(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160825
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】固体スペクトル走査を備えたLIDARシステム
(51)【国際特許分類】
G01S 7/4911 20200101AFI20231026BHJP
G01S 17/34 20200101ALI20231026BHJP
【FI】
G01S7/4911
G01S17/34
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023131949
(22)【出願日】2023-08-14
(62)【分割の表示】P 2021576345の分割
【原出願日】2020-06-03
(31)【優先権主張番号】16/449,189
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】521095112
【氏名又は名称】エヴァ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】レズク ミナ
(72)【発明者】
【氏名】コカオグル オマー ピー
(72)【発明者】
【氏名】アヴチ オーウザン
(72)【発明者】
【氏名】オザ ニール エヌ
(72)【発明者】
【氏名】ガニエ キース
(72)【発明者】
【氏名】ベーザディ ベーサン
(57)【要約】
【課題】高い角速度及び単一モードファイバベースの検出を備えたミラーを使用する時に、遠隔物体からのターゲット信号は激しく劣化する。
【解決手段】第1の周波数を有する第1の光ビーム及び第2の周波数を有する第2の光ビームを放出するための光源と第1の周波数を有する第1の光ビームを第1の角度で及び第2の周波数を有する第2の光ビームを第2の角度で偏向させるための分散要素とを含む光検出及び測距(LIDAR)装置を提供する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光検出及び測距(LIDAR)装置であって、
第1の周波数を有する第1の光ビーム及び第2の周波数を有する第2の光ビームを放出するための光源と、
前記第1の周波数を有する前記第1の光ビームを第1の角度で及び前記第2の周波数を有する前記第2の光ビームを第2の角度で偏向させるための分散要素と、
を含むことを特徴とするLIDAR装置。
【請求項2】
前記分散要素は、前記第1の光ビーム及び前記第2の光ビームを第1の軸線に沿って偏向させ、
LIDAR装置が、前記第1の光ビーム及び前記第2の光ビームを前記第1の軸線と直交する第2の軸線に沿って偏向させるためのスキャナを更に含む、請求項1に記載のLIDAR装置。
【請求項3】
偏光ビームスプリッタ(PBS)を更に含み、前記PBSは、第1の偏光状態の光を第1の方向で前記PBSを通過させ、かつ第2の偏光状態の光を該第1の方向とは異なる第2の方向に反射する、請求項1に記載のLIDAR装置。
【請求項4】
前記光源からの前記第1の光ビーム及び前記第2の光ビームを第1の方向に向け、かつ該第1の光ビームに関する第1のターゲット信号及び該第2の光ビームに関する第2のターゲット信号を第2の方向に向けるための光サーキュレータを更に含む、請求項1に記載のLIDAR装置。
【請求項5】
前記第1の光ビームに関する第1のターゲット信号と第1のローカル発振器信号とを含む第1の組合せ信号及び前記第2の光ビームに関する第2のターゲット信号と第2のローカル発振器信号とを含む第2の組合せ信号を受信するための光検出器を更に含む、請求項1に記載のLIDAR装置。
【請求項6】
前記光源及び前記光検出器は、光子チップ上に位置決めされている、請求項5に記載のLIDAR装置。
【請求項7】
前記第1の光ビーム及び前記第2の光ビームの偏光状態を変更するための偏光波長板を更に含む、請求項1に記載のLIDAR装置。
【請求項8】
前記偏光波長板は、4分の1波長板又は半波長板のうちの一方を含む、請求項7に記載のLIDAR装置。
【請求項9】
前記偏光波長板は、前記第1の光ビームの一部分を第1のローカル発振器信号として及び前記第2の光ビームの一部分を第2のローカル発振器信号として戻すための反射器又はコーティングを更に含む、請求項7に記載のLIDAR装置。
【請求項10】
前記第1の周波数を有する前記第1の光ビームは、該第1の周波数の付近に同調された第1の線形チャープを含み、前記第2の周波数を有する前記第2の光ビームは、該第2の周波数の付近に同調された第2の線形チャープを含む、請求項1に記載のLIDAR装置。
【請求項11】
前記第1の光ビームの一部分を第1の基準信号として及び前記第2の光ビームの一部分を第2の基準信号として基準アーム回路に提供するためのタップを含む光アイソレータを更に含む、請求項1に記載のLIDAR装置。
【請求項12】
前記基準アーム回路は、
前記第1の基準信号及び前記第2の基準信号を受信するための干渉計と、
前記干渉計から前記第1の基準信号及び前記第2の基準信号を受信するための光検出器と、を含む、請求項11に記載のLIDAR装置。
【請求項13】
前記基準アーム回路は、第1のローカル発振器信号を発生させるために前記第1の基準信号の一部分及び第2のローカル発振器信号を発生させるために前記第2の基準信号の一部分を分割するためのカプラを更に含む、請求項12に記載のLIDAR装置。
【請求項14】
光検出及び測距(LIDAR)システムの光源によって、第1の周波数を有する第1の光ビーム及び第2の周波数を有する第2の光ビームを発生させる段階と、
前記第1の周波数を有する前記第1の光ビーム及び前記第2の周波数を有する前記第2の光ビームを、該第1の周波数を有する該第1の光ビームを第1の角度で及び該第2の周波数を有する該第2の光ビームを第2の角度で偏向させる分散要素に提供する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
前記分散要素は、前記第1の光ビーム及び前記第2の光ビームを第1の軸線に沿って偏向させ、前記方法が、
前記第1の光ビーム及び前記第2の光ビームを、前記第1の軸線と直交する第2の軸線に沿って該第1の光ビーム及び該第2の光ビームを偏向させるためのスキャナに提供する段階を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1のローカル発振器信号を発生させるために前記第1の光ビームの一部分及び第2のローカル発振器信号を発生させるために前記第2の光ビームの一部分を第1のカプラによって分割する段階と、
