(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023160977
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】通蒸型パウチ
(51)【国際特許分類】
B65D 77/20 20060101AFI20231026BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
B65D77/20 H
B65D81/34 U
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023148283
(22)【出願日】2023-09-13
(62)【分割の表示】P 2019005215の分割
【原出願日】2019-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】矢島 佐保
(57)【要約】
【課題】内容物を容易に取り出すことができる通蒸型パウチを提供する。
【解決手段】通蒸型パウチ10は対向する第1シート21および第2シート22を含むシート20と、内容物を収容可能な収容空間11が第1シート21と第2シート22との間に形成されるようにシート20をシールするシール部30と、収容空間11を開口する開口部40と、開口部40を閉鎖する閉鎖シール部の形成が予定されたシール予定部70と、閉鎖シール部が形成された状態における収容空間11の圧力の上昇によって開口するようにシート20に形成された通蒸部60とを備える。シート20は最外層、および、最外層に積層されるシーラント層を含む。シーラント層は樹脂の流れ方向の引き裂き性に優れた材料によって構成される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1シートおよび第2シートを含むシートと、
前記シートにより構成され、収容空間を含むパウチ本体と、
前記シートにより構成され、前記パウチ本体につながる分離予定部と、
前記分離予定部に設けられ、前記収容空間の圧力の上昇により開口する通蒸部と、
前記パウチ本体に対する前記分離予定部の分離を補助する切取線を含むガイド部と、を備える通蒸型パウチであって、
前記シートは最外層と、シーラント層と、前記最外層と前記シーラント層との間に設けられる中間層とを含み、
前記シーラント層は樹脂の流れ方向の引き裂き性に優れた第1材料により構成され、
前記中間層は樹脂の流れ方向の引き裂き性に優れた第2材料により構成され、
前記切取線は前記中間層に設けられ、前記最外層には設けられない
通蒸型パウチ。
【請求項2】
前記第1材料は樹脂の流れ方向の引き裂き性に優れた無軸延伸ポリプロピレンを含む
請求項1に記載の通蒸型パウチ。
【請求項3】
前記第2材料は樹脂の流れ方向の引き裂き性に優れたナイロンを含む
請求項1または2に記載の通蒸型パウチ。
【請求項4】
前記分離予定部が前記パウチ本体から分離されることにより前記パウチ本体の前記第1シートに形成される縁は第1切断縁と称され、
前記分離予定部が前記パウチ本体から分離されることにより前記パウチ本体の前記第2シートに形成される縁は第2切断縁と称され、
前記シートおよび前記ガイド部は前記通蒸型パウチの標準高さ方向における前記第1切断縁と前記第2切断縁との間隔が2mm未満となるように構成される
請求項1~3のいずれか一項に記載の通蒸型パウチ。
【請求項5】
前記通蒸型パウチの標準高さ方向は上方向および下方向を含み、
前記標準高さ方向に直交する標準幅方向は互いに反対の方向である第1幅方向および第2幅方向を含み、
前記切取線は前記標準幅方向に間隔を空けて並ぶ複数の切込群を含み、
1つの前記切込群は前記標準高さ方向に並ぶ複数の切込を含み、
前記複数の切込は複数の第1種の切込および複数の第2種の切込を含み、前記上方向から前記下方向に向けて前記第1種の切込と前記第2種の切込とが交互に並ぶように構成され、
1つの前記切込群は複数の切込組を含み、
1つの前記切込組は1つの前記第1種の切込と、その切込に対して下方に位置する1つの前記第2種の切込とにより構成され、
前記第1種の切込は前記第2幅方向に向かうにつれて前記下方向に向かうように前記標準幅方向に対して傾斜し、
