(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161116
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】コイル部品、回路基板、電子機器およびコイル部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20231030BHJP
H01F 27/30 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01F27/30 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071279
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109380
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 恵
(74)【代理人】
【識別番号】100109036
【弁理士】
【氏名又は名称】永岡 重幸
(72)【発明者】
【氏名】星野 英昭
(72)【発明者】
【氏名】野木 謙一郎
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA01
5E070AB03
5E070BB03
5E070EA01
(57)【要約】
【課題】直流抵抗が抑制されるとともに応力への対応も可能な外部電極を持つコイル部品を提供する。
【解決手段】一態様に係るコイル部品は、金属磁性粒子が結合されてなる磁性基体と、上記磁性基体の内部および表面の少なくとも一方に設けられる導体と、上記磁性基体が有する互いに隣り合った第1面および第2面のうち当該第1面の当該第2面に近い側に設けられる、金属材料を含んだ第1電極層と、当該第2面の当該第1面に近い側に設けられ、当該第1電極層よりも低い金属充填率で金属材料を含んだ第2電極層と、当該第1面と第2面との間を繋いで設けられ、当該第1電極層および当該第2電極層を覆う第3電極層とから形成され、上記導体と電気的に接続される外部電極とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属磁性粒子が結合されてなる磁性基体と、
前記磁性基体の内部および表面の少なくとも一方に設けられる導体と、
前記磁性基体が有する互いに隣り合った第1面および第2面のうち当該第1面の当該第2面に近い側に設けられる、金属材料を含んだ第1電極層と、当該第2面の当該第1面に近い側に設けられ、当該第1電極層よりも低い金属充填率で金属材料を含んだ第2電極層と、当該第1面と第2面との間を繋いで設けられ、当該第1電極層および当該第2電極層を覆う第3電極層とから形成され、前記導体と電気的に接続される外部電極とを備えることを特徴とするコイル部品。
【請求項2】
前記第1面が実装時に基板と対面することを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項3】
前記第2電極層は、前記第1面および前記第2面の双方に平行な方向の寸法より、前記第1面に垂直な方向の寸法の方が小さいことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項4】
前記第2電極層は、一部が前記第1面において前記第1電極層の一部を覆うことを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項5】
前記外部電極は、前記導体の端部が前記第1電極層と接続されることで当該導体と導通していることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項6】
前記第2電極層は、金属充填率が60%以下であることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項7】
前記第1電極層は、金属充填率が70%以上であることを特徴とする請求項1に記載のコイル部品。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のコイル部品と、
前記コイル部品が実装された基板と、
を備えたことを特徴とする回路基板。
【請求項9】
請求項8に記載の回路基板を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項10】
請求項1から7のいずれか1項に記載のコイル部品を製造する製造方法であって、
前記第1面の前記第2面側に、金属材料と非金属材料とを含んだ第1導電性ペーストを塗布する工程と、
前記第2面の前記第1面側に、金属材料と非金属材料とを含み、前記第1導電性ペーストよりも金属充填率が高い第2導電性ペーストを塗布する工程と、
前記第1導電性ペーストおよび前記第2導電性ペーストを焼結して前記第1電極層および前記第2電極層を形成する工程と、