前記第1の光ビームに関する第1のターゲット信号及び前記第2の光ビームに関する第2のターゲット信号を受信する段階と、
第2のカプラによって、第1の組合せ信号を発生させるために前記第1のターゲット信号を前記第1のローカル発振器信号と及び第2の組合せ信号を発生させるために前記第2のターゲット信号を前記第2のローカル発振器信号と組み合わせる段階と、
前記第1の組合せ信号及び前記第2の組合せ信号を光検出器に提供する段階と、
を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
第1のローカル発振器信号を発生させるために前記第1の光ビーム及び第2のローカル発振器信号を発生させるために前記第2の光ビームの一部分を偏光波長板の反射器又はコーティングによって反射させる段階と、
前記第1の光ビームに関する第1のターゲット信号及び前記第2の光ビームに関する第2のターゲット信号を受信する段階と、
カプラによって、第1の組合せ信号を発生させるために前記第1のターゲット信号を前記第1のローカル発振器信号と及び第2の組合せ信号を発生させるために前記第2のターゲット信号を前記第2のローカル発振器信号と組み合わせる段階と、
前記第1の組合せ信号及び前記第2の組合せ信号を光検出器に提供する段階と、
を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の周波数を有する前記第1の光ビーム及び前記第2の周波数を有する前記第2の光ビームを発生させる段階は、前記第1の周波数の付近に同調された第1の線形チャープ及び前記第2の周波数の付近に同調された第2の線形チャープを発生させる段階を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の光ビームと前記第2の光ビームの一部分を基準信号として基準アーム回路に提供する段階を更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
複数の光ビームの各々が異なる対応する周波数を有する該複数の光ビームを前記LIDARシステムの複数の光源によって発生させる段階を更に含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
〔関連出願〕
この出願は、これにより本明細書に引用によってその内容全体が組み込まれる2019年6月21日出願の米国特許出願第16/449,189号の「35 U.S.C.§119(e)」の下での利益を主張するものである。
【0002】
本発明の開示は、一般的に、2次元にわたる距離及び速度の同時測定を提供する光検出及び測距(LIDAR)に関する。
【背景技術】
【0003】
高速走査ミラーは、殆どの従来のLIDARシステムでシーンを照射するのに使用される主要構成要素である。1つのミラーが典型的にX方向(方位角)に沿って高速で走査し、一方で別のミラーがY方向(仰角)に沿って低速で走査する。光放出とターゲット反射からの検出は、典型的に単一モードファイバを通じて同軸的に行われる。回収された光は、距離及び潜在的に速度情報を抽出するのに使用される測定遅延又は変更された周波数シグニチャーを有する。ポイント毎に検出された距離情報が走査ミラーからの角度位置フィードバックと組み合わされる時に3Dポイントクラウドを確立することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
より高いフレームレートを達成するために、ミラーの角速度、特により高速の走査方向でのスキャナ(本事例ではXスキャナ)の角速度が高められる。高い角速度及び単一モードファイバベースの検出を備えたミラーを使用する時に、遠隔物体からのターゲット信号は激しく劣化する。信号劣化は、主として光信号(パルス又は周波数掃引式)の発射時から遠隔散乱ターゲットからの同じ信号の回収時までのスキャナミラーの角度位置の差に起因する。この僅かな角度変化は、ファイバ先端でのターゲット信号の離脱を引き起こして結合効率を低減し、これは、それ自体がより弱い信号検出として顕在化する。そのような劣化は、ファイバ径が小さくなる時、例えば、単一モードファイバが~10μm直径を有する時又はミラーの角速度が高くなる時により激しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の開示は、限定ではないが以下の例示的実施を含む。
【0006】
一部の例示的実施は、第1の周波数を有する第1の光ビーム及び第2の周波数を有する第2の光ビームを放出するための光源と、第1の周波数を有する第1の光ビームを第1の角度で及び第2の周波数を有する第2の光ビームを第2の角度で偏向させるための分散要素とを含む光検出及び測距(LIDAR)装置を提供する。
【0007】
一部の例示的実施は、第1の周波数を有する第1の光ビーム及び第2の周波数を有する第2の光ビームを光検出及び測距(LIDAR)システムの光源によって発生させる段階を含む方法を提供する。本方法は、第1の周波数を有する第1の光ビームを第1の角度で及び第2の周波数を有する第2の光ビームを第1の角度で偏向させる分散要素に第1の周波数を有する第1の光ビーム及び第2の周波数を有する第2の光ビームを提供する段階を更に含むことができる。
【0008】
本発明の開示のこれら及び他の特徴、態様、及び利点は、以下の詳細説明を下記で簡単に説明する添付図面と共に読解することによって明らかであろう。本発明の開示は、本発明の開示に示す2、3、4、又は5以上の特徴又は要素のあらゆる組合せをそのような特徴又は要素が本明細書に説明する特定の例示的実施に明示的に組み合わされるか又は他に列挙されるか否かに関わらず含む。本発明の開示は、本発明の開示の内容が他に明確に指定しない限り、本発明の開示の態様及び例示的実施のいずれにおいてもいずれかの分離可能な特徴又は要素を組合せ可能なものとして捉えるべきであるように全体論的に読解されるように意図したものである。
【0009】
