(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161113
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】欠陥検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
G01N21/892 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071276
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】591114641
【氏名又は名称】株式会社ヒューテック
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】十河 俊一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 巧
(72)【発明者】
【氏名】平田 健一郎
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA07
2G051AA32
2G051AA41
2G051AA51
2G051AA65
2G051AB02
2G051BA20
2G051BB07
2G051BB11
2G051CA03
2G051CA04
2G051CB05
(57)【要約】
【課題】暗視野型でありながら第1遮蔽部と第2遮蔽部との組み合わせをなくすることで、欠陥検査に用いられる検査光の割合を高くし、スリットの反射による迷光の発生をなくすことで欠陥検査の品質を高くするとともに、装置の大型化を抑制することができる欠陥検査装置を提供する。
【解決手段】欠陥検査装置10は、線光源13と、受光装置12と、を備えている。線光源13には、検査光が明視野として受光装置へ到達しないようにするための遮蔽部17が設けられ、被検査対象と線光源13との間には面対称光学結像部材15が設けられている。面対称光学結像部材15は、遮蔽部17に点光源51が配置された場合に、点光源51からの仮想検査光が、面対称光学結像部材15により集光して受光装置12で受光されるように配置されている。この構成により、検査光の割合を高くし、欠陥検査の品質を高くすることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状の被検査対象の欠陥を検査する装置であって、
前記被検査対象に向けて検査光を放出する線光源と、
該線光源からの前記検査光を、前記被検査対象を経由して受光する受光装置と、を備え、
前記線光源には、前記検査光が明視野として前記受光装置へ到達しないようにするための遮蔽部が設けられ、
前記被検査対象と前記線光源との間には面対称光学結像部材が設けられ、
前記面対称光学結像部材は、前記遮蔽部に点光源が配置された場合に、前記点光源からの仮想検査光が、前記面対称光学結像部材により集光して前記受光装置で受光されるように配置されている、
ことを特徴とする欠陥検査装置。
【請求項2】
前記被検査対象の一方の面側に、前記受光装置が設置され、
その他方の面側に、前記線光源と、前記面対称光学結像部材と、が設置され、
前記受光装置は、前記被検査対象で透過した検査光を受光する、
ことを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項3】
前記被検査対象の一方の面側に、前記受光装置と、前記線光源と、前記面対称光学結像部材と、が設置され、
前記受光装置は、前記被検査対象で反射した検査光を受光する、
ことを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項4】
前記線光源と前記受光装置との間に、
前記検査光を反射するミラーが配置されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【請求項5】
前記面対称光学結像部材の表面に、
前記線光源以外からの光の入射を抑制するためのマスクが設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の欠陥検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥検査装置に関する。さらに詳しくは、暗視野を利用した欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
透明フィルムなどシート状の被検査対象において、その表面の欠陥、たとえば、スジ状の傷などの検査には、光学的手法を用いた検査が行われる。この光学的手法を用いた検査のうち、光源から照射された検査光を、直接的に受光装置に届かないようにし、欠陥において検査光が散乱した光のみを受光装置に届かせるようにする検査手法、すなわち暗視野を用いた検査手法が知られている。特許文献1では、暗視野型の欠陥検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の欠陥検査装置では、検査光の進行方向に第1遮蔽部と第2遮蔽部とが並べられる遮蔽構造を採用することにより、明視野として検査光が受光装置に到達しないようにしている。
