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特開2023-161030ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161030
(43)【公開日】2023-11-02
(54)【発明の名称】ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12G 3/005 20190101AFI20231026BHJP
   C12G 3/00 20190101ALI20231026BHJP
   C12G 3/021 20190101ALI20231026BHJP
   C12G 3/06 20060101ALI20231026BHJP
   C12G 3/04 20190101ALI20231026BHJP
   C12C 5/02 20060101ALI20231026BHJP
   C12C 5/04 20060101ALI20231026BHJP
   C12C 12/00 20060101ALI20231026BHJP
   C12C 12/04 20060101ALI20231026BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20231026BHJP
   A23L 2/38 20210101ALI20231026BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20231026BHJP
【FI】
C12G3/005
C12G3/00
C12G3/021
C12G3/06
C12G3/04
C12C5/02
C12C5/04
C12C12/00
C12C12/04
A23L2/00 B
A23L2/00 Z
A23L2/38 J
A23L2/52
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023149933
(22)【出願日】2023-09-15
(62)【分割の表示】P 2019138035の分割
【原出願日】2019-07-26
(71)【出願人】
【識別番号】311007202
【氏名又は名称】アサヒビール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122297
【弁理士】
【氏名又は名称】西下 正石
(72)【発明者】
【氏名】古原 徹
(57)【要約】
【課題】融解の終期において、母飲料の香味が薄くなり難い、ビールテイスト飲料凍結体を提供すること。
【解決手段】ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体。
【請求項2】
前記ビールテイスト飲料非発泡性中間液は、炭酸ガスを含むビールテイスト飲料から炭酸ガスを除去したものである請求項1に記載のビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体。
【請求項3】
前記炭酸ガスを含むビールテイスト飲料は、発酵ビールテイスト飲料である請求項1又は2に記載のビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体。
【請求項4】
前記炭酸ガスを含むビールテイスト飲料は、ビール、発泡酒及びビールテイスト発泡性リキュールから成る群から選択される少なくとも一種である請求項1~3のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体。
【請求項5】
前記炭酸ガスを含むビールテイスト飲料は、抑泡剤又は消泡剤を含有する請求項2~4のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体。
【請求項6】
前記ビールテイスト飲料は、炭酸ガスを添加する前の非発酵ビールテイスト飲料非発泡性中間液である請求項1に記載のビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体。
【請求項7】
前記非発酵ビールテイスト飲料は、麦及びビール香料から成る群から選択される少なくとも一種、及び、ホップ及びホップ香料から成る群から選択される少なくとも一種を原料として含有する請求項6に記載のビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体。
【請求項8】
前記非発酵ビールテイスト飲料は、ビール様の色を呈する色素又はメイラード反応物を含有する請求項6又は7に記載のビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体。
【請求項9】
ビールテイスト飲料非発泡性中間液を成形用容器中で凍結させる工程を包含するビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体の製造方法。
【請求項10】
容器内に母飲料と請求項1~8のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体とを含む容器入り飲料。
【請求項11】
前記母飲料がビールテイスト飲料である請求項10に記載の容器入り飲料。