従って、この「概要」は、本発明の開示の一部の態様の基本的な理解を提供するように一部の例示的実施を要約するために提供したものに過ぎないことは認められるであろう。従って、上述の例示的実施は単なる例に過ぎず、本発明の開示の範囲又は精神を狭めるものと決して解釈すべきではないことは認められるであろう。他の例示的実施、態様、及び利点は、一部の説明する例示的実施の原理を一例として示す添付図面と共に以下の詳細説明から明らかになるであろう。
【0010】
本発明の開示の実施形態及び実施は、以下に提供する詳細説明から、更に本発明の開示の様々な態様及び実施の添付図面からより完全に理解されるであろうが、これらの詳細説明及び添付図面は、本発明の開示をこれらの特定の実施形態又は実施に限定するものと捉えるべきではなく、説明及び理解のみを目的とするものと捉えられたい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の開示の例示的実施によるLIDARシステムを示す図である。
【
図2】本発明の開示の実施形態によるLIDARシステムの態様を示す図である。
【
図3】本発明の開示の実施形態により異なる周波数の付近に同調されたLIDARシステムによって発生された複数の線形チャープの図である。
【
図4】本発明の開示の実施形態により光ビームの周波数に基づいて異なる角度で光ビームを偏向させるLIDARシステムの分散要素の例を示す図である。
【
図5】本発明の開示の他の実施形態によるLIDARシステムの態様を示す図である。
【
図6】本発明の開示の一部の実施形態によるLIDARシステムの態様を示す図である。
【
図7】本発明の開示の実施形態によるLIDARシステムの態様を示す図である。
【
図8】本発明の開示の実施形態により複数の光源を有するLIDARシステムの態様を示す図である。
【
図9】本発明の開示の実施によるLIDARシステムを用いた固体スペクトル走査の方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の開示の例示的実施は、改善された走査LIDARシステムに関する。本発明の開示の例示的実施は、従来のLIDARシステムの欠点及び従来のFM LIDARシステムの制限を解消するために周波数変調(FM)とコヒーレント検出とを使用するタイプのLIDARに基づいている。歴史的に、FM LIDARシステムは、ビームの復路での有意な損失を欠点とし、従って、多くの場合にかなり嵩高なそのようなシステムは、飛行時間(TOF)LIDARシステムと同程度の距離を測定するのにより高い平均ビーム出力電力を必要とする。しかし、距離は、眼に安全な出力電力に対する作動距離によって制限される。
【0013】
本発明の開示の例示的実施は、コヒーレント検出を用いて距離及び速度を同時に測定するように構成され、他のLIDARシステムからのクロストークに対するノイズ耐性という追加の利点を有する。他の実施は、距離、フレームレート、又は検出を改善するために非コヒーレントシステムと併用することができる。例示的実施は、ビームの復路での光損失を最小にし、それによってシステムの測定距離を長くする。更に、非縮退光源を使用することにより、例示的実施は、簡潔性と変化する環境条件下での相対的安定性とに起因して望ましいプラットフォームである集積シリコンフォトニクスにおいて多くの場合に使用される成熟した波長分割多重化(WDM)技術を利用することができる。
【0014】
従来の周波数変調連続波(FMCW)LIDARシステムは、ターゲット空間を3次元(3D)空間と時間とでマッピングするために1又は複数のレーザビームを望ましい視野(FOV)にわたって走査することに依存する。レーザビームの角度走査は、検流計ベースのスキャナのような移動機械構成要素を使用する。検流計ベースのスキャナ、並びに他の機械ベースのスキャナは、一般的に故障しがちな移動部品を多く含む。更に、機械ベースのスキャナの複雑さに起因してそのようなスキャナの価格は比較的高く、その結果、従来のFMCW LIDARシステムの大量生産には困難がもたらされる。
【0015】
本発明の開示の例示的実施は、分散要素を含むFMCW LIDARシステムを用いてスペクトル走査を実施することによって上記及び他の欠点に対処する。実施形態では、システムは、回折格子又は他のいずれかの屈折ベースの光学系を使用することができるが、簡略化の目的で「分散」という用語を用いて作動要素が光源波長の変化に起因して走査角を変化させるという概念を包含することができる。本発明の開示の実施形態は、FMCW LIDARシステムの1又は2以上の光源によって発生された光ビームの波長/周波数ベースのステアリングを利用する。FMCW LIDARシステムの光源は、FOVに対応する帯域幅にわたって異なる周波数を有する光ビームを発生させることができる。例えば、光源は、各々が異なる周波数の付近に同調された複数の線形チャープを発生させることができる。異なる周波数を有する光ビームは、分散要素に提供される。分散要素は、光ビームの周波数に基づいて異なる角度で光ビームを偏向させる材料で製造されたFMCW LIDARシステムの受動構成要素である。例えば、チャープの偏向角が望ましいFOVを網羅するように、複数の線形チャープを異なる周波数で分散要素に提供することができる。
【0016】
従って、分散要素を含むFMCW LIDARシステムを用いてスペクトル走査を実施することにより、機械ベースのスキャナを使用することなく光ビームを望ましいFOVにわたって伝達することができる。分散要素は移動部品を含まない受動構成要素であるので、故障の可能性が機械ベースのスキャナと比較して有意に低減され、FMCW LIDARシステムの性能が改善される。更に、分散要素のコストは機械ベースのスキャナと比較して相対的に低く、FMCW LIDARシステムの製造可能性が改善される。
【0017】
本発明の開示の実施形態をFMCW LIDARシステムを用いて説明するが、本発明の開示の態様は、交通、製造、計量、医療、及び警備の市場を含むあらゆる感知市場によって利用することができる。更に、本発明の開示の態様は、あらゆるタイプのLIDARシステムに適用することができる。例えば、本発明の開示の態様は、TOF LIDARシステムに適用することができる。
【0018】
図1は、本発明の開示の例示的実施によるLIDARシステム100を示している。LIDARシステム100は、いくつかの構成要素の各々の1又は2以上を含むが、
