IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-フィルタの製造方法 図1
  • 特開-フィルタの製造方法 図2
  • 特開-フィルタの製造方法 図3
  • 特開-フィルタの製造方法 図4
  • 特開-フィルタの製造方法 図5
  • 特開-フィルタの製造方法 図6
  • 特開-フィルタの製造方法 図7
  • 特開-フィルタの製造方法 図8
  • 特開-フィルタの製造方法 図9
  • 特開-フィルタの製造方法 図10
  • 特開-フィルタの製造方法 図11
  • 特開-フィルタの製造方法 図12
  • 特開-フィルタの製造方法 図13
  • 特開-フィルタの製造方法 図14
  • 特開-フィルタの製造方法 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161117
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】フィルタの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 39/16 20060101AFI20231030BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20231030BHJP
   B01D 46/02 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
B01D39/16 A
B01D53/86 222
B01D46/02 B ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071280
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】勝木 将利
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 匠
(72)【発明者】
【氏名】垣谷 健太
(72)【発明者】
【氏名】浅井 由季
(72)【発明者】
【氏名】秋山 浩庸
(72)【発明者】
【氏名】西口 輝一
【テーマコード(参考)】
4D019
4D058
4D148
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019BA13
4D019BB03
4D019BC07
4D019BC13
4D019CA04
4D019CB04
4D019CB06
4D019CB07
4D058JA04
4D058JB14
4D058JB25
4D058JB39
4D058JB46
4D058QA25
4D058SA20
4D058TA06
4D148AA06
4D148AB02
4D148AC03
4D148AC04
4D148BA07Y
4D148BB01
4D148BB08
4D148CC27
4D148EA08
(57)【要約】
【課題】濾布に触媒が分散された状態で触媒を担持させることができるフィルタの製造方法を提供する。
【解決手段】フィルタの製造方法は、濾布に触媒が担持されたフィルタの製造方法であって、触媒スラリーを調製するステップと、前記触媒スラリーに界面活性剤を添加することで、前記濾布に対する前記触媒スラリーの接触角を調整するステップと、前記接触角が調整された触媒スラリーを前記濾布に塗布するステップとを含む。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾布に触媒が担持されたフィルタの製造方法であって、
触媒スラリーを調製するステップと、
前記触媒スラリーに界面活性剤を添加することで、前記濾布に対する前記触媒スラリーの接触角を調整するステップと、
前記接触角が調整された触媒スラリーを前記濾布に塗布するステップと
を含むフィルタの製造方法。
【請求項2】
前記触媒スラリーの接触角を調整するステップは、
前記触媒スラリーに含まれる界面活性剤の濃度と前記接触角との関係を取得するステップと、
前記接触角と前記濾布に担持される触媒の担持量との関係を取得するステップと、
前記濾布に担持される触媒の担持量を特定するステップと、
特定された前記触媒の担持量に相当する接触角を前記触媒の担持量との関係に基づいて特定するステップと、