【請求項12】
前記母飲料と前記ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体の溶融液とが、それぞれ異なる種類の飲料の香味を有し、経時的に香味の質が変化する請求項10又は11に記載の容器入り飲料。
【請求項13】
前記母飲料と前記ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体の融解液とが、それぞれ異なる色調を有し、経時的に色調が変化する請求項10又は11に記載の容器入り飲料。
【請求項14】
前記母飲料と前記ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体の融解液とが、それぞれ異なるテクスチャーを有し、経時的にテクスチャーが変化する請求項10又は11に記載の容器入り飲料。
【請求項15】
ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体以外の固形物を内部に含有する請求項1に記載のビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体。
【請求項16】
前記固形物が食品である請求項15に記載のビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体。
【請求項17】
容器内に母飲料と請求項16に記載のビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体とを含み、経時的に内部の食品による食感が付与される、容器入り飲料。
【請求項18】
容器内に母飲料と請求項1~8、15及び16のいずれか一項に記載のビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体とを含ませる工程を包含する容器入り飲料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はビールテイスト飲料に関し、詳しくは、凍結させたビールテイスト飲料に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールテイスト飲料等の炭酸飲料は、一般に、飲み頃の適温に冷却し、容器に入れた状態で飲用する。飲み頃の適温は、炭酸飲料に消費者が満足感を覚える時間を延長するために、できるだけ長時間維持することが望ましい。通常、炭酸飲料には、飲用水を凍結させた氷を含めることで、飲み頃の適温が維持される。しかしながら、氷は融解して、その周囲にある炭酸飲料(以下「母飲料」という。)を希釈する。その結果、母飲料は、味が薄く、炭酸による刺激が少なくなる。例えば、母飲料がビールテイスト飲料である場合は、氷が融解した場合、香味及び喉越し等の飲用時満足感が損なわれる。
【0003】
本明細書において、「ビールテイスト飲料」とは、味及び香気がビールを想記させる程度に同様である飲料をいう。「ビール」とは麦芽、ホップ及び水などを原料として、これらを発酵させて得られる飲料をいう。
【0004】
特許文献1には、ビール系飲料凍結体が記載されている。このビール系飲料凍結体は、ビール系飲料の液体をそのまま凍結させたビール系飲料凍結部に、ビール系飲料の発泡体を凍結させた発泡体凍結部を一体化したものである。特許文献1のビール系飲料凍結体は、液状のビール系飲料と一緒に容器に入れて使用するものである。
【0005】
即ち、ぬるくなったビール系飲料に上記ビール系飲料凍結体が加えられると、ビール系飲料は、ビール系飲料凍結体の融解により、冷却され、炭酸ガスおよびビール系飲料成分が供給され、そのおいしさが維持または回復される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014-57539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ビールテイスト飲料は炭酸ガスを含み、その凍結体は多孔質であり、広い表面積を有する。それゆえ、ビールテイスト飲料凍結体を母飲料に加えた場合、母飲料に接触する該凍結体の面積が大きく、該凍結体は広い表面から一斉に融解することになる。融解は、該凍結体に含まれる成分の中でも低融点成分から開始する。そうすると、融解の初期には低融点成分が母飲料に大量に供給され、融解の終期には高融点成分が大量に供給される。低融点成分としては、炭酸ガス、香気成分及びアルコール等が挙げられる。その結果、融解の初期と終期とでは、母飲料に供給される成分が相違し、母飲料の香味に与える影響がかなりの程度変化する。特に、融解の終期には、該凍結体の中でも氷が残存し易く、氷を添加した場合と同様に、母飲料の香味が薄くなる。
【0008】
本発明は上記課題を解決するものであり、その目的とするところは、融解の終期において、母飲料の香味が薄くなり難い、ビールテイスト飲料凍結体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体を提供する。
【0010】
ある一形態においては、前記ビールテイスト飲料非発泡性中間液は、炭酸ガスを含むビールテイスト飲料から炭酸ガスを除去したものである。
【0011】
