(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160960
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】包装袋および積層体
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20231026BHJP
B65D 65/40 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
B65D81/34 U ZBP
B65D65/40 D
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147820
(22)【出願日】2023-09-12
(62)【分割の表示】P 2017121437の分割
【原出願日】2017-06-21
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】田中 大介
(72)【発明者】
【氏名】駒形 徳子
(57)【要約】
【課題】加熱時に収容部内の蒸気を外部に逃がすことができ、且つ環境負荷を低減することができる包装袋および積層体を提供する。
【解決手段】包装袋は、少なくとも、基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体を用いたものであり、蒸気抜け機構を備える。基材層は、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体を用いた、電子レンジ用包装袋であって、
前記包装袋が、蒸気抜け機構を備え、
前記基材層が、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含む、包装袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも、基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体を用いた、電子レンジ用包装袋に関する。さらには、電子レンジ用包装袋に用いる積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、調理済あるいは半調理済の液体、粘体あるいは液体と固体とが混在する内容物を、プラスチック製の積層フィルムから構成された袋に充填密封したものが多く市場に出回っている。袋においては、積層フィルム同士が接合されていない非シール部が、内容物が収容される収容部を構成している。また、積層フィルム同士が接合されているシール部が、収容部を密封している。内容物は、例えば、カレー、シチュー、スープ等の調理済食品である。内容物は、袋に収容された状態で、電子レンジなどによって加熱される。
【0003】
ところで、密封された状態の袋に収容された内容物を、電子レンジを利用して加熱すると、加熱に伴って内容物に含まれる水分が蒸発して収容部の圧力が高まっていく。袋の収容部の圧力が高まると、袋が破裂して内容物が飛散し電子レンジ内を汚してしまうおそれがある。このような課題を考慮し、例えば特許文献1、2は、収容部の圧力が高まると収容部と外部とを自動的に連通させて収容部内の蒸気を外部に逃がす蒸気抜き機構を設けることを提案している。蒸気抜き機構は、例えば、その他のシール部に比べて弱いシール強度を有する蒸気抜けシール部を含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-182780号公報
【特許文献2】特開2006-143223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれている。例えば、積層体の製造にバイオマス由来の原料を用いることにより、化石燃料の使用量を削減することが望まれている。
【0006】
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る包装袋および積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも、基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体を用いた、電子レンジ用包装袋であって、前記包装袋が、蒸気抜け機構を備え、前記基材層が、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含む、包装袋である。
【0008】
本発明による包装袋において、前記基材層は、第1基材層と、第2基材層と、を有し、前記第1基材層又は前記第2基材層の少なくともいずれか一方が、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含んでいてもよい。
【0009】
本発明による包装袋において、前記シーラント層が、ポリプロピレンを含んでいてもよい。
【0010】
本発明による包装袋において、前記積層体は、前記第1基材層又は前記第2基材層に設けられた透明蒸着膜を含むバリア層を更に備えていてもよい。
【0011】
本発明による包装袋において、前記バリア層は、前記透明蒸着膜の面上に位置するガスバリア性塗布膜を更に含んでいてもよい。
【0012】
本発明による包装袋において、前記第1基材層が、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、前記第2基材層が、ポリアミド又はポリブチレンテレフタレートを含んでいてもよい。
【0013】
本発明による包装袋において、前記第1基材層が、ポリエステル樹脂層とポリアミド樹脂層とを含み、前記第2基材層が、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含んでいてもよい。
【0014】
本発明による包装袋において、前記積層体が、少なくとも、前記基材層と、接着剤層と、シーラント層とが順に積層された積層体であり、前記基材層と前記接着剤層との間、又は前記接着剤層と前記シーラント層との間に、部分的に熱軟化性樹脂層を備え、前記シーラント層が、低密度ポリエチレンを含んでいてもよい。
【0015】
本発明は、少なくとも、基材層と、接着剤層と、シーラント層とをこの順に備える積層体であって、前記積層体は、前記基材層と前記接着剤層との間、又は前記接着剤層と前記シーラント層との間に、部分的に熱軟化性樹脂層を備え、前記基材層が、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、前記シーラント層が、低密度ポリエチレンを含む、積層体である。
【0016】
本発明は、少なくとも、第1基材層と、第2基材層と、シーラント層とをこの順に備える積層体であって、前記第1基材層が、ポリエステル樹脂層とポリアミド樹脂層とを含み、前記第2基材層が、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、前記シーラント層が、ポリプロピレンを含む、積層体である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、加熱時に収容部内の蒸気を外部に逃がすことができ、且つ環境負荷を低減することができる包装袋および積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明による積層体の一例を示す模式断面図である。
【
図2】本発明による積層体の一例を示す模式断面図である。
【
図3】本発明による積層体の一例を示す模式断面図である。
【
図4】本発明による積層体の第1基材層の一例を示す模式断面図である。
【
図5】本発明による包装袋の一例を示す模式正面図である。
【
図6】本発明による包装袋の一例を示す模式正面図である。
【
図7】本発明による包装袋の一例を示す模式正面図である。
【
図8】本発明による包装袋の一例を示す模式正面図である。
【
図9】本発明による包装袋の一例を示す模式正面図である。
【
図10】本発明による包装袋の一例を示す模式正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<積層体>
