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特開2023-160813医用画像診断装置、方法及びプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160813
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】医用画像診断装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/161 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
G01T1/161 C
G01T1/161 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023070450
(22)【出願日】2023-04-21
(31)【優先権主張番号】17/726,070
(32)【優先日】2022-04-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.VERILOG
2.SOLARIS
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】カーティカヤン・バラクリシュナン
(72)【発明者】
【氏名】ケント・シー・バー
(72)【発明者】
【氏名】勅使川原 学
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー コルサマー
(72)【発明者】
【氏名】ウエンユエン チー
【テーマコード(参考)】
4C188
【Fターム(参考)】
4C188EE02
4C188FF07
4C188JJ02
4C188KK15
4C188KK24
4C188KK33
(57)【要約】
【課題】画質の低下が抑制された画像を得ること。
【解決手段】実施形態に係る医用画像診断装置は、処理回路を備える。処理回路は、モニタリングデバイスを介して患者に関するパラメータに対応する時系列データを受信し、医用イメージングスキャンにより得られたスキャンデータを取得し、前記取得したスキャンデータから除外すべき前記医用イメージングスキャン中の時間フレームであって、前記患者に関するパラメータに基づく前記患者のストレス情動状態に対応する時間フレームを識別し、前記取得したスキャンデータから前記ストレス情動状態に対応する前記時間フレームに対応するスキャンデータを除外することにより前記取得したスキャンデータを修正し、前記修正されたエミッションデータに基づいて、情動状態補正画像を生成する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モニタリングデバイスを介して患者に関するパラメータに対応する時系列データを受信し、
医用イメージングスキャンにより得られたスキャンデータを取得し、
前記取得したスキャンデータから除外される前記医用イメージングスキャン中の時間フレームであって、前記患者に関するパラメータに基づく前記患者のストレス情動状態に対応する時間フレームを識別し、
前記取得したスキャンデータから前記ストレス情動状態に対応する前記時間フレームに対応するスキャンデータを除外することにより前記取得したスキャンデータを修正し、
前記修正されたスキャンデータに基づいて、情動状態補正画像を生成する処理回路
を備える、医用画像診断装置。
【請求項2】
前記処理回路は、前記スキャンデータとして前記医用イメージングスキャン中に検出された放射線を表すエミッションデータを取得する、請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項3】
前記取得されたエミッションデータは、ポジトロン放射断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)スキャン中に複数の検出器素子で検出されたガンマ線を表す、請求項2に記載の医用画像診断装置。
【請求項4】
前記処理回路は、機械学習モデルを前記受信した前記患者に関するパラメータに適用することによって、前記取得したエミッションデータから除外される前記PETスキャン中の前記時間フレームを識別する、請求項3に記載の医用画像診断装置。
【請求項5】
前記処理回路は、前記機械学習モデルの出力値に基づいて、前記取得したエミッションデータを修正し、
前記機械学習モデルの前記出力値は、前記患者の前記ストレス情動状態に対応する、前記患者に関するパラメータに基づく前記時間フレームである、請求項4に記載の医用画像診断装置。
【請求項6】
前記機械学習モデルは、前記患者の前記ストレス情動状態に対応する、前記患者に関するパラメータおよび対応するエミッションデータに基づいて訓練されたニューラルネットワークを含む、請求項4に記載の医用画像診断装置。
【請求項7】
前記機械学習モデルは、前記エミッションデータが取得される前に取得された患者に関するパラメータに基づいて訓練されたニューラルネットワークを含み、
前記患者に関するパラメータは、前記患者のリラックス情動状態に対応するデータである、請求項4に記載の医用画像診断装置。
【請求項8】
前記患者に関するパラメータは、前記患者の胸部の動きであり、
前記機械学習モデルは、前記患者に関するパラメータ内の呼吸パターンを識別し、前記呼吸パターンから少なくとも1つの呼吸動作を識別し、
前記処理回路は、前記呼吸パターンから識別された前記少なくとも1つの呼吸動作のそれぞれに対応する、対応する再構成されたPET画像を生成する、請求項4に記載の医用画像診断装置。
【請求項9】
前記処理回路は、前記患者に関するパラメータに対応する前記受信した時系列データに基づいてユーザによる前記スキャンデータの取得を中止することによって、前記スキャンデータを取得する、請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項10】
前記モニタリングデバイスは、前記患者からの機械的入力を受信するように構成された外力フィードバックデバイスを含み、
前記患者に関するパラメータは、外力であり、
前記外力は、前記患者からの前記機械的入力から変換された電気信号である、請求項1に記載の医用画像診断装置。
【請求項11】
前記モニタリングデバイスは、前記PETスキャン中の前記患者の赤外線データを取得するように構成されたカメラを含み、
前記患者に関するパラメータは、前記患者の体温である、請求項3に記載の医用画像診断装置。
【請求項12】
モニタリングデバイスを介して患者に関するパラメータに対応する時系列データを受信することと、
医用イメージングスキャンにより得られたスキャンデータを取得することと、
前記取得したスキャンデータから除外される前記医用イメージングスキャン中の時間フレームであって、前記患者に関するパラメータに基づく前記患者のストレス情動状態に対応する時間フレームを識別することと、
前記取得したスキャンデータから前記ストレス情動状態に対応する前記時間フレームに対応するスキャンデータを除外することにより前記取得したスキャンデータを修正することと、
前記修正されたスキャンデータに基づいて、情動状態補正画像を生成することと、を含む、方法。
【請求項13】
モニタリングデバイスを介して患者に関するパラメータに対応する時系列データを受信する処理と、
医用イメージングスキャンにより得られたスキャンデータを取得する処理と、
前記取得したスキャンデータから除外される前記医用イメージングスキャン中の時間フレームであって、前記患者に関するパラメータに基づく前記患者のストレス情動状態に対応する時間フレームを識別する処理と、
前記取得したスキャンデータから前記ストレス情動状態に対応する前記時間フレームに対応するスキャンデータを除外することにより前記取得したスキャンデータを修正する処理と、
前記修正されたスキャンデータに基づいて、情動状態補正画像を生成する処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、医用画像診断装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書に記載されている背景技術の説明は、本開示の背景を概略的に示すためのものである。この背景技術の章において説明される内容の範囲、および出願時には先行技術として認められていない本明細書の態様を、本開示に対する先行技術であるとは、明示的にも黙示的にも認めていない。
【0003】
ポジトロン放射断層撮影(Positron Emission Tomography:PET)は、放射性トレーサを用いることにより人間または動物の生化学的作用のイメージングが可能である、機能的イメージングモダリティである。PETイメージングでは、トレーサ薬剤が、注射、吸入または経口摂取を介して撮像される患者に取り入れられる。投与後、その物理的特性および生体分子特性によって、該薬剤は、患者の身体の特定の位置に集中する。薬剤の実際の空間分布、薬剤の蓄積領域の濃度、および投与されてから最終的に排出されるまでの過程の動態は、全て、臨床的な重要性を持つ可能性がある因子である。
【0004】
PET検査向けに最も一般的に使用されているトレーサは、フッ化デオキシグルコース(FluoroDeoxyGlucose:FDG)であり、それは、癌組織で実質的にアップレギュレートされるプロセスであるグルコース代謝の分析を可能にするものである。FDGを用いるPETスキャンは、様々な種類の腫瘍を伴う癌患者の病期分類、再病期分類、および治療モニタリングにますます使用されている。