ある一形態においては、前記炭酸ガスを含むビールテイスト飲料は、発酵ビールテイスト飲料である。
【0012】
ある一形態においては、前記炭酸ガスを含むビールテイスト飲料は、ビール、発泡酒及びビールテイスト発泡性リキュールから成る群から選択される少なくとも一種である。
【0013】
ある一形態においては、前記炭酸ガスを含むビールテイスト飲料は、抑泡剤又は消泡剤を含有する。
【0014】
ある一形態においては、前記ビールテイスト飲料は、炭酸ガスを添加する前の非発酵ビールテイスト飲料非発泡性中間液である。
【0015】
ある一形態においては、前記非発酵ビールテイスト飲料は、麦及びビール香料から成る群から選択される少なくとも一種、及び、ホップ及びホップ香料から成る群から選択される少なくとも一種を原料として含有する。
【0016】
ある一形態においては、前記非発酵ビールテイスト飲料は、ビール様の色を呈する色素又はメイラード反応物を含有する。
【0017】
また、本発明は、ビールテイスト飲料非発泡性中間液を成形用容器中で凍結させる工程を包含するビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体の製造方法を提供する。
【0018】
また、本発明は、容器内に母飲料と上記いずれかに記載のビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体とを含む容器入り飲料を提供する。
【0019】
ある一形態においては、前記母飲料がビールテイスト飲料である。
【0020】
ある一形態においては、前記母飲料と前記ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体の溶融液とが、それぞれ異なる種類の飲料の香味を有し、経時的に容器入り飲料の香味の質が変化する。
【0021】
ある一形態においては、前記母飲料と前記ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体の融解液とが、それぞれ異なる色調を有し、経時的に容器入り飲料の色調が変化する。
【0022】
ある一形態においては、前記母飲料と前記ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体の融解液とが、それぞれ異なるテクスチャーを有し、経時的に容器入り飲料のテクスチャーが変化する。
【0023】
ある一形態においては、上記ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体は、ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体以外の固形物を内部に含有する。
【0024】
ある一形態においては、前記固形物が食品である。
【0025】
また、本発明は、容器内に母飲料とビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体以外の固形物を内部に含有するビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体とを含み、経時的に内部の食品による食感が付与される、容器入り飲料を提供する。
【0026】
また、本発明は、容器内に母飲料と上記いずれかのビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体とを含ませる工程を包含する容器入り飲料の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0027】
本発明のビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体を含む母飲料は、該凍結体の融解終期において、香味が薄くなり難い。文言「薄い香味」は、加水されていわゆる水っぽくなった香味を意味する。ビールテイストが供給されて複雑化された香味は、「薄い香味」の意味に含めない。
【発明を実施するための形態】
【0028】
ビールテイスト飲料非発泡性中間液とは、炭酸ガスを実質的に含有しないこと以外はビールテイスト飲料と同様の成分を有する液体をいう。文言「炭酸ガスを実質的に含有しない」は、凍結した場合でも凍結物に気泡が視認されない程度以下の炭酸ガス含有量を意味し、具体的には、約0.02%(w/v)未満、好ましくは0.01%(w/v)未満の炭酸ガスの含有量をいう。ビールテイスト飲料非発泡性中間液が0.02%(w/v)以上の量で炭酸ガスを含有する場合は、その凍結体は多孔質になりやすい。
【0029】
ビールテイスト飲料非発泡性中間液には、ビールテイスト飲料から炭酸ガスを除去した液、及び炭酸ガスを添加しないこと以外は非発酵ビールテイスト飲料と同様にしてした液等が含まれる。例えば、非発酵ノンアルコールビールテイスト飲料等もここでいう非発酵ビールテイスト飲料に含まれる。
【0030】
ビールテイスト飲料の具体例には、ビール、発泡酒、ビールテイスト発泡性リキュール、及びリキュール類、スピリッツ類、低アルコール飲料及びノンアルコール飲料などであって、ビールらしい香味を有するものが含まれる。
【0031】
