(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161028
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】車両用スパッツ装置
(51)【国際特許分類】
B62D 37/02 20060101AFI20231026BHJP
【FI】
B62D37/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149862
(22)【出願日】2023-09-15
(62)【分割の表示】P 2020022371の分割
【原出願日】2020-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2019205379
(32)【優先日】2019-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】舘 亮太
(72)【発明者】
【氏名】堀 健二
(72)【発明者】
【氏名】内田 修平
(57)【要約】
【課題】スパッツの姿勢を安定化できる車両用スパッツ装置を提供する。
【解決手段】スパッツ装置20は、第1回動軸72に回動可能に支持され、展開位置及び格納位置の間で変位するスパッツ40と、アクチュエータの動力をスパッツ40に伝達する第1リンクユニット50と、を備える。第1リンクユニット50は、アクチュエータの駆動時に駆動軸71と一体に回動する駆動リンク51と、第2回動軸73を介してスパッツ40に連結されるとともに第3回動軸74を介して駆動リンク51に連結される中間リンク52と、有する。駆動リンク51は、スパッツ40を格納位置に配置する第1位置及びスパッツを展開位置に配置する第2位置の間を駆動軸71回りに回動し、第2回動軸73及び第3回動軸74を結ぶ線分上に駆動軸が位置するときの駆動リンク51の位置を第1中立位置としたとき、第1位置は、第1中立位置よりも第1回動方向R1に回動した位置である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両幅方向を軸方向とする第1回動軸及び車両幅方向を軸方向とする第2回動軸に回動可能に支持され、車輪の前方の空間に展開する展開位置と前記車輪の前方の空間から退避する格納位置との間で変位可能に構成されたスパッツと、
前記第1回動軸を介して前記スパッツに連結される第1リンクと、
前記第2回動軸を介して前記スパッツに連結される第2リンクと、
前記スパッツに動力を伝達するアクチュエータと、
前記アクチュエータを制御する制御部と、を備え、
前記第1リンク及び前記第2リンクは、前記スパッツが前記展開位置に位置する場合には、前記スパッツが前記格納位置に位置する場合よりも、前記第1回動軸及び前記第2回動軸を車両後方に移動させる
車両用スパッツ装置。
【請求項2】
前記第1リンク及び前記第2リンクを回動可能に支持するハウジングを備え、
前記第1リンク及び前記第2リンクは、前記ハウジングと前記スパッツとともに4節リンク機構を構成し、
前記第1リンク及び前記第2リンクにより前記スパッツを前記格納位置と前記展開位置との間で変位させる際に、前記第2リンクの回動量は、前記第1リンクの回動量よりも大きく設定されている
請求項1に記載の車両用スパッツ装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記アクチュエータを制御して前記第2リンクを回動させ、前記スパッツを前記展開位置と前記格納位置との間で変位させる
請求項2に記載の車両用スパッツ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用スパッツ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両走行時のタイヤ周辺の気流を整える車両用スパッツ装置が知られている。例えば、特許文献1には、矩形板状をなすスパッツと、スパッツの上端部を支持する第1スライドレールと、スパッツの下端部を支持する第2スライドレールと、を備える車両用スパッツ装置が記載されている。
【0003】
車両用スパッツ装置は、車両の加減速時に作用する慣性力により、スパッツの前端部を第1スライドレールに沿って移動させるとともに、スパッツの後端部を第2スライドレールに沿って移動させる。詳しくは、車両用スパッツ装置は、車両の加速時には、スパッツがタイヤの前方の空間に展開する展開状態となり、車両の減速時には、スパッツがタイヤの前方の空間から上方に退避する収納状態となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、車両幅方向を軸方向とする第1回動軸及び車両幅方向を軸方向とする第2回動軸に回動可能に支持され、車輪の前方の空間に展開する展開位置と前記車輪の前方の空間から退避する格納位置との間で変位可能に構成されたスパッツと、前記第1回動軸を介して前記スパッツに連結される第1リンクと、前記第2回動軸を介して前記スパッツに連結される第2リンクと、前記スパッツに動力を伝達するアクチュエータと、前記アクチュエータを制御する制御部と、を備え、前記第1リンク及び前記第2リンクは、前記スパッツが前記展開位置に位置する場合には、前記スパッツが前記格納位置に位置する場合よりも、前記第1回動軸及び前記第2回動軸を車両後方に移動させる車両用スパッツ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する車両用スパッツ装置は、車両幅方向を軸方向とする第1回動軸及び車両幅方向を軸方向とする第2回動軸に回動可能に支持され、車輪の前方の空間に展開する展開位置と前記車輪の前方の空間から退避する格納位置との間で変位可能に構成されたスパッツと、前記第1回動軸を介して前記スパッツに連結される第1リンクと、前記第2回動軸を介して前記スパッツに連結される第2リンクと、前記スパッツに動力を伝達するアクチュエータと、前記アクチュエータを制御する制御部と、を備え、前記第1リンク及び前記第2リンクは、前記スパッツが前記展開位置に位置する場合には、前記スパッツが前記格納位置に位置する場合よりも、前記第1回動軸及び前記第2回動軸を車両後方に移動させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、車両幅方向を軸方向とする第1回動軸及び車両幅方向を軸方向とする第2回動軸に回動可能に支持され、車輪の前方の空間に展開する展開位置と前記車輪の前方の空間から退避する格納位置との間で変位可能に構成されたスパッツと、前記第1回動軸を介して前記スパッツに連結される第1リンクと、前記第2回動軸を介して前記スパッツに連結される第2リンクと、前記スパッツに動力を伝達するアクチュエータと、前記アクチュエータを制御する制御部と、を備え、前記第1リンク及び前記第2リンクは、前記スパッツが前記展開位置に位置する場合には、前記スパッツが前記格納位置に位置する場合よりも、前記第1回動軸及び前記第2回動軸を車両後方に移動させる車両用スパッツ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の車両用スパッツ装置を備える車両の模式図。
【
図2】第1実施形態において、スパッツが格納位置に配置される車両用スパッツ装置を前方から見たときの斜視図。
【
図3】第1実施形態において、スパッツが格納位置に配置される車両用スパッツ装置を後方から見たときの斜視図。
【
図4】第1実施形態において、スパッツが格納位置に配置される車両用スパッツ装置の側面図。
【
図5】第1実施形態において、スパッツが展開位置に配置される車両用スパッツ装置の側面図。
【
図6】第1実施形態において、スパッツが展開準備位置に配置される車両用スパッツ装置の側面図。
【
図7】第1実施形態において、スパッツが格納準備位置に配置される車両用スパッツ装置の側面図。
【
図8】第1実施形態において、スパッツが展開位置に配置される車両用スパッツ装置を前方から見たときの斜視図。
【
図9】第1実施形態において、スパッツが展開位置に配置される車両用スパッツ装置を後方から見たときの斜視図。
【
図10】第1実施形態において、スパッツを展開作動させるために制御装置が実行する処理の流れを示すフローチャート。
【
図11】第1実施形態において、スパッツを格納作動させるために制御装置が実行する処理の流れを示すフローチャート。
【
図12】第2実施形態において、スパッツが格納位置に配置される車両用スパッツ装置の側面図。
【
図13】第2実施形態において、スパッツが展開位置に配置される車両用スパッツ装置の側面図。
【
図14】第2実施形態において、スパッツが展開準備位置に配置される車両用スパッツ装置の側面図。
【
図15】第2実施形態において、スパッツが格納準備位置に配置される車両用スパッツ装置の側面図。
【
図16】第3実施形態の車両用スパッツ装置の分解斜視図。
【
図18】第3実施形態において、スパッツが格納位置に配置される車両用スパッツ装置の側面図。
【
図19】第3実施形態において、スパッツが展開位置に配置される車両用スパッツ装置の側面図。
【
図20】第3実施形態において、第2回動軸がスパッツの第1摺動溝の上端に位置するときの車両用スパッツの側面図。
【
図21】第3実施形態において、第2回動軸がスパッツの第1摺動溝及び第2摺動溝の境界に位置するときの車両用スパッツの側面図。
【
図22】第3実施形態において、第2回動軸がスパッツの第2摺動軸の下端に位置するときの車両用スパッツの側面図。
【
図23】第3実施形態において、押圧部がスパッツに接触するときの車両用スパッツの側面図。
【
図24】第4実施形態の車両用スパッツ装置の分解斜視図。
【
図26】第4実施形態において、スパッツが格納位置に配置される車両用スパッツ装置の側面図。
【
図27】第4実施形態において、スパッツが展開位置に配置される車両用スパッツ装置の側面図。
【
図28】第4実施形態において、第2回動軸がスパッツの摺動溝の上端に位置するときの車両用スパッツの側面図。
【
図29】第4実施形態において、第2回動軸がスパッツの摺動溝の下端に位置するときの車両用スパッツの側面図。
【
図30】第4実施形態において、押圧部がスパッツに接触するときの車両用スパッツの側面図。
【
図31】変更例に係る車両用スパッツの概略構成を示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態に係る車両用スパッツ装置(以下、「スパッツ装置」ともいう。)を備える車両について図面を参照しつつ説明する。
【0010】
図1に示すように、車両10は、タイヤハウス11を有する車体12と、タイヤハウス11に収まる車輪13と、車速を検出する車速センサ14と、車両走行時における車輪13の周辺の気流を整流するスパッツ装置20と、を備える。
【0011】
図2及び
図3に示すように、スパッツ装置20は、ハウジング30と、スパッツ40と、第1リンクユニット50と、第2リンクユニット60と、駆動軸71と、複数の回動軸72~74と、複数の支持軸75,76と、アクチュエータ80と、を備える。また、
図1に示すように、スパッツ装置20は、制御装置90を備える。
【0012】