本発明による積層体は、少なくとも、基材層と、シーラント層とをこの順に備えるものであり、電子レンジ用包装袋を製造するために好適に用いることができる。電子レンジ用包装袋として用いる場合には、包装袋は蒸気抜け機構を備えることが必要であり、例えば、積層体が基材層とシーラント層との間に、部分的に熱軟化性樹脂層を備えていてもよい。積層体は、更に、バリア層、接着剤層、印刷層や他の層等を備えてもよい。積層体が接着剤層や他の層を2層以上備える場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0020】
本発明による積層体について、図面を参照しながら説明する。本発明による積層体の模式断面図の例を
図1~
図3に示す。
【0021】
図1に示した積層体10は、第1基材層11と、バリア層14を構成する蒸着層141と、バリア層14を構成するガスバリア性塗布膜142と、印刷層15と、接着剤層16と、第2基材層12と、接着剤層17と、シーラント層13とをこの順に備える。積層体10を備える包装袋においては、シーラント層13が内面側に位置する。
【0022】
図2に示した積層体10は、第1基材層11と、印刷層15と、接着剤層16と、バリア層14を構成するガスバリア性塗布膜142と、バリア層14を構成する蒸着層141と、第2基材層12と、接着剤層17と、シーラント層13とをこの順に備える。積層体10を備える包装袋においては、シーラント層13が内面側に位置する。
【0023】
図3に示した積層体20は、基材層21と、熱軟化性樹脂層24と、接着剤層26と、シーラント層23とをこの順に備える。積層体20を備える包装袋においては、シーラント層23が内面側に位置する。
【0024】
以下、積層体を構成する各層について説明する。
【0025】
[基材層]
{基材層の第1の構成}
第1の構成に係る基材層は、第1基材層と、第1基材層よりも積層体の内面側に位置する第2基材層とを少なくとも備える。少なくとも2つの基材層を備えることで、包装袋を製造した際に、手切れ性や強度を向上させることができる。
【0026】
(第1基材層)
(第1基材層の第1の構成)
第1の構成に係る第1基材層(第1基材層11)は、バイオマス由来のポリエチレンテレフタレート(以下、PETとも記す)を含む。バイオマス由来のPETとは、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするPETである。第1基材層は、化石燃料由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とする、化石燃料由来のPETをさらに含んでもよい。第1基材層全体として、下記のバイオマス度を実現できればよい。本発明においては、第1基材層がバイオマス由来のPETを含むことで、従来に比べて化石燃料由来のPETの量を削減し環境負荷を減らすことができる。
【0027】
本発明において、「バイオマス度」(バイオマス由来の炭素濃度)は、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量を測定した値である。大気中の二酸化炭素には、C14が一定割合(105.5pMC)で含まれているため、大気中の二酸化炭素を取り入れて成長する植物、例えばトウモロコシ中のC14含有量も105.5pMC程度であることが知られている。また、化石燃料中にはC14が殆ど含まれていないことも知られている。したがって、PET中の全炭素原子中に含まれるC14の割合を測定することにより、バイオマス由来の炭素の割合を算出することができる。本発明においては、PET中のC14の含有量をPC14とした場合の、バイオマス由来の炭素の含有量Pbioは、以下のようにして求めることができる。
Pbio(%)=PC14/105.5×100
なお、シーラント層のうち後述する第2の構成に係るシーラント層中のバイオマス由来の炭素の含有量においても上記式を用いて求めることができる。
【0028】
PETは、2炭素原子を含むエチレングリコールと8炭素原子を含むテレフタル酸とがモル比1:1で重合したものであるため、エチレングリコールとしてバイオマス由来のもののみを使用した場合、PET中のバイオマス由来の炭素の含有量Pbioは20%となる。本発明においては、バイオマス由来のPET中の全炭素に対して、放射性炭素(C14)測定によるバイオマス由来の炭素の含有量が、10%以上20%以下であることが好ましく、10%以上19%以下であってもよい。バイオマス由来のPET中のバイオマス由来の炭素の含有量が10%以上であると、カーボンオフセット材料として好適である。また、化石燃料由来のエチレングリコールと、化石燃料由来のジカルボン酸とを用いて製造した化石燃料由来のPET中のバイオマス由来の炭素の含有量は0%であり、化石燃料由来のPETのバイオマス度は0%となる。
【0029】
本発明において、第1基材層のバイオマス度は、5%以上であり、好ましくは10%以上であり、より好ましくは15%以上である。第1基材層のバイオマス度が5%以上であれば、従来に比べて化石燃料由来のPETの量を削減し環境負荷を減らすことができる。
【0030】
第1基材層が延伸されたPETフィルムである場合、第1基材層に用いるPETフィルムは、引張強度が、MD方向で、好ましくは150MPa以上300MPa以下、より好ましくは200MPa以上300MPa以下、TD方向で、好ましくは150MPa以上300MPa以下、より好ましくは150MPa以上300MPa以下であり、また、引張伸度が、MD方向で、好ましくは50%以上250%以下、より好ましくは70%以上200%以下であり、TD方向で好ましくは50%以上250%以下、より好ましくは60%以上200%以下である。引張強度および引張伸度は、JIS K 7127に準拠して測定することができる。
【0031】
第1の構成に係る第1基材層は、好ましくは5μm以上40μm以下、より好ましくは8μm以上25μm以下の厚さを有する。第1基材層の厚さが上記範囲程度であれば、成形加工が容易であり、また包装材料として好適に用いることができる。
【0032】
(第1基材層の第2の構成)
第2の構成に係る第1基材層(第1基材層11)は、ポリエステル樹脂層とポリアミド樹脂層とを含むものである。第1基材層は、外層側にポリエステル樹脂層が、内層側(バリア層側)にポリアミド樹脂層が配置されることが好ましい。第1基材層は、内層側(バリア層側)に配置されたポリアミド樹脂層の更に内層側に位置するポリエステル樹脂層を更に含んでいてもよい。ポリエステル樹脂としては、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂が挙げられ、特にポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂が好ましい。ポリアミド樹脂層としては、ナイロン6、ナイロン6,6、およびナイロン12等のナイロン類を用いることが好ましい。
【0033】
第2の構成に係る第1基材層の形成方法は特に限定されないが、ポリエステル樹脂層とポリアミド樹脂層とを共押出しして成形することが好ましい。この場合、第1基材層は、好ましくは5μm以上100μm以下、より好ましくは10μm以上50μm以下の厚さを有する。第1基材層の厚さが上記範囲程度であれば、成形加工が容易であり、また透明性を向上させることができる。
【0034】
(第2基材層)
(第2基材層の第1の構成)
第1の構成に係る第2基材層は、ナイロン等のポリアミドを含む樹脂層である。第2基材層は延伸されていることが好ましく、二軸延伸されていることがより好ましい。
【0035】
ポリアミドとしては、ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン9、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6/66、ナイロン66/610、ナイロンMXD6等が挙げられる。耐水性に劣るポリアミド樹脂層を積層体の外側ではなく内部に備えることで、耐水性を損なわずに包装袋に要求される強度を向上させることができる。
【0036】
第2基材層が延伸されたナイロンフィルムである場合、第2基材層に用いるナイロンフィルムは、引張強度が、MD方向で、好ましくは150MPa以上350MPa以下、より好ましくは200MPa以上300MPa以下、TD方向で、好ましくは150MPa以上400MPa以下、より好ましくは200MPa以上350MPa以下であり、また、引張伸度が、MD方向で、好ましくは50%以上200%以下、より好ましくは70%以上150%以下であり、TD方向で好ましくは30%以上200%以下、より好ましくは50%以上150%以下である。
