(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161091
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
H01L25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071243
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002918
【氏名又は名称】弁理士法人扶桑国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸山 力宏
(72)【発明者】
【氏名】小田 佳典
(72)【発明者】
【氏名】原田 孝仁
(57)【要約】
【課題】リードフレームに水滴が付着しても短絡の発生を防止する。
【解決手段】配線保護部35は、第1,第2リードフレーム51,52の一部を包含し、第1,第2リードフレーム51,52が突出された包含面35aを備える。包含面35aは、半導体チップ及び半導体チップに平行を成し、第1,第2リードフレーム51,52との間に包含面35aに対して突出する止水部36を含む。この場合、第1,第2リードフレーム51,52を伝った水滴が包含面35aに到達しても、包含面35a上において水滴の、対向する第1,第2リードフレーム51,52側への移動が止水部36により妨げられる。このため、第1,第2リードフレーム51,52の短絡が防止され、半導体装置の信頼性の低下を抑制することができる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1半導体チップ及び第2半導体チップと、
第1下端部が前記第1半導体チップに電気的に接続された第1主電流端子と、第2下端部が前記第2半導体チップに電気的に接続された第2主電流端子と、前記第1主電流端子の一部と前記第2主電流端子の一部とを共に包含し、前記第1主電流端子及び前記第2主電流端子が突出された包含面を備える配線保護部と、を有する配線ユニットと、
を含み、
前記包含面は、前記第1半導体チップ及び前記第2半導体チップに平行を成し、前記第1主電流端子と前記第2主電流端子との間に前記包含面に対して突出する止水部を含む、
半導体装置。
【請求項2】
前記包含面から突出する前記第1主電流端子及び前記第2主電流端子は平面視で対向している、
請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1主電流端子及び前記第2主電流端子の前記包含面から突出する部分は柱状である、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1主電流端子及び前記第2主電流端子の前記包含面から突出する部分は平板状であって、それぞれの平板面が対向している、
請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記止水部は、前記第1主電流端子及び前記第2主電流端子の幅方向に平行であって、前記包含面を前記幅方向に横断している、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記止水部は、前記包含面に前記幅方向に横断して形成された窪みの底部に形成されている、
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記止水部は、複数形成されている、
請求項5に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記止水部は、前記第1主電流端子と前記第2主電流端子との間に突出する部分を含んで、前記第1主電流端子及び前記第2主電流端子の少なくとも一方を取り囲んでいる、
請求項4に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記止水部は前記配線保護部と同じ材質であって、前記包含面に一体的に形成されている、
請求項5から8のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項10】
前記包含面から突出する前記第1主電流端子及び前記第2主電流端子が挿通される蓋をさらに含む、
請求項1から5のいずれかに記載の半導体装置。
【請求項11】
前記止水部は接着部材であって、前記包含面と前記蓋の裏面とに挟持されている、
請求項10に記載の半導体装置。
【請求項12】
前記止水部は、前記第1主電流端子及び前記第2主電流端子の少なくとも一方に密着して設けられている、
請求項11に記載の半導体装置。
【請求項13】
前記止水部は、前記第1主電流端子及び前記第2主電流端子のそれぞれに密着して設けられている、
請求項12に記載の半導体装置。
【請求項14】
前記止水部は、さらに、前記第1主電流端子及び前記第2主電流端子の間を塞いで設けられている、
請求項11に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置は、パワーデバイスを含み、例えば、インバータを構成する電力変換装置として用いられる。パワーデバイスは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、パワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。半導体装置は、パワーデバイスを含む半導体チップと複数の絶縁回路基板とを含む。また、半導体装置は、半導体チップに電気的に接続される複数のリードフレームをさらに含む。主電流用の2つのリードフレーム(主電流端子)の一部が樹脂により包含されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
利用環境によっては、このような半導体装置に結露が発生する。特に、樹脂で一部が包含された2つのリードフレームに結露が発生すると、結露による水滴がそれぞれのリードフレームを伝う。この際、2つのリードフレームの一部を包含する樹脂の包含面に水滴がそれぞれ流れ、流れた水滴が当該包含面上で合流すると、2つのリードフレームがショート(短絡)してしまう。このため、故障が生じ、半導体装置の信頼性が低下してしまう。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、リードフレーム(主電流端子)に水滴が付着しても短絡の発生が防止された半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一観点によれば、第1半導体チップ及び第2半導体チップと、第1下端部が前記第1半導体チップに電気的に接続された第1主電流端子と、第2下端部が前記第2半導体チップに電気的に接続された第2主電流端子と、前記第1主電流端子の一部と前記第2主電流端子の一部とを共に包含し、前記第1主電流端子及び前記第2主電流端子が突出された包含面を備える配線保護部と、を有する配線ユニットと、を含み、前記包含面は、前記第1半導体チップ及び前記第2半導体チップに平行を成し、前記第1主電流端子と前記第2主電流端子との間に前記包含面に対して突出する止水部を含む、半導体装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、リードフレーム(主電流端子)に水滴が付着しても短絡の発生を防止して、半導体装置の破損を予防でき、半導体装置の信頼性の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態の半導体装置の外観図である。