以降の説明では、スパッツ装置20の方向を車両10に搭載された状態での方向を用いる。また、車両前後方向を単に前後方向ともいい、車両幅方向を単に幅方向ともいい、車両上下方向を単に上下方向ともいう。前後方向、幅方向及び上下方向は互いに直交している。さらに、前後方向に延びる軸をX軸で示し、幅方向に延びる軸をY軸で示し、上下方向に延びる軸をZ軸で示す。
【0013】
第1実施形態において、スパッツ装置20から制御装置90を除く部分をスパッツ装置20の機構部分としたとき、スパッツ装置20の機構部分は、右前輪の前方及び左前輪の前方に幅方向に対をなすようにそれぞれ配置される。右前輪に対応するスパッツ装置20の機構部分と左前輪に対応するスパッツ装置20の機構部分とは、左右対称な形状をなしている。このため、以降の説明では、右前輪に対応するスパッツ装置20の機構部分について説明し、左前輪に対応するスパッツ装置20の機構部分についての説明を省略する。
【0014】
図2及び
図3に示すように、ハウジング30は、スパッツ装置20の構成部品の一部を収容する。
図4に示すように、ハウジング30は、第1リンクユニット50の回動範囲を制限する第1規制壁31及び第2規制壁32を有する。
図2及び
図3に示すように、ハウジング30は、車体12に対する取付部位となる複数のフランジ33を有する。ハウジング30は、ボルト及びナットなどの締結部材により、車体12に固定される。ハウジング30は、駆動軸71、第1支持軸75及び第2支持軸76を支持する。このとき、駆動軸71、第1支持軸75及び第2支持軸76の軸方向は、幅方向となる。
【0015】
図4に示すように、スパッツ40は、車両走行時の車輪13の周辺の気流を整流する整流部41と、第2リンクユニット60と連結される前側固定部42と、第1リンクユニット50及び第2リンクユニット60と連結される後側固定部43と、を有する。
【0016】
整流部41は、スパッツ40が車輪13の前方の空間に展開する展開位置に配置される場合、後方に進むにつれて下方に傾斜したり、後方に進むにつれて幅方向に傾斜したりすることが好ましい。整流部41は、スパッツ40が車輪13の前方の空間から退避する格納位置に配置される場合、スパッツ40が展開位置に配置される場合よりも、車体12から下方への突出量が少なくなる。また、前側固定部42は、幅方向を軸方向とする第1回動軸72に回動可能に支持され、後側固定部43は、幅方向を軸方向とする第2回動軸73に回動可能に支持される。
【0017】
図4に示すように、第1リンクユニット50は、駆動軸71と一体に回動する駆動リンク51と、スパッツ40と駆動リンク51とを連結する中間リンク52と、を有する。第1リンクユニット50は、アクチュエータ80の動力をスパッツ40に伝達するための構成である。
【0018】
図3に示すように、駆動リンク51は、幅方向に延びる軸部511と、軸部511の両端部から幅方向と直交する方向に延びる一対のリンク要素512と、を含む。つまり、駆動リンク51は、一対のリンク要素512の間に、中間リンク52を収めるための隙間を含む。軸部511は、幅方向に駆動軸71が挿通される状態で、駆動軸71と一体とされる。
【0019】
図4に示すように、中間リンク52は、幅方向における側面視において、駆動リンク51よりも長く、略L字状に湾曲している。中間リンク52の第1端は、幅方向を軸方向とする第2回動軸73によりスパッツ40の後側固定部43と相対回転可能に連結され、中間リンク52の第2端は、幅方向を軸方向とする第3回動軸74により駆動リンク51と相対回転可能に連結される。このとき、中間リンク52の第2端は、駆動リンク51の一対のリンク要素512における先端部の間に配置される。
【0020】
図4に示すように、第2リンクユニット60は、ハウジング30の前部とスパッツ40の前部とを連結する第1補助リンク61と、ハウジング30の後部とスパッツ40の後部とを連結する第2補助リンク62と、を有する。
【0021】
第1補助リンク61は、棒状をなしている。第1補助リンク61の第1端は、幅方向を軸方向とする第1支持軸75によりハウジング30の前部と相対回転可能に連結され、第1補助リンク61の第2端は、幅方向を軸方向とする第2支持軸76によりスパッツ40の前側固定部42と相対回転可能に連結される。
【0022】
図3に示すように、第2補助リンク62は、幅方向に延びる軸部621と、軸部621の両端部から幅方向と直交する方向に延びる一対のリンク要素622と、を含む。つまり、第2補助リンク62は、駆動リンク51と同様に、一対のリンク要素622の間に中間リンク52を収めるための隙間を含む。
図4に示すように、第2補助リンク62の第1端は、幅方向を軸方向とする第2支持軸76によりハウジング30の後部に連結され、第2補助リンク62の第2端は、第2回動軸73により、中間リンク52の第2端とともにスパッツ40の後側固定部43と相対回転可能に連結される。このとき、第2補助リンク62の軸部621に第2支持軸76が挿通され、第2補助リンク62の一対のリンク要素622における先端部の間に中間リンク52の第1端が配置される。
【0023】
本実施形態では、第1リンクユニット50は、ハウジング30とスパッツ40と第2リンクユニット60の第1補助リンク61とともに5節リンク機構を構成し、第2リンクユニット60は、ハウジング30とスパッツ40とともに4節リンク機構を構成する。5節リンク機構と4節リンク機構とは、ハウジング30とスパッツ40と第1補助リンク61とを共有している。
【0024】
4節リンク機構において、第1補助リンク61が第1支持軸75回りに揺動すると、第2補助リンク62が第2支持軸76回りに揺動する。また、5節リンク機構において、駆動リンク51が駆動軸71回りに揺動すると、スパッツ40が第1回動軸72回りに回動する。
【0025】
アクチュエータ80は、例えば、電力の供給により駆動する電気モータと、電気モータの出力軸の回転速度を減速する減速機と、を含んで構成される。
図2に示すように、アクチュエータ80は、ハウジング30の側面に固定される。アクチュエータ80は、駆動軸71に連結される。
【0026】
次に、
図4~
図9を参照して、スパッツ装置20の作用について説明する。
図4は、スパッツ40が格納位置に配置される場合のスパッツ装置20を示している。以降の説明では、スパッツ40が格納位置に配置されるときの駆動リンク51の位置を「第1位置」とする。第1位置は、駆動リンク51が駆動軸71回りに最も第1回動方向R1に回動した位置であって、駆動リンク51がハウジング30の第1規制壁31に接触するときの位置である。
【0027】
駆動リンク51が第1位置に位置する場合、駆動リンク51は、第3回動軸74を駆動軸71よりも前方且つ上方に配置する。つまり、駆動リンク51は、中間リンク52を前方かつ上方に引き上げる。このため、中間リンク52と連結されるスパッツ40も後部が上方に変位した格納位置に配置される。こうして、
図2及び
図3に示すように、スパッツ40が格納位置に配置される場合、スパッツ40の大部分がハウジング30に格納される。
【0028】
中間リンク52の第2端寄りの部分は、幅方向における側面視において、駆動リンク51の一対のリンク要素512の間に配置される。また、スパッツ40が格納位置に配置される場合、中間リンク52が湾曲する方向は、駆動軸71から離れる方向となる。こうして、駆動軸71が第1位置に位置する場合であっても、中間リンク52は、駆動リンク51と駆動軸71とに干渉しない。
【0029】
第1補助リンク61は、その回動範囲において、第1回動軸72を最も前方に配置し、第2補助リンク62は、その回動範囲において、第2回動軸73を最も前方且つ上方に配置する。このため、スパッツ40は、格納位置において、前側固定部42が前方に位置するとともに、後側固定部43が前方且つ上方に位置する。
【0030】
また、駆動リンク51が第1位置に位置する場合、駆動軸71は、幅方向における側面視において、第2回動軸73及び第3回動軸74を結ぶ線分上に位置しない。言い換えれば、駆動軸71及び第2回動軸73を通る直線と駆動軸71及び第3回動軸74を通る直線とは交差する。
【0031】
図5は、スパッツ40が展開位置に配置される場合のスパッツ装置20を示している。以降の説明では、スパッツ40が展開位置に配置されるときの駆動リンク51の位置を「第2位置」とする。第2位置は、駆動リンク51が駆動軸71回りに最も第2回動方向R2に回動した位置であって、駆動リンク51がハウジング30の第2規制壁32に接触するときの位置である。
【0032】
駆動リンク51が第2位置に位置する場合、駆動リンク51は、第3回動軸74を駆動軸71よりも後方且つ下方に配置する。つまり、駆動リンク51は、中間リンク52を後方かつ下方に押し下げる。このため、中間リンク52と連結されるスパッツ40も後部が下方に変位した展開位置に配置される。こうして、
図8及び
図9に示すように、スパッツ40が展開位置に配置される場合、スパッツ40の大部分がハウジング30から露出する。
【0033】
中間リンク52の第1端寄りの部分は、幅方向における側面視において、第2補助リンク62の一対のリンク要素622の間に配置される。このため、駆動軸71が第2位置に位置する場合であっても、中間リンク52は、第2補助リンク62と干渉しない。
【0034】
第1補助リンク61は、その回動範囲において、第1回動軸72を最も後方に配置し、第2補助リンク62は、その回動範囲において、第2回動軸73を最も後方且つ下方に配置する。言い換えれば、第2リンクユニット60は、スパッツ40が展開位置に配置される場合には、スパッツ40が格納位置に配置される場合よりも第1回動軸72及び第2回動軸73を後方に移動させる。このため、スパッツ40は、展開位置において、前側固定部42が後方に位置するとともに、後側固定部43が後方且つ下方に位置する。つまり、格納位置から展開位置に変位する際、スパッツ40は、後方に移動することで前後方向における車輪13との距離が短くなる。
【0035】
また、駆動リンク51が第2位置に位置する場合、第3回動軸74は、幅方向における側面視において、駆動軸71及び第2回動軸73を結ぶ線分上に位置しない。言い換えれば、駆動軸71及び第3回動軸74を通る直線と第2回動軸73及び第3回動軸74を通る直線とは交差する。
【0036】
また、本実施形態のスパッツ装置20は、駆動リンク51が第1位置及び第2位置の間で回動する際に、
図6及び
図7に示す位置を取る。
図6は、駆動リンク51が第1位置から第2回動方向R2に僅かに回動した状態であって、幅方向における側面視において、駆動軸71、第2回動軸73及び第3回動軸74が直線上に並ぶときのスパッツ装置20を示している。以降の説明では、幅方向における側面視において、駆動軸71、第2回動軸73及び第3回動軸74が直線上に並ぶときの駆動リンク51の位置を「第1中立位置」という。駆動リンク51が第1中立位置に位置する場合には、幅方向における側面視において、第2回動軸73及び第3回動軸74を結ぶ線分上に駆動軸71が位置している。
【0037】
駆動リンク51の第1位置から第1中立位置までの回動量は僅かである。このため、駆動リンク51が第1中立位置に位置する場合には、駆動リンク51が第1位置に位置する場合と、中間リンク52、第1補助リンク61及び第2補助リンク62の位置及び姿勢が略変化しない。つまり、スパッツ40は、格納位置から略変位していない。以降の説明では、駆動リンク51が第1中立位置に位置するときのスパッツ40の位置を「展開準備位置」という。
【0038】
また、
図4及び
