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特開2023-161004アゼライン酸を含有する外用組成物、および、その製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161004
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】アゼライン酸を含有する外用組成物、および、その製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/362 20060101AFI20231026BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20231026BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231026BHJP
   A61K 8/96 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
A61K8/362
A61K8/34
A61Q19/00
A61K8/96
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023149045
(22)【出願日】2023-09-14
(31)【優先権主張番号】P 2023131085
(32)【優先日】2023-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】518340393
【氏名又は名称】株式会社基礎化粧品研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100187883
【弁理士】
【氏名又は名称】溝口 正信
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(72)【発明者】
【氏名】三好 聡
(72)【発明者】
【氏名】西澤 吾郎
(57)【要約】
【課題】アゼライン酸を高濃度(例えば、10質量%超)で含有する外用組成物であって、長期間に亘るアゼライン酸の分散性(長期安定性)に優れた外用組成物を提供すること。
【解決手段】10質量%超のアゼライン酸、乳化剤、および、高級アルコールを含み、前記アゼライン酸の平均粒径は100μm以下である、外用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
10質量%超のアゼライン酸、乳化剤、および、高級アルコールを含み、
前記アゼライン酸の平均粒径は100μm以下である、外用組成物。
【請求項2】
低級アルコールを含有しない、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
前記外用組成物の全量に対する前記高級アルコールの含有率は、0.5~5.0質量%である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項4】
前記高級アルコールの炭素数は、10~30である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項5】
前記乳化剤は、植物由来乳化剤、非イオン性界面活性剤、および、合成乳化剤からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項6】
さらに、多価アルコールを含む、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項7】
pHが3.0~5.0である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項8】
クリーム製剤である、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項9】
10質量%超のアゼライン酸を含有する外用組成物の製造方法であって、
水を含む第1原料混合物を加温し、乳化剤と高級アルコールとを含む第2原料混合物を加温する、加温工程と、
加温された前記第1原料混合物と前記第2原料混合物とを混合することにより、乳化分散液を得る、第1混合工程と、
前記乳化分散液を所定の温度まで低下させた後に、前記乳化分散液に、アゼライン酸を含む第3原料混合物を混合する第2混合工程と、を含み、
前記アゼライン酸は、100μm以下の平均粒径を有する粉末である、製造方法。
【請求項10】
前記第3原料混合物は低級アルコールを含有しない、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記第1原料混合物は、さらに多価アルコールを含有し、
前記第2原料混合物は、さらに油脂を含有する、請求項9に記載の製造方法。
【請求項12】
前記加温工程において、
前記第1原料混合物および前記第2原料混合物は、60~90℃まで加温され、