【0037】
第1の構成に係る第2基材層の厚さは、好ましくは9μm以上であり、より好ましくは12μm以上である。また、第1の構成に係る第2基材層の厚さは、好ましくは35μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。第2基材層の厚さを9μm以上にすることにより、積層体が十分な強度を有するようになる。また、第2基材層の厚さを35μm以下にすることにより、第2基材層が優れた成形性を示すようになる。このため、第2基材層を含む積層体を加工して包装袋を製造する工程を効率的に実施することができる。
【0038】
(第2基材層の第2の構成)
第2の構成に係る第2基材層は、主成分としてポリブチレンテレフタレート(以下、PBTとも記す)を含む。例えば、第2基材層は、51質量%以上のPBTを含む。
【0039】
第2の構成に係る第2基材層におけるPBTの含有率は、51質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、さらには70質量%以上、特には75質量%以上が好ましく、最も好ましくは80質量%以上である。PBTの含有率を51質量%以上にすることにより、第2基材層に優れたインパクト強度および耐ピンホール性を持たせることができる。
【0040】
主たる構成成分として用いるPBTは、ジカルボン酸成分として、テレフタル酸が90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは98モル%以上であり、最も好ましくは100モル%である。グリコール成分として1,4-ブタンジオールが90モル%以上であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上であり、さらに好ましくは97モル%以上であり、最も好ましくは、重合時に1,4-ブタンジオールのエーテル結合により生成する副生物以外は含まれないことである。
【0041】
第2基材層は、PBT以外のポリエステル樹脂を含んでいてもよい。これにより、例えばフィルム状の積層体を二軸延伸させる場合の成膜性や第2基材層の力学特性を調整することができる。PBT以外のポリエステル樹脂の添加量は、40質量%以下が好ましい。
【0042】
第2の構成に係るフィルム状の第2基材層は、例えばキャスト法によって作製さえ得る。
図4は、第2基材層の層構成の一例を示す断面図である。樹脂を多層化してキャストすることによって第2基材層が作製される場合、
図4に示すように、第2基材層は、複数の層31を含む多層構造部からなる。複数の層31はそれぞれ、主成分としてPBTを含む。例えば、複数の層31はそれぞれ、51質量%以上のPBTを含む。なお、複数の層31においては、n番目の層31の上にn+1番目の層31が直接積層されている。すなわち、複数の層31の間には、接着剤層が介在されていない。第2基材層は、少なくとも10層以上、好ましくは60層以上、より好ましくは250層以上、更に好ましくは1000層以上の層31を含む多層構造部からなる。層31の厚さは、好ましくは3nm以上であり、より好ましくは10nm以上である。また、層31の厚さは、好ましくは200nm以下であり、より好ましくは100nm以下である。
【0043】
第2の構成に係る第2基材層の厚さは、好ましくは9μm以上であり、より好ましくは12μm以上である。また、第2の構成に係る第2基材層の厚さは、好ましくは25μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。第2基材層の厚さを9μm以上にすることにより、積層体が十分な強度を有するようになる。また、第2基材層の厚さを25μm以下にすることにより、第2基材層が優れた成形性を示すようになる。このため、第2基材層を含む積層体を加工して包装袋を製造する工程を効率的に実施することができる。
【0044】
(第2基材層の第3の構成)
第3の構成に係る第2基材層は、ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルを含む。例えば、第2基材層は、グリコール成分としての1,4-ブタンジオール、又はそのエステル形成性誘導体と、二塩基酸成分としてのテレフタル酸、又はそのエステル形成性誘導体を主成分とし、それらを縮合して得られるホモ、またはコポリマータイプのポリエステルを含む。第3の構成に係る第2基材層におけるPBTの含有率は、51質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、さらには80質量%以上が好ましく、最も好ましくは90質量%以上である。また、第3の構成に係る第2基材層は、ポリブチレンテレフタレートと添加剤のみで構成されていることが好ましい。
【0045】
第2基材層に機械的強度を付与するためには、PBTのうち、融点が200℃以上且つ250℃以下、IV値が1.10dl/g以上且つ1.35dl/g以下のものが好ましい。さらには、融点が215℃以上且つ225℃以下、IV値が1.15dl/g以上且つ1.30dl/g以下のものが特に好ましい。これらのIV値は、第2基材層を構成する材料全体によって満たされていてもよい。IV値は、JIS K 7367-5:2000に基づいて算出され得る。
【0046】
第3の構成に係る第2基材層は、PETなどPBT以外のポリエステル樹脂を30質量%以下の範囲で含んでいてもよい。第2基材層がPBTに加えてPETを含むことにより、PBT結晶化を抑制することができ、PBTフィルムの延伸加工性を向上させることができる。
【0047】
第3の構成に係るフィルム状の第2基材層を作製する方法としては、例えば、未延伸原反を延伸させて延伸フィルムを得る二軸延伸法を採用することができる。二軸延伸法は、特には限定されない。例えば、チューブラー法又はテンター法により、縦方向及び横方向を同時に延伸してもよく、若しくは、縦方向及び横方向を逐次延伸してもよい。このうち、チューブラー法は、周方向の物性バランスが良好な延伸フィルムを得ることができ、特に好ましく採用される。
【0048】
第2基材層は、例えば、ブチレンテレフタレートを主たる繰返し単位とするポリエステルを含む単一の層によって構成されている。上述のチューブラー法によれば、高い冷却速度で未延伸原反を成膜するので、未延伸原反が単一の層によって構成される場合であっても、低い結晶状態を保つことができ、このため、安定して未延伸原反を延伸することができる。
【0049】
第2基材層にPBTを主成分として含ませることにより、積層体の耐熱性を高くすることができる。例えば、積層体の引張弾性率を十分に高くすることができる。特に、高温の雰囲気下、例えば100℃の雰囲気下における積層体の引張弾性率(以下、熱間引張弾性率とも記す)を十分に高くすることができる。
【0050】
第3の構成に係る第2基材層の厚さは、好ましくは9μm以上であり、より好ましくは12μm以上である。また、第3の構成に係る第2基材層の厚さは、好ましくは35μm以下であり、より好ましくは30μm以下である。第2基材層の厚さを9μm以上にすることにより、積層体が十分な強度を有するようになる。また、第2基材層の厚さを30μm以下にすることにより、第2基材層が優れた成形性を示すようになる。このため、第2基材層を含む積層体を加工して包装袋を製造する工程を効率的に実施することができる。
【0051】
以下、上述の第2の構成及び第3の構成のように第2基材層がPBTを主成分として含むことの利点について説明する。
【0052】
PBTは、耐熱性に優れる。このため、食品などの内容物を収容する包装袋にボイル処理やレトルト処理を施す際に第2基材層が変形したり第2基材層の強度が低下したりすることを抑制することができる。レトルト処理とは、内容物を包装袋に充填して包装袋を密封した後、包装袋を加圧状態で加熱する処理である。レトルト処理の温度は、例えば120℃以上である。ボイル処理とは、内容物を包装袋に充填して包装袋を密封した後、包装袋を大気圧下で湯煎する処理である。ボイル処理の温度は、例えば60℃以上且つ100℃以下である。