しかるに、この遮蔽構造を用いた方法では、複数の遮蔽部に設けられたスリットの隙間から漏れ出た検査光で検査するため、欠陥検査のために利用される検査光の割合が低いという問題がある。
また、スリットに反射して迷光が発生する場合があり、これにより欠陥検査の品質が低下するという問題がある。
さらに、検査光の進行方向に第1遮蔽部と第2遮蔽部とを設ける必要があり、検査光の進行方向に装置が大型化しやすいという問題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、暗視野型でありながら第1遮蔽部と第2遮蔽部との組み合わせをなくすることで、欠陥検査に用いられる検査光の割合を高くし、スリットの反射による迷光の発生をなくすことで欠陥検査の品質を高くするとともに、装置の大型化を抑制することができる欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1発明の欠陥検査装置は、シート状の被検査対象の欠陥を検査する装置であって、
前記被検査対象に向けて検査光を放出する線光源と、該線光源からの前記検査光を、前記被検査対象を経由して受光する受光装置と、を備え、前記線光源には、前記検査光が明視野として前記受光装置へ到達しないようにするための遮蔽部が設けられ、前記被検査対象と前記線光源との間には面対称光学結像部材が設けられ、前記面対称光学結像部材は、前記遮蔽部に点光源が配置された場合に、前記点光源からの仮想検査光が、前記面対称光学結像部材により集光して前記受光装置で受光されるように配置されていることを特徴とする。
第2発明の欠陥検査装置は、第1発明において、前記被検査対象の一方の面側に、前記受光装置が設置され、その他方の面側に、前記線光源と、前記面対称光学結像部材と、が設置され、前記受光装置は、前記被検査対象で透過した検査光を受光することを特徴とする。
第3発明の欠陥検査装置は、第1発明において、前記被検査対象の一方の面側に、前記受光装置と、前記線光源と、前記面対称光学結像部材と、が設置され、前記受光装置は、前記被検査対象で反射した検査光を受光することを特徴とする。
第4発明の欠陥検査装置は、第1発明において、前記線光源と前記受光装置との間に、
前記検査光を反射するミラーが配置されていることを特徴とする。
第5発明の欠陥検査装置は、第1発明において、前記面対称光学結像部材の表面に、
前記線光源以外からの光の入射を抑制するためのマスクが設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
第1発明によれば、線光源に、検査光が明視野として受光装置へ到達しないようにするための遮蔽部が設けられ、被検査対象と線光源との間に面対称光学結像部材が所定の態様で設けられていることにより、検査光の進行方向に2段で設ける必要があった遮蔽構造を設けずに暗視野型とすることができるので、欠陥検査に用いられる検査光の割合を高くし、遮蔽構造に設けられているスリットにおける反射による迷光の発生をなくすことができ、欠陥検査の品質を高くすることができる。また、遮蔽構造は、検査光の進行方向に2段で設ける必要があったところ、これを省略することができるので装置の大型化を抑制できる。
第2発明によれば、被検査対象の一方の面側に受光装置が設置され、他方の面側に線光源、所定の面対称光学結像部材が設置されているので、受光装置は被検査対象を透過した検査光を受光することとなり、透明な被検査対象の欠陥を検査することができる。
第3発明によれば、被検査対象の一方の面側に受光装置、線光源、所定の面対称光学結像部材が設置されているので、受光装置は被検査対象で反射した検査光を受光することとなり、検査光を透過する被検査対象だけでなく、検査光を透過しない被検査対象についても欠陥を検査することができる。
第4発明によれば、線光源と受光装置との間に検査光を反射するミラーが配置されていることにより、線光源などの配置の自由度が上がり、欠陥検査装置の大きさを小さくすることができる。
第5発明によれば、面対称光学結像部材の表面に、所定のマスクが設けられていることにより、検査光の強度と指向性を調整することが可能になり、検査の性能を調整することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る欠陥検査装置の概略構成の斜視図である。
【
図3】
図1の欠陥検査装置の受光装置の説明図である。
【
図4】
図1の欠陥検査装置で用いられる面対称光学結像部材の構造の説明図である。
【
図5】
図1の欠陥検査装置の受光方法の説明図である。(A)は
