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  • 特開-蛍光性の計時器用コンポーネント 図1
  • 特開-蛍光性の計時器用コンポーネント 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160968
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】蛍光性の計時器用コンポーネント
(51)【国際特許分類】
   A44C 5/00 20060101AFI20231026BHJP
   A44C 5/02 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
A44C5/00 C
A44C5/02 D
A44C5/02 F
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023148039
(22)【出願日】2023-09-13
(62)【分割の表示】P 2021146635の分割
【原出願日】2021-09-09
(31)【優先権主張番号】20213368.2
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ソフィ・ナーポリ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ・フランソワ
(57)【要約】
【課題】 計時器用コンポーネントにおいて、発光性に優れた蛍光性の構造を提供する。
【解決手段】 本発明は、蛍光性の多層構造を備える計時器用コンポーネント(3)に関
し、この蛍光性の多層構造は、光透過性ないし半透明のポリマーマトリックスを含み蛍光
性顔料を含む表層(1)と、及びその下の反射性の下層(2)とを備える。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光性の多層構造を備える計時器用コンポーネント(3)であって、
前記蛍光性の多層構造は、光透過性ないし半透明のポリマーマトリックスを含み蛍光性
顔料を含む表層(1)と、及びその下の反射性の下層(2)とを備える
ことを特徴とする計時器用コンポーネント(3)。
【請求項2】
前記表層(1)は、エラストマーマトリックスを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用コンポーネント。
【請求項3】
前記下層(2)は、反射性顔料を含むポリマーマトリックスを含む
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の計時器用コンポーネント。
【請求項4】
前記反射性顔料は、酸化チタンを含む
ことを特徴とする請求項3に記載の計時器用コンポーネント。
【請求項5】
前記下層(2)の前記ポリマーマトリックスは、前記表層(1)のポリマーマトリック
スと融和性がある
ことを特徴とする請求項3又は4に記載の計時器用コンポーネント。
【請求項6】
前記表層(1)と前記下層(2)は、フッ化エラストマーを含む
ことを特徴とする請求項5に記載の計時器用コンポーネント。
【請求項7】
前記表層(1)は、0.03mm~1mmの範囲内の厚みを有する
ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の計時器用コンポーネント。
【請求項8】
携行型時計用ブレスレット(4)、携行型時計用表盤、針、ベゼル、又は携行型時計ケ
ースを形成する
ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の計時器用コンポーネント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層の蛍光性の計時器用コンポーネント、特に、携行型時計(例、腕時計、
懐中時計)用ブレスレットに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤや看板の付属品のような様々なアプリケーションにおいて、光輝性の物質が市場
にて広く普及している(例、米国特許US6431236B1、日本国公開公報JP H
10-121424A)。
【0003】
特に、腕時計メーカーは、蛍光性のシリコーンベースのブレスレットを提供しており、
これは、最近では、蛍光性のゴム製ブレスレットを用いる携行型時計を提案している会社
によって発展されている。この会社は、光輝性の合成ゴム製ブレスレットのために、材料
に直接顔料を添加して、それを熱成型してプレスしている。
【0004】
しかし、このようにして顔料を塊の中に分散させると、その顔料が発生させる光のかな
りの割合が失われてしまう。これは、厚い層の場合には当該材料に吸収されることに起因
していたり、また、着用者には関心がない裏面の方への発光に起因していたりする。この