【
図2】第1の実施の形態の半導体装置に含まれるケースの平面図である。
【
図3】第1の実施の形態の半導体装置の断面図である。
【
図4】第1の実施の形態の半導体装置に含まれる半導体ユニットの平面図である。
【
図5】第1の実施の形態の半導体装置に含まれるリードフレームの斜視図である。
【
図6】第1の実施の形態の半導体装置に含まれる配線ユニットの断面図である。
【
図7】第1の実施の形態の半導体装置に含まれる配線ユニットの平面図である。
【
図8】参考例の半導体装置に含まれる配線ユニットの断面図である。
【
図9】第1の実施の形態(変形例1-1)の半導体装置に含まれる配線ユニットの断面図である。
【
図10】第1の実施の形態(変形例1-1)の半導体装置に含まれる配線ユニットの平面図である。
【
図11】第1の実施の形態(変形例1-2)の半導体装置に含まれる配線ユニットの断面図である。
【
図12】第1の実施の形態(変形例1-2)の半導体装置に含まれる配線ユニットの平面図である。
【
図13】第1の実施の形態(変形例1-3)の半導体装置に含まれる配線ユニットの断面図である。
【
図14】第1の実施の形態(変形例1-3)の半導体装置に含まれる配線ユニットの平面図である。
【
図15】第2の実施の形態の半導体装置に含まれる配線ユニットの断面図である。
【
図16】第2の実施の形態の半導体装置に含まれる配線ユニットの平面図である。
【
図17】第2の実施の形態(変形例2-1)の半導体装置に含まれる配線ユニットの断面図である。
【
図18】第2の実施の形態(変形例2-1)の半導体装置に含まれる配線ユニットの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、実施の形態について説明する。なお、以下の説明において、「おもて面」及び「上面」とは、
図1の半導体装置1において、上側(+Z方向)を向いたX-Y面を表す。同様に、「上」とは、
図1の半導体装置1において、上側(+Z方向)の方向を表す。「裏面」及び「下面」とは、
図1の半導体装置1において、下側(-Z方向)を向いたX-Y面を表す。同様に、「下」とは、
図1の半導体装置1において、下側(-Z方向)の方向を表す。必要に応じて他の図面でも同様の方向性を意味する。「おもて面」、「上面」、「上」、「裏面」、「下面」、「下」、「側面」は、相対的な位置関係を特定する便宜的な表現に過ぎず、本発明の技術的思想を限定するものではない。例えば、「上」及び「下」は、必ずしも地面に対する鉛直方向を意味しない。つまり、「上」及び「下」の方向は、重力方向に限定されない。また、以下の説明において「主成分」とは、80vol%以上含む場合を表す。
【0010】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態の半導体装置の外観について、
図1を用いて説明する。
図1は、第1の実施の形態の半導体装置の外観図である。半導体装置1は、後述する半導体ユニット2a,2bがケース3に収納されている。半導体装置1の裏面(ケース3の裏側)には、平面視で矩形状の放熱ベース板17が設けられている(
図3を参照)。
【0011】
ケース3は、側壁3a~3dと端子口32a,32bとを含んでいる。また、ケース3は、平面視で四隅に締結孔5をそれぞれ含んでいる。また、ケース3は、蓋4が取り付けられている。
【0012】
側壁3a~3dは、放熱ベース板17の四方を囲んでいる。すなわち、側壁3a~3dは放熱ベース板17上に配置された半導体ユニット2a,2bを囲む。なお、側壁3bは、側面視で、L字状を成す曲面を含んでよい(
図3を参照)。側壁3a~3dは放熱ベース板17に対して接着部材により固着される。端子口32a,32bは、側壁3dの外側に隣接して、締結孔5の間に設けられている。端子口32a,32bから制御端子54,55がそれぞれ表出されている。締結孔5が側壁3a~3dに囲まれる収納領域31の外側の角部近傍に形成されている。半導体装置1を任意の領域に載置し、締結孔5に挿通されたネジが当該領域に締結される。
【0013】
蓋4は、蓋本体40と蓋本体40の中心部に長手方向(±X方向)に沿って形成された端子台41a,41b,41cとを含んでいる。蓋本体40は平板状を成している。蓋本体40は、側壁3a~3dで囲まれた開口に対応して矩形状を成し、当該開口と同様の面積である。
【0014】
端子台41a,41b,41cは、それぞれ、立方体状を成している。端子台41a,41b,41cは蓋本体40のおもて面に一体的に形成されている。端子台41a,41b,41cのおもて面にはネジ孔41a1,41b1,41c1がそれぞれ形成されている。ネジ孔41a1,41b1,41c1は、端子台41a,41b,41c及び蓋本体40を貫通することなく形成されて、ナットがそれぞれ収納される。端子台41a,41b,41cは、主電流端子の一例である第1,第2,第3リードフレーム51,52,53が鉛直上方(+Z方向)に延伸している。
図1は、第1,第2,第3リードフレーム51,52,53が鉛直上方に延伸している場合を示しているに過ぎない。延伸している第1,第2,第3リードフレーム51,52,53は端子台41a,41b,41cのおもて面側に折り曲げられる。折り曲げられた第1,第2,第3リードフレーム51,52,53に形成されている開口孔がネジ孔41a1,41b1,41c1に対向する。例えば、外部端子が第1,第2,第3リードフレーム51,52,53のそれぞれの開口孔を通じて、ネジ孔41a1,41b1,41c1に収納されているナットがねじで締結される。これにより、外部端子が第1,第2,第3リードフレーム51,52,53にそれぞれ機械的かつ電気的に接続される。
【0015】
次に、ケース3の内部について
図2及び
図3を用いて説明する。
図2は、第1の実施の形態の半導体装置に含まれるケースの平面図である。
図3は、第1の実施の形態の半導体装置の断面図である。なお、
図2は、蓋4を外し、封止部材56の図示を省略した半導体装置1の平面図である。また、
図2では、ケース3に収納される半導体ユニット2a,2bの配置位置を破線で示している。
図3は、
図2の一点鎖線Y-Yにおける断面図である。
【0016】
ケース3は、側壁3a~3dの内壁31a~31dに囲まれる収納領域31に、主に、縦梁33a,33b,33c及び横梁34a,34b,34cを含んでいる。縦梁33a,33b,33c及び横梁34a,34b,34cによりケース3の強度が一定以上に保たれる。ケース3は、必要に応じて、縦梁33a,33b,33c及び横梁34a,34b,34c以外の梁を含んでもよい。