【0005】
この過程の間に、薬剤に結合されたトレーサは、ポジトロンを放射する。放射されたポジトロンが電子と衝突すると、対消滅イベントが発生し、そのポジトロンと電子とは結合する。ほとんどの場合、対消滅イベントは、実質的に180°に離れて進む2つのガンマ線(511keV)を生成する。
【0006】
PET画像は、生理学的な患者の動作の影響を受け、それにより画像の質的かつ量的劣化が生じる場合がある。心収縮、呼吸動作、撮像中の患者の体位変化などの、特定の種類の動作が、画像劣化の一因となることがある。特に、呼吸動作は、PETおよびCT撮像の両方に悪影響を及ぼし、心収縮と比較して撮像される対象物の変位が大きく、また補正も困難である。PETの撮像時間が、通常呼吸期間より長いことを考えると、特にPETスキャナの分解能より大きな振幅の呼吸動作が生じる場合、局所的なトレーサ取り込み領域にボケが生じる場合がある。
【0007】
CT画像は、通常、呼吸期間よりも著しく短い管回転期間で取得することができる。しかし、CTスキャン全体の期間は、良くても呼吸期間と同程度であり、スキャン全体を通した様々なスライスが、呼吸サイクルの異なる位相で撮像されることがあり、これにより歪みが生じる可能性がある。これらの影響が重なると、PET画像およびCT画像間の空間的な不一致が生じる可能性があり、これにより、減衰補正の精度が劣る可能性もある。したがって、患者の動作および苦痛に対応する望ましくないスキャンデータを判断する追加の方法を含むPETスキャンシステムが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2020/0205748号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、画質の低下が抑制された画像を得ることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置づけることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態に係る医用画像診断装置は、処理回路を備える。処理回路は、モニタリングデバイスを介して患者に関するパラメータに対応する時系列データを受信し、医用イメージングスキャンにより得られたスキャンデータを取得し、前記取得したスキャンデータから除外すべき前記医用イメージングスキャン中の時間フレームであって、前記患者に関するパラメータに基づく前記患者のストレス情動状態に対応する時間フレームを識別し、前記取得したスキャンデータから前記ストレス情動状態に対応する前記時間フレームに対応するスキャンデータを除外することにより前記取得したスキャンデータを修正し、前記修正されたエミッションデータに基づいて、情動状態補正画像を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本開示の実施形態による、イメージングシステムのブロック図である。
図2A図2Aは、本開示の実施形態による、患者の快適さレベルの判断法を示す概略図である。
図2B図2Bは、本開示の実施形態による、一時停止したスキャンに応じたスキャン長の調節を示す概略図である。
図2C図2Cは、本開示の実施形態による、R-Rヒストグラムの概略図である。
図3図3は、本開示の実施形態による、画像を生成する方法のフローチャートの非限定的な例を示す図である。
図4A図4Aは、本開示の実施形態による、N個の入力値、K個の隠れ層、および3個の出力値を有する一般的な人工ニューラルネットワーク(Artificial Neural Network:ANN)の例を示す図である。
図4B図4Bは、本開示におけるような、畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network:CNN)の非限定的例を示す図である。
図5A図5Aは、本開示の実施形態による、ポジトロン放射断層撮影(PET)スキャナの斜視図である。
図5B図5Bは、本開示の実施形態による、PETスキャナの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
例として提示される本開示の種々の実施形態について、以下の図面を参照しながら詳細に説明する。ここで、同じ番号は、同じ要素を意味する。
【0013】
以下の開示は、提示する主題の様々な特徴を実装するための、多くの様々な実施形態、または例を提示する。構成要素および配置の具体例は、本開示を簡易にするために以下で説明する。これらは、当然、単に例だけであり、制限されることを意図していない。例えば、本開示は、種々の例において、参照番号および/または参照文字を繰り返す場合がある。この繰り返しは、簡易かつ明瞭にするためのものであるが、説明する種々の実施形態および/または構成間の関係性をそれ自体によって定めるものではない。
【0014】
本明細書に記載のように、異なる手順の説明の順序は、明確にするために提示される。概して、これらの手順は、任意の適切な順序で行うことができる。また、本明細書の異なる特徴、技術、構成の各々は、本開示の様々な場所で説明される場合があるが、概念のそれぞれは、互いに独立して、または互いに組み合わせて、実行できることが意図される。したがって、本発明は多くの様々な方法で具現化され、かつ考察され得るものである。
【0015】
スキャニングシステムの一部として、追加の装置を使用して患者の所定の基準値を測定して、動作を含んでいる可能性のあるデータ(ゆえにイメージングエラー)、および動作に起因するイメージングエラーをより含んでいない可能性のあるデータを判断することができる。ポジトロン放射断層撮影(PET)またはコンピュータ断層写真撮影法(Computed Tomography:CT)スキャン中の心臓ゲーティングの場合、心電図(ElectroCardioGram:ECGまたはEKG)の使用が、比較的簡単、安価である場合があり、再現可能性が明らかとなっている。類似のゲーティング法が、X線、MRIなどの他のイメージングモダリティに適用される場合もある。EKGはまた、スキャン中の患者をモニタする役割を果たす場合もある。取得されたEKG信号は、各同時計数が取得された心拍位相を推定する参照値としてR波を利用する場合があり、それにより、最終的にデータが心臓ゲートに分類され、その一部は、動作が少ないものとなる。特に、心臓ゲーティングは、通常、レトロスペクティブに、すなわち、スキャンデータが取得または収集された後に行われる場合がある。それに比べ、プロスペクティブゲーティングは、撮像中にスキャニングシステムをコントロールするために使用される場合がある。
【0016】
ここで図面を参照する。図1は、本開示の実施形態による、イメージングシステム100のブロック図を示す。一実施形態では、イメージングシステム100は、PETイメージングシステムであり、スキャナ105、処理デバイス110、および患者(被検体)の快適さモニタリングシステム115(本明細書では「モニタリングシステム115」と呼ばれる)を含む。ここで、スキャナ105は、PETイメージングシステム用のPETスキャナである。PETイメージングシステム用のスキャナ105は、中心軸を中心にしてリング状に整列され、かつガンマ線を検出するように構成された検出器結晶を含む場合がある。スキャナ105は、お互いに隣接し、かつリングの軸に沿って配設された検出器結晶の追加のリングを含む場合がある。スキャンされる対象物、例えば、ファントムまたはヒト(患者)は、検出器結晶(スキャナ105)の中心に置かれる場合がある。スキャナ105によって取得されたスキャンデータは、処理デバイス110に伝送される場合がある。処理デバイス110は、データをスキャナ105に送信し、かつデータをスキャナ105から受信し、加えて、上記データを分析するように構成された処理回路を含むデバイスである場合がある。処理デバイス110は、例えば、デスクトップコンピュータ、ラップトップ、タブレット、スマートフォンまたはサーバーなどである場合がある。スキャナ105および処理デバイス110の別の特徴については、図5Aおよび5Bに示し、かつ以下の追加の説明に記載する。スキャナ105は、代わりに、CT、MRIおよびX線などの別のイメージングモダリティ用のスキャナとすることもできることが理解されるであろう。このようなスキャナは、特定のイメージングモダリティに対応する放射線を検出することによってスキャンデータを取得し、そのスキャンデータを処理デバイス110に伝送するように構成される場合がある。しかし、以下の説明では、本明細書に記載のスキャナ105が、PETイメージングシステム用のスキャナである場合を例に挙げて説明する。
【0017】
一実施形態では、モニタリングシステム115は、第1のモニタリングデバイス115a、第2のモニタリングデバイス115b、および第3のモニタリングデバイス115cのうちの少なくとも1つのモニタリングデバイスを含む場合がある。モニタリングシステム115を介して、患者の情動状態が生成され、PETデータ取得中にスキャナ105によって記録される場合がある。第1のモニタリングデバイス115a、第2のモニタリングデバイス115b、および第3のモニタリングデバイス115cは、患者に関連付けられたパラメータまたは基準値を測定し、上記パラメータを、図1に示すようにスキャナ105を介してまたは直接、処理デバイス110に伝送するように構成される場合がある。特に、第1のモニタリングデバイス115a、第2のモニタリングデバイス115b、および第3のモニタリングデバイス115cは、スキャン全体またはスキャンの一部に関する患者パラメータ(患者に関するパラメータ)を測定またはモニタするように構成される場合がある。第1のモニタリングデバイス115a、第2のモニタリングデバイス115b、および第3のモニタリングデバイス115cからの出力値は、処理デバイス110によって記録される場合がある。