ように、高価な蛍光性の顔料の大部分を実際には利用できていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記のような課題がない蛍光性の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、蛍光性の顔料を含む光透過性ないし半透明の表層と、及び反射性の下層とを
備える蛍光性の構造を備える計時器用コンポーネントに関する。
【0007】
好ましくは、本発明の構造体の前記2つの層は、ポリマー、好ましくは、エラストマー
、のマトリックスを含む。
【0008】
エラストマーとは、弾性率が100MPa以下、好ましくは、50MPa以下の材料を
意味する。特に、好ましくは、エラストマーは、25℃における弾性率が10MPa以下
である。
【0009】
好ましいことに、前記2つの層は、互いに融和性があるポリマーを含む。融和性がある
(コンパチブル)とは、接着層を使わずに前記2つの層が互いに接着することを意味する
【0010】
好ましくは、前記2つの層のポリマーは、基本的に分散している顔料及び/又はフィラ
ーが異なりそれ以外は同じ性質のポリマーによって構成している。
【0011】
好ましいことに、前記表層の厚みは、0.04~1mmの範囲内である。
【0012】
好ましくは、前記下層は、酸化チタンのような白色顔料を分散させて反射性にする。
【0013】
好ましいことに、前記蛍光性の顔料は、粒径が30μm未満であり、これは、ふるいに
かけて測定される。
【0014】
好ましくは、前記表層は、少なくとも20重量%の蛍光性顔料を含む。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る計時器用コンポーネントの蛍光性の多層構造を示している概略断面図である。
図2】本発明に係る計時器用コンポーネントを形成するブレスレットを備える携行型時計の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、蛍光性の多層構造を備える計時器用コンポーネントに関し、これは、この構
造全体における蛍光性顔料の量を最小限に抑えつつ、この構造の発光性能を最大限に高め
ることを可能にする。この構造は、特に、携行型時計用ブレスレットを作るように意図さ
れた計時器用コンポーネントの製造に適している。当然、当該計時器用コンポーネントは
、携行型時計の表盤、針、ベゼル、携行型時計ケースのような、腕時計の他の構成要素を
形成することもできる。
【0017】
本発明によると、当該多層構造は、通常の使用時に見えるように意図された表面と、例
として携行型時計ブレスレットの場合には皮膚に接触するように意図される、下面とを備
える。
【0018】
本発明によると、当該表面は、蛍光性顔料を含む光透過性ないし半透明のポリマー表層
1を備える。この表層の厚みは、最深部の顔料が発する光が、その最深部の顔料と表面の
間にある材料によって過度に吸収されないように最適化される。当該表層のポリマーマト
リックスの光学的特徴に応じて、この層の厚みは30μm~1mmの範囲内である。
【0019】
随意的に、前記蛍光性の表層の上に、発光した光を著しく吸収しないかぎり、薄い光透
過性の層を追加することができる。このような追加の層は、例えば、最終製品の表面仕上
げを改善するために、又は顔料を含む領域を保護するために、追加することができる。
【0020】
前記表層の下に反射層2が配置される。この反射層は、基材上に蒸着やプラズマ蒸着な
どによって堆積される薄い金属層のような薄い反射層であることができ、また、好ましく
は、酸化チタンのような反射性顔料をチャージさせたポリマーの層であることができる。
また、この反射層は、基材上に堆積させることもでき、また、自己支持層であることもで
きる。この反射層2は、例えば、図1及び2に示しているように、皮膚と接触するブレス
レットの裏層2を形成することができる。しかし、この構造は、第3の層(図示せず)を
備えることもでき、これは、例えば、色づけされており、例えば、表層1の上に配置され
る。前記課題を解決するために重要なことは、蛍光性層の直下の層が反射性であることで
ある。
【0021】
TiO2粒子の大きさが小さいために(通常200nm~400nm)、可視光の反射
性が最大になる。ベース混合物は、好ましいことに、エラストマー、加硫システム、シリ
カ、酸化チタン及び蛍光増白剤を含む。
【0022】
十分な反射性を得るために、前記反射層は、上述のように高分子である場合、少なくと
も20μm、好ましくは、少なくとも40μmの厚みを有する。
【0023】
表層1と反射層は、ポリマー的な性質を有する場合、好ましくは、FKMファミリーの
フッ化エラストマー、又はTPU(ポリウレタン)、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合
体)、シリコーン、EPR(エチレンプロピレンゴム)ファミリー及びそれらの熱可塑性
誘導体(TPO)、又はその他のアクリル系エラストマーファミリーの熱可塑性エラスト
マーポリマー、又はこれらの混合物からなる群から選択される。
【0024】
携行型時計ブレスレットの場合、蛍光性層の下にある、したがって、反射層2と随意的