前記第2混合工程において、前記所定の温度は、35~55℃である、請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アゼライン酸を含有する外用組成物、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アゼライン酸(ヘプタン-1,7-ジカルボン酸:C16)は、小麦粉やライ麦などの穀類に含まれる飽和ジカルボン酸である。アゼライン酸は、海外では、ざ瘡(ニキビ)の治療剤の有効成分として広く知られている。
【0003】
アゼライン酸は基剤に溶解させるのが難しいため、通常は、製剤中に分散状態で含まれている。
【0004】
特許文献1(特開2012-232970号公報)および特許文献2(特開2013-170124号公報)には、0.1~10質量%のアゼライン酸を含有する外用組成物が開示されている。
皮脂分泌の抑制、角化異常の抑制の観点からは、さらに高濃度のアゼライン酸を含有する外用組成物の提供が望まれる。
【0005】
既に、20質量%といった高濃度(例えば、20質量%)のアゼライン酸を含むクリームやゲル等の製剤が知られており、例えば、特許文献3(特開2012-162461号公報)には、アゼライン酸を高濃度で含有し得る皮膚外用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-232970号公報
【特許文献2】特開2013-170124号公報
【特許文献3】特開2012-162461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献3に記載される外用組成物は、高濃度のアゼライン酸を含有するが、アクリル系ポリマーを含んでいる。昨今の消費者動向として、アクリル系ポリマー等の合成高分子を配合しない製剤が好まれやすい傾向があるため、アクリル系ポリマーを配合せずにアゼライン酸を高濃度で含む外用組成物の提供が望まれる。
【0008】
ここで、NIKIPITA社が販売する「AZシリーズ アゼフィットスポッツ」は、アゼライン酸を高濃度(20質量%)で含有し、且つアクリル系ポリマーを含んでいない。同製品の全成分は、「水、グリセリン、トリエチルヘキサノイン、アゼライン酸、ヒアルロン酸Na、水溶性コラーゲン、グリチルリチン酸2K、サリチル酸、ダイズステロール、メボウキ花/葉エキス、スイカズラ花エキス、ダイウイキョウ果実エキス、ウスニアバルバタエキス、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、イソノナン酸イソノニル、ジメチコン、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル(SE)、ステアリン酸PEG-10、ベヘン酸、水添レシチン、トコフェロール」と表示されている。ここで、乳化剤である水添レシチンが含まれているが、単一の乳化剤だけでは乳化作用が不安定であるため、長期間に亘りアゼライン酸の十分な分散性を維持できない可能性がある。
【0009】
本発明は、アゼライン酸を高濃度(例えば、10質量%超)で含有する外用組成物であって、長期間に亘るアゼライン酸の分散性(長期安定性)に優れた外用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1) 10質量%超のアゼライン酸、乳化剤、および、高級アルコールを含み、
前記アゼライン酸の平均粒径は100μm以下である、外用組成物。
【0011】
(2) 低級アルコールを含有しない、(1)に記載の外用組成物。
【0012】
(3) 前記外用組成物の全量に対する前記高級アルコールの含有率は、0.5~5.0質量%である、(1)または(2)に記載の外用組成物。
【0013】
(4) 前記高級アルコールの炭素数は、10~30である、(1)~(3)のいずれかに記載の外用組成物。
【0014】
(5) 前記乳化剤は、植物由来乳化剤、非イオン性界面活性剤、および、合成乳化剤からなる群から選択される少なくとも1種である、(1)~(4)のいずれかに記載の外用組成物。
【0015】
(6) さらに、多価アルコールを含む、(1)~(5)のいずれかに記載の外用組成物。
【0016】
(7) pHが3.0~5.0である、(1)~(6)のいずれかに記載の外用組成物。
【0017】
(8) クリーム製剤である、(1)~(7)のいずれかに記載の外用組成物。
【0018】
(9) 10質量%超のアゼライン酸を含有する外用組成物の製造方法であって、
水を含む第1原料混合物を加温し、乳化剤と高級アルコールとを含む第2原料混合物を加温する、加温工程と、
加温された前記第1原料混合物と前記第2原料混合物とを混合することにより、乳化分散液を得る、第1混合工程と、
前記乳化分散液を所定の温度まで低下させた後に、前記乳化分散液に、アゼライン酸を含む第3原料混合物を混合する第2混合工程と、を含み、
前記アゼライン酸は、100μm以下の平均粒径を有する粉末である、製造方法。
【0019】
(10) 前記第3原料混合物は低級アルコールを含有しない、(9)に記載の製造方法。
【0020】
(11) 前記第1原料混合物は、さらに多価アルコールを含有し、
前記第2原料混合物は、さらに油脂を含有する、(9)または(10)に記載の製造方法。
【0021】
(12) 前記加温工程において、