ビールテイスト飲料は、主として、麦芽又は穀類の糖化液にホップで香味を付け、これを発酵させて製造される。発酵原料として麦芽又は穀類を使用することで、ビールテイスト飲料にはエタノール、発酵感、穀物感、複雑味が付与される。製造過程において発酵工程を行うビールテイスト飲料は、「発酵ビールテイスト飲料」という。
【0032】
他方、ビールテイスト飲料には、飲用水に、麦汁、麦芽エキス、ホップ、糖類、酸味料、色素、起泡剤、香料及びエタノールなどを必要に応じて適宜配合することによりビールらしい風味及び味質に仕上げたものもある。製造過程において発酵工程を行わないビールテイスト飲料は、「非発酵ビールテイスト飲料」という。
【0033】
非発酵ビールテイスト飲料の製造に使用する香料としては、いわゆるビール香料及びホップ香料が例示される。また、非発酵ビールテイスト飲料の製造に使用する色素としては、カラメル等のビール様の色を呈する色素及びメイラード反応物が例示される。
【0034】
ビール香料とは、ビールに一般的に含まれる成分を含み、ビール様の香気を呈するものである。ビールに含まれる成分のみから構成されてもよいが、それ以外の成分を含んでいてもよい。ビール香料は、通常、ビールに含まれる成分を3種以上、好ましくは5種類以上、より好ましくは10種類以上含んでおり、例えば、酢酸エチル、イソブタノール、酢酸イソアミル、イソアミルアルコール、カプロン酸エチル、カプリル酸エチル、酢酸β‐フェネチル、β‐フェネチルアルコールなどを含む。その他、例えば、「醸造物の成分」((公財)日本醸造協会)等の文献にビールに含まれる成分として記載されている成分を含んでいてもよい。
【0035】
ホップ香料とは、ホップに一般的に含まれる成分を含み、ホップ様の香気を呈するものである。ホップに含まれる成分のみから構成されてもよいが、それ以外の成分を含んでいてもよい。ビール香料は、通常、ホップに含まれる成分を3種以上、好ましくは5種類以上、より好ましくは10種類以上含んでおり、例えば、ミルセン、βイオノン、リナロール、シトロネロール、ゲラニオール、αユーデスモールなどを含む。その他、例えば、「醸造物の成分」((公財)日本醸造協会)等の文献にホップに由来する成分として記載されている成分を含んでいてもよい。
【0036】
発酵ビールテイスト飲料は、発酵時に発生する炭酸ガスを含有する。従って、発酵ビールテイスト飲料から炭酸ガスを除去することで、ビールテイスト飲料非発泡性中間液を得ることができる。発酵ビールテイスト飲料から炭酸ガスを除去する方法は、飲料に適用可能な公知の脱ガス手法を用いることができる。例えば、開放容器に静置する方法、開放容器間で移注する方法、超音波を印加する方法がある。発酵によって発生した炭酸ガスは飲料から除去し難い傾向があり、超音波を印加する方法を用いることが好ましい。また、工業的には、減圧又は真空下において脱ガスする方法、不活性ガスを吹き込む方法、フィルターを用いる方法等を用いることが考えられる。発酵ビールテイスト飲料は、加熱や酸化によって劣化しやすいため、脱ガス手法は熱を加えない方法、真空又は不活性雰囲気下で行う方法を用いることが好ましく、開放下においてはなるべく短時間で脱ガスを行うことが好ましい。発酵ビールテイスト飲料から炭酸ガスを除去する方法を行う場合には、発酵ビールテイスト飲料に抑泡剤又は消泡剤を含有させることが好ましい。そのことで、炭酸ガスの除去を効率的に行うことができる。
【0037】
非発酵ビールテイスト飲料には炭酸ガスが添加されている。従って、発酵ビールテイスト飲料と同様に、非発酵ビールテイスト飲料から炭酸ガスを除去することで、ビールテイスト飲料非発泡性中間液を得ることができる。別の方法として、非発酵ビールテイスト飲料を製造する過程において、炭酸ガスを添加する工程を行わないで、原料になる香料等を調合することにより、ビールテイスト飲料非発泡性中間液を得ることができる。
【0038】
ビールテイスト飲料非発泡性中間液は、成形用容器に入れ、冷却して凍結させる。ビールテイスト飲料非発泡性中間液の冷却は、好ましくは、凍結体の内部に気泡が生成しない冷却条件にて行う。
【0039】
得られるビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体は、好ましくは、炭酸飲量をいわゆるオンザロックの形態で飲用するのに適する形状及び寸法を有する。ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体の体積は、例えば、炭酸飲量の容器の容積を基準にして、10~50容積%、好ましくは約20~40容積%、更に好ましくは約25~35容積%を占める寸法である。そうすることで、母飲料に接触するビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体の表面積を狭くすることができ、狭い表面から徐々に融解が進行する結果、融解の初期から終期までほぼ均一な成分が溶出する。
【0040】