図6に示すように、駆動リンク51の第1位置及び第1中立位置を比較すると、第1位置は、第1中立位置よりも駆動リンク51が第1回動方向R1に回動した位置であるといえる。
【0039】
ここで、駆動リンク51が第1中立位置よりも第2回動方向R2に僅かに回動した位置を第1位置とする比較例のスパッツ装置を想定する。この場合、スパッツ40に自重及び衝撃などが作用することに伴い、スパッツ40が第1回動軸72を中心に格納位置から展開位置に向けて回動しようとすると、駆動リンク51に駆動リンク51を第2回動方向R2に回動させるモーメントが作用する。つまり、比較例の場合、スパッツ40を格納位置に留めたいにも関わらずスパッツ40が展開位置に向かって変位するおそれがある。
【0040】
この点、本実施形態のスパッツ装置20は、駆動リンク51が第1中立位置よりも第1回動方向R1に僅かに回動した位置を第1位置とする。このため、スパッツ40が第1回動軸72を中心に格納位置から展開位置に向けて回動しようとしても、駆動リンク51に駆動リンク51を第2回動方向R2に回動させるモーメントが作用しない。つまり、スパッツ装置20は、駆動リンク51が第1位置に位置する場合に、スパッツ40を格納位置に留めやすくなっている。以降の説明では、駆動リンク51が第1中立位置よりも第1回動方向R1に回動することを、「駆動リンク51がターンオーバーする」ともいう。
【0041】
図7は、駆動リンク51が第2位置から第1回動方向R1に僅かに回動した状態であって、幅方向における側面視において、駆動軸71、第2回動軸73及び第3回動軸74が直線上に並ぶときのスパッツ装置20を示している。以降の説明では、幅方向における側面視において、駆動軸71、第2回動軸73及び第3回動軸74が直線上に並ぶときの駆動リンク51の位置を「第2中立位置」という。なお、駆動リンク51が第2中立位置に位置する場合には、幅方向における側面視において、駆動軸71及び第2回動軸73を結ぶ線分上に第3回動軸74が位置している。
【0042】
駆動リンク51の第2位置から第2中立位置までの回動量は僅かである。このため、駆動リンク51が第2中立位置に位置する場合には、駆動リンク51が第2位置に位置する場合と、中間リンク52、第1補助リンク61及び第2補助リンク62の位置及び姿勢が略変化しない。つまり、スパッツ40は、展開位置から略変位していない。以降の説明では、駆動リンク51が第2中立位置に位置するときのスパッツ40の位置を「格納準備位置」という。
【0043】
また、
図5及び
図7に示すように、駆動リンク51の第2位置及び第2中立位置を比較すると、第2位置は、第2中立位置よりも駆動リンク51が第2回動方向R2に回動した位置であるといえる。
【0044】
ここで、駆動リンク51が第2中立位置よりも第1回動方向R1に僅かに回動した位置を第2位置とする比較例のスパッツ装置を想定する。この場合、スパッツ40に風圧及び衝撃などが作用することに伴い、スパッツ40が第1回動軸72を中心に展開位置から格納位置に向けて回動しようとすると、駆動リンク51に駆動リンク51を第1回動方向R1に回動させるモーメントが作用する。つまり、比較例の場合、スパッツ40を展開位置に留めたいにも関わらずスパッツ40が格納位置に向かって変位するおそれがある。
【0045】
この点、本実施形態のスパッツ装置20は、駆動リンク51が第2中立位置よりも第2回動方向R2に僅かに回動した位置を第2位置とする。このため、スパッツ40が第1回動軸72を中心に展開位置から格納位置に向けて回動しようとしても、駆動リンク51に駆動リンク51を第1回動方向R1に回動させるモーメントが作用しない。つまり、スパッツ装置20は、駆動リンク51が第2位置に位置する場合に、スパッツ40を展開位置に留めやすくなっている。以降の説明では、駆動リンク51が第2中立位置よりも第2回動方向R2に回動することを、「駆動リンク51がターンオーバーする」ともいう。
【0046】
次に、スパッツ装置20の制御装置90について説明する。
図1に示すように、制御装置90には、車速センサ14の検出結果に応じた信号及び車両10のイグニッション信号が入力される。そして、制御装置90は、入力される信号に応じて、アクチュエータ80を制御する。
【0047】
詳しくは、制御装置90は、展開準備条件が成立する場合、アクチュエータ80の駆動により、第1位置から第1中立位置まで、駆動リンク51を第2回動方向R2に回動させる。つまり、制御装置90は、展開準備条件が成立する場合、スパッツ40を格納位置から展開準備位置に変位させる。展開準備条件は、スパッツ40を展開させる必要が生じそうな場合に成立する条件である。例えば、展開準備条件は、スパッツ40が格納位置に配置され且つ車速が展開準備判定速度以上となる場合に成立する条件とすればよい。また、展開準備条件は、イグニッション信号がオンになる場合に成立する条件としてもよい。
【0048】
制御装置90は、展開条件が成立する場合、アクチュエータ80の駆動により、第1中立位置から第2位置まで、駆動リンク51を第2回動方向R2に回動させる。つまり、制御装置90は、展開条件が成立する場合、スパッツ40を展開準備位置から展開位置に変位させる。展開条件は、スパッツ40を展開させる必要が生じる場合に成立する条件であり、展開準備条件の成立後に成立し得る条件である。例えば、展開条件は、駆動リンク51が展開準備位置に位置し且つ車速が展開判定速度以上となる場合に成立する条件とすればよい。展開判定速度は、展開準備判定速度よりも速い速度であり、車輪13の周辺の気流を整流する必要が生じるときの車速である。
【0049】
一方、制御装置90は、格納準備条件が成立する場合、アクチュエータ80の駆動により、展開位置から第2中立位置まで駆動リンク51を第1回動方向R1に回動させる。つまり、制御装置90は、格納準備条件が成立する場合、スパッツ40を展開位置から格納準備位置に変位させる。格納準備条件は、スパッツ40を格納させる必要が生じそうな場合に成立する条件である。例えば、格納準備条件は、スパッツ40が展開位置に配置され且つ車速が格納準備判定速度未満となる場合に成立する条件とすればよい。
【0050】
制御装置90は、格納条件が成立する場合、アクチュエータ80の駆動により、第2中立位置から第1位置まで駆動リンク51を第1回動方向R1に回動させる。つまり、制御装置90は、格納条件が成立する場合、スパッツ40を展開準備位置から格納位置まで変位させる。格納条件は、スパッツ40を格納させる必要が生じる場合に成立する条件であり、格納準備条件の成立後に成立し得る条件である。例えば、格納条件は、駆動リンク51が格納準備位置に位置し且つ格納判定速度未満となる場合に成立する条件とすればよい。格納判定速度は、格納準備判定速度よりも遅い速度であり、車輪13の周辺の気流を整流する必要が生じなくなるときの車速である。
【0051】
なお、展開準備条件の成立後であっても車両10が減速する場合には、スパッツ40が格納位置に戻されることが好ましい。この点で、格納条件は、駆動リンク51が展開準備位置に位置し且つ車速が格納判定速度未満となる場合に成立してもよい。一方、格納準備条件の成立後であっても車両10が加速する場合には、スパッツ40が展開位置に戻されることが好ましい。この点で、展開条件は、駆動リンク51が格納準備位置に位置し且つ車速が展開判定速度以上となる場合に成立してもよい。
【0052】
以下、
図10に示すフローチャートを参照して、制御装置90がスパッツ40を展開位置に向けて展開作動する場合の処理の流れについて説明する。なお、本処理は、スパッツ40が格納位置に配置される場合に所定の制御サイクルで繰り返し実行される処理である。
【0053】
図10に示すように、制御装置90は、展開準備条件が成立しているか否かを判定する(ステップS11)。展開準備条件が成立していない場合(ステップS11:NO)、制御装置90は、ステップS11を再度実行する。一方、展開準備条件が成立している場合(ステップS11:YES)、制御装置90は、スパッツ40を展開準備作動させる(ステップS12)。詳しくは、制御装置90は、アクチュエータ80を制御して、駆動リンク51を第1位置から第1中立位置に回動させる。スパッツ40を展開準備作動させた後は、制御装置90は、アクチュエータ80に対する通電を維持し、スパッツ40が意図せず格納位置又は展開位置に変位することを制限する。
【0054】
続いて、制御装置90は、展開条件が成立しているか否かを判定する(ステップS13)。展開条件が成立していない場合(ステップS13:NO)、制御装置90は、ステップS13を再度実行する。一方、展開条件が成立している場合(ステップS13:YES)、制御装置90は、スパッツ40を展開作動させる(ステップS14)。詳しくは、制御装置90は、アクチュエータ80を制御して、駆動リンク51を第1中立位置から第2位置に回動させる。その後、制御装置90は、本処理を終了する。
【0055】
なお、ステップS13において、展開条件の成立を待つ間に格納条件が成立する場合、例えば、車両10が減速する場合には、制御装置90は、スパッツ40を格納作動させることが好ましい。
【0056】
続いて、
図11に示すフローチャートを参照して、制御装置90がスパッツ40を格納位置に向けて格納作動する場合の処理の流れについて説明する。なお、本処理は、スパッツ40が展開位置に配置される場合に所定の制御サイクルで繰り返し実行される処理である。
【0057】
図10に示すように、制御装置90は、格納準備条件が成立しているか否かを判定する(ステップS21)。格納準備条件が成立していない場合(ステップS21:NO)、制御装置90は、ステップS21を再度実行する。一方、格納準備条件が成立している場合(ステップS:21YES)、制御装置90は、スパッツ40を格納準備作動させる(ステップS22)。詳しくは、制御装置90は、アクチュエータ80を制御して、駆動リンク51を第2位置から第2中立位置に回動させる。スパッツ40を格納準備作動させた後は、制御装置90は、アクチュエータ80に対する通電を維持し、スパッツ40が意図せず格納位置又は展開位置に変位することを制限する。
【0058】
続いて、制御装置90は、格納条件が成立しているか否かを判定する(ステップS23)。格納条件が成立していない場合(ステップS23:NO)、制御装置90は、ステップS23を再度実行する。一方、格納条件が成立している場合(ステップS23:YES)、制御装置90は、スパッツ40を格納作動させる(ステップS24)。詳しくは、制御装置90は、アクチュエータ80を制御して、駆動リンク51を第2中立位置から第1位置に回動させる。その後、制御装置90は、本処理を終了する。
【0059】
なお、ステップS23において、格納条件の成立を待つ間に展開条件が成立する場合、例えば、車両10が加速する場合には、制御装置90は、スパッツ40を展開作動させることが好ましい。
【0060】
第1実施形態の効果について説明する。
(1)スパッツ装置20において、スパッツ40を格納位置に配置する駆動リンク51の第1位置は、第1中立位置よりも第1回動方向R1に回動した位置である。このため、中間リンク52にスパッツ40の自重等が作用すると、駆動リンク51に駆動リンク51を第1回動方向R1に回動させるモーメントが発生し得る。つまり、この場合には、スパッツ40が展開位置に向かって変位するおそれがない。したがって、スパッツ装置20は、格納位置に配置されるスパッツ40の姿勢を安定化できる。また、スパッツ装置20は、駆動リンク51を第1位置に留めるために、アクチュエータ80を構成するモータに通電する必要もなくなる。