前記第2種の切込は前記第2幅方向に向かうにつれて前記上方向に向かうように前記標準幅方向に対して傾斜し、
1つの前記切込組は前記標準高さ方向に関する前記第1種の切込と前記第2種の切込との間隔が前記第2幅方向に向かうにつれて狭くなるように構成される
請求項1~4のいずれか一項に記載の通蒸型パウチ。
【請求項6】
前記第1シートと前記第2シートとを接合するシール部を含み、
前記シートは前記標準幅方向に関する前記通蒸型パウチの中心に対して前記第1幅方向に離れた位置に設けられる第1側部と、前記標準幅方向に関する前記通蒸型パウチの中心に対して前記第2幅方向に離れた位置に設けられる第2側部とを含み、
前記シール部は前記第1側部に設けられる第1側部シール部と、前記第2側部に設けられる第2側部シール部とを含み、
前記通蒸部は前記第2側部シール部に設けられる
請求項5に記載の通蒸型パウチ。
【請求項7】
前記ガイド部は前記標準幅方向において前記切取線に隣接するノッチを含み、
前記ノッチは前記第1側部シール部に設けられ、前記第2側部シール部には設けられない
請求項6に記載の通蒸型パウチ。
【請求項8】
前記通蒸部は前記第2側部シール部のうちの前記収容空間に向けて凹む部分と、前記凹む部分の外部に設けられ、前記第1シートと前記第2シートとがシールされない未シール部とを含む
請求項6または7に記載の通蒸型パウチ。
【請求項9】
前記パウチ本体は前記分離予定部が分離された状態において前記収容空間を外部に向けて開放する取出口を含むように、かつ、器として利用できるように構成される
請求項1~8のいずれか一項に記載の通蒸型パウチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は通蒸型パウチに関する。
【背景技術】
【0002】
加熱される内容物を収容する通蒸型パウチが知られている。通蒸型パウチは、内容物を収容可能な収容空間が形成されるようにシールされたシート、収容空間の圧力の上昇にともない開口するようにシートの一部がシールされた通蒸部、および、内容物を収容空間に充填できるように設けられた開口部を含む。通蒸型パウチの収容空間に内容物が収容された状態では、開口部がシールされることによって収容空間が閉じられる。内容物を収容した通蒸型パウチが電子レンジ等の加熱手段によって加熱された場合、内容物から水蒸気が発生し、収容空間の圧力が上昇し、シートの各部分に応力が生じる。収容空間の圧力がある程度の圧力まで上昇した場合、通蒸部を構成するシールが剥離し、収容空間と外部の空間とを連通する通路が通蒸部に形成される。このため、収容空間の水蒸気が通蒸部に形成された通路を通過して通蒸型パウチの外部に排出され、収容空間の圧力の上昇が抑えられる。特許文献1は従来の通蒸型パウチの一例である電子レンジ用パウチを開示している。この電子レンジ用パウチは特許文献1の
図3等に示されるように、積層フィルム(30)を備える。積層フィルム(30)は基材層(31)、印刷層(32)、他の層(33)、および、シーラント層(34)を含む。内容物を収容した電子レンジ用パウチの加熱手段による加熱が終了した場合、開封手段(18)から積層フィルム(30)が引き裂かれ、収容空間から内容物が取り出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の電子レンジ用パウチでは、積層フィルム(30)を引き裂いている途中にシーラント層(34)が延びて、シーラント層(34)が結晶化するおそれがある。シーラント層(34)が結晶化した場合、積層フィルム(30)をそれ以上引き裂くことが困難となる。このため、内容物を取り出しにくい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)一例では、通蒸型パウチは対向する第1シートおよび第2シートを含むシートと、内容物を収容可能な収容空間が前記第1シートと前記第2シートとの間に形成されるように前記シートをシールするシール部と、前記収容空間を開口する開口部と、前記開口部を閉鎖する閉鎖シール部の形成が予定されたシール予定部と、前記閉鎖シール部が形成された状態における前記収容空間の圧力の上昇によって開口するように前記シートに設けられた通蒸部とを備える通蒸型パウチであって、前記シートは最外層、および、前記最外層に積層されるシーラント層を含み、前記シーラント層は樹脂の流れ方向の引き裂き性に優れた材料によって構成される。
