IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大西 徳生の特許一覧

特開2023-16095交流スイッチ回路のスイッチング制御法
<>
  • 特開-交流スイッチ回路のスイッチング制御法 図1
  • 特開-交流スイッチ回路のスイッチング制御法 図2
  • 特開-交流スイッチ回路のスイッチング制御法 図3
  • 特開-交流スイッチ回路のスイッチング制御法 図4
  • 特開-交流スイッチ回路のスイッチング制御法 図5
  • 特開-交流スイッチ回路のスイッチング制御法 図6
  • 特開-交流スイッチ回路のスイッチング制御法 図7
  • 特開-交流スイッチ回路のスイッチング制御法 図8
  • 特開-交流スイッチ回路のスイッチング制御法 図9
  • 特開-交流スイッチ回路のスイッチング制御法 図10
  • 特開-交流スイッチ回路のスイッチング制御法 図11
  • 特開-交流スイッチ回路のスイッチング制御法 図12
  • 特開-交流スイッチ回路のスイッチング制御法 図13
  • 特開-交流スイッチ回路のスイッチング制御法 図14
  • 特開-交流スイッチ回路のスイッチング制御法 図15
  • 特開-交流スイッチ回路のスイッチング制御法 図16
  • 特開-交流スイッチ回路のスイッチング制御法 図17
  • 特開-交流スイッチ回路のスイッチング制御法 図18
  • 特開-交流スイッチ回路のスイッチング制御法 図19
  • 特開-交流スイッチ回路のスイッチング制御法 図20
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016095
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】交流スイッチ回路のスイッチング制御法
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/00 20070101AFI20230126BHJP
【FI】
H02M1/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120163
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】594170185
【氏名又は名称】大西 徳生
(72)【発明者】
【氏名】大 西 徳 生
【テーマコード(参考)】
5H740
【Fターム(参考)】
5H740BA11
5H740BB05
5H740BB08
5H740BC01
5H740BC02
5H740JA01
5H740JB01
5H740MM03
5H740NN17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】交流電源を負荷回路に投入・遮断する交流スイッチ回路のスイッチング制御法を提供する。
【解決手段】スナバ回路とスイッチ回路を兼ね備えた電圧形インバータの回路構成による交流スイッチ回路200において、スイッチング制御法は、交流電源電圧の電圧位相情報とスナバ用キャパシタ220の端子電圧の充電状態の情報をもとに、逆導通ダイオードと半導体スイッチ素子とで構成される4個のスイッチングアーム210のスイッチング回数をできるだけ抑えて、スナバ用キャパシタによる損失をできるだけ抑えながら、負荷の軽重に関係なく安定に動作できる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチング素子に逆導通ダイオードを並列に接続したスイッチングアーム4個をブリッジ接続して、直流側にキャパシタを接続して構成する電圧形インバータの交流側端子間を交流電源と負荷の間に直列に接続して、スイッチの動作をさせる交流スイッチ回路において、
前記交流スイッチ回路をオンするときは、オフしたときに前記キャパシタに蓄えられた電荷を前記負荷に給電できるように対角関係にある2個の前記スイッチングアームにのみにオン信号を与え、前記キャパシタの端子電圧が低下し、ほぼ放電状態に至ったときは、前記電圧形インバータの上アームまたは下アームの2個の前記スイッチングアームにオン信号を与えて前記交流電源と前記負荷間で通電経路を形成することにより前記交流スイッチ回路をオン状態とし、
