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  • 特開-蛋白質含有水性液剤 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160962
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】蛋白質含有水性液剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/27 20060101AFI20231026BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20231026BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231026BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20231026BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20231026BHJP
   A61P 5/10 20060101ALI20231026BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20231026BHJP
【FI】
A61K38/27
A61K47/02
A61K9/08
A61K47/26
A61K47/10
A61P5/10
A61K47/34
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147879
(22)【出願日】2023-09-12
(62)【分割の表示】P 2019117037の分割
【原出願日】2019-06-25
(31)【優先権主張番号】P 2018119494
(32)【優先日】2018-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000228545
【氏名又は名称】JCRファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128897
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 佳希
(74)【代理人】
【識別番号】100225118
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 慧
(72)【発明者】
【氏名】安川 秀仁
(72)【発明者】
【氏名】花田 崇
(72)【発明者】
【氏名】谷 純也
(72)【発明者】
【氏名】岡部 真二
(72)【発明者】
【氏名】浅野 友香
(57)【要約】
【課題】溶液状態で貯蔵安定であり且つ注射時の痛みが軽減された,有効成分として蛋白質を含有する水性液剤を提供すること。
【解決手段】1~20mMの濃度のリン酸緩衝剤と,有効成分として蛋白質とを含有する水性液剤。例えば,緩衝剤として1~20mMの濃度のリン酸緩衝剤と,有効成分としてヒト成長ホルモンとを含有し,更に,非イオン性界面活性剤としてポロキサマー,及び等張化剤としてフェノールとを含有するものである水性液剤。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1~50mg/mLの濃度のヒト成長ホルモン,5~16mMの濃度のリン酸緩衝剤,1~10mg/mLの濃度の非イオン性界面活性剤,糖アルコール,及びフェノールを含有してなり,該非イオン性界面活性剤がポリソルベート20,ポリソルベート80及びポロキサマー188からなる群から選ばれるものであり,且つ塩化ナトリウムを含まないものである,水性液剤。
【請求項2】
該フェノールの濃度が1~10mg/mLである,請求項1に記載の水性液剤。
【請求項3】
該糖アルコールが,D-マンニトールである,請求項1又は2に記載の水性液剤。
【請求項4】
pHが5.5~7.2である,請求項1乃至3の何れかに記載の水性液剤。
【請求項5】
1~50mg/mLの濃度のヒト成長ホルモン,5~16mMの濃度のリン酸緩衝剤,1.8~2.2mg/mLの濃度のポロキサマー188,2.8~3.8mg/mLの濃度のフェノール,及び35~45mg/mLの濃度のD-マンニトールを含有し,pHが6.0~6.4であり,且つ塩化ナトリウムを含まないものである,水性液剤。
【請求項6】
4~8mg/mLの濃度のヒト成長ホルモン,8~12mMの濃度のリン酸緩衝剤,2mg/mLの濃度のポロキサマー188,3.3mg/mLの濃度のフェノール,及び40mg/mLの濃度のD-マンニトールを含有し,pHが6.2であり,且つ塩化ナトリウムを含まないものである,水性液剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,溶液状態で貯蔵安定であり且つ注射時の痛みが軽減された,有効成分として蛋白質を含有する水性液剤に関し,詳しくは,緩衝剤として1~20mMの濃度のリン酸緩衝剤を含む有効成分が蛋白質である水性液剤に関する。
【背景技術】
【0002】
有効成分が蛋白質である各種の製剤が開発されている。これらの蛋白質の多くは,遺伝子組換え技術を用いて作製された組換え蛋白質である。高分子である蛋白質製剤は経口投与では吸収されないので,皮下注射,筋肉内注射,又は静脈注射等により専ら投与される。従って,その投与に際し注射針を刺すことによる痛みを伴う。製剤中に含まれる成分はその痛みの程度に影響を与える。
【0003】
ヒト成長ホルモン(hGH)は,天然型のものは,191個のアミノ酸残基よりなる一本鎖のポリペプチドホルモンである。hGHは,成長ホルモン分泌不全性低身長症,ターナー症候群における低身長,成人成長ホルモン分泌不全症等の治療剤として用いられている(非特許文献1)。
【0004】
hGHによる治療は,通常,年単位の長期にわたり,且つ,この間はhGHを1週間に2から4回に分けて筋肉内に注射するか,あるいは6~7回に分けて皮下に注射する必要がある。従って,患者の通院負担を軽減するために,hGHによる治療は在宅での自己注射が一般的に行われている。また,従来はhGHの製剤は凍結乾燥製剤であったが,凍結乾燥製剤は使用時に溶解液で溶解する必要があることから,患者の利便性を向上させるために,予めhGHを溶解させた水性液剤が開発されている(非特許文献1)。
【0005】
hGHは,患者に筋肉内又は皮下に注射して投与される。そしてhGHによる治療対象は小児が多い。従ってhGH製剤は注射に伴う痛みが少ないことがより強く望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】グロウジェクト皮下注6 mg/グロウジェクト皮下注12 mg添付文書(2017)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