【0053】
また、PBTが耐熱性を有することにより、消費者が包装袋を加熱する際に内部に生じる圧力によって第2基材層が伸びてしまうことを抑制することができる。このことにより、内部に生じる圧力を、後述する蒸気抜け機構に効果的に作用させることができる。このため、加熱時に蒸気抜け機構を介して包装袋内の蒸気を外部に逃がすことができる。
【0054】
また、第2基材層がPBTを主成分として含む場合、第2基材層は、高い強度を有する。このため、包装袋を構成する積層体がナイロンを含む場合と同様に、包装袋に耐突き刺し性を持たせることができる。
【0055】
(第2基材層の第4の構成)
第4の構成に係る第2基材層は、バイオマス由来のポリエチレンテレフタレートを含む。なお、第2基材層は、上述した第1の構成による第1基材層11と同様であるため、ここでは、詳しい説明は省略する。
【0056】
上述の第1基材層及び第2基材層は、少なくともいずれか一方がバイオマス由来のPETを含むよう構成される。第1基材層及び第2基材層を構成する材料の組み合わせの例をまとめて表1に示す。なお、表1において、「バイオPET」は、上述の第1基材層の第1の構成又は第2基材層の第4の構成に係る、バイオマス由来のPETを意味する。「複層ポリアミド」は、上述の第1基材層の第2の構成に係る、ポリエステル樹脂層とポリアミド樹脂層とを含む樹脂層を意味する。「ポリアミド」は、上述の第2基材層の第1の構成に係る、ナイロン等のポリアミドを含む樹脂層を意味する。「PBT」は、上述の第2基材層の第2の構成又は第2基材層の第3の構成に係る、51質量%以上のPBTを含む樹脂層を意味する。
【表1】
【0057】
なお、第1基材層及び第2基材層の少なくともいずれか一方がバイオマス由来のPETを含む限りにおいて、第1基材層及び第2基材層の組み合わせとして、上記表1に示す組み合わせ以外のものを採用してもよい。
【0058】
{基材層の第2の構成}
第2の構成に係る基材層は、単一の基材層(基材層21)で構成されている。ここで、「単一の基材層」とは、基材層が単一の層によって構成されていることを意味するものではない。基材層は単層であってもよく、多層であってもよい。「単一の基材層」とは、基材層が多層で構成されている場合、複数の層の間に、接着剤層やバリア層等が介在されていないことを意味する。この基材層は、バイオマス由来のポリエチレンテレフタレートを含む。なお、基材層は、上述した第1の構成による基材層の第1基材層のうち、上述した第1の構成による第1基材層11と同様であるため、ここでは、詳しい説明は省略する。
【0059】
[熱軟化性樹脂層]
本発明による積層体は、基材層と接着剤層との間または接着剤層とシーラント層との間に、部分的に熱軟化性樹脂層を備えていてもよい。熱軟化性樹脂層を備える積層体の具体的な層構成としては、例えば、基材層、熱軟化性樹脂層、接着剤層、およびシーラント層がこの順に積層されたもの、基材層、接着剤層、熱軟化性樹脂層、およびシーラント層がこの順に積層されたものが挙げられる。
【0060】
熱軟化性樹脂層は、室温以下の温度環境では所定の強度を有するが、高温の環境温度ではその強度が低下する性質を有するものである。所定の強度を保持する室温以下の環境温度とは、通常、電子レンジ用包装袋を用いて食品等の内容物を包装する工程時の環境温度や、内容物を密封包装した後の包装袋の冷凍工程時の環境温度や、冷凍食品を輸送、保管する際の環境温度である。こうした環境温度では、熱軟化性樹脂層は、所定の強度が保持されることとなる。一方、上記の所定の強度が低下する高温の環境温度とは、食品等の内容物を密封包装した包装袋を、電子レンジで加熱した際に加わる温度であり、こうした高い温度で熱軟化性樹脂層の強度が低下することで、破壊されて、蒸気が十分に抜け易くなる。
【0061】
熱軟化性樹脂層は、60~110℃、好ましくは60~90℃の融点を有する樹脂材料、例えば、エチレン-酢酸ビニル系共重合体樹脂、または、ポリアミド、硝化綿、およびポリエチレンワックスを含有する樹脂を用いて形成することができる。ポリアミドと硝化綿とポリエチレンワックスとを含有する樹脂としては、DICグラフィックス株式会社製のMWOPニス(軟化点:105℃)などを用いることができる。融点が60~110℃の融点を有する樹脂材料を用いることによって、電子レンジで加熱した際に熱軟化性樹脂層の破壊が起こり易くなり、蒸気が抜けるのを促進させることができる。
【0062】
熱軟化性樹脂層の形成は、従来公知の樹脂コーティング法を用いることができ、その厚さは、1μm以上5μm以下であることが好ましい。熱軟化性樹脂層の厚さが上記範囲程度であれば、電子レンジで加熱した際に熱軟化性樹脂層の破壊が起こり易くなる。
【0063】
積層体において、熱軟化性樹脂層が設けられた部分の接着強度は、25℃以下の温度領域では700(g/15mm)以上であり、80℃以上の高温の温度領域では300(g/15mm)以下であることが好ましい。このことにより、室温時または冷凍時の取扱、輸送、保管等によって、接着剤層と熱軟化性樹脂層との間、または、熱軟化性樹脂層とシーラント層との間で剥離が発生することを抑制できるとともに、電子レンジで加熱したときに、基材層とシーラント層との間に空隙を形成しやすくすることができる。なお、シール強度は、テンシロン引張試験機(株式会社オリエンテック製 RTC-1310A)を用いて引張速度300mm/minで測定したときの平均値である。
【0064】
[シーラント層]
(シーラント層の第1の構成)
第1の構成に係るシーラント層は、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン、ポリプロピレンから選択される1種または2種以上の樹脂を含む。シーラント層は、単層であってもよく、多層であってもよい。また、シーラント層は、好ましくは無延伸のフィルムからなる。
【0065】
シーラント層を構成する材料の融点は、150℃以上であることが好ましく、160℃以上であることがより好ましい。シーラント層の融点を高くすることにより、包装袋のレトルト処理を高温で実施することが可能になり、このため、レトルト処理に要する時間を短くすることができる。なお、シーラント層を構成する材料の融点は、第1基材層や第2基材層などの基材層を構成する樹脂の融点より低い。
【0066】
好ましくは、シーラント層は、プロピレン・エチレンブロック共重合体を含む。例えば、シーラント層を構成するフィルムは、プロピレン・エチレンブロック共重合体を主成分とする無延伸フィルムである。プロピレン・エチレンブロック共重合体を用いることにより、シーラント層の耐衝撃性を高めることができ、これにより、落下時の衝撃により包装袋が破袋してしまうことを抑制することができる。また、積層体の耐突き刺し性を高めることができる。
【0067】
また、シーラント層は、熱可塑性エラストマーを更に含んでいてもよい。熱可塑性エラストマーを用いることにより、シーラント層の耐衝撃性や耐突き刺し性を更に高めることができる。
【0068】
熱可塑性エラストマーは、例えば水添スチレン系熱可塑性エラストマーである。水添スチレン系熱可塑性エラストマーは、少なくとも1個のビニル芳香族化合物を主体とする重合体ブロックAと少なくとも1個の水素添加された共役ジエン化合物を主体とする重合体ブロックBからなる構造を有する。また、熱可塑性エラストマーは、エチレン・α-オレフィンエラストマーであってもよい。エチレン・α-オレフィンエラストマーは、低結晶性もしくは非晶性の共重合体エラストマーであり、主成分としての50~90質量%のエチレンと共重合モノマーとしてのα-オレフィンとのランダム共重合体である。
【0069】
シーラント層におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体の含有率は、例えば80質量%以上であり、好ましくは90質量%以上である。
【0070】
プロピレン・エチレンブロック共重合体の製造方法としては、触媒を用いて原料であるプロピレンやエチレンなどを重合させる方法が挙げられる。触媒としては、チーグラー・ナッタ型やメタロセン触媒などを用いることができる。
【0071】
シーラント層の厚さは、好ましくは30μm以上であり、より好ましくは40μm以上である。また、シーラント層の厚さは、好ましくは100μm以下であり、より好ましくは80μm以下である。
【0072】