前記第1原料混合物および前記第2原料混合物は、60~90℃まで加温され、
前記第2混合工程において、前記所定の温度は、35~55℃である、(9)~(11)のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、アゼライン酸を高濃度(例えば、10質量%超)で含有する外用組成物であって、長期間に亘るアゼライン酸の分散性(長期安定性)に優れた外用組成物を提供することができる。すなわち、本発明のアゼライン酸を含有する外用組成物は、長期間に亘って離水や成分の分離が生じにくい。
【0023】
本発明においては、アゼライン酸含有組成物中に、乳化剤に加えて、乳化補助剤として高級アルコールを配合することにより、乳化分散を安定的に維持し、アゼライン酸を含有する外用組成物の安定性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】実施例1についての40℃で1ヶ月保存した時点の写真である。
図2】実施例1についての40℃で1ヶ月保存した時点の別の写真である。
図3】比較例1についての40℃で1ヶ月保存した時点の写真である。
図4】比較例1についての40℃で1ヶ月保存した時点の別の写真である。
図5】比較例2についての40℃で1ヶ月保存した時点の写真である。
図6】比較例2についての40℃で1ヶ月保存した時点の別の写真である。
図7】比較例3についての40℃で1ヶ月保存した時点の写真である。
図8】比較例4についての40℃で1ヶ月保存した時点の写真である。
図9】実施例2についての40℃で1ヶ月保存した時点の写真である。
図10】比較例5についての40℃で1ヶ月保存した時点の写真である。
図11】比較例5についての第2混合工程後の状態を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<外用組成物(アゼライン酸含有組成物)>
本発明の外用組成物は、アゼライン酸を含む外用組成物(アゼライン酸含有組成物)である。なお、外用組成物は、好ましくは皮膚外用組成物である。
【0026】
(アゼライン酸)
外用組成物の全量に対するアゼライン酸の含有率は、10質量%超であり、好ましくは15質量%以上、より好ましくは18質量%以上、さらに好ましくは19質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。この範囲内であれば、従来よりも高い皮脂分泌の抑制作用および角化異常の抑制作用を得ることができる。
アゼライン酸の配合率の上限は、特に限定されないが、好ましくは35質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下である。この範囲であれば、アゼライン酸の分散安定性が長期間維持されやすい。
【0027】
本発明に用いられるアゼライン酸の平均粒径は、100μm以下であり、好ましくは70μm以下、より好ましくは50μm以下、さらに好ましくは30μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。この範囲内であれば、ザラツキがなく、使用感の良いアゼライン酸含有組成物を得ることができる。また、アゼライン酸の分散安定性が長期間維持される効果を得ることができる。
アゼライン酸の平均粒径の下限は、特に限定されないが、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上、さらに好ましくは2μm以上である。この範囲内であれば、アゼライン酸の原料粉末の粉塵等の発生が少なく、製造時の取り扱い性が良好である。
【0028】
アゼライン酸の原料粉末の平均粒径は、体積基準の粒度分布における中央値(メディアン径:D50)であり、レーザ回折式粒度分布測定装置(Malvern Panalytical社製「Mastersizer 3000E」)を用いて測定することができる。
【0029】
なお、アゼライン酸の粒径のピークは、好ましくは0.5~100μm、より好ましくは1~50μm、さらに好ましくは2~30μmである。
アゼライン酸の原料粉末の粒径のピークは、体積基準の粒度分布におけるモード径(最頻値)であり、レーザ回折式粒度分布測定装置(Malvern Panalytical社製「Mastersizer 3000E」)を用いて測定することができる。
レーザ回折式粒度分布測定装置(Malvern Panalytical社製「Mastersizer 3000E」)を用いて測定されるアゼライン酸の粒径分布において、90質量%以上(好ましくは95質量%以上)のアゼライン酸粒子の粒径が2~15μmの範囲内であることが好ましい。
【0030】
なお、アゼライン酸は、外用組成物中で基本的に分散状態で(分散質として)存在しているが、部分的に基剤に溶解していてもよい。なお、外用組成物中に含まれるアゼライン酸の平均粒径は、基本的にアゼライン酸の原料粉末の平均粒径と同じである。
【0031】
アゼライン酸は、生理的に許容される塩の形態で用いても良い。すなわち、本明細書において、「アゼライン酸」は、アゼライン酸、および、アゼライン酸の塩の少なくともいずれかを意味する。