【0018】
一実施形態では、患者の情動状態データは、患者快適さ信号(Patient Comfort Signal:PCS)と見なされる場合がある。一実施形態では、技術者(または技師もしくはユーザ)が装置(イメージングシステム100)を主治医として取り扱い、かつスキャン中に患者に指示を与える場合がある。PCSは、技術者またはAIアルゴリズムによって解釈される場合がある。結果は、ポケットベル、テキスト、アラーム、またはオペレータコンソールによるメッセージなどを含む、種々の方法を介して技術者に提供される場合がある。患者の情動が十分に変化し、干渉が必要であると判断される場合、技術者は、患者の世話をする場合がある。直ちに検出され得る情動の範囲は、例えば、i)患者が暑すぎる、または寒すぎる、ii)患者が苦痛または不安の徴候を示す、およびiii)患者が、集中的な認知検査中に注意散漫の徴候を示す、などである。さらに、適切な干渉は、イメージング状況および検出された情動に基づく場合がある。例えば、患者の不快が検出されるステップアンドシュート全身PETスキャンでは、技術者は、現在のサブスキャンが終わるまで動かないように患者に伝え、その後スキャンを(ベッドポジションの間に)一時停止して、患者の快適さに注意を払うことができる。例えば、認知検査では、望ましくない情動状態が検出される場合、技術者は、スキャンまたは検査の一部を繰り返すことを決定する場合がある。
【0019】
図2Aは、本開示の実施形態による、患者の快適さレベルの判断を示す概略図である。一実施形態では、PCSは、モニタリングシステム115によって生成され、処理デバイス110(下記参照)または技術者によって、患者の快適さレベルを判断するために再検討される場合がある。患者が快適であることを患者の快適さレベルが示している(例えば、患者の快適さレベルI)と判断される場合、スキャナ105は、スキャンの実施を継続することができる。例えば、処理デバイス110は、PCSを分析して、スキャナ105にスキャンを継続するように命令する信号を伝送することができる。例えば、技術者は、PCSを分析し、患者の快適さレベルがスキャンを続けるのに十分であるというプロンプトに答えることによってスキャナ105にスキャンを継続するように命令することができる。患者の不快が軽度または中程度であることを患者の快適さレベルが示している(例えば、患者の快適さレベルII)と判断される場合、スキャナ105は、一時停止される場合がある。さらに、スキャナ105が一時停止される場合、患者が感じている不快またはストレスの低減を試みるために、患者を快適にする処置が開始される場合がある。例えば、警告信号を出力して、患者が不快を感じていると技術者に警告し、かつ技術者に使用すべき処置またはデバイスの選択を促し、患者を快適にすることができる。例えば、処理デバイス110は、スキャンが一時停止したことを検出し、患者を快適にする処置を開始することができるが、この際、患者を快適にする特定の方法は、PCSに基づいており、そのような方法としては、患者が熱すぎるまたは寒すぎることをPCSが示す場合に室温または環境を調節することなどがある。
【0020】
図2Bは、本開示の実施形態による、一時停止したスキャンに応じたスキャンの長さの調節を示す概略図である。一実施形態では、技術者または処理デバイス110は、患者の不快が軽度または中程度であると判断するとスキャナ105を一時停止し、スキャニングを再開できる程度にストレス情動状態の患者を快適にするのに必要な時間長のログをとることができる。なお、ストレス情動状態とは、例えば、患者が不快に感じている場合の患者の状態を指す。一実施形態では、スキャンは、患者の不快が軽度または中程度であると判断された後であっても継続される場合があり、ストレス情動状態の患者を快適にするのに必要な時間長は、処理デバイス110によってログがとられる場合がある。これは、スキャンの全期間がより長いMRIなどのイメージングモダリティに特に適用可能である場合がある。図2Bに示すように、スキャンプロトコルは、PETリストモードデータなどのスキャンデータをt分間取得することを含む場合がある。例えば、スキャン期間は、t=10分である場合があり、かつ患者のストレス情動状態は、患者が快適状態に戻る前の最後のα=1分に検出および判断される場合がある。例えば、患者のストレス情動状態の長さが1分である場合がある。よって、1分の追加時間がスキャン期間に追加されて、追加のスキャンデータが取得され、取得された追加のスキャンデータが、患者がストレス情動状態であった間に取得された1分のスキャンデータと置き換えられる場合がある。
【0021】
一実施形態では、患者の不快が重度であることを患者の快適さレベルが示している(例えば、患者の快適さレベルIII)と判断される場合、スキャナ105は、直ちに停止される場合がある。例えば、患者が極度のストレス情動状態を感じて、静止すること、または所定の範囲内の動きに留まることができない場合がある。そのような例では、技術者の注意が強化される必要があることを示す警告信号または別の警告信号を出力して、患者に直ちに干渉し、かつ不快緩和のための処置を迅速に提供するように技術者に警告することができる。技術者が不快緩和のための処置を迅速に提供するために、スキャナ105は、即時に停止し、患者の退出処置を開始することができる。
【0022】
上述したように、モニタリングシステム115により、患者を助けるために干渉が必要な場合に、患者の情動状態および信号をモニタするためのPCSデータが生成され、それによりデータの取得、解析および補正が改善され得る。PCSを生成するための心臓ゲーティングに関する例では、心臓ゲーティングワークフローは、PET(またはCT)データが取得される可能性があるステップを含むことがあり、またイメージングシステム100は、同時に動作することができる第1のモニタリングデバイス115aとしてEKGシステムを含む場合がある。そのような例では、EKGデータはPCSである。よって、スキャナ105または処理デバイス110は、スキャン前、スキャン中、および/またはスキャン後の患者のEKGデータを記録することができる。スキャンおよびEKGデータが取得されると、患者の1回の心拍の長さまたは期間を本質的に示すRからRまでの間隔を含む心拍間隔のヒストグラムを生成することが可能である。患者は、心拍が安定している、例えば、1分間毎に60拍の平静な状態である場合があり、これは、検出された1分毎の60拍での非常に安定したRからRまでの間隔を含む生成されたヒストグラムに相関する場合がある。なお、本明細書において、通常、例えば、1分から10分の範囲である場合がある1回のスキャンの過程にわたって、様々な心拍数の分布が観察される場合がある。しばしば、この分布は双峰形のものであることがあり、かつi)患者が緊張しているか、またはストレスを感じており、かつ心拍が速く不安定な場合のスキャン開始時、およびii)患者が落ち着いて、リラックスしており、かつ患者の心拍が安定し、また遅くなり始めるタイミングのスキャンの開始後に相関することがある。したがって、一例では、全スキャンから生成されたヒストグラムは、1分毎に50から70拍周辺の密な分布、および1分毎に約100から120拍の散乱した、または密さが粗い分布(これは、患者が緊張しているタイミングに相関する)のデータまたは心拍も含む場合がある。
【0023】
図2Cは、本開示の実施形態による、R-Rヒストグラムの概略図である。スキャンの完了後、画像を作成するために、i)技術者は、ヒストグラムを分析し、患者のリラックス状態(リラックス情動状態)に相関するヒストグラムの部分を選択することができるか、ii)処理デバイス110は、自動処理を使用して、患者のリラックス状態に相関するヒストグラムの部分を判断および選択することができるか、またはiii)処理デバイス110は、自動処理を使用して、患者のリラックス状態に相関するヒストグラムの部分を判断して、どの部分を画像の生成のために含めるか、または除外するかを技術者に提案することができる。自動処理は、セット識別法または機械学習処理を含む場合がある。例えば、機械学習処理は、訓練データセットおよび技術者によって再検討された(レビュー(review)された、見直しされた)再検討データからの追加の入力値を使用して訓練され得る人工ニューラルネットワーク(ANN)である場合がある。患者のリラックス状態に相関するヒストグラムの部分は、心拍が安定していることが理由で選択される場合があり、それにより、ゲーティング画像の品質が付随してより良好になる場合がある。
【0024】