【0061】
(2)スパッツ装置20において、スパッツ40を展開位置に配置する駆動リンク51の第2位置は、第2中立位置よりも第2回動方向R2に回動した位置である。このため、スパッツ40に作用する風圧等に応じた力が中間リンク52に作用すると、駆動リンク51に駆動リンク51を第2回動方向R2に回動させるモーメントが発生し得る。つまり、この場合には、スパッツ40が格納位置に向かって変位するおそれがない。したがって、スパッツ装置20は、展開位置に配置されるスパッツ40の姿勢を安定化できる。また、スパッツ装置20は、駆動リンク51を第2位置に留めるために、アクチュエータ80を構成するモータに通電する必要もなくなる。
【0062】
(3)スパッツ装置20は、展開準備条件の成立後に展開条件が成立する場合、駆動リンク51を第1中立位置から第2位置に回動させる。このため、スパッツ装置20は、展開条件の成立時に駆動リンク51を第1位置から第2位置に回動させる場合と比較して、スパッツ40を展開位置に配置させるのに要する時間を短くできる。
【0063】
(4)スパッツ装置20は、格納準備条件の成立後に格納条件が成立する場合、駆動リンク51を第2中立位置から第1位置に回動させる。このため、スパッツ装置20は、格納条件の成立時に駆動リンク51を第2位置から第1位置に回動させる場合と比較して、スパッツ40を格納位置に配置させるのに要する時間を短くできる。
【0064】
(5)スパッツ装置20は、第1補助リンク61及び第2補助リンク62を有する第2リンクユニット60を備える。このため、スパッツ装置20は、展開位置において、スパッツ40を車輪13に接近させることができる。その結果、スパッツ装置20は、車輪13の周辺の整流効果を高めることができる。
【0065】
(6)中間リンク52が直線状をなしていると、駆動軸71が第1位置に位置したり第1中立位置に位置したりする場合に、中間リンク52と駆動軸71とが干渉しやすい。この点、
図4及び
図6に示すように、スパッツ装置20は、中間リンク52が湾曲するため、中間リンク52と駆動軸71とが干渉することを抑制できる。
【0066】
(7)スパッツ装置20は、高速走行時にスパッツ40を展開位置に配置するため、車輪13の周辺の気流を整流できる。つまり、スパッツ装置20は、車両走行時の走行抵抗を低減できる。また、スパッツ装置20は、低速走行時及び停止時にスパッツ40を格納位置に配置するため、車輪止めなどにスパッツ40が接触することを抑制できる。
【0067】
(第2実施形態)
以下、第2実施形態に係るスパッツ装置20Aについて説明する。以降の説明では、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付して、説明を省略又は簡略する。第2実施形態に係るスパッツ装置20Aは、第1実施形態に係るスパッツ装置20と比較して、第2リンクユニット60と複数の支持軸75,76を備えない点が異なる。
【0068】
図12に示すように、スパッツ装置20Aは、ハウジング30Aと、スパッツ40と、第1リンクユニット50Aと、駆動軸71と、複数の回動軸72~74と、を備える。また、図示を省略するが、スパッツ装置20Aは、アクチュエータ80と、制御装置90と、を備える。
【0069】
ハウジング30Aは、スパッツ装置20Aの構成部品の一部を収容する。
図12に示すように、ハウジング30Aは、第1リンクユニット50Aの回動範囲を制限する第1規制壁31A及び第2規制壁32Aを有する。ハウジング30Aは、駆動軸71及び第1回動軸72を支持する。このとき、駆動軸71及び第1回動軸72の軸方向は、幅方向となる。
【0070】
第1リンクユニット50Aは、駆動軸71と一体に回動する駆動リンク51Aと、スパッツ40と駆動リンク51Aとを連結する中間リンク52Aと、を有する。駆動リンク51Aは、幅方向に駆動軸71が挿通される状態で、駆動軸71と一体とされる。中間リンク52Aは、幅方向における側面視において、駆動リンク51Aよりも長く、略L字状に湾曲している。中間リンク52Aの第1端は、幅方向を軸方向とする第2回動軸73によりスパッツ40の後側固定部43と相対回転可能に連結され、中間リンク52Aの第2端は、幅方向を軸方向とする第3回動軸74により駆動リンク51Aと相対回転可能に連結される。
【0071】
第1リンクユニット50Aは、ハウジング30Aとスパッツ40とともに4節リンク機構を構成する。4節リンク機構において、駆動リンク51Aが駆動軸71回りに揺動すると、スパッツ40が第1回動軸72回りに揺動する。
【0072】
次に、
図12~
図15を参照して、スパッツ装置20Aの作用について説明する。
図12は、スパッツ40が格納位置に配置される場合のスパッツ装置20A、言い換えれば、駆動リンク51Aが第1位置に位置するときのスパッツ装置20Aを示している。第1位置は、駆動リンク51Aが駆動軸71回りに最も第1回動方向R1に回動した位置であって、駆動リンク51Aがハウジング30Aの第1規制壁31Aに接触するときの位置である。
【0073】
駆動リンク51Aが第1位置に位置する場合、駆動リンク51Aは、第3回動軸74を駆動軸71よりも前方且つ上方に配置する。つまり、駆動リンク51Aは、中間リンク52Aを前方かつ上方に引き上げる。このため、中間リンク52Aと連結されるスパッツ40も後部が上方に変位した格納位置に配置される。スパッツ40が格納位置に配置される場合、スパッツ40の大部分がハウジング30Aに格納される。また、駆動リンク51Aが第1位置に位置する場合、駆動軸71は、幅方向における側面視において、第2回動軸73及び第3回動軸74を結ぶ線分上に位置しない。言い換えれば、駆動軸71及び第2回動軸73を通る直線と駆動軸71及び第3回動軸74を通る直線とは交差する。
【0074】
図13は、スパッツ40が展開位置に配置される場合のスパッツ装置20A、言い換えれば、駆動リンク51Aが第2位置に位置するときのスパッツ装置20Aを示している。第2位置は、駆動リンク51Aが駆動軸71回りに最も第2回動方向R2に回動した位置であって、駆動リンク51Aがハウジング30Aの第2規制壁32Aに接触するときの位置である。
【0075】
駆動リンク51Aが第2位置に位置する場合、駆動リンク51Aは、第3回動軸74を駆動軸71よりも後方且つ下方に配置する。つまり、駆動リンク51Aは、中間リンク52Aを後方かつ下方に押し下げる。このため、中間リンク52Aと連結されるスパッツ40も後部が下方に変位した展開位置に配置される。スパッツ40が展開位置に配置される場合、スパッツ40の大部分がハウジング30Aから露出する。また、駆動リンク51Aが第2位置に位置する場合、第3回動軸74は、幅方向における側面視において、駆動軸71及び第2回動軸73を結ぶ線分上に位置しない。言い換えれば、駆動軸71及び第3回動軸74を通る直線と第2回動軸73及び第3回動軸74を通る直線とは交差する。
【0076】
本実施形態のスパッツ装置20Aは、駆動リンク51Aが第1位置及び第2位置の間で回動する際に、
図14及び
図15に示す位置を取る。
図14は、駆動リンク51Aが第1位置から第2回動方向R2に僅かに回動した状態であって、幅方向における側面視において、駆動軸71、第2回動軸73及び第3回動軸74が直線上に並ぶときのスパッツ装置20Aを示している。つまり、
図14は、駆動リンク51Aが第1中立位置に位置するときのスパッツ装置20Aを示している。駆動リンク51Aが第1中立位置に位置する場合には、幅方向における側面視において、第2回動軸73及び第3回動軸74を結ぶ線分上に駆動軸71が位置している。
【0077】
駆動リンク51Aの第1位置から第1中立位置までの回動量は僅かである。このため、駆動リンク51Aが第1中立位置に位置する場合には、駆動リンク51Aが第1位置に位置する場合と、中間リンク52A、第1補助リンク61及び第2補助リンク62の位置及び姿勢が略変化しない。つまり、スパッツ40は、格納位置から略変位しない展開準備位置に配置される。
【0078】
また、
図12及び
図14に示すように、駆動リンク51Aの第1位置及び第1中立位置を比較すると、第1位置は、第1中立位置よりも駆動リンク51Aが第1回動方向R1に回動した位置であるといえる。
【0079】
本実施形態のスパッツ装置20Aは、駆動リンク51Aが第1中立位置よりも第1回動方向R1に僅かに回動した位置を第1位置とする。つまり、駆動リンク51Aがターンオーバーしている。このため、スパッツ40が第1回動軸72を中心に格納位置から展開位置に向けて回動しようとしても、駆動リンク51Aに駆動リンク51Aを第2回動方向R2に回動させるモーメントが作用しない。よって、スパッツ装置20Aは、駆動リンク51Aが第1位置に位置する場合に、スパッツ40を格納位置に留めやすくなっている。
【0080】
図15は、駆動リンク51Aが第2位置から第1回動方向R1に僅かに回動した状態であって、幅方向における側面視において、駆動軸71、第2回動軸73及び第3回動軸74が直線上に並ぶときのスパッツ装置20Aを示している。つまり、
図15は、駆動リンク51Aが第2中立位置に位置するときのスパッツ装置20Aを示している。駆動リンク51Aが第2中立位置に位置する場合には、幅方向における側面視において、駆動軸71及び第2回動軸73を結ぶ線分上に第3回動軸74が位置している。
【0081】
駆動リンク51Aの第2位置から第2中立位置までの回動量は僅かである。このため、駆動リンク51Aが第2中立位置に位置する場合には、駆動リンク51Aが第2位置に位置する場合と、中間リンク52A、第1補助リンク61及び第2補助リンク62の位置及び姿勢が略変化しない。つまり、スパッツ40は、展開位置から略変位しない格納準備位置に配置される。
【0082】
また、
図13及び
図15に示すように、駆動リンク51Aの第2位置及び第2中立位置を比較すると、第2位置は、第2中立位置よりも駆動リンク51Aが第2回動方向R2に回動した位置であるといえる。
【0083】
本実施形態のスパッツ装置20Aは、駆動リンク51Aが第2中立位置よりも第2回動方向R2に僅かに回動した位置を第2位置とする。つまり、駆動リンク51Aがターンオーバーしている。このため、スパッツ40が第1回動軸72を中心に展開位置から格納位置に向けて回動しようとしても、駆動リンク51Aに駆動リンク51Aを第1回動方向R1に回動させるモーメントが作用しない。よって、スパッツ装置20Aは、駆動リンク51Aが第2位置に位置する場合に、スパッツ40を展開位置に留めやすくなっている。
【0084】
第2実施形態に係るスパッツ装置20Aによれば、第1実施形態の効果(1)~(4)、(6)に加え、以下の効果を得ることができる。
(7)スパッツ装置20Aは、第1実施形態における第2リンクユニット60を備えない点で、構造を簡素化できる。
【0085】
(第3実施形態)
以下、第3実施形態に係るスパッツ装置20Bについて説明する。以降の説明では、第1実施形態と同等の構成については同一の符号を付して、説明を省略又は簡略する。第3実施形態に係るスパッツ装置20Bは、第1実施形態に係るスパッツ装置20と比較して、ハウジングの構造とスパッツの構造が一部異なる。
【0086】
図16~
