(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161089
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】燃料電池システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20231030BHJP
H01M 8/10 20160101ALN20231030BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071230
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】殿迫 徹也
(72)【発明者】
【氏名】野々山 順朗
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126BB06
5H126DD02
5H126DD03
5H126DD05
5H126EE11
5H127AA06
5H127AB04
5H127AB29
5H127AC07
5H127BA02
5H127BA22
5H127BA28
5H127BA59
5H127BB02
5H127BB12
5H127BB37
5H127BB39
5H127CC02
(57)【要約】
【課題】燃料電池システムのコストを低減することができ、燃料電池の発電効率を向上させることができる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】空冷式の燃料電池システムであって、前記燃料電池システムは、燃料電池と、当該燃料電池に冷却用流体を供給する冷却用流体供給流路と、当該冷却用流体を外部に排出する冷却用流体排出流路と、冷却用流体駆動部と、発熱体と、を備え、前記発熱体は、前記燃料電池に供給される前記冷却用流体を加温可能な所定の領域に配置されていることを特徴とする、燃料電池システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空冷式の燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムは、燃料電池と、当該燃料電池に冷却用流体を供給する冷却用流体供給流路と、当該冷却用流体を外部に排出する冷却用流体排出流路と、冷却用流体駆動部と、発熱体と、を備え、
前記発熱体は、前記燃料電池に供給される前記冷却用流体を加温可能な所定の領域に配置されていることを特徴とする、燃料電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃料電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池の性能を向上させるための燃料電池システムが検討されている。
例えば特許文献1では、燃料電池のスタックの端部にヒータを設けることで、燃料電池スタックの端側に設置されたセルの温度を適切に調節する燃料電池が開示されている。
特許文献2では、専用のヒータを設置することなく、燃料電池の水循環系を加熱できるようにする燃料電池車の温調機器配置構造が開示されている。
特許文献3では、従来コンピュータ10から排出されていた無駄なエネルギーを低減し、燃料電池27の発電効率を高める燃料電池システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-126782号公報
【特許文献2】特開2005-104354号公報
【特許文献3】特開2004-362972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料電池の端部にヒータを設けると、ヒータのために余分な電力を消費してしまい、燃料電池システム全体のエネルギー効率が低下し、燃料電池の出力として取り出せる電力が減少してしまう。
また、燃料電池システムの構造が複雑となり車両等に搭載し難く、且つ、コストが上がってしまう。
【0005】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、燃料電池システムのコストを低減することができ、燃料電池の発電効率を向上させることができる燃料電池システムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の燃料電池システムは、空冷式の燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムは、燃料電池と、当該燃料電池に冷却用流体を供給する冷却用流体供給流路と、当該冷却用流体を外部に排出する冷却用流体排出流路と、冷却用流体駆動部と、発熱体と、を備え、