図1の欠陥検査装置の説明図であり、(B)は従来の明視野型の欠陥検査装置の説明図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る欠陥検査装置の概略構成の側面図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る欠陥検査装置の概略構成の側面図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る欠陥検査装置の概略構成の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するための欠陥検査装置を例示するものであって、本発明は欠陥検査装置を以下のものに特定しない。なお、各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0010】
<第1実施形態>
図1に本発明の第1実施形態に係る欠陥検査装置10の概略構成の斜視図を、
図2にその側面図を示す。
図1および
図2ともに、欠陥検査装置10の主要構成要素のみを記載し、他の部分は省略している。
【0011】
図1、
図2に示すように、本実施形態に係る欠陥検査装置10は、被検査対象に向けて検査光を放出する線光源13と、この線光源13からの検査光を、被検査対象を経由して受光する受光装置12とが備えられている。この線光源13には、検査光が明視野として受光装置12へ到達しないようにするための遮蔽部17が設けられている。そして、被検査対象と線光源13との間には、面対称光学結像部材15が所定の態様で設けられている。
【0012】
なお本明細書における欠陥検査装置10は、いわゆる暗視野型である。
図1は、この暗視野型の欠陥検査装置10を示している。ただし、
図1で示す一点鎖線(線光源13に設けられている遮蔽部17と面対称光学結像部材15との間の一点鎖線、および面対称光学結像部材15と受光装置12との間の一点鎖線)は、検査光の通過経路をわかりやすくするために、明視野型、すなわち遮蔽部17に点光源が配置されたと仮定した場合の、点光源からの仮想検査光の通過経路を記載したものである。
【0013】
図2に示すように、本明細書において「検査光」は、線光源13から放出される光L1、この放出された光が面対称光学結像部材15を経由した光L2、この経由した光のうち、被検査対象の欠陥で散乱されたあと受光装置12で受光される光L3、のいずれをも含む概念である。
【0014】
本実施形態に係る欠陥検査装置10では、被検査対象を透過した検査光を受光装置12が受光する。この場合、
図1に示すように被検査対象の一方の面側、すなわち被検査対象の上側に受光装置12が設置され、被検査対象の他方の面側、すなわち被検査対象の下側に線光源13と面対称光学結像部材15とが設置されている。
【0015】
本実施形態に係る欠陥検査装置10では、検査光は、シート状の被検査対象の欠陥において散乱し、その散乱した検査光のうち、後述するレンズ22に入射したものの一部が受光装置12に入射する。加えて、本実施形態に係る欠陥検査装置10では、線光源13は、シート状の被検査対象に対して平行に検査光を照射し、面対称光学結像部材15を経由することで、検査光をシート状の被検査対象に対し垂直に入射させている。なお本明細書では、「平行」、「垂直」の記載は、厳密に平行および垂直である必要はなく、「実質的平行」および「実質的垂直」に該当する。また、本実施形態では、
図2に示すように「垂直」、「平行」と記載したが、
図2の構成は例示であり、特にこの構成に限定されることはない
【0016】
(被検査対象)
本発明に係る欠陥検査装置10は、光学的手法により樹脂フィルム16などシート状の被検査対象の欠陥を検査する装置である。被検査対象には、表面を平坦面とすることができる樹脂フィルム16をはじめ、シート状の被検査対象が広く含まれる。本実施形態に係る欠陥検査装置10は、透明な樹脂フィルム16のように、光が透過可能であり、張力を付加することで表面を平坦面とすることができるものが被検査対象に含まれるが、他にも、表面が平坦面であり、光を反射可能である金属、または厚みのある押し出し成形樹脂品、ガラス、シリコンウェハ、電子基板なども被検査対象に含むこともできる。なお、請求項における「被検査対象を経由して」との表現は、「被検査対象を透過して」、または「被検査対象で反射して」の表現の上位概念として使用している。また、これら被検査対象は、無色のものに限定されず、有色のものも含まれる。
【0017】
被検査対象である樹脂フィルム16等は、欠陥検査装置10の前後に設けられている2つのロール(不図示)などにより
図2の紙面上右から左へ順次送られ、連続して樹脂フィルム16の欠陥の有無が検査される。
【0018】
(制御器11)
欠陥検査装置10は、受光装置12および線光源13と電気的に接続し、これらの制御を行う制御器11を有する。
【0019】
(線光源13)
線光源13は、被検査対象の幅方向に延びる直線形状をしたLEDを内部に有している。そして線光源13は、一方向だけが開口したケースを有している。この開口を通過して、内部のLEDから照射される検査光が受光装置12に向かう。なお線光源13は、その長手方向、すなわち被検査対象の幅方向(