図18に示すように、スパッツ装置20Bは、ハウジング30Bと、スパッツ40Bと、第1リンクユニット50と、第2リンクユニット60と、駆動軸71と、複数の回動軸72~74と、複数の支持軸75,76と、アクチュエータ80と、を備える。また、図示を省略するが、スパッツ装置20Bは、制御装置90を備える。
【0087】
図16及び
図18に示すように、ハウジング30Bは、スパッツ装置20Bの構成部品の一部を収容する。
図18に示すように、ハウジング30Bは、第1リンクユニット50の回動範囲を制限する第1規制壁31及び第2規制壁32と、スパッツ40Bを押す押圧部34Bと、を有する。押圧部34Bは、第2規制壁32の周辺に配置され、下方に向かって突出する。ハウジング30Bは、駆動軸71、第1支持軸75及び第2支持軸76を支持する。このとき、駆動軸71、第1支持軸75及び第2支持軸76の軸方向は、幅方向となる。
【0088】
図16~
図18に示すように、スパッツ40Bは、車両走行時の車輪13の周辺の気流を整流する整流部41と、第2リンクユニット60と連結される前側固定部42と、第1リンクユニット50及び第2リンクユニット60と連結される後側固定部43と、を有する。また、スパッツ40Bは、第1回動軸72が挿通される支持孔44と、第2回動軸73が挿通される保持孔45と、保持孔45に接続する摺動溝46と、を有する。
【0089】
前側固定部42には支持孔44が設けられる。前側固定部42は、支持孔44を介して、幅方向を軸方向とする第1回動軸72に回動可能に支持される。言い換えれば、支持孔44は、第1回動軸72を支持する。後側固定部43には、保持孔45と摺動溝46の一部が設けられる。後側固定部43は、保持孔45を介して、幅方向を軸方向とする第2回動軸73に回動可能に保持される。言い換えれば、保持孔45は、第2回動軸73を保持する。
図17に示すように、後側固定部43は、保持孔45と摺動溝46とを区画する一対の凸部431を有する。一対の凸部431は互いに接近する方向に延び、一対の凸部431の間には隙間が生じている。こうして、保持孔45と摺動溝46とは、一対の凸部431の間の隙間を介して接続している。
【0090】
図17に示すように、スパッツ40Bの側面視において、保持孔45は略円形をなしている。
図17及び
図18に示すように、摺動溝46は、スパッツ40Bの側面視において、支持孔44を中心とした円弧状に延びる第1摺動溝461と、第1摺動溝461と交差する方向に直線状に延びる第2摺動溝462と、を含む。保持孔45の内径は、第2回動軸73の外径よりも僅かに大きく、摺動溝46の幅は、第2回動軸73の外径よりも僅かに大きい。一方、一対の凸部431の間隔は、第2回動軸73の外径よりも僅かに小さい。なお、ここでいう第2回動軸73の外径とは、第2回動軸73において、スパッツ40Bと係合する部位における外径である。
【0091】
また、
図18に示すように、スパッツ装置20Bにおいて、第1摺動溝461は、第1回動軸72の周方向に延び、第2摺動溝462は、第1摺動溝461から延びるにつれて、第1回動軸72から遠ざかる方向に延びる。
【0092】
次に、
図18~
図23を参照して、スパッツ装置20Bの作用について説明する。
図18は、スパッツ40Bが格納位置に配置される場合のスパッツ装置20B、言い換えれば、駆動リンク51が第1位置に位置するときのスパッツ装置20Bを示している。第1位置は、駆動リンク51が駆動軸71回りに最も第1回動方向R1に回動した位置であって、駆動リンク51がハウジング30Bの第1規制壁31に接触するときの位置である。スパッツ40Bが格納位置に配置される場合、第2回動軸73はスパッツ40Bの保持孔45に係合する。
【0093】
駆動リンク51が第1位置に位置する場合、駆動リンク51は、第3回動軸74を駆動軸71よりも前方且つ上方に配置する。つまり、駆動リンク51は、中間リンク52を前方かつ上方に引き上げる。このため、中間リンク52と連結されるスパッツ40Bも後部が上方に変位した格納位置に配置される。
【0094】
第1補助リンク61は、その回動範囲において、第1回動軸72を最も前方に配置し、第2補助リンク62は、その回動範囲において、第2回動軸73を最も前方且つ上方に配置する。このため、スパッツ40Bは、格納位置において、前側固定部42が前方に位置するとともに、後側固定部43が前方且つ上方に位置する。
【0095】
また、駆動リンク51が第1位置に位置する場合、駆動軸71は、幅方向における側面視において、第2回動軸73及び第3回動軸74を結ぶ線分上に位置しない。言い換えれば、駆動軸71及び第2回動軸73を通る直線と駆動軸71及び第3回動軸74を通る直線とは交差する。
【0096】
詳しくは、スパッツ装置20Bは、第1実施形態と同様に、駆動リンク51が第1中立位置よりも第1回動方向R1に僅かに回動した位置を第1位置とする。このため、スパッツ40Bが第1回動軸72を中心に格納位置から展開位置に向けて回動しようとしても、駆動リンク51に駆動リンク51を第2回動方向R2に回動させるモーメントが作用しない。つまり、スパッツ装置20Bは、駆動リンク51が第1位置においてターンオーバーしているため、スパッツ40Bを格納位置に留めやすくなっている。
【0097】
図19は、スパッツ40Bが展開位置に配置される場合のスパッツ装置20B、言い換えれば、駆動リンク51が第2位置に位置するときのスパッツ装置20Bを示している。第2位置は、駆動リンク51が駆動軸71回りに最も第2回動方向R2に回動した位置であって、駆動リンク51がハウジング30Bの第2規制壁32に接触するときの位置である。また、スパッツ40Bが展開位置に配置される場合、第2回動軸73はスパッツ40Bの保持孔45に係合する。このため、第3実施形態では、第2回動軸73がスパッツ40Bの保持孔45に係合している状態で、駆動リンク51が回動することにより、スパッツ40Bが展開位置及び格納位置の間で変位する。
【0098】
駆動リンク51が第2位置に位置する場合、駆動リンク51は、第3回動軸74を駆動軸71よりも後方且つ下方に配置する。つまり、駆動リンク51は、中間リンク52を後方かつ下方に押し下げる。このため、中間リンク52と連結されるスパッツ40Bも後部が下方に変位した展開位置に配置される。
【0099】
第1補助リンク61は、その回動範囲において、第1回動軸72を最も後方に配置し、第2補助リンク62は、その回動範囲において、第2回動軸73を最も後方且つ下方に配置する。言い換えれば、第2リンクユニット60は、スパッツ40Bが展開位置に配置される場合には、スパッツ40Bが格納位置に配置される場合よりも第1回動軸72及び第2回動軸73を後方に移動させる。このため、スパッツ40Bは、展開位置において、前側固定部42が後方に位置するとともに、後側固定部43が後方且つ下方に位置する。つまり、格納位置から展開位置に変位する際、スパッツ40Bは、後方に移動することで前後方向における車輪13との距離が短くなる。
【0100】
また、駆動リンク51が第2位置に位置する場合、第3回動軸74は、幅方向における側面視において、駆動軸71及び第2回動軸73を結ぶ線分上に位置しない。言い換えれば、駆動軸71及び第3回動軸74を通る直線と第2回動軸73及び第3回動軸74を通る直線とは交差する。
【0101】
詳しくは、スパッツ装置20Bは、第1実施形態と同様に、駆動リンク51が第2中立位置よりも第2回動方向R2に僅かに回動した位置を第2位置とする。このため、スパッツ40Bが第1回動軸72を中心に展開位置から格納位置に向けて回動しようとしても、駆動リンク51に駆動リンク51を第1回動方向R1に回動させるモーメントが作用しない。つまり、スパッツ装置20Bは、駆動リンク51が第2位置においてターンオーバーしているため、スパッツ40Bを展開位置に留めやすくなっている。
【0102】
続いて、スパッツ40Bが障害物に接触するときのスパッツ装置20Bの作用について説明する。
図19に示すように、スパッツ40Bを展開位置に配置する状態で車両が走行する場合、路面上の障害物がスパッツ40Bに接触する可能性が考えられる。障害物としては、例えば、路面上に置かれた物体、路面上の積雪及び路面の凹凸などが挙げられる。スパッツ装置20Bは、駆動リンク51が第2位置でターンオーバーしているため、障害物との接触によって
図19に白抜矢印で示す外力がスパッツ40Bに作用しても、スパッツ40Bを位置決めする駆動リンク51及び中間リンク52の姿勢が変化しにくい。
【0103】
この点、第3実施形態に係るスパッツ装置20Bにおいて、スパッツ40Bは、第2回動軸73と摺動可能な摺動溝46を有する。このため、スパッツ40Bに障害物との接触による外力が作用すると、
図20に示すように、第2回動軸73がスパッツ40Bの保持孔45から外れる。詳しくは、駆動リンク51がターンオーバーしている点で変位不能な第2回動軸73に対し、外力の作用する方向にスパッツ40Bが変位しようとする結果、第2回動軸73がスパッツ40Bの保持孔45から外れる。つまり、第2回動軸73が保持孔45に係合する状態から第2回動軸73が第1摺動溝461と係合する状態に移行する。
【0104】
なお、第2回動軸73がスパッツ40Bの保持孔45から外れる際、スパッツ40Bの後側固定部43は弾性変形する。つまり、第2回動軸73をスパッツ40Bの保持孔45から外すのに必要な力は、後側固定部43の一対の凸部431の間隔が狭いほど大きく、後側固定部43の一対の凸部431の弾性率が高いほど大きくなる。言い換えれば、第2回動軸73の保持孔45からの外れやすさは、適宜調整可能である。
【0105】
続いて、
図20及び
図21に示すように、第2回動軸73がスパッツ40Bの第1摺動溝461と摺動する。第2回動軸73は変位不能であるため、スパッツ40Bに作用する外力により、スパッツ40Bが第1摺動溝461の形成方向に沿って変位する。つまり、スパッツ40Bは、第1回動軸72を中心に回動するため、第1補助リンク61の姿勢は変化しない。
【0106】
その後、
図21及び
図22に示すように、第2回動軸73がスパッツ40Bの第2摺動溝462と摺動する。第2回動軸73は変位不能であるため、スパッツ40Bに作用する外力により、スパッツ40Bが第2摺動溝462の形成方向に沿って変位する。このとき、スパッツ40Bは、第1回動軸72を中心に回動しないため、第1補助リンク61の姿勢が変化する。詳しくは、第2回動軸73が第2摺動溝462と摺動する場合には、第2回動軸73が第1摺動溝461と摺動する場合よりも、第1回動軸72を車両前方に移動させる。その結果、
図22に示すように、スパッツ40Bは、展開位置よりも前方且つ上方の退避位置に変位する。
【0107】
以上説明したように、第3実施形態では、
図19~
図22に示すように、スパッツ40Bに外力が作用する場合には、駆動リンク51を第2位置に留めたまま、スパッツ40Bが展開位置から退避する。このため、駆動リンク51を第2位置でターンオーバーさせたとしても、展開位置に留められたスパッツ40Bに外力が作用することが抑制される。
【0108】
なお、
図22では、スパッツ40Bが退避位置まで退避した例を示したが、スパッツ40Bは必ずしも退避位置まで退避するとは限らない。つまり、スパッツ40Bが接触する障害物の大きさによっては、スパッツ40Bが退避位置の手前までしか退避しないこともある。
【0109】