人間によるデータの再検討、および画像生成に使用するデータの部分の選択により、患者が依然として緊張しており、その心拍が記録されるか、またはヒストグラムにおいて移行中に遅くなることが示されているいくつかの外れ値のデータポイントが識別される場合がある。データのこのような部分は、依然として質が劣った画像生成をもたらす可能性があるため、除外され得る。データのこのような部分を識別することは、処理デバイス110の自動処理の使用、特に、識別に対するルールが設定されている自動処理では困難である場合がある。そのため、除外するか、または含むべき部分の識別が誤ることになり、ゆえに最終的に得られる画像の品質の劣化に繋がる可能性がある。しかし、技術者は、再検討し、補正した外れ値データポイントの識別値を、訓練データとして自動処理に(ANNに)入力して、自動処理の精度を改善することができる。しかし、他方で、技術者がデータの所望の部分を選択することは、ヒューマンエラーの一因および技術者が良いデータまたは悪いデータと信じる際のばらつきに繋がる可能性がある。これにより、品質が改善される代わりに、生成される画像の品質が劣化する可能性がある。
【0025】
さらに、心拍数をモニタおよび測定することができるが、データの解析および選択は、単一のパラメータに制限される。このために、レトロスペクティブゲーティング法でもある場合がある、データ駆動型呼吸ゲーティング(Data Driven Respiratory Gating:DDRG)などの別のゲーティング法にも、自動処理は、適用可能である。一実施形態では、DDRGの場合、患者は、スキャナ105のベッド(寝台)の上にいる場合があり、第2のモニタリングデバイス115bは、呼吸ゲーティングデバイスである場合がある。第2のモニタリングデバイス115bは、経時的変位などの患者の胸部の1つまたは複数のパラメータを測定する、ベルト、光学センサ(例えば、レーザー)または他のデバイスを含む場合がある。胸部の動きなどの測定されたパラメータまたはPCSは、波形として表すことができ、これは、スキャンデータと同時に取得され、特定の時間の画像に相関する場合がある。すなわち、モニタリングシステム115からのデータ、例えば、測定された胸部の動き、EKGデータなどを用いて各イベント(ゆえに各特定の時間での各画像)を関連付けたイベントストリームが、生成される場合がある。このイベントストリームは、処理デバイス110によって分析することができる。
【0026】
一実施形態では、処理デバイス110は、PETイベントストリームを分析し、イベントストリームを患者の呼吸サイクルの異なる部分に分類することができる。これにより、例えば、患者の吸息、呼息、吸息の終わりの胸部の動きの停止、呼息の終わりの胸部の動きの停止などに相関する2つまたは4つまたは10個の画像に分類された10分間のスキャンデータを得ることができる。患者の呼吸サイクルの異なる部分に相関して生成された画像のそれぞれ、特に胸部の動きの停止に相関する画像により、より鮮明で高品質な画像を得ることができる。しかし、DDRGおよび呼吸ゲーティングには、一般的に、患者ごとに固有の胸部の動きの変化が原因で精度に問題が起こることがある。これは、較正を実施すること、およびスキャン中の最適な呼吸法を患者に教えることが、部分的に考えられるが、較正の機会が得られない場合があることが多く、かつ患者が平静な状態を保てない可能性もある。さらに、スキャンされる患者の健康状態のレベルにはばらつきがあることがあり、健康的な患者には安定した呼吸パターンを維持することが簡単であっても、病気、特に肺に影響を及ぼす病気を患う患者にとっては困難である可能性がある。よって、不健康な患者の平静な状態での呼吸の一部のパターンは、ストレス時の呼吸パターンと誤判断される場合がある。例えば、肥満の患者の場合、安定した呼吸パターンを維持することは困難である可能性がある。例えば、肺癌を患う患者の安定した呼吸パターンを維持することは、困難である可能性があり、癌を早期に発見するか、または手術予定の患部を撮影するために、より精度の高いスキャンは、このような特定の患者にとって特に有益となるであろう。
【0027】
したがって、モニタした患者のパラメータを分析することによって、患者のストレス状態データから患者の平静な状態データを判断または識別することができるデバイスベースゲーティングの強化または置換の方法について本明細書に記載する。また、心臓ゲーティングでは、患者の心拍は、速度が速くなったり、遅くなったりする可能性があるが、その実際の心拍(すなわち、電気信号)は、常にほとんど同じに見える。代わりに、胸部のパラメータを分析することによって、追加の情報を判断することができる。特に、情動状態評価方法により、胸部パラメータデータを分析して、患者の情動状態またはPCSを判断し、この情動状態判断値を訓練データとしてANNに入力することができる。
【0028】
特に、患者の呼吸は、モニタしたパラメータデータで見られる呼吸の様々なタイプを識別することによって、さらに分析することができる。これは、識別された呼吸動作(吸息、呼息、吸息後の胸部の動きの停止、呼息後の胸部の動きの停止など)に加えて上述したようなものである場合がある。例えば、患者の心拍および呼吸パターンが、「速い」とラベル付けされてストレス状態が識別されることができ、同時に、患者は、ゆっくりとした呼吸で自身の心拍を抑えようとすることができる。しかし、これは、データが示すような患者が突然平静な状態になることを意味しておらず、患者が平静さを維持しようとすればするほど、患者の呼吸パターンが、患者の実際の平静な状態の呼吸パターンとは異なるものになる可能性がある。追加情報が、呼吸データから抽出され、既知のまたは以前に分析された呼吸パターンに基づいてラベル付けされる場合がある。重要な情報は、心拍数の場合のような呼吸のタイミングまたは呼吸数ではなく、むしろ、呼吸動作の形状(測定される波形)である可能性がある。
【0029】
一実施形態では、吸息および呼息は、呼吸間の時間以外のもので(例えば、カメラおよび/またはコンピュータ視覚システムによって)測定することができる。測定された波形の形状は、大きく変化することがある。患者がリラックスしている場合、次の呼吸をする前に、患者は、息を吐いた後、一定期間、息を吐いた状態を維持することができる。患者が緊張していると、患者は、海の波のように4または5回の呼吸ごとに吸息のほぼピークで浅い呼吸になり、次に深い呼息および吸息を行う場合がある。特に、これらの挙動は、潜在意識でのものであり、患者がコントロールすることが困難である場合があるが、直接検出可能であるため(例えば、技術者、カメラ、および/またはコンピュータ視覚システムによって)、実際の患者の情動状態と相関している可能性がより高いデータを表している。呼吸パターンは、ANNなどの自動処理によって検出され、かつ画像生成の前の分割(segmentation(セグメンテーション、セグメント))などのために識別またはラベル付けすることができる。あるいは、技術者は、代わりに、またはANNと組み合わせて、画像生成の前の分割のために呼吸パターンを識別またはラベル付けできる。ANNがクラスタリングを試みることができるさらなる別のパターンが多数存在するが、ANNは、それを実行することに関する外部情報を全く有していない。よって、正確な訓練データを入力して、経時的にANNを訓練することができる。さらなる訓練後、ANNは、スキャンデータを患者の平静な状態およびストレス状態を表すデータにより正確に分割することができる。ANNによる判断または分割を使用して、より品質が高い画像を自動的に生成することができるか、または再度、処理デバイス110が、提案の最終的な再検討を行うようにANNおよび自動処理からの結果を技術者に出力し、その後、分割されたデータに基づいて最終的な再構成画像を生成することができる。訓練を繰り返すことによって、ANNは、よりロバストになり、かつエラーが起こりにくくなることが理解されるであろう。
【0030】
追加のモニタリングデバイスを使用して、追加の患者パラメータをモニタして、患者の情動状態をさらに判断し、かつ最終の再構成画像の生成に使用するデータを識別することができる。一実施形態では、第3のモニタリングデバイス115cは、電荷結合素子(Charge-Coupled Device:CCD)、近赤外(Near-InfraRed:NIR)カメラ、または前方監視赤外線(Forward Looking InfraRed:FLIR)カメラなどのカメラである場合がある。カメラは、光学もしくはIR画像または動画データフィードなどの患者の画像または動画を取得するように構成され得る。CCDカメラは、光の可視波長をフィルタリングして除外するように構成されたフィルタアタッチメントを備え、IR画像を作成する場合があることが理解されるであろう。カメラは、ガントリ設置型、または壁設置型である場合がある。カメラ画像または動画をPCSに変換させるために、カラー(例えば、RGB)動画データが、任意に、動画データを分析することができる情動モニタリングソフトウェアアプリケーションを含む処理デバイス110に伝送(例えば、タイムスタンプを含むストリーム)されてよい。モニタリングシステム115は、接続された医用イメージングシステムのデータストリームに組み込むことができ、かつストリーム動画と同期させることができるデータ(1つまたは複数の情動状態)も生成できる。
【0031】
一実施形態では、患者の額の温度または頬の温度の両方は、表面が露出して、かつ不安またはストレスと密接に相関しているため、測定が容易である場合がある。よって、温度パラメータは、スキャンデータおよび患者のEKGおよび呼吸動作などのモニタされる任意のその他のパラメータと同時に記録することができる。例えば、患者は、スキャンの開始時に不安を感じ、それに伴って体温が上昇する場合がある。リラックスすると、患者の体温は、低下する場合があり、そうすると、処理デバイス110は、低下した温度に基づいてスキャンのリラックス状態データからスキャンの開始時のデータを分割することができる。
【0032】