【0017】
内壁31a~31dは、側壁3a~3dの内側であって収納領域31の四方を順に取り囲んでいる。内壁31a,31cは、平面視で、収納領域31の長辺側に、内壁31b,31dは、平面視で、収納領域31の短辺側に、それぞれ対応している。内壁31a~31dの上部(+Z方向)には段差が形成されている。内壁31a~31dの段差には蓋4が接着部材を介して嵌め合わせられる。
【0018】
縦梁33a,33b,33cは、
図2の縦方向(±Y方向)に延伸している梁である。このような縦梁33a,33b,33cは、内壁31aと内壁31cとを内壁31a,31cに対して垂直に、収納領域31を横断して接続されている。この際、縦梁33a,33b,33cは、内壁31b,31dに対してそれぞれ平行を成している。
【0019】
縦梁33a,33cの中央部に端子包含部33a1,33c1が含まれている。端子包含部33a1は、縦梁33aの中央部に対して±X方向に肉厚(幅広)に構成されている。端子包含部33c1は、縦梁33cの中央部に対して+X方向に肉厚(幅広)に構成されている。なお、縦梁33cの中央部の-X方向側は後述する配線保護部35が一体的に接続されている。
【0020】
端子包含部33a1,33c1の裏面は、縦梁33a,33cの裏面に同一平面を成している。端子包含部33a1,33c1は縦梁33a,33cに対して+Z方向に縦梁33a,33cの厚さよりも肉厚(幅広)に構成されてよい。
【0021】
端子包含部33a1は、第3リードフレーム53が一体成形されている。第3リードフレーム53の上端部は端子包含部33a1のおもて面から鉛直上方(+Z方向)に延伸している。第3リードフレーム53の下端部は端子包含部33a1の裏面から鉛直下方(-Z方向)に延伸して、後述する半導体ユニット2aに電気的かつ機械的に接続されている。
【0022】
また、縦梁33b,33cの間に配線保護部35が一体的に設けられている。配線保護部35は、第1,第2リードフレーム51,52を包含している。なお、第1,第2リードフレーム51,52と配線保護部35とを含んで配線ユニット6とする。配線ユニット6の詳細については後述する。
【0023】
横梁34a,34b,34cは、
図2の横方向(±X方向)に延伸している梁である。このような横梁34a,34b,34cは、内壁31bの(±Y方向の)中心と内壁31dの(±Y方向の)中心とに収納領域31を、配線保護部35を挟んで横断するように一直線状に接続されている。横梁34aは、内壁31bの(±Y方向の)中心と縦梁33aの(±Y方向の)中心とを接続している。横梁34bは、縦梁33aの(±Y方向の)中心と縦梁33bの(±Y方向の)中心とを接続している。横梁34cは、縦梁33cの(±Y方向の)中心と内壁31dの(±Y方向の)中心とを接続している。横梁34a,34b,34cのおもて面及び裏面は、縦梁33a,33cのおもて面及び裏面に同一平面を成している。
【0024】
このようなケース3は熱可塑性樹脂を用いて一体成形により形成されている。また、蓋4もまた、熱可塑性樹脂を用いて一体成形により形成されている。このような熱可塑性樹脂は、例えば、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリアミド樹脂、または、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂である。蓋4はケース3とは別に形成し、ケース3の側壁3a~3dの開口に接着部材により取り付けてよい。
【0025】
半導体ユニット2a,2bは、放熱ベース板17上に長手方向に沿って並んで配置されている。半導体ユニット2a,2bは、放熱ベース板17に取り付けられたケース3の収納領域31により覆われている。収納領域31内の半導体ユニット2a,2bは、封止部材56により封止されている。封止部材56は、半導体ユニット2a,2bを封止できればよく、収納領域31内全体を封止する必要はない。このような封止部材56は、例えば、ゲルである。
【0026】
次に、半導体ユニット2a,2b及び第1,第2,第3リードフレーム51,52,53について
図4及び
図5(並びに
図3)を用いて説明する。
図4は、第1の実施の形態の半導体装置に含まれる半導体ユニットの平面図である。
図5は、第1の実施の形態の半導体装置に含まれるリードフレームの斜視図である。なお、
図4は、放熱ベース板17に配置された半導体ユニット2a,2bのおもて面を示している。放熱ベース板17及び第1,第2,第3リードフレーム51,52,53の記載は省略している。
図5は、第1,第2リードフレーム51,52の斜視図を示している。第3リードフレーム53は、第2リードフレーム52と同様の構成を成している。
【0027】
半導体ユニット2a,2bは、絶縁回路基板10a,10bと半導体チップ15a,16a,15b,16bとを含んでいる。このような半導体ユニット2a,2bに第1,第2,第3リードフレーム51,52,53が接続されている。なお、
図4では、第1,第2,第3リードフレーム51,52,53の接合箇所を四角で示している。
【0028】
絶縁回路基板10a,10bは、
図4に示されるように、平面視で矩形状である。絶縁回路基板10a,10bは、絶縁板11a,11bと、絶縁板11a,11bの裏面に形成された金属板12a,12bと、絶縁板11a,11bのおもて面に形成された複数の配線板13a1~13a3,13b1~13b4と、を有している。複数の配線板13a1~13a3,13b1~13b4及び金属板12a,12bの外形は、平面視で、絶縁板11a,11bの外形より小さく、絶縁板11a,11bの内側にそれぞれ形成されている。なお、複数の配線板13a1~13a3,13b1~13b4の形状、個数は一例である。
【0029】
絶縁板11a,11bは、平面視で矩形状(長方形状)を成す。また、絶縁板11a,11bは、角部が面取りされていてもよい。例えば、R面取りあるいはC面取りであってよい。絶縁板11a,11bは、外周部である長辺11a1,11b1、短辺11a2,11b2、長辺11a3,11b3、短辺11a4,11b4により四方が囲まれている。本実施の形態では矩形の例として長方形の絶縁板11a,11bについて説明しているが、正方形の絶縁板11a,11bであってもよい。このような絶縁板11a,11bは、熱伝導性のよいセラミックスにより構成されている。セラミックスは、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、または、窒化珪素を主成分とする材料により構成されている。
【0030】
金属板12a,12bは、平面視で矩形状を成す。また、角部が、例えば、R面取りあるいはC面取りされていてもよい。金属板12a,12bは、絶縁板11a,11bのサイズより小さく、絶縁板11a,11bの縁部を除いた裏面全面に形成されている。金属板12a,12bは、熱伝導性に優れた金属を主成分として構成されている。金属は、例えば、銅、アルミニウムまたは、少なくともこれらの一種を含む合金である。金属板の耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。