前記第1電極層および前記第2電極層を覆う前記第3電極層を形成する工程と、
を有することを特徴とするコイル部品の製造方法。
【請求項11】
前記第1面に塗布された前記第1導電性ペーストに、当該第1面に向かう圧力を掛けて当該第1導電性ペーストを平面化する工程を更に有することを特徴とする請求項10に記載のコイル部品の製造方法。
【請求項12】
前記第3電極層を形成する工程は、当該第3電極層をめっきにより形成する工程であることを特徴とする請求項10に記載のコイル部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コイル部品、回路基板、電子機器およびコイル部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信機器などの電子機器は、高性能化が進み、使われる電子部品の数量は性能と比例するように増加してきている。しかし、電気機器自体の大きさにも制約があり、数量の増加に伴う体積増を、より小さい部品への置き換えで抑制することも必要となっている。このため、電子部品は、性能の向上が求められるとともに、より小型化が求められることになる。これは、SDGs(Sustainable Development Goals)の観点からも重要視されている。
【0003】
コイル部品においても小型化が進んでおり、小型化を進める技術のひとつに磁性材料の置換えがある。従来、多くのコイル部品ではフェライト磁性材料が使われていたが、例えば、1A以上の電流が印加されるような用途のコイル部品では金属磁性材料への置換えが行われている。金属磁性材料はフェライト磁性材料より磁気飽和特性が高く、磁気飽和特性の差に相当する分について磁性材料の体積が縮小できるためである。
【0004】
また、外部電極について、厚みを薄くするためにスパッタリングが用いられたり、電極を設ける面が6面体の5面ではなく1面のみとされたりすることでコイル部品の更なる小型化が進められている。
例えば特許文献1には、外部電極が6面体の1面のみに設けられたコイル部品が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、外部電極には、いくつかの制約があり、例えば、コイル部品においては、直流抵抗の低いことが求められるため、外部電極は抵抗の低い金属を用いたり、またはある程度の厚みを設けることが行われている。
また、基板への実装性の確保のためには、外部電極からめっきを無くすことは難しい。このため、いわゆる5面型の外部電極では問題となっていなかった外部電極の応力が、特許文献1のような1面型の外部電極では大きな問題となっている。
【0007】
このように、外部電極を設ける面が少なくなる場合には、応力に対応できる外部電極が必要となっている。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、直流抵抗が抑制されるとともに応力への対応も可能な外部電極を持つコイル部品の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るコイル部品は、金属磁性粒子が結合されてなる磁性基体と、上記磁性基体の内部および表面の少なくとも一方に設けられる導体と、上記磁性基体が有する互いに隣り合った第1面および第2面のうち当該第1面の当該第2面に近い側に設けられる、金属材料を含んだ第1電極層と、当該第2面の当該第1面に近い側に設けられ、当該第1電極層よりも低い金属充填率で金属材料を含んだ第2電極層と、当該第1面と第2面との間を繋いで設けられ、当該第1電極層および当該第2電極層を覆う第3電極層とから形成され、上記導体と電気的に接続される外部電極とを備える。
【0009】
本発明の一態様に係るコイル部品において、上記第1面が実装時に基板と対面する。
また、本発明の一態様に係るコイル部品において、上記第2電極層は、上記第1面および上記第2面の双方に平行な方向の寸法より、上記第1面に垂直な方向の寸法の方が小さい。
また、本発明の一態様に係るコイル部品において、上記第2電極層は、一部が上記第1面において上記第1電極層の一部を覆う。
【0010】
また、本発明の一態様に係るコイル部品において、上記外部電極は、上記導体の端部が上記第1電極層と接続されることで当該導体と導通している。
また、本発明の一態様に係るコイル部品において、上記第2電極層は、金属充填率が60%以下である。
【0011】
また、本発明の一態様に係るコイル部品において、上記第1電極層は、金属充填率が70%以上である。
また、本発明の一態様に係る回路基板は、いずれかの上記コイル部品と、上記コイル部品が実装された基板と、を備える。
また、本発明の一態様に係る電子機器は、上記回路基板を備える。
【0012】