次に前記交流スイッチ回路をオフするときは、4個の前記スイッチングアームを全てオフすることにより、前記スイッチングアームの逆導通ダイオードブリッジ回路を介して交流回路に流れる電流による交流負荷や配線による交流回路のインダクタンスに蓄えられたエネルギーを前記キャパシタに吸収充電し、前記交流スイッチ回路にかかるスパイク電圧の発生を抑えて、前記交流スイッチ回路をオフ状態に移した後も4個の前記スイッチングアーム全てをオフ状態に保ち、前記交流スイッチ回路にオン指令が来るまでオフ状態のまま待機するスイッチングシーケンスにより、
前記交流スイッチ回路のオン、オフ動作時における前記交流回路インダクタンスによる転流エネルギーによる過電圧の発生を抑えると共に、前記転流エネルギー損失を抑制することができることを特徴とする交流スイッチ回路のスイッチング制御法。
【請求項2】
請求項1記載の交流スイッチ回路のスイッチング制御法において、前記キャパシタに直列に電流制限用抵抗を挿入し、前記交流スイッチ回路をオンするときは、オフしたときに前記キャパシタに蓄えられた電荷を前記負荷に給電できるように対角関係にある2個の前記スイッチングアームにのみにオン信号を与え前記キャパシタの端子電圧が低下し、ほぼ放電状態に至ったときは、前記電圧形インバータ回路を構成する4個のスイッチ回路を全てオンすることにより、
交流スイッチ回路がオン動作時のスイッチ切り換え動作を無くすことにより、スイッチング回数の低減と、前記交流電源と前記負荷間の通電損失を低く抑えることを特徴とする交流スイッチ回路のスイッチング制御法。
【請求項3】
請求項1および2記載の交流スイッチ回路のスイッチング制御法において、前記交流電源の電圧位相が90度を超え交流負荷回路に変圧器が接続されていても変圧器鉄心が飽和に至らない位相で、前記交流スイッチ回路にオン信号を与えることを特徴とする交流スイッチ回路のスイッチング制御法。
【請求項4】
請求項1から3記載の交流スイッチ回路のスイッチング制御法において、前記交流スイッチ回路へのスイッチ投入信号をスイッチング制御信号の発生に用いる前記交流電源の電圧位相と同期させることにより、前記スイッチングアームのスイッチング回数が低減できることを特徴とする交流スイッチ回路のスイッチング制御法。
【請求項5】
請求項1から4記載の交流スイッチ回路を用いて、前記交流電源に対して2つ以上の複数の各負荷をスイッチ切り換えることにより、1個の電源から複数個の前記各負荷に交流電力を供給することができ、前記各負荷へのスイッチ周期に対するスイッチ投入期間を変えることにより、前記各負荷への供給電力を制御することができることを特徴とする交流スイッチ回路のスイッチング制御法。
【請求項6】
請求項1から5記載の交流スイッチ回路を用いて、2組以上の複数組の交流電源から1個の負荷にスイッチ切り換えることにより、前記負荷へ加える電圧波形を制御することができることを特徴とする交流スイッチ回路のスイッチング制御法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電源を負荷回路に投入・遮断する交流スイッチ回路のスイッチング制御法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交流電源を負荷回路に投入・遮断する交流スイッチは、一般には交流負荷のインダクタンスや配線インダクタンスのため、交流スイッチをオフするときに交流スイッチに大きなサージ電圧がかかるので、それを抑制する対策が必要となる。
【0003】
交流電源の投入など交流スイッチのオンオフ回数が限られている場合や流れる電流が小さい場合は、交流スイッチ回路の両端にスナバ回路を接続することで実用に供することができる。
【0004】
しかし、誘導負荷の力率や扱う電流が大きく転流エネルギーが大きい場合や、交流スイッチを交流位相制御や交流チョッパ制御あるいは交流電源電圧をスイッチ切り換えするマトリクスコンバータなど頻繁にオンオフ動作を繰り返す用途への適用においては、交流スイッチのオフ動作ごとに発生するスナバ回路損失が大きくなるので、その対策が課題となっている。