アゼライン酸の生理的に許容される塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、アンモニウム塩、メチルアミン塩、ピリジン塩、トリメチルアミン塩、トリエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩などが挙げられる。外用組成物の調製時にアゼライン酸として配合しても、得られる組成物中で、1種、又は2種以上のアゼライン酸塩が生じる場合もある。
【0032】
なお、本明細書において、「アゼライン酸」には、アゼロイルグリシンK等のアゼライン酸誘導体は含まれない。本実施形態の外用組成物は、アゼライン酸とは別に、さらにアゼライン酸誘導体を含んでいてもよい。ただし、皮膚刺激性を抑える観点からは、アゼライン酸誘導体を含まないことが好ましい。
【0033】
(乳化剤)
乳化剤としては、化粧品、医薬部外品、医薬外用剤等に使用される公知の種々の乳化剤を用いることができる。
乳化剤としては、例えば、植物由来乳化剤、脂肪酸モノグリセリド、非イオン性界面活性剤、合成乳化剤、水添レシチン、レシチン、水添リゾレシチン、ジラウロイルグルタミン酸リシンNa、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル(SE)、ミリスチン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル、ステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸水添ヒマシ油、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、PEG-40水添ヒマシ油、PEG-60水添ヒマシ油、PEG-100水添ヒマシ油などが挙げられる。
【0034】
乳化剤は、植物由来乳化剤、脂肪酸モノグリセリド、非イオン性界面活性剤、および、合成乳化剤からなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。乳化剤は、植物由来乳化剤、脂肪酸モノグリセリド、および、非イオン性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。これらの場合、より確実に、長期間に亘りアゼライン酸含有組成物の分散性を維持する効果(長期安定性の向上効果)を得ることができる。
【0035】
植物由来乳化剤としては、例えば、レシチン系乳化剤(水添レシチン、レシチン、水添リゾレシチン、ジラウロイルグルタミン酸リシンNa等)、脂肪酸モノグリセリド(ステアリン酸グリセリル、ベヘン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル(SE)、ミリスチン酸グリセリル、イソステアリン酸グリセリル、オレイン酸グリセリル等)、などが挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン、ステアリン酸水添ヒマシ油、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート65、ポリソルベート80、オクタステアリン酸ポリグリセリル-6、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
合成乳化剤としては、例えば、セテス-2、セテス-6、セテス-7、セテス-10、セテス-15、セテス-20、セテアレス-2、セテアレス-4、セテアレス-20、オレス-7、オレス-10、オレス15、オレス-20などが挙げられる。
【0036】
(高級アルコール)
本明細書において、高級アルコールとは、炭素数が6以上の一価アルコール(R-OH)である。高級アルコールは、直鎖アルコールであることが好ましい。直鎖アルコールは、飽和脂肪族アルコールが好ましいが、不飽和脂肪族アルコールであってもよい。
本発明に用いられる高級アルコールの炭素数は、好ましくは10~30であり、より好ましくは16~26であり、さらに好ましくは18~24である。この範囲であれば、より確実に、長期間に亘りアゼライン酸含有組成物の分散性を維持する効果(長期安定性の向上効果)を得ることができる。
【0037】
飽和脂肪族アルコールとしては、例えば、ベヘニルアルコール(C2246O)、アラキジルアルコール(C2042O)、ステアリルアルコール(C1838O)、セタノール(C1634O)などが挙げられる。なお、これらの飽和脂肪族アルコールを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
外用組成物の全量に対する高級アルコールの含有率(外用組成物全量に対する、外用組成物中に含まれる高級アルコールの量の比率)は、好ましくは0.2~5.0質量%であり、より好ましくは0.5~3.0質量%であり、さらに好ましくは1.0~2.5質量%である。この範囲であれば、より確実に、長期間に亘りアゼライン酸含有組成物の分散性を維持する効果(長期安定性の向上効果)を得ることができる。
【0039】
なお、本実施形態の外用組成物は、アゼライン酸の分散性(製剤安定性)向上の観点からは、エタノール等の低級アルコール(炭素数が5以下の一価アルコール)を含有しないことが好ましい。