また、本発明の一態様に係るコイル部品の製造方法は、いずれかの上記コイル部品を製造する製造方法であって、上記第1面の上記第2面に近い側に、金属材料と非金属材料とを含んだ第1導電性ペーストを塗布する工程と、上記第2面の上記第1面に近い側に、金属材料と非金属材料とを含み、上記第1導電性ペーストよりも金属充填率が高い第2導電性ペーストを塗布する工程と、上記第1導電性ペーストおよび上記第2導電性ペーストを焼結して上記第1電極層および上記第2電極層を形成する工程と、上記第1電極層および上記第2電極層を覆う上記第3電極層を形成する工程と、を有する。
【0013】
本発明の一態様に係るコイル部品の製造方法は、上記第1面に塗布された上記第1導電性ペーストに、当該第1面に向かう圧力を掛けて当該第1導電性ペーストを平面化する工程を更に有する。
本発明の一態様に係るコイル部品の製造方法において、上記第3電極層を形成する工程は、当該第3電極層をめっきにより形成する工程である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、直流抵抗が抑制されるとともに応力への対応も可能な外部電極を持つコイル部品が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
【
図7】
図6に示す変形例の外部電極における部分拡大図である。
【
図8】第1比較例のコイル部品における外部電極の製造工程を示す図である。
【
図10】第2比較例のコイル部品における外部電極の製造工程を示す図である。
【
図12】磁性基体の上面に達した外部電極の部分拡大断面図である。
【
図13】第1導電性ペーストの塗布工程を示す図である。
【
図14】第2導電性ペーストの塗布工程を示す図である。
【
図15】導電性ペーストの焼結工程を示す図である。
【
図19】第1電極層の金属充填率が異なる実施例に対する電気的試験の結果を示す表である。
【
図20】第2電極層の金属充填率が異なる実施例に対する強度試験の結果を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の実施形態は本発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の構成に必須のものとは限らない。実施形態の構成は、本発明が適用される装置の仕様や各種条件(使用条件、使用環境等)によって適宜修正または変更され得る。
【0017】
本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって画定され、以下の個別の実施形態によって限定されない。以下の説明に用いる図面は、各構成を分かり易くするため、実際の構造と縮尺および形状などを異ならせることがある。先に説明した図面に示された構成要素については、後の図面の説明で適宜に参照する場合がある。
【0018】
<コイル部品の構造>
図1は、本発明の一実施形態に係るコイル部品を示す斜視図である。
コイル部品1は、基板2aに実装されている。基板2aにはランド部3が設けられている。コイル部品1は、磁性基体11と外部電極12とを有する。コイル部品1は各外部電極12とランド部3とがはんだで接合されることで基板2aに実装される。本発明の一実施形態による回路基板2は、コイル部品1と、このコイル部品1が実装された基板2aと、を備える。回路基板2は、様々な電子機器に備えられる。回路基板2を備えた電子機器としては、自動車の電装品、サーバ、ボードコンピュータおよびこれら以外の様々な電子機器が想定される。
【0019】
本明細書においては、文脈上別に解される場合を除き、方向の説明は、
図1の「L軸」方向、「W軸」方向および「H軸」方向を基準に用い、それぞれ、「長さ」方向、「幅」方向および「高さ」方向と称する。「高さ」方向については「厚さ」方向と呼ぶ場合もある。
コイル部品1は、直方体形状の外形を有する。即ちコイル部品1は、長さ方向Lの両端に第1の端面1aおよび第2の端面1bを有し、高さ方向Hの両端に第1の主面1c(上面1c)および第2の主面1d(底面1d)を有し、幅方向Wの両端に前面1eおよび後面1fを有する。
【0020】
直方体形状のコイル部品1における各辺の寸法は、長さ方向Lが例えば1~5mmの範囲にあり、幅方向Wが例えば0.5~4.5mmの範囲にあり、高さ方向Hが例えば0.4~3.5mmの範囲にある。また、高さ方向Hの寸法が長さ方向Lの寸法より小さく、更には高さ方向Hの寸法が幅方向Wの寸法より小さくなっている。
コイル部品1の第1の端面1a、第2の端面1b、第1の主面1c、第2の主面1d、前面1eおよび後面1fはいずれも、平坦な平面であってもよいし湾曲した湾曲面であってもよい。また、コイル部品1の8つの角部および12の稜線部は、丸みを有していてもよい。
【0021】
本明細書においては、コイル部品1の第1の端面1a、第2の端面1b、第1の主面1c、第2の主面1d、前面1eおよび後面1fの一部が湾曲している場合や、コイル部品1の角部や稜線部が丸みを有している場合にも、かかる形状を「直方体形状」と称することがある。つまり、本明細書において「直方体」又は「直方体形状」という場合には、数学的に厳密な意味での「直方体」を意味するものではない。