溶液状態で貯蔵安定であり且つ注射時の痛みが軽減された有効成分が蛋白質である水性液剤,特に有効成分が成長ホルモンである水性液剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的に向けた研究において,本発明者らは,水性液剤中に含まれる緩衝剤を,1~20mMの濃度のリン酸緩衝剤とすることにより,成長ホルモンの水性液剤中の安定性を維持しつつ注射時の痛みを軽減できることを見出し,本発明を完成した。すなわち,本発明は以下を含むものである。
1.1~20mMの濃度のリン酸緩衝剤と,有効成分として蛋白質とを含有する水性液剤。
2.該リン酸緩衝剤の濃度が5~16mMである,上記1の水性液剤。
3.該リン酸緩衝剤の濃度が8~12mMである,上記2の水性液剤。
4.該蛋白質の濃度が,1~50mg/mLである,上記1~3の何れかの水性液剤。
5.非イオン性界面活性剤を更に含有するものである,上記1~4の何れかの水性液剤。
6.該非イオン性界面活性剤が,ポリソルベート又はポロキサマーである,上記5の水性液剤。
7.該非イオン性界面活性剤が,ポリソルベート20,ポリソルベート80及びポロキサマー188よりなる群から選ばれる,上記5の水性液剤。
8.該非イオン性界面活性剤の濃度が1~10mg/mLである,上記5~7の何れかの水性液剤。
9.防腐剤を更に含有するものである,上記1~8の何れかの水性液剤。
10.該防腐剤が,ベンジルアルコール又はフェノールである,上記9に記載の水性液剤。
11.該防腐剤がベンジルアルコールであり,該ベンジルアルコールの濃度が2~20mg/mLである,上記9の水性液剤。
12.該防腐剤がフェノールであり,該フェノールの濃度が1~10mg/mLである,上記9の水性液剤。
13.等張化剤を更に含有するものである,上記1~12の何れかの水性液剤。
14.該等張化剤が,中性塩又は糖アルコールである,上記13の水性液剤。
15.該等張化剤が,塩化ナトリウム又はD-マンニトールである,上記13の水性液剤。
16.pHが5.5~7.2である,上記1~15の何れかの水性液剤。
17.1~50mg/mLの蛋白質,5~16mMのリン酸緩衝剤,1.8~2.2mg/mLのポロキサマー188,2.8~3.8mg/mLのフェノール,及び35~45mg/mLのD-マンニトールを含有し,pHが6.0~6.4である,上記1の水性液剤。
18.該蛋白質が,成長ホルモン,ソマトメジン,インスリン,グルカゴン,リソソーム酵素,サイトカイン,リンホカイン,血液凝固因子,抗体,抗体と他の蛋白質との融合蛋白質,顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF),マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF),エリスロポエチン,ダルベポエチン,組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA),トロンボモジュリン,卵胞刺激ホルモン(FSH),性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH),ゴナドトロピン,DNasel,甲状腺刺激ホルモン(TSH),神経成長因子(NGF),毛様体神経栄養因子(CNTF),グリア細胞株神経栄養因子(GDNF),ニューロトロフィン3,ニューロトロフィン4/5,ニューロトロフィン6,ニューレグリン1,アクチビン,塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF),線維芽細胞成長因子2(FGF2),上皮細胞増殖因子(EGF),血管内皮増殖因子(VEGF),インターフェロンα,インターフェロンβ,インターフェロンγ,インターロイキン6,PD-1,PD-1リガンド,腫瘍壊死因子α受容体(TNF-α受容体),ベータアミロイドを分解する活性を有する酵素,エタネルセプト,ペグビソマント,メトレレプチン,アバタセプト,アスホターゼ,及びGLP-1受容体アゴニストからなる群から選択されるものである,上記1~17の水性液剤。
19.該蛋白質が,マウス抗体,ヒト化抗体,ヒト・マウスキメラ抗体,及びヒト抗体からなる群から選択されるものである,上記1~17の水性液剤。
20.該蛋白質が,抗IL-6抗体,抗ベータアミロイド抗体,抗BACE抗体,抗EGFR抗体,抗PD-1抗体,抗PD-L1抗体,抗HER2抗体,抗PCSK9抗体,及び抗TNF-α抗体からなる群から選択されるものである,上記1~17の水性液剤。
21.該蛋白質がリソソーム酵素であり,該リソソーム酵素が,α-L-イズロニダーゼ,イズロン酸-2-スルファターゼ,グルコセレブロシダーゼ,β-ガラクトシダーゼ,GM2活性化蛋白質,β-ヘキソサミニダーゼA,β-ヘキソサミニダーゼB,N-アセチルグルコサミン-1-フォスフォトランスフェラーゼ,α-マンノシダーゼ,β-マンノシダーゼ,ガラクトシルセラミダーゼ,サポシンC,アリールスルファターゼA,α-L-フコシダーゼ,アスパルチルグルコサミニダーゼ,α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ,酸性スフィンゴミエリナーゼ,α-ガラクトシダーゼ A,β-グルクロニダーゼ,ヘパランN-スルファターゼ,α-N-アセチルグルコサミニダーゼ,アセチルCoAα-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ,N-アセチルグルコサミン-6-硫酸スルファターゼ,酸性セラミダーゼ,アミロ-1,6-グルコシダーゼ,シアリダーゼ,パルミトイル蛋白質チオエステラーゼ-1,トリペプチジルペプチダーゼ-1,及びヒアルロニダーゼ-1からなる群から選択されるものである,上記1~17の水性液剤。
22.該蛋白質が,抗体と他の蛋白質との融合蛋白質であり,該他の蛋白質が,成長ホルモン,リソソーム酵素,サイトカイン,リンホカイン,血液凝固因子,抗体,抗体と他の蛋白質との融合蛋白質,顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF),マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF),エリスロポエチン,ダルベポエチン,組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA),トロンボモジュリン,卵胞刺激ホルモン,DNasel,甲状腺刺激ホルモン(TSH),神経成長因子(NGF),毛様体神経栄養因子(CNTF),グリア細胞株神経栄養因子(GDNF),ニューロトロフィン3,ニューロトロフィン4/5,ニューロトロフィン6,ニューレグリン1,アクチビン,塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF),線維芽細胞成長因子2(FGF2),上皮細胞増殖因子(EGF),血管内皮増殖因子(VEGF),インターフェロンα,インターフェロンβ,インターフェロンγ,インターロイキン6,PD-1,PD-1リガンド,腫瘍壊死因子α受容体(TNF-α受容体),及びベータアミロイドを分解する活性を有する酵素からなる群から選択されるものである,上記1~17の水性液剤。