前記発熱体は、前記燃料電池に供給される前記冷却用流体を加温可能な所定の領域に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の燃料電池システムによれば、燃料電池システムのコストを低減することができ、燃料電池の発電効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の燃料電池システムにおける発熱体の配置の一例を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本開示の燃料電池システムにおける発熱体の配置の別の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示による実施の形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本開示の実施に必要な事柄(例えば、本開示を特徴付けない燃料電池システムの一般的な構成および製造プロセス)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本開示は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
また、図における寸法関係(長さ、幅、厚さ等)は実際の寸法関係を反映するものではない。
本明細書において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、数値範囲における上限値と下限値は任意の組み合わせを採用できる。
【0010】
本開示の燃料電池システムは、空冷式の燃料電池システムであって、
前記燃料電池システムは、燃料電池と、当該燃料電池に冷却用流体を供給する冷却用流体供給流路と、当該冷却用流体を外部に排出する冷却用流体排出流路と、冷却用流体駆動部と、発熱体と、を備え、
前記発熱体は、前記燃料電池に供給される前記冷却用流体を加温可能な所定の領域に配置されていることを特徴とする。
【0011】
本開示の燃料電池システムによれば、燃料電池に供給される冷却用流体(冷却風)を加温可能な所定の領域に発熱体を設置する。
本開示の燃料電池システムによれば、発熱体付近を通過する冷却用流体に熱が伝わり、冷却流体の温度が上昇する。その冷却用流体が、温度低下の懸念される燃料電池端部に流入することで燃料電池端部が暖められる。燃料電池の温度が適切な温度に調節されることにより、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
本開示の燃料電池システムによれば、従来技術のヒータ等が必要なくなることで、燃料電池システムのコストを低減することができる。またヒータで発熱させることがないため、余分な消費電力がなくなり、燃料電池の発電効率が上がる。
【0012】
本開示の燃料電池システムは、空冷式燃料電池システムである。
空冷式燃料電池システムは、冷却用流体(冷媒)として主に空気を用いる。
冷却用流体は、空気、酸素、及び、窒素からなる群より選ばれる少なくとも一種の気体である。
本開示においては、冷却用流体としての空気を冷却用空気と称する場合がある。本開示においては、酸化剤ガスとしての空気を反応用空気と称する場合がある。
【0013】
本開示においては、燃料ガス、及び、酸化剤ガスをまとめて反応ガスと称する。アノードに供給される反応ガスは、燃料ガスであり、カソードに供給される反応ガスは酸化剤ガスである。燃料ガスは、主に水素を含有するガスであり、水素であってもよい。酸化剤ガスは、酸素を含有するガスであり、酸素、空気、及び、乾燥空気等であってもよい。
【0014】
本開示の燃料電池システムは、燃料電池と、当該燃料電池に冷却用流体を供給する冷却用流体供給流路と、当該冷却用流体を外部に排出する冷却用流体排出流路と、冷却用流体駆動部と、発熱体と、を備える。
本開示の燃料電池システムは、車両等の移動体に搭載されて用いられてもよい。車両は、燃料電池車両等であってもよい。車両以外の移動体としては、例えば、鉄道、船舶、航空機等が挙げられる。
また、本開示の燃料電池システムは、二次電池の電力でも走行可能な車両等の移動体に搭載されて用いられてもよい。
移動体は、本開示の燃料電池システムを備えていてもよい。
【0015】
本開示の燃料電池システムは、燃料電池を備える。