【0022】
本発明の一実施形態におけるコイル部品1は、磁性基体11と外部電極12を有し、内部に導体を有する。ここで磁性基体11としては、ドラムコアと称される、磁性基体11の表面に導体が巻き付けられるものであってもよく、磁性基体11の内部に導体が配置されるものであってもよい。
【0023】
磁性基体11は、磁性材料を含む絶縁体である。磁性基体11は、金属磁性材料を95wt%以上含み、更に樹脂を1wt%以上含み、これら以外の成分を含んでもよい。金属磁性材料は、Fe、NiまたはCoを含む金属磁性粒子であり、金属磁性粒子は、Fe、Ni、Coの他に、Si、Cr、Al、B、Pのいずれかを含んでもよいし、Si、Cr、Al、B、Pのうち複数を含んでもよい。また、磁性基体11は、酸化物を含んでもよい。
【0024】
磁性基体11は、複数種の金属磁性粒子の組み合わせで形成されてもよく、セラミック材料、ガラス材料を含んでもよい。磁性基体11は、例えば、金属磁性粒子が樹脂で結合されて形成されてもよく、あるいは金属磁性粒子が酸化物で結合されて形成されてもよい。金属磁性粒子は絶縁処理が施されたものでもよく、樹脂、酸化物の存在により絶縁が担保されてもよい。
図2は、
図1に示すコイル部品1の側面図であり、
図3は、
図1に示すコイル部品1の端面図であり、
図4は、
図1に示すコイル部品1の底面図であり、
図5は、
図1に示すコイル部品1の断面図である。
図5には、
図4に示すA-A線に沿った断面が示されている。以下、
図1~
図5を参照して説明する。
【0025】
磁性基体11は直方体形状を有し、長さ方向Lの両端それぞれに端面102を有し、高さ方向Hの一端に底面101を有し、高さ方向Hの他端に上面103を有し、幅方向Wの両端に前面104および後面105を有する。底面101は、コイル部品1が基板2aに実装される際に基板2aと対向する面である。
【0026】
導体14は、導電性に優れた金属材料から成る。導体14用の金属材料としては、例えば、Ag、Cu、Al、Niの少なくとも1つ以上の金属、又はこれらの金属のいずれかを含む合金が用いられ得る。導体14の表面には絶縁被膜が設けられていてもよい。導体14は1つの磁性基体11に対して1つ設けられてもよいし、あるいは導体14は、1つの磁性基体11に対して複数設けられてもよい。
【0027】
図5に示す導体14は、導線が周回してなる周回部402と、周回部402から引き出されて外部電極12に繋げられた引出部401とを有する。
図5には、導線が磁性基体11の底面101と上面103に沿って周回した、いわゆる水平巻きの周回部402が例示されている。導体14は、導線が磁性基体11の端面102に沿って周回した、いわゆる垂直巻きの周回部を有してもよい。
【0028】
コイル部品1は、第1の端面1a側と第2の端面1b側にそれぞれ外部電極12を備える。本発明の一実施形態における各外部電極12は、磁性基体11の底面101の各一部から各端面102にわたって設けられ、即ち、外部電極12は、底面101の端面102側の一部と端面102の底面101側の一部に広がっている。各端面102は、底面101に隣り合う面であり、コイル部品1の実装時に、基板2aに対して交わる方向に延びる面である。上述したように、外部電極12は基板2a上のランド部3とはんだ4で接合される。はんだ4は、外部電極12の端面102に広がる部分にも濡れ上がり、いわゆるフィレットを形成している。フィレットの形成により、コイル部品1は基板2aに対して十分な固着強度で接続される。本実施形態のコイル部品1は、フィレットが形成されることにより、1面型の外部電極を有するコイル部品よりも強い固着強度を有する。
【0029】
また、外部電極12は、端面102から前面104および後面105にも各一部にわたって設けられる。
図1に示す外部電極12において、前面104および後面105に達する部分は、各面で広がらずに端面102の稜線に沿って細く延びている。
外部電極12は、端面102の底面101側の一部に広がっており、上面103には達していない。即ち、底面101とは反対向きの上面103から外部電極12は離間している。
【0030】
本発明の一実施形態におけるコイル部品1は、例えば積層により磁性基体11と導体14が一体で形成される。
磁性基体11は、1以上の金属磁性粒子およびバインダー樹脂を含む複合磁性材料から作成される。磁性基体11は、1以上の金属磁性粒子を含み、各金属磁性粒子の表面の酸化膜によって、各々の金属磁性粒子どうしが接合して作成されていてもよい。金属磁性粒子としては、FeまたはNiを主成分とする、FeSiCr、FeSiAl、FeSiCrB、Fe―Ni、Feなどが用いられ得る。あるいは、金属磁性粒子としてこれらの組み合わせが用いられてもよいし、金属磁性粒子は、例えば、Si、Biなどを含んでもよい。
【0031】
