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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016094
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】送風機及びケーシング
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/175 20060101AFI20230126BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20230126BHJP
   A45D 20/12 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
G10K11/175
G10K11/16 100
A45D20/12 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120158
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000109598
【氏名又は名称】テンパール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(72)【発明者】
【氏名】古用 智弘
(72)【発明者】
【氏名】細川 智史
【テーマコード(参考)】
3B040
5D061
【Fターム(参考)】
3B040CG00
5D061EE05
5D061EE28
(57)【要約】
【課題】消音効果を高めることが可能な送風機及びケーシングを提供する。
【解決手段】モーター11と、モーター11により駆動されるプロペラ12と、モーター11とプロペラ12とを内包するとともに、モーター11を固定し前後が開口したケーシング13と、を備える送風機10であって、ケーシング13の内側の一部に対し直接的又は間接的に雌ネジが形成された雌ネジ部14と、内部が前後方向に貫通して第一音伝搬路C1が形成されるとともに、雌ネジ部14に内接するように配置される内接部材15と、を備え、雌ネジ部14に対して内接部材15を相対的に前後方向に移動可能にすることで、雌ネジ部14と内接部材15との間に形成された第二音伝搬路C2の経路長を可変にした。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モーターと、
前記モーターにより駆動されるプロペラと、
前記モーターと前記プロペラとを内包するとともに、前記モーターを固定し前後が開口したケーシングと、を備える送風機であって、
前記ケーシングの内側の一部に対し直接的又は間接的に雌ネジが形成された雌ネジ部と、
内部が前後方向に貫通して第一音伝搬路が形成されるとともに、前記雌ネジ部に少なくとも一部が内接するように配置される内接部材と、を備え、
前記雌ネジ部に対して前記内接部材を相対的に前後方向に移動自在に設けることで、前記雌ネジ部と前記内接部材との間に形成された第二音伝搬路の経路長を可変にしたことを特徴とする送風機。
【請求項2】
前記雌ネジ部は、ネジ山が複数形成された多条ネジであることを特徴とする請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
前記内接部材は、外周に前記雌ネジ部に螺合する雄ネジが形成された雄ネジ部であることを特徴とする請求項1又は2に記載の送風機。
【請求項4】
前記内接部材は円筒状であることを特徴とする請求項1又は2に記載の送風機。
【請求項5】
少なくとも一つの前記ネジ山の長さが他の前記ネジ山の長さとは異なることを特徴とすることを特徴とする請求項2に記載の送風機。
【請求項6】
内部に音波を伝搬させるケーシングであって、
前記ケーシングの内側の一部に対し直接的又は間接的に雌ネジが形成された雌ネジ部と、
内部が前後方向に貫通して前記音波の第一音伝搬路が形成されるとともに、前記雌ネジ部に内接するように配置される内接部材と、を備え、
前記雌ネジ部に対して前記内接部材を相対的に前後方向に移動可能にすることで、前記雌ネジ部と前記内接部材との間に形成されて前記音波を伝搬させる第二音伝搬路の経路長を可変にしたことを特徴とするケーシング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送風機及びケーシングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドライヤー等の送風機の風力を上げるとそれに伴って騒音が大きくなるという問題に関して、騒音を構成する音波の一部を逆位相になるよう制御し、それぞれの音波を相互に干渉させて、消音を実現するという技術がある(例えば、特許文献1参照)
【0003】
