することはできないと考えるべきである。
【0103】
実際、上述したように、ほとんどの自閉症児において使用されるメラトニンの用量は1~3mg/日の範囲である。成人の推奨用量は0.5~5mg/日であるが、高齢者の場合は最低用量0.1mg/日から開始することが推奨される。したがって、一般的に、メラトニンは0.1mg/日~5mg/日の用量範囲で投与することができる。
【0104】
メラトニンの高用量は、小児に悪夢、眠気、頭痛、腹痛、日中のめまいおよびふらつき、低血圧、夜尿症、よりまれには活動過剰および睡眠の減少を引き起こす可能性がある。成人は、鮮明な夢または悪夢、頭痛、めまい、日中の眠気、短期的な憂鬱感、胃けいれん、興奮性、性欲の低下などの副作用を経験することがある。
【0105】
本研究から、予想される用量範囲内で、したがってPEAとメラトニンの両方の用量が許容範囲内かつ安全な用量において、um-PEAとメラトニンとの併用が、自閉症スペクトラム障害の治療において相乗的に活性であることが明らかである。
【0106】
b.BTBRマウスにおけるPEA-um、メラトニンおよびDHAの混合物
上記の実験から、また図15~17の結果で示されているように、PEAum/メラトニンとDHAの併用のみが以下を可能にする:
【0107】
1.神経行動障害(表現型BTBR)を有する動物の社会的相互作用を改善し、同種の動物と費やす時間を統計的に有意に増加させること(図15A)。0.1mg/kgのメラトニンで処置されたBTBR動物は、エリアの空いている側で時間を費やし続けることによって、行動試験(図15A)において改善を示さなかった(図15B);
【0108】
2.ガラス玉の覆い隠しを有意に減らすことによって、BTBR動物の強迫/強迫(obsessive/compulsive)行動を和らげること(図15C);
【0109】
3.BTBRマウスが自己グルーミングに費やす時間をビヒクルと比較して有意に短縮する能力によって示されるように、反復行動を和らげること(図15D)。メラトニン0.1mg/kgで治療したBTBR動物は、常同的な反復行動の改善を示さなかった(図15C~15D);
【0110】
4.BTBRマウスの海馬レベルと小脳レベルの両方において高レベルの酸化ストレスに対抗すること。特に、この混合物は、MDAとして測定される脂質過酸化を有意に減少させ、海馬と小脳の両方において生理学的レベルに戻す(図16Aおよび16B)。
【0111】
5.BTBRマウスの小脳において有意に増加した、概日リズム(睡眠と覚醒の調節の中心となる)の生成に関与する遺伝子per1およびnpas2の発現を正常化すること(図17A~17B)。
【0112】
したがって、本発明は、対象に、PEA、好ましくは超微粉化形態のPEA、およびメラトニンまたはその天然前駆体、および場合によりDHAを投与することを含むか、またはそれらからなる、たとえばASDなどの神経行動障害を治療する方法であって、前記投与は、別々に、組み合わせて(すなわち、単一剤形で)または同時に行われ、少なくともメラトニンは、単独で投与した場合には不活性である用量で投与される方法を提供する。
【0113】
特に、本発明に従って治療されうる障害は、落ち着きのなさ、興奮性、睡眠障害、および潜在的に常同症を伴う神経行動障害であり、以下に関連する:
A.自閉症スペクトラム障害(ASD)および注意欠陥/多動性障害(ADHD)などのヒトとペット(イヌおよびネコ)の両方の神経発達障害であって、てんかん(このような障害は通常ヒトに発生するが、イヌの同様の神経行動障害と共通の特徴を共有する)を併発している場合を含むがこれらに限定されない;
B.不安/恐怖症状態(たとえば、騒音恐怖症、イヌの分離不安など)。
【0114】
本発明による化合物または組成物の投与は、イヌおよびネコにおいても、落ち着きのなさ、興奮性、睡眠障害、および、潜在的に、認知機能障害症候群などの認知症および老人性認知症に関連する常同症を伴う、神経行動障害を治療することができることも判明している。
【0115】
ここで、以下の製剤例を通して、本発明をさらに説明する。
【0116】
製剤例
um-PEA=超微粒子化パルミトイルエタノールアミド
m-PEA=微粒子化パルミトイルエタノールアミド
非m-PEA=非微粒子化パルミトイルエタノールアミド
【0117】
実施例1-軟ゼラチンカプセル
フォーマット12 スクイーズ可能 Twist-off
カプセル含量:
um-PEA 150.00mg
メラトニン 3.00mg
ピーナツ油 470.00mg
大豆レシチン 20.00mg
αトコフェロール 10.00mg
モノステアリン酸グリセリル 10.00mg
カプセルの組成:
ウシゼラチン 237.00mg
グリセロール 130.00mg
水 19.00mg
顔料 0.07mg
【0118】
実施例2-シロップ
100ml当たりの組成:
スクロース 25.0g
m-PEA 12.0g
メラトニン 100mg
55%タイターのDHA 5.0g
微結晶セルロース 1.35g
天然トコフェロール(1000IU/g) 1.0g
カルボキシルメチルセルロースナトリウム 0.65g
モノオレイン酸ソルビタン 0.40g
ポリソルベート80 0.10g
天然香味料 0.10g
ソルビン酸カリウム 0.09g
安息香酸 0.07g
クエン酸 0.05g
水 適量で100ml。
【0119】
実施例3-分散性顆粒
単回投与用サシェの含量:
パルミトイルエタノールアミド 900mg
メラトニン 5mg
マルトデキストリン 500mg
フルクトース 300mg
デキストロース 200mg