【0040】
(pH)
本実施形態の外用組成物のpHは、好ましくは3.0~5.0であり、より好ましくは3.0~4.5であり、さらに好ましくは3.5~4.0である。この範囲であれば、より確実に長期に亘る分散安定性を得ることができる。また、外用組成物の皮膚刺激性も低く抑えられる。
【0041】
pHの調整は、種々の塩基、酸などを用いて行えばよい。塩基としては、例えば、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の無機塩基、および、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の有機塩基が挙げられる。酸としては、例えば、塩酸、硫酸等の無機酸、および、乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウム等の有機酸が挙げられる。なお、酸および塩基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0042】
(多価アルコール)
本実施形態のアゼライン酸含有組成物は、多価アルコールを含んでいてもよい。
多価アルコールとしては、化粧品、医薬部外品、医薬外用剤等に使用される公知の種々の多価アルコールを使用できる。
具体的な多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール(トリメチレングリコール)、1,2-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、2,3-ブチレングリコール、1,4-ブタンジオール(テトラメチレングリコール)、2-ブテン-1,4-ジオール、1,5-ペンタンジオール(ペンタメチレングリコール)、1,2-ペンタンジオール(ペンチレングリコール)、イソプレングリコール(イソペンチルジオール)、ヘキシレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400、ポリエチレングリコール600、ポリエチレングリコール1000、ポリエチレングリコール1500、ポリエチレングリコール1540、ポリエチレングリコール4000、ポリエチレングリコール6000、ポリエチレングリコール20000、及びポリエチレングリコール35000など)、ポリプロピレングリコール(ポリプロピレングリコール700、ポリプロピレングリコール1000、ポリプロピレングリコール2000など)などの2価アルコール;
グリセリン、トリメチロールプロパンなどの3価アルコール;
ジグリセン;およびポリグリセリンなどが挙げられる。
【0043】
これらの中でも、1,3-ブチレングリコール、及び1,2-ペンタンジオールが好適に用いられる。
【0044】
組成物が多価アルコールを含む場合の多価アルコールの含有率(組成物の全量に対する比率)は、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、さらに好ましくは5質量%以上である。この範囲であれば、長期間に亘りアゼライン酸含有組成物の分散性を維持する効果(長期安定性の向上効果)を得ることができる。
また、組成物が多価アルコールを含む場合の多価アルコールの含有率は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは20質量%以下である。この範囲であれば、べたつきの無い良好な使用感が得られる。
【0045】
(基剤又は担体)
外用組成物は、上記の多価アルコール以外の基剤又は担体を含み得る。
基剤または担体としては、化粧品、医薬部外品または医薬品の基剤または担体として公知のものが用いられる。
【0046】
このような公知の基剤又は担体として、例えば、スクワラン、ドデカン、流動パラフィン、ワセリン、ゲル化炭化水素(プラスチベースなど)、オゾケライト、α-オレフィンオリゴマー、及び軽質流動パラフィンのような炭化水素;メチルポリシロキサン、架橋型メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン、架橋型アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、架橋型ポリエーテル変性シリコーン、架橋型アルキルポリエーテル変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリグリセリン変性シリコーン、ポリエーテル変性分岐シリコーン、ポリグリセリン変性分岐シリコーン、アクリルシリコン、フェニル変性シリコーン、及びシリコーンレジンのようなシリコーン油;セタノール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、及びベヘニルアルコールのような高級アルコール;コレステロール、フィトステロール、及びヒドロキシステアリン酸フィトステリルのようなステロール類;ホホバ油、メドフォーム油、ヒマワリ油、ブドウ種子油、椿油、スクワラン、シアバター、及びコメ胚芽油のような植物油;ラノリン、オレンジラフィー油、スクワラン、及び馬油のような