内容物が収容空間に収容され、閉鎖シール部が形成された状態の通蒸型パウチ(以下では、「閉鎖された通蒸型パウチ」という)が加熱された場合、収容空間の圧力の上昇にともない収容空間と外部の空間とを連通する通路が通蒸部に形成される。このため、収容空間の水蒸気が通蒸部に形成された通路を通過して通蒸型パウチの外部に排出され、収容空間の圧力の上昇が抑えられる。また、シーラント層が上記の特性を有する材料によって構成されているため、シートを引き裂く力がシートに加えられた場合、シートのうちの閉鎖シール部を含む部分を容易に引き裂くことができる。このため、シートが引き裂かれた部分から内容物を容易に取り出すことができる。
【0006】
(2)一例では(1)に記載の通蒸型パウチにおいて、前記シートは前記最外層と前記シーラント層との間に積層される中間層をさらに含む。
このため、通蒸型パウチの強度が高められる。
【0007】
(3)一例では(2)に記載の通蒸型パウチにおいて、前記中間層は樹脂の流れ方向の引き裂き性に優れた材料によって構成される。
上記通蒸型パウチによれば、シートのうちの閉鎖シール部を含む部分を容易に引き裂くことができる。このため、内容物を容易に取り出すことができる。
【0008】
(4)一例では(1)~(3)のいずれか一項に記載の通蒸型パウチにおいて、前記閉鎖シール部が形成された状態における前記閉鎖シール部の切り取りをガイドするガイド部をさらに備える。
上記通蒸型パウチによれば、シートのうちの閉鎖シール部を含む部分を容易に引き裂くことができる。このため、内容物を容易に取り出すことができる。
【0009】
(5)一例では(2)または(3)を引用する(4)に記載の通蒸型パウチにおいて、前記ガイド部は前記中間層に設けられる切取線を含む。
上記通蒸型パウチによれば、中間層を備える場合であっても、シートのうちの閉鎖シール部を含む部分を容易に引き裂くことができる。このため、内容物を容易に取り出すことができる。
【0010】
(6)一例では(4)または(5)に記載の通蒸型パウチにおいて、前記ガイド部は前記通蒸型パウチの標準高さ方向において、前記通蒸部と前記通蒸型パウチの底との間に設けられる。
閉鎖された通蒸型パウチが加熱された場合、内容物から発生した水蒸気によって、シートのうちの標準高さ方向における通蒸部と底との間の部分が大きく膨らむ。上記通蒸型パウチによれば、シートのうちの大きく膨らんだ部分を容易に引き裂くことができる。このため、内容物を容易に取り出すことができる。
【0011】
(7)一例では(6)に記載の通蒸型パウチにおいて、前記ガイド部は前記標準高さ方向において、前記底よりも前記通蒸部に近い位置に設けられる。
このため、収容空間に多くの内容物を収容できる。
【0012】
(8)一例では(1)~(7)のいずれか一項に記載の通蒸型パウチにおいて、前記収容空間に収容された内容物と、前記閉鎖シール部とを備える。
上記通蒸型パウチによれば、(1)~(7)のいずれか一項に記載の通蒸型パウチと同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に関する通蒸型パウチによれば、内容物を容易に取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】開口部が閉じられる前の通蒸型パウチの正面図。
【
図4】開口した状態の通蒸部およびその周辺の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施形態)
図1は、加熱に適した内容物Cの収容、および、内容物Cから発生した蒸気の排出が可能な通蒸型パウチ10の一例を示している。内容物Cは加熱されることによって、水蒸気を発生する被加熱物である。内容物Cの一例は食品である。食品の一例はシチューおよびスープ等のように流動性を有する食品である。通蒸型パウチ10は内容物Cの品質を保ちながら長期間保存できるように構成されている。通蒸型パウチ10は種々の形状を取り得る。通蒸型パウチ10が取り得る形状の例は、スタンディングタイプ、平袋タイプ、ガゼットタイプ、および、ピラータイプである。
図1に例示される通蒸型パウチ10の形状はスタンディングタイプである。以下では、通蒸型パウチ10の正面視における通蒸型パウチ10の左右方向を標準幅方向と称し、標準幅方向と直交する方向を標準高さ方向と称する。