また、ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体の形状は、表面積が狭くなるように、好ましくは、例えば6面体等の多面体形、球形、多角柱形、円柱形、これらに近似した塊形等である。ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体の形状が多面体形、球形又は塊形である場合、最長径の寸法が、好ましくは30~90mm、より好ましくは40~80mm、更に好ましくは50~70mmである。ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体の形状が多角柱形又は円柱形である場合、高さの寸法が、好ましくは30~90mm、より好ましくは40~80mm、更に好ましくは50~70mmであり、底面の最長径の寸法が、好ましくは30~90mm、より好ましくは40~80mm、更に好ましくは50~70mmである。
【0041】
ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体は、内部に、ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体以外の物体を含有してもよい。ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体の内部に含有される物体は、液体であっても固形物であってもよく、飲食物であっても飲食物でなくてもよい。
【0042】
該物体の具体例としては、例えば、ビールテイスト飲料非発泡性中間液とは別の種類の飲料の凍結体、果物、野菜、ハーブ、加工食品、花、オブジェ、玩具等とすることができる。該物体は、完全体であってもその一部であってもよく、粒状化、微細化又は分解された形態であってもよい。
【0043】
内部にビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体以外の物体を含有するビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体は、ビールテイスト飲料非発泡性中間液に、ビールテイスト飲料非発泡性中間液とは別の種類の飲料、その凍結体等の上記物体を混合、分散、又は融解させて、凍結させることにより製造することができる。
【0044】
ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体は、ビールテイスト飲料非発泡性中間液に着色料等を含有させることによって任意の色調に調整することができる。また、食品素材や食品添加物等を含有させて、ビールテイスト飲料非発泡性中間液の比重や粘度を調整してもよい。
【0045】
ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体を含有させる母飲料の種類は特に限定されない。母飲料としては、飲用者の嗜好に応じて種々の飲料を使用することができる。母飲料の具体例としては、例えば、炭酸飲料、アルコール飲料等の通常冷却した状態で飲用される飲料が挙げられる。炭酸飲料としては、ビール、ビールテイスト飲料、酎ハイ、ハイボール、スパークリングワイン、シードル、ノンアルコール炭酸飲料、炭酸水等が例示される。アルコール飲料としては、上記炭酸飲料のうちアルコールを含有する飲料、ウイスキー、ワイン、日本酒、焼酎、リキュール等が例示される。
【0046】
ビールテイスト飲料非発泡性中間液と母飲料は、例えば、母飲料としてビール、ビールテイスト飲料非発泡性中間液として母飲料と同種のビールから炭酸ガスを除去したものを選択する場合のように、それぞれ同種の飲料の香味を有するものを選択してもよいし、それぞれ異なる種類の飲料の香味を有するものを選択してもよい。後者の場合には、ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体が溶けるにつれて、経時的に、香味が複雑化する等の香味の質的な変化を感じることができる。
【0047】
本発明のビールテイスト飲料日発泡性中間液凍結体は融解の初期から終期まで均一な成分が徐々に溶出する。そのため、融解の終期においても飲用者はビールテイスト飲料の香味を感じることができる。また、母飲料の香味に与える影響の時間に対する勾配が、溶け始めから溶け終わりまでほぼ一定になる。
【0048】
かかる特徴から、本発明のビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体を含む母飲料は、該凍結体の融解初期、融解途中及び融解終期において、香味が薄くなり難い。特に、母飲料としてビールテイスト飲料を使用した場合は、該凍結体の融解初期、融解途中及び融解終期において、ビールテイスト飲料の香味が薄くなり難く、母飲料のビールテイストがほぼ一定に維持される。
【0049】
本発明の容器入り飲料は容器中に母飲料とビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体とを含む。その結果、母飲料はビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体の周囲に位置することになり、該凍結体を含む状態になる。容器としては、コップ、マグ及びジョッキ等が例示される。
【0050】