動物油;エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カチオン化グアガム、及びアセチル化ヒアルロン酸のような天然高分子誘導体;ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、及びアクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体のような合成高分子;カラギーナン、アルギン酸、セルロース、グアーガム、クインスシード、デキストラン、ジェランガム、及びヒアルロン酸のような天然高分子;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ラウリン酸メチルヘプチル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリット、ホホバ油、及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルのようなエステル類;デキストリン、及びマルトデキストリンのような多糖類;コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、及びクエン酸などの有機酸;水などの水系基剤などが挙げられる。
【0047】
ただし、昨今の消費者動向として、アクリル系ポリマー等の合成高分子を配合しない製剤が好まれやすい傾向があるため、本発明の外用組成物は、アクリル系ポリマー、アクリル系コポリマー等を含有しないことが好ましい。
【0048】
(添加剤)
外用組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、化粧品、医薬部外品、又は医薬品に添加される公知の添加剤を添加することができる。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、界面活性剤、増粘剤(例えば、ヒドロキシエチルセルロース)、保存剤、pH調整剤、安定化剤、刺激軽減剤、防腐剤、着色剤、香料、パール光沢付与剤等が挙げられる。なお、本実施形態の外用組成物は、添加剤を含有しないか、添加剤の含有量が少量であることが好ましい。
【0049】
(その他の有効成分)
本発明の外用組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の有効成分を含むことができる。有効成分の具体例としては、例えば、保湿成分(例えば、ヒアルロン酸Na)、抗炎症成分(例えば、グリチルリチン酸ジカリウム)、抗菌又は殺菌成分、ビタミン類、ペプチド又はその誘導体、細胞賦活化成分、老化防止成分、血行促進成分、角質軟化成分、美白成分、収斂成分、及び紫外線防御成分などが挙げられる。
【0050】
(製剤形態)
本発明の外用組成物は、化粧品、医薬部外品、又は医薬品用の製剤とすることができる。
【0051】
外用組成物の製剤形態としては、特に限定されず、例えば、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤、スティック剤、及び不織布に薬液を含浸させたシート剤などが挙げられる。これらの製剤は、例えば、医薬品に関する日本薬局方製剤総則に記載の方法に準じて製造することができる。中でも、アゼラスチン酸の分散性の観点からは、クリーム剤が好ましい。
クリーム剤、及び乳剤のように、油性基剤と水性基剤とを含む場合は、W/O型でもよく、O/W型でもよいが、O/W型が好ましい。
外用組成物の用途としては具体的には、例えば、化粧水、乳液、ジェル、クリーム、美容液、日焼け止め剤、パック、マスク、ハンドクリーム、ボディローション、及びボディークリームのような基礎化粧料;洗顔料、メイク落とし、ひげそり剤、ボディーシャンプー、シャンプー、リンス、及びトリートメントのような洗浄用化粧料;リップクリーム、及び口紅などの口唇用化粧料;除毛剤;並びに浴用剤などが挙げられる。
【0052】
<製造方法>
本発明は、10質量%超のアゼライン酸を含有する外用組成物の製造方法にも関する。
本実施形態の製造方法は、
水を含む第1原料混合物を加温し、乳化剤と高級アルコールとを含む第2原料混合物を加温する、加温工程と、
加温された前記第1原料混合物と前記第2原料混合物とを混合することにより、乳化分散液を得る、第1混合工程と、
前記乳化分散液を所定の温度まで低下させた後に、前記乳化分散液に、アゼライン酸を含む第3原料混合物を混合する第2混合工程と、を含む。
【0053】
本実施形態の製造方法においては、アゼライン酸として、上述の平均粒径(100μm以下)を有するアゼライン酸の粉末を使用することが好ましい。これにより、より確実に、長期間に亘り分散性を維持することのできる(長期安定性の高い)をアゼライン酸含有組成物を得ることができる。
【0054】
第3原料混合物は、低級アルコールを含有しないことが好ましい。
通常は、低級アルコールはアゼライン酸の分散補助に働くと考えられ、アゼライン酸の濃度が低い場合は、低級アルコールの配合によりアゼラスチン酸の分散性は向上すると考えられる。しかし、本発明者らの検討により、アゼライン酸の濃度が高くなると、むしろ低級アルコールの配合がアゼライン酸の分散性を低下させてしまうことが分かった。このメカニズムの詳細は不明であるが、例えば、低級アルコールが処方系(乳化系)を壊すことにより、アゼライン酸の分散性を低下してしまうと考えられる。