【0016】
通蒸型パウチ10はシート20、シール部30、開口部40、ガイド部50、および、通蒸部60を含む。
図1等のドットはシール部30を表している。シート20は第1シート21、第2シート22、および、底シート23を含む。第1シート21および第2シート22は内容物Cを収容する収容空間11が各シート21、22の間に形成されるように対向している。底シート23は第1シート21の底部21Aと第2シート22の底部22Aとの間を閉じるように各シート21、22の底部21A、22Aに配置されている。シート20の構成は任意に選択できる。第1例では、1枚のシートが折り曲げられることによって、対向する各シート21、22、および、各シート21、22の底部21A、22Aに配置された底シート23が形成される。第2例では、各シート21~23は個別に形成された3枚のシートである。
【0017】
シート20は複数の層が積層された層構造を備えている。シート20の層構造は任意に選択できる。第1例では、各シート21~23は同じ層構造を備える。第2例では、第1シート21と第2シート22とが同じ層構造を備え、底シート23が各シート21、22と異なる層構造を備える。第3例では、各シート21~23がそれぞれ異なる層構造を備える。
図1等では第1例の層構造を備える通蒸型パウチ10を示している。
【0018】
図2は各シート21~23の断面構造である。各シート21~23は最外層20A、中間層20B、シーラント層20C、第1接着層20D、および、第2接着層20Eを含む。各シート21~23の製造方法の一例はドライラミネートである。第1接着層20Dは最外層20Aと中間層20Bとを接着するように最外層20Aと中間層20Bとの間に設けられている。第2接着層20Eは中間層20Bとシーラント層20Cとを接着するように中間層20Bとシーラント層20Cとの間に設けられている。
【0019】
最外層20Aは主にガス遮断性、印刷適正、および、耐熱性に優れる。最外層20Aは例えば透明蒸着層である。最外層20Aを構成する材料の一例は無機薄膜が蒸着されたポリエチレンテレフタレート(以下では、「透明蒸着PET」という)である。中間層20Bは主に耐熱性および防湿性に優れる。中間層20Bを構成する材料の一例はナイロンである。より好ましい例では、中間層20Bを構成する材料は樹脂の流れ方向の引き裂き性に優れたナイロン(以下では、「直線カット性NY」という)である。以下では、各シート21、22を構成する材料の樹脂の流れ方向をMD(Machine Direction)方向と称し、MD方向と直交する方向をTD(Transverse Direction)方向と称する。各シート21、22のMD方向は標準幅方向に沿う方向である。各シート21、22のTD方向は標準高さ方向に沿う方向である。第1接着層20Dを構成する材料の一例はポリエステル系接着剤である。第2接着層20Eを構成する材料の一例はポリエステル系接着剤である。
【0020】
シーラント層20Cは耐熱性、ヒートシール性、および、耐衝撃性に優れる。シーラント層20Cを構成する材料の一例はMD方向の引き裂き性に優れた無軸延伸ポリプロピレン(以下では、「直線カット性CPP」という)である。MD方向の引き裂き性に優れるとは、例えば、JIS規格のK7128-1に規定されるトラウザー引裂法に準拠する引裂き力が1.2N以下の場合をいう。トラウザー引裂法では、TD方向の長さが50mm、MD方向の長さが150mmの長方形の試験片の中央に75mmの切り込みを入れ、23℃の恒温室内において、速度200mm/分でMD方向への引裂き力を測定した。直線カット性CPPは例えば、100重量部のプロピレン・エチレンブロック共重合体に対して、低結晶性エチレン系エラストマーを3~10重量部の割合で含む。低結晶性エチレン系エラストマーは例えば、密度が0.865~0.890g/cm3の範囲に含まれ、かつ、JIS規格のK7122に規定される融解時の吸熱量が5~30J/gの範囲に含まれる。
【0021】