金属磁性粒子の形状は特に限定されないが、球形または球形に近く、粒子の大きさとしては平均粒子径で1~20μmであるものが好ましい。金属磁性粒子は、絶縁処理が施されたものでもよい。
バインダー樹脂は、複数の金属磁性粒子同士を結着させる。バインダー樹脂は、例えば、絶縁性に優れた熱硬化性樹脂である。磁性基体11の材料は、本明細書で明示されるものに限られず、基体の材料として公知の任意の材料が用いられ得る。
【0032】
導体14は、導電性に優れた金属材料から成る。導体14用の金属材料としては、例えば、Cu、Al、Ni、Agのうち少なくとも1つの金属、又はこれらの金属の少なくとも1つを含む合金が用いられ得る。導体14は金属材料の一部として酸化物を含んでもよい。
コイル部品1の積層による形成では、上述した複合磁性材料からなる磁性シートが複数用意され、磁性シートの表面に、導体14を形成するための平面状の導体パターンが例えば印刷などで作成される。導体パターンの形成には、めっきや、蒸着、ペーストの転写など印刷以外の手法が用いられてもよい。
【0033】
また、各導体パターンを接続するビアの形成のため、磁性シートには穴が開けられ、その穴に導体材料が充填される。ビアは、例えば印刷、充填によって作られる。ビアの印刷は導体パターンの印刷と同時に行われてもよく個別に行われてもよい。ビアの形成にも、めっきや、蒸着、ペーストの転写など印刷以外の手法が用いられてもよい。
【0034】
その後、導体パターンやビアが施された磁性シートと、磁性基体11の最上層部分や最下層部分となる磁性シートとが重ねられ、圧着されて積層体が得られる。そして、得られた積層体が個片化され、熱処理が行われて、導体14を内蔵した磁性基体11が得られる。積層体の熱処理では、600~850℃の熱処理で樹脂を熱分解で除去するとともに金属磁性粒子を酸化させてもよい。
その後、導体14の引出部401に接続されるように、外部電極12が形成される。
【0035】
<外部電極の構造>
外部電極12は、底面101に設けられる第1電極層201と、端面102に設けられる第2電極層202と、第1電極層201および第2電極層202を覆う第3電極層203とを備える。
【0036】
第1電極層201および第2電極層202は、金属材料と非金属材料とを含む導電性の層である。第1電極層201は、金属材料を70wt%以上含み、第2電極層202は、金属材料を60wt%以下含む。金属材料は、Ag、Cu、Niの少なくとも1つを含む金属粒子であり、非金属材料としては、セラミック材料、ガラス材料を含んでもよい。第1電極層201および第2電極層202は空隙部分も含んでいる。
第2電極層202における金属充填率が第1電極層201よりも低いことにより、第1電極層201では低い直流抵抗が確保され、第2電極層202では応力が緩和される。即ち、第1電極層201では、第2電極層202よりも高い金属充填率により低い直流抵抗が得られる。また、第2電極層202では、第1電極層201よりも低い金属充填率の結果、樹脂や空隙によって応力が緩和される。
【0037】
第3電極層203は、導電性に優れた金属材料から成る。金属材料としては、例えばCu、Agが用いられ、更にNi、Pd、Snが用いられ得る。第3電極層203は、それぞれの金属材料を主成分とする層、または一部で合金化した層が重なり、層状に形成される。第3電極層203は、例えばめっき、金属材料の塗布、スパッタリング法、あるいは蒸着法により形成される。
【0038】
外部電極12は、磁性基体11の表面に設けられ、導体14の引出部401と接続される箇所において電気的な導通が図られる。当該箇所では、Snを含む層の一部を介して導体14の引出部401と外部電極12との接続が行われる。
図5に示すように、本実施形態では、導体14と外部電極12との接続は、底面101において引出部401と第1電極層201との間で行われ、電気的な導通が得られる。引出部401と第1電極層201とが接続された構造により、基板2aとの間の直流抵抗が抑制される。
【0039】
外部電極12は、第1電極層201若しくは第2電極層202と磁性基体11との間に下地電極層(図示省略)を備えてもよい。下地電極層には、Ag、Cu、Ti、Niなどの金属材料が用いられる。下地電極層は、めっき、金属材料の塗布、スパッタリング法、あるいは蒸着法により磁性基体11の表面に設けられる。また、下地電極層は、厚みが1μm以下であり、一部分が他の部分から離間して存在していてもよい。
【0040】
図5に示す実施形態では、第1電極層201は、底面101のうち端面102に近い一部に広がっている。第2電極層202は、端面102のうち底面101に近い一部に広がっている。第2電極層202が上面103から離間していることにより、第3電極層203が例えばめっきで形成された場合でも、上面103に達するめっき伸びが抑制される。
端面102は、実装時には基板2aの表面の垂線方向に沿って広がるので、第2電極層202も基板2aの表面の垂線方向に沿って広がる。このため、はんだ4のフィレットから外部電極12が受ける応力が緩和される。