特定された前記接触角に相当する濃度を前記接触角との関係に基づいて特定するステップと、
特定された前記濃度となるように前記界面活性剤を前記触媒スラリーに添加するステップと
を含む、請求項1に記載のフィルタの製造方法。
【請求項3】
前記触媒スラリーの接触角を調整するステップは、
前記触媒スラリーに含まれる界面活性剤の濃度と前記接触角との関係を取得するステップと、
前記接触角と前記濾布に担持された触媒の脱落率との関係を取得するステップと、
前記濾布に担持された触媒の脱落率を特定するステップと、
特定された前記触媒の脱落率に相当する接触角を前記触媒の脱落率との関係に基づいて特定するステップと、
特定された前記接触角に相当する濃度を前記接触角との関係に基づいて特定するステップと、
特定された前記濃度となるように前記界面活性剤を前記触媒スラリーに添加するステップと
を含む、請求項1に記載のフィルタの製造方法。
【請求項4】
前記界面活性剤は、エーテル型界面活性剤である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルタの製造方法。
【請求項5】
前記エーテル型界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、又はポリアルキレンアルキルエーテルである、
請求項4に記載のフィルタの製造方法。
【請求項6】
前記濾布は、フッ素繊維を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルタの製造方法。
【請求項7】
前記触媒スラリーを濾布に塗布するステップでは、スプレーノズルによって前記触媒スラリーを前記濾布に噴霧する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルタの製造方法。
【請求項8】
前記濾布に触媒が担持されたフィルタは、炉内脱硝装置が設置されたプラントに適用されるフィルタである、請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルタの製造方法。
【請求項9】
前記濾布に触媒が担持されたフィルタは、排ガス再循環装置が設置されたプラントに適用されるフィルタである、請求項1から3のいずれか一項に記載のフィルタの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、触媒スラリーに含まれる有機溶媒の濃度と濾布に担持される触媒の担持量との関係を導き出して、濾布に担持させる目標担持量から有機溶媒の濃度を決定するフィルタの製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-133317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたフィルタの製造方法では、濾布がフッ素繊維を含むもののように撥水性を有する場合に触媒スラリーが濾布にはじかれて触媒スラリーを濾布の内部に十分に浸透させることができない。このため、触媒スラリーを濾布に塗布しても触媒が濾布に分散された状態で担持することができない。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、触媒が濾布に分散された状態で担持することができるフィルタの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の少なくとも一実施形態に係るフィルタの製造方法は、
濾布に触媒が担持されたフィルタの製造方法であって、
触媒スラリーを調製するステップと、
前記触媒スラリーに界面活性剤を添加することで、前記濾布に対する前記触媒スラリーの接触角を調整するステップと、
前記接触角が調整された触媒スラリーを前記濾布に塗布するステップと
を含む。
【発明の効果】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、濾布に対する触媒スラリーの接触角が小さくなるように触媒スラリーを調整することで、濾布に対する触媒スラリーの濡れ性がよくなる。このため、接触角を調整する前の触媒スラリーと調整した後の触媒スラリーを同じ体積で比較すると、調整した後の触媒スラリーのほうが濾布繊維との接触面積が増える。これにより、接触角が小さくなるように調整した後の触媒スラリーでは、触媒スラリーが濾布繊維に万遍なく接触するようになり、濾布の内部に触媒スラリーが浸透し、触媒は濾布繊維に分散された状態で担持される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】濾布に対する触媒スラリーの接触角を示す概念図である。