上述のシーラント層の第1の構成は、
図1及び
図2に示す、第1の構成に係る基材層を備える積層体において好ましく採用される。
【0073】
(シーラント層の第2の構成)
第2の構成に係るシーラント層は、バイオマス由来の低密度ポリエチレンと、化石燃料由来の低密度ポリエチレンとからなるものである。シーラント層には、樹脂材料として直鎖状低密度ポリエチレンを用いないで低密度ポリエチレンのみを用いることで、電子レンジで加熱した際にシーラント層に部分的な破壊が起こり、熱軟化性樹脂層から蒸気が十分に抜け易くなる。なお、低密度ポリエチレンは、高圧重合法によりエチレンを重合して得られるものでる。
【0074】
シーラント層において、バイオマス由来の低密度ポリエチレンの含有量は、好ましくは5質量%以上50質量%未満であり、より好ましくは10質量%以上40質量%以下であり、化石燃料由来の低密度ポリエチレンの含有量は、好ましくは50質量%超95質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上90質量%以下である。シーラント層において、バイオマス由来の低密度ポリエチレンの含有量が上記範囲内であれば、コストを抑えながら、積層体全体のバイオマス度を高めることができる。
【0075】
シーラント層のバイオマス度は、好ましくは5%以上50%未満であり、より好ましくは10質量%以上40質量%以下である。バイオマス度が上記範囲であれば、コストを抑えながら、化石燃料の使用量を削減することができ、環境負荷を減らすことができる。
【0076】
本発明において、好適に使用されるバイオマスポリエチレンとしては、ブラスケム社製のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(商品名:SBC818、密度:0.918g/cm3、MFR:8.1g/10分、バイオマス度95%)、ブラスケム社製のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(商品名:SPB681、密度:0.922g/cm3、MFR:3.8g/10分、バイオマス度95%)、ブラスケム社製のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(商品名:STN7006、密度:0.923g/cm3、MFR:0.6g/10分、バイオマス度95%)、等が挙げられる。
【0077】
シーラント層全体の厚みは、好ましくは20μm以上50μm以下、より好ましくは25μm以上40μm以下である。シーラント層の厚さが上記範囲であれば、シール性能を発揮しながら、また、電子レンジで加熱した際にはシーラント層が容易に破壊され、包装袋から蒸気が十分に抜けることができる。
【0078】
上述のシーラント層の第2の構成は、
図3に示す、第2の構成に係る基材層を備える積層体において好ましく採用される。
【0079】
[バリア層]
次に、バリア層について説明する。
【0080】
(蒸着層)
図1及び
図2に示す積層体のバリア層を構成する蒸着層は、従来公知の方法により形成することができる蒸着膜からなる層である。蒸着層を備えることで、酸素ガスおよび水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性を、付与ないし向上させることができる。なお、バリア層は、蒸着層を2層以上備えてもよい。蒸着層を2層以上備える場合、それぞれが、同一の組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
【0081】
蒸着膜は、無機酸化物の蒸着膜からなる透明蒸着膜であってもよい。蒸着膜が透明蒸着膜である場合、蒸着膜からなる蒸着層は、
図1に示すように第1基材層に設けられてもよく、
図2に示すように第2基材層に設けられてもよい。このように、蒸着膜が透明蒸着膜であることにより、内容物の透過性を保ちながら、酸素ガスおよび水蒸気等の透過を阻止するガスバリア性を付与ないし向上させることができる。
【0082】
透明蒸着膜としては、例えば、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、カリウム(K)、スズ(Sn)、ナトリウム(Na)、ホウ素(B)、チタン(Ti)、鉛(Pb)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)等の酸化物の蒸着膜を使用することができる。特に、包装袋用としては、酸化アルミニウムまたは酸化ケイ素の蒸着膜を備えることが好ましい。
【0083】
無機酸化物の表記は、例えば、SiOX、AlOX等のようにMOX(ただし、式中、Mは、無機元素を表し、Xの値は、無機元素によってそれぞれ範囲がことなる。)で表される。Xの値の範囲としては、ケイ素(Si)は、0~2、アルミニウム(Al)は、0~1.5、マグネシウム(Mg)は、0~1、カルシウム(Ca)は、0~1、カリウム(K)は、0~0.5、スズ(Sn)は、0~2、ナトリウム(Na)は、0~0.5、ホウ素(B)は、0~1.5、チタン(Ti)は、0~2、鉛(Pb)は、0~2、ジルコニウム(Zr)は0~2、イットリウム(Y)は、0~1.5の範囲の値をとることができる。上記において、X=0の場合、完全な無機単体(純物質)であり、透明ではなく、また、Xの範囲の上限は、完全に酸化した値である。包装用材料には、ケイ素(Si)、アルミニウム(Al)が好適に使用され、ケイ素(Si)は、1.0~2.0、アルミニウム(Al)は、0.5~1.5の範囲の値のものを使用することができる。
【0084】
透明蒸着膜の膜厚としては、使用する無機酸化物の種類等によって異なるが、例えば、50Å以上2000Å以下、好ましくは、100Å以上1000Å以下の範囲内で任意に選択して形成することが望ましい。例えば、酸化アルミニウムあるいは酸化ケイ素の蒸着膜の場合には、膜厚50Å以上500Å以下、更に、好ましくは、100Å以上300Å以下が望ましいものである。
【0085】
蒸着膜は、基材層などに以下の形成方法を用いて形成することができる。蒸着膜の形成方法としては、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、およびイオンプレ-ティング法等の物理気相成長法(Physical Vapor Deposition法、PVD法)、あるいは、プラズマ化学気相成長法、熱化学気相成長法、および光化学気相成長法等の化学気相成長法(Chemical Vapor Deposition法、CVD法)等を挙げることができる。
【0086】
(ガスバリア性塗布膜)
必要に応じて、上記の蒸着層の上にガスバリア性塗布膜を設けてもよい。ガスバリア性塗布膜は、酸素ガスおよび水蒸気などの透過を抑制する層として機能する塗膜である。ガスバリア性塗布膜は、一般式R1
nM(OR2)m(ただし、式中、R1、R2は、炭素数1~8の有機基を表し、Mは、金属原子を表し、nは、0以上の整数を表し、mは、1以上の整数を表し、n+mは、Mの原子価を表す。)で表される少なくとも一種以上のアルコキシドと、ポリビニルアルコ-ル系樹脂および/またはエチレン・ビニルアルコ-ル共重合体とを含有し、さらに、ゾルゲル法触媒、酸、水、および、有機溶剤の存在下に、ゾルゲル法によって重縮合するガスバリア性組成物により得られる。
【0087】
上記の一般式R1
nM(OR2)mで表されるアルコキシドとしては、アルコキシドの部分加水分解物、アルコキシドの加水分解の縮合物の少なくとも一種以上を使用することができる。また、上記のアルコキシドの部分加水分解物としては、アルコキシ基のすべてが加水分解されている必要はなく、1個以上が加水分解されているもの、および、その混合物であってもよい。アルコキシドの加水分解の縮合物としては、部分加水分解アルコキシドの2量体以上のもの、具体的には、2~6量体のものを使用される。
【0088】
上記の一般式R1
nM(OR2)mで表されるアルコキシドにおいて、Mで表される金属原子としては、ケイ素、ジルコニウム、チタン、アルミニウム、その他などを使用することができる。本実施形態において、好ましい金属としては、例えば、ケイ素、チタンなどを挙げることができる。また、本発明において、アルコキシドの用い方としては、単独または二種以上の異なる金属原子のアルコキシドを同一溶液中に混合して使うこともできる。