【0031】
配線板13a1~13a3,13b1~13b4は、絶縁板11a,11bの縁部を除いた全面にわたってそれぞれ形成されている。配線板13a1~13a3,13b1~13b4は、導電性に優れた金属により構成されている。このような金属は、例えば、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を含む合金である。また、配線板13a1~13a3,13b1~13b4の表面に対して、耐食性を向上させるために、めっき処理を行ってもよい。この際、用いられるめっき材は、例えば、ニッケル、ニッケル-リン合金、ニッケル-ボロン合金である。なお、配線板13a1~13a3,13b1~13b4は、絶縁板11a,11bのおもて面に金属層を形成し、この金属層に対してエッチング等の処理を行って得られる。または、あらかじめ金属板から切り出した配線板13a1~13a3,13b1~13b4を絶縁板11a,11bのおもて面に圧着させてもよい。なお、配線板13a1~13a3,13b1~13b4は一例である。必要に応じて、配線板の個数、形状、大きさ等を適宜選択してもよい。
【0032】
配線板13a1は、平面視でU字状を成している。配線板13a1は、絶縁板11aの短辺11a2に沿って、長辺11a1から長辺11a3に及んで形成されている。配線板13a2は、平面視で略矩形状を成している。配線板13a2の-X方向の端部は、配線板13a1の窪みに入り込んでいる。配線板13a2の+X方向の端部は、短辺11a4まで及んでおり、当該端部の中心が絶縁板11aの中央に向かって窪んでいる。配線板13a2の±Y方向の幅は、長辺11a1から長辺11a3に及んでいる。
図4中の配線板13a2に示されている四角は第3リードフレーム53の下端部の接続箇所である。配線板13a3は、平面視でT字状を成している。配線板13a3は、配線板13a2の+X方向側の窪みに設けられている。
図4中の配線板13a3に示されている四角は第2リードフレーム52の下端部の接続箇所である。
【0033】
配線板13b1は、平面視で略矩形状を成しており、短辺11b2(-X方向)側の端部に凸部、短辺11b4(+X方向)側の端部に凹部がそれぞれ形成されている。配線板13b1の±Y方向の幅は、絶縁板11bの長辺11b1から長辺11b3に及んで形成されている。
図4中の配線板13b1に示されている四角は第1リードフレーム51の下端部の接続箇所である。
【0034】
配線板13b2は、平面視で直線状を成しており、絶縁板11bの短辺11b4に沿って形成されており、短辺11b2側に配線板13b1の凹部に入り込む凸部を含んでいる。配線板13b3,13b4は、平面視で矩形状を成し、絶縁板11bの短辺11b2に沿って、配線板13b1の凸部を挟んで形成されている。
【0035】
このような構成を有する絶縁回路基板10a,10bとして、例えば、DCB(Direct Copper Bonding)基板、AMB(Active Metal Brazed)基板を用いてもよい。絶縁回路基板10a,10bは、後述する半導体チップ15a,16a,15b,16bで発生した熱を配線板13a2,13b1、絶縁板11a,11b及び金属板12a,12bを介して、放熱ベース板17の裏面側に伝導させて放熱する。このような絶縁回路基板10a,10bは、放熱ベース板17のおもて面に、接合部材(図示を省略)によりそれぞれ接合される。接合部材は、例えば、はんだである。はんだは、鉛フリーはんだが用いられる。鉛フリーはんだは、例えば、錫-銀-銅からなる合金、錫-亜鉛-ビスマスからなる合金、錫-銅からなる合金、錫-銀-インジウム-ビスマスからなる合金のうち少なくともいずれかの合金を主成分とする。さらに、はんだ17には、添加物が含まれてもよい。添加物は、例えば、ニッケル、ゲルマニウム、コバルト、アンチモンまたはシリコンである。はんだ17は、添加物が含まれることで、濡れ性、光沢、結合強度が向上し、信頼性の向上を図ることができる。
【0036】
半導体チップ15a,16a,15b,16bは、シリコンを主成分として構成されている。半導体チップ15a,15bは、ダイオード素子を含む。ダイオード素子は、例えば、SBD(Schottky Barrier Diode)、PiN(P-intrinsic-N)ダイオード等のFWD(Free Wheeling Diode)である。このような半導体チップ15a,15bは、裏面に主電極(出力電極)としてカソード電極を、おもて面に主電極(入力電極)としてアノード電極をそれぞれ備えている。
【0037】
半導体チップ16a,16bは、スイッチング素子を含む。スイッチング素子は、例えば、IGBT、パワーMOSFETである。半導体チップ16a,16bがIGBTである場合には、裏面に主電極(入力電極)としてコレクタ電極を、おもて面に、制御電極及び主電極(出力電極)としてゲート電極及びエミッタ電極をそれぞれ備えている。半導体チップ16a,16bがパワーMOSFETである場合には、裏面に主電極(入力電極)としてドレイン電極を、おもて面に、制御電極及び主電極(出力電極)としてゲート電極及びソース電極をそれぞれ備えている。
【0038】
また、半導体チップ16a,16bは、IGBT及びFWDの機能を合わせ持つRC(Reverse-Conducting)-IGBTを用いてもよい。この場合には、半導体チップ15a,15bは除かれる。
【0039】
半導体チップ15a,16a,15b,16bは、その裏面側が所定の配線板13a2,13b1上に接合部材(図示を省略)により接合されている。接合部材は、例えば、既述のはんだである。または、接合部材は、はんだに代わり、金属焼結体を用いてもよい。
【0040】
ワイヤ14a1~14a4,14b1~14b4,14c1,14c2は、導電性に優れた材質により構成されている。当該材質として、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、または、少なくともこれらの一種を含む合金により構成されている。また、ワイヤ14a1,14a2,14b1,14b2の径は、例えば、110μm以上、400μm以下である。または、ワイヤ14a3,14a4,14b3,14b4,14c1,14c2の径は、例えば、300μm以上、500μm以下である。
【0041】
ワイヤ14a1,14a2は、配線板13a1と半導体チップ16aの制御電極とを機械的かつ電気的に接続している。ワイヤ14a3,14a4は、配線板13a3と半導体チップ16aのおもて面の出力電極と半導体チップ15aのおもて面の入力電極とを機械的かつ電気的に接続している。
【0042】
ワイヤ14b1,14b2は、配線板13b1と半導体チップ16bの制御電極とを機械的かつ電気的に接続している。ワイヤ14b3,14b4は、配線板13b3,13b4と半導体チップ16bのおもて面の出力電極と半導体チップ15bのおもて面の入力電極とを機械的かつ電気的に接続している。ワイヤ14c1,14c2は、配線板13a2と配線板13b3,13b4とを機械的かつ電気的に接続している。