図1に示すものよりも少ない又は追加の構成要素を含むことができる。LIDARシステム100は、交通システム、製造システム、計量システム、医療システム、及び警備システム等であるがこれらに限定されないあらゆる感知市場に実施することができる。例えば、自動車産業では、説明するビーム送出システムは、自動運転者支援システム又は自律走行車両に向けて空間認識を支援することができる周波数変調連続波(FMCW)デバイスのフロントエンドになる。図示のように、LIDARシステム100は、フォトニクスチップ上に実施された光学回路101を含む。光学回路101は、能動光学構成要素と受動光学構成要素の組合せを含むことができる。能動光学構成要素は、光信号などを発生、増幅、又は検出することができる。一部の例では、能動光学回路は、異なる波長の光ビーム、1又は2以上の光学増幅器、又は1又は2以上の光学検出器などを含む。
【0019】
自由空間光学系115は、光信号を伝達するための光学導波管に光を結合又は脱結合し、能動光学回路の適切な入力/出力ポートに光信号を経路指定及び操作するための1又は2以上のレンズ要素を含むことができる。自由空間光学系115は、タップ、波長分割マルチプレクサ、スプリッタ/コンバイナ、偏光ビームスプリッタ、コリメータ、又はカプラなどを含むことができる。一部の実施形態では、後に議論するように、自由空間光学系115は、偏光状態を変換し、受光した偏光光を偏光ビームスプリッタ(PBS)を用いて光学検出器に向けるための構成要素を含むことができる。自由空間光学系115は、下記でより詳細に説明するように、異なる周波数を有する複数の光ビームを軸線(例えば、高速軸線)に沿って異なる角度で偏向させるための分散要素を更に含む。
【0020】
実施形態では、LIDARシステム100は、環境を走査パターンに従って走査するように光信号をステアリングするために分散要素の高速軸線に直交するか又は実質的に直交する軸線(例えば、低速軸線)に沿って回転可能な1又は2以上の走査ミラーを含む光学スキャナ102を含む。例えば、走査ミラーは、1又は2以上のガルバノメータ(検流計)によって回転可能とすることができる。光学スキャナ102は、環境内のいずれかの物体上に入射する光を光学回路101の受動光学回路構成要素に戻される戻り光ビームの中に回収する。例えば、戻り光ビームは、偏光ビームスプリッタによって光学検出器に向けることができる。ミラー及び検流計に加えて、光学走査システムは、4分の1波長板、レンズ、又は反射防止被覆窓などのような構成要素を含むことができる。
【0021】
光学回路101及び光学スキャナ102を制御及びサポートするために、LIDARシステム100は、LIDAR制御システム110を含む。LIDAR制御システム110は、LIDARシステム100のための処理デバイスを含むことができる。実施形態では、処理デバイスは、マイクロプロセッサ又は中央演算処理装置などのような1又は2以上の汎用処理デバイスとすることができる。より具体的には、処理デバイスは、複合命令セットコンピュータ(CISC)マイクロプロセッサ、縮小命令セットコンピュータ(RISC)マイクロプロセッサ、超長命令語(VLIW)マイクロプロセッサ、又は他の命令セットを実施するプロセッサ、又は命令セットの組合せを実施するプロセッサとすることができる。処理デバイスは、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、又はネットワークプロセッサなどのような1又は2以上の専用処理デバイスとすることができる。
【0022】
一部の実施形態では、LIDAR制御システム110は、デジタル信号プロセッサのような信号処理ユニット112を含むことができる。LIDAR制御システム110は、光ドライバ103を制御するためのデジタル制御信号を出力するように構成される。一部の実施形態では、デジタル制御信号は、信号変換ユニット106を通してアナログ信号に変換することができる。例えば、信号変換ユニット106は、デジタルアナログコンバータを含むことができる。次に、光ドライバ103は、レーザのような光源及び増幅器を駆動するための駆動信号を光学回路101の能動構成要素に提供することができる。一部の実施形態では、複数の光源を駆動するために、いくつかの光ドライバ103及び信号変換ユニット106を設けることができる。
【0023】
LIDAR制御システム110は、光学スキャナ102に対するデジタル制御信号を出力するようにも構成される。運動制御システム105は、LIDAR制御システム110から受信した制御信号に基づいて光学スキャナ102を制御することができる。例えば、デジタルアナログコンバータは、LIDAR制御システム110からの座標経路指定情報を光学スキャナ102内の検流計が解釈可能な信号に変換することができる。一部の実施形態では、運動制御システム105は、光学スキャナ102の構成要素の位置又は作動に関する情報をLIDAR制御システム110に戻すことができる。例えば、次に、アナログデジタルコンバータは、検流計の位置に関する情報をLIDAR制御システム110が解釈可能な信号に変換することができる。
【0024】
LIDAR制御システム110は、到着するデジタル信号を解析するように更に構成される。これに関して、LIDARシステム100は、光学回路101が受信する1又は2以上のビームを測定するための光学受信機104を含む。例えば、基準ビーム受信機は、能動光学回路からの基準ビームの大きさ又は振幅を測定することができ、アナログデジタルコンバータは、基準受信機からの信号をLIDAR制御システム110が解釈可能な信号に変換する。ターゲット受信機は、ターゲットの距離及び速度に関する情報をビート周波数変調光信号の形態で伝達する光信号を測定する。反射ビームは、ローカル発振器からの第2の信号と混合することができる。光学受信機104は、ターゲット受信機からの信号をLIDAR制御システム110が解釈可能な信号に変換するための高速アナログデジタルコンバータを含むことができる。一部の実施形態では、LIDAR制御システム110による受信の前に、光学受信機104からの信号は、信号調整107を受けることができる。例えば、受信信号の増幅のため、光学受信機104からの信号を演算増幅器に提供することができ、増幅された信号をLIDAR制御システム110に提供することができる。
【0025】