図2の紙面において奥行き方向)の長さが、その短手方向、すなわち
図2の紙面において上下方向の長さd(
図1参照)と同じか、それよりも長い光源であれば問題ない。すなわち線光源13は、正方形または長方形の開口から光を放出している。また本実施形態では線光源13はLEDを内部に有しているが、LEDに限定されない。例えば蛍光灯またはハロゲン光源であっても問題ない。
【0020】
また線光源13の開口には、遮蔽部17が設けられている。この遮蔽部17は、線光源13からの検査光を遮り、検査光が明視野として受光装置12へ到達しないようにしている。遮蔽部17の大きさ、すなわち線光源13の長手方向の長さは、受光装置12の大きさなどにより定められる。遮蔽部17の長手方向の大きさは、後述するレンズ22の大きさ以上であることが好ましく、同程度であることがさらに好ましい。また遮蔽部17は、線光源13の短手方向のすべてを遮蔽する場合、および線光源13の短手方向の一部を遮蔽する場合があり、すべて遮蔽するのが好ましく、レンズ22の大きさと同程度に遮蔽することがさらに好ましい。また、遮蔽部17は必ずしも線光源13の中央部分に位置する必要はなく、被検査の形状や検査範囲などに応じて端などに位置を変更することが可能である。
【0021】
(受光装置12)
図3に示すように、受光装置12は、例えば撮像部21と、レンズ22とを備えている。受光装置12は、被検査対象の欠陥で散乱された検査光を受光するものであり、例えば、ラインセンサまたはエリアセンサ等のように複数の受光素子21sを有している。レンズ22は、検査光を集光して、撮像部21の受光素子21sに集光した光を入射する。
【0022】
なお、撮像部21がラインセンサ等のように複数の受光素子21sが並んで配設されているものの場合には、受光装置12は、複数の受光素子21sが並ぶ方向と被検査対象の幅方向とが平行となるように配設される。また、受光装置12の撮像部21は、受光素子21sを複数有するものであれば問題ないが、単体であっても同様の機能を有し、被検査対象の表面で反射した光を検出できる受光素子を有する機器であれば、とくに限定されない。
【0023】
(面対称光学結像部材15)
面対称光学結像部材15は、コーナーキューブで見られる、2面直交ミラーの2回反射による再帰反射機能を利用する部材である。この面対称光学結像部材15により、この面対称光学結像部材15の一方側にある光源から発する入射光線それぞれが、この面対称光学結像部材15において面対称に反射し、他方側にそれぞれ出射することにより他方側空間に集束する。この面対称光学結像部材15は、例えば株式会社アスカネットのASKA3Dプレートが該当する。
【0024】
この面対称光学結像部材15の構造の一例について
図4を用いて説明する。面対称光学結像部材15は、第1光学パネル30および第2光学パネル31を、その一面側を当接または隙間を有して向かい合わせて形成されている。第1光学パネル30および第2光学パネル31は、それぞれ厚みが一定な第1透明平板32および第2透明平板33の一方側の面に垂直に多数かつ帯状の第1平面光反射部34および第2平面光反射部35を一定のピッチで並べて形成されている。ここで、第1光学パネル30の第1平面光反射部34と、第2光学パネル31の第2平面光反射部35とは、面対称光学結像部材15の平面に直交する方向から見た場合(以下、この方向を「面対称光学結像部材15の平面視」とする)に交差(
図4においては直交)して配置されている。
【0025】
この面対称光学結像部材15の作用について説明する。
図4の物体Nから発した光S1 は、第1光学パネル30の第1平面光反射部34のc点で反射し、次に第2光学パネル31の第2平面光反射部35のd点で反射する。これにより面対称光学結像部材15は、面対称光学結像部材15の一方の面側の空間にある物体Nの実像N’を、面対称光学結像部材15の他方の面側の空間に結像する。
【0026】
ここで、面対称光学結像部材15の平面視において、第2光学パネル31の第2平面光反射部35のピッチで区分けされる第1光学パネル30の第1平面光反射部34が、第1の微小反射面を形成し、面対称光学結像部材15の平面視において、第1光学パネル30の第1平面光反射部34のピッチで区分けされる第2光学パネル31の第2平面光反射部35が第2の微小反射面を形成する。したがって、面対称光学結像部材15の平面視において、交差する第1の微小反射面および第2の微小反射面がそれぞれ同一平面上に多数並べて立設されており、物体Nから発した光は、第1の微小反射面で反射し、対応する第2の微小反射面で再反射して、実像N’を形成する。
【0027】
なお、請求の範囲では、「被検査対象と線光源13との間には面対称光学結像部材15が設けられ、」または、「前記線光源13と前記受光装置12との間に、」と記載しているが、ここでの「間に」とは、線光源13から放出し被検査対象に至る検査光の通過途中を意味する。
【0028】
図5を用いて面対称光学結像部材15を用いた場合の作用を説明する。