本発明の容器入り飲料は、容器内に母飲料とビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体とを含ませることで製造することができる。母飲料は飲み頃の適温に調温しておくことが好ましい。そうすることで、ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体の融解速度が遅くなり、母飲料に供給される成分の均一性が向上する。容器に含ませる際の母飲料の温度は、好ましくは-2℃~8℃℃、より好ましくは0~6℃、更に好ましくは2~4℃である。容器に含ませる順番は、母飲料が先でもビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体が先でもよい。
【0051】
容器中におけるビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体と母飲料との割合は、体積比で約1/10~約6/10好ましくは約3/10~約5/10より好ましくは約3/10~約4/10である。この割合が約1/10未満であると、飲料非発泡性中間液凍結体の存在時間が短くなり、母飲料の保温時間も短くなる。また、この割合が約6/10を超えると、母飲料の温度が低下し、飲み頃の適温に調温することが困難になる。
【0052】
ビールテイスト飲料非発泡性中間液と母飲料の色調が異なれば、ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体が溶けるにつれて、容器入り飲料の色調を変化させることができる。また、ビールテイスト飲料非発泡性中間液の比重を調整することによって、母飲料に溶け出たビールテイスト飲料非発泡性中間液の混ざり方を調整することも可能となる。さらに、ビールテイスト飲料非発泡性中間液の粘度を母飲料よりも高くなるようにすれば、ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体が溶けるにつれて、容器入り飲料の粘度も高くなり、経時的なテクスチャーの変化を感じることができるほか、喉の滞在時間が長くなるため、炭酸刺激を長く感じることができる。また、ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体が内部に食品を有するものである場合、ビールテイスト飲料非発泡性中間液凍結体が溶けるにつれて食品が放出されて、母飲料にその食品に由来する食感が付与される。
【0053】
以下の実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【実施例0054】
<実施例1>
市販されているビール(アサヒビール社製「アサヒスーパードライ」(商品名))350mlを500ml容のビーカーに入れた。二酸化炭素計(アントンパール社製「Carbo QC」(商品名))を使用して、ビールの炭酸ガス含有量を測定した。1ppmの消泡剤(太陽化学社製「アワブレーク」(商品名))をビールに加えた。同じ容量の空ビーカーを準備した。消泡剤を加えたビールを空ビーカーに移す移注操作を繰り返し行い、ビールから炭酸ガスを放出した。移注操作を5回、10回、20回、30回行ったところで、それぞれ、ビールの炭酸ガス含有量を測定した。次いで、超音波印加装置(Skymen社製「JP-1200」(商品名))を使用して、移注後のビールに振動数42kHzの超音波を5分間印加し、脱気した。脱気後のビールの炭酸ガス含有量を測定した。
【0055】
炭酸ガス含有量を測定した各ビールのサンプルを、直径約60mm[容積100ml]の凍結用球形容器に充填した。凍結用球形容器を-20℃に調温した冷凍庫に入れ、6時間冷却した。1種類のサンプルについて、3個の凍結体を製造した。凍結用球形容器から凍結体を取り出し、外観を観察した。以下の基準に従って、凍結体に認められる気泡の程度を評価した。結果を表1に示す。
【0056】
評価基準
×:気泡によりきれいな球体にならない
△:球体になるが、見た目にわかる気泡が存在
○:球体になり、見た目にわかる気泡が存在しない
【0057】
【表1】
【0058】
表1に示されたとおり、ビールの炭酸ガス含有量を0.2g/L未満に低減した場合に、気泡が認められない凍結体が得られた。
【0059】
上記の炭酸ガスを除去していないビールの凍結体と、移注を30回行うことで炭酸ガスを除去した凍結体とを別々の飲料用コップに入れた。室温の環境に置き、融解液がコップに20g溜まったところで、これを取り出し、アルコール濃度を測定した。この操作を凍結体が溶け終わるまで繰り返した。1種類のサンプルについて、3個の凍結体を使用し、平均値を算出した。結果を表2に示す。
【0060】
【表2】
【0061】
表2に示されたとおり、炭酸ガスを除去した凍結体は、炭酸ガスを除去していないビールの凍結体と比較して、凍結の初期から終期にわたる融解液のアルコール濃度勾配が小さかった。そのため、母飲料のアルコール濃度は凍結体が溶け終わるまで低下しないと考えられる。
【0062】
上記の炭酸ガスを除去していないビールの凍結体と、移注を30回行うことで炭酸ガスを除去した凍結体とを準備した。各凍結体を周囲温度37℃の環境に置き、溶け終わるまでの時間を測定した。1種類のサンプルについて、3個の凍結体を使用し、平均値を算出した。結果を表3に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
表3に示されたとおり、炭酸ガスを除去した凍結体は、炭酸ガスを除去していないビールの凍結体と比較して、約3倍の持続性(保冷性)を有していた。
【0065】
<実施例2>