一部の用途では、LIDARシステム100は、環境の画像を取り込むように構成された1又は2以上の撮像デバイス108、システムの場所を与えるように構成された全地球測位システム109、又は他のセンサ入力を更に含むことができる。LIDARシステム100は、画像処理システム114を含むことができる。画像処理システム114は、画像及び場所を受信し、これらの画像及び場所又はそれらに関する情報をLIDAR制御システム110又はLIDARシステム100に接続された他のシステムに送るように構成することができる。
【0026】
一部の例による作動では、LIDARシステム100は、2次元にわたる距離及び速度を同時に測定するために非縮退光源を使用するように構成される。この機能は、周囲環境の距離、速度、方位角、及び仰角の実時間長測距を可能にする。一部の例示的実施では、システムは、複数の変調光ビームを同じターゲットに指向させる。
【0027】
一部の例では、走査過程は、光ドライバ103及びLIDAR制御システム110を用いて始まる。LIDAR制御システム110は、1又は2以上の光ビームを独立に変調するように光ドライバ103に命令し、これらの変調信号は、受動光学回路を通ってコリメータに伝播する。コリメータは、この光を運動制御サブシステムによって定められたプログラミングされたパターンにわたって環境を走査する光学走査システムに向ける。光学回路は、光が光学回路101を射出する時に光の偏光を変換するための偏光波長板を含むことができる。実施形態では、偏光波長板は、4分の1波長板又は半波長板とすることができる。偏光光の一部分は、光学回路101に反射して戻すことができる。例えば、レンズ屈折システム又は平行化システムは、光の一部分を光学回路101に反射して戻すための自然な反射特性又は反射コーティングを有することができる。
【0028】
環境から反射して戻された光信号は、光学回路101を通して受信機に至る。この光の偏光は変更されているので、この光は、光学回路101に反射して戻された偏光光部分と共に偏光ビームスプリッタによって反射することができる。従って、光源と同じファイバ又は導波管に戻るのではなく、この反射光は、別個の光学受信機に反射される。これらの信号は互いに干渉し、組合せ信号を発生させる。ターゲットから戻る各ビーム信号は、時間シフト波形を生成する。2つの波形の間の時間位相差は、光学受信機(光検出器)上で測定されるビート周波数を発生させる。次に、組合せ信号は、光学受信機104に反射することができる。ビームを偏光して光学受信機104に向けるための光学回路101の構成に関しては後に説明する。
【0029】
光学受信機104からのアナログ信号は、アナログデジタルコンバータ(ADC)を用いてデジタル信号に変換される。次に、デジタル信号は、LIDAR制御システム110に送られる。次に、信号処理ユニット112は、デジタル信号を受信してこれらを解釈することができる。一部の実施形態では、更に、信号処理ユニット112は、運動制御システム105から位置データを受信し、更に、画像処理システム114から画像データを受信する。次に、信号処理ユニット112は、光学スキャナ102が追加のポイントを走査する時に環境内のポイントの距離及び速度に関する情報を用いて3Dポイントクラウドを発生させることができる。信号処理ユニット112は、周囲の区域内の物体の速度及び距離を決定するために3Dポイントクラウドデータに画像データを重ねることができる。更に、システムは、正確な地球上の場所を与えるために衛星ベースのナビゲーション場所データを処理する。
【0030】
図2は、本発明の開示の実施形態によるLIDARシステム200の態様を示している。実施形態では、LIDARシステム200の1又は2以上の構成要素は、光子チップ240に実施することができる。図示のように、光源202は、光ビーム218を発生させる。一部の実施形態では、複数の光ビームを発生させるために複数の光源を使用することができる。実施形態では、複数の光ビームは、互いに異なる波長/周波数を有することができる。例えば、第1の光源は、第1の周波数を有する第1の光ビームを発生させることができ、第2の光源は、第1の周波数とは異なる第2の周波数を有する第2の光ビームを発生させることができる。光ビーム218は、光源202に作動的に結合されたタップ(例えば、ISOTAP204)を含む光アイソレータに提供される。ISOTAP204は、光ビーム218の一方向への伝達を許し、戻り光を阻止する。ISOTAP204のタップは、光ビーム218の一部分を基準信号230として分割する。基準信号230は、基準アーム回路のカプラ210に提供することができる。カプラ210は、基準信号230を受信してその一部分を分割し、ローカル発振器(LO)信号228を生成する。実施形態では、カプラ210は、均等(50/50)カプラ又は不均等カプラとすることができる。基準信号230は、カプラ210に作動的に結合された基準アーム回路の干渉計232に提供することができる。実施形態では、干渉計232は、基準信号230を分割することによって導出された光ビーム間の相対的位相シフト変化を決定するのに使用されるマッハツェンダー干渉計(MZI)とすることができる。次に、干渉計232は、その後の解析に向けて基準信号230を基準アーム回路の光検出器234に提供することができる。
【0031】
光ビーム218は、ISOTAP204に作動的に結合された光学増幅器206に提供される。光学増幅器206は、光ビーム218の光信号を増幅する。LIDARシステム200は、光ビーム218をコリメータ212に経路指定し、ターゲット信号222を光検出器226に経路指定するための少なくとも1つの光学デバイスを更に含むことができる。図示のように、光学デバイスは、偏光ビームスプリッタ(PBS)208と偏光波長板(PWP)214とを含む。適切な光学デバイスの他の例は、光サーキュレータ又は光学スプリッタ/コンバイナを含むことができる。
【0032】
光ビーム218は、光学増幅器206に作動的に結合された偏光ビームスプリッタ(PBS)208を通過することができる。
【0033】
光ビーム218は、それをフォーカス/平行化するためのコリメータ212に提供することができる。光ビーム218は、その偏光を変換する偏光波長板(PWP)214に提供することができる。例えば、光ビーム218の偏光は、円偏光に変換することができる。一部の実施形態では、PWP及び/又はPBSではなく、光サーキュレータを利用して光ビーム218を向け直すことができる。
【0034】