図5(A)は本実施形態に係る欠陥検査装置10の検査光の状態を示した説明図であり、
図5(B)は、暗視野型ではなく、従来の明視野型の欠陥検査装置の検査光の状態を示した説明図である。
図5では、光源を図の下に配置するととも、受光装置12を図の上に配置している。そして、これらの図は、光源から放出した検査光の通過軌跡に沿って、下から上に検査光がどのように通過するかを示している。
【0029】
図5(B)は、本実施形態における線光源13の遮蔽部17の位置に点光源51が配置されている。この
図5(B)における一点鎖線は、受光装置12で受光される検査光(この「検査光」が、請求の範囲に記載の「仮想検査光」である)の幅方向の境界を示している。点光源51から放出された検査光は、面対称光学結像部材15を経由する。この経由した検査光は、樹脂フィルム16を通過し、受光装置12で受光される。樹脂フィルム16の欠陥において検査光は散乱するため、この欠陥は受光装置12では検査光が受光されない部分として認識される。
【0030】
図5(A)では、線光源13に遮蔽部17が設けられているため、面対称光学結像部材15を経由した検査光は、明視野としては受光装置12で受光されない。すなわち遮蔽部17は、線光源13からの検査光が、明視野として受光装置12で受光されないように設けられる。遮蔽部17が存在する部分以外の線光源13から検査光は放出する。
図5(A)ではこの検査光の一部をL1として表示している。この検査光は面対称光学結像部材15を経由して、その経由した検査光(L2に該当)が、樹脂フィルム16へ到達する。樹脂フィルム16に欠陥がある場合、その欠陥において検査光は散乱し、散乱した検査光の一部(L3に該当)が受光装置12により受光される。
【0031】
線光源13に、検査光が明視野として受光装置12へ到達しないようにするための遮蔽部17が設けられ、被検査対象と線光源13との間に面対称光学結像部材15が所定の態様で設けられていることにより、検査光の進行方向に2段で設ける必要があった遮蔽構造を設けずに暗視野型とすることができるので、欠陥検査に用いられる検査光の割合を高くし、遮蔽構造に設けられているスリットにおける反射による迷光の発生をなくすことができ、欠陥検査の品質を高くすることができる。また、遮蔽構造は、検査光の進行方向に2段で設ける必要があったところ、これを省略することができるので装置の大型化を抑制できる。
【0032】
被検査対象の一方の面側に受光装置12が設置され、他方の面側に線光源13、面対称光学結像部材15が設置されているので、受光装置12は被検査対象を透過した検査光を受光することとなり、透明な被検査対象の欠陥を検査することができる。
【0033】
(マスク18)
本実施形態では、面対称光学結像部材15の表面に、線光源13以外からの光の入射を抑制するためのマスク18が設けられている。本実施形態では、このマスク18は、面対称光学結像部材15の検査光の入射面に設けられている。ただし、マスク18が設けられる場所はこれに限定されず、面対称光学結像部材15の検査光の出射面に設けることも可能である。このマスク18は、遮光性の板に矩形などの開口部を設けた構成であることが好ましい。マスク18を設けることで検査光の強度と指向性を調整することが可能になり、検査の性能を調整することが可能になる。また、このマスク18は設けられない場合もある。
【0034】
マスクの開口の形状は、楕円形、網目状など特に限定されるものではないが、均一な感度が得られることから長手方向に対称な形状であることが好ましく、矩形形状であれば加工も容易であるためさらに好ましい。
【0035】
図2に示すように、第1実施形態では、被検査対象である樹脂フィルム16に直交するように検査光L2が入射しているが、検査光L2の入射の角度はこれに限定されない。被検査対象と検査光L2とが、あらかじめ定められた角度を有することにより、欠陥に対する入射角度が浅くなるため、光が屈折しやすくなり、より浅い欠陥でも検出することが可能になる。
【0036】
さらに、面対象光学結像部材15については、
図4に示す構成に限定されるものではない。面対称で像を結像する部材であれば良く、一例として断面形状が三角形であり、その一面が第1平面反射部34および第2平面反射部35となるような構成、すなわち三角形の溝に透明体を充填した構成も含まれる。
【0037】
<第2実施形態>
図6に本発明の第2実施形態に係る欠陥検査装置10の概略構成の側面図を示す。
図6では欠陥検査装置10の主要構成要素のみを記載し、他の部分は省略している。また第1実施形態と第2実施形態との相違点は、線光源13と面対称光学結像部材15との間に、光学要素のミラー19が2つ配置されている点であり、他の構成要素は、第1実施形態と同じであるので説明を省略する。このミラー19により、線光源12から出射した検査光が反射されたあと、面対称光学結像部材15に到達する。
【0038】