【0089】
また、上記の一般式R1
nM(OR2)mで表されるアルコキシドにおいて、R1で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、その他などのアルキル基を挙げることができる。また、上記の一般式R1
nM(OR2)mで表されるアルコキシドにおいて、R2で表される有機基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、その他などを挙げることができる。なお、同一分子中にこれらのアルキル基は同一であっても、異なってもよい。
【0090】
上記のガスバリア性組成物を調製する際、例えば、シランカップリング剤などを添加してもよい。上記のシランカップリング剤としては、既知の有機反応性基含有オルガノアルコキシシランを用いることができる。本実施形態においては、特に、エポキシ基を有するオルガノアルコキシシランが好適に用いられ、具体的には、例えば、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3、4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等を使用することができる。上記のようなシランカップリング剤は、一種または二種以上を混合して用いてもよい。
【0091】
[印刷層]
印刷層は、装飾、内容物の表示、賞味期間の表示、製造者、販売者などの表示、その他などの表示や美感の付与のために、文字、数字、絵柄、図形、記号、模様などの所望の任意の印刷模様を形成する層である。印刷層は、必要に応じて設けることができ、例えば、第1基材層と金属蒸着層との間に設けることができる。印刷層は、第1基材層の全面に設けてもよく、あるいは一部に設けてもよい。印刷層は、従来公知の顔料や染料を用いて形成することができ、その形成方法は特に限定されない。
【0092】
印刷層は、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは1μm以上5μm以下、さらに好ましくは1μm以上3μm以下の厚さを有するものである。
【0093】
[接着剤層]
接着剤層は、ドライラミネート法により2層を接着する場合、積層される側の層の表面に、接着剤を塗布して乾燥させることにより形成することができる。接着剤としては、例えば、1液型あるいは2液型の硬化ないし非硬化タイプのビニル系、(メタ)アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ポリウレタン系、エポキシ系、ゴム系、その他などの溶剤型、水性型、あるいは、エマルジョン型などの接着剤を用いることができる。2液硬化型の接着剤としては、ポリオールとイソシアネート化合物との硬化物を用いることができる。上記のラミネート用接着剤のコーティング方法としては、例えば、ダイレクトグラビアロールコート法、グラビアロールコート法、キスコート法、リバースロールコート法、フォンテン法、トランスファーロールコート法、その他の方法で塗布することができる。
【0094】
<積層体の製造方法>
本発明による積層体の製造方法は特に限定されず、ドライラミネート法等の従来公知の方法を用いて製造することができる。
【0095】
本発明による積層体には、化学的機能、電気的機能、磁気的機能、力学的機能、摩擦/磨耗/潤滑機能、光学的機能、熱的機能、生体適合性等の表面機能等の付与を目的として、二次加工を施すことも可能である。二次加工の例としては、エンボス加工、塗装、接着、印刷、メタライジング(めっき等)、機械加工、表面処理(帯電防止処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、フォトクロミズム処理、物理蒸着、化学蒸着、コーティング、等)等が挙げられる。また、本発明による積層体に、ラミネート加工(ドライラミネートや押し出しラミネート)、製袋加工、およびその他の後処理加工を施して、成型品を製造することもできる。
【0096】
<電子レンジ用包装袋>
本発明による電子レンジ用包装袋は、電子レンジ加熱する必要のある冷凍食品用包装に好適に使用することができる。すなわち、上記積層体を用いることにより、電子レンジ加熱の際には、包装袋のシーラント層および熱軟化性樹脂層の一部が破壊されて、破壊された箇所から蒸気が十分に抜けることで、内容物に悪影響を与えることなく包装袋の内圧を低下させることができる。このような包装袋は、例えば、上記積層体を使用し、これを二つ折にするか、又は該積層体を2枚用意し、表側の積層体のシーラント層の面と裏側の積層体のシーラント層の面とを対向させて重ね合わせ、さらにその周辺端部を、例えば、側面シール型、二方シール型、三方シール型、四方シール型、封筒貼りシール型、合掌貼りシール型(ピローシール型)、ひだ付シール型、平底シール型、角底シール型等のヒートシール形態によりヒートシールして、種々の形態の包装袋を製造することができる。また、表側の積層体と裏側の積層体との間に、折り返された状態の積層体を挿入した状態でヒートシールを行い、ガセット型の包装袋を製造することもできる。なお、包装袋を構成する積層体の全てが、本発明による上記積層体でなくてもよい。すなわち、包装袋を構成する積層体の少なくとも一部分が、バイオマス由来のPETを含む基材層を有する積層体であればよく、包装袋を構成する積層体のその他の部分が、化石燃料由来のPETからなる基材層を含む積層体であってもよい。
【0097】
上記において、ヒートシールの方法としては、例えば、バーシール、回転ロールシール、ベルトシール、インパルスシール、高周波シール、超音波シール等の公知の方法で行うことができる。
【0098】
次に、本発明による電子レンジ用包装袋について、
図5乃至
図10により、より詳細に説明する。
【0099】
ここではまず、例えば
図1及び
図2で説明した積層体10のような、熱軟化性樹脂層を備えない積層体を用いた、蒸気抜け機構を備える包装袋の例について説明する。
【0100】
本発明による電子レンジ用包装袋の斜視図の一例を
図5に示す。
図5に示す電子レンジ用包装袋50は、少なくとも、基材層とシーラント層とを備え、且つ、熱軟化性樹脂層を備えない積層体を用いて形成されるスタンディングパウチである。この包装袋50は、包装袋50を密封するためのシール部52と、シール部52から隔離されたポイントシール部53と、ポイントシール部53内に形成された貫通部54とを備えている。このうち、ポイントシール部53と貫通部54とで蒸気抜け機構が構成されている。貫通部54は孔または切り込みである。電子レンジ用包装袋50は、電子レンジによる加熱に際して、ポイントシール部53が剥離後退して貫通部54に到達すると、貫通部54から蒸気が抜け、包装袋50の内圧を低下させることができる。上記ポイントシール部53の形状は、特に限定されず、例えば、正方形、長方形、円、楕円、三角形等その他の形状としてもよい。
【0101】
本発明による電子レンジ用包装袋の平面図の一例を
図6に示す。
図6に示す電子レンジ用包装袋60は、少なくとも、基材層とシーラント層とを備え、且つ、熱軟化性樹脂層を備えない積層体を用いて形成されるスタンディングパウチである。上述した
図5では、ポイントシール部53が包装袋を密封するシール部52から隔離して設けられている例について説明したが、
図6に示すように、蒸気抜け機構を構成する突出シール部61が包装袋60を密封するシール部64に連接されていてもよい。この包装袋60は、包装袋を密封するためのシール部64、65、66と、シール部64に連接され収容空間に向けて突出する突出シール部61と、突出シール部61とシール部64との間に形成された未シール部62と、未シール部内に形成された貫通部63とを備えている。このうち、突出シール部61と未シール部62と貫通部63とで蒸気抜け機構が構成されている。貫通部63は孔または切り込みである。電子レンジ用包装袋60は、電子レンジによる加熱に際して、突出シール部61が剥離後退して未シール部62に到達すると、未シール部62内に設けた貫通部63から蒸気が抜け、包装袋60の内圧を低下させることができる。
【0102】
本発明による電子レンジ用包装袋の平面図の一例を
図7に示す。
図7に示す包装袋70は、少なくとも、基材層とシーラント層とを備え、且つ、熱軟化性樹脂層を備えない積層体を用いて形成されるスタンディングパウチである。上述した