第2電極層202の高さ方向Hの寸法は、幅方向Wの寸法よりも小さい。即ち、底面101に対して垂直な方向における第2電極層202の寸法は、底面101に平行な方向における寸法よりも小さい。第2電極層202における高さ方向Hの寸法が小さいことにより、はんだ4のフィレットから外部電極12が受ける応力が更に緩和される。
【0041】
また、第2電極層202は一部が底面101に達し、第1電極層201における、底面101と端面102との間に在る稜線付近の一部を第2電極層202が覆っている。稜線付近で第2電極層202が第1電極層201の一部を覆っていると、第1電極層201側の応力が緩和される。第2電極層202は、第1電極層201を覆わずに第1電極層201と接していてもよく、あるいは、第2電極層202は、第1電極層201から離間していてもよい。
【0042】
図6は、外部電極12の変形例を示す図であり、
図7は、変形例の外部電極12における部分拡大図である。
変形例の外部電極12は、磁性基体11の各端面102の全体に広がり、かつ、底面101の一部にも広がっている。変形例の外部電極12は、一部が前面104および後面105に達しているが、上面103には達していない。
図7に示すように、第2電極層202は端面102いっぱいに広がっているが上面103からは離間している。より詳細には、端面102と上面103とを分ける稜線を成す曲面部分106の手前で第2電極層202が止まっている。このため、めっき伸びなどが抑制されて第3電極層203も上面103から離間している。めっき伸びが抑制されることにより、磁性材料の透磁率が低い、例えば、透磁率が40より小さい場合に渦電流損失の発生が抑制される。また、コイル部品1のサイズが小さい、例えば、コイル部品1の1辺が0.5mmより小さい場合でも渦電流損失の発生が抑制される。
図6,7に示す変形例の場合にも、外部電極12は直流抵抗が抑制され、かつ、はんだ4のフィレットから外部電極12が受ける応力は緩和される。
【0043】
外部電極12を形成した各層の存在および厚みについては、外部電極12の断面がSEM等により観察されることで確認可能である。例えば、SEMによる観察が行われることで、磁性基体11と導体14と第1電極層201と第2電極層202と第3電極層203とを区別するそれぞれの接触面の存在が確認できる。また、SEMによる成分分析により金属、炭素、酸素の存在が確認されることで各層が区別され、各層における金属充填率も得られる。
【0044】
<外部電極の製造工程>
以下、
図1~
図5に示すコイル部品1における外部電極の製造工程を説明するに先立って、比較例における製造工程と構造について説明する。
図8は、第1比較例のコイル部品における外部電極の製造工程を示す図であり、
図9は、第1比較例の構造を示す図である。
図9(A)には、第1比較例の側面図が示され、
図9(B)には、第1比較例の端面図が示されている。
第1比較例のコイル部品1001は、一般的なディップ工法による5面型の外部電極1004を有する。
【0045】
図8に示す製造工程では、定盤500上に導電性ペースト1003が広げられ(
図8(A))、磁性基体1002の一端が導電性ペースト1003に浸けられる(
図8(B))。磁性基体1002が定盤500から引き上げられる(
図8(C))ことで、磁性基体1002の一端は導電性ペースト1003で覆われた状態となる。同様の工程が磁性基体1002の他端でも行われた後、導電性ペースト1003が焼結され、磁性基体1002の両端に5面型の外部電極1004を有するコイル部品1001が得られる(
図8(D))。
【0046】
このようなディップ工法では、外部電極1004の形成が本来不要な磁性基体1002の上面1023や側面1024にも導電性ペースト1003が付着して外部電極1004が形成される。その結果、導電性ペースト1003の形状が円弧状になるムーンシェイプによって外部電極1004の高さ方向Hの寸法H1や幅方向Wの寸法W1が磁性基体1002の外形寸法よりも大きくなる。
【0047】
また、外部電極1004の長さ方向Lの寸法E1も大きく、コイル部品1001の長さ方向Lの寸法L1は、磁性基体1002の外形寸法よりも大きくなる。従って、第1比較例では5面型の外部電極1004によってコイル部品1001の小型化が阻害される。また、5面型の外部電極1004を有するコイル部品1001は、基板2aのたわみによって引き起こされる外部電極1004への応力が緩和されずに磁性基体1002に伝わる。この結果、磁性基体1002にクラックなどが生じる虞がある。
【0048】
図10は、第2比較例のコイル部品における外部電極の製造工程を示す図であり、
図11は、第2比較例の構造を示す図である。
図11(A)には、第2比較例の側面図が示され、
図11(B)には、第2比較例の端面図が示されている。
第2比較例のコイル部品1010は、ディップ工法による2面型の外部電極1006を有する。