実施例1で得られた炭酸ガスを除去していないビールの凍結体と、移注を30回行うことで炭酸ガスを除去した凍結体とを別々の飲料用コップに入れた。室温の環境に置き、融解液がコップに20g溜まったところで、これを取り出し、それぞれ4℃に調温したビール(アサヒビール社製「アサヒスーパードライ」(商品名)200mlに加えて混合し、試験対象飲料とした。この操作を凍結体が溶け終わるまで融解液が20g溜まるごとに繰り返した。
【0066】
ビールテイスト飲料非発泡性中間液20gを4℃に調温した母飲料200mlに加えて混合した飲料を調製し、対照飲料とした。試験対象飲料の香味を対照飲料と比較し、後述の基準に基づいて採点した。官能試験は訓練されたビール専門のパネリスト5名で実施し、5名の採点結果の平均値を評価点とした。結果を表4に示す。
【0067】
評価基準
1:対照より薄い
2:対照よりやや薄い
3:対照と同等
4:対照よりやや濃い
5:対照より濃い
【0068】
【表4】
【0069】
表4に示されたとおり、炭酸ガスを除去していない凍結体の融解液は、融解の初期及び終期において母飲料の香味に与える影響が大きいのに対し、炭酸ガスを除去した凍結体の融解液は、融解の初期から終期まで母飲料の香味に与える影響が小さいことが確認された。
【0070】
なお、5名のパネリスト全員が、0~20gの融解液を用いた試験対象飲料は、炭酸ガスを除去していない凍結体の方が、炭酸ガスを除去した凍結体よりも味が濃いと評価した。また、5名のパネリスト全員が、80~100gの融解液を用いた試験対象飲料は、炭酸ガスを除去していない凍結体の方が、炭酸ガスを除去した凍結体よりも味が薄いと評価した。
【0071】
<実施例3>
ビールテイスト飲料非発泡性中間液として、アサヒビール社製「アサヒスーパードライ」(商品名)の代わりにアサヒビール社製ビールテイスト清涼飲料「アサヒドライゼロ」(商品名)を使用すること以外は実施例1と同様にして、炭酸ガスを除去していないビールテイスト清涼飲料の凍結体と炭酸ガスを除去したビールテイスト清涼飲料の凍結体を調製した。
【0072】
得られた2種類の凍結体を別々の飲料用コップに入れた。室温の環境に置き、融解液がコップに20g溜まったところで、これを取り出し、それぞれ4℃に調温したビール(アサヒビール社製「アサヒスーパードライ」(商品名)200mlに加えて混合し、試験対象飲料とした。この操作を凍結体が溶け終わるまで融解液が20g溜まるごとに繰り返した。実施例2と同様にして、試験対象飲料の香味を対照飲料と比較する官能試験を行った。結果を表5に示す。
【0073】
【表5】
【0074】
表5に示された通り、炭酸ガスを除去していない凍結体の融解液は、融解の初期及び終期において母飲料の香味に与える影響が大きいのに対し、炭酸ガスを除去した凍結体の融解液は、融解の初期から終期まで母飲料の香味に与える影響が小さいことが確認された。
【0075】
なお、5名のパネリスト全員が、0~20gの融解液を用いた試験対象飲料は、炭酸ガスを除去していない凍結体の方が、炭酸ガスを除去した凍結体よりも味が濃いと評価した。また、5名のパネリスト全員が、80~100gの融解液を用いた試験対象飲料は、炭酸ガスを除去していない凍結体の方が、炭酸ガスを除去した凍結体よりも味が薄いと評価した。
【0076】
<実施例4>
実施例1と同様にして、炭酸ガスを除去していないビール(アサヒビール社製「アサヒスーパードライ」(商品名))の凍結体と炭酸ガスを除去したこのビールの凍結体を調製した。
【0077】
得られた2種類の凍結体を別々の飲料用コップに入れた。室温の環境に置き、融解液がコップに20g溜まったところで、これを取り出し、それぞれ4℃に調温した炭酸飲量(アサヒ飲料社製「アサヒウィルキンソンドライジンジャエール」(商品名))200mlに加えて混合し、試験対象飲料とした。この操作を凍結体が溶け終わるまで融解液が20g溜まるごとに繰り返した。実施例2と同様にして、試験対象飲料の香味を対照飲料と比較する官能試験を行った。結果を表6に示す。
【0078】
【表6】
【0079】
表6に示されたとおり、炭酸ガスを除去していない凍結体の融解液は、融解の初期及び終期において母飲料の香味に与える影響が大きいのに対し、炭酸ガスを除去した凍結体の融解液は、融解の初期から終期まで母飲料の香味に与える影響が小さいことが確認された。
【0080】
なお、5名のパネリスト全員が、0~20gの融解液を用いた試験対象飲料は、炭酸ガスを除去していない凍結体の方が、炭酸ガスを除去した凍結体よりも味が濃いと評価した。また、5名のパネリスト全員が、80~100gの融解液を用いた試験対象飲料は、炭酸ガスを除去していない凍結体の方が、炭酸ガスを除去した凍結体よりも味が薄いと評価した。
【手続補正書】
【提出日】2023-10-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸ガスを含む発酵ビールテイスト飲料から炭酸ガスを除去して得た発酵ビールテイスト飲料非発泡中間液を凍結させることを含む、ビールテイスト飲料非発泡中間液凍結体の製造方法。
【請求項2】
炭酸ガスを添加する工程を行わないで得た非発酵ビールテイスト飲料非発泡中間液を凍結させることを含む、ビールテイスト飲料非発泡中間液凍結体の製造方法。