【0005】
また、交流電源の周波が極めて高い誘導加熱用電源などに対して負荷の切り換え用としてあるいは出力制御用として交流スイッチが用いられる場合など、交流電源の高周波化に伴い、交流スイッチ動作に伴う根本的な転流エネルギー処理対策が課題になってくると思われる。
【0006】
そして、このように高頻度でスイッチ制御をかけるためには、交流スイッチとしては半導体スイッチで構成する必要があるが、交流スイッチ回路を半導体デバイスで構成する場合は、回路構成や用いるデバイスによって通電時の電圧降下のための通電損失も課題となってくる。
【0007】
さらには、交流回路における交流スイッチ動作においては、変圧器が含まれる場合は交流スイッチの投入位相によっては、変圧器の磁束飽和を伴う恐れもある。
【0008】
交流スイッチ回路のうち半導体デバイスを用いて構成したものには、1)自己自己消弧機能を有さないサイリスタを逆並列に接続して構成するものから、2)、IGBT,MOSFETなど自己自己消弧機能を有するデバイスと必要に応じてダイオードと組み合わせて構成したもの、3)あるいはこれらスイッチ回路とスナバ回路を組み合わせたものなど数多くの交流スイッチ回路があり実用に供されているものもあるが、それぞれにスイッチング動作や通電状態での課題などが指摘されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特願1983-170199号
【特許文献2】特願2009-081969号
【特許文献3】特願2013-144044号-
【特許文献4】特許3634982号
【特許文献5】特願2014-215952号
【特許文献6】特願2005-037601号
【特許文献7】特願2006-069015号
【0010】
特許文献1は、上記1)によるサイリスタを用いた交流スイッチ回路例であり、オフ時点動作としてはサイリスタはゲート信号を除き、交流電流が零になった時点でオフに移行するため、線路インダクタンスによる転流エネルギー処理の問題は生じず、サイリスタがオン状態のときに並列に接続した電磁接触器をオンすることで通電損失を抑えることができるが、自己消弧機能は有していないため制御応答性に課題がある。
【0011】
特許文献2,3は、上記2)による自己消弧機能を有する交流スイッチ回路例であり、前者はMOSFETをIGBT等と並列に接続し、後者はMOSFETに逆耐圧用ダイオードを直列に接続した交流スイッチ構成となっており、オン時の通電損失を抑えることができる。
【0012】
このような構成による交流スイッチ回路は、交流スイッチをオフするときの交流回路のインダクタンスによるサージ電圧が発生することに対する対策が必要となる。
【0013】
特許文献4~7は、上記2)による交流スイッチ回路例であり、この課題に対してスナバ回路を兼ね備えたスイッチ回路が簡単化できる交流スイッチ回路が用いられているが、交流スイッチとして用いる半導体デバイスの種類や制御手法によって、また具体的な回路構成によって様々なものが提案されている。
【0014】
なお、この交流スイッチの基本回路は電圧形インバータを交流電源に直列接続して電圧制御する回路でも用いられている一般的なものである。
【0015】
これらの交流スイッチ回路は、いずれも、交流スイッチをオフすると、流れていた電流によるラインインダクタンスのエネルギーをスナバ回路動作を構成するキャパシタに蓄積することにより交流スイッチにかかるサージ電圧を抑制し、蓄えられたエネルギーを交流電源に回生あるいは負荷で消費するかあるいはスナバ回路内の抵抗で放出して次回のオフ動作に備える制御がかけられている。
【0016】
このような交流スイッチ回路動作としては、対向する位置関係にあるペアの半導体デバイスのオン/オフ動作により、キャパシタによりスナバ動作をしながら回路電流を遮断する動作モードと、このときキャパシタに蓄えられたエネルギーを交流回路に放出する動作モードによりラインインダクタンスのエネルギー処理を行うと共に、キャパシタを介さずに交流スイッチをオンにする動作モードを組み合わせることにより交流スイッチ動作を実現することができる。
【0017】