障害物がスパッツ40Bの下方をくぐり抜ける等することで、スパッツ40Bが障害物に接しなくなると、スパッツ40Bに外力が作用しなくなる。すると、スパッツ40Bの自重により、スパッツ40Bが退避位置から展開位置に向かって変位する。ただし、スパッツ40Bの自重は、第2回動軸73が摺動溝46と係合する状態から第2回動軸73が保持孔45と係合する状態に移行させるのに必要な力よりも弱い。このため、スパッツ40Bは、障害物に接しなくなると、
図20に示す状態に復帰する。
【0110】
以降の説明では、
図20に示すように、第2回動軸73が第1摺動溝461の上端に位置するとき、言い換えれば、スパッツ40Bの一対の凸部431が第2回動軸73に上方から引っかかるときのスパッツ40Bの位置を「準展開位置」ともいう。スパッツ40Bが準展開位置に位置する場合、スパッツ40Bが展開位置に位置する場合よりも、スパッツ40Bの姿勢が変化しやすくなるが車輪13周辺の気流を整える機能を果たす。
【0111】
その後、スパッツ40Bの格納条件が成立すると、駆動リンク51が第2位置から第1位置に回動する。ところが、駆動リンク51が第2位置から第1位置に回動し始めるときのスパッツ40Bの位置が準展開位置である場合と展開位置である場合とでは、スパッツ40Bの移動軌跡に差が生じる。
【0112】
このため、
図23に示すように、スパッツ40Bが準展開位置に配置される状況下において、駆動リンク51が第2位置から第1位置に回動すると、スパッツ40Bの後側固定部43がハウジング30Bの押圧部34Bに接触する。第3実施形態では、駆動リンク51が第2位置及び第1位置の略中間となる位置まで回動したとき、スパッツ40Bの後側固定部43が押圧部34Bに接触する。
【0113】
第2回動軸73が駆動リンク51の回動に基づき上方に移動しようとするのに対して、スパッツ40Bは押圧部34Bとの接触により上方への移動が制限される。言い換えれば、押圧部34Bが、摺動溝46を介して第2回動軸73に係合するスパッツ40Bを下方に押す。その結果、第2回動軸73がスパッツ40Bの保持孔45に嵌まる。つまり、第2回動軸73が第1摺動溝461と係合する状態から第2回動軸73が保持孔45に係合する状態に移行する。
【0114】
第2回動軸73がスパッツ40Bの保持孔45に係合する状態に移行した後は、駆動リンク51の回動に伴うスパッツ40Bの移動軌跡が、スパッツ40Bを展開位置から格納位置に変位させる際の移動軌跡と一致する。つまり、
図18に示すように、駆動リンク51が第1位置に到達し、スパッツ40Bが格納位置に配置される。
【0115】
なお、スパッツ40Bが展開位置に配置される状況下において、駆動リンク51が第2位置から第1位置に回動する場合には、スパッツ40Bの後側固定部43がハウジング30Bの押圧部34Bに接触することはない。
【0116】
第3実施形態に係るスパッツ装置20Bによれば、第1実施形態の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
(8)スパッツ装置20Bは、展開位置に位置するスパッツ40Bに障害物が接触するような異常時において、第2回動軸73とスパッツ40Bの摺動溝46とを摺動させることにより、スパッツ40Bを展開位置から退避させる。このため、スパッツ装置20Bは、スパッツ40Bなどの装置の構成部品に過負荷が作用することを抑制できる。
【0117】
(9)スパッツ装置20Bにおいて、保持孔45及び摺動溝46は、中間リンク52よりも形状が大きいスパッツ40Bに設けられる。このため、形状の小さな中間リンク52に保持孔45及び摺動溝46を形成しなくてもよい点で、設計自由度が高くなりやすい。
【0118】
(10)スパッツ装置20Bは、第2回動軸73が保持孔45と係合する状態から第2回動軸73が摺動溝46と係合する状態に移行した後であっても、駆動リンク51を第2位置から第1位置に回動させることで、第2回動軸73が摺動溝46と係合する状態から第2回動軸73が保持孔45と係合する状態に移行させることができる。つまり、スパッツ装置20Bは、駆動リンク51の回動により、押圧部34Bにスパッツ40Bを接触させて、第2回動軸73とスパッツ40Bとの係合状態を通常の状態に復帰させることができる。
【0119】
(11)スパッツ装置20Bにおいて、スパッツ40Bは、円弧状に延びる第1摺動溝461を有するため、障害物に接触し始めたときに展開位置から退避しやすくなる。また、スパッツ40Bは、直線状に延びる第2摺動溝462を有するため、障害物に接触したときに、車輪13から遠ざかる方向に退避しやすくなる。
【0120】
(第4実施形態)
以下、第4実施形態に係るスパッツ装置20Cについて説明する。以降の説明では、第1実施形態~第3実施形態と同等の構成については同一の符号を付して、説明を省略又は簡略する。第4実施形態に係るスパッツ装置20Cは、第2実施形態に係るスパッツ装置20Aと比較して、ハウジングの構造とスパッツの構造が異なる。
【0121】
図24~
図26に示すように、スパッツ装置20Cは、ハウジング30Cと、スパッツ40Cと、第1リンクユニット50Aと、駆動軸71と、複数の回動軸72~74と、を備える。また、図示を省略するが、スパッツ装置20Cは、アクチュエータ80と、制御装置90と、を備える。
【0122】
図24及び
図26に示すように、ハウジング30Cは、スパッツ装置20Cの構成部品の一部を収容する。ハウジング30Cは、第1リンクユニット50Aの回動範囲を制限する第1規制壁31A及び第2規制壁32Aと、スパッツ40Cを押す押圧部34Cと、を有する。
図26に示すように、押圧部34Cは、第2規制壁32Aの周辺に配置される。
図24に示すように、押圧部34Cは、後述するスパッツ40Cの後側固定部43の先端の形状に応じた形状をなしている。ハウジング30Cは、駆動軸71及び第1回動軸72を支持する。このとき、駆動軸71及び第1回動軸72の軸方向は、幅方向となる。
【0123】
図24~
図26に示すように、スパッツ40Cは、車両走行時の車輪13の周辺の気流を整流する整流部41と、ハウジング30Cと連結される前側固定部42と、中間リンク52Aと連結される後側固定部43と、を有する。また、スパッツ40Cは、第1回動軸72が挿通される支持孔44Cと、第2回動軸73が挿通される保持孔45と、保持孔45に接続する摺動溝46Cと、を有する。
【0124】
前側固定部42には支持孔44Cが設けられる。前側固定部42は、支持孔44Cを介して、幅方向を軸方向とする第1回動軸72に回動可能に支持される。言い換えれば、支持孔44Cは、第1回動軸72を支持する。後側固定部43には、保持孔45Cと摺動溝46Cの一部が設けられる。後側固定部43は、保持孔45Cを介して、幅方向を軸方向とする第2回動軸73に回動可能に保持される。言い換えれば、保持孔45Cは、第2回動軸73を保持する。
図25に示すように、後側固定部43は、保持孔45Cと摺動溝46Cとを区画する一対の凸部431Cを有する。一対の凸部431Cは互いに接近する方向に延び、一対の凸部431Cの間には隙間が生じている。こうして、保持孔45Cと摺動溝46Cとは、一対の凸部431Cの間の隙間を介して接続している。
【0125】
図25及び
図26に示すように、スパッツ40Cの側面視において、保持孔45Cは略円形をなしている。摺動溝46Cは、スパッツ40Cの側面視において、支持孔44Cを中心とした円弧状に延びる。保持孔45Cの内径は、第2回動軸73の外径よりも僅かに大きく、摺動溝46Cの幅は、第2回動軸73の外径よりも僅かに大きい。一方、一対の凸部431Cの間隔は、第2回動軸73の外径よりも僅かに小さい。なお、ここでいう第2回動軸73の外径とは、第2回動軸73において、スパッツ40Cと係合する部位における外径である。また、
図26に示すように、スパッツ装置20Cにおいて、摺動溝46Cは、第1回動軸72の周方向に延びる。
【0126】
次に、
図26~
図30を参照して、スパッツ装置20Cの作用について説明する。
図26は、スパッツ40Cが格納位置に配置される場合のスパッツ装置20C、言い換えれば、駆動リンク51Aが第1位置に位置するときのスパッツ装置20Cを示している。第1位置は、駆動リンク51Aが駆動軸71回りに最も第1回動方向R1に回動した位置であって、駆動リンク51Aがハウジング30Cの第1規制壁31Aに接触するときの位置である。また、スパッツ40Cが格納位置に配置される場合、第2回動軸73はスパッツ40Cの保持孔45Cに係合する。
【0127】
駆動リンク51Aが第1位置に位置する場合、駆動リンク51Aは、第3回動軸74を駆動軸71よりも前方且つ上方に配置する。つまり、駆動リンク51Aは、中間リンク52Aを前方かつ上方に引き上げる。このため、中間リンク52Aと連結されるスパッツ40Cも後部が上方に変位した格納位置に配置される。
【0128】
また、駆動リンク51Aが第1位置に位置する場合、駆動軸71は、幅方向における側面視において、第2回動軸73及び第3回動軸74を結ぶ線分上に位置しない。言い換えれば、駆動軸71及び第2回動軸73を通る直線と駆動軸71及び第3回動軸74を通る直線とは交差する。
【0129】
詳しくは、スパッツ装置20Cは、第2実施形態と同様に、駆動リンク51Aが第1中立位置よりも第1回動方向R1に僅かに回動した位置を第1位置とする。このため、スパッツ40Cが第1回動軸72を中心に格納位置から展開位置に向けて回動しようとしても、駆動リンク51Aに駆動リンク51Aを第2回動方向R2に回動させるモーメントが作用しない。つまり、スパッツ装置20Cは、駆動リンク51Aが第1位置においてターンオーバーしているため、スパッツ40Cを格納位置に留めやすくなっている。
【0130】
図27は、スパッツ40Cが展開位置に配置される場合のスパッツ装置20C、言い換えれば、駆動リンク51Aが第2位置に位置するときのスパッツ装置20Cを示している。第2位置は、駆動リンク51Aが駆動軸71回りに最も第2回動方向R2に回動した位置であって、駆動リンク51Aがハウジング30Cの第2規制壁32Aに接触するときの位置である。また、スパッツ40Cが展開位置に配置される場合、第2回動軸73はスパッツ40Cの保持孔45Cに係合する。このため、第2実施形態では、第2回動軸73がスパッツ40Cの保持孔45Cに係合している状態で、駆動リンク51が回動することにより、スパッツ40Cが展開位置及び格納位置の間で変位する。
【0131】
駆動リンク51Aが第2位置に位置する場合、駆動リンク51Aは、第3回動軸74を駆動軸71よりも後方且つ下方に配置する。つまり、駆動リンク51Aは、中間リンク52Aを後方かつ下方に押し下げる。このため、中間リンク52Aと連結されるスパッツ40Cも後部が下方に変位した展開位置に配置される。
【0132】
また、駆動リンク51Aが第2位置に位置する場合、第3回動軸74は、幅方向における側面視において、駆動軸71及び第2回動軸73を結ぶ線分上に位置しない。言い換えれば、駆動軸71及び第3回動軸74を通る直線と第2回動軸73及び第3回動軸74を通る直線とは交差する。
【0133】
詳しくは、スパッツ装置20Cは、第2実施形態と同様に、駆動リンク51Aが第2中立位置よりも第2回動方向R2に僅かに回動した位置を第2位置とする。このため、スパッツ40Cが第1回動軸72を中心に展開位置から格納位置に向けて回動しようとしても、駆動リンク51Aに駆動リンク51Aを第1回動方向R1に回動させるモーメントが作用しない。つまり、スパッツ装置20Cは、駆動リンク51Aが第2位置においてターンオーバーしているため、スパッツ40Cを展開位置に留めやすくなっている。