23.該蛋白質が,抗体とリソソーム酵素との融合蛋白質であり,該リソソーム酵素が,α-L-イズロニダーゼ,イズロン酸-2-スルファターゼ,グルコセレブロシダーゼ,β-ガラクトシダーゼ,GM2活性化蛋白質,β-ヘキソサミニダーゼA,β-ヘキソサミニダーゼB,N-アセチルグルコサミン-1-フォスフォトランスフェラーゼ,α-マンノシダーゼ,β-マンノシダーゼ,ガラクトシルセラミダーゼ,サポシンC,アリールスルファターゼA,α-L-フコシダーゼ,アスパルチルグルコサミニダーゼ,α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ,酸性スフィンゴミエリナーゼ,α-ガラクトシダーゼ A,β-グルクロニダーゼ,ヘパランN-スルファターゼ,α-N-アセチルグルコサミニダーゼ,アセチルCoAα-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ,N-アセチルグルコサミン-6-硫酸スルファターゼ,酸性セラミダーゼ,アミロ-1,6-グルコシダーゼ,シアリダーゼ,パルミトイル蛋白質チオエステラーゼ-1,トリペプチジルペプチダーゼ-1,及びヒアルロニダーゼ-1からなる群から選択されるものである,上記1~17の水性液剤。
24.皮下注射又は筋肉内注射により投与されるものである,上記1~23の水性液剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば,有効成分が蛋白質である製剤の注射時における痛みを軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1及び2において被験者に痛みを表現させるために用いられたゲージ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は有効成分が蛋白質である水性液剤に関するものである。ここで,有効成分の蛋白質の種類に特に制限はないが,例えば,成長ホルモン,ソマトメジン(ソマトメジンA,B,及びCを含む),インスリン,グルカゴン,リソソーム酵素,サイトカイン,リンホカイン,血液凝固因子(血液凝固第VII因子,第VIII因子,及び第IX因子を含む),抗体,抗体と他の蛋白質との融合蛋白質,顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF),マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF),エリスロポエチン,ダルベポエチン,組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA),トロンボモジュリン,卵胞刺激ホルモン(FSH),性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH),ゴナドトロピン,DNasel,甲状腺刺激ホルモン(TSH),神経成長因子(NGF),毛様体神経栄養因子(CNTF),グリア細胞株神経栄養因子(GDNF),ニューロトロフィン3,ニューロトロフィン4/5,ニューロトロフィン6,ニューレグリン1,アクチビン,塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF),線維芽細胞成長因子2(FGF2),上皮細胞増殖因子(EGF),血管内皮増殖因子(VEGF),インターフェロンα,インターフェロンβ,インターフェロンγ,インターロイキン6,PD-1,PD-1リガンド,腫瘍壊死因子α受容体(TNF-α受容体),又はベータアミロイドを分解する活性を有する酵素,エタネルセプト,ペグビソマント,メトレレプチン,アバタセプト,アスホターゼ,グルカゴン様ぺプチド-1受容体アゴニストである。
【0012】
有効成分が抗体である場合,抗体の生物種に特に限定はなく,例えば,マウス抗体,ヒト化抗体,ヒト・マウスキメラ抗体,又はヒト抗体である。また,抗体が特異的に結合する抗原に特に限定はなく,例えば,抗IL-6抗体,抗ベータアミロイド抗体,抗BACE抗体,抗EGFR抗体,抗PD-1抗体,抗PD-L1抗体,抗HER2抗体,抗PCSK9抗体,又は抗TNF-α抗体である。また,抗体は,2本の免疫グロブリン軽鎖と2本の免疫グロブリン重鎖の計4本のポリペプチド鎖からなる基本構造を有するものに限らず,特定の抗原に対する特異性を保持するものである限り,一本鎖抗体,Fab,F(ab’),F(ab’),又は抗原結合性断片であってもよい。
【0013】
有効成分がリソソーム酵素である場合,リソソーム酵素の種類に特に限定はないが,例えば,α-L-イズロニダーゼ,イズロン酸-2-スルファターゼ,グルコセレブロシダーゼ,β-ガラクトシダーゼ,GM2活性化蛋白質,β-ヘキソサミニダーゼA,β-ヘキソサミニダーゼB,N-アセチルグルコサミン-1-フォスフォトランスフェラーゼ,α-マンノシダーゼ,β-マンノシダーゼ,ガラクトシルセラミダーゼ,サポシンC,アリルスルファターゼA,α-L-フコシダーゼ,アスパルチルグルコサミニダーゼ,α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ,酸性スフィンゴミエリナーゼ,α-ガラクトシダーゼ A,β-グルクロニダーゼ,ヘパランN-スルファターゼ,α-N-アセチルグルコサミニダーゼ,アセチルCoAα-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ,N-アセチルグルコサミン-6-硫酸スルファターゼ,酸性セラミダーゼ,アミロ-1,6-グルコシダーゼ,シアリダーゼ,パルミトイル蛋白質チオエステラーゼ-1,トリペプチジルペプチダーゼ-1,又はヒアルロニダーゼ-1である。
【0014】
有効成分が,抗体と他の蛋白質との融合蛋白質である場合,他の蛋白質の種類に特に限定はないが,例えば,成長ホルモン,リソソーム酵素,サイトカイン,リンホカイン,血液凝固因子,抗体,抗体と他の蛋白質との融合蛋白質,顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF),顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF),マクロファージコロニー刺激因子(M-CSF),エリスロポエチン,ダルベポエチン,組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA),トロンボモジュリン,卵胞刺激ホルモン,DNasel,甲状腺刺激ホルモン(TSH),神経成長因子(NGF),毛様体神経栄養因子(CNTF),グリア細胞株神経栄養因子(GDNF),ニューロトロフィン3,ニューロトロフィン4/5,ニューロトロフィン6,ニューレグリン1,アクチビン,塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF),線維芽細胞成長因子2(FGF2),上皮細胞増殖因子(EGF),血管内皮増殖因子(VEGF),インターフェロンα,インターフェロンβ,インターフェロンγ,インターロイキン6,PD-1,PD-1リガンド,腫瘍壊死因子α受容体(TNF-α受容体),又はベータアミロイドを分解する活性を有する酵素である。
【0015】