特許文献4~7においては、具体的な個々の交流スイッチ回路に対するスイッチング制御動作の説明はされているが、交流スイッチをオン、オフするときのラインインダクタンスのエネルギー処理についての基本的なスイッチング制御動作の説明にとどまっている。
【0018】
特許文献4では、MOSFETをスイッチング素子として用いた時の交流スイッチ回路のみの基本動作を説明にとどまっていて、交流回路に接続したときの交流電圧や負荷との電流経路を含めてのスイッチング制御法については明らかにされていない。
【0019】
特許文献5では、MOSFETをスイッチング素子として用いた時の交流スイッチ回路を交流電源と負荷の間に接続して、交流電源電圧の位相が270度とその後180度遅れで4個のスイッチを制御することにより、交流電源を負荷へのソフトに投入し、電流ゼロで遮断することができる具体的なスイッチングシーケンスが提案されているが、交流電源電圧の位相のみで制御しているため、コンデンサ(キャパシタ)の電圧が残っていれば全てのスイッチをオンする時点で、スイッチング素子を破壊する恐れがある。
【0020】
特許文献5では、多様なスナバ回路構成とあわせて交流スイッチを兼用した交流スイッチ回路を提案しているが、スナバ用としてコンデンサに蓄えられたエネルギー処理を含めた基本的な制御動作について述べられているが、特許文献4と同様に交流スイッチ回路構成の提案であり、具体的なスイッチング制御法については明らかにされていない。
【0021】
特許文献6は、スナバ抵抗とコンデンサを用いたハーフブリッジ構成による交流スイッチ回路の提案であり、交流電源電圧の極性と負荷電流の極性をもとにスイッチングの禁止条件をさけるスイッチング制御信号の発生法等が述べられているが、電流検出に基づく制御は負荷が軽くなった時の極性判定が不確かになるなどの課題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明は、スナバ回路とスイッチ回路を兼ね備えた電圧形インバータの回路構成による交流スイッチ回路に対して軽負荷時に懸念される電流検出の問題、またキャパシタに電荷が残っているとき短絡電流の懸念や、変圧器を含む負荷に対しての電源投入時の問題、スイッチング回路の電源投入位相の精度の問題などの課題を解決することができるスイッチング制御信号の具体的な発生方法、スイッチング制御手法に関するものである。


【課題を解決するための手段】
【0023】
図1は、本発明で制御対象とするスナバ回路とスイッチ回路を兼ね備えた電圧形インバータのスイッチングアームを構成する半導体スイッチS1~S4とスナバ用コンデンサCdで構成した交流スイッチ回路を用いた交流電源から負荷への基本となる電力制御回路を示している。
【0024】
本発明の交流スイッチ回路に関係する特許文献では交流スイッチのオン状態での通電損失を低下させるためにMOSFETが用いられていることが多いが、各スイッチングアームを構成する半導体スイッチング素子には、パワートランジスタ、IGBT,MOSFET,SiCなど用いられる交流スイッチとして扱う電力や動作周波数によって選択される。
【0025】
図1に示す交流スイッチ回路において、交流負荷インダクタンスLや配線インダクタンスlsがあるため、スイッチオフ時にはインダクタンスに蓄えられているエネルギーをスナバ用キャパシタに吸収充電することで交流スイッチ回路にスパイク電圧を発生させないようにすると共に、スイッチをオンするときにキャパシタに蓄えられた電荷を負荷に放出給電できるようにスイッチ制御する必要がある。
【0026】
図2図3はスナバ回路と交流スイッチを兼ね備えた交流スイッチ回路によるオン、オフスイッチング制御をかけたときの電流の経路を示したもので、交流スイッチがオン状態でのスイッチのさせ方で図2図3に示す2通りのスイッチ状態で働かせることができる。
【0027】
交流スイッチ回路で、通電状態から全てのスイッチングアームをオフすると、回路電流はスイッチングアームに逆並列のダイオードを経由してスナバキャパシタを充電する動作モードとなる。
【0028】
そして、キャパシタに交流電源の最大電圧以上の電圧に充電された時点で電流は流れなくなり回路は遮断され、オフ状態となる。