また、空気と音が通る第1の透過領域の周辺に、第1の透過領域を通過する音の波長から半波長ずれた音が通過する第2の透過領域を配置し、両領域を通過した音が出口で互いに干渉することで消音を実現するという技術もある(例えば、特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-252404号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2020/0043456号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、機器には製造上の個体差等があり、設計通り消音できない場合がある。また、使用者に応じて騒音と捉えられる周波数には個人差があるので、消音効果が十分ではないという問題がある。
【0006】
そこで、本発明の目的とするところは、消音効果を高めることが可能な送風機及びケーシングを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に記載の送風機(10)は、
モーター(11)と、
前記モーター(11)により駆動されるプロペラ(12)と、
前記モーター(11)と前記プロペラ(12)とを内包するとともに、前記モーター(11)を固定し前後が開口したケーシング(13)と、を備える送風機(10)であって、
前記ケーシング(13)の内側の一部に対し直接的又は間接的に雌ネジが形成された雌ネジ部(14)と、
内部が前後方向に貫通して第一音伝搬路(C1)が形成されるとともに、前記雌ネジ部(14)に少なくとも一部が内接するように配置される内接部材(15)と、を備え、
前記雌ネジ部(14)に対して前記内接部材(15)を相対的に前後方向に移動自在にに設けることで、前記雌ネジ部(14)と前記内接部材(15)との間に形成された第二音伝搬路(C2)の経路長を可変にしたことを特徴とする。
ここでいう内接には螺合も含む。
【0008】
また、請求項2に記載の送風機(10)は、
前記雌ネジ部(14)は、ネジ山が複数形成された多条ネジであることを特徴とする。
【0009】
また、請求項3に記載の送風機(10)は、
前記内接部材(15)は、外周に前記雌ネジ部(14)に螺合する雄ネジが形成された雄ネジ部(15)を備えることを特徴とする。
【0010】
また、請求項4に記載の送風機(10)は、
前記内接部材(15)は円筒状であることを特徴とする。
【0011】
また、請求項5に記載の送風機(10)は、
少なくとも一つの前記ネジ山の長さが他の前記ネジ山の長さとは異なることを特徴とする。
【0012】
また、請求項6に記載のケーシング(13)は、
内部に音波を伝搬させるケーシング(13)であって、
前記ケーシング(13)の内側の一部に対し直接的又は間接的に雌ネジが形成された雌ネジ部(14)と、
内部が前後方向に貫通して前記音波の第一音伝搬路(C1)が形成されるとともに、前記雌ネジ部(14)に内接するように配置される内接部材(15)と、を備え、
前記雌ネジ部(14)に対して前記内接部材(15)を相対的に前後方向に移動可能にすることで、前記雌ネジ部(14)と前記内接部材(15)との間に形成されて前記音波を伝搬させる第二音伝搬路(C2)の経路長を可変にしたことを特徴とする。
【0013】
ここで、上記括弧内の記号は、図面および後述する発明を実施するための形態に掲載された対応要素または対応事項を示す。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ケーシングの内側の一部に対し直接的又は間接的に雌ネジが形成された雌ネジ部と、内部が前後方向に貫通して第一音伝搬路が形成されるとともに、雌ネジ部に内接するように配置される内接部材と、を備え、雌ネジ部に対して内接部材を相対的に前後方向に移動可能にすることで、雌ネジ部と内接部材との間に形成された第二音伝搬路の経路長を可変にしたので、第一音伝搬路と第二音伝搬路の経路長差を半波長分とした場合には、消音可能である。
また、経路差を微調整可能であるので、機器に個体差があっても微調整することで第一音伝搬路と第二音伝搬路の経路長差を半波長分に合わせることができ、消音効果を高めることが可能である。
つまり、機器に個体差があり、設計通り消音できない場合であっても、内接部材は相対的に前後方向に移動可能であるので、その個体において第一音伝搬路と第二音伝搬路の経路長差を半波長分にすることができ、消音可能である。
【0015】
また、本発明によれば、雌ネジ部は、ネジ山が複数形成された多条ネジであるので、第二音伝搬路の経路長を複数種類設けることができる。したがって、第二音伝搬路を通る空気の流量が大きくなるので消音効果が高くなる。
【0016】
また、本発明によれば、内接部材は、外周に雌ネジ部に螺合可能な雄ネジが形成された雄ネジ部であるので、内接部材をネジとして第二音伝搬路の経路長を変えることができる。
よって、第二音伝搬路の経路長を微調整可能なので、消音させる周波数についてそのピークを微調整可能である。
【0017】
また、本発明によれば、内接部材は円筒状であるので、内接部材を前後に直線運動させることで第一音伝搬路と第二音伝搬路との経路長差を変更可能である。
【0018】