他の蛋白質がリソソーム酵素である場合,リソソーム酵素の種類に特に限定はないが,例えば,α-L-イズロニダーゼ,イズロン酸-2-スルファターゼ,グルコセレブロシダーゼ,β-ガラクトシダーゼ,GM2活性化蛋白質,β-ヘキソサミニダーゼA,β-ヘキソサミニダーゼB,N-アセチルグルコサミン-1-フォスフォトランスフェラーゼ,α-マンノシダーゼ,β-マンノシダーゼ,ガラクトシルセラミダーゼ,サポシンC,アリールスルファターゼA,α-L-フコシダーゼ,アスパルチルグルコサミニダーゼ,α-N-アセチルガラクトサミニダーゼ,酸性スフィンゴミエリナーゼ,α-ガラクトシダーゼ A,β-グルクロニダーゼ,ヘパランN-スルファターゼ,α-N-アセチルグルコサミニダーゼ,アセチルCoAα-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼ,N-アセチルグルコサミン-6-硫酸スルファターゼ,酸性セラミダーゼ,アミロ-1,6-グルコシダーゼ,シアリダーゼ,パルミトイル蛋白質チオエステラーゼ-1,トリペプチジルペプチダーゼ-1,又はヒアルロニダーゼ-1である。
【0016】
有効成分として水性液剤に含まれる蛋白質の生物種に特に限定はないが,好ましくはヒト蛋白質である。当該蛋白質は,遺伝子組換え技術を用いて組換え蛋白質として生産することができる。組換え蛋白質は,例えば,その蛋白質をコードする遺伝子を発現ベクターに組込み,これを用いて哺乳動物細胞(例えばチャイニーズハムスター卵巣由来のCHO細胞),大腸菌等を形質転換し,形質転換細胞を培養することにより,製造することができる。
【0017】
本発明において,「成長ホルモン」というときは,特にヒト成長ホルモンであるが,これに限らず,牛,馬等の家畜およびイヌ,ネコ等の愛玩動物を含む哺乳動物の成長ホルモンをも含む。また,「成長ホルモン」には,成長ホルモンを構成する1つ又は複数のアミノ酸残基を,置換,欠失,挿入させた成長ホルモンの類似物も含む。
【0018】
本発明において,成長ホルモンは,遺伝子組換え技術を用いて製造することができる。成長ホルモン遺伝子を発現ベクターに組込み,これを用いて哺乳動物細胞(例えばチャイニーズハムスター卵巣由来のCHO細胞)又は大腸菌を形質転換し,形質転換細胞を培養することにより,生物学的に活性な成長ホルモンを製造する方法は,当業者に周知である(US2010/0227819,US4342832等)。
【0019】
本発明において,水性液剤に含有される蛋白質の濃度に特に限定はない。但し,その濃度は,1~50mg/mLであることが好ましく,1~10mg/mLであることがより好ましく,2~8mg/mLであることが更に好ましい。好適な蛋白質の濃度は,例えば,4mg/mL又は8mg/mLである。蛋白質が成長ホルモンである場合は,特に,これらの濃度が好ましい。
【0020】
本発明の蛋白質の水性液剤は,緩衝剤としてリン酸緩衝剤を含有してなるものである。水性液剤に含有されるリン酸緩衝剤の濃度は,好ましくは1~20mMであり,より好ましくは5~16mMであり,更に好ましくは8~15mMであり,更により好ましくは8~12mMである。例えば,水性液剤における最終濃度が,10mM,11mM,又は12mMとなるように調整される。緩衝剤を含有する水性液剤のpHは,好ましくは5.5~7.2であり,より好ましくは6.0~6.4であり,更に好ましくは6.0~6.3であり,特に好ましくは6.2である。
【0021】
本発明の蛋白質の水性液剤は,非イオン性界面活性剤を更に含有するものである。水性液剤に含有される非イオン性界面活性剤は,ポリソルベートやポロキサマー等を単独で又はこれらを組合せて使用することができる。ポリソルベートとしてはポリソルベート20,ポリソルベート80が,ポロキサマーとしてはポロキサマー188(ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール)が特に好適である。また,水性液剤に含有される非イオン性界面活性剤の濃度は,1~10mg/mLであることが好ましく,1~5mg/mLであることがより好ましく,1~3mg/mLであることが更に好ましく,1.5~2.5mg/mLであることが更により好ましく,1.8~2.2mg/mLであることが更により好ましく,例えば2mg/mLに調整される。非イオン性界面活性剤としてポロキサマー188(ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール)を用いる場合,その水性液剤における濃度は,1~10mg/mLであることが好ましく,1~5mg/mLであることがより好ましく,1~3mg/mLであることが更に好ましく,1.5~2.5mg/mLであることが更により好ましく,1.8~2.2mg/mLであることが更により好ましく,例えば2mg/mLに調整される。
【0022】
蛋白質の水性液剤は,使い捨てにせずに,開封後に単回でなく繰り返して使用することも想定される。その場合,繰り返しの使用中に細菌の混入により品質が劣化することを防止できることが望まれる。従って,本発明の蛋白質の水性液剤は,防腐剤を含有するものであってもよい。水性液剤に含有される防腐剤は,薬剤学的に許容し得るものである限り特に限定はないが,ベンジルアルコール,フェノール,安息香酸,又はこれらの混合物が好適に使用できる。
【0023】
防腐剤としてフェノールを用いる場合,その水性液剤における濃度は,好ましくは1~10mg/mLであり,より好ましくは2.5~4.0mg/mLであり,更に好ましくは2.8~3.8mg/mLであり,例えば3.3mg/mLである。防腐剤としてベンジルアルコールを用いる場合,その水性液剤における濃度は,好ましくは2~20mg/mLであり,より好ましくは7~12mg/mLであり,更に好ましくは8~10mg/mLであり,例えば9mg/mLである。防腐剤として安息香酸を用いる場合,その水性液剤における濃度は,好ましくは1~20mg/mLである。
【0024】
本発明の蛋白質の水性液剤には,等張化剤を含有させることもできる。水性液剤に含有される等張化剤は,薬剤学的に許容し得るものである限り特に限定はないが,糖アルコール,中性塩,又はこれらの混合物が好適に使用できる。糖アルコールとして好適なものとしてはD-マンニトール,中性塩として好適なものとしては塩化ナトリウムが挙げられる。等張化剤としてD-マンニトールを用いる場合,その水性液剤における濃度は,好ましくは35~70mg/mLであり,より好ましくは35~45mg/mLであり,例えば40mg/mLである。等張化剤として塩化ナトリウムを用いる場合,その水性液剤における濃度は,好ましくは,5.5~11.5mg/mLであり,より好ましくは5.5~7.5mg/mLであり,例えば6.5mg/mLである。但し,等張化剤の濃度はこれらに限られるものではなく,水性液剤における他の成分の濃度との関係で,適宜調整されるべきものである。通常,等張化剤の濃度は,水性液剤の浸透圧が生理食塩水を対照としたときの浸透圧比が0.9~1.6,より好ましくは0.9~1.1となるように,調整される。なお,本発明において浸透圧比というときは,生理食塩液に対する浸透圧比のことをいう。
【0025】
本発明の蛋白質の水性液剤の好適な例を以下に示す。