【0043】
第1リードフレーム51は、第1主電流端子の一例であり、
図5に示されるように、第1水平部51aと第1垂直部51bとが第1屈曲部51cでL字状に屈曲している。具体的には、第1水平部51aの一端と第1垂直部51bの一端とは第1屈曲部51cで接続されている。第1水平部51aは、第1屈曲部51cから絶縁回路基板10bの主面(X-Y面)に平行で、第2リードフレーム52に対して反対方向(+X方向)に延伸している。
【0044】
第1水平部51aは、第2水平部52aと同一平面を成す。第1垂直部51bは、第1屈曲部51cから絶縁回路基板10bの主面(X-Y面)に垂直な上方(+Z方向)に延伸している。つまり、第1垂直部51bの主面は、第2垂直部52bの主面に対して平行であって、所定距離、隙間を空けて形成されている。第2垂直部52bの主面と第1垂直部51bの主面との隙間の間隔は、第1リードフレーム51と第2リードフレーム52とに印加される電流及び電圧によって設定されればよい。間隔が小さすぎると、第1リードフレーム51と第2リードフレーム52との間で絶縁性が低下し短絡する恐れがある。また、間隔が大きすぎると、インダクタンスが低減できない。また、第1垂直部51bの幅(±Y方向の長さ)は、第2垂直部52bの幅(±Y方向の長さ)よりも短い。このような第1,第2垂直部51b,52bは、平面視で、幅方向に対して直交する互いの中心線である破線C-Cが一致するように位置している(
図7を参照)。また、この場合に限らず、第2垂直部52bの幅(±Y方向の長さ)と第1垂直部51bの幅(±Y方向の長さ)とが異なっていてよい。
【0045】
さらに、第1リードフレーム51は、第1脚部51dと第1外部接続部51eと連結部51fとを含んでいる。第1水平部51aと第1垂直部51bとは、絶縁回路基板10bとケース3の蓋4との間で高さ方向(+Z方向)に所定の高さに形成されている。一方、第1リードフレーム51は、既述の通り、一端部が配線板13b1に機械的かつ電気的に接続されて、他端部はケース3の蓋4から外部に延伸している。第1脚部51dは、第1水平部51aの他端から下方(-Z方向)に延伸し、配線板13b1に接続された当該一端部を含む。第1外部接続部51eは、絶縁回路基板10bに対して第1垂直部51bからさらに上方(+Z方向)に延伸し、ケース3の蓋4(端子台41a)から外部に延伸する当該他端部を含んでいる。なお、
図5では、第1外部接続部51eが上方に延伸されている場合を示している。第1外部接続部51eは、破線部で蓋4から外部に露出し屈曲されて、蓋4(端子台41b)の上面に平行で第2リードフレーム52に対して反対方向(+X方向)に延伸されてもよい。連結部51fは、第1垂直部51bに第2垂直部52bから離れる方向に延伸する。すなわち、連結部51fは、第1水平部51aと平行であって、第1垂直部51bの上方の端部と第1外部接続部51eの下方の端部とを接続している。このため、第1,第2外部接続部51e,52eは第1,第2垂直部51b,52bの隙間と連結部51fの長さとを合わせた距離、離間している。なお、このような第1リードフレーム51の第1水平部51aと第1垂直部51bと連結部51fと第1外部接続部51eとは少なくとも平板状を成している。
【0046】
なお、第1リードフレーム51の第1外部接続部51eと後述する第2リードフレーム52の第2外部接続部52eとが十分近い場合、または、これらによるインダクタンスが十分小さい場合には、第1リードフレーム51は、連結部51fを含まなくてもよい。すなわち、この場合の第1リードフレーム51は、後述する第2リードフレーム52の第2外部接続部52eと第2垂直部52bとのように、第1外部接続部51eと第1垂直部51bとが一体的に接続されていてよい。
【0047】
第2リードフレーム52は、第2主電流端子の一例であり、
図5に示されるように、第2水平部52aと第2垂直部52bとが第2屈曲部52cでL字状に屈曲している。具体的には、第2水平部52aの一端と第2垂直部52bの一端とは第2屈曲部52cで接続されている。第2水平部52aは、第2屈曲部52cから絶縁回路基板10aの主面(X-Y面)に平行であって第1リードフレーム51に対して反対方向(-X方向)に延伸している。第2垂直部52bは、第2屈曲部52cから絶縁回路基板10aの主面(X-Y面)に垂直な上方(+Z方向)に延伸している。
【0048】
第2リードフレーム52は、第2脚部52dと第2外部接続部52eとを含んでいる。第2水平部52aと第2垂直部52bとは、絶縁回路基板10aとケース3の蓋4との間で高さ方向(+Z方向)に所定の高さに形成される。一方、第2リードフレーム52は、既述の通り、一端部が配線板13a2に電気的に接続されて、他端部はケース3の蓋4(端子台41b)から外部に延伸している。第2脚部52dは、第2水平部52aの他端から下方(-Z方向)に延伸し、配線板13a2に接続された当該一端部を含む。第2外部接続部52eは、絶縁回路基板10aに対して第2垂直部52bの他端からさらに上方(+Z方向)に延伸し、ケース3の蓋4(端子台41b)から外部に延伸する当該他端部を含んでいる。なお、
図5では、第2外部接続部52eが上方に延伸されている場合を示している。第2外部接続部52eは、破線部で蓋4から外部に露出し屈曲されて、蓋4(端子台41b)の上面に平行で第1リードフレーム51に対して反対方向(-X方向)に延伸されてもよい。なお、このような第2リードフレーム52の第2水平部52aと第2垂直部52bと第2外部接続部52eとは少なくとも平板状を成している。
【0049】
次に、第1,第2リードフレーム51,52の一部を包含する配線保護部35について
図6及び
図7を用いて説明する。
図6は、第1の実施の形態の半導体装置に含まれる配線ユニットの断面図である。
図7は、第1の実施の形態の半導体装置に含まれる配線ユニットの平面図である。なお、
図6は、
図7の一点鎖線Y-Yにおける断面図である。
図7は、
図2における配線ユニット6を含む周囲を拡大して示している。また、
図6では、横梁34b,34cの図示を省略している。
【0050】
配線ユニット6は、第1,第2リードフレーム51,52と第1,第2リードフレーム51,52の一部を包含する配線保護部35とを含む。第1リードフレーム51の下端部が半導体チップ16bに電気的に接続されている。具体的には、第1リードフレーム51は、配線板13b1を経由して、半導体チップ16bの裏面の入力電極に電気的に接続されている。第2リードフレーム52の下端部が半導体チップ16aにそれぞれ電気的に接続されている。具体的には、第2リードフレーム52は、配線板13a3及びワイヤ14a3を経由して、半導体チップ16aのおもて面の出力電極に電気的に接続されている。
【0051】
配線保護部35は、第1リードフレーム51の一部と第2リードフレーム52の一部とを共に包含する。また、配線保護部35は、包含面35aと前面35bと裏面35cと底面35dと後面35eと側面35f,35gとを含む。