また、本発明によれば、少なくとも一つのネジ山の長さが他のネジ山の長さとは異なるので、経路長が異なる第二音伝搬路を設けることができ、それに伴い複数の周波数について消音可能である。
なお、本明細書内でいう消音とは、音を低減する意味であり、全く音を聞こえなくすることではない。
【0019】
なお、本発明のように、第二音伝搬路との経路長を可変にする点は、上述した特許文献1又は2には全く記載されていない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第一実施形態に係る送風機を示す斜視図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る送風機を示す分解斜視図である。
図3】本発明の第一実施形態に係る送風機を示す断面図である。
図4】本発明の第一実施形態に係る送風機における雌ネジ部と内接部材との状態を示す図であり、(a)は雌ネジ部と内接部材が離間した状態、(b)は雌ネジ部に対して内接部材が入り始めた状態、(c)は雌ネジ部に対して内接部材が1周分入った状態、(d)は雌ネジ部に対して内接部材が全部入った状態をそれぞれ示す。また、(a’)、(b’)、(c’)、(d’)はそれぞれ(a)、(b)、(c)、(d)において雌ネジ部が斜視断面図となった状態を示す。
図5】本発明の第二実施形態に係る送風機を示す斜視図である。
図6】本発明の第二実施形態に係る送風機を示す分解斜視図である。
図7】本発明の第二実施形態に係る送風機における雌ネジ部のネジ山1つ分を示す斜視図である。
図8】本発明の第二実施形態に係る送風機を示す断面図であり、(a)は内接部材を最前進させた状態を、(b)は内接部材をその長さの半分だけ後退させた状態を、(c)は内接部材を最後退させた状態を、それぞれ示す。
図9】本発明の他の実施形態に係る送風機を示す斜視図であり、(a)は前方から、(b)は後方から見た状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第一実施形態)
図1乃至図4を参照して、本発明の第一実施形態に係る送風機10、特にヘアドライヤーについて説明する。
この送風機10は、モーター11と、プロペラ12と、ケーシング13と、雌ネジ部14と、内接部材15と、を備える。
【0022】
モーター11は、外部電源により後述するプロペラ12を駆動するための動力源であり、ケーシング13内に配置される。
【0023】
プロペラ12は、モーター11に対し後方に接続されるとともにモーター11により駆動され、軸回転することで後方から前方への空気の流れを生じさせる。
【0024】
ケーシング13は、前後が開口した略円筒状の筐体であり、モーター11とプロペラ12とを内包しモーター11を固定している。
また、本実施形態に係る送風機10はヘアドライヤーであるので、ケーシング13はモーター11の前方にヒーターも内包し、固定している。
【0025】
ケーシング13の前方の開口を吹出口、後方の開口を吸入口と呼ぶ。
ケーシング13の吸入口側外周には目盛りが振られており、後述する雌ネジ部14の回転量がわかるようになっている。
【0026】
雌ネジ部14は、内部が前後方向に貫通し、外径がケーシング13の内径に略等しい筒状体であり、ケーシング13の後部内側(吸入口)に、後述する内接部材15を介して取付可能である。
また、雌ネジ部14には筒状体の内側方向にネジ山が設けられることで雌ネジが形成されている。
【0027】
内接部材15は、後述する固定部材16に取付可能であり、内部が前後方向に貫通して第一音伝搬路C1が形成されるとともに、雌ネジ部14に螺合可能な雄ネジが外周に形成された雄ネジ部15である。
雌ネジ部14と雄ネジ部15を螺合したときに、雌ネジ部14の谷と雄ネジ部15のネジ山15aとの間に空隙が形成される。この空隙を本明細書においては第二音伝搬路C2と呼ぶ。
【0028】
固定部材16は、外形が雌ネジ部14の外形と略等しい平板筒状体であって、ケーシング13の後部内側に取り付けられるとともに、前記平板筒状体の中央部に内接部材15が嵌合固定できる孔部が形成されている。
【0029】
雌ネジ部14と雄ネジ部15とは螺合するネジであるので、図4に示すように、雌ネジ部14に対して内接部材15(雄ネジ部15)は相対的に前後方向に移動可能である。
【0030】
このように雌ネジ部14と雄ネジ部15は螺合するので、第二音伝搬路C2の経路長は可変である。すなわち、図4(d),(d’)に示すように、雄ネジ部15に対し雌ネジ部14が最大限にねじ込まれているとき、雌ネジ部14と雄ネジ部15の前後方向の重なりが最も大きくなる。このとき、第二音伝搬路C2の経路長は最も大きくなる。
【0031】
一方、図4(b),(b’)に示すように、雄ネジ部15に対し雌ネジ部14のねじ込み量が小さいとき、雌ネジ部14と雄ネジ部15の前後方向の重なりが小さくなる。このとき、第二音伝搬路C2の経路長は小さくなる。
【0032】
なお、本実施形態においてはケーシング13に対し、固定部材16を介して雄ネジ部15を固定しているので、ケーシング13に対して雌ネジ部14が前後進する(螺送される)。