図2】実施形態1に係るフィルタの製造方法を概略的に示すフローチャートである。
図3図2に示した触媒スラリーを濾布に塗布するステップの一例を概略的に示すフローチャートである。
図4】実施形態2に係る触媒スラリーの接触角を調整するステップを概略的に示すフローチャートである。
図5】界面活性剤の濃度と触媒スラリーの接触角との関係を示す図である。
図6】触媒スラリーの接触角と濾布に担持される触媒の担持量との関係を取得するステップを概略的に示すフローチャートである。
図7】触媒スラリーの接触角と濾布に担持された触媒の担持量との関係を示す図である。
図8】比較例に係るフィルタの製造方法によって製造されたフィルタであって、エタノールを添加した触媒スラリーを濾布にスプレー塗布したフィルタの拡大図である。
図9】実施例に係るフィルタの製造方法によって製造されたフィルタであって、界面活性剤を添加した触媒スラリーを濾布にスプレー塗布したフィルタの拡大図である。
図10】エタノールを添加した触媒スラリーの触媒浸透深さに対する界面活性剤を添加した触媒スラリーの触媒浸透深さ(相対触媒浸透深さ)を示す図である。
図11】実施形態3に係る触媒スラリーの接触角を調整するステップを概略的に示すフローチャートである。
図12】触媒スラリーの接触角と濾布に担持された触媒の脱落率との関係を取得するステップを概略的に示すフローチャートである。
図13】触媒スラリーの接触角と濾布に担持された触媒の脱落率との関係を示す図である。
図14】フィルタが適用された炉内脱硝装置が設置されたプラントを概略的に示す図である。
図15】フィルタが適用された炉内脱硝装置と排ガス再循環装置とが設置されたプラントを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0010】
図1は、濾布1に対する触媒スラリー(液滴)3の接触角θを示す概念図である。
図1に示す、濾布1に対する触媒スラリー(液滴)3の接触角θは、濾布1に対する触媒スラリー3のぬれ性を評価する指標である。
ポリテトラフルオロエチレン(以下「PTFE」という)等のフッ素繊維を含む濾布は撥水性であることから、水をベースとする触媒スラリーを塗布しても、濾布に触媒スラリーが浸透せずに、触媒が濾布表面で凝集し、均一かつ十分な量の触媒が担持できない。
本願発明者らは、触媒スラリーに界面活性剤を添加することで、濾布1に対する触媒スラリー3の接触角θを制御できることを見出した。また、本願発明者らは、濾布1に対する触媒スラリー3の接触角θが小さくなるように制御することで、PTFE等のフッ素繊維を含む濾布であっても、触媒スラリーを浸透させることができ、均一かつ十分な量の触媒を担持できることを見出した。これらの知見から以下に説明するフィルタの製造方法を実現している。
【0011】
[実施形態1]
[フィルタの製造方法]
図2は、実施形態1に係るフィルタの製造方法を概略的に示すフローチャートである。
実施形態1に係るフィルタの製造方法は、濾布に触媒が担持されたフィルタの製造方法であって、濾布は、例えば、PTFE等のフッ素繊維を含むが、これに限られるものではない。また、触媒は、例えば、成分としてチタン(Ti)を含むものを例示することができるが、これに限られるものではない。
【0012】
図2に示すように、実施形態1に係るフィルタの製造方法は、触媒スラリーを調製するステップ(S11)と、触媒スラリーに界面活性剤を添加することで、濾布に対する触媒スラリーの接触角を調整するステップ(S12)と、接触角が調整された触媒スラリーを濾布に塗布するステップ(S13)と、触媒スラリーが塗布された濾布を乾燥させるステップ(S14)とを含んでいる。
【0013】
触媒スラリーの接触角を調整するステップ(S12)において触媒スラリーに添加する界面活性剤は、例えば、エーテル型界面活性剤であるが、これに限られるものではない。エーテル型界面活性剤は、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、又はポリアルキレンアルキルエーテルであるが、これに限られるものではない。