上述したように、第3のモニタリングデバイス115cがPETスキャン中の患者の赤外線データを取得するように構成されたカメラである場合、患者パラメータとして患者の体温を測定またはモニタし、患者パラメータを処理デバイス110等に出力する。
【0033】
一実施形態では、第3のモニタリングデバイス115cは、患者の音声を記録するように構成された音声記録デバイスである場合がある。例えば、患者は不快を覚えることがあり、ゆえにスキャナ105内での体位変化が原因の唸り声またはノイズなどの可聴音を発する場合がある。記録される音声は、スキャンデータと同時に取得され、ストレス状態中に取得されたデータに印を付けるか、またはフラグ付けするために使用される場合がある。例えば、技術者は、質問に定期的に答えるか、または予め設定された応答を繰り返すように患者に要求することができ、またそれらは音声記録デバイスによって記録される。処理デバイス110は、質問に答えるか、または応答を繰り返す際の患者の発話のリズムまたは規則性を分析して、スキャン中に患者が平静な状態またはストレス状態のどちらであるかを判断することができる。記録される音声は、スキャンデータと同時に取得され、ストレス状態中に取得されたデータに印を付けるか、またはフラグ付けするため、また患者の発話のリズムが改善し、よりリラックス状態に対応するときに取得されたデータに印を付けるか、またはフラグ付けするために使用される場合がある。
【0034】
一実施形態では、第3のモニタリングデバイス115cは、患者からの機械的入力または外力フィードバックを受信するように構成された力変換器を含む外力フィードバックデバイス(力覚呈示装置)である場合がある。例えば、力変換器は、ポリマー発泡ゴムなどの圧縮性弾性材料で構成された応力ボールに組み込まれる場合がある。力変換器は、例えば、患者が応力ボールを握り締めることによる患者からの機械的入力を受信するように構成される場合がある。機械的入力は、スキャンデータと同時に記録された電気信号に変換されて、スキャナ105および/または処理デバイス110に伝送される場合がある。より強い機械的入力(基準のグリップ力と比べて)は、患者の痛みまたは不快に対応する場合があり、一方で、機械的入力がほとんどない場合は、リラックス状態に対応する場合がある。一実施形態では、応力ボール(力変換器)を握り締めることは、患者がストレスを感じた場合の潜在意識においての反射(応答)であり、この反射は代替性が低く実際の患者の情動状態と相関する可能性が高い別のデータソースを提示する。
【0035】
上述したように、第3のモニタリングデバイス115cが、患者からの機械的入力を受信するように構成された外力フィードバックデバイスである場合、第3のモニタリングデバイス115cは、患者パラメータとして、患者からの機械的入力から変換された電気信号である外力をスキャナ105および/または処理デバイス110に伝送する。
【0036】
一実施形態では、PETデータ取得中にデバイスレスPCSを取得するために、短いタイミングフレーム(0.5または1秒)ごとに高速再構成またはサイノグラムが、生成される場合がある。連続する2つのフレームの共分散が計算される場合がある。患者が不快を覚えており、データ取得に支障がある場合、より大きな共分散が予測される場合がある。
【0037】
一実施形態では、上述の例のいずれかは、データをより正確に分割し、かつANNをさらに訓練するために、上述の自動処理と組み合わせて使用することができる。例えば、リラックス状態であることを示す安定した心拍数が現れた場合に患者をスキャンすることができる。しかし、外力フィードバックデバイスを使用することで、スキャニングの同じ時間フレーム中の機械的入力により、強い外力フィードバックによって患者が痛みを感じていることを示すことができる。よって、患者が安定した心拍を呈している場合であっても、患者は、なんらかの痛みの感情に対処するために一部の筋肉を緊張させており、それによりスキャンデータ品質が低下する可能性がある。これは、最終的な再構成画像を生成するために使用されるデータから分割して除外すべきデータとしてフラグ付けされる場合がある。患者の情動状態に関する結果物に不一致があるため、データは、分割されるが、完全に破棄されない場合がある。
【0038】
一実施形態では、2つ以上のパラメータモニタリングのソースが使用されるように、追加の確認形態が使用される場合がある。同じ例に基づくと、ANNは、患者が不快またはストレスを感じているときにフラグ付けされたデータの同じ分割部分に対して、同じスキャンデータを分析することができる。ANNは、データの同じ分割部分で、患者の記録された呼吸パターンを分析し、呼吸パターンが一貫した短い浅い呼吸と、その後の深い呼吸とのパターンを呈し、ゆえに患者がストレス状態であることを示していると判断することができる。すなわち、ANNは、患者の胸部の動きである患者パラメータ内の呼吸パターンを識別し、呼吸パターンから少なくとも1つの呼吸動作を識別する。そして、スキャナ105および/または処理デバイス110は、呼吸パターンから識別された少なくとも1つの呼吸動作のそれぞれに対応する、対応する再構成されたPET画像を生成する。これにより、外力フィードバックデバイスおよびデータによる結果物を確認することができ、この結果物は、先に不確かであると判断されたが、これで、完全に破棄すべきデータとしてラベル付けすることができる。この結果物および対応するデータセットは、ANNをさらに訓練して、そのロバスト性および精度を向上させるために、ANNに再び供給することができる。
【0039】
一実施形態では、患者の快適さレベルII(軽度から中程度の不快)を患者が感じている場合、データ取得が継続されて、PCSを使用するレトロスペクティブデータ補正方法が適用される場合がある。第1のデータ補正方法は、最終のPET再構成のために、整形不可能なPCSに対応するデータ取得物をデータセットから除去することを含む場合がある。第2のデータ補正方法は、取得されたPCSデータに従って取得されたPETデータを再グループ化して、別々の新しいグループを再構成することを含む場合がある。
【0040】
前述したように、患者ごとのスキャンパラメータの較正は、スキャンの準備および期間が短い場合に困難である場合がある。さらに、イメージングシステム100のスキャン設定は、複数のシステム全体にわたって類似する場合があり、その一方で、イメージングシステム100が設置または配設される環境は、大きく変化する場合もある。したがって、ある場所(病院など)における1人の患者に対する較正は、完全に異なる場所(大学の研究室など)における1人の患者に対する較正とは非常に異なるものである可能性がある。さらに、1回のスキャンであっても、例えば、スキャン中に技術者が患者への照明を落とした場合には、患者の情動状態に対応するなんらかの視覚的手がかりを判断する視覚的較正を行うことは、困難である可能性がある。そのような場合、スキャンの開始時に取得された較正データは、もはや有用でない可能性がある。したがって、コントロールされた環境において実施される較正方法について本明細書に記載する。
【0041】
一実施形態では、特に、より長い準備時間を含むスキャニング方法では、患者は、スキャンを実施する前の準備中に、コントロールされた準備環境でモニタされる場合がある。PETまたはPET-SPECTでは、患者は、放射性薬物の投与後など、スキャンが可能となるまでに、30分以上待つ必要がある場合がある。30分以上の間、モニタリングデバイス115a、115b、115cのうち1つまたは複数は、コントロールされた準備環境で患者の情動状態較正データを取得できる。この際、コントロールされた準備環境は、全ての患者に対して標準化された照明レベルおよび温度を含み得る。30分、または10分は、例えば、カメラ動画フィードを取得して、ニューラルネットワークの再訓練を実行するのに十分な時間となり得る。例えば、目標勾配降下法(Targeted Gradient Descent:TGD)ニューラルネットワークは、既に所定の量で訓練されている場合があり、追加の較正データを使用して、リアルタイムでTGDニューラルネットワークをさらに訓練することができ、これにより、特定のタイプのデータにより良好に一致するようにTGDニューラルネットワークを更新(自己洗練)させることができる。この場合、特定のタイプのデータは、目に見える外見に基づく特定の患者の情動状態であり、これは、同じ視覚的データがスキャン中に取得される場合、スキャン後のスキャンデータの分割に有用である場合がある。一実施形態では、情動状態を使用して、スキャナ105をコントロールすることもできる。同様に、PETでは、技術者がイメージングシステム100を準備する間、患者はスキャナ105のガントリに10分以上配置される場合があり、その間に、カメラ動画フィードをTGDニューラルネットワーク向けの訓練データとして分析および使用することができる。
【0042】
一実施形態では、較正データは、患者の病歴または人口統計学的情報に基づいた患者の予測された情動状態を含む場合がある。異なる関連する患者情報カテゴリは、ANNを訓練するための異なる分類子(クラス)に分類することができる。例えば、患者は、ステージIの癌患者である場合があり、かつ患者の病歴は、ANNの訓練の一部として使用される場合がある。特に、患者の医療記録は、該当病院の記録、または複数の異なる病院の記録から取得することができる。ステージIの癌患者は、より痛みに耐えることができ、スキャン中のストレス情動状態の発生が少ない可能性がある。ステージIVの癌患者は、痛みに耐えられず、スキャン中のストレス情動状態の発生がより頻繁に見られる可能性がある。例えば、患者は、所定の年齢群に属する場合があり、かつ関連する患者情報は、ANNの訓練の一部として使用される場合がある。例えば、患者が80歳を超えており、かつ65歳の患者(または以前の同じ患者)よりも一般的な情動を示す場合がある。様々なパラメータおよび分類子を使用して、スキャンを停止する感度などのスキャンの設定、およびストレス情動状態を示すデータ中の特定の特徴を識別するための閾値などのデータ分析値を調整することができる。