図1に示されるシール部30は、各シート21~23が分離しないように各シート21~23を接合している。一例では、シール部30は第1シート21のシーラント層20C、第2シート22のシーラント層20C、および、底シート23のシーラント層20Cを接合している。シール部30を形成する方法の一例はヒートシールである。正面視における通蒸型パウチ10の外郭形状は任意に選択できる。
図1に示される例では、通蒸型パウチ10の外郭形状は長方形である。シート20はシール部30に囲まれた部分(以下では、「内方部24」という)とシール部30とに区分できる。収容空間11は第1シート21の内方部24と第2シート22の内方部24と底シート23の内方部24とに囲まれた空間であり、通蒸型パウチ10の外部と連通しないようにシール部30によって閉じられている。
【0022】
シール部30は開口部40を閉鎖する閉鎖シール部31(以下では、「第1シール部31」という)を含む。一例では、シール部30は第2シール部32、第3シール部33、および、第4シール部34をさらに含む。第1シール部31は標準高さ方向において内方部24の上側に設けられている。第2シール部32は標準高さ方向において内方部24の下側に設けられている。第3シール部33は標準幅方向において内方部24の左側または右側に設けられている。第4シール部34は標準幅方向において内方部24の右側または左側に設けられている。一例では、第3シール部33と第4シール部34とは、標準高さ方向において、底シート23から開口部40に向かうにつれて離間している。
【0023】
第1シール部31における内方部24側の縁である内縁31A、第2シール部32における内方部24側の縁である内縁32A、第3シール部33における内方部24側の縁である内縁33A、および第4シール部34における内方部24側の縁である内縁34Aは、内方部24の外郭を規定している。第1シール部31における内縁31Aとは反対側の縁である外縁31B、第2シール部32における内縁32Aとは反対側の縁である外縁32B、第3シール部33における内縁33Aとは反対側の縁である外縁33B、および、第4シール部34における内縁34Aとは反対側の縁である外縁34Bは、通蒸型パウチ10の外郭を規定している。
【0024】
各シール部31~34の幅は任意に選択できる。各シール部31~34の幅は各シール部31~34の中心線の法線における内縁31A~34Aと外縁31B~34Bとの間の長さである。各シール部31~34の中心線は内縁31A~34Aと外縁31B~34Bとの間を通過する仮想の線分である。各シール部31~34の幅が部位毎に異なる場合、例えば最大の幅、または、各シール部31~34のそれぞれにおける複数の部位の幅の平均がそのシール部の幅を代表する。
【0025】
通蒸型パウチ10の幅および高さは、例えば、収容される内容物Cの量、および、持ち運びやすさとの関係から決められることが好ましい。通蒸型パウチ10の幅は標準高さ方向に直交する線分における第3シール部33の外縁33Bと第4シール部34の外縁34Bとの間の長さである。通蒸型パウチ10の幅が部位毎に異なる場合、例えば最大の幅、または、複数の部位の幅の平均が通蒸型パウチ10の幅を代表する。通蒸型パウチ10の高さは標準幅方向に直交する線分における第1シール部31の外縁31Bと第2シール部32の外縁32Bとの間の長さである。通蒸型パウチ10の高さが部位毎に異なる場合、例えば最大の高さ、または、複数の部位の高さの平均が通蒸型パウチ10の高さを代表する。
【0026】
開口部40は内容物Cを収容空間11に充填できるように第1シート21の上部21Bと第2シート22の上部22Bとの間に形成されている。
図1に示される通蒸型パウチ10では、開口部40が第1シール部31によって閉鎖されている。開口部40が閉鎖された通蒸型パウチ10(以下では、「閉鎖後の通蒸型パウチ10」という)はパウチ本体10Aおよび分離予定部10Bを含む。パウチ本体10Aおよび分離予定部10Bはガイド部50を構成する切取線51によって区分される。パウチ本体10Aは内容物Cを収容する部分である。分離予定部10Bは第1シール部31を含む各シート21、22の一部であり、内容物Cを取り出すためにユーザがパウチ本体10Aから分離する部分である。
【0027】
ガイド部50は分離予定部10Bをパウチ本体10Aから分離する場合に各シート21、22が容易に切断されるようにパウチ本体10Aと分離予定部10Bとの間に形成されている。標準高さ方向におけるガイド部50が設けられる位置は任意に選択できる。