【0014】
触媒スラリーを濾布に塗布するステップ(S13)では、スプレーノズル(図示せず)によって触媒スラリーを濾布に噴霧する。図3に示すように、触媒スラリーを濾布に塗布するステップ(S13)は、例えば、濾布に触媒スラリーが浸透する深さを検討するステップ(S21)、触媒スラリーを噴霧する圧力を調整するステップ(S22)、及び濾布に触媒スラリーをスプレー塗布(噴霧)するステップ(S23)を有している。
【0015】
触媒スラリーの濾布に対する接触角θは、触媒スラリーに含まれる界面活性剤の濃度kの関数fで示すことができる(θ=f(k))。触媒スラリーの浸透速度をv、触媒スラリーの浸透する深さをz、触媒スラリーを噴霧する圧力をP、触媒スラリーを噴霧する時間をtとすると、触媒スラリーの浸透速度vは、触媒スラリーの浸透する深さzを触媒スラリーを噴霧する時間で微分したものであり(v=dz/dt)、触媒スラリーの濾布に対する接触角θ、触媒スラリーの浸透する深さz、触媒スラリーを噴霧する圧力Pの関数gで示すことができる(v=g(θ、z、P))。これらによって、濾布に触媒スラリーが浸透する深さを検討するステップ(S21)において濾布に触媒スラリーが浸透する深さが検討され、触媒スラリーを噴霧する圧力を調整するステップ(S22)において触媒スラリーを噴霧する圧力が調整される。
【0016】
[効果]
上述した実施形態1に係るフィルタの製造方法によれば、濾布に対する触媒スラリーの接触角が小さくなるように調整することで、濾布に対する触媒スラリーの濡れ性がよくなる。このため、接触角を調整する前の触媒スラリーと調整した後の触媒スラリーを同じ体積で比較すると、調整した後の触媒スラリーのほうが濾布繊維との接触面積が増える。これにより、接触角が小さくなるように調整した後の触媒スラリーでは、触媒スラリーが濾布繊維に万遍なく接触するようになり、濾布の内部に触媒スラリーが浸透し、触媒は濾布繊維に分散された状態で担持される。
【0017】
また、例えば、濾布はフッ素繊維を含むので撥水性であるが、触媒スラリーに界面活性剤を添加し、濾布に対する触媒スラリーの接触角が小さくなるように調整することで、フッ素繊維を含む濾布に触媒スラリーを浸透させ易くできる。そして、フッ素繊維を含む濾布に触媒を浸透させることで、フッ素繊維を含む濾布であっても触媒が濾布繊維に分散された状態で担持させることができる。
【0018】
[実施形態2]
図4は、実施形態2に係る触媒スラリーの接触角を調整するステップ(S12)を概略的に示すフローチャートである。実施形態2に係るフィルタの製造方法は、実施形態1に対して、触媒スラリーの接触角を調整するステップ(S12)を特定するものであり、触媒スラリーを調製するステップ(S11)、接触角が調整された触媒スラリーを濾布に塗布するステップ(S13)、及び触媒スラリーが塗布された濾布を乾燥させるステップ(S14)は、実施形態1に係るフィルタの製造方法と同じである。
【0019】
実施形態2に係る触媒スラリーの接触角を調整するステップ(S12)は、界面活性剤の濃度と触媒スラリーの接触角との関係を取得するステップ(S31)と、触媒スラリーの接触角と触媒の担持量との関係を取得するステップ(S32)と、触媒の担持量を特定するステップ(S33)と、触媒の担持量に相当する触媒スラリーの接触角を特定するステップ(S34)と、界面活性剤の濃度を特定するステップ(S35)と、界面活性剤を添加するステップ(S36)とを含んでいる。
【0020】
界面活性剤の濃度と触媒スラリー接触角との関係を取得するステップ(S31)は、触媒スラリーに含まれる界面活性剤の濃度と触媒スラリーの濾布に対する接触角との関係を取得するステップである。触媒スラリーに含まれる触媒は成分としてチタン(Ti)を含むものであり、溶媒は水であって、触媒スラリーのスラリー濃度は25wt%である。図5に示すように、触媒スラリーに含まれる界面活性剤の濃度と触媒スラリーの濾布に対する接触角との関係は、触媒スラリーに含まれる界面活性剤の濃度を変更しながら触媒スラリーの濾布に対する接触角を計測することで求められる。図5に示す例では、陰イオン性界面活性剤であるナトリウムジオクチルスルホサクシネートとエーテル型界面活性剤であるポリオキシエチレンアルキルエーテルについて、触媒スラリーに含まれる界面活性剤の濃度と触媒スラリー(液滴)の濾布に対する接触角との関係を求めている。ナトリウムジオクチルスルホサクシネートとポリオキシエチレンアルキルエーテルとではポリオキシエチレンアルキルエーテルのほうが低濃度域での接触角低減効果が大きいことがわかる。よって、触媒スラリーに添加する界面活性剤は、ナトリウムジオクチルスルホサクシネートよりもポリオキシエチレンアルキルエーテルのほうが好ましい。