【0033】
(消音のメカニズム)
次に、消音のメカニズムについて説明する。
音は音波であるので、逆位相になった音波の相互干渉により、騒音を低減するものである。
つまり、騒音の元となる音波に、その半波長分ずれた音波を重ね合わせると干渉して消音される。
【0034】
なお、発生している音波の波長には様々なものがあり、かつ、それらの重ね合わせからなるものであるので、本明細書で言う消音とは完全に音が消えることを指すものではなく、逆位相になった音波との相互干渉により対象の音波の音を打ち消すことで、全体として聞こえてくる音が小さくなることを意味する。
【0035】
本実施形態においては、第一音伝搬路C1の経路長と第二音伝搬路C2の経路長との経路長差を通過音波の半波長にすればこの部分を通過する音波は干渉して消音される。
例えば,通過音波(消音対象音波)が500Hz(波長680mm)の場合、経路長差を340mmにすれば当該音波を消音できる。
【0036】
ここで、第一音伝搬路C1の経路長は、内接部材15の前後方向の長さと等しいので固定であるが、この第一音伝搬路C1の経路長を仮に25mmとし、第二音伝搬路C2の経路長を365mmとしたとき、経路長差が340mmになる。
本実施形態においては、略筒状体のケーシング13における直径は72.1mm、第一音伝搬路の内径は38.1mm、長さは25mmである。内接部材15が雌ネジ部14に対して2回転分だけねじ込まれているときに第二音伝搬路C2の経路長が365mm、経路長差が340mmである。この状態を雌ネジ部14の回転量が2周、と呼ぶ。これは図4(d),(d’)の状態である。
先述した通り、このときの消音するノイズの周波数帯は500Hzとなる。
【0037】
ここで、ヘアドライヤーの作動時には、500~2000Hzの幅広いノイズが発生していることが知られている。
したがって、500Hz(波長680mm)のノイズを消音したい場合には経路長差を340mmに、1000Hz(波長340mm)のノイズを消音したい場合には経路長差を170mmに、2000Hz(波長170mm)のノイズを消音したい場合には経路長差を85mmにすればよい。
【0038】
本実施形態においては、例えば、雌ネジ部14の回転量が1周半のときは第二音伝搬路C2の経路長が274mmとなり、経路長差は249mmである。よって、消音ノイズ帯は683Hzである。
雌ネジ部14の回転量が1周のとき(図4(c),(c’))は第二音伝搬路C2の経路長が183mmとなり、経路長差は158mmである。よって、消音ノイズ帯は1076Hzである。
雌ネジ部14の回転量が半周のときは第二音伝搬路C2の経路長が91mmとなり、経路長差は66mmである。よって、消音ノイズ帯は2576Hzである。
【0039】
以上のように構成された送風機10によれば、ケーシング13の内側の一部に対し間接的に雌ネジが形成された雌ネジ部14と、内部が前後方向に貫通して第一音伝搬路C1が形成されるとともに、雌ネジ部14に一部が内接するように配置される内接部材15と、を備え、雌ネジ部14に対して内接部材15を相対的に前後方向に移動自在に設けることで、雌ネジ部14と内接部材15との間に形成された第二音伝搬路C2の経路長を可変にしたので、第一音伝搬路C1と第二音伝搬路C2の経路長差を半波長分とした場合には、消音可能である。
【0040】
また、経路差を微調整可能であるので、機器に個体差があっても微調整することで第一音伝搬路C1と第二音伝搬路C2の経路長差を半波長分に合わせることができ、消音効果を高めることが可能である。
つまり、機器に個体差があり、設計通り消音できない場合であっても、また、使用者に応じて騒音と捉えられる周波数には個人差があるが、内接部材15は相対的に前後方向に移動可能であるので、その個体において第一音伝搬路C1と第二音伝搬路C2の経路長差を半波長分にすることができ、消音可能である。
【0041】
(第二実施形態)
次に図5乃至図8を参照して、本発明の第二実施形態に係る送風機10を説明する。なお、第一実施形態と同一部分には同一符号を付した。
【0042】
本実施形態の第一実施形態との違いは、雌ネジ部14と内接部材15であり、その他の構成要素に関しては第一実施形態と同一である。モーター11やプロペラ12については記載を省略した。
【0043】
雌ネジ部14は、ケーシング13の吹出口側内側に直接的に雌ネジが形成されてなる。
この雌ネジ部14のネジ山14aは6個形成された6条ネジとなっている。
つまり、図7に示すようなネジ山14aが、そのネジ山14aの始まりである端部が60°ずつずれた位置に存在するように配置されている。
【0044】
内接部材15は円筒であり、前後方向の長さは90mmである。
つまり、第一実施形態に係る内接部材15とは異なり、内接部材15の外周面にはネジ山は形成されておらず平滑である。
また、第一音伝搬路C1の経路長は90mmである。
【0045】
また、内接部材15をケーシング13に挿入した場合、内接部材15の外周面が雌ネジ部14のネジ山14aに内接するように内接部材15の外径を構成されている。