【0134】
続いて、スパッツ40Cが障害物に接触するときのスパッツ装置20Cの作用について説明する。
図27に示すように、スパッツ40Cを展開位置に配置する状態で車両が走行する場合、路面上の障害物がスパッツ40Cに接触する可能性が考えられる。スパッツ装置20Cは、駆動リンク51Aが第2位置でターンオーバーしているため、障害物との接触によって
図28に白抜矢印で示す外力がスパッツ40Cに作用しても、スパッツ40Cを位置決めする駆動リンク51A及び中間リンク52Aの姿勢が変化しにくい。
【0135】
この点、第4実施形態に係るスパッツ装置20Cにおいて、スパッツ40Cは、第2回動軸73と摺動可能な摺動溝46Cを有する。このため、スパッツ40Cに障害物との接触による外力が作用すると、
図28に示すように、第2回動軸73がスパッツ40Cの保持孔45Cから外れる。詳しくは、駆動リンク51Aがターンオーバーしている点で変位不能な第2回動軸73に対し、外力の作用する方向にスパッツ40Cが変位しようとする結果、第2回動軸73がスパッツ40Cの保持孔45Cから外れる。つまり、第2回動軸73が保持孔45Cに係合する状態から第2回動軸73が摺動溝46Cと係合する状態に移行する。
【0136】
続いて、
図28及び
図29に示すように、第2回動軸73がスパッツ40Cの摺動溝46Cと摺動する。このとき、第2回動軸73は変位不能であるため、スパッツ40Cに作用する外力により、スパッツ40Cが摺動溝46Cの形成方向に沿って変位する。つまり、スパッツ40Cは、第1回動軸72を中心に回動し、
図29に示す退避位置まで変位する。
【0137】
図27~
図29に示すように、スパッツ40Cに外力が作用する場合には、駆動リンク51Aを第2位置に留めたまま、スパッツ40Cが展開位置から退避位置に変位する。このため、駆動リンク51Aを第2位置でターンオーバーさせたとしても、展開位置に留められたスパッツ40Cに外力が作用することが抑制される。
【0138】
障害物がスパッツ40Cの下方をくぐり抜ける等することで、スパッツ40Cが障害物に接しなくなると、スパッツ40Cに外力が作用しなくなる。すると、スパッツ40Cの自重により、スパッツ40Cが退避位置から展開位置に向かって変位する。ただし、スパッツ40Cの自重は、第2回動軸73が摺動溝46Cと係合する状態から第2回動軸73が保持孔45Cと係合する状態に移行させるのに必要な力よりも弱い。このため、スパッツ40Cは、障害物に接しなくなると、
図28に示す状態に復帰する。
【0139】
以降の説明では、
図28に示すように、第2回動軸73が摺動溝46Cの上端に位置するとき、言い換えれば、スパッツ40Cの一対の凸部431Cが第2回動軸73に上方から引っかかるときのスパッツ40Cの位置を「準展開位置」ともいう。スパッツ40Cが準展開位置に位置する場合、スパッツ40Cが展開位置に位置する場合よりも、スパッツ40Cの姿勢が変化しやすくなるが車輪13周辺の気流を整える機能を果たす。
【0140】
その後、スパッツ40Cの格納条件が成立すると、駆動リンク51Aが第2位置から第1位置に回動する。ところが、駆動リンク51Aが第2位置から第1位置に回動し始めるときのスパッツ40Cの位置が準展開位置である場合と展開位置である場合とでは、スパッツ40Cの移動軌跡に差が生じる。
【0141】
このため、
図30に示すように、スパッツ40Cが準展開位置に配置される状況下において、駆動リンク51Aが第2位置から第1位置に回動すると、スパッツ40Cの後側固定部43がハウジング30Cの押圧部34Cに接触する。つまり、第2回動軸73が駆動リンク51Aの回動に基づき上方に移動しようとするのに対して、スパッツ40Cは押圧部34Cとの接触により上方への移動が制限される。言い換えれば、押圧部34Cが、摺動溝46Cを介して第2回動軸73に係合するスパッツ40Cを下方に押す。その結果、第2回動軸73がスパッツ40Cの保持孔45Cに嵌まる。つまり、第2回動軸73が摺動溝46Cと係合する状態から第2回動軸73が保持孔45Cに係合する状態に移行する。
【0142】
第2回動軸73がスパッツ40Cの保持孔45Cに係合する状態に移行した後は、駆動リンク51Aの回動に伴うスパッツ40Cの移動軌跡が、スパッツ40Cを展開位置から格納位置に変位させる際の移動軌跡と一致する。つまり、
図26に示すように、駆動リンク51Aが第1位置に到達し、スパッツ40Cが格納位置に配置される。
【0143】
第4実施形態に係るスパッツ装置20Cによれば、第2実施形態の効果及び第3実施形態の効果(8)~(10)を得ることができる。
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0144】
・展開条件、展開準備条件、格納条件及び格納準備条件の成立を判定するときの車速、言い換えれば、展開判定速度、展開準備判定速度、格納判定速度及び格納準備判定速度は、適宜に設定することが可能である。
【0145】
・車両10の加速度が大きい場合には、速やかにスパッツ40を展開位置に配置する必要性が高く、車両10の減速度が大きい場合には、速やかにスパッツ40を格納位置に配置する必要性が高い。そこで、制御装置90は、車両10の加速度及び減速度に基づいて、展開条件、展開準備条件、格納条件及び格納準備条件の成立を判定してもよい。
【0146】
・車両10は、車両10の周辺の環境を取得する環境取得装置を備えてもよい。環境取得装置は、例えば、カメラ及びカーナビゲーションシステムであればよい。この場合、制御装置90は、環境取得装置の検出結果に基づいて、展開条件、展開準備条件、格納条件及び格納準備条件の成立を判定してもよい。
【0147】
例えば、スパッツ40が展開位置に配置されている状況下において、車両10が未舗装路を走行すると、スパッツ40が損傷するおそれがある。そこで、制御装置90は、環境取得装置の検出結果に基づいて、走行する路面が舗装路から未舗装路に切り替わる場合に格納条件及び格納準備条件が成立したと判定してもよい。また、制御装置90は、環境取得装置の検出結果に基づいて、走行する路面が未舗装路から舗装路に切り替わる場合に展開条件及び展開準備条件が成立したと判定してもよい。
【0148】
・第1リンクユニット50において、中間リンク52は湾曲していなくてもよい。この場合、中間リンク52と他のリンクとの干渉を避けるために、中間リンク52と他のリンクとを幅方向にずらして配置することが好ましい。
【0149】
・第2リンクユニット60は、格納位置及び展開位置の間におけるスパッツ40の移動をガイドするガイドレールなどから構成してもよい。つまり、第2リンクユニット60は、リンクを備えなくてもよい。
【0150】
・第2リンクユニット60において、スパッツ40と第1補助リンク61及び第2補助リンク62とを連結する軸を第1回動軸72及び第2回動軸73と別途に設けてもよい。
・スパッツ装置20は、格納側に限り、駆動リンク51がターンオーバーするように構成されてもよいし、展開側に限り、駆動リンク51がターンオーバーするように構成されてもよい。
【0151】
・幅方向を軸方向とする駆動軸71には、幅方向に対して僅かに軸方向が傾いた駆動軸71を含む。他の回動軸72~74及び支持軸75,76についても同様である。
・スパッツ装置20は、右前輪に対応するスパッツ40と左前輪に対応するスパッツ40とを単一のアクチュエータで作動させることもできる。
【0152】
・
図31を参照して第4実施形態に係るスパッツ装置20Cの変更例について簡単に説明する。
図31に示すように、スパッツ装置20Dは、ハウジング30Dと、スパッツ40Dと、第1リンクユニット50Dと、駆動軸71と、複数の回動軸72~74と、を備える。
【0153】
第1リンクユニット50Dは、駆動軸71と一体に回動する駆動リンク51Aと、スパッツ40Dと駆動リンク51Aとを連結する中間リンク52Dと、を有する。中間リンク52Dは幅方向における側面視において湾曲している。中間リンク52Dは、第2回動軸73を保持する保持孔521Dと、保持孔521Dに接続するとともに第2回動軸73と摺動する摺動溝522Dと、を含む。保持孔521Dは、略円形をなし、摺動溝522Dは、保持孔521Dから第1回動軸72の周方向に延びる。また、中間リンク52Dは、保持孔521Dと摺動溝522Dとを区画する一対の凸部523Dを有する。
【0154】
スパッツ装置20Dは、スパッツ40Dを展開位置に配置する状況下において、スパッツ40Dに障害物との接触による外力が作用する場合、スパッツ40Dを展開位置から退避させる。詳しくは、駆動リンク51Aが第2位置においてターンオーバーしている点で、変位不能な中間リンク52Dに対して、スパッツ40D及び第2回動軸73が第1回動軸72を中心に回動する。その結果、第2回動軸73が中間リンク52Dの保持孔521Dから外れる。つまり、第2回動軸73が保持孔521Dに係合する状態から第2回動軸73が摺動溝522Dに係合する状態に移行し、第2回動軸73が摺動溝522Dと摺動する。このように、第4実施形態とは異なり、中間リンク52Dに第2回動軸73と摺動する摺動溝522Dを設けても、スパッツ40Dを展開位置から退避させることが可能である。
【0155】
・第4実施形態に係るスパッツ装置20C及び変更例に係るスパッツ装置20Dを組み合わせてもよい。つまり、第4実施形態に係るスパッツ40Cと変更例に係る中間リンク52Dとを第2回動軸73で連結させたスパッツ装置を構成してもよい。
【0156】
・第3実施形態及び第4実施形態において、スパッツ40B,40Cは、錘を備えてもよい。これによれば、スパッツ40B,40Cは、障害物との接触後、準展開位置に変位しやすくなる。
【0157】
・第3実施形態及び第4実施形態において、スパッツ40B,40Cは、押圧部34B,34Cを備えなくてもよい。この場合、スパッツ装置20B,20Cは、自重により退避位置から展開位置に変位する慣性力で、第2回動軸73を保持孔45,45Cに係合する状態に移行させてもよい。また、ユーザを含む作業者は、手作業により、第2回動軸73が保持孔45,45Cに係合する状態に移行させてもよい。
【0158】
・制御装置90は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア(特定用途向け集積回路:ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路又はこれらの組み合わせを含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ、すなわち記憶媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0159】
上記実施形態及び変更例から把握できる技術的思想について記載する。