【0021】
触媒スラリーの接触角と触媒の担持量との関係を取得するステップ(S32)は、触媒スラリー(液滴)の濾布に対する接触角と濾布に担持される触媒の担持量との関係を取得するステップである。触媒スラリーの接触角と触媒の担持量との関係を取得するステップ(S32)は、図6に示すように、濾布の大きさ及び質量を計測するステップ(S41)、濾布を乾燥させるステップ(S42)、濾布の質量を計測するステップ(S43)、触媒スラリーを調製するステップ(S44)、触媒スラリーをスプレー塗布するステップ(S45)、触媒スラリーが塗布された濾布を乾燥させるステップ(S46)、及び、フィルタの質量を計測するステップ(担持量を測定するステップ)(S47)を含んでいる。
【0022】
濾布を乾燥させるステップ(S42)では、例えば、110°Cで1時間乾燥させることで、乾燥状態の濾布の質量計測を可能にしている。触媒スラリーを調製するステップ(S44)では、触媒スラリーに添加する界面活性剤の添加濃度を変更することで、接触角が異なる触媒スラリーを調製している。触媒スラリーを塗布するステップ(S45)では、例えば、ノズルが1流体ノズル、触媒スラリーの噴出量が1L/minであって、ノズルパターンが楕円、噴霧圧力が0.08(0.05~0.15)MPa、噴霧距離40cm、触媒スラリーの濃度が25wt%とする。触媒スラリーが塗布された濾布を乾燥させるステップ(S46)では、例えば、110°Cで2時間乾燥させる。
【0023】
図7は、触媒スラリーの接触角と触媒の担持量との関係を取得するステップ(ステップS41からS47)によって取得された触媒スラリーの接触角と触媒担持量との関係を示す図である。図7に示す第1素材は現時点で入手可能なフッ素系繊維の中で最も撥水性の高いものであり、第2素材は最も撥水性の低いものである。図7に示すように、触媒スラリーの接触角と触媒担持量との関係は直線で示すことができ、略比例関係にあることから、現時点で入手可能なフッ素繊維の接触角と触媒担持量はこの二つの直線に挟まれた範囲にあると考えられる。
【0024】
図4に示す、触媒の担持量を特定するステップ(S33)は、濾布に担持される触媒の担持量を特定するステップであり、例えば、フィルタの要求性能に基づいて特定される。フィルタの要求性能は、例えば、差圧、脱硝性能の要否、ダイオキシン分解性能の要否等である。
【0025】
触媒の担持量に相当する触媒スラリーの接触角を特定するステップ(S34)は、特定された触媒の担持量に相当する触媒スラリーの接触角を触媒の担持量との関係に基づいて特定するステップである。例えば、濾布が第1素材の濾布であり特定された触媒の担持量が200g/m2の場合には、図7に示した触媒スラリーの接触角と触媒の担持量との関係から接触角が56°に特定される。このように濾布の素材と触媒の担持量が特定されると触媒スラリーの接触角が特定される。
【0026】
図4に示す、界面活性剤の濃度を特定するステップ(S35)は、特定された触媒スラリーの接触角に相当する界面活性剤の濃度を触媒スラリーの接触角との関係に基づいて取得するステップである。例えば、界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテルであり特定された触媒スラリーの接触角が56°の場合には、図5に示した界面活性剤の濃度と触媒スラリーの接触角との関係から界面活性剤の濃度が0.1wt%に特定される。このように界面活性剤と触媒スラリーの接触角が特定されると界面活性剤の濃度が特定される。
【0027】