燃料電池は、単セルを1つのみ有するものであってもよいし、単セルを複数個積層した積層体である燃料電池スタックであってもよい。
単セルの積層数は特に限定されず、例えば、2~数百個であってもよい。
本開示においては、単セル、及び、単セルを積層した燃料電池スタックのいずれも、燃料電池と呼ぶ場合がある。
【0016】
燃料電池の単セルは、通常、膜電極ガス拡散層接合体(MEGA)を備える。
膜電極ガス拡散層接合体は、アノード側ガス拡散層及び、アノード触媒層及び、電解質膜及び、カソード触媒層及び、カソード側ガス拡散層をこの順に有する。
【0017】
カソード(酸化剤極)は、カソード触媒層及びカソード側ガス拡散層を含む。
アノード(燃料極)は、アノード触媒層及びアノード側ガス拡散層を含む。
カソード触媒層及びアノード触媒層をまとめて触媒層と称する。
触媒層は、例えば、電気化学反応を促進する触媒金属、プロトン伝導性を有する電解質、及び、電子伝導性を有する担体等を備えていてもよい。
触媒金属としては、例えば、白金(Pt)、及び、Ptと他の金属とから成る合金(例えばコバルト、及び、ニッケル等を混合したPt合金)等を用いることができる。
電解質としては、フッ素系樹脂等であってもよい。フッ素系樹脂としては、例えば、ナフィオン溶液等を用いてもよい。
上記触媒金属は担体上に担持されており、各触媒層では、触媒金属を担持した担体(触媒担持担体)と電解質とが混在していてもよい。
触媒金属を担持するための担体は、例えば、一般に市販されているカーボンなどの炭素材料等が挙げられる。
【0018】
カソード側ガス拡散層及びアノード側ガス拡散層をまとめてガス拡散層と称する。
ガス拡散層は、ガス透過性を有する導電性部材等であってもよい。
導電性部材としては、例えば、カーボンクロス、及びカーボンペーパー等のカーボン多孔質体、並びに、金属メッシュ、及び、発泡金属などの金属多孔質体等が挙げられる。
【0019】
電解質膜は、固体高分子電解質膜であってもよい。固体高分子電解質膜としては、例えば、水分が含まれたパーフルオロスルホン酸の薄膜等のフッ素系電解質膜、及び、炭化水素系電解質膜等が挙げられる。電解質膜としては、例えば、ナフィオン膜(デュポン社製)等であってもよい。
【0020】
単セルは、必要に応じて膜電極ガス拡散層接合体の両面を挟持する2枚のセパレータを備えてもよい。2枚のセパレータは、一方がアノード側セパレータであり、もう一方がカソード側セパレータである。本開示では、アノード側セパレータとカソード側セパレータとをまとめてセパレータという。
セパレータは、反応ガス及び冷却用流体等の流体を単セルの積層方向に流通させるための供給孔及び排出孔等の孔を有していてもよい。
供給孔は、燃料ガス供給孔、酸化剤ガス供給孔、及び、冷却用流体供給孔等が挙げられる。
排出孔は、燃料ガス排出孔、酸化剤ガス排出孔、及び、冷却用流体排出孔等が挙げられる。
セパレータは、ガス拡散層に接する面に反応ガス流路を有していてもよい。また、セパレータは、ガス拡散層に接する面とは反対側の面に燃料電池の温度を一定に保つための冷却用流体流路を有していてもよい。
セパレータは、ガス不透過の導電性部材等であってもよい。導電性部材としては、例えば、熱硬化樹脂、熱可塑樹脂、及び、樹脂繊維等の樹脂材、カーボン粉末、及び、カーボン繊維等のカーボン材を圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン、及び、プレス成形した金属(例えば、鉄、アルミニウム、及び、ステンレス等)板等であってもよい。また、セパレータが集電機能を備えるものであってもよい。
セパレータの形状は、長方形、横長6角形、横長8角形、円形、及び、長丸形状等であってもよい。
【0021】
燃料電池スタックは、各供給孔が連通した入口マニホールド、及び、各排出孔が連通した出口マニホールド等のマニホールドを有していてもよい。
入口マニホールドは、アノード入口マニホールド、カソード入口マニホールド、及び、冷却用流体入口マニホールド等が挙げられる。
出口マニホールドは、アノード出口マニホールド、カソード出口マニホールド、及び、冷却用流体出口マニホールド等が挙げられる。
本開示においては、カソード入口マニホールド、及び、カソード出口マニホールドは、まとめてカソードマニホールドという。
本開示においては、冷却用流体入口マニホールド、及び、冷却用流体出口マニホールドは、まとめて冷却用流体マニホールドという。
燃料電池は、カソードマニホールドと冷却用流体マニホールドとが独立した構造を備えていてもよい。