上記実施形態の課題を解決する車両用スパッツ装置は、車両幅方向を軸方向とする第1回動軸に回動可能に支持され、車輪の前方の空間に展開する展開位置及び前記車輪の前方の空間から退避する格納位置の間で変位するスパッツと、アクチュエータの動力を前記スパッツに伝達する第2リンクユニットと、を備え、前記第2リンクユニットは、前記アクチュエータの駆動時に車両幅方向を軸方向とする駆動軸と一体に回動する駆動リンクと、車両幅方向を軸方向とする第2回動軸を介して前記スパッツに連結されるとともに車両幅方向を軸方向とする第3回動軸を介して前記駆動リンクに連結される中間リンクと、有し、前記駆動リンクは、前記スパッツを前記格納位置に配置する第1位置及び前記スパッツを前記展開位置に配置する第2位置の間を前記駆動軸回りに回動し、前記スパッツが前記展開位置から前記格納位置に変位するときの前記駆動リンクの回動方向を第1回動方向とし、前記第1回動方向の逆方向を第2回動方向とし、車両幅方向における側面視において、前記駆動軸及び前記第2回動軸を結ぶ線分上に前記第3回動軸が位置するときの前記駆動リンクの位置を第2中立位置としたとき、前記駆動リンクにおいて、前記第2位置は、前記第2中立位置よりも前記第2回動方向に回動した位置である。
【0160】
上記構成の車両用スパッツ装置において、駆動リンクの第2位置は、第2中立位置よりも第2回動方向に回動した位置である。このため、スパッツに作用する風圧等に応じた力が中間リンクに作用すると、駆動リンクに駆動リンクを第2回動方向に回動させるモーメントが発生し得る。つまり、この場合には、スパッツが格納位置に向かって変位するおそれがない。こうして、車両用スパッツ装置は、スパッツの姿勢を安定化できる。
【0161】
以下に技術的思想について記載する。
・[背景技術]に記載するような車両用スパッツ装置は、車両用スパッツ装置に作用する慣性力により、展開状態及び収納状態が切り替わるため、スパッツを収納したい場合に展開状態となるおそれがある。以下の技術的思想の目的は、スパッツの姿勢を安定化できる車両用スパッツ装置を提供することである。
【0162】
・車両用スパッツ装置は、車両幅方向を軸方向とする第1回動軸に回動可能に支持され、車輪の前方の空間に展開する展開位置及び前記車輪の前方の空間から退避する格納位置の間で変位するスパッツと、アクチュエータの動力を前記スパッツに伝達するリンクユニットと、を備え、前記リンクユニットは、前記アクチュエータの駆動時に車両幅方向を軸方向とする駆動軸と一体に回動する駆動リンクと、車両幅方向を軸方向とする第2回動軸を介して前記スパッツに連結されるとともに車両幅方向を軸方向とする第3回動軸を介して前記駆動リンクに連結される中間リンクと、を有し、前記駆動リンクは、前記スパッツを前記格納位置に配置する第1位置及び前記スパッツを前記展開位置に配置する第2位置の間を前記駆動軸回りに回動し、前記スパッツが前記展開位置から前記格納位置に変位するときの前記駆動リンクの回動方向を第1回動方向とし、前記第1回動方向の逆方向を第2回動方向とし、車両幅方向における側面視において、前記第2回動軸及び前記第3回動軸を結ぶ線分上に前記駆動軸が位置するときの前記駆動リンクの位置を第1中立位置としたとき、前記駆動リンクにおいて、前記第1位置は、前記第1中立位置よりも前記第1回動方向に回動した位置である。
【0163】
駆動リンクにおいて、第1位置を第1中立位置よりも第2回動方向に回動した位置とする場合、スパッツの自重等が中間リンクに作用すると、駆動リンクに駆動リンクを第2回動方向に回動させるモーメントが発生し得る。つまり、この場合には、スパッツを格納位置に留めたいにも関わらず、スパッツが展開位置に向かって変位するおそれがある。
【0164】
この点、上記構成の車両用スパッツ装置において、駆動リンクの第1位置は、第1中立位置よりも第1回動方向に回動した位置である。このため、中間リンクにスパッツの自重等が作用すると、駆動リンクに駆動リンクを第1回動方向に回動させるモーメントが発生し得る。つまり、この場合には、スパッツが展開位置に向かって変位するおそれがない。こうして、車両用スパッツ装置は、スパッツの姿勢を安定化できる。
【0165】
・上記車両用スパッツ装置は、前記アクチュエータを制御する制御装置を備え、前記制御装置は、展開準備条件が成立する場合、前記駆動リンクを前記第1位置から前記第1中立位置に回動させ、展開条件が成立する場合、前記駆動リンクを前記第2位置まで回動させることが好ましい。
【0166】
上記構成の車両用スパッツ装置は、展開準備条件の成立後に展開条件が成立する場合、駆動リンクを第1中立位置から第2位置に回動させる。このため、車両用スパッツ装置は、展開条件が成立する場合に駆動リンクを第1位置から第2位置に回動させるときと比較して、スパッツを展開位置に配置させるのに要する時間を短くできる。
【0167】
・車両幅方向における側面視において、前記駆動軸及び前記第2回動軸を結ぶ線分上に前記第3回動軸が位置するときの前記駆動リンクの位置を第2中立位置としたとき、前記駆動リンクにおいて、前記第2位置は、前記第2中立位置よりも前記第2回動方向に回動した位置であることが好ましい。
【0168】
駆動リンクにおいて、第2位置を第2中立位置よりも第1回動方向に回動した位置とする場合、スパッツに作用する風圧等に応じた力が中間リンクに作用すると、駆動リンクに駆動リンクを第1回動方向に回動させるモーメントが発生し得る。つまり、この場合には、スパッツを展開位置に留めたいにも関わらず、スパッツが格納位置に向かって変位するおそれがある。
【0169】
この点、上記構成の車両用スパッツ装置において、駆動リンクの第2位置は、第2中立位置よりも第2回動方向に回動した位置である。このため、スパッツに作用する風圧等に応じた力が中間リンクに作用すると、駆動リンクに駆動リンクを第2回動方向に回動させるモーメントが発生し得る。つまり、この場合には、スパッツが格納位置に向かって変位するおそれがない。こうして、車両用スパッツ装置は、スパッツの姿勢を安定化できる。
【0170】
・上記車両用スパッツ装置は、前記アクチュエータを制御する制御装置を備え、前記制御装置は、格納準備条件が成立する場合、前記駆動リンクを前記第2位置から前記第2中立位置に回動させ、格納条件が成立する場合、前記駆動リンクを前記第1位置まで回動させることが好ましい。
【0171】
上記構成の車両用スパッツ装置は、格納準備条件の成立後に格納条件が成立する場合、駆動リンクを第2中立位置から第1位置に回動させる。このため、車両用スパッツ装置は、格納条件が成立する場合に駆動リンクを第2位置から第1位置に回動させるときと比較して、スパッツを格納位置に配置させるのに要する時間を短くできる。
【0172】
・上記車両用スパッツ装置において、前記リンクユニットを第1リンクユニットとしたとき、前記第1回動軸を介して前記スパッツに連結される第1補助リンクと、前記第2回動軸を介して前記スパッツに連結される第2補助リンクと、を有する第2リンクユニットを備え、前記第2リンクユニットは、前記スパッツが前記展開位置に位置する場合には、前記スパッツが前記格納位置に位置する場合よりも、前記第1回動軸及び前記第2回動軸を車両後方に移動させることが好ましい。
【0173】
上記構成の車両用スパッツ装置は、展開位置において、スパッツを車輪に接近させることができる。このため、車両用スパッツ装置は、車輪の周辺の整流効果を高めることができる。
【0174】
・上記車両用スパッツ装置において、前記中間リンクと前記スパッツとの少なくとも一方は、前記第2回動軸を保持する保持孔と、前記保持孔に接続するとともに前記第2回動軸と摺動する摺動溝と、を有し、前記スパッツは、前記第2回動軸が前記保持孔に保持される状態において、前記駆動リンクが回動することによって、前記展開位置及び前記格納位置の間で変位するものであり、前記駆動リンクを前記第2位置に留めたまま、前記第2回動軸が前記保持孔と係合する状態から前記第2回動軸が前記摺動溝と係合する状態に移行することで、前記スパッツが前記展開位置から退避することが好ましい。
【0175】
スパッツを展開位置に配置した状態で車両が走行する状況下では、スパッツが路上の障害物に接触する場合があり得る。この場合、車両用スパッツ装置は、障害物がスパッツを押す力により、スパッツを展開位置から退避させる。このため、車両用スパッツ装置は、スパッツなどの装置の構成部品に過負荷が作用することを抑制できる。
【0176】
・上記車両用スパッツ装置において、前記スパッツは、前記保持孔と、前記摺動溝と、を有することが好ましい。
上記構成の車両用スパッツ装置において、保持孔及び摺動溝は、中間リンクよりも形状が大きくなりやすいスパッツに設けられる。このため、保持孔及び摺動溝の設計自由度が高くなりやすい。
【0177】
・上記車両用スパッツ装置は、前記駆動リンクが前記第2位置から前記第1位置に回動する際に、前記摺動溝を介して前記第2回動軸に係合する前記スパッツを押すことにより、前記第2回動軸が前記摺動溝と係合する状態を前記第2回動軸が前記保持孔と係合する状態に移行させる押圧部を備えることが好ましい。
【0178】
上記構成の車両用スパッツ装置は、第2回動軸が保持孔と係合する状態から第2回動軸が摺動溝と係合する状態に移行した後であっても、駆動リンクを第2位置から第1位置に回動させることで、第2回動軸が摺動溝と係合する状態から第2回動軸が保持孔と係合する状態に移行させることができる。つまり、車両用スパッツ装置は、駆動リンクを回動させることにより、第2回動軸とスパッツとの係合状態を通常の状態に復帰させることができる。
【0179】
・上記車両用スパッツ装置において、前記リンクユニットを第1リンクユニットとしたとき、前記第1回動軸を介して前記スパッツに連結される第1補助リンクと、前記第2回動軸を介して前記スパッツに連結される第2補助リンクと、を有する第2リンクユニットを備え、前記摺動溝は、前記保持孔から前記第1回動軸の周方向に延びる第1摺動溝と、前記第1摺動溝から前記第1摺動溝と交差する方向に延びる第2摺動溝と、を含み、前記第2リンクユニットは、前記スパッツが前記展開位置に位置する場合には、前記スパッツが前記格納位置に位置する場合よりも、前記第1回動軸及び前記第2回動軸を車両後方に移動させ、前記第2回動軸が前記第2摺動溝と摺動する場合には、前記第2回動軸が前記第1摺動溝と摺動する場合よりも、前記第1回動軸を車両前方に移動させることが好ましい。
【0180】
上記構成の車両用スパッツ装置は、展開位置に位置するスパッツが障害物に接触する際、第2回動軸が第1摺動溝と摺動した後に第2摺動溝と摺動するため、スパッツを車輪から遠ざかる方向に退避させることができる。
【0181】
・上記車両用スパッツ装置において、前記スパッツが前記格納位置に配置される場合、前記中間リンクは、前記駆動軸から離れる方向に湾曲していることが好ましい。
中間リンクが直線状をなしていると、駆動軸が第1位置に位置したり第1中立位置に位置したりする場合に、中間リンクと駆動軸とが干渉しやすい。この点、上記構成の車両用スパッツ装置は、中間リンクが湾曲するため、中間リンクと駆動軸とが干渉することを抑制できる。
【符号の説明】
【0182】
10…車両
13…車輪
20,20A…車両用スパッツ装置
30,30A~30D…ハウジング
34B,34C…押圧部
40,40B~40D…スパッツ
45,45C…保持孔
46(461,462),46C…摺動溝
50,50A,50D…第1リンクユニット(リンクユニット)
51,51A…駆動リンク
52,52A,52D…中間リンク
521D…保持孔
522D…摺動溝
60…第2リンクユニット
61…第1補助リンク
62…第2補助リンク
71…駆動軸
72…第1回動軸
73…第2回動軸
74…第3回動軸
75…第1支持軸
76…第2支持軸
80…アクチュエータ
90…制御装置
R1…第1回動方向
R2…第2回動方向