な追加層を含む、裏層の総厚みは、20μm~1.5mmの範囲内である。
【0025】
ブレスレットを作る際には、以下の3つの成形方法が好まれる。
― 下層を上側の蛍光性エラストマー層上に成型することができる(又はその逆)。
― 前記蛍光性層は成型によって作ることができ、前記反射層はスプレーによって被覆す
ることができる。
(射出又は圧縮によって別々に形成された)前記2つの層は、「サドルブレスレット」タ
イプの成形技術を使って組み付けることができる。すなわち、前記2つの層は、一緒に接
着され縫い合わされて、ブレスレットを形成する。
【0026】
A.基材の用意
Slovay社から得られる純粋なFKM Tecnoflon(R) P-457グレードを5%の酸化チタンとと
もにオープンミキサーで処理して混合することによって、フルオロエラストマーを用意し
た。
【0027】
混合の終わりにおいて、加硫システムを加える(2.5重量%のLuperox(R) 101XL-45
+ 3重量%のDrimix(R) TAIC 75%;百分率はポリマーに対する相対的なものである)
【0028】
好ましくは、Sasol社から販売されているNafol 1822B(商標)オイル(最大1.8%)
も加える。全体が、すぐに成形することができる反射性のFKM混合物を構成する。
【0029】
この混合物は、圧縮によって成形され、部分的に架橋される。
【0030】
B.蛍光性の層の用意
以下のマスターバッチを作った。マスターバッチマトリックスには、クリーンなライン
で製造され光透過性であるSolvay社による純粋なFKMのTecnoflon(登録商標)P-457グ
レードを用いた。
【0031】
Tecnoflon(登録商標)P-457をメチルエチルケトン(MEK)において1:1の割合で
希釈した。
【0032】
前のステップで得られた混合物に、あらかじめ30μmのふるいにかけた光輝性の顔料
を導入した。この顔料の量は、Tecnoflon(登録商標)P-457に対して1:1の割合であり
、全体を3000rpmの高速ミキサーで混合した。
【0033】
全体に対して0.5%(すなわち、FKMポリマーに対して1.5%)の量のフルオロ
クロムを導入し、全体を3000rpmの高速ミキサーで再び混合する。
【0034】
80℃の炉で溶媒がなくなるまで溶媒を蒸発させる。
【0035】
あらかじめ作ったマスターバッチは、オープンミキサーで作業することによって、純粋
なFKM P-457に60%以上まで配合される。
【0036】
混合の終わりにおいて、加硫システムを加える(2.5重量%のLuperox(登録商標)1
01XL-45 + 3重量%のDrimix(登録商標)TAIC 75%;百分率はポリマーに対する相対
的なものである)。
【0037】
好ましくは、Sasol社が販売しているNafol 1822B(商標)オイルも加える(最大1.8
%)。全体が最適化された光輝性のFKM混合物を構成し、これは成形し架橋することが
できる。
【0038】
そして、得られた混合物Bを圧縮によってオーバーモールドし、あらかじめ用意してお
いた基材A上にて架橋する。
【0039】
このようにして得られたコンポーネントは、酸化チタンを10%含む反射性エラストマ
ー層と、この反射性エラストマー層に接着する顔料濃度が30%の100μmの表層を備
える。
【符号の説明】
【0040】
1 蛍光性層
2 反射層
3 携行型時計ブレスレット
4 携行型時計
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2023-09-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光性の多層構造を備える計時器用コンポーネント(3)であって、
前記蛍光性の多層構造は、光透過性ないし半透明のポリマーマトリックスを含み蛍光性顔料を含む表層(1)と、及びその下の反射性の下層(2)とを備えるとともに
前記表層(1)は、エラストマーマトリックスを含み、前記下層(2)は反射性顔料をチャージさせたポリマーマトリックスを含む
ことを特徴とする計時器用コンポーネント。
【請求項2】
前記反射性顔料は、酸化チタンを含む
ことを特徴とする請求項1に記載の計時器用コンポーネント。
【請求項3】
前記下層(2)の前記ポリマーマトリックスは、前記表層(1)のポリマーマトリックスと融和性がある
ことを特徴とする請求項又はに記載の計時器用コンポーネント。
【請求項4】
前記表層(1)と前記下層(2)は、フッ化エラストマーを含む
ことを特徴とする請求項に記載の計時器用コンポーネント。
【請求項5】
前記表層(1)は、0.03mm~1mmの範囲内の厚みを有する
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の計時器用コンポーネント。
【請求項6】
携行型時計用ブレスレット(4)、携行型時計用表盤、針、ベゼル、又は携行型時計ケースを形成する
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の計時器用コンポーネント。
【外国語明細書】