【0022】
燃料電池は隣り合う単セルの間にガスケットを備えていてもよい。ガスケットは各反応ガス系からの反応ガスの漏れを防止するためのシール材として用いる。
ガスケットは、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)ゴム、シリコンゴム、熱可塑性エラストマー樹脂等であってもよい。
【0023】
燃料電池は、金属製の冷却フィンを有していてもよい。金属としては、Al、Ti、SUS等が挙げられる。燃料電池は隣り合う単セルの間に冷却フィンを備えていてもよい。
冷却フィンは、冷却用流体流路として機能する複数の凹溝を有するコルゲート状の板であってもよい。
冷却フィンは例えば、金属板をコルゲート状に折り曲げ加工されたもの等を用いることができる。冷却フィンは、表面に銀、ニッケル、カーボン等の導電処理がされていてもよい。
冷却フィンの凹溝は、折り曲げ加工により形成してもよい。
凹溝の深さは例えば、1.0~2.0mmであってもよい。
折り曲げ加工は、例えば凹溝深さ1.0~2.0mm、幅1.0~2.0mmのピッチで凹凸成型してもよい。
冷却フィンは、互いに隣り合う単セルの間に配置されていれば、隣り合う単セルの間の面方向の少なくとも一部の領域に配置されていてもよい。
冷却フィンは、面方向において隣り合う単セルの間の少なくともMEGAと対向する領域に配置されていてもよい。
冷却フィンは、面方向において隣り合う単セルの間のガスケットが配置される領域以外の領域に配置されていてもよい。
冷却フィンの形状は、長方形、横長6角形、横長8角形、円形、長丸形状等であってもよい。
【0024】
空冷式燃料電池システムは、空気系として空気導入部を備えていてもよい。
空気導入部は、空冷式燃料電池システムの外部から空気を取り入れる。
空気導入部は、例えば、吸気口等であってもよい。
空気導入部には、圧損体が設けられていてもよい。圧損体としては、フィルター等が挙げられる。
【0025】
空気導入部は、空気分配部を備えていてもよい。空気分配部は、外部から取り入れた空気を、燃料電池に導入する前に、反応用空気と冷却用空気とに分配する。なお、空気導入部として、反応用空気を外部から取り入れる反応用空気導入部と冷却用空気を外部から取り入れる冷却用空気導入部を有する場合は、空気分配部は必ずしも必要ではない。
空気分配部が空気を分配する反応用空気と冷却用空気との分配比は、流量比で1:20~1:50であってもよい。
空気分配部は空気を取り込むことが可能なハウジング等であってもよい。ハウジングの材質は特に限定されず、金属、樹脂、炭素系材料等であってもよい。
【0026】
燃料電池システムは、燃料電池の冷却系を備える。
冷却系は、冷却用流体供給流路と、冷却用流体排出流路と、冷却用流体駆動部と、発熱体と、を備える。
冷却用流体供給流路は、空気導入部と燃料電池の冷却用流体入口とを接続し、燃料電池に冷却用流体を供給することを可能にする。冷却用流体入口は、冷却用流体供給孔、冷却用流体入口マニホールド等であってもよい。
冷却系は、冷却用流体排出流路を備えていてもよい。
冷却用流体排出流路は、燃料電池の冷却用流体出口と外部とを接続し、当該冷却用流体を外部に排出することを可能にする。冷却用流体出口は、冷却用流体排出孔、冷却用流体出口マニホールド等であってもよい。
冷却用流体駆動部は、冷却用流体排出流路に配置されていてもよい。
冷却用流体駆動部は、制御部と電気的に接続される。冷却用流体駆動部は、制御部からの制御信号に従って駆動される。制御部は、冷却用流体駆動部から燃料電池に供給される冷却用流体の流量を制御する。これにより燃料電池の温度が制御されてもよい。
冷却用流体駆動部は、エアポンプ、エアコンプレッサ、エアブロワー、エアファン等が挙げられる。
冷却系は冷却用流体の出口側に冷却用流体駆動部を設置することで、燃料電池の冷却用流体マニホールド内の圧力を大気圧以下とすることができる。
冷却系はバルブを持たない大気開放構造とし、冷却用流体を外気圧と等圧(例えば-0.01~-0.3 kPaG)にすることで、燃料電池の構造への差圧ストレスを防ぐことができ、安価で軽量のハウジング部材を使用することができる。冷却用流体供給流路、冷却用流体排出流路は、具体的には配管であってもよい。
【0027】
発熱体は、燃料電池に供給される冷却用流体を加温可能な所定の領域に配置されていればよい。