図1等に示される第1例では、ガイド部50は標準高さ方向において、通蒸部60と底シート23との間に設けられる。好ましい例では、ガイド部50は標準高さ方向において、底シート23よりも通蒸部60に近い位置に設けられる。第2例では、ガイド部50は標準高さ方向において、通蒸部60と開口部40との間に設けられる。
【0028】
ガイド部50は切取線51およびノッチ52を含む。切取線51は各シール部33、34および各シート21、22の内方部24に形成されたミシン目の集合であり、各シート21、22のMD方向に沿うように形成されている。ノッチ52は、ノッチ52の先端部が切取線51を延長した仮想線上に位置するように第3シール部33および第4シール部34の少なくとも一方に形成される。
図1では、第3シール部33にノッチ52が形成された例を示している。
【0029】
切取線51が形成されたガイド部50は、切取線51が形成されていない各シート21、22の他の部分よりも引裂強度が低い。このため、ガイド部50に対して切取線51に沿う方向に力が加えられた場合、各シート21、22が切取線51に沿って容易に引き裂かれる。切取線51は標準幅方向において不連続に形成された複数の切込51Aを含む。切取線51を形成する手段は例えばミシン目加工機である。
【0030】
図5は
図1のX5部分の拡大図であり、切取線51の具体的な形態の一例を示している。この例では、標準幅方向に並んだ複数の切込群51Gによって切取線51が構成されている。1つの切込群51Gは標準高さ方向に並んだ複数の切込51Aによって構成されている。1つの切込群51Gを構成する各切込51Aは、標準幅方向の一方から他方に向かうにつれて標準高さ方向の一方から他方に傾斜する第1種の切込51A、および、標準幅方向の一方から他方に向かうにつれて標準高さ方向の他方から一方に傾斜する第2種の切込51Aに分類される。標準高さ方向において交互に形成された複数の第1種の切込51Aおよび第2種の切込51Aが1つの切込群51Gを構成している。
【0031】
好ましい例では、切込51Aは各シート21、22を構成する最外層20A、中間層20B、および、シーラント層20Cの3層の全部を貫通せず、かつ、3層のうちの1層または2層に形成される。本実施形態では、切込51Aは各シート21、22のうちの中間層20Bのみを貫通するように設けられる。
【0032】
通蒸型パウチ10は内容物Cを加熱するために加熱手段によって加熱される。加熱手段の一例は電子レンジである。通蒸型パウチ10が加熱されることにともない内容物Cから水蒸気が発生する。閉鎖後の通蒸型パウチ10では、収容空間11がシール部30によって閉じられているため、水蒸気の発生にともない収容空間11の圧力が上昇する。通蒸部60は収容空間11の圧力の上昇にともない開口し、収容空間11の水蒸気を通蒸型パウチ10の外部に排出できるように構成されている。好ましい例では、通蒸部60は収容空間11の圧力が所定の圧力範囲内の圧力まで上昇した場合に開口するように構成される。通蒸部60は種々の形態を取り得る。第1例では、通蒸部60はシール部30の一部を構成する。第1例の具体例では、通蒸部60は第3シール部33および第4シール部34の少なくとも一方に設けられる。第2例では、通蒸部60はシール部30とは独立し、各シート21、22の内方部24に設けられる。第2例の具体例では、各シート21、22の内方部24に各シート21、22を貫通する孔(図示略)が形成される。収容空間11と孔とが連通しないように孔の周囲をシールする通蒸部60が各シート21、22の内方部24に形成される。
【0033】
図1では、通蒸部60が第4シール部34だけに設けられた第1例を示している。通蒸部60の形状は標準幅方向の外側から内側に凹む形状である。通蒸部60における標準幅方向の最も内側の部分である先端部61は、各シート21、22のうちの収容空間11の圧力が上昇した場合に強い応力集中が生じる場所に設けられている。収容空間11の圧力が所定の圧力範囲内の圧力まで上昇した場合、通蒸部60が開口する。具体的には、収容空間11の上昇にともない通蒸部60の先端部61において接合されている第1シート21と第2シート22とが剥離し、