図10に示す製造工程では、磁性基体1002には、予め底面1021に底面電極部分1005が形成されている。第2比較例の場合も定盤500上に導電性ペースト1003が広げられ(
図10(A))、磁性基体1002の一端が導電性ペースト1003に浸けられる(
図10(B))。但し、導電性ペースト1003が第1比較例の製造工程よりも薄く広げられるか、あるいは、磁性基体1002の一端が第1比較例の製造工程よりも小さく導電性ペースト1003に浸けられる。
【0049】
その結果、第2比較例では、第1比較例よりも薄く導電性ペースト1003が磁性基体1002に付着する(
図10(C))。同様の工程が磁性基体1002の他端でも行われた後、導電性ペースト1003が焼結され、磁性基体1002の両端に2面型の外部電極1006を有するコイル部品1010が得られる(
図10(D))。
【0050】
第2比較例のコイル部品1010では、外部電極1006のうち、
図10(C)に示す導電性ペースト1003からなる部分における長さ方向Lの寸法E2は、第1比較例の寸法E1よりも小さい。このため、第2比較例では第1比較例よりも、本来不要な上面1023や側面1024の電極面積が小さい。しかし、第2比較例でも第1比較例と同様に、磁性基体1002の上面1023に外部電極1006が達しているため、基板2aのたわみによって引き起こされる外部電極1006への応力により、磁性基体1002にクラックなどが生じる虞がある。
第2比較例の場合には、磁性基体1002の両端における外部電極1006の厚さは第1比較例よりも薄いので、コイル部品1010の長さ方向Lの寸法L2は第1比較例よりも小さい。しかし、第2比較例の場合にも、磁性基体1002の端部に付着した導電性ペースト1003のムーンシェイプによって外部電極1006の高さ方向Hの寸法H2や幅方向Wの寸法W2が磁性基体1002の外形寸法よりも大きくなる。このため、第2比較例でも外部電極1006によってコイル部品1010の小型化が阻害される。
【0051】
図12は、磁性基体1002の上面1023に達した外部電極1006の部分拡大断面図である。
第2比較例の場合、外部電極1006の端部が、磁性基体1002の上面1023と端面1022とを分ける稜線を成す曲面部分1008を覆っている。このため、第2比較例では、上面1023に沿っためっきの伸び1007が生じて渦電流損失が発生する。
【0052】
図13~
図16は、
図1~
図5に示すコイル部品1における外部電極の製造工程を示す図である。
本発明の一実施形態においては、
図13(A)に示すように、導体14の引出部401が存在している磁性基体11の底面101に、第1導電性ペースト601がスクリーン印刷や転写等により塗布される。第1導電性ペースト601は、金属材料を例えば70%以上含んだ導電性ペーストである。
【0053】
なお、第1導電性ペースト601が塗布される前に、メッキ、スパッタリングにより磁性基体11に下地電極層が設けられても良い。下地電極層が設けられると、第1導電性ペースト601の厚みが薄くても、その後の第3電極層203の形成において、必要な部分の全体について第3電極層203の形成が可能となる。
【0054】
底面101に塗布された第1導電性ペースト601に対して本実施形態では、
図13(B)に示すように平面化が施される。即ち第1導電性ペースト601に対し、底面101に向かう圧力が、例えば治具510などによって掛けられて第1導電性ペースト601が平面化される。
平面化によって第1導電性ペースト601は、
図13(C)に示すように、表面が平滑で厚みも小さい層となる。
【0055】
底面101に対する第1導電性ペースト601の層の形成後、
図14に示すように、第2導電性ペースト602の塗布が行われる。第2導電性ペースト602は、金属材料を例えば60%以下含んだ導電性ペーストである。
第2導電性ペースト602の塗布では、回転する塗布用のローラ520が用いられ、第2導電性ペースト602が磁性基体11の端面102に塗布される。
図14(A)に示すように、ローラ520の周面には、回転方向に延びる溝521が設けられており、溝521内には第2導電性ペースト602が充填されている。
【0056】
ローラ520の周面が、
図14(B)に示すように磁性基体11の端面102に接することで溝521内の第2導電性ペースト602が磁性基体11の端面102に塗布される。この際に、ローラ520の高さ方向Hの位置が調整されて、溝521の縁が端面102の途中に接するとともに、底面101と端面102との境界をなす稜線部分が溝521の幅内に位置するようにローラ520が位置決めされる。
【0057】
ローラ520の上記位置決めによって、
図14(C)に示すように、第2導電性ペースト602は、磁性基体11の上面103から離れた位置に塗布される。また、第2導電性ペースト602の高さ方向Hにおける塗布幅は、溝521の縁によって精度よく決められる。第2導電性ペースト602のムーンシェイプは、磁性基体11の底面101側で生じるが、高さ方向Hにおける塗布幅の寸法精度には影響が小さい。