【0029】
次に、スイッチング信号がオンになる時、交流スイッチ回路を構成する電圧形インバータのスイッチングアームのうち、対角関係にある2個のスイッチングアームをオンすることによって、キャパシタの電荷は負荷回路へ放出放電させることができる。
【0030】
そして、キャパシタの電荷が放電し、零電圧になったときに、全てのスイッチングアームにオン信号を与えることによって、交流スイッチ回路はオン状態にでき、この場合のスイッチングアームの上アームと下アームの通電経路が並列回路となるため通電損失は低くできる。
【0031】
ここでは、このスイッチング動作を含むスイッチング制御法をType=Aと呼ぶこととする。
【0032】
これに対して、キャパシタの電荷が放電し電圧がほぼ零になるとき、スイッチングアームの上側か下側の2個のアームのいずれかを電源周期毎に交互にあるいは上か下のアームだけオンさせることにより交流スイッチ回路はオン状態にできる。
【0033】
このスイッチ制御動作モードを含むスイッチング制御法をType-Bと呼ぶこととする
【0034】
Type-Aは、通電経路が並列になるので通電損失が抑えられるが、キャパシタの電圧がほ零でなければ短絡電流が流れるので、電流制限用として小さな抵抗をキャパシタに直列に挿入するなどの対策が必要となる。
【0035】
Type-Bでは、キャパシタの電圧が完全に零まで下がらなくても短絡回路を形成しないので直列抵抗等は必ずしも必要でないが、通電経路がTYpa-Aのような並列回路とならないので、通電損失は低下させることはできない。
【0036】
図4は、Type-Aによるスイッチング制御信号がオンになった時の交流電圧の位相信号とキャパシタ電圧が低下しているかどうかのレベル信号により4個のスイッチングアームのススイッチ素子S1~S4へのスイッチング信号を決める論理テーブルを示している。
【0037】
図5は、Type-Bによるスイッチング制御信号がオンになった時の、交流電圧位相信号とキャパシタ電圧レベル信号によりS1~S4までの4個のスイッチングアームのスイッチング信号の論理テーブルを示している。
【0038】
図6は、交流電圧の位相推移制御信号とスイッチング制御信号の関係を示しており、交流回路に変圧器が接続されることを想定して、スイッチ投入時点による変圧器の磁束の飽和を避けるため、スイッチ投入位相を交流電源電圧が90度を超えた位相遅れ制御をかけるときのタイミング波形を示している。
【0039】
同図には、またスイッチングオン信号をこのスイッチ投入位相と同期させてゲート信号を発生させる動作タイミングも示している。
【0040】
図7は、交流電源電圧に対するスイッチング制御信号のタイミングチャートであり、図8は、これに対応して、交流電圧位相信号とキャパシタ電圧レベル信号によるスイッチング制御信号を示している。
【0041】
いずれも、Type-Aにおける動作タイミングチャートであり、4個のスイッチング信号は、図4に示す論理テーブルにしたがってスイッチング信号を発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】交流スイッチ回路を含む単相交流回路
図2】交流スイッチ回路のスイッチング動作モード(Type-A)
図3】交流スイッチ回路のスイッチング動作モード(Type-B)
図4】交流電圧位相信号とキャパシタ電圧レベル信号によるスイッチング信号(Type-A)
図5】交流電圧位相信号とキャパシタ電圧レベル信号によるスイッチング信号(Type-B)
図6】交流電圧の位相推移制御信号とスイッチング制御信号
図7】交流電源電圧に対するスイッチング制御信号のタイミングチャート
図8】交流電圧位相信号とキャパシタ電圧レベル信号によるスイッチング制御信号
図9】交流スイッチング回路に対するスイッチング制御システム
図10】複数負荷に対する交流スイッチ切り換え回路
図11】複数電源に対する交流スイッチ切り換え回路
図12】交流スイッチ回路のスイッチング制御動作波形(Type-A)
図13】交流スイッチ回路のスイッチング制御信号(Type-A)
図14】スイッチング信号同期オン付近スイッチング制御信号の拡大動作波形 (Type-A)