【0043】
図3は、本開示の実施形態による、画像を生成する方法300のフローチャートの非限定的な例を示す図を示す。一実施形態では、また前述の説明を参照して、ステップ305で、患者パラメータまたはPCSに対応する時間依存データは、処理デバイス110などによって受信または取得される場合がある。なお、時間依存データとは、例えば、時系列データである。ステップ310で、PETスキャン中に複数の検出器素子で検出されたガンマ線を表すエミッションデータが取得される場合がある。すなわち、患者に対する医用イメージングスキャンにより、スキャンデータとしてエミッションデータが取得される。なお、エミッションデータとは、例えば、ガンマ線を表す放射線データである。ガンマ線は、放射線の一例である。
【0044】
ステップ315で、取得したエミッションデータから除外すべきPETスキャン中の時間フレームが識別される場合があり、識別された時間フレームは、患者パラメータに基づく患者のストレス情動状態に対応する。例えば、機械学習モデルは、取得したエミッションデータから除外すべきPETスキャン中の時間フレームを識別するために、患者パラメータデータに適用される場合がある。すなわち、機械学習モデルを患者パラメータに適用することによって、取得したエミッションデータから除外されるPETスキャン中の時間フレームを識別する。また、例えば、技術者は、取得したエミッションデータから除外すべきPETスキャン中の時間フレームを識別することができる。
【0045】
ステップ320では、機械学習モデルが適用される場合があり、取得されたエミッションデータは、機械学習モデルの出力値に基づいて修正される場合があり、該機械学習モデルの出力値は、患者のストレス情動状態に対応するとして、患者パラメータデータ内で識別された時間フレームである。すなわち、機械学習モデルの出力値は、患者のストレス情動状態に対応する、患者パラメータに基づく時間フレームである。例えば、ステップ320では、取得されたエミッションデータから、ストレス情動状態に対応する時間フレームに対応するエミッションデータを除外することにより、取得されたエミッションデータを修正する。
【0046】
ステップ325で、ストレス情動状態に対応する時間フレームに対応するエミッションデータを除外した修正されたエミッションデータに基づいてPET画像(再構成されたPET画像)を生成する場合がある。このようにして、生成されたPET画像は、情動状態補正画像の一例である。
【0047】
図4Aおよび図4Bは、本開示の実施形態による、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)内の層間の相互結合の例を示す。一実施形態では、CNNは、全結合層、畳み込み層、プーリング層、バッチ正規化層、および活性化層を含む場合があるが、これらの全てについては、上記および下記にて記載している。CNNの特定の好ましい実装形態おいて、畳み込み層は入力層の近くに配置されるが、その一方で、高水準推論を行う全結合層は、損失関数に近い構造のかなり下段に配置される。プーリング層が畳み込み後に挿入される場合があり、これにより、フィルタの空間的範囲、および学習可能なパラメータの量が低減される。バッチ正規化層は、外れ値への勾配分散を正規化し、学習処理を加速する。非線形性を導入して、複雑な予測関係をネットワークが学習できるように、活性化関数も種々の層に組み込まれる。活性化関数は、飽和活性化関数(例えば、シグモイドまたは双曲線正接活性化関数)または正規化活性化関数とすることができる。
【0048】
図4Aは、N個の入力値、K個の隠れ層、および3個の出力値を有する一般的な人工ニューラルネットワーク(ANN)の例を示す。各層はノード(ニューロンとも呼ばれる)で構成されており、各ノードは入力値の加重和を実施して、加重和の結果を閾値と比較して出力値を生成する。ANNは関数のクラスを作成するが、この場合、このクラスのメンバは、閾値、結合重み、またはノードの個数および/またはそれらの結合性などの構造の詳細を変更することによって取得される。ANNのノードは、ニューロン(またはニューロンノード)と呼ばれる場合があり、このニューロンは、ANNシステムの異なる層間で相互結合を有する場合がある。最も簡素なANNは、3つの層を有し、オートエンコーダと呼ばれる。本開示のCNNは、ニューロンの3つ以上の層を有してもよく、入力ニューロンと同数の以下の(1)に示す出力ニューロンを有するが、ここで、Nは、例えば、訓練画像のピクセルの数である。
【0049】
【数1】
【0050】
シナプス(すなわち、ニューロン間の結合部)は、「重み」と呼ばれる値(同じ意味で「係数」または「重み付け係数」とも呼ばれる)を記憶し、計算中にデータを処理する。ANNの出力値は、(i)ニューロンの異なる層間の相互結合パターン、(ii)相互結合部の重みを更新するための学習プロセス、および(iii)ニューロンの重み付けられた入力値をその出力活性化に変換する活性化関数の3つのタイプのパラメータに依存する。
【0051】
数学的に、ニューロンのネットワーク関数m(x)は、他の関数n(x)の合成として定義され、これは、さらに他の関数の合成として定義され得る。これは、図4Aおよび図4Bに示すように変数間の依存関係を表す矢印をもつネットワーク構造として便宜上、表現されることがある。例えば、ANNは、非線形加重和を使用することがあり、ここで、ネットワーク関数m(x)は、以下の式(2)で表される。
【0052】
【数2】
【0053】
ここで、K(通例、活性化関数と呼ばれる)は、双曲線正接などのいくつかの所定の関数である。
【0054】
図4Aで(および図4Bでも同様に)、ニューロン(すなわち、ノード)は、閾値関数の周りの円として描かれている。図4Aに示されている非限定的な例の場合、入力値は線形関数の周りの円として描かれており、また、矢印はニューロン間の方向付けられた伝達を示している。特定の実装形態において、CNNは、順伝播型ネットワークである。
【0055】
本開示のCNNは、観察結果のセットを使用して学習すべき関数Fのクラス内を検索して、m∈Fを見つけることによって、特定のタスクを達成するように機能し、それにより、一部の最適な判断基準(例えば、中止基準)で特定のタスクを解決する。例えば、特定の実装形態において、これは、コスト関数C:F→mを定義することによって達成することが可能であるが、この場合、最適解mに対して、C(m)≦C(m)∀m∈Fである(すなわち、最適解のコストよりも小さいコストの解はない)。コスト関数Cは、解決されるべき問題(例えば、誤差)に対する最適解から特定の解がどの程度かけ離れているかの度合いである。学習アルゴリズムは、解空間を通して繰り返し検索して、最小限のコストを有する関数を見つけ出す。特定の実装形態において、コストは、データの標本(つまり訓練データ)にわたって最小化される。
【0056】
図4Bは、本開示におけるような、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の非限定的例を示す。CNNは、ANNの一タイプであり、画像処理に関して有益な特性を有し、ゆえに、画像処理の適用に関して特別な関連性があるものである。CNNは、ニューロン間の結合性パターンがその中で画像処理の際の畳み込みを表すことがある順伝播型ANNを使用する。例えば、CNNは、受容野と呼ばれる入力画像の一部を処理する小さなニューロン集合の複数の層を使用することによる画像処理最適化で使用されることがある。次に、元の画像のより良好な描写を得るために、それら集合の出力値が、オーバーラップするようにしてタイル配置される場合がある。この処理パターンは、示されているように、畳み込み層491およびプーリング層494を有する複数層にわたって繰り返される場合があり、またバッチ正規化層および活性化層を含む場合がある。
【0057】
概して、上記の応用として、畳み込み層491の後ろに続いて、CNNは、畳み込み層内のニューロンクラスタの出力値を組み合わせる、局所的なおよび/または全体的なプーリング層494を含む場合がある。さらに、特定の実装形態において、CNNはまた、各層の終わりにまたは各層の後に適用される点ごとの非線形性と共に、畳み込み層と全結合層との種々の組み合わせを含む場合もある。
【0058】
CNNには、画像処理に関していくつかの利点がある。自由パラメータの数を減らして、汎化を向上させるために、入力値の小さな領域での畳み込み操作が取り入れられる。CNNの特定の実装形態の著しい利点の1つは、各畳み込み層で重みを共有して使用することであり、これは、同じフィルタ(重みバンク)が、層内の各ピクセルに対して係数として使用されることを意味し、メモリフットプリントを低減し、かつパフォーマンスを向上させる。他の画像処理法と比べて、CNNは、有利には、比較的小さな前処理を使用する。これは、ネットワークが、従来的なアルゴリズムでは手動で設計されたフィルタを学習する役割を果たすことを意味する。特徴を設計する際に、予備知識および人的努力に頼らないことが、CNNの主な利点である。