光の偏光を変換した後に、光ビーム218は、分散要素216に提供することができる。分散要素216は、光ビームの周波数に基づいて異なる角度で光ビームを偏向させる材料で構成することができる。例えば、分散要素216は、第1の周波数(例えば、f1)を有する光ビーム218を第1の角度で偏向させ、第2の周波数(例えば、f2)を有する光ビームを第2の角度で偏向させることができる。実施形態では、分散要素216は、LIDARシステム200の高速走査方向に対応する軸線に沿って異なる角度で光ビームを偏向させることができる。例えば、分散要素216は、光ビームを水平な又は実質的に水平な軸線に沿って偏向させることができる。
【0035】
一部の実施形態では、分散要素216によって偏向された光ビーム218は、スキャナ236(例えば、
図1の光学スキャナ102)によってターゲット220に向けて伝達することができる。他の実施形態では、LIDARシステム200は、スキャナ236を含まない場合があり、光ビーム218は、分散要素216によってターゲット220に向けて伝達することができる。スキャナ236は、3Dマッピングを発生させるためにLIDARシステム200の高速走査方向と直交するか又は実質的に直交する低速走査方向に対応する軸線238に沿って光ビーム218を偏向させることができる。例えば、LIDARシステム200の高速走査方向が水平軸線に沿う場合に、スキャナ236は、光ビーム218を垂直軸線に沿って偏向させることができる。光ビーム218がターゲット220に当たると、ビームの一部分は、ターゲット信号222としてLIDARシステム200に戻される。ターゲット信号222は、スキャナ236、分散要素216、PWP214、及びコリメータ212を通過する。
【0036】
ターゲット信号222は、PBS208によって受信される。ターゲット信号222の偏光は、PWP214によって変更されているので、ターゲット信号222は、PBS208を通過するのではなくPBS208によって反射される。ターゲット信号222は、PBS208によってカプラ224に向けて反射される。カプラ224は、ターゲット信号222とローカル発振器信号228を受信し、ターゲット信号222とローカル発振器信号228の両方を含む組合せ信号を生成する。実施形態では、カプラ224は、均等(50/50)カプラ又は不均等カプラとすることができる。次に、組合せ信号は、上述のようにその後の解析に向けて光検出器226によって受信される。
【0037】
一部の実施形態では、ローカル発振器信号228とターゲット信号222が空間的に重複している場合に、これらの信号は、カプラ224を使用することなく光検出器226に提供することができる。例えば、LIDARシステム200は、カプラ224を含まない場合があり、この場合に、ローカル発振器信号228とターゲット信号222は、光検出器226において光学的に混合することができる。
【0038】
図3は、本発明の開示の実施形態によるLIDARシステムによって発生され、異なる周波数の付近に同調された複数の線形チャープの
図300である。
図300は、光ビームの周波数(Y軸線)対時間(X軸線)のグラフ表現である。光源によって発生された
図2の光ビーム218のような光ビームは、異なる周波数の付近に同調された線形チャープとすることができる。各線形チャープ(例えば、線形チャープ305、310、315、及び320)は、チャープ周波数が線形又は実質的に線形に増大する時間部分と、チャープ周波数が線形又は実質的に線形に低下する時間部分とを含むことができる。
【0039】
線形チャープ305、310、315、及び320は、それぞれ周波数325、330、335、及び340の付近に同調させることができる。周波数325、330、335、及び340は、LIDARシステムの分散要素による異なる偏向角に対応することができる。例えば、周波数325、330、335、及び340は、LIDARシステムの望ましいFOVを網羅する分散要素による偏向角に対応することが可能である。
【0040】
図4は、本発明の開示の実施形態による光ビームの周波数に基づいて異なる角度で光ビームを偏向させるLIDARシステムの分散要素の
図400である。
図400では、光ビーム218は、分散要素216に提供される。分散要素216は、上述のように、光ビーム218の周波数に基づいて異なる角度で光ビーム218を偏向させる。
【0041】
図4は、光源によって発生された異なる周波数(例えば、f
1、f
2、f
3、及びf
4)を有する一連の4つの光ビームを示している。分散要素216は、周波数f
1を有する光ビーム218を角度405に、周波数f
2を有する光ビーム218を角度410に、周波数f
3を有する光ビーム218を角度415に、及び周波数f
4を有する光ビーム218を角度420に偏向させる。分散要素216は、上述のように、LIDARシステムの高速走査方向に対応する軸線425に沿って一連の光ビームを角度405、410、415、及び420に偏向させることができる。
【0042】
図5は、本発明の開示の他の実施形態によるLIDARシステム500の態様を示している。LIDARシステム500の構成要素は、LIDARシステム200の構成要素と同様とすることができる。しかし、基準信号230の一部分を分割してローカル発振器信号228を生成するのにカプラ(例えば、カプラ210)を利用する代わりに、ローカル発振器信号228は、PWP214の後の反射器402によって再現することができる。例えば、反射器402は、光ビーム218の一部分を光源202に向う方向に反射することができる。一部の実施形態では、PWP214上で個別のミラー、再帰反射器、マイクロレンズアレイ、フィルタ、又は反射コーティングを使用することができる。反射された光ビーム218の部分は、戻りターゲット信号222との干渉のためのローカル発振器信号228になる。
【0043】
図2のターゲット信号222と同様に、ローカル発振器信号228の偏光は変更されているので、PBS208は、ローカル発振器信号228がPBS208を通過することを許すのではなく、ローカル発振器信号228をカプラ224に向う方向に反射する。一部の実施形態では、LIDARシステム500は、カプラ224を含まない場合があり、ローカル発振器信号228とターゲット信号222は、光検出器226において光学的に混合することができる。
【0044】