この光学要素であるミラー19は、入射した光が50%以上の反射率で反射されるものが好ましい。例えば、ガラスやプラスチック、フィルムなどの基材の上に金属や誘電体多層膜がメッキ、蒸着されたものや金属板、フィルムを積層することで反射率を上げたものなどを使用することも可能である。
【0039】
線光源13と受光装置12との間に検査光を反射するミラー19が配置されていることにより、線光源13などの配置の自由度が上がり、欠陥検査装置10の大きさを小さくすることができる。
【0040】
なお本実施形態におけるミラー19の開口部の大きさは、面対称光学結像部材15の開口部の面積以上であることが好ましい。
【0041】
<第3実施形態>
図7に本発明の第3実施形態に係る欠陥検査装置10の概略構成の側面図を示す。
図7では欠陥検査装置10の主要構成要素のみを記載し、他の部分は省略している。また第1実施形態と第3実施形態との相違点は、構成要素の配置であり、各構成要素は、第1実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0042】
本実施形態に係る欠陥検査装置10では、被検査対象で反射した検査光を受光装置12が受光する。この場合、
図7に示すように被検査対象の一方の面側、すなわち被検査対象の上側に、受光装置12と線光源13と面対称光学結像部材15とが設置されている。
【0043】
本実施形態に係る欠陥検査装置10では、検査光は、シート状の被検査対象の欠陥において、
図7にあるように側面視で所定の角度γをもって散乱した光L3が受光装置12に入射する。加えて、本実施形態に係る欠陥検査装置10では、線光源13から照射された光L1は、面対称光学結像部材15を経由し光L2となって、シート状の被検査対象に対し、所定の角度γとして入射している。
【0044】
被検査対象の一方の面側に受光装置12、線光源13、面対称光学結像部材15が設置されているので、受光装置12は被検査対象の欠陥において散乱した検査光を受光することとなり、検査光を透過する被検査対象だけでなく、検査光を透過しない被検査対象についても欠陥を検査することができる。なお、検査光を透過する被検査対象において、被検査対象で反射した検査光を受光する場合、例えば被検査対象の表面にあるコーティングの異常などの欠陥を検出することが可能となる。
【0045】
なお、本実施形態においては、被検査対象に対して検査光が被検査対象に角度γで入射し、角度γで出射する正反射について説明したが、これに限定されない。すなわち、L3の反射角度γはL2の入射角度と必ずしも同一である必要はないが、同一である場合には散乱光が最も強く照射されるため、検出感度が高くなり、好ましい。
【0046】
<第4実施形態>
図8に本発明の第4実施形態に係る欠陥検査装置10の概略構成の側面図を示す。
図8では欠陥検査装置10の主要構成要素のみを記載し、他の部分は省略している。また第1実施形態と第4実施形態との相違点は、構成要素の配置であり、各構成要素は、第1実施形態と同じであるので説明を省略する。
【0047】
本実施形態に係る欠陥検査装置10では、第3実施形態と同様、被検査対象で反射した検査光を受光装置12が受光する。この場合、
図8に示すように被検査対象の一方の面側、すなわち被検査対象の上側に、受光装置12と線光源13と面対称光学結像部材15とが設置されている。ここで第3実施形態との相違点は、検査光が被検査対象に入射する点を基準として、
図8の紙面において一方側(具体的に右側)に受光装置12が配置され、他方側(具体的に左側)に線光源13が配置されている点である。
【0048】
本実施形態に係る欠陥検査装置10では、検査光は、シート状の被検査対象の欠陥において、
図8にあるように側面視で所定の角度γをもって散乱した光L3が受光装置12に入射する。加えて、本実施形態に係る欠陥検査装置10では、線光源13から照射された光L1は、面対称光学結像部材15を経由し光L2となって、シート状の被検査対象に対し、所定の角度γとして入射している。第3実施形態と比較すると、第4実施形態では線光源13および受光装置12の配置の自由度が高くなる。
【0049】
なお、本実施形態においては、被検査対象に対して検査光が被検査対象に角度γで入射し、角度γで出射する正反射について説明したが、これに限定されない。すなわち、L3の反射角度γはL2の入射角度と必ずしも同一である必要はないが、同一である場合には散乱光が最も強く照射されるため、検出感度が高くなり、好ましい。
【0050】
(その他)
第1実施形態の説明において、図に記載された構成の説明の後に、他の構成の説明を行ったが、その構成は、第2実施形態から第4実施形態の欠陥検査装置10に適用することも可能である。また第1実施形態から第4実施形態のいずれにおいても、面対称光学結像部材15を含む部分をカバーまたは筐体で覆うことが好ましい。この場合、不要な散乱光を抑制して検査感度を上げることが可能になる。
【符号の説明】
【0051】
10 欠陥検査装置
12 受光装置
13 線光源
15 面対称光学結像部材
17 遮蔽部
18 マスク
19 ミラー
51 点光源