酢酸トコフェロール50% 200mg
(パウダー・オン・シリカ)
クエン酸 50mg
プルロニックF-68 50mg
天然香味料 50mg
ステアリン酸マグネシウム 10mg
ポリソルベート80 10mg
【0120】
実施例4-錠剤
単回投与用錠剤の含量:
m-PEA 300mg
パルミトイルエタノールアミド-um 10mg
メラトニン 1mg
マルトデキストリン 60mg
微結晶セルロース 100mg
架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム 25mg
ポリビニルピロリドン 10mg
ステアリン酸マグネシウム 6mg
コロイダル無水シリカ 6mg
ポリソルベート80 8mg
コーティング剤 30mg
【0121】
実施例5-胃保護錠剤
単回投与用錠剤の含量:
um-PEA 600mg
メラトニン 3mg
微結晶セルロース 150mg
架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム 90mg
ポリビニルピロリドン 40mg
ステアリン酸マグネシウム 8mg
コロイダル無水シリカ 6mg
ポリソルベート80 8mg
胃耐性コーティング剤 40mg
【0122】
実施例6-チュアブル錠
単回投与用錠剤の含量:
m-PEA 300mg
メラトニン 1mg
微結晶セルロース 200mg
リン酸カルシウム二水和物 95mg
ソルビトール 80mg
フルクトース 230mg
クエン酸 25mg
架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム 50mg
ポリビニルピロリドン 40mg
ステアリン酸マグネシウム 9mg
コロイダル無水シリカ 9mg
パルミチン酸スクロース 6mg
天然香味料 10mg
【0123】
実施例7-硬ゼラチンカプセル
単回投与用錠剤の含量:
植物性ゼラチンカプセル(HPMC)フォーマット3
um-PEA 50mg
メラトニン 1mg
マルトデキストリン 30mg
微結晶セルロース 50mg
ポリビニルピロリドン 5mg
ステアリン酸マグネシウム 4mg
コロイダル無水シリカ 4mg
ポリソルベート80 2mg
【0124】
実施例8-舌下錠
単回投与用錠剤の含量:
um-PEA 10mg
メラトニン 2mg
ラクトース 30mg
コーンデキストリン 10mg
ポリビニルピロリドン 5mg
パルミチン酸スクロース 5mg
天然香味料 3mg
【0125】
実施例9-複数回投与用経口スプレー
(1噴霧は、100マイクロリットルに相当する)
12ml溶液の含量:
um-PEA 960mg
メラトニン 120mg
スクロース 600mg
プルロニックF-68 600mg
パルミチン酸スクロース 150mg
ステビオシド 3mg
天然香味料 20mg
クエン酸 20mg
ソルビン酸カリウム 1mg
安息香酸 0.8mg
水 適量で12ml
【0126】
実施例10-小児用座薬
単回投与用座薬の含量:
パルミトイルエタノールアミド 100mg
メラトニン 1mg
SuppocireBS2X 850mg
天然トコフェロール 50mg
【0127】
実施例11-軟ゼラチンカプセル
カプセル含量:
um-PEA 150.00mg
メラトニン 3.00mg
55%タイターのDHA 435.00mg
ピーナツ油 40.00mg
大豆レシチン 20.00mg
αトコフェロール 10.00mg
モノステアリン酸グリセリル 10.00mg
カプセルの組成:
ウシゼラチン 237.00mg
グリセロール 130.00mg
水 19.00mg
顔料 0.07mg
【0128】
実施例12-単回投与用サシェ、経口懸濁液
サシェの含量:
um-PEA 900mg
メラトニン 3mg
コーンデキストリン 2500mg
カルボキシルメチルセルロースナトリウム 135mg
微結晶セルロース 85mg
パルミチン酸スクロース 10mg
ソルビン酸カリウム 9mg
安息香酸 7mg
天然香味料 20mg
ステビオシド 1.5mg
水 8050mg
【0129】
実施例13-錠剤
単回投与用錠剤の含量:
m-PEA 300mg
トリプトファン 300mg
マルトデキストリン 120mg
微結晶セルロース 200mg
架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム 60mg
ポリビニルピロリドン 20mg
ステアリン酸マグネシウム 8mg
コロイダル無水シリカ 8mg
ポリソルベート80 10mg
コーティング剤 40mg
【0130】
実施例14-複数回投与用経口懸濁液
100mlボトル
um-PEA 10.00g
トリプトファン 10.00g
コーンデキストリン 1500g
カルボキシルメチルセルロースナトリウム 1350mg
微結晶セルロース 850mg
パルミチン酸スクロース 100mg
ソルビン酸カリウム 90mg
安息香酸 70mg
水 適量で100ml
【0131】
実施例15-胃保護錠剤
単回投与用錠剤の含量:
パルミトイルエタノールアミド-um 400mg
5-ヒドロキシトリプトファン 200mg
微結晶セルロース 150mg
架橋カルボキシルメチルセルロースナトリウム 90mg
ポリビニルピロリドン 40mg
ステアリン酸マグネシウム 8mg
コロイダル無水シリカ 6mg
ポリソルベート80 8mg
胃耐性コーティング剤 40mg。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
【外国語明細書】