【0058】
図13および
図14に示す塗布の工程を経ることにより、
図14(D)に示すように、磁性基体11は、底面101と端面102に導電性ペースト601、602が塗布された状態となる。
導電性ペースト601、602が塗布された磁性基体11は、
図15に示すように加熱炉530内に収容され、導電性ペースト601、602が焼結されて第1電極層201と第2電極層202が形成される。
その後、
図16に示すように、磁性基体11上に形成された第1電極層201および第2電極層202を覆うように、例えばめっき、金属材料の塗布、スパッタリング法、あるいは蒸着法によって第3電極層203が形成されて外部電極12が得られる。
【0059】
図17は、変形例のコイル部品を示す斜視図であり、
図18は、変形例のコイル部品を示す端面図である。
変形例のコイル部品10では、磁性基体11の端面102と底面101に亘る外部電極12が設けられるとともに、磁性基体11の端面102と上面103に亘る外部電極12も設けられる。そして、変形例のコイル部品10は、実装に際して端面102が基板2aに対面する。
【0060】
変形例のコイル部品10でも外部電極12は、
図5に示す外部電極12と同様に、第1電極層201と第2電極層202と第3電極層203とを有する。但し、変形例のコイル部品10では、第1電極層201が磁性基体11の端面102に設けられ、第2電極層202が底面101と上面103に設けられる。
また、変形例のコイル部品10では、第1電極層201となる第1導電性ペースト601が、
図14に示すローラ520による塗布で磁性基体11の端面102に塗布される。この塗布により、狭い端面102に対して精度よく第1電極層201が形成される。
【0061】
<実施例>
ここで、
図1~
図5に示すコイル部品1における実施例について説明する。
第1電極層201および第2電極層202における金属充填率が異なる複数の実施例について、強度試験と電気的試験とを行った。
図19は、第1電極層201の金属充填率が異なる実施例に対する電気的試験の結果を示す表である。
第1電極層201における金属充填率を調整するため、第1電極層201を形成する第1導電性ペーストとして金属材料の含有量が異なる複数種類の第1導電性ペーストを用いた。電気的試験としては、直流抵抗Rdcの測定試験と高負荷(HC)試験を行った。
【0062】
図19の表の上段には、各実施例における第1電極層201の金属充填率が示されている。
図19の表の中段には、直流抵抗Rdcの測定値が示され、
図19の表の下段には、高負荷(HC)試験後にオープン(断線)状態となった率が示されている。
直流抵抗Rdcの測定値は、第1電極層201の金属充填率が高いほど低い値を示しており、第1電極層201の金属充填率が70%以上であるとHC試験後のオープン率は0%となった。従って、電気的試験の結果から、第1電極層201の金属充填率としては70%以上が望ましいと言える。
【0063】
図20は、第2電極層202の金属充填率が異なる実施例に対する強度試験の結果を示す表である。
第2電極層202における金属充填率を調整するため、第2電極層202を形成する第2導電性ペーストとして金属材料の含有量が異なる複数種類の第2導電性ペーストを用いた。強度試験としては、コイル部品1の基板2aに対する固着力を測定する固直強度試験と、基板2aを撓ませてコイル部品1のクラック発生などを確認するたわみ強度試験と、回路基板2を落下させてコイル部品1の脱落などを確認する落下試験とを行った。
【0064】
図20の表の最上段には、各実施例における第2電極層202の金属充填率が示され、
図20の表の2段目には、固直強度の測定値が示されている。
図20の表の3段目には、20個の試料に対するたわみ強度試験によりクラックなどが生じた割合が分数形式で示されている。
図20の表の最下段には、20個の試料に対する落下試験により脱落などが生じた割合が分数形式で示されている。
【0065】
第2電極層202の金属充填率は60%以下であると、固着強度が30Nを超える高い値を示し、クラックの発生やコイル部品1の脱落も生じなかった。従って、第2電極層202の金属充填率としては60以下が望ましいと言える。また、第1電極層201では70%以上の金属充填率が望ましいことと考え合わせるならば、第2電極層202の金属充填率が第1電極層201の金属充填率よりも低いと、外部電極12に掛かる応力の緩和と低い抵抗値との両立が図られることも確認できた。
【符号の説明】
【0066】
1 コイル部品
2 回路基板
2a 基板
3 ランド部
4 はんだ
11 磁性基体
12 外部電極
14 導体
101 底面
102 端面
103 上面
104 前面
105 後面
201 第1電極層
202 第2電極層
203 第3電極層
401 周回部
402 引出部
601 第1導電性ペースト
602 第2導電性ペースト