(好適例1)1~50mg/mLの蛋白質,5~16mMのリン酸緩衝剤,1.8~2.2mg/mLのポロキサマー188,2.8~3.8mg/mLのフェノール,及び35~45mg/mLのD-マンニトールを含有し,pHが6.0~6.4である水性液剤。但し,pHを調整するため,更にリン酸又は/及び水酸化ナトリウムを添加したものであってもよく,D-マンニトールの濃度は,浸透圧比が0.9~1.1となるように増減してもよい。また,フェノールに換えて,8~10mg/mLのベンジルアルコールを添加してもよい。
(好適例2)1~10mg/mLの蛋白質,8~15mMのリン酸緩衝剤,1.8~2.2mg/mLのポロキサマー188,2.8~3.8mg/mLのフェノール,及び35~45mg/mLのD-マンニトールを含有し,pHが6.0~6.4である水性液剤。但し,pHを調整するため,更にリン酸又は/及び水酸化ナトリウムを添加したものであってもよく,D-マンニトールの濃度は,浸透圧比が0.9~1.1となるように増減してもよい。また,フェノールに換えて,8~10mg/mLのベンジルアルコールを添加してもよい。
(好適例3)2~8mg/mLの蛋白質,10mMのリン酸緩衝剤,2mg/mLのポロキサマー188,3.3mg/mLのフェノール,及び40mg/mLのD-マンニトールを含有し,pHが6.2である水性液剤。但し,pHを調整するため,更にリン酸又は/及び水酸化ナトリウムを添加したものであってもよく,D-マンニトールの濃度は,浸透圧比が0.9~1.1となるように増減してもよい。また,フェノールに換えて,8~10mg/mLのベンジルアルコールを添加してもよい。
【0026】
本発明の蛋白質の水性液剤は,2~8℃で長期間保存しても,蛋白質が劣化しないものである。ここで蛋白質が劣化するとは,水性液剤を製剤としてバイアル又は注射器に充てんした直後と比較して,蛋白質の定量値が98%以下,例えば95%以下になることをいう。また,蛋白質が本来有する活性が,水性液剤を製剤としてバイアル又は注射器に充てんした直後と比較して,98%以下,例えば95%以下になった場合も,蛋白質が劣化したという。
【0027】
蛋白質を劣化させることなく保存できる期間は,好ましくは少なくとも18ヶ月であり,より好ましくは24ヶ月であり,更に好ましくは30ヶ月であり,更により好ましくは36ヶ月である。
【0028】
本発明の蛋白質の水性液剤は,筋肉内注射,皮下注射等により患者に投与される。注射時に痛みを伴うと,患者の投薬遵守が低下し,治療効果が十分に得られない結果となるおそれがある。本発明の水性液剤によると,患者が注射時に感じる痛みが軽減されるので,患者の投薬遵守が上昇し,又患者が投薬を忌避することもない。
【0029】
注射時に感じる痛みは主観的なものであるが,これを客観的に評価する方法として,ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)が一般的に用いられている。VASは,概ね以下のステップを含む方法である。(1)左端を無痛,右端を想像できる最高の痛みを示すものとする100mmの直線を被験者に提示する,(2)被験者自身が感じている痛みを当該直線上に示す,(3)被験者が示した痛みを数値化し集計する。
【0030】
その他,痛みを客観的に評価する方法としては,ヌーメリック・レイティング・スケール(NRS)が知られている。ヌーメリック・レイティング・スケールは,概ね以下のステップを含む方法である。(1)痛みが無いから最悪な痛みまでの11段階に区切った直線を被験者に提示する,(2)被験者自身が感じている痛みを当該直線上に示された数値を代用して表現する,(3)当該数値を集計する。
【0031】
その他,痛みを客観的に評価する方法としては,Faces Pain Scale(フェイススケール)が知られている。VAS及びNRSは,被験者がゲージ上に示された数値を代用して自身が感じる痛みを表現するものであるが,フェイススケールは,ゲージ上に示された痛みに応じたヒトの表情を代用して,被験者が自身の感じる痛みを表現するものである。
【0032】
痛みを客観的に評価する方法としては,VAS,NRS及びフェイススケールを適宜組み合わせたもの又は改変したものを用いることもでき,また,これらに限定されるものでもない。
【0033】
本発明の水性液剤は,これを皮下注射したときに被験者が感じる痛みを,上記の痛みを客観的に評価する方法を用いて評価したときに,例えば,その痛みが生理食塩水を皮下注射したときと同等,若しくはそれ以下であるものである。
【0034】
水性液剤に含有される蛋白質が成長ホルモンである場合について,以下,詳述する。
【0035】
本発明において,水性液剤に含有される成長ホルモンの濃度に特に限定はない。但し,その濃度は,1~12mg/mLであることが好ましく,2~8mg/mLであることがより好ましい。好適な成長ホルモンの濃度は,例えば,4mg/mL又は8mg/mLである。
【0036】
本発明の成長ホルモンの水性液剤は,緩衝剤としてリン酸緩衝剤を含有してなるものである。水性液剤に含有されるリン酸緩衝剤の濃度は,好ましくは1~20mMであり,より好ましくは5~16mMであり,更に好ましくは8~15mMであり,更により好ましくは8~12mMである。例えば,水性液剤における最終濃度が,10mM,11mM,又は12mMとなるように調整される。緩衝剤を含有する水性液剤のpHは,好ましくは5.5~7.2であり,より好ましくは6.0~6.4であり,更に好ましくは6.0~6.3であり,更により好ましくは6.0~6.2であり,特に6.2である。
【0037】
本発明の成長ホルモンの水性液剤は,非イオン性界面活性剤を更に含有するものである。水性液剤に含有される非イオン性界面活性剤は,ポリソルベートやポロキサマー等を単独で又はこれらを組合せて使用することができる。ポリソルベートとしてはポリソルベート20,ポリソルベート80が,ポロキサマーとしてはポロキサマー188(ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール)が特に好適である。また,水性液剤に含有される非イオン性界面活性剤の濃度は,1~10mg/mLであることが好ましく,1~5mg/mLであることがより好ましく,1~3mg/mLであることが更に好ましく,1.5~2.5mg/mLであることが更により好ましく,1.8~2.2mg/mLであることが更により好ましく,例えば2mg/mLに調整される。非イオン性界面活性剤としてポロキサマー188(ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール)を用いる場合,その水性液剤における濃度は,1~5mg/mLであることが好ましく,1~3mg/mLであることがより好ましく,1.5~2.5mg/mLであることが更に好ましく,1.8~2.2mg/mLであることが更により好ましく,例えば2mg/mLに調整される。
【0038】