【0052】
包含面35aは、配線保護部35のおもて面であり、蓋4の裏面と対向する。包含面35aは第1,第2端面35a2,35a3と中間面35a1とを含んでいる。第1,第2端面35a2,35a3と中間面35a1とは同一平面を成している。第1,第2端面35a2,35a3は中間面35a1の前方(+X方向)及び後方(-X方向)にそれぞれ一体的に接続されている。第1,第2端面35a2,35a3は、配線保護部35で包含されている第1,第2リードフレーム51,52が鉛直上方(+Z方向)にそれぞれ突出されている。この際、第1,第2リードフレーム51,52の第1,第2外部接続部51e,52eが第1,第2端面35a2,35a3を突出している。第1,第2端面35a2,35a3は、平面視で、第1,第2リードフレーム51,52の第1,第2外部接続部51e,52eの周囲を囲んでいる。このため、第1,第2端面35a2,35a3の(±Y方向の)幅は、第1,第2リードフレーム51,52の第1,第2外部接続部51e,52eの(±Y方向の)幅よりも長い。
【0053】
中間面35a1は、第1,第2端面35a2,35a3が一体的に接続されている。中間面35a1は平面視で矩形状を成していてよい。中間面35a1の(±Y方向の)幅は、例えば、第1,第2端面35a2,35a3の(±Y方向の)幅よりも小さくてよい。中間面35a1は、第1リードフレーム51の連結部51fと平行を成している。言い換えると、中間面35a1は、連結部51fに対向している。また、中間面35a1は、第1,第2リードフレーム51,52の間に中間面35a1に対して(+Z方向、蓋4側に)突出する止水部36を含む。この止水部36は、第1,第2リードフレーム51,52の第1,第2外部接続部51e,52eの幅方向(±Y方向)に平行であって、中間面35a1を当該幅方向に横断している。このような止水部36が、第1,第2リードフレーム51,52の第1,第2外部接続部51e,52eに対向し、第1,第2外部接続部51e,52eに対して離間し、かつ、平行にそれぞれ設けられている。また、止水部36の形状は幅方向(±Y方向)に連続して延伸する柱状であってよい。この際の柱状とは幅方向(±Y方向)に対して垂直な断面が四角形、三角形、半円形であってよい。また、止水部36の上部は、端子包含部33a1,33c1の上部と同一平面を成してもよい。これにより、止水部36は、端子包含部33a1,33c1と共に蓋4の裏面を支持することができる。また、止水部36は、
図6及び
図7に示されるように、少なくとも2つあればよいが、(それぞれ平行を成すように)複数あってもよい。
【0054】
前面35bは、配線保護部35の前方(+X方向)に設けられている。前面35bは、包含面35aの前方(+X方向)の先端に一体的に接続されて、当該先端から鉛直下方(-Z方向)に延伸している。前面35bは、第1,第2リードフレーム51,52の第1,第2垂直部51b,52bに平行を成している。
【0055】
裏面35cは、配線保護部35の裏側に設けられている。裏面35cは、前面35bの下端部に一体的に接続され、当該下端部から後方(-X方向)に延伸して、途中から鉛直下方(-Y方向)に延伸している。裏面35cは、側面視でL字状を成している。裏面35cは、第1リードフレーム51の連結部51f及び第1垂直部51bに対向している。底面35dは、配線保護部35の底面に設けられている。底面35dは、裏面35c下端部の先端に一体的に接続されて、当該下端部から後方(-X方向)に延伸している。
【0056】
後面35eは、配線保護部35の後方(-X方向)に設けられている。後面35eは、底面35dの後方(-X方向)の端部に一体的に接続されて、当該端部から鉛直上方(+Z方向)に延伸して包含面35aの後方(-X方向)の端部に一体的に接続されている。後面35eは、第1,第2リードフレーム51,52の第1,第2垂直部51b,52bに平行を成している。そして、側面35f,35gがこれらの側部を覆っている。側面35f,35gは、平面視で、包含面35aの第1,第2端面35a2,35a3及び中間面35a1に沿うように側部を覆っている。
【0057】
ここで参考例の配線ユニットについて、
図8を用いて説明する。
図8は、参考例の半導体装置に含まれる配線ユニットの断面図である。
図8に示す配線ユニット60は、第1の実施の形態の配線ユニット6において止水部36が設けられていない場合である。
図8に示す配線ユニット60は、この点以外は第1の実施の形態の配線ユニット6と同様の構成を成している。また、
図8でも、横梁34b,34cの図示を省略している。
【0058】
このような配線ユニット60を含む半導体装置1は、利用環境によっては、結露が生じてしまうことがある。特に、第1,第2リードフレーム51,52に結露による水滴が付着することがある。なお、結露以外の要因で第1,第2リードフレーム51,52に水滴が付着する場合も含む。この場合、水滴は、第1,第2リードフレーム51,52に沿って伝う。第1,第2リードフレーム51,52を伝った水滴は、配線保護部35の包含面35aに広がる。このように包含面35aに広がった水が、対向する第1,第2リードフレーム51,52側に広がると、第1,第2リードフレーム51,52が水を介して短絡してしまう。この結果、配線ユニット60が破損し、半導体装置1の信頼性が低下してしまう。
【0059】
そこで、上記の半導体装置1では、半導体チップ15a,16a及び半導体チップ15b,16bと、配線ユニット6と、を含む。配線ユニット6は、第1,第2リードフレーム51,52と配線保護部35とを含む。第1,第2リードフレーム51,52は、下端部が半導体チップ16a,16bに電気的に接続されている。配線保護部35は、第1,第2リードフレーム51,52の一部を包含し、第1,第2リードフレーム51,52が突出された包含面35aを備える。包含面35aは、半導体チップ15a,16a及び半導体チップ15b,16bに平行を成し、第1,第2リードフレーム51,52との間に包含面35aに対して突出する止水部36を含む。この場合、第1,第2リードフレーム51,52を伝った水が包含面35aに広がる。このように包含面35aに広がった水の、対向する第1,第2リードフレーム51,52側への移動が止水部36により妨げられる。このため、第1,第2リードフレーム51,52の短絡が防止され、半導体装置1の信頼性の低下を抑制することができる。
【0060】
この際の止水部36は、配線保護部35と同じ材質であって、包含面35aに対して一体的に形成されてよい。または、止水部36は、配線保護部35と異なる材質で構成されてよい。この場合は、配線ユニット6を含むケース3の構成後、配線保護部35の包含面35aに対して止水部36を付加してよい。
【0061】
また、第1の実施の形態では、主電流端子の一例として、平板状の第1,第2リードフレーム51,52を挙げている。主電流端子は、例えば、少なくとも包含面35aから突出する部分が柱状であってもよい。この場合の柱状とは、多角形柱(三角柱、四角柱等)、円柱であってよい。このような柱状の主電流端子は、平面視で第1,第2端面35a2,35a3のいずれかに形成されてよい。例えば、第1,第2端面35a2,35a3にそれぞれ主電流端子が、横梁34b,34cと一直線状に配置されてよい。