【0055】
第1原料混合物は、さらに多価アルコールを含有することが好ましい。すなわち、第1原料混合物は、水と多価アルコールとを含有することが好ましい。これにより、より確実に、長期間に亘り分散性を維持することのできる(長期安定性の高い)をアゼライン酸含有組成物を得ることができる。
第1原料混合物は、さらに増粘剤(ヒドロキシエチルセルロース等)を含んでいてもよい。
【0056】
第2原料混合物は、さらに油脂を含有することが好ましい。すなわち、第2原料混合物は、乳化剤と高級アルコールと油脂とを含有することが好ましい。これにより、より確実に、長期間に亘り分散性を維持することのできる(長期安定性の高い)をアゼライン酸含有組成物を得ることができる。油脂としては、例えば、エステル類(ラウリン酸メチルヘプチル等)などが挙げられる。
第2原料混合物は、さらに炭化水素を含有してもよい。炭化水素としては、スクワラン、ドデカンなどが挙げられる。
【0057】
上記の加温工程において、第1原料混合物および第2原料混合物は、60~90℃まで加温されることが好ましい。
上記の第2混合工程において、所定の温度は、好ましくは35~55℃である。
このような温度で加温工程および第2混合工程が実施されることで、より確実に、長期間に亘り分散性を維持することのできる(長期安定性の高い)をアゼライン酸含有組成物を得ることができる。
【実施例0058】
以下、本発明の実施例等について説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0059】
(実施例1)
実施例1として、20質量%のアゼライン酸と、乳化剤、高級アルコール等と、を含有する外用組成物を調製した。
具体的には、下記表1に示すA成分の混合物(第1混合物)およびB成分の混合物(第2混合物)の各々を70~80℃の範囲内の温度まで加温した。〔加温工程〕
その後、加温されたB成分にA成分を加え、プライミクス社製ホモミキサ―MARK IIを用いて3000~5000rpmで5~10分間の混合操作を行うことにより、各成分を乳化分散させた。〔第1混合工程〕
その後、得られた乳化分散液を冷却した。乳化分散液の温度が50~40℃の範囲内の温度まで低下した時点で、乳化分散液にC成分の混合物(第3原料混合物)を加え、上記と同様の混合操作により各成分を分散させた。充分に分散させ、30℃以下で終了した。〔第2混合工程〕
以上の操作により、実施例1の外用組成物(クリーム製剤)が調製された。
【0060】
なお、表1に示される各成分の詳細は、以下のとおりである。また、表中の数値は外用組成物中の各成分の含有率(質量%)を示す。
<A成分>
・精製水
・Ag-P水: 「Ag-P水」(進栄化学株式会社)
・ヒドロキシエチルセルロース: 「SANHEC HH」(三晶株式会社)
・ヒアルロン酸Na: 「ヒアルロンサンHA-LQ」(キユーピー株式会社)
・グリチルリチン酸ジカリウム
・1,3-ブチレングリコール: 「BRONTIDE SKY」(Genomatica社)
・1,2-ペンタンジオール: 「GREEN PENTANE DIOR」(株式会社GSIクレオス)
<B成分>
・1,3-ブチレングリコール: 「BRONTIDE SKY」(Genomatica社)
・スクワラン: 「シュガースクワラン(登録商標)」(日光ケミカルズ株式会社)
・ラウリン酸メチルヘプチル: 「NIKKOL GS-MHL」(日光ケミカルズ株式会社)
・ドデカン: 「PARAFOL(登録商標) 12 RSPO-MB」(SASOL Germany GmbH)
・水添レシチン(乳化剤): 「NIKKOLレシノールS-10E」(日光ケミカルズ株式会社)
・ステアリン酸グリセリル(乳化剤): 「NIKKOL MGS-BV2」(日光ケミカルズ株式会社)
・ベヘン酸グリセリル(乳化剤)、オクタステアリン酸ポリグリセリル-6(乳化剤): 「TAISET 50-C」(太陽化学株式会社)〈植物性ゲル化剤〉
・ベヘニルアルコール(高級アルコール)
<C成分>
アゼライン酸: 「アゼライックアシッド」(エイチ・ホルスタイン社)
エタノール: 無水エタノール
ジエチレングリコールモノエチルエーテル: 「TRANSCUTOL CG」(ガテフォッセ社)
ハーブブレンド: 「MultiEX BSASM (ECO)」(カモミール、イタドリ、チャ樹、ツボクサ、コガネバナ、ローズマリー、及びスペイン甘草の抗炎症ハーブ7種のブレンド)(株式会社GSIクレオス)
【0061】
なお、上記B成分の「ドデカン」は、下式で示される飽和直鎖アルカンである。
【0062】
【化1】
【0063】
また、上記C成分のアゼライン酸(「アゼライックアシッド」:エイチ・ホルスタイン社)の平均粒径(D50)の実測値は11.85μmであり、粒径のピーク(モード径)の実測値は16.40μmである。
【0064】
(比較例1~4)
比較例1~4は、各成分の組成が表1に示されるように実施例1とは異なる。それ以外の点は実施例1と同様にして、比較例1~4の外用組成物を調製した。