図4に示されるように収容空間11と通蒸型パウチ10の外部とを連通する蒸気抜き通路62が通蒸部60に形成される。通蒸部60が剥離する範囲は収容空間11の圧力の大きさに応じて異なる。収容空間11の圧力が高い場合、通蒸部60の根元の部分まで剥離が進行することもある。蒸気抜き通路62の通路面積は通蒸部60の剥離が進行するにつれて広くなる。通蒸部60が開口した場合、収容空間11の水蒸気が蒸気抜き通路62を通過して通蒸型パウチ10の外部に排出される。水蒸気が排出されることによって、収容空間11の圧力の上昇が抑えられ、通蒸型パウチ10の破裂が回避される。
【0034】
図3は開口部40が閉じられる前の通蒸型パウチ10(以下では、「閉鎖前の通蒸型パウチ10」という)である。閉鎖前の通蒸型パウチ10の開口部40から収容空間11に内容物Cが投入される。内容物Cが投入された後に第1シール部31の形成が予定されたシール予定部70にヒートシールが施されることによって、第1シール部31が形成され、
図1に示される閉鎖後の通蒸型パウチ10が得られる。
【0035】
図6は分離予定部10Bがパウチ本体10Aから分離された通蒸型パウチ10(以下では、「開封後の通蒸型パウチ10」という)を示している。閉鎖後の通蒸型パウチ10(
図1参照)において、パウチ本体10Aから分離予定部10Bを分離する場合、ノッチ52の先端部から各シート21、22が引き裂かれ、各シート21、22の引き裂きが切取線51に沿って進行するように各シート21、22に力がかけられる。分離予定部10Bがパウチ本体10Aから分離された場合、内容物Cを取り出すための取出口80が形成される。ユーザは分離予定部10Bが分離されたパウチ本体10Aを器として利用し、内容物Cを食すことができる。
【0036】
実施形態の通蒸型パウチ10によれば、次のような作用および効果が得られる。
内容物Cが収容空間11に収容され、閉鎖された通蒸型パウチ10が加熱された場合、収容空間11の圧力の上昇にともない収容空間11と外部の空間とを連通する蒸気抜き通路62が通蒸部60に形成される。このため、収容空間11の水蒸気が蒸気抜き通路62を通過して通蒸型パウチ10の外部に排出され、収容空間11の圧力の上昇が抑えられる。また、シーラント層20CがMD方向の引き裂き性に優れた材料によって構成されるため、シート20を引き裂く力がシート20に加えられた場合、シート20のうちの閉鎖シール部31を含む部分を容易に引き裂くことができる。このため、シート20が引き裂かれた部分に形成される取出口80から内容物Cを容易に取り出すことができる。
【0037】
(実施例)
本願発明者は実施例および比較例の試料を用いて、各シート21、22の層構造と引き裂き性との関係を確認する試験を実施した。
図7は試験の条件を示す。
図8は試験の結果を示す。以下の説明では、説明の便宜上、比較例の試料における実施例の試料と共通する部分について同一の符号を付している。実施例の試料は実施形態に関する通蒸型パウチ10である。比較例の試料は実施例の通蒸型パウチ10とは異なる構成を備える通蒸型パウチ10である。
【0038】
比較例の通蒸型パウチ10は次の点において実施例の通蒸型パウチ10と相違し、その他の点において実施例の通蒸型パウチ10と同じ構成を備える。比較例の通蒸型パウチ10のシーラント層20Cを構成する材料はMD方向の引き裂き性に優れない無軸延伸ポリプロピレン(以下では、「通常カット性CPP」という)である。MD方向の引き裂き性に優れないとは、例えば、JIS規格のK7128-1に規定されるトラウザー引裂法に準拠する引き裂き力が1.2N超の場合をいう。
【0039】
各実施例および比較例の試料に関する諸元は次のとおりである。各実施例および比較例の試料における最外層20Aを構成する材料は透明蒸着PETである。最外層20Aの厚さは12μmである。実施例1、3の試料における中間層20Bを構成する材料は直線カット性NYである。実施例2、4、および、比較例の試料における中間層20Bを構成する材料はMD方向のカット性に優れていないナイロン(以下では、「通常カット性NY」という)である。各実施例および比較例の試料における中間層20Bの厚さは15μmである。実施例1、2の試料における中間層20Bには、切取線51が設けられる。実施例3、4、および、比較例の試料における中間層20Bには切取線51が設けられない。各実施例の試料におけるシーラント層20Cを構成する材料は直線カット性CPPである。比較例の試料におけるシーラント層20Cを構成する材料は通常カット性CPPである。各実施例および比較例の試料におけるシーラント層20Cの厚さは60μmである。