【0062】
(変形例1-1)
ここでは、変形例1-1として
図6及び
図7とは異なる止水部36について、
図9及び
図10を用いて説明する。
図9は、第1の実施の形態(変形例1-1)の半導体装置に含まれる配線ユニットの断面図であり、
図10は、第1の実施の形態(変形例1-1)の半導体装置に含まれる配線ユニットの平面図である。なお、
図9は、
図10の一点鎖線Y-Yにおける断面図である。また、
図9では、横梁34b,34cの図示を省略している。
【0063】
変形例1-1の配線ユニット6は、
図6及び
図7の配線ユニット6において止水部36以外は同様の構成を成している。変形例1-1の包含面35aでは、中間面35a1の(±X方向の)中央に(±Y方向の)幅方向に沿って、当該幅を横断して、第1,第2リードフレーム51,52に平行を成して1つの止水部36が形成されている。すなわち、止水部36の±X方向の両端部は、第1,第2リードフレーム51,52から離間している。
【0064】
このような止水部36でも第1,第2リードフレーム51,52から伝わった水滴の包含面35a上における、第2,第1リードフレーム52,51側への移動を妨げる。但し、変形例1-1の止水部36の(±X方向の)長さは、止水される水滴の絶縁性が保たれる長さを要する。このような止水部36の(±X方向の)長さは、例えば、中間面35a1の(±X方向の)長さの50%以上であることを要する。
【0065】
(変形例1-2)
変形例1-2の配線ユニット6について
図11及び
図12を用いて説明する。
図11は、第1の実施の形態(変形例1-2)の半導体装置に含まれる配線ユニットの断面図である。
図12は、第1の実施の形態(変形例1-2)の半導体装置に含まれる配線ユニットの平面図である。なお、
図11は、
図12の一点鎖線Y-Yにおける断面図である。また、
図11では、横梁34b,34cの図示を省略している。
【0066】
変形例1-2の配線ユニット6に含まれる第1,第2リードフレーム51,52は、少なくとも、配線保護部35で包含される部分が互いに平行であって対向する平板状を成している。これは、例えば、既述の通り、
図5に示した第1リードフレーム51が連結部51fを含まず、第1リードフレーム51及び第2リードフレーム52が十分近い場合である。
【0067】
このような配線保護部35は、包含面35aと前面35bと底面35dと後面35eと側面35f,35gとを含んでいる。包含面35aは、第1の実施の形態と同様に、第1,第2端面35a2,35a3と中間面35a1とを含んでいる。第1,第2端面35a2,35a3(符号省略)は、配線保護部35で包含されている第1,第2リードフレーム51,52が鉛直上方(+Z方向)にそれぞれ突出されている。
【0068】
中間面35a1は、第1の実施の形態と同様に、第1,第2端面35a2,35a3を一体的に接続し、平面視で矩形状を成している。中間面35a1は、窪み36aと窪み36aに形成された止水部36とを含んでいる。窪み36aは、中間面35a1に対して中間面35a1の幅方向(±Y方向)に平行であって、中間面35a1を当該幅方向に横断している。窪み36aは、底部が実質的に平坦であってよい。また、窪み36aの側部36a1は当該底部に対して直角、鈍角または鋭角を成していてもよい。止水部36は、窪み36aの底部に対して当該窪み36a(中間面35a1)の(±Y方向の)幅方向を横断するように形成されている。止水部36と窪み36aの側部36a1とは隙間が空いている。この止水部36の形状もまた幅方向(±Y方向)に連続して延伸する柱状であってよい。この際の柱状とは幅方向(±Y方向)に対して垂直な断面が四角形、三角形、半円形であってよい。止水部36は、窪み36aの底部に一体的に形成されてよい。この場合には、例えば、中間面35a1に(止水部36を挟んだ)2本の平行な窪みを形成してよい。または、中間面35a1に対して窪み36aを形成した後に、当該窪み36aの底部に、別途形成した止水部36を取り付けてもよい。
【0069】
前面35bは、配線保護部35の前方(+X方向)に設けられている。前面35bは、包含面35aの前方(+X方向)の先端に一体的に接続されて、当該先端から鉛直下方(-Z方向)に延伸している。前面35bは、第1,第2リードフレーム51,52に平行を成している。
【0070】
底面35dは、配線保護部35の底面に設けられている。底面35dは、前面35bの下端部の先端に一体的に接続されて、当該下端部から後方(-X方向)に延伸している。また、底面35dから、第1,第2リードフレーム51,52が表出されて、第1,第2水平部51a,52aを介して第1,第2脚部51d,52dが鉛直下方(-Z方向)に延伸している。
【0071】
後面35eは、配線保護部35の後方(-X方向)に設けられている。後面35eは、底面35dの後方(-X方向)の端部に一体的に接続されて、当該端部から鉛直上方(+Z方向)に延伸して包含面35aの後方(-X方向)の端部に一体的に接続されている。後面35eは、第1,第2リードフレーム51,52に平行を成している。
【0072】
このような配線ユニット6を含む半導体装置1でも、第1,第2リードフレーム51,52に結露により付着した水滴が配線保護部35の包含面35aに流れ落ちる。包含面35aに溜まった水滴は、中間面35a1を移動すると、窪み36a内に流れ込み、窪み36aの底部を移動する。しかしながら、止水部36により水滴の窪み36aの底部での移動が妨げられる。このため、第1,第2リードフレーム51,52の短絡が防止され、半導体装置1の信頼性の低下を抑制することができる。
【0073】
なお、変形例1-2の窪み36aの深さ及び止水部36の(±X方向の)長さは、止水される水滴の絶縁性が保たれる深さ及び長さを要する。例えば、窪み36aの深さが浅い場合には、止水部36の(±X方向の)長さは長いことが望まれる。窪み36aの深さが深い場合には、止水部36の(±X方向の)長さは短くてもよい。また、止水部36の上面と包含面35aとは必ずしも同一平面を成す必要はない。止水部36の上面と包含面35aとの高さが異なっていてもよい。
【0074】
また、このような窪み36a及び止水部36は、
図6及び
図7に示す第1,第2リードフレーム51,52を包含する配線保護部35に対しても、窪み36aを形成する領域があれば形成してもよい。
【0075】
(変形例1-3)
変形例1-3の配線ユニット6について
図13及び
図14を用いて説明する。
図13は、第1の実施の形態(変形例1-3)の半導体装置に含まれる配線ユニットの断面図である。
図14は、第1の実施の形態(変形例1-3)の半導体装置に含まれる配線ユニットの平面図である。なお、
図13は、
図14の一点鎖線Y-Yにおける断面図である。また、
図13では、横梁34b,34cの図示を省略している。
【0076】