図6は、本発明の開示の一部の実施形態によるLIDARシステム600の態様を示している。LIDARシステム600の構成要素は、LIDARシステム200の構成要素と同様とすることができる。しかし、光ビーム218及びターゲット信号222を向ける際にPBS(例えば、PBS208)を利用する代わりに、LIDARシステム600は、光サーキュレータ602を利用して光ビーム218をコリメータ212に向けてターゲット信号をカプラ224に向ける。一部の実施形態では、LIDARシステム600は、カプラ224を含まない場合があり、ローカル発振器信号228とターゲット信号222は、上述のように、光検出器226において光学的に混合することができる。更に、LIDARシステム600はPBSを利用しないので、光ビーム218の偏光を変換する必要はない。従って、LIDARシステム600は、PWP(例えば、PWP214)を含まない場合がある。
【0045】
図7は、本発明の開示の一部の実施形態によるLIDARシステム700の態様を示している。LIDARシステム700の構成要素は、LIDARシステム600の構成要素と同様とすることができる。しかし、ローカル発振器信号228を生成するために基準信号230の一部分を分割するのにカプラ(例えば、カプラ210)を利用する代わりに、コリメータ212の反射器702によってローカル発振器信号228を生成することができる。例えば、反射器702は、光ビーム218の一部分を光源202に向う方向に反射することができる。一部の実施形態では、コリメータ212上で個別のミラー、再帰反射器、マイクロレンズアレイ、フィルタ、又は反射コーティングを使用することができる。反射された光ビーム218の部分は、戻りターゲット信号222との干渉のためのローカル発振器信号228になる。
【0046】
図6のターゲット信号222と同様に、光サーキュレータ602は、ローカル発振器信号228を受信してそれをカプラ224に向けることができる。一部の実施形態では、LIDARシステム700は、カプラ224を含まない場合があり、ローカル発振器信号228とターゲット信号222は、上述のように、光検出器226において光学的に混合することができる。
【0047】
図8は、本発明の開示の実施形態による複数の光源を有するLIDARシステム800の態様を示している。LIDARシステム800の構成要素は、LIDARシステム200の構成要素と同様とすることができる。明瞭化の目的で、
図8からはLIDARシステム800の構成要素のうちの一部(例えば、自由空間光学系、光学デバイス、基準アーム回路のような)を除外した。単一光源を利用する代わりに、LIDARシステム800は、各々が異なる周波数を有する光ビームを発生させることができる複数の光源(例えば、光源202a及び光源202b)を利用する。例えば、光源202aは、第1の周波数(f
1)を有する光ビーム218aを発生させることができ、光源202bは、第2の周波数(f
2)を有する光ビーム218bを発生させることができる。光ビーム218a及び光ビーム218bは、分散要素216に提供することができる。分散要素216は、光ビーム218a及び218bをこれらの周波数に基づいて異なる角度で偏向させることができる。2つの光源を有するものとして示すが、実施形態では、LIDARシステム800は、異なる周波数を有する光ビームを発生させるあらゆる個数の光源を含むことができる。
【0048】
図9は、本発明の開示の実施によるLIDARシステムを用いた固体スペクトル走査の方法900の流れ図を示している。実施形態では、方法900の異なる部分は、
図1、
図2、
図5、
図6、
図7、及び
図8にそれぞれ記載のLIDARシステム100、200、500、600、700、及び/又は800によって実施することができる。
【0049】
図9を参照すると、方法900は、様々な実施形態によって使用される例示的機能を示している。方法900では特定の機能ブロック(「ブロック」)を開示するが、そのようなブロックは例である。すなわち、実施形態は、異なる他のブロック又は方法900において列記するブロックの変形を実施することに適している。方法900でのブロックは、提供するものとは異なる順序で実施することができ、その全てを実施しなくてもよいことは認められる。
【0050】
ブロック902では、LIDARシステムの光源は、第1の周波数を有する第1の光ビームを発生させる。LIDARシステムの光源は、第1の周波数を有する第1の光ビームを第1の時間に発生させることができる。
【0051】
ブロック904では、光源は、第2の周波数を有する第2の光ビームを発生させる。LIDARシステムの光源は、第2の周波数を有する第2の光ビームを第1の時間よりも後の第2の時間に発生させる。一部の実施形態では、複数の光源が光ビームを発生させることができる。例えば、第1の光源は、ブロック902において第1の光ビームを発生させることができ、第2の光源は、第2の光ビームを発生させることができる。
【0052】
異なる周波数の光ビームを発生させるために複数の光源を使用する実施形態では、光ビームは、異なる時間又は同じか又は実質的に類似の時間に発生させることができる。光ビームを同じか又は実質的に類似の時間に発生させることにより、走査時間の有意な短縮をもたらすことができ、LIDARシステムの性能が更に改善する。
【0053】
一部の実施形態では、複数の光源は、上述のように、一連の周波数の付近を中心とする光ビームを各々によって発生させることができる同調可能光源とすることができる。視野は、複数の部分に分割することができ、同調可能光源の各々は、異なる視野部分を各々が互いに並列に走査する複数の光ビームを同じか又は実質的に類似の時間に発生させることができ、走査時間の短縮がもたらされ、LIDARシステムの性能が改善する。
【0054】
ブロック906では、LIDARシステムは、第1の光ビームを用いて第1のローカル発振器(LO)信号を発生し、第2の光ビームを用いて第2のローカル発振器信号を発生する。一部の実施形態では、第1のLO信号及び第2のLO信号は、先に
図2で上述したように、第1の光ビーム及び第2の光ビームに関する基準信号の部分を分割して第1のLO信号及び第2のLO信号を発生させるLIDARシステムのカプラによって発生させることができる。他の実施形態では、第1のLO信号及び第2のLO信号は、先に
図5で上述したように、第1の光ビーム及び第2の光ビームの一部分を反射させることによって発生することができる。
【0055】