【0059】
図5Aおよび図5Bは、方法300を実装することができるスキャナ105の非限定的な例を示す。スキャナ105は、矩形の検出器モジュールとしてそれぞれが構成される、いくつかのガンマ線検出器(Gamma-Ray Detector:GRD)(例えば、GRD1、GRD2からGRDN)を備える。一実装形態によれば、検出器リングは、40個のGRDを備える。別の実装形態では、48個のGRDがあり、より多くの数のGRDが使用されると、より大きな内径寸法のスキャナ105が作られる。
【0060】
各GRDは、ガンマ線を吸収して、シンチレーション光子を放射する個々の検出器結晶の2次元アレイを備える場合がある。シンチレーション光子は、GRDに配置される光電子増倍管(PhotoMultiplier Tube:PMT)の2次元アレイによっても検出することができる。ライトガイドが、検出器結晶アレイとPMTとの間に配置される場合がある。
【0061】
あるいは、シンチレーション光子は、シリコン光電子増倍管(Silicon PhotoMultiplier:SiPM)のアレイによって検出され得、個々の検出器結晶のそれぞれは、対応するSiPMを有することができる。
【0062】
各光検出器(例えば、PMTまたはSiPM)は、シンチレーションイベントが発生するとき、および検出イベントを起こすガンマ線のエネルギーを示すアナログ信号を生成できる。さらに、1つの検出器結晶から放射される光子は、2つ以上の光検出器によって検出することができ、検出イベントに対応する検出器結晶は、各光検出器で作成されるアナログ信号に基づいて、例えば、アンガー論理および結晶復号を使用して判断され得る。
【0063】
図5Bは、対象物OBJから放射されたガンマ線を検出するように構成されたガンマ線(ガンマ線)光子計数検出器(GRD)を有するPETスキャナシステムの概略図を示す。GRDは、各ガンマ線検出器に対応するタイミング、位置、およびエネルギーを測定することができる。一実装形態では、ガンマ線検出器は、図5Aおよび5Bに示されるような、リング内に配置される。検出器結晶は、シンチレータ結晶とすることができ、そのシンチレータ結晶は、2次元アレイに配設された個々のシンチレータ素子を有し、該シンチレータ素子は、任意の既知のシンチレーション物質とすることができる。PMTは、各シンチレータ素子からの光が、複数のPMTによって検出されて、シンチレーションイベントのアンガー算術および結晶復号を可能にするように、配置可能である。
【0064】
図5Bは、撮像される対象物OBJがベッド(寝台)516上に置かれ、GRD1からGRDNのGRDモジュールが、対象物OBJおよびベッド516を中心にして周囲方向に配設される、スキャナ105の構造の例を示す。GRDは、ガントリ540に固定結合されている環状構成要素520に固定結合される場合がある。ガントリ540は、PET撮像装置の多数の部品を収容する。PET撮像装置のガントリ540はまた、対象物OBJおよびベッド516がそれを通って通過できる開口部を含む。そして、対消滅イベントにより対象物OBJから反対方向に放射されるガンマ線は、GRDにより検出可能であり、かつ、タイミング情報およびエネルギー情報は、ガンマ線ペアの同時計数を判断するために使用される場合がある。
【0065】
図5Bはまた、ガンマ線検出データを収集、記憶、処理、および分配する回路およびハードウェアも示している。これらの回路およびハードウェアは、プロセッサ570、ネットワークコントローラ574、メモリ578、およびデータ取得システム(Data Acquisition System:DAS)576、を備える。プロセッサ570、ネットワークコントローラ574、メモリ578、およびDAS576は、処理デバイス110に対応する。PET撮像装置はまた、GRDからの検出測定結果をDAS576、プロセッサ570、メモリ578、およびネットワークコントローラ574に送出するデータチャンネルを備える。DAS576は、検出器からの検出データの取得、デジタル化、および送出をコントロールすることができる。一実装形態において、DAS576は、ベッド516の動きをコントロールする。プロセッサ570は、本明細書で論じるように、検出データからの画像の再構成、検出データの再構成前処理、および画像データの再構成後処理を含む機能を実施する。例えば、プロセッサ570は、方法300(方法300の処理)を実行する。
【0066】
プロセッサ570は、本明細書に記載される方法の種々のステップおよびその変形形態を実施するように構成することができる。プロセッサ570は、個別論理ゲート、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)、または他の複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)として実装されることがあるCPUを含む場合がある。FPGAまたはCPLDの実装形態は、VHDL、Verilog、または任意のその他のハードウェア記述言語で符号化されてもよく、かつ、その符号は、FPGAまたはCPLD内部の電子メモリに直接記憶されるか、または別個の電子メモリとして記憶されてよい。さらに、メモリは、ROM、EPROM、EEPROMまたはFLASH(登録商標)メモリのような非揮発性メモリであってもよい。メモリは、静的または動的RAMなどの揮発性メモリとすることができ、電子メモリおよびFPGAまたはCPLDとメモリとの間の相互動作を管理するために、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサなどのプロセッサが設けられてもよい。
【0067】
あるいは、プロセッサ570のCPUは、本明細書に記載の方法の種々のステップを実施するコンピュータ可読命令のセットを含むコンピュータプログラムを実行することができ、このプログラムは、上述の非一時的電子メモリおよび/またはハードディスクドライブ、CD、DVD、FLASHドライブまたは任意のその他の既知の記憶媒体のいずれかに記憶される。さらに、このコンピュータ可読命令は、実用アプリケーション、バックグラウンドデーモン、またはオペレーティングシステムのコンポーネント、あるいはそれらの組み合わせとして提供されてもよく、米国のインテル社のXenonプロセッサ、または米国のAMD社のOpteronプロセッサなどのプロセッサ、ならびに、Microsoft VISTA、UNIX(登録商標)、Solaris、LINUX(登録商標)、Apple、MAC-OSおよび当業者に既知の他のオペレーティングシステムなどのオペレーティングシステムと連動して実行される。さらに、CPUは、命令を実施するために並行して協動する複数のプロセッサとして実装されることがある。
【0068】
メモリ578は、ハードディスクドライブ、CD-ROMドライブ、DVDドライブ、FLASHドライブ、RAM、ROMまたは当該技術分野において既知の任意のその他の電子記憶装置とすることができる。
【0069】
米国インテル社のインテルイーサーネット(登録商標)PROネットワークインターフェースカードなどのネットワークコントローラ574が、PET撮像装置の種々の部品間をインターフェースすることができる。追加として、ネットワークコントローラ574は、外部のネットワークともインターフェースすることができる。理解されるように、この外部ネットワークは、インターネットなどの公共ネットワーク、またはLANもしくはWANネットワークなどの私的ネットワーク、あるいはそれらの組み合わせとすることができ、かつ、PSTNまたはISDNサブネットワークを含むこともできる。この外部ネットワークは、イーサネット(登録商標)ネットワークのような有線方式、またはEDGE、4Gおよび4G無線セルラーシステムを含むセルラーネットワークのような無線方式とすることもできる。無線ネットワークは、WiFi、Bluetooth(登録商標)、または既知である通信の任意のその他の無線形態とすることができる。
【0070】
前述の説明では、具体的な詳細、例えば、処理システムの特定の形態、それに関して使用される様々な構成要素およびプロセスの説明が記載されている。しかし、本明細書の技法は、これらの具体的詳細からはそれるその他の実施形態において実施されてもよいこと、およびそのような詳細は、説明目的であって、制限するものではないことが理解されるべきである。本明細書に開示された実施形態は、添付の図面を参照して説明してきた。同様に、説明の目的のために、特定の数、材料、および構成が、完全な理解を提供するために記載されている。それでも、実施形態は、そのような特定の詳細なしに実施されてもよい。実質的に同一の機能構成を有する構成要素には、類似の参照符号が付され、そのためいずれかの重複する説明は省略される場合がある。
【0071】
種々の技法は、様々な実施形態の理解を助けるために、複数の別個の操作として記載されている。説明の順序は、これらの操作が必然的に順序に従うことを意味すると解釈されるべきではない。実際、これらの操作は、説明した順序で実施される必要はない。説明した操作は、上記実施形態とは異なる順序で実施されてもよい。種々の追加の操作が実施されてもよく、および/または記載された操作は、追加の実施形態において省略されてもよい。
【0072】
本開示の実施形態は、以下のように付加的に述べることもできる。
【0073】