発熱体は、冷却用流体供給流路の外壁面の所定の位置に配置されていてもよく、内壁面の所定の位置に配置されていてもよく、燃料電池の外壁面の所定の位置に配置されていてもよい。配置する発熱体は、加温したい燃料電池の部位に応じて厚さや高さが異なるものを適宜選択して配置すればよい。例えば、発熱体を冷却用流体供給流路の外壁面の所定の位置に配置する場合は、燃料電池システムの体積を低減する観点から厚さの薄い発熱体を配置してもよい。
発熱体は、ヒータ及び燃料電池システムを構成する補機部品等であってもよいが、コストを下げる観点から燃料電池システムを構成する補機部品であってもよい。
補機部品は、DC/DCコンバーター、バッテリ、制御部、及び、酸化剤ガス供給部等であってもよい。
【0028】
燃料電池システムは、酸化剤ガス系を備える。
酸化剤ガス系は、酸化剤ガス供給部、酸化剤ガス供給流路、酸化剤ガス排出流路、酸化剤ガスバイパス流路、バイパス弁等を備えていてもよい。酸化剤ガス供給流路、酸化剤ガス排出流路、酸化剤ガスバイパス流路は、具体的には配管であってもよい。
酸化剤ガス供給部は、燃料電池に酸化剤ガスを供給する。具体的には、酸化剤ガス供給部は、燃料電池のカソードに酸化剤ガスを供給する。
酸化剤ガス系の密閉体積は燃料ガス系の密閉体積の5倍以下であってもよい。
【0029】
酸化剤ガス供給部としては、例えば、エアポンプ、エアコンプレッサ、エアブロワー、エアファン等が挙げられる。
酸化剤ガス系は酸化剤ガスを燃料電池に導入する前に独立した酸化剤ガス供給部を備えていてもよい。冷却系と酸化剤ガス系のそれぞれの系に独立して冷却用流体駆動部、酸化剤ガス供給部を備えることにより、冷却用流体としての冷却用空気と酸化剤ガスとしての反応用空気の流量を独立して制御することができ、排水性の制御、湿度の制御を精度よく行うことができ、燃料電池の発電性能を向上させることができる。
酸化剤ガス供給部は、酸化剤ガス供給流路の燃料電池よりも上流に配置されていてもよい。
酸化剤ガス供給部は、制御部と電気的に接続される。酸化剤ガス供給部は、制御部からの制御信号に従って駆動される。酸化剤ガス供給部は、制御部によって酸化剤ガス供給部からカソードに供給される酸化剤ガスの流量及び圧力からなる群より選ばれる少なくとも1つを制御されてもよい。
【0030】
酸化剤ガス供給流路は、酸化剤ガス供給部と燃料電池の酸化剤ガス入口とを接続する。
酸化剤ガス供給流路は、酸化剤ガス供給部から燃料電池のカソードへの酸化剤ガスの供給を可能にする。酸化剤ガス入口は、酸化剤ガス供給孔、カソード入口マニホールド等であってもよい。酸化剤ガス供給流路は、空気分配部から分岐していてもよい。
酸化剤ガス供給流路には、酸化剤ガス供給部の上流に圧損体が設けられていてもよい。
圧損体としては、フィルター等が挙げられる。酸化剤ガス供給流路に設けられる圧損体は、空気導入部に設けられる圧損体よりも、圧損の高い、よりきめの細かいフィルター等を用いてもよい。空気導入系全体を清浄化すると、燃料電池のエネルギー損失が大きくなるが、酸化剤ガス系のみを清浄化することで、燃料電池のエネルギー損失を抑制することができる。また、よりきめの細かいフィルターを用いるため、冷却用流体としての冷却用空気のコンタミネーションを減らすことができ、燃料電池の耐久性を向上させることができる。
【0031】
酸化剤ガス排出流路は、燃料電池の酸化剤ガス出口と空冷式燃料電池システムの外部とを接続する。酸化剤ガス排出流路は、燃料電池のカソードから排出される酸化剤ガスの空冷式燃料電池システムの外部への排出を可能にする。酸化剤ガス出口は、酸化剤ガス排出孔、カソード出口マニホールド等であってもよい。
酸化剤ガス排出流路は、燃料電池の酸化剤ガス出口の下流に酸化剤ガス圧力調整弁を有していてもよい。
酸化剤ガス圧力調整弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によって酸化剤ガス圧力調整弁が開かれることにより、酸化剤ガスを酸化剤ガス排出流路から外部へ排出する。また、酸化剤ガス圧力調整弁の開度を調整することにより、カソードに供給される酸化剤ガス圧力(カソード圧力)を調整してもよい。
【0032】
酸化剤ガスバイパス流路は、酸化剤ガス供給流路から分岐し、燃料電池を迂回し、反酸化剤ガス供給流路の分岐部と酸化剤ガス排出流路の合流部とを接続する。
酸化剤ガスバイパス流路には、バイパス弁が配置される。
バイパス弁は、制御部と電気的に接続され、制御部によってバイパス弁が開かれることにより、燃料電池への酸化剤ガスの供給が不要な場合に燃料電池を迂回して酸化剤ガスを酸化剤ガス排出流路から外部へ排出することができる。
【0033】
燃料電池システムは、燃料ガス系を備えていてもよい。
燃料ガス系は、燃料電池に燃料ガスを供給する。