ブロック908では、第1の周波数を有する第1の光ビームと第2の周波数を有する第2の光ビームが分散要素に提供される。分散要素は、上述のように、第1の周波数を有する第1の光ビームを第1の角度で及び第2の周波数を有する第2の光ビームを第2の角度で偏向させる。第2の光ビームは、第1の光ビームよりも後の時間に分散要素に提供することができる。
【0056】
ブロック910では、LIDARシステムは、第1の光ビームに関する第1のターゲット信号と、第2の光ビームに関する第2のターゲット信号とを受信する。第1のターゲット信号及び第2のターゲット信号は、物体による第1の光ビーム及び第2の光ビームそれぞれの反射に対応することが可能である。
【0057】
ブロック912では、第1のターゲット信号は、第1のLO信号と組み合わされて第1の組合せ信号が発生し、第2のターゲット信号は、第2のLO信号と組み合わされて第2の組合せ信号が発生する。
【0058】
ブロック914では、第1の組合せ信号及び第2の組合せ信号は、その後の解析に向けて光検出器に提供される。
【0059】
以上の説明は、本発明の開示の一部の実施形態の明快な理解をもたらすために特定のシステム、構成要素、及び方法等々の例のような数々の具体的な詳細を示すものである。しかし、本発明の開示の少なくとも一部の実施形態をこれらの具体的な詳細を用いずに実施することができることは当業者によって認められるであろう。他の事例では、本発明の開示を不要に不明瞭にすることを回避するために公知の構成要素又は方法を詳細には説明せず、簡単なブロックグラフィックに提示した。すなわち、図示した具体的な詳細は例示的なものに過ぎない。本明細書は多くの具体的な実施の詳細を含むが、これらは、いずれかの発明の範囲又は主張することができるものに対する制限と解釈すべきではなく、特定の発明の特定の実施形態に独特の特徴の説明と解釈しなければならない。本明細書で個別の実施形態の関連で説明した複数のある一定の特徴は、単一実施形態に組み合わせて実施することができる。それとは逆に、単一実施形態の関連で説明した様々な特徴は、実施形態に個別に又はあらゆる適切な組合せで実施することができる。更に、上記では特徴をある一定の組合せで機能するものと説明し、最初にそのように主張することさえあるが、一部の場合に主張する組合せからの1又は2以上の特徴は、そのような組合せから除外することができ、主張する組合せを部分結合又は部分結合の変形とすることができる。更に、上述した実施形態での様々なシステム構成要素の分離は、全ての実施形態でそのような分離を必要とするものと理解すべきではなく、説明するプログラム構成要素及びシステムは、一般的に単一ソフトウエア製品内で互いに統合するか又は複数のソフトウエア製品の中にパッケージ化することができることは認められる。特定の実施形態は、上述の例示的詳細とは異なる可能性があるが、これらの実施形態は、依然として本発明の開示内であることを意図している。
【0060】
本明細書を通して「一実施形態」又は「実施形態」への参照は、これらの実施形態に関して説明された特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書にわたる異なる箇所での「一実施形態では」又は「実施形態では」という句の出現は、その全てが必ずしも同じ実施形態に言及しているとは限らない。更に、「又は」という語句は、限定的な「又は」ではなく包含的な「又は」を意味するように意図している。
【0061】
本明細書では、方法の作動を特定の順序に示して説明したが、各方法の作動順序は、ある一定の作動を逆の順序で実施することができるように又はある一定の作動を少なくとも部分的に他の作動と同時に実施することができるように変更することができる。別の実施形態では、個別の作動の命令又は部分作動は、断続方式又は交替方式とすることができる。
【0062】
「要約」に説明することを含む本発明の例示的実施の以上の説明は、包括的であること又は本発明を開示した形態通りに限定するように意図したものではない。本明細書では、本発明の特定の実施及び本発明に関する例を例示目的で説明したが、当業者が認識するように本発明内で様々な同等修正が可能である。本明細書では、「例」又は「例示的」という言葉は、例、事例、又は実施形態として機能することを意味するように使用する。本明細書で「例」又は「例示的」として説明するいずれかの態様又は設計は、必ずしも他の態様又は設計に優って好ましい又は有利であると解釈すべきではない。そうではなく、「例」又は「例示的」という言葉の使用は、概念を具体的な形で提供するように意図している。この出願に使用する場合に「又は」という語句は、限定的な「又は」ではなく包含的な「又は」を意味するように意図している。すなわち、他に指定しない限り又は関連から明らかでない限り、「XはA又はBを含む」は、自然な包含的置換物のうちのいずれかを意味するように意図している。すなわち、XがAを含む、XがBを含む、又はXがAとBの両方を含む場合に、「XはA又はBを含む」は、これらの事例のうちのいずれかの下で満たされる。これに加えて、この出願及び特許請求の範囲内に使用する冠詞「a」及び「an」は、他に指定しない限り又は関連から単数形態を指示することが明らかでない限り、「1又は2以上」を意味すると一般的に解釈しなければならない。更に、全体を通して「実施形態」、「一実施形態」、「実施」、又は「一実施」という語句の使用は、同じ実施形態又は実施を意味すると説明されない限り、そうであることを意図しない。更に、本明細書に使用する「第1」、「第2」、「第3」、「第4」などのような語句は、異なる要素の間で区別するための標識であるように意図しており、これらの語句の数字表示に従う序数の意味を必ずしも有するとは限らない場合がある。
【符号の説明】
【0063】
200 LIDARシステム
202 光源
218 光ビーム
230 基準信号
240 光子チップ
【手続補正書】
【提出日】2023-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光検出及び測距(LIDAR)装置であって、
第1の周波数を有する第1の光ビーム及び第2の周波数を有する第2の光ビームを放出するための光源と、
前記第1の周波数を有する前記第1の光ビームを第1の角度で及び前記第2の周波数を有する前記第2の光ビームを第2の角度で偏向させるための分散要素と、
を含むことを特徴とするLIDAR装置。
【外国語明細書】