変形例1-3の配線ユニット6は、
図6及び
図7の配線ユニット6において止水部36以外は同様の構成を成している。変形例1-3の包含面35aでは、平面視で、止水部36が第1,第2リードフレーム51,52を取り囲んで形成されている。すなわち、止水部36は、第1,第2リードフレーム51,52から一定の長さ、離間している部分を含んで、第1,第2リードフレーム51,52を取り囲んでいる。
【0077】
このような止水部36は、第1,第2リードフレーム51,52の少なくとも一方に対応して形成されればよい。
図13及び
図14では、止水部36が第1,第2リードフレーム51,52の両方に対応して形成されている場合を示している。また、止水部36の高さは第1,第2リードフレーム51,52から伝った水滴が乗り越えない程度であればよい。
【0078】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、止水部に接着部材が用いられる場合について
図15及び
図16を用いて説明する。
図15は、第2の実施の形態の半導体装置に含まれる配線ユニットの断面図である。
図16は、第2の実施の形態の半導体装置に含まれる配線ユニットの平面図である。また、
図15では、横梁34b,34cの図示を省略している。
【0079】
第2の実施の形態の配線ユニット6では、第1の実施の形態の配線ユニット6に含まれる止水部36が接着部材により構成されている。なお、第2の実施の形態の配線ユニット6は、止水部36以外は、第1の実施の形態の配線ユニット6と同様の構成を成している。さらに、第2の実施の形態の配線ユニット6に含まれる止水部36は、中間面35a1の(±Y方向の)幅を横断して形成され、包含面35aと蓋4を接着する。また、第1,第2リードフレーム51,52に接着してもよい。また、止水部36は包含面35aと蓋4の裏面との間に挟持されている。
【0080】
このような配線ユニット6を含む半導体装置1でも、既述の通り、結露により第1,第2リードフレーム51,52に水滴が付着することがある。水滴は、第1,第2リードフレーム51,52に沿って伝う。止水部36は蓋4と包含面35aとに接着している。このため、水滴が蓋4の上部の第1,第2リードフレーム51,52に沿って伝う場合、止水部36の表面を介した電流経路がなくなる。そのため、第1,第2リードフレーム51,52が包含面35aで短絡することがない。なお、止水部36が第1,第2リードフレーム51,52に接着している場合、第1,第2リードフレーム51,52間に水が溜まることもなくなり、より、信頼性の低下を抑制する効果が高くなる。
【0081】
また、蓋4はケース3の内壁31a~31dで囲まれる開口に接着部材で接合されると共に、止水部36でも包含面35aに接合される。このため、蓋4のケース3に対する接合強度が向上し、蓋4はケース3から離脱しにくくなる。
【0082】
なお、接着部材により構成される止水部36は、
図15及び
図16とは別に、平面視で第1,第2リードフレーム51,52に密着して第1,第2リードフレーム51,52を取り囲んで形成されてもよい。
【0083】
(変形例2-1)
変形例2-1の配線ユニット6について
図17及び
図18を用いて説明する。
図17は、第2の実施の形態(変形例2-1)の半導体装置に含まれる配線ユニットの断面図である。
図18は、第2の実施の形態(変形例2-1)の半導体装置に含まれる配線ユニットの平面図である。
図17は、
図18の一点鎖線Y-Yにおける断面図である。また、
図17では、横梁34b,34cの図示を省略している。
【0084】
変形例2-1の配線ユニット6は、
図15及び
図16に示した配線ユニット6において止水部36以外は同様の構成を成している。変形例2-1の配線ユニット6は、
図15及び
図16に示した配線ユニット6において、第1,第2リードフレーム51,52と包含面35a(中間面35a1)と蓋4との間の全体に止水部36が埋設されている。
【0085】
このような配線ユニット6を含む半導体装置1でも、既述の通り、結露により第1,第2リードフレーム51,52に水滴が付着して、第1,第2リードフレーム51,52に沿って伝う。止水部36は、中間面35a1の(±Y方向の)幅を横断して形成され、第1,第2リードフレーム51,52の間を塞ぎ、蓋4と包含面35aとの間に埋設されている。すなわち、止水部36は、包含面35aと蓋4とを接着する。また、第1,第2リードフレーム51,52に接着してもよい。このため、第1,第2リードフレーム51,52を伝って蓋4を通り抜ける水滴が止水部36からより制止される。したがって、水は包含面35aに殆ど溜まることが無く、第1,第2リードフレーム51,52が包含面35aで短絡することがない。このため、第1,第2リードフレーム51,52の短絡が防止され、半導体装置1の信頼性の低下を抑制することができる。
【0086】
また、止水部36は第1,第2リードフレーム51,52と蓋4と包含面35aとの間に埋設されている。すなわち、止水部36は蓋4と包含面35aとに接着している。このため、水滴が蓋4の上部の第1,第2リードフレーム51,52に沿って伝う場合、止水部36の表面を介した電流経路がなくなる。そのため、第1,第2リードフレーム51,52が包含面35aで短絡することがない。なお、止水部36が第1,第2リードフレーム51,52に接着している場合、第1,第2リードフレーム51,52間に水が溜まることもなくなり、より信頼性の低下を抑制する効果が高くなる。このため、蓋4は、第2の実施に形態の場合よりも、ケース3に対する接合強度が向上し、蓋4はケース3から離脱しにくくなる。
【符号の説明】
【0087】
1 半導体装置
2a,2b 半導体ユニット
3 ケース
3a~3d 側壁
4 蓋
5 締結孔
6 配線ユニット
10a,10b 絶縁回路基板
11a,11b 絶縁板
11a1,11a3,11b1,11b3 長辺
11a2,11a4,11b2,11b4 短辺
12a,12b 金属板
13a1~13a3,13b1~13b4 配線板
14a1~14a4,14b1~14b4,14c1,14c2 ワイヤ
15a,15b,16a,16b 半導体チップ
17 放熱ベース板
31 収納領域
31a~31d 内壁
32a,32b 端子口
33a,33b,33c 縦梁
33a1,33c1 端子包含部
34a,34b,34c 横梁
35 配線保護部
35a 包含面
35a1 中間面
35a2 第1端面
35a3 第2端面
35b 前面
35c 裏面
35d 底面
35e 後面
35f,35g 側面
36 止水部
36a 窪み
36a1 側部
40 蓋本体
41a,41b,41c 端子台
41a1,41b1,41c1 ネジ孔
51 第1リードフレーム
51a 第1水平部
51b 第1垂直部
51c 第1屈曲部
51d 第1脚部
51e 第1外部接続部
51f 連結部
52 第2リードフレーム
52a 第2水平部
52b 第2垂直部
52c 第2屈曲部
52d 第2脚部
52e 第2外部接続部
53 第3リードフレーム
54,55 制御端子
56 封止部材