つまり、本実施形態においては、内接部材15の外周面と雌ネジ部14の隣接するネジ山14aとで囲まれる空隙が第二音伝搬路C2である。
【0046】
また、内接部材15の後端上部にはスライダー15bが設けられており、ケーシング13の上部に設けられた案内溝13aに案内される。なお、スライダー15bは、内接部材15に一体成型により設けてもよいし、対し取り外し自在に設けてもよく、例えばケーシング13が案内溝13aを境に分割される組み合わせ構造で構成されるなど、案内溝13aに内接部材を取り付け可能に設けておけばよい。
【0047】
ここで、第一音伝搬路C1の経路長が90mm、第二音伝搬路C2の経路長が450mmのとき(図8(a)のように内接部材15を最前進させたとき)、第一音伝搬路C1と第二音伝搬路C2の経路長差は360mmである。
このときの消音対象の周波数は、音速を340m/s、経路長差が半波長分であるので、音速を波長で割って、472.2Hzとなる。
【0048】
次に、図8(b)のように、内接部材15をその長さの半分だけ後方にスライドさせた場合、第一音伝搬路C1の経路長は45mm、第二音伝搬路C2の経路長は225mmとなり、経路長差は180mmである。
このときの消音対象の周波数は944.4Hzである。
【0049】
ここで、内接部材15の前後方向の長さ自体は変化が無いのに第一音伝搬路C1の経路長を45mmと記載したが、これは雌ネジ部14との前後方向の重複部分をその経路長としたためである。その理由は、重複していない部分では内接部材15の内側と外側で空気が通る経路長に差が出ないためである。
【0050】
また、図8(c)のように、内接部材15をその長さの3/4後方にスライドさせた(最後退させた)場合、第一音伝搬路C1の経路長は22.5mm、第二音伝搬路C2の経路長は112.5mmとなり、経路長差は90mmである。
このときの消音対象の周波数は1888.9Hzである。
【0051】
以上のように構成された送風機10によれば、第一実施形態に係る送風機10の効果に加え、雌ネジ部14は、ネジ山14aが6個形成された6条ネジであるので、第二音伝搬路C2の経路長を複数種類設けることができる。したがって、第二音伝搬路C2を通る空気の音伝搬量が大きくなるので消音効果が高くなる。
【0052】
なお、第一実施形態において、吸入口側に雄ネジ部15と雌ネジ部14を設けたが、これに限られるものではなく、図9に示すように、吹出口側に雄ネジ部と雌ネジ部を設けてもよい。または、吸入口側と吹出口側の両側に雄ネジ部と雌ネジ部を設けてもよい。
また、雌ネジ部14が回転することにより音伝搬路の経路差を可変する構成としたが、これに限られるものではなく、例えば、固定部材16に雌ネジ部14を係合させるなどして取付固定する一方、略筒状体で構成された内接部材15の外周部分をケーシング13の吸入口側に延設する、もしくは、内接部材15に設けた取っ手のみケーシング13の外部に露出させることにより、吸入口側で内接部材15を回転させる構造とし、音伝搬路の経路差を可変する構成とする等、雄ネジ部15を回転することにより音伝搬路の経路差を可変する構成としてもよい。
【0053】
また、第二実施形態において、雌ネジ部14を6条ネジとしたが、他の多条ネジとしてもよい。
もちろん、第二実施形態において雌ネジ部14を多条ネジとしなくてもよい。
また、ケーシング13の吹出部内側に直接的に雌ネジを形成し、内接部材15の外周面にはネジ山を形成しない構成としたが、ケーシング13には雌ネジを形成せず内面を平滑とする一方、内接部材15の外周面に雄ネジ部を形成することにより、ケーシング13に内接部材15を挿入した場合、ケーシング13の内周面が内接部材15の雄ネジ部のネジ山に内接するように構成することにより、音伝搬路の経路差を可変する構成としてもよい。
【0054】
さらに、雌ネジ部14を多条ネジとした場合、雌ネジ部14を構成するネジ山14aの後方端部の位置を前方に配置することで、ネジ山14aの長さを他のネジ山14aの長さと異なるようにしてもよい。
これにより、経路長が異なる第二音伝搬路C2を設けることができるので、同時に複数の周波数について消音可能となる。
【0055】
また、本実施形態については送風機10としてドライヤーを例示したが、これに限られるものではない。
さらに、独立して存在する送風機10に対して、騒音低減のためにケーシング13を配置して消音することも可能である。
【0056】
また、第一音伝搬路C1や第二音伝搬路C2の経路長、消音対象の音の周波数については本実施形態のものに限られず、適宜設計することができる。
【符号の説明】
【0057】
10 送風機
11 モーター
12 プロペラ
13 ケーシング
13a 案内溝
14 雌ネジ部
14a ネジ山
15 内接部材(雄ネジ部)
15a ネジ山
15b スライダー
16 固定部材
C1 第一音伝搬路
C2 第二音伝搬路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9