成長ホルモンの水性液剤は,使い捨てにせずに,開封後に単回でなく繰り返して使用することも想定される。その場合,繰り返しの使用中に細菌の混入により品質が劣化することを防止できることが望まれる。従って,本発明の成長ホルモンの水性液剤は,防腐剤を含有するものであってもよい。水性液剤に含有される防腐剤は,薬剤学的に許容し得るものである限り特に限定はないが,ベンジルアルコール,フェノール,安息香酸,又はこれらの混合物が好適に使用できる。
【0039】
防腐剤としてフェノールを用いる場合,その水性液剤における濃度は,好ましくは1~10mg/mLであり,更に好ましくは2.5~4.0mg/mLであり,更に好ましくは2.8~3.8mg/mLであり,例えば3.3mg/mLである。防腐剤としてベンジルアルコールを用いる場合,その水性液剤における濃度は,好ましくは2~20mg/mLであり,更に好ましくは7~12mg/mLであり,更に好ましくは8~10mg/mLであり,例えば9mg/mLである。防腐剤として安息香酸を用いる場合,その水性液剤における濃度は,好ましくは1~20mg/mLである。
【0040】
本発明の成長ホルモンの水性液剤には,等張化剤を含有させることもできる。水性液剤に含有される等張化剤は,薬剤学的に許容し得るものである限り特に限定はないが,糖アルコール,中性塩,又はこれらの混合物が好適に使用できる。糖アルコールとしては好適なものとしてはD-マンニトール,中性塩としては好適なものとしては塩化ナトリウムが挙げられる。等張化剤としてD-マンニトールを用いる場合,その水性液剤における濃度は,好ましくは35~70mg/mLであり,より好ましくは35~45mg/mLであり,例えば40mg/mLである。等張化剤として塩化ナトリウムを用いる場合,その水性液剤における濃度は,好ましくは,25~35mg/mLであり,より好ましくは5.5~7.5mg/mLであり,例えば6.5mg/mLである。但し,等張化剤の濃度はこれらに限られるものではなく,水性液剤における他の成分の濃度との関係で,適宜調整されるべきものである。通常,等張化剤の濃度は,水性液剤の浸透圧が生理食塩水を対照としたときの浸透圧比が0.9~1.6,より好ましくは0.9~1.1となるように,調整される。
【0041】
本発明の成長ホルモンの水性液剤の好適な例を以下に示す。
(好適例1’)1~12mg/mLの成長ホルモン,5~16mMのリン酸緩衝剤,1.8~2.2mg/mLのポロキサマー188,2.8~3.8mg/mLのフェノール,及び35~45mg/mLのD-マンニトールを含有し,pHが6.0~6.3である水性液剤。但し,pHを調整するため,更にリン酸又は/及び水酸化ナトリウムを添加したものであってもよく,また,D-マンニトールの濃度は,浸透圧比が0.9~1.1となるように増減してもよい。また,フェノールに換えて,8~10mg/mLのベンジルアルコールを添加してもよい。
(好適例2’)4~8mg/mLの成長ホルモン,5~16mMのリン酸緩衝剤,1.8~2.2mg/mLのポロキサマー188,2.8~3.8mg/mLのフェノール,及び35~45mg/mLのD-マンニトールを含有し,pHが6.0~6.3である水性液剤。但し,pHを調整するため,更にリン酸又は/及び水酸化ナトリウムを添加したものであってもよく,また,D-マンニトールの濃度は,浸透圧比が0.9~1.1となるように増減してもよい。また,フェノールに換えて,8~10mg/mLのベンジルアルコールを添加してもよい。
(好適例3’)4~8mg/mLの成長ホルモン,8~12mMのリン酸緩衝剤,2mg/mLのポロキサマー188,3.3mg/mLのフェノール,及び40mg/mLのD-マンニトールを含有し,pHが6.2である水性液剤。但し,pHを調整するため,更にリン酸又は/及び水酸化ナトリウムを添加したものであってもよく,また,D-マンニトールの濃度は,浸透圧比が0.9~1.1となるように増減してもよい。また,フェノールに換えて,9mg/mLのベンジルアルコールを添加してもよい。
(好適例4’)4mg/mL又は8mg/mLの成長ホルモン,10mMのリン酸緩衝剤,2mg/mLのポロキサマー188,3.3mg/mLのフェノール,及び40mg/mLのD-マンニトールを含有し,pHが6.2である水性液剤。但し,pHを調整するため,更にリン酸又は/及び水酸化ナトリウムを添加したものであってもよく,また,D-マンニトールの濃度は,浸透圧比が0.9~1.1となるように増減してもよい。また,フェノールに換えて,9mg/mLのベンジルアルコールを添加してもよい。
(好適例5’)4mg/mL又は8mg/mLの成長ホルモン,10mMのリン酸緩衝剤,2mg/mLのポロキサマー188,3.3mg/mLのフェノール,及び40mg/mLのD-マンニトールを含有し,pHが6.2である水性液剤。但し,pHを調整するため,更にリン酸又は/及び水酸化ナトリウムを添加したものであってもよく,また,D-マンニトールの濃度は,浸透圧比が0.9~1.1となるように増減してもよい。また,フェノールに換えて,9mg/mLのベンジルアルコールを添加してもよい。
【0042】
本発明の成長ホルモンの水性液剤は,バイアルに充填した製剤としてもよく,注射器に予め充填したものであるプレフィルドのシリンジ型又はカートリッジ型の製剤としてもよい。プレフィルドのシリンジ型又はカートリッジ型の製剤とする場合,通常,1本の注射器に充てんされる液量は1~2mLに調整され,例えば,1本の注射器に表示量が1.5mLとなるように充てんされる。
【0043】
成長ホルモンは水性液剤として調製した直後は,そのほとんどが水溶液中で単量体として存在している。然るに,水性液剤として保存すると,時間の経過とともに二量体が生じ単量体として存在する成長ホルモンの比率が減少する。また,成長ホルモンの定量値も時間の経過とともに減少する。
【0044】
本発明の成長ホルモンの水性液剤は,2~8℃で長期間保存しても,成長ホルモンが劣化しないものである。ここで成長ホルモンが劣化するとは,水性液剤を製剤としてバイアル又は注射器に充てんした直後と比較して,単量体として存在する成長ホルモンの比率が98%以下,例えば95%以下になることをいう。また,水性液剤を製剤としてバイアル又は注射器に充てんした直後と比較して,成長ホルモンの定量値が98%以下,例えば95%以下になった場合も,成長ホルモンが劣化したという。
【0045】
成長ホルモンを劣化させることなく保存できる期間は,好ましくは少なくとも18ヶ月であり,より好ましくは24ヶ月であり,更に好ましくは30ヶ月であり,更により好ましくは36ヶ月である。
【0046】
本発明の成長ホルモンの水性液剤は,筋肉内注射又は皮下注射することにより患者に投与される。患者への投与は医師により行われることに加え,患者自身又は患者の保護者により行われることも想定される。かかるタイプの薬剤は,患者自身又は患者の保護者が投与スケジュールを遵守することが求められるところ,注射時に痛みを伴うと,患者の投薬遵守が低下し,治療効果が十分に得られない結果となるおそれがある。本発明の成長ホルモンの水性液剤によると,患者が注射時に感じる痛みが軽減されるので,患者の投薬遵守が低下することがなく,全ての患者が本来の治療効果を享受できることとなる。
【0047】