図6では、未シール部62が包装袋60の外縁に達しない例について説明したが、
図7に示すように、蒸気抜け機構を構成する未シール部74が包装袋70の外縁に達するようにしてもよい。この包装袋70は、一対のサイドシール部71と、底部シール部72と、上部シール予定部73とを備え、一対のサイドシール部71のうち一方のサイドシール部71が未シール部74を介して上側部分と下側部分とに分離されている。未シール部74は、包装袋70の外縁から収容空間に向かって形成され、未シール部74と収容空間とを隔離し、且つ、サイドシール部71の上側部分と下側部分とに接続されるように突出シール部75が形成されている。未シール部74は、一方のサイドシール部71の内縁よりも収容空間側に張り出すように形成されている。この包装袋70においては、突出シール部75と、未シール部74とで蒸気抜け機構が構成されている。電子レンジ用包装袋70は、電子レンジによる加熱に際して、突出シール部75が剥離後退して未シール部74に到達すると、未シール部74から蒸気が抜け、包装袋70の内圧を低下させることができる。なお、未シール部74に孔や切り込みなどの貫通部が形成されていてもよい。
【0103】
本発明による電子レンジ用包装袋の平面図の一例を
図8に示す。
図8に示す包装袋80は、少なくとも、基材層とシーラント層とを備え、且つ、熱軟化性樹脂層を備えない積層体を用いて形成され、合掌接合部82を備えるスタンディングパウチである。この包装袋80は、包装袋を密封するためのシール部84と、ウイング部82に形成された突出シール部85と、突出シール部85とシール部84との間に形成された未シール部86と、未シール部86内に形成された貫通部87を備えている。このうち、突出シール部85と、未シール部86と、貫通部87とで蒸気抜け機構が構成されており、貫通部87は孔または切り込みである。電子レンジ用包装袋80は、電子レンジによる加熱に際して、突出シール部85が剥離後退して未シール部86に到達すると、未シール部86内に設けた貫通部87から蒸気が抜け、包装袋80の内圧を低下させることができる。
【0104】
次に、例えば
図3で説明した積層体20のような、熱軟化性樹脂層を備える積層体を用いた、蒸気抜け機構を備える包装袋の例について説明する。
【0105】
本発明による電子レンジ用包装袋の拡大断面図の一例を
図9に示す。
図9に示す包装袋90は、少なくとも、基材層と、熱軟化性樹脂層と、シーラント層とを備える積層体を用いて形成されている。
図9の電子レンジ用包装袋90のシール部94は、基材層91、熱軟化性樹脂層92、およびシーラント層93が順に積層された積層体のシーラント層93を対向させて重ね合わせ、その周辺端部をシールしたものである。電子レンジ用包装袋90を電子レンジで加熱した際には、電子レンジ用包装袋90内の空気の膨張や内容物に含まれる水蒸気によって内圧上昇(矢印95)を起こす。電子レンジ加熱の高温の温度領域では熱軟化性樹脂層92の強度が低下することにより、密封された電子レンジ用包装袋90内で上昇した内圧をシーラント層93自身の強度によって維持しなければならなくなる。そのため、電子レンジ用包装袋90の内部とシール部94との境界付近において、熱軟化性樹脂層92の強度の低下によって、シーラント層93に亀裂が生じ易くなる。これにより、シール部94近傍のシーラント層93の任意の個所96に亀裂が発生し、強度が低下した熱軟化性樹脂層92が内圧上昇(矢印95)に耐えきれずに破壊される(97は破壊する仮想線を示す)。その結果、シール部94のシーラント層93と基材層91との間に、電子レンジ用包装袋90の内側から外側に向かって熱軟化性樹脂層92の破壊による比較的小さなサイズの蒸気抜け機構が生じるので、電子レンジ用包装袋90内の水蒸気等が逃げ、その内圧を低下させることができる。本発明では、破壊が部分的に起こるので、比較的小さなサイズの蒸気抜けが生じ、電子レンジ用包装袋90の内圧が一気に低下することがなく、内容物の飛散が起こらずに内容物に悪影響を与えない。
【0106】
図10に、電子レンジ用包装袋90の平面図(ピロー袋の形態)を示す。
図10において、符号98で示された部分は、熱軟化性樹脂層92が形成された箇所である。包装袋90中の熱軟化性樹脂層92は、少なくともシール部94の外縁94aから内縁94bに亘るように形成されている。なお、
図10に示すように、熱軟化性樹脂層92は、シール部94の外縁94aから、シール部94の内縁94bを超えて形成されていてもよい。電子レンジ用包装袋90を構成する積層体が基材層と接着剤層とシーラント層とをこの順で含み、基材層と接着剤層との間または接着剤層とシーラント層との間に部分的に熱軟化性樹脂層を備え、包装袋90において熱軟化性樹脂層が少なくともシール部94の外縁94aから内縁94bに亘るように形成されることにより、電子レンジ用包装袋90は蒸気抜け機構を備えることができる。包装袋90は、電子レンジで加熱されることによって、シール部94の内の熱軟化性樹脂層92の形成領域98において、熱軟化性樹脂層92とシーラント層93との間に部分的な破壊が生じ、蒸気が抜けることにより、包装袋90の内圧を低下させることができる。
【実施例0107】
次に、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0108】
[実施例1]
第1基材層として、上述の第1基材層の第1の構成で説明した、化石燃料由来のテレフタル酸とバイオマス由来のエチレングリコール(バイオマスポリエステル)を用いて製膜した、二軸延伸されたバイオマス由来のPETフィルム(バイオマス度:13%、厚さ12μm)を準備した。続いて、バイオマス由来のPETフィルムのうち包装袋を構成する際に内面側に位置する面に、厚さ180Åの酸化アルミニウムの蒸着層を形成した。続いて、蒸着層の上に、乾燥状態で厚さが0.3μmのガスバリア性塗布膜を形成した。続いて、ガスバリア性塗布膜の上に、グラビア印刷により印刷層を形成した。このようにして、蒸着層、ガスバリア性塗布膜及び印刷層がこの順で内面側に形成されたPETフィルムを得た。
【0109】
また、第2基材層として、上述の第2基材層の第1の構成で説明した、二軸延伸ナイロンフィルム(厚さ15μm)を準備した。また、シーラント層として、上述のシーラント層の第1の構成で説明した、無延伸ポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工製、ZK-99S、厚さ60μm)を準備した。
【0110】
続いて、PETフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルムをこの順で、ドライラミネート法により積層して、
図1に示す積層体10を作製した。この積層体10の層構成は、以下のように表現される。
バイオPET/蒸着層/塗布膜/印/DL/ONy/DL/CPP
「/」は層と層の境界を表している。左端の層が、積層体の外面を構成する層であり、右端の層が、積層体の内面を構成する層である。
「バイオPET」は、バイオマス由来のPETフィルムを意味する。「印」は、印刷層を意味する。「DL」は、接着剤を含む接着剤層を意味する。「ONy」は、ナイロンフィルムを意味する。「CPP」は、無延伸ポリプロピレンフィルムを意味する。
【0111】
PETフィルムと二軸延伸ナイロンフィルムとの間の接着剤層は、2液硬化型接着剤(ロックペイント(株)製、主剤:RU-40、硬化剤:H-4)を含む。二軸延伸ナイロンフィルムと無延伸ポリプロピレンフィルムとの間の接着剤層は、2液硬化型接着剤(ロックペイント(株)製、主剤:RU-40、硬化剤:H-4)を含む。
【0112】
[実施例2]
第2基材層として、上述の第2基材層の第2の構成で説明した、主成分としてPBTを含む複数の層31を有するPBTフィルムを用いたこと以外は、実施例1の場合と同様にして、
図1に示す積層体10を作製した。各層31におけるPBTの含有率は80%であり、層31の層数は1024であり、第2基材層の厚さは15μmであった。積層体10の層構成は、以下のように表現される。
バイオPET/蒸着層/塗布膜/印/DL/PBT(第2の構成)/DL/CPP
「PBT」は、PBTフィルムを意味する。
【0113】
[実施例3]