図15】スイッチング信号非同期オン付近スイッチング制御信号の拡大動作波形(Type-A)
図16】スイッチング信号同期オフ付近スイッチング制御信号の拡大動作波形 (Type-A)
図17】交流スイッチ回路のスイッチング制御信号(Type-B)
図18】スイッチング投入位相による電圧電流波形(φ=0)
図19】スイッチング投入位相による電圧電流波形(φ=120度)
図20】交流スイッチ回路による2回路負荷制御動作波形
【発明を実施するための形態】
【0043】
図9は、交流スイッチ回路を上述したスイッチング制御原理に基づき、本発明を実施に移すための具体的なスイッチング制御部を付加した交流スイッチ回路の制御システムを示している。
【0044】
同図で、交流電源の電圧位相に対して90度(π/2)以上の遅れ位相の交流波形の極性比較回路を介して得られる電圧位相信号pと、スナバ用キャパシタの電圧レベルがほぼ零二なっているかどうかの検出信号qをもとに、スイッチング制御信号(S)との論理演算を通すことにより各スイッチングアームへのオン、オフ信号を得ることができる。
【0045】
交流スイッチがオン制御状態におけるスイッチング方法として、交流スイッチ回路のすべてのスイッチングアームをオンさせるスイッチング制御タイプ(Type-A)と上側か下側の2個のスイッチングアームにオン信号を与えるタイプ(Type-B)は容易に選択制御することができる。
【0046】
また、スイッチング制御信号(S)を交流電源の投入位相に同期させるかどうかについても、D-FF等を通した信号を用いるかどうかで同期か非同期動作をで容易に切り換えることができる。
【0047】
交流スイッチ回路の主回路は、電圧形インバータと同じであり、市販のスイッチングパワーモジュールを使って容易に構成することができる。
【0048】
また、スイッチング制御システムは、検出量が負荷によって不明確となる電流検出等によらず、交流電源電圧の位相検出やスナバ用キャパシタの電圧検出で容易に構成することができ、確実に動作させることができる。
【実施例0049】
図10は、本発明による交流スイッチ回路を1個の交流電源から複数の誘導性負荷に対する交流スイッチ切り換え回路として用いたときの回路例を示している。
【0050】
また、図11は、本発明による交流スイッチ回路を一つの負荷に対して複数の異なる交流電源に対して交流スイッチ切り換えする回路例を示している。
【0051】
いずれも、交流スイッチ回路は、スイッチをオフするときに発生する交流ラインのインダクタンスの転流エネルギーによるスパイク電圧の発生をスナバ用キャパシタで抑制すると共に、キャパシタに蓄えられた電荷を負荷回路に送出することにより、スイッチ動作に伴う損失を抑えながら負荷への電力制御を行うことを目的としている。
【0052】
本発明の交流スイッチ回路の制御法は、商用電源から誘導加熱用電源など高周波電源に対して適用することができるが、交流スイッチ制御によるスナバ損失が原理的に生じないことから、ここでは高周波誘導加熱用電源に対するスイッチ制御動作を実施例として示す。
【0053】
図10に示す複数個の負荷に対するスイッチ切り換え制御を前提にしているが、本発明による交流スイッチ回路のスイッチング制御の基本動作を確認するために、1個の負荷に対するスイッチング動作をシミュレーション解析結果により確認する。
【0054】
以下のシミュレーション解析で用いた諸定数は、誘導加熱用高周波電源として、交流電源の電圧は実効値Ea=220V,周波数f=200kHzで、交流スイッチ回路のスナバ用キャパシタはCd=0.02uF、とし、変圧比10:1の変圧器を介してスイッチングデユーティーD=175/360 の期間、誘導性負荷(R=1 Ω、L=0.8uH)を接続することとしている。
【0055】
なお、交流スイッチング回路のオン時の通電タイプとして、全てのスイッチングアームを通電させるType-A による場合は、スナバ用キャパシタに直列に電流制限用抵抗1Ωを挿入して行った。
【実施例0056】
図12は、交流電源電圧に対して120度遅れ位相でスイッチ投入制御をかける交流スイッチ回路のType-Aでのスイッチング制御時のシミュレーション解析による動作波形を示している。