燃料ガス系は燃料ガス供給部、燃料ガス供給流路、燃料オフガス排出流路、燃料ガス循環流路等を備えていてもよい。
燃料ガス供給部は、燃料ガスを燃料電池のアノードに供給する。
燃料ガス供給部としては、例えば、燃料タンク等が挙げられ、具体的には、液体水素タンク、及び、圧縮水素タンク等が挙げられる。
燃料ガス供給部は、制御部と電気的に接続される。燃料ガス供給部は、制御部からの制御信号に従って、燃料ガス供給部の主止弁の開閉が制御されることにより燃料ガスの燃料電池への供給のON/OFFが制御されてもよい。
燃料ガス供給流路は、燃料ガス供給部と燃料電池のアノード入口とを接続する。燃料ガス供給流路は、燃料電池のアノードへの水素を含む燃料ガスの供給を可能にする。アノード入口は、燃料ガス供給孔、アノード入口マニホールド等であってもよい。
燃料オフガス排出流路は、燃料電池のアノード出口と燃料電池システムの外部とを接続する。燃料オフガス排出流路は、酸化剤オフガス排出流路の所定の領域で酸化剤オフガス排出流路と合流してもよい。アノード出口は、燃料ガス排出孔、アノード出口マニホールド等であってもよい。
燃料オフガスは、アノードにおいて未反応のまま通過した燃料ガス及び、カソードで生成した生成水がアノードに到達した水分等を含んでいてもよい。燃料オフガスは、触媒層及び電解質膜等で生成した腐食物質及び、掃気時にアノードに供給されてもよい酸化剤ガス等を含む場合がある。
燃料ガス循環流路は、燃料オフガス排出流路の分岐部で燃料オフガス排出流路から分岐し、燃料ガス供給流路の合流部で、燃料ガス供給流路と合流し、燃料オフガスを循環ガスとして燃料ガス系内で循環させることを可能にする。燃料オフガス排出流路の分岐部に燃料オフガスの外部への排出流量と燃料ガス系内での循環流量を制御可能な排出・循環制御三方弁を配置してもよい。排出循環制御三方弁は制御部と電気的に接続され、制御部によって排出・循環制御三方弁の開閉及び開度が制御されることにより、燃料オフガスの外部への排出流量と燃料ガス系内での循環流量を制御してもよい。
【0034】
燃料電池システムは、バッテリを備えていてもよい。
バッテリ(二次電池)は、充放電可能なものであればよく、例えば、ニッケル水素二次電池、及び、リチウムイオン二次電池等の従来公知の二次電池が挙げられる。また、二次電池は、電気二重層コンデンサ等の蓄電素子を含むものであってもよい。二次電池は、複数個を直列に接続した構成であってもよい。二次電池は、エアコンプレッサ等に電力を供給する。二次電池は、例えば、家庭用電源等の車両等の移動体の外部の電源から充電可能になっていてもよい。二次電池は、燃料電池の出力により充電されてもよい。二次電池の充放電は、制御部によって制御されてもよい。
【0035】
燃料電池システムは、通常、制御部を備える。制御部は、冷却用流体駆動部、酸化剤ガス供給部等の駆動のON・OFFを制御する。
制御部は、物理的には、例えば、CPU(中央演算処理装置)等の演算処理装置と、CPUで処理される制御プログラム及び制御データ等を記憶するROM(リードオンリーメモリー)、並びに、主として制御処理のための各種作業領域として使用されるRAM(ランダムアクセスメモリー)等の記憶装置と、入出力インターフェースとを有するものである。また、制御部は、例えば、電子制御ユニット(ECU:Electronic Control Unit)等の制御装置であってもよい。
制御部は、車両等の移動体に搭載されていてもよいイグニッションスイッチと電気的に接続されていてもよい。制御部はイグニッションスイッチが切られていても外部電源により動作可能であってもよい。
【0036】
図1は、本開示の燃料電池システムにおける発熱体の配置の一例を示す模式図である。
図1において発熱体11は、燃料電池10に供給される冷却用流体CFを加温可能な冷却用流体供給流路20の外壁側に配置されている。
燃料電池10の発電領域は、両端部が低温部、中央部が高温部となる傾向があり、両端部を通過する冷却用流体CFを加温することにより、燃料電池10内の温度を均一に保つことができる。
【0037】
図2は、本開示の燃料電池システムにおける発熱体の配置の別の一例を示す模式図である。
図2において発熱体11は、燃料電池10に供給される冷却用流体CFを加温可能な冷却用流体供給流路20の内部に配置されている。
図2においても、低温部を通過する冷却用流体CFを加温することにより、燃料電池10内の温度を均一に保つことができる。
【符号の説明】
【0038】
10 燃料電池
11 発熱体
20 冷却用流体供給流路
CF 冷却用流体