第2基材層として、上述の第2基材層の第3の構成で説明した、51質量%のPBTを含み、PBTの融点が224℃、IV値が1.26dl/gであり、チューブラー法で作製された単層のPBTフィルムを用いたこと以外は、実施例1の場合と同様にして、
図1に示す積層体10を作製した。第2基材層はPBT及び添加剤のみで構成される単層のフィルムであり、第2基材層の厚さは15μmであった。積層体10の層構成は、以下のように表現される。
バイオPET/蒸着層/塗布膜/印/DL/PBT(第3の構成)/DL/CPP
【0114】
[比較例1]
第1基材層として、化石燃料由来のテレフタル酸と化石燃料由来のエチレングリコールを用いて製膜した、二軸延伸された化石燃料由来のPETフィルム(バイオマス度:0%、東洋紡製、E5100、厚さ12μm)を用いたこと以外は、実施例1の場合と同様にして、積層体を作製した。積層体の層構成は、以下のように表現される。
化石PET/蒸着層/塗布膜/印/DL/ONy/DL/CPP
「化石PET」は、化石燃料由来のPETフィルムを意味する。
【0115】
<スタンディングパウチの製造>
実施例1乃至3および比較例1で得られた各積層体のシーラント層同士をヒートシールして、
図7に示すスタンディングパウチを作製した。
【0116】
<電子レンジ試験>
上記で得られたスタンディングパウチに水100gを入れた後、シールして密封した。密封したスタンディングパウチを、電子レンジを用いて500Wで3分間加熱し、蒸気抜けおよび内容物への影響を評価した。評価結果を表2に示した。
(評価基準)
○:蒸気抜け機構を介して蒸気抜けした。
×:蒸気抜け機構を介さずに蒸気抜けした。
【0117】
上記の性能評価試験の結果を表2に示した。評価結果は表2に示す通り、環境負荷を低減することができるバイオマス由来品においても化石燃料由来品と同様に蒸気抜けが良好であった。
【表2】
【0118】
[実施例4]
基材層として、上述の基材層の第2の構成で説明した、化石燃料由来のテレフタル酸とバイオマス由来のエチレングリコール(バイオマスポリエステル)を用いて製膜した、二軸延伸されたバイオマス由来のPETフィルム(バイオマス度:13%、厚さ12μm)を準備した。続いて、バイオマス由来のPETフィルムのうち包装袋を構成する際に内面側に位置する面の一部分に、MWOPニス(DICグラフィックス(株)製)をコーティングして、熱軟化性樹脂層を形成した。このようにして、熱軟化性樹脂層が内面側に形成されたPETフィルムを得た。
【0119】
また、化石燃料由来の低密度ポリエチレン(密度:0.923g/cm3、MFR:3.5g/10分、バイオマス度:0%)80質量部と、ブラスケム社製のバイオマス由来の低密度ポリエチレン(商品名:SPB681、密度:0.922g/cm3、MFR:3.8g/10分、バイオマス度95%)20質量部とを溶融混練して、樹組成物を得た。次いで、得られた樹脂組成物を、上吹き空冷インフレーション共押出製膜機により成膜して、シーラント層用の低密度ポリエチレンフィルム(厚さ30μm、バイオマス度:19%)を得た。
【0120】
続いて、PETフィルム、低密度ポリエチレンフィルムを、ドライラミネート法により積層して、
図2に示す積層体20を作製した。この積層体20の層構成は、以下のように表現される。
バイオPET/熱軟化性樹脂層/DL/LDPE
「LDPE」は、低密度ポリエチレンフィルムを意味する。
【0121】
[比較例2]
基材層として、化石燃料由来のテレフタル酸と化石燃料由来のエチレングリコールを用いて製膜した、二軸延伸された化石燃料由来のPETフィルム(バイオマス度:0%、東洋紡製、E5100、厚さ12μm)を用いたこと以外は、実施例4の場合と同様にして、積層体を作製した。積層体の層構成は、以下のように表現される。
化石PET/熱軟化性樹脂層/DL/LDPE
【0122】
<ピロー袋の製造>
実施例4および比較例2で得られた各積層体のシーラント層同士をヒートシールして、
図9及び
図10に示すピロー袋を作製した。
【0123】
<電子レンジ試験>
上記で得られたピロー袋に水100gを入れた後、シールして密封した。密封したピロー袋を、電子レンジを用いて500Wで3分間加熱し、蒸気抜けおよび内容物への影響を評価した。評価結果を表3に示した。
(評価基準)
○:熱軟化性樹脂層を介して蒸気抜けした。
×:熱軟化性樹脂層を介さずに蒸気抜けした。
【0124】
上記の性能評価試験の結果を表3に示した。評価結果は表3に示す通り、環境負荷を低減することができるバイオマス由来品においても化石燃料由来品と同様に蒸気抜けが良好であった。
【表3】
【0125】
[実施例5]
第1基材層として、上述の第1基材層の第2の構成で説明した、PETとナイロンの複層ポリアミドフィルムを準備した。この際、PET樹脂として、ポリエチレンテレフタレート「ベルペット-EFG6C」((株)ベルポリエステルプロダクツ製)を準備し、ナイロン樹脂として、脂肪族ポリアミド、ナイロン-6「UBEナイロン-1022B」(宇部興産(株)製)90重量%及びアモルファスナイロン「シーラーPA」(三井・デュポンポリケミカル(株)製)10重量%を配合した樹脂を準備した。
【0126】
次に、3台の押出機を用い、PET樹脂を280℃、ナイロン樹脂を260℃の温度でそれぞれ溶融させ、PET/ナイロン/PETの順になるように、280℃のTダイスより冷却水が循環する30℃のチルロール上に共押出しせしめて、フラット状の3層シートを得た。この3層シートを、65℃のロール延伸機により3.0倍に縦延伸し、次いで110℃の雰囲気のテンター延伸機により4.0倍に横延伸し、さらに同テンターにより210℃の雰囲気中で熱処理して厚さ15μmの3層フィルム(複層ポリアミドフィルム)を得た。各層の厚みは、PETの層がそれぞれ2μm、ナイロンの層が11μmであった。
【0127】
続いて、複層ポリアミドフィルムのうち包装袋を構成する際に内面側に位置する面に、厚さ180Åの酸化ケイ素の蒸着層を形成した。続いて、蒸着層の上に、乾燥状態で厚さが0.3μmのガスバリア性塗布膜を形成した。続いて、ガスバリア性塗布膜の上に、グラビア印刷により印刷層を形成した。このようにして、蒸着層、ガスバリア性塗布膜及び印刷層がこの順で内面側に形成された複層ポリアミドフィルムを得た。
【0128】
また、第2基材層として、上述の第2基材層の第4の構成で説明した、化石燃料由来のテレフタル酸とバイオマス由来のエチレングリコール(バイオマスポリエステル)を用いて製膜した、二軸延伸されたバイオマス由来のPETフィルム(バイオマス度:13%、厚さ12μm)を準備した。また、シーラント層として、上述のシーラント層の第1の構成で説明した、無延伸ポリプロピレンフィルム(東レフィルム加工製、ZK-99S、厚さ60μm)を準備した。
【0129】
続いて、複層ポリアミドフィルム、バイオマス由来のPETフィルム、無延伸ポリプロピレンフィルムをこの順で、ドライラミネート法により積層して、
図1に示す積層体10を作製した。この積層体10の層構成は、以下のように表現される。
(PET/ONy/PET)/蒸着層/塗布膜/印/DL/バイオPET/DL/CPP
【0130】
[比較例3]
第2基材層として、化石燃料由来のテレフタル酸と化石燃料由来のエチレングリコールを用いて製膜した、二軸延伸された化石燃料由来のPETフィルム(バイオマス度:0%、東洋紡製、E5100、厚さ12μm)を用いたこと以外は、実施例5の場合と同様にして、積層体を作製した。積層体の層構成は、以下のように表現される。
(PET/ONy/PET)/蒸着層/塗布膜/印/DL/化石PET/DL/CPP
【0131】
<スタンディングパウチの製造>
実施例5および比較例3で得られた各積層体のシーラント層同士をヒートシールして、
図7に示すスタンディングパウチを作製した。
【0132】
<電子レンジ試験>
上記で得られたスタンディングパウチに水100gを入れた後、シールして密封した。密封したスタンディングパウチを、電子レンジを用いて500Wで3分間加熱し、蒸気抜けおよび内容物への影響を評価した。評価結果を表4に示した。
(評価基準)
○:蒸気抜け機構を介して蒸気抜けした。
×:蒸気抜け機構を介さずに蒸気抜けした。
【0133】
上記の性能評価試験の結果を表4に示した。評価結果は表4に示す通り、環境負荷を低減することができるバイオマス由来品においても化石燃料由来品と同様に蒸気抜けが良好であった。
【表4】