【0057】
同図より、スイッチング制御信号(S)に対してオン時はキャパシタの電圧ecdが零となり、オフ時は交流電源電圧のピーク値となる波形と共に、負荷に電圧eoが加わり、電流iaが流れるが、このスイッチ動作に対して交流スイッチにかかる電圧eswにスパイク電圧や、スイッチ素子に流れる電流is1に異常な電流が流れず、所期のスイッチング動作が行えていることが分かる。
【0058】
図13は、この時の交流スイッチ回路の各スイッチングアームへのスイッチング制御信号波形を示しており、スイッチング制御オン信号(S)が入ったときに全てのスイッチングアームはオンし、スイッチング制御オフ信号(S)が入ったときは全てのスイッチングアームはオフしていることが分かる。
【0059】
図14は、同期オン付近スイッチング制御信号の拡大動作波形 (Type-A)を示しており、スイッチング制御オン信号(S)が交流電源に対して120度遅れのスイッチ投入タイミングに同期して入ると、スナバ用キャパシタに蓄えられていた電荷が各スイッチングアームのスイッチ動作により、負荷回路へ放出しながら電圧がほぼ放電し零になった時点で、全てのスイッチングアームがオン状態になっていることが分かる。
【0060】
図15は、スイッチング信号非同期オン付近スイッチング制御信号の拡大動作波形(Type-A)を示しており、スイッチング制御オン信号(S)が入ると、すぐに各スイッチングアームへのスイッチング信号が発生しており、少し余分なスイッチング動作をしていることが分かる。
【0061】
図16は、スイッチング信号同期オフ付近スイッチング制御信号の拡大動作波形 (Type-A)を示しており、オフ動作ではすべてのスイッチングアームはオフとなり、ラインのインダクタンスによるエネルギーは4個のスイッチ回路のダイオードブリッジ回路によりスナバ用キャパシタに吸収充電されるので、スパイク電圧の発生を防いでいることが確認できる。
【実施例0062】
図17は、交流スイッチ回路のスイッチングタイプがType-Bの場合の各スイッチングアームのスイッチング制御信号を示しており、図13に示したTypa-A と比較して、オン時のにはスイッチングアームが上側2個と下側2個が交互に切り替わる動作をしていることが分かる。
【0063】
このため、Type-Bの制御は、オン動作時の無駄なスイッチング切り換えによるスイッチング損失や、通電経路が単独になるため、並列になるTyope-Aの場合に比べて通電損失の点で損失は多少増加する。
【実施例0064】
次に、交流スイッチ回路を誘導加熱用電源のスイッチ回路に適用する場合など、負荷回路に変圧器が含まれている場合は、スイッチング投入タイムングによっては変圧器の飽和を招く恐れがあるので、スイッチング投入位相による比較を、図18図19に示す。
【0065】
図18は、交流スイッチ回路においては、交流電源に対する投入位相をスイッチ投入時は交流電圧にキャパシタの電圧が加わることから、遅れ90度以上とし遅れ120度でスイッチ動作をさせたと気の動作波形を示したものである。
【0066】
図19は、交流電源に対する投入位相を遅らせることなく投入したときの動作波形であり、負荷に加わる電圧eoや電流isの波形から図18の結果との違いが認められる。
【実施例0067】
最後に図20は、1個の誘導性高周波電源から2個の負荷の加熱制御加工への実施例として、
交流スイッチ回路による2回路負荷へスイッチングデユーティーがD=120/360における制御動作であり、時分割制御できる範囲で各負荷への電力制御にも適用することができていることが分かる。
【符号の説明】
【0068】
100 … 交流電源
110 … 配線インダクタンス
200 … 交流スイッチ回路
210 … スイッチングアーム
220 … スナバ用キャパシタ
230 … スナバ用電流制限抵抗
300 … 負荷(R-L)
400 … 交流スイッチ制御部
410 … 交流電源位相推移部
420 … 交流信号極性比較器
430 … キャパシタ電圧レベル比較器
450 … スイッチング信号発生部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20