なお、比較例1は、エタノールを含有する点で、実施例1とは異なる。
なお、比較例2は、ベヘニルアルコールを含有しない点で、実施例1とは異なる。
なお、比較例3は、ベヘニルアルコールを含有しない点、および、エタノールを含有する点で、実施例1とは異なる。
なお、比較例4は、ベヘニルアルコールを含有しない点、並びに、エタノールおよびジエチレングリコールモノエチルエーテルを含有する点で、実施例1とは異なる。
【0065】
(実施例2、比較例5)
実施例2では、アゼライン酸として、平均粒径(D50)の実測値が50μmのアゼライン酸(「SpecKare ALA」、Spec-Chem Industry Inc.)を用いた。
比較例5では、アゼライン酸として、平均粒径(D50)の実測値が160μmのアゼライン酸(キシダ化学株式会社製のアゼライン酸を粉砕したもの)を用いた。
それ以外の点は実施例1と同様にして、実施例2および比較例5の外用組成物を調製した。
【0066】
【表1】
【0067】
<分散安定性の確認試験>
上記の実施例1、2および比較例1~5で得られたアゼライン酸を含有する外用組成物の分散性の安定性を確認する試験を行った。
具体的には、実施例1、2および比較例1~5の各々の外用組成物について、常温で1ヶ月保存した時点、40℃で2週間保存した時点、および、40℃で1ヶ月保存した時点で、目視により離水および成分の分離の有無を確認した。
確認の結果を表2に示す。なお、表中の記号の意味は、以下の通りである。
〇:離水および分離が確認されなかった。
△:離水および/または分離が僅かに確認された。
×:離水および/または分離が確認された。
なお、図1図10に、実施例および比較例の各組成物について、40℃で1ヶ月保存した時点の写真を示す。図中の点線で囲まれた部分に離水または分離が確認された。
【0068】
【表2】
【0069】
表2に示されるように、高級アルコール(ベヘニルアルコール)を含有し、且つ、低級アルコール(エタノール)を含有しない実施例1、2(比較例5)の外用組成物では、40℃で1ヶ月保存した場合でも離水および分離は確認されなかった。
これに対して、高級アルコール(ベヘニルアルコール)を含有しない点以外は実施例1と同様の比較例2の外用組成物では、40℃で1ヶ月保存した場合に離水および分離が僅かに確認された。
したがって、乳化剤等に加えて高級アルコールを配合することで、アゼライン酸を含有する外用組成物の分散安定性が向上すると考えられる。
【0070】
また、高級アルコールを含有し、さらに低級アルコールも含有する比較例1の外用組成物では、40℃で1ヶ月保存した場合に離水および分離が僅かに確認された。
このことから、乳化剤等に加えて高級アルコールを配合したアゼライン酸含有組成物においては、低級アルコールを配合しない方が、組成物の分散安定性が向上すると考えられる。
【0071】
また、乳化剤を含有し高級アルコールは含有していない比較例2~4の外用組成物について、さらに低級アルコールが配合された比較例3、および、さらに低級アルコールとグリコールエーテル(ジエチレングリコールモノエチルエーテル)とが配合された比較例4では、40℃で1ヶ月保存した場合に、比較例2よりも明らかな離水および分離が確認された。
この結果から、乳化剤等に加えて高級アルコールが配合された実施例1の外用組成物における分散安定性の向上効果は、高級アルコールの配合によって奏されるものであり、可溶化剤として使用されることのある低級アルコールやグリコールエーテル等を配合しても、実施例1と同様の分散安定性の向上効果は得られないことが分かる。
【0072】
<皮膚刺激性の確認試験>
上記実施例1の外用組成物(アゼライン酸含有組成物)について、皮膚刺激性(安全性)に関する確認試験を行った。なお、参照として、生理食塩液、注射用水、白色ワセリンについても同様の試験をおこなった。
具体的には、須貝哲郎、香粧品科学、Vol.19、臨時増刊、49-56(1995)に記載される24時間閉塞パッチテスト(被験者数:20名)を実施した。パッチテストの判定基準は表3に示すとおりである。以下の判定基準に示す評点の20名分の合計点を皮膚刺激指数とした。皮膚刺激指数に基づく分類を表4に示す。
試験結果を表5に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【表5】
【0076】
表5に示されるように、実施例1の外用組成物は、注射用水と同レベルの皮膚刺激性の低い(安全性の高い)ものであることが確認された。なお、皮膚刺激指数が15.0以下である組成物(表4の分類における安全品および許容品)は、製品として許容され得るところ、実施例1の外用組成物は皮膚刺激性が2.5であり、極めて安全性の高いものである。
【0077】
なお、実施例2の外用組成物(アゼライン酸含有組成物)については、ザラツキもなく、使用感も良好であることが確認された。
一方、比較例5の外用組成物は、混合物として調製できたものの、図11の写真に示されるように粒が残り、ザラツキがあり、使用感が悪いことが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11