(1)処理回路を備えた医用画像診断装置であって、該処理回路は、モニタリングデバイスを介して患者パラメータに対応する時間依存データを受信し、医用イメージングスキャンにより得られたスキャンデータを取得し、取得したスキャンデータら除外される医用イメージングスキャン中の時間フレームであって、患者パラメータに基づく患者のストレス情動状態に対応する時間フレームを識別し、取得したスキャンデータからストレス情動状態に対応する時間フレームに対応するスキャンデータを除外することにより取得したスキャンデータを修正し、修正されたスキャンデータに基づいて、情動状態補正画像を生成するように構成された医用画像診断装置。
【0074】
(2)処理回路は、スキャンデータとして医用イメージングスキャン中に検出された放射線を表すエミッションデータを取得する、(1)に記載の医用画像診断装置。
【0075】
(3)取得されたエミッションデータは、ポジトロン放射断層撮影(PET)スキャン中に複数の検出器素子で検出されたガンマ線を表す、(2)に記載の医用画像診断装置。
【0076】
(4)処理回路は、機械学習モデルを受信した患者パラメータデータに適用することによって、取得したエミッションデータから除外されるPETスキャン中の時間フレームを識別する、(3)に記載の医用画像診断装置。
【0077】
(5)処理回路は、機械学習モデルの出力値に基づいて、取得したエミッションデータを修正するようにさらに構成され、機械学習モデルの出力値は、患者のストレス情動状態に対応するとして、患者パラメータ内で識別された時間フレーム(患者パラメータに基づく時間フレーム)である、(4)に記載の医用画像診断装置。
【0078】
(6)機械学習モデルは、患者のストレス情動状態に対応するとして識別された、参照患者パラメータおよび対応する参照エミッションデータ(患者パラメータおよび対応するエミッションデータ)に基づいて訓練されたニューラルネットワーク、を含む、(4)または(5)に記載の医用画像診断装置。
【0079】
(7)機械学習モデルは、エミッションデータの取得の前(エミッションデータが取得される前)に取得された患者パラメータに基づいて訓練されたニューラルネットワークを含み、該患者パラメータデータは、患者のリラックス情動状態に対応する参照データ(データ)である、(4)から(6)のいずれか1つに記載の医用画像診断装置。
【0080】
(8)患者パラメータは、患者の胸部の動きであり、機械学習モデルは、患者パラメータデータ内の呼吸パターンを識別するように構成され、呼吸パターンから少なくとも1つの呼吸動作を識別し、処理回路は、呼吸パターンから識別された少なくとも1つの呼吸動作のそれぞれに対応する、対応する再構成されたPET画像を生成するようにさらに構成される、(4)から(7)のいずれか1つに記載の医用画像診断装置。
【0081】
(9)処理回路は、患者パラメータに対応する受信した時間依存データに基づいて、ユーザによるスキャンデータの取得を中止することによって、スキャンデータを取得するようにさらに構成される、(1)から(8)のいずれか1つに記載の医用画像診断装置。
【0082】
(10)モニタリングデバイスは、患者からの機械的入力を受信するように構成された外力フィードバックデバイスを含み、患者パラメータは、外力であり、外力は、患者からの機械的入力から変換された電気信号である、(1)から(9)のいずれか1つに記載の医用画像診断装置。
【0083】
(11)モニタリングデバイスは、PETスキャン中の患者の赤外線データを取得するように構成されたカメラを含み、患者パラメータは、患者の体温である、(1)から(10)のいずれか1つに記載の医用画像診断装置。
【0084】
(12)モニタリングデバイスを介して患者パラメータに対応する時間依存データを受信することと、医用イメージングスキャンにより得られたスキャンデータを取得することと、取得したエミッションデータから除外される医用イメージングスキャン中の時間フレームであって、患者パラメータに基づく患者のストレス情動状態に対応する時間フレームを識別することと、取得したスキャンデータからストレス情動状態に対応する時間フレームに対応するスキャンデータを除外することにより取得したスキャンデータを修正することと、修正されたエミッションデータに基づいて、情動状態補正画像を生成することと、を含む、方法。
【0085】
(13)スキャンデータを取得することは、スキャンデータとして医用イメージングスキャン中に検出された放射線を表すエミッションデータを取得することを含む、(12)に記載の方法。
【0086】
(14)取得されたエミッションデータは、ポジトロン放射断層撮影(PET)スキャン中に複数の検出器素子で検出されたガンマ線を表す、(13)に記載の方法。
【0087】
(15)機械学習モデルを受信した患者パラメータデータに適用することによって、取得したエミッションデータから除外されるPETスキャン中の時間フレームを識別することをさらに含む、(14)に記載の方法。
【0088】
(16)機械学習モデルの出力値に基づいて、取得したエミッションデータを修正することをさらに含み、機械学習モデルの出力値は、患者のストレス情動状態に対応するとして、患者パラメータデータ内で識別された時間フレーム(患者パラメータに基づく時間フレーム)である、(15)に記載の方法。
【0089】
(17)機械学習モデルは、患者のストレス情動状態に対応するとして識別された、参照患者パラメータデータおよび対応する参照エミッションデータ(患者パラメータおよび対応するエミッションデータ)に基づいて訓練されたニューラルネットワーク、を含む、(15)または(16)に記載の方法。
【0090】
(18)機械学習モデルは、エミッションデータの取得の前(エミッションデータが取得される前)に取得された患者パラメータデータに基づいて訓練されたニューラルネットワークを含み、該患者パラメータデータは、患者のリラックス情動状態に対応する参照データ(データ)である、(15)から(17)のいずれか1つに記載の方法。
【0091】
(19)患者パラメータは、患者の胸部の動きであり、機械学習モデルは、患者パラメータデータ内の呼吸パターンを識別するように構成され、呼吸パターンから少なくとも1つの呼吸動作を識別し、かつ方法は、呼吸パターンから識別された少なくとも1つの呼吸動作のそれぞれに対応する、対応する再構成されたPET画像を生成することをさらに含む、(15)から(18)のいずれか1つに記載の方法。
【0092】
(20)スキャンデータを取得することは、患者パラメータに対応する受信した時間依存データに基づいて、ユーザによるスキャンデータの取得を中止することをさらに含む、(12)から(19)のいずれか1つに記載の方法。
【0093】
(21)モニタリングデバイスは、患者からの機械的入力を受信するように構成された外力フィードバックデバイスを含み、患者パラメータは、外力であり、外力は、患者からの機械的入力から変換された電気信号である、(12)から(20)のいずれか1つに記載の方法。
【0094】
(22)モニタリングデバイスを介して患者に関するパラメータに対応する時系列データを受信する処理と、医用イメージングスキャンにより得られたスキャンデータを取得する処理と、取得したスキャンデータから除外される前記医用イメージングスキャン中の時間フレームであって、前記患者に関するパラメータに基づく前記患者のストレス情動状態に対応する時間フレームを識別する処理と、前記取得したスキャンデータから前記ストレス情動状態に対応する前記時間フレームに対応するスキャンデータを除外することにより前記取得したスキャンデータを修正する処理と、前記修正されたスキャンデータに基づいて、情動状態補正画像を生成する処理と、をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【0095】
(23)処理回路を備えたPET装置であって、該処理回路は、モニタリングデバイスを介して患者パラメータに対応する時間依存データを受信し、ポジトロン放射断層撮影(PET)スキャン中に複数の検出器素子で検出されたガンマ線を表すエミッションデータを取得し、取得したエミッションデータから除外されるPETスキャン中の時間フレームであって、患者パラメータに基づく患者のストレス情動状態に対応する時間フレームを識別し、取得したエミッションデータからストレス情動状態に対応する時間フレームに対応するエミッションデータを除外することにより取得したエミッションデータを修正し、修正されたエミッションデータに基づいて、再構成されたPET画像を生成する、ように構成される、PET装置。
【0096】
(24)モニタリングデバイスは、光学画像を取得するように構成されたカメラを含み、別のモニタリングデバイスは、患者の心拍位相を推定するために、心電図(EKG)信号データを取得するように構成されたEKG装置を含み、取得したエミッションデータから除外するように識別された時間フレームは、光学画像およびEKG信号データの組み合わせに基づく、(1)に記載の医用画像診断装置。
【0097】
上述した少なくとも1つの実施形態によれば、画質の低下が抑制された画像を得ることが可能である。
【0098】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0099】
100 イメージングシステム
105 スキャナ
110 処理デバイス
115 患者(被検体)の快適さモニタリングシステム
570 プロセッサ
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図5A
図5B