注射時に感じる痛みは主観的なものであるが,これを客観的に評価する方法として,ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)が一般的に用いられている。VASは,概ね以下のステップを含む方法である。(1)左端を無痛,右端を想像できる最高の痛みを示すものとする水平方向に引かれた直線を被験者に提示する,(2)被験者自身が感じている痛みを当該直線上に示す,(3)被験者が示した痛みを数値化し集計する。直線の長さは100mmとするのが一般的である。
【0048】
その他,痛みを客観的に評価する方法としては,ヌーメリック・レイティング・スケール(NRS)が知られている。ヌーメリック・レイティング・スケールは,概ね以下のステップを含む方法である。(1)痛みが無いから最悪な痛みまでの11段階に区切った直線を被験者に提示する,(2)被験者自身が感じている痛みを当該直線上に示された数値を代用して表現する,(3)当該数値を集計する。
【0049】
その他,痛みを客観的に評価する方法としては,Faces Pain Scale(フェイススケール)が知られている。VAS及びNRSは,被験者がゲージ上に示された数値を代用して自身が感じる痛みを表現するものであるが,フェイススケールは,ゲージ上に示された痛みに応じたヒトの表情を代用して,被験者が自身の感じる痛みを表現するものである。
【0050】
痛みを客観的に評価する方法としては,VAS,NRS及びフェイススケールを適宜組み合わせたもの又は改変したものを用いることもでき,また,これらに限定されるものでもない。
【0051】
本発明の成長ホルモンの水性液剤は,これを皮下注射したときに被験者が感じる痛みを,上記の痛みを客観的に評価する方法を用いて評価したときに,その痛みが生理食塩水を皮下注射したときと同等,若しくはそれ以下であるものである。
【実施例0052】
以下,実施例を参照して本発明を更に詳細に説明するが,本発明が実施例に限定されることは意図しない。
【0053】
〔実施例1〕水性液剤の痛みの評価(1)
表1に示す,リン酸緩衝剤とD-マンニトールを含有する,処方1と処方2の水性液剤を調製した(表1)。処方1と処方2のリン酸緩衝剤濃度は,それぞれ20 mMと50 mMである。何れの処方も,浸透圧比は1.0~1.1である。
【0054】
【表1】
【0055】
痛みの評価は,痛みを表現する模式的な表情がゲージ上に表された図1に示すゲージを用いて実施した。このゲージを用いて,「痛みを感じない」を1とし,「考えられる最悪の痛み」を10とする10段階で,痛みを数値化した。試験は3名の被験者を用いて行った。被験者(20歳代,40歳代,及び50歳代の男性)に,リン酸緩衝剤濃度が20 mMである処方1,リン酸緩衝剤濃度が50 mMである処方2,及び生理食塩水を,同じ投与部位を避けて1回ずつ投与した。投与は被験者が投与された溶液を判別できないようにして実施した。何れも投与量は125 μLとし,注射針(BD micro-fine plus 31Gx5mm,ベクトン・ディッキンソン社)を用いて,被験者の太腿又は上腕部の皮下に投与した。投与直後の被験者に図1に示すゲージを提示し,ゲージ上に表された模式的な表情から,注射時の痛みを表わすのに最も適切なものを選択させた。選択された痛みの数値を集計し,その平均値を痛みのスコアとして求めた。その結果,痛みのスコアは,処方1で3.0,処方2で3.7であり,生理食塩水で2.0であった。これらの結果は,リン酸緩衝剤の濃度を減少させることで,水性液剤の注射時の痛みを軽減させることができることを示す。なお,被験者の安全を考慮して,試験は蛋白質成分を含まない水性液剤を用いて行った。
【0056】
〔実施例2〕水性液剤の痛みの評価(2)
表2に示す,リン酸緩衝剤,D-マンニトール,ポロキサマー188,及びフェノールを含有する,処方3~処方5の水性液剤を調製した(表2)。但し,処方5のみpHを調整するため水酸化ナトリウムを適量加えた。処方3,処方4,及び処方5のリン酸緩衝剤濃度は,それぞれ10 mM,20 mM,及び50 mMである。何れの処方も浸透圧比は1.0~1.1である。
【0057】
【表2】
【0058】
試験は3名の被験者を用いて行った。被験者(20歳代,40歳代及び50歳代の男性)に,リン酸緩衝剤濃度が10 mMである処方3,リン酸緩衝剤濃度が15 mMである処方4,リン酸緩衝剤濃度が50 mMである処方5,及び生理食塩水を,同じ投与部位を避けて1回ずつ投与した。投与は被験者が投与された溶液を判別できないようにして実施した。何れも投与量は125 μLとし,注射針(BD micro-fine plus 31Gx5mm,ベクトン・ディッキンソン社)を用いて,被験者の太腿又は上腕部の皮下に投与した。次いで,実施例1と同様の方法により,各処方の痛みのスコアを求めた。その結果,痛みのスコアは,処方3で2.0,処方4で2.0,処方5で4.3であり,生理食塩水で2.7であった。これらの結果は,リン酸緩衝剤の濃度を15 mM以下の濃度とすることで,水性液剤の注射時の痛みを劇的に軽減させることができることを示すものである。特に,リン酸緩衝剤の濃度を15 mM以下の濃度とすることで,生理食塩水と比較しても注射時の痛みを軽減できることは,驚くべきことである。なお,被験者の安全を考慮して,試験は蛋白質成分を含まない水性液剤を用いて行った。
【0059】
〔実施例3〕水性液剤の痛みの評価(3)
表3に示す,リン酸緩衝剤,D-マンニトール,ポロキサマー188,及びフェノールを含有する,処方6~処方7の水性液剤を調製した(表3)。但し,処方6のみpHを調整するため水酸化ナトリウムを適量加えた。処方6及び処方7のリン酸緩衝剤濃度は,それぞれ10 mM及び50 mMである。何れの処方も浸透圧比は1.0~1.1である。
【0060】
【表3】
【0061】
リン酸緩衝剤濃度が10 mMである処方6,リン酸緩衝剤濃度が50 mMである処方7,及び生理食塩水との痛みの比較を,31名の被験者を用いて行った。被験者(年齢20~70歳代の男女を含む)に,同じ投与部位を避けて,生理食塩水を最初に投与し,次いで処方6及び処方7を投与した。投与は被験者が投与された溶液を判別できないようにして実施した。何れも投与量は125 μLとし,注射針(BD micro-fine plus 31Gx5mm,ベクトン・ディッキンソン社)を用いて,被験者の太腿又は上腕部の皮下に投与した。次いで,実施例1と同様の方法により,各処方の痛みのスコアを求めた。その結果,痛みのスコアは,処方6で2.6,処方7で4.9であり,生理食塩水で2.7であった。やはり,リン酸緩衝剤の濃度を下げることにより注射時の痛みを軽減できること,及び10 mMの場合には,生理食塩水と比較しても注射時の痛みを軽減できることが示された。なお,被験者の安全を考慮して,試験は蛋白質成分を含まない水性液剤を用いて行った。
【0062】
〔実施例4〕ヒト成長ホルモンの水性液剤の安定性の評価(1)
表4に示すGH処方1~GH処方4の4種類の成長ホルモンの水性液剤を調製した。GH処方1とGH処方2のリン酸緩衝剤の濃度は,それぞれ50 mM及び16 mMである。GH処方3とGH処方4は,成長ホルモンの濃度のみ組成が異なり,リン酸緩衝剤の濃度は何れも10 mMである。
【0063】
【表4】
【0064】