【0040】
試験では、分離予定部10Bをパウチ本体10Aから分離する場合に各シート21、22が切取線51に沿って引き裂かれたか否か(以下では、「カット性」という)、および、各シート21、22が切取線51に沿って引き裂かれた場合の取出口80の外観(以下では、「取出口の外観」という)を確認した。取出口の外観については、標準高さ方向における第1シート21の切断縁と第2シート22の切断縁との間隔(以下では、「ずれ間隔」という)を測定した。ずれ間隔が規定間隔未満である場合に各シート21、22が綺麗に引き裂かれたと評価し、ずれ間隔が規定間隔以上である場合に各シート21、22が綺麗に引き裂かれていないと評価した。規定間隔は例えば、2mmである。各シート21、22の切断縁は、分離予定部10Bがパウチ本体10Aから分離されたことによってパウチ本体10Aおよび分離予定部10Bのそれぞれに形成される各シート21、22の縁である。ずれ間隔はパウチ本体10Aにおける第1シート21の切断縁と第2シート22の切断縁との間隔、または、分離予定部10Bにおける第1シート21の切断縁と第2シート22の切断縁との間隔である。実施例1、2の試料を用いた試験では、切取線51に沿って各シート21、22が引き裂かれるように各シート21、22に分離力を加えた。実施例3、4、および、比較例の試料を用いた試験では、各シート21、22のうちの切取線51に対応する部分が標準幅方向に沿って引き裂かれるように各シート21、22に分離力を加えた。
【0041】
図8のカット性の項目における「○」は各シート21、22の引き裂きが第3シール部33から第4シール部34に到達することによって、分離予定部10Bがパウチ本体10Aから完全に分離されたことを示している。
図8のカット性の項目における「×」は各シート21、22の引き裂きが第3シール部33から第4シール部34に到達せず、分離予定部10Bがパウチ本体10Aから完全には分離されなかったことを示している。
【0042】
図8の取出口の外観の項目における「○」はずれ間隔が規定値未満であることを示している。
図8の取出口の外観の項目における「△」はずれ間隔が規定値以上であることを示している。なお、比較例の試料では、引き裂きが第3シール部33から第4シール部34に到達しなかったため、取出口の外観の項目については、評価していない。
【0043】
各実施例の試料によれば、各シート21、22が標準幅方向に沿って引き裂かれることによって、分離予定部10Bがパウチ本体10Aから完全に分離されることが確認された。また、中間層20Bとして直線カット性NYを用いること、および、中間層20Bに切取線51を設けることの少なくとも一方を実施することによって、ずれ間隔が規定値未満となり、各シート21、22が綺麗に引き裂かれることが確認された。
【0044】
(変形例)
なお、上記実施形態は本発明に関する通蒸型パウチが取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に関する通蒸型パウチは実施形態に例示された形態とは異なる形態を取り得る。その一例は、実施形態の構成の一部を置換、変更、もしくは、省略した形態、または、実施形態に新たな構成を付加した形態である。以下に実施形態の変形例の一例を示す。
【0045】
・シート20の層構造は任意に変更可能である。第1変形例では、シート20は中間層20Bを有さない。第1変形例の場合、シーラント層20Cは第1接着層20Dを介して最外層20Aに積層される。第2変形例では、シート20は中間層20Bに加えて、または、代えて、最外層20Aとシーラント層20Cとの間に積層される1または複数の層を含む。
【符号の説明】
【0046】
10 :通蒸型パウチ
11 :収容空間
20 :シート
20A:最外層
20B:中間層
20C:シーラント層
21 :第1シート
22 :第2シート
23 :底シート(底)
30 :シール部
31 :第1シール部(閉鎖シール部)
40 :開口部
50 :ガイド部
60 :通蒸部
70 :シール予定部
C :内容物