GH処方1~GH処方4の水性液剤を,それぞれ1.5 mLずつガラス製カートリッジに充てんし,2~8 ℃の温度で,暗所で保存するか(長期保存試験),又は25 ℃の温度で,暗所で保存した(加速試験)。保存期間中,継時的に,溶液のpH,単量体(%)及び定量(%)を求めた。単量体(%)及び定量(%)は実施例6に記載の方法で求めた。
【0065】
表5にリン酸緩衝剤の濃度が50 mMであるGH処方1の安定性の評価の結果を示す。長期保存試験では,保存開始時,保存開始3ヶ月後,6ヶ月後,9ヶ月後,12ヶ月後,18ヶ月後,及び24ヶ月後に,pH,単量体(%)及び定量(%)を測定した。長期保存試験の保存期間中にpH,及び定量(%)はほとんど変化せず,また単量体(%)も99%以上に保たれた。加速試験では,保存開始1ヶ月後,2ヶ月後,3ヶ月後に,pH,単量体(%)及び定量(%)を測定した。加速試験での保存期間中にpH,及び定量(%)はほとんど変化せず,また単量体(%)も98%以上に保たれた。これらの結果は,GH処方1は,2~8℃の温度,暗所で少なくとも24ヶ月間安定であることを示すものである。また,規格値を単体量(%)及び定量(%)をそれぞれ98%以上,100%以上とした場合,長期保存試験で得られた値から,保存開始36ヶ月後であっても,2~8℃の温度,暗所で保存した場合,GH処方1は規格値を満たすことが予測された。
【0066】
【表5】
【0067】
表6にリン酸緩衝剤の濃度が16 mMであるGH処方2の安定性の評価の結果を示す。長期保存試験では,保存開始時,保存開始1ヶ月後,及び3ヶ月後に,pH,単量体(%)及び定量(%)を測定した。長期保存試験の保存期間中にpH,単量体(%)及び定量(%)はほとんど変化せず,GH処方1と同等の値を示した。加速試験では,保存開始1ヶ月後,2ヶ月後,3ヶ月後に,pH,単量体(%)及び定量(%)を測定した。加速試験での保存期間中にpH,単量体(%)及び定量(%)はほとんど変化せず,GH処方1と同等の値を示した。これらの結果は,GH処方2が,GH処方1と同等の安定性を有することを示すものであり,GH処方2が,2~8℃の温度,暗所で少なくとも24ヶ月間安定であると予測されることを示すものである。また,規格値を単体量(%)及び定量(%)をそれぞれ98%以上,100%以上とした場合,GH処方2が,2~8℃の温度,暗所で保存した場合,36ヶ月後であっても規格値を満たすと予測されること,を示すものである。
【0068】
【表6】
【0069】
表7及び表8に,リン酸緩衝剤の濃度が10 mMであるGH処方3及びGH処方4の安定性の評価の結果をそれぞれ示す。長期保存試験では,保存開始時,保存開始約1ヶ月後(4週間後)に,pH,単量体(%)及び定量(%)を測定した。何れの処方においても長期保存試験の保存期間中にpH,単量体(%)及び定量(%)はほとんど変化せず,GH処方1と同様の値を示した。加速試験では,保存開始約1ヶ月後(4週間後)に,pH,単量体(%)及び定量(%)を測定した。何れの処方においても加速試験での保存期間中にpH,単量体(%)及び定量(%)はほとんど変化せず,GH処方1と同様の値を示した。これらの結果は,GH処方3及び4が,GH処方1と同等の安定性を有することを示すものであり,GH処方3及び4が,2~8℃の温度,暗所で少なくとも24ヶ月間安定であると予測されることを示すものである。また,規格値を単体量(%)及び定量(%)をそれぞれ98%以上,100%以上とした場合,GH処方3及び4が,2~8℃の温度,暗所で保存した場合,36ヶ月後であっても規格値を満たすと予測されること,を示すものである。
【0070】
【表7】
【0071】
【表8】
【0072】
〔実施例5〕ヒト成長ホルモンの水性液剤の安定性の評価(2)
リン酸緩衝剤の濃度が10 mMであるGH処方3及びGH処方4について,保存開始から9ヶ月までの長期保存試験,及び3ヶ月までの加速試験を行った。表9及び表10に,GH処方3及びGH処方4の安定性の評価の結果をそれぞれ示す。長期保存試験では,保存開始時,保存開始1ヶ月後,2ヶ月後,3ヶ月後,6ヶ月後,及び9ヶ月後に,pH,単量体(%)及び定量(%)を測定した。何れの処方においても長期保存試験の保存期間中にpH,単量体(%)及び定量(%)はほとんど変化せず,GH処方1と同様の値を示した。加速試験では,保存開始1ヶ月後,2ヶ月後,及び3ヶ月後に,pH,単量体(%)及び定量(%)を測定した。何れの処方においても加速試験での保存期間中にpH,単量体(%)及び定量(%)はほとんど変化せず,GH処方1と同様の値を示した。これらの結果は,GH処方3及び4が,GH処方1と同等の安定性を有することを示すものであり,GH処方3及び4が,2~8℃の温度,暗所で少なくとも24ヶ月間安定であると予測されることを示すものである。また,規格値を単体量(%)及び定量(%)をそれぞれ98%以上,100%以上とした場合,GH処方3及び4が,2~8℃の温度,暗所で保存した場合,36ヶ月後であっても規格値を満たすと予測されること,を示すものである。
【0073】
【表9】
【0074】
【表10】
【0075】
〔実施例6〕成長ホルモンの単量体(%)の測定及び成長ホルモンの定量
単量体(%)の測定は,サイズ排除HPLC(SE-HPLC)を用いて試料を分析することにより行った。高速液体クロマトグラフィー装置LC-20A(システムコントローラCBM-20A,オンライン脱気ユニットDGU-20A5R,送液ユニットLC-20AB,オートサンプラーSIL-20AC,カラムオーブンCTO-20AC,及び紫外可視検出器SPD-20AV又はSPD-20Aを含むもの,島津製作所社)に,排除限界分子量5×105,粒子径5 μmの液体クロマトグラフィー用親水性シリカゲルを充填したものであるTSKgel G3000SWXL(内径7.8 mm×30 cm,東ソー社)をセットした。移動相(リン酸二水素ナトリウム二水和物15.6 g,リン酸水素二ナトリウム十二水和物35.8 g及び塩化ナトリウム11.7 gを水に溶かし,1000 mLとした後,孔径0.22 μmのメンブレンフィルターを用いてろ過したもの)でカラムを平衡化させ,これに,純水で成長ホルモン濃度が1~2 mg/mLとなるように希釈した試料を適用し,215 nmの吸光度をモニターすることにより溶出プロフィールを作成した。流速は0.5 mL/分とした。溶出プロフィール上の単量体に対応するピークの面積(単量体ピーク面積)及び二量体に対応するピークの面積(二量体ピーク面積)から,単量体(%)=単量体ピーク面積/(単量体ピーク面積+二量体ピーク面積)×100(%)の計算式で,単量体(%)を求めた。
【0076】
また,既知の濃度の成長ホルモンをSE-HPLCで分析して検量線を作成し,これに単量体面積を内挿することにより試料中に単量体として存在する成長ホルモンを定量した。検量線から求められる保存開始時の溶液に含まれる成長ホルモンの理論値を100%としたときの,各試料の定量値を,定量(%)として求めた。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明によれば,溶液状態で貯蔵安定であり且つ注射時の痛みが軽減された,有効成分として蛋白質を含有する水性液剤を提供することができる。
図1