図4に示す、界面活性剤を添加するステップ(S36)は、特定された濃度となるように界面活性剤を触媒スラリーに添加するステップである。ステップS36では、ステップ35で特定された界面活性剤の濃度となるように、ステップS11で調製した触媒スラリーに界面活性剤を添加する。例えば、界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテルであり界面活性剤の濃度が0.1wt%の場合には、ポリオキシエチレンアルキルエーテルの濃度が0.1wt%となるように、ステップS11で調製した触媒スラリーにポリオキシエチレンアルキルエーテルを添加する。
【0028】
[効果の確認]
以下に説明する効果の確認では、実施例の触媒スラリーの触媒濃度を25wt%とし、触媒スラリーに添加される界面活性剤の添加剤濃度を1.0wt%とするが、触媒スラリーに界面活性剤を添加することで、濾布に対する触媒スラリーの接触角を調整することに変わりはない。したがって、触媒スラリーに添加される界面活性剤の濃度は1.0wt%に限定されるものではなく、例えば、界面活性剤がポリオキシエチレンアルキルエーテルである場合には、0.1wt%以上であれば、1.0wt%を超えていてもよい。
【0029】
[比較例]
図8は、比較例に係るフィルタの製造方法によって製造されたフィルタであって、触媒の濃度が25wt%となるように調製された触媒スラリー(溶媒は水)に添加剤濃度が20wt%となるようにエタノールを添加した触媒スラリーを第1素材の濾布にスプレー塗布したフィルタ10を示す図である。この触媒スラリーの接触角は約85°である。図8に示すように、エタノールを添加した触媒スラリーをスプレー塗布したフィルタ10では、濾布の表面で触媒が凝集している(凝集した触媒を符号14で示す)。このように濾布の表面で触媒が凝集していると、フィルタ10の上流側と下流側の圧力差(圧力損失)が大きく、触媒が濾布から脱落しやすくなる。
【0030】
[実施例]
図9は、実施例に係るフィルタの製造方法によって製造されたフィルタであって、触媒濃度が25wt%となるように調整された触媒スラリー(溶媒は水)に添加剤濃度が1.0wt%となるようにポリオキシエチレンアルキルエーテル(界面活性剤)を添加した触媒スラリーを第1素材の濾布にスプレー塗布したフィルタ20を示す図である。この触媒スラリーの接触角は約41°である。図9に示すように、界面活性剤を添加した触媒スラリーをスプレー塗布したフィルタ20では、濾布の表面で触媒が凝集することなく、触媒24が濾布繊維22に高分散状態で濾布繊維22に担持されている。このように触媒24が高分散状態で濾布繊維22に担持されると、触媒担持量を確保することができるだけでなく、フィルタ20の上流側と下流側の圧力差(圧力損失)が小さく、触媒が濾布から脱落し難くなる。
【0031】
図10は、エタノールを添加した触媒スラリーの触媒浸透深さに対する界面活性剤を添加した触媒スラリーの触媒浸透深さ(相対触媒浸透深さ)を示す図である。図10では、界面活性剤を添加した触媒スラリーの触媒浸透深さを1.0とする。図10に示すように、界面活性剤を添加した触媒スラリーをスプレー塗布したフィルタ(以下「実施例に係るフィルタ」という)は、エタノールを添加した触媒スラリーをスプレー塗布したフィルタ(以下「比較例に係るフィルタ」という)に比べて相対触媒浸透深さが深く、濾布の内部にも浸透する。これにより、実施例に係るフィルタは、比較例に係るフィルタよりも触媒粒子と濾布繊維22の付着力が増大し、触媒も濾布から脱落し難くなる。また、実施例に係るフィルタは、比較例に係るフィルタよりも濾布の全体に分散され、触媒が濾布の表面で凝集し難くなる。これにより、実施例に係るフィルタは、比較例に係るフィルタに比べてフィルタの上流側と下流側の圧力差(圧力損失)が小さくなる。尚、触媒スラリーに添加したエタノールの濃度(添加剤濃度)は20wt%であり、触媒スラリーに添加した界面活性剤の濃度(添加剤濃度)は1.0wt%である。これらの濃度は、図8に示したフィルタ(比較例)において触媒スラリーに添加したエタノールの濃度、及び図9に示したフィルタ(実施例)において触媒スラリーに添加した界面活性剤の濃度と同じである。
【0032】
また、実施例に係るフィルタは、比較例に係るフィルタよりも濾布の全体に分散されるので、ガスに接触する触媒の接触面積が大きくなり、同じ触媒で同じ担持量でも触媒性能が高くなる。これにより、担持する触媒量を減少させることができ、フィルタの上流側と下流側の圧力差(圧力損失)を更に小さくでき、フィルタの製造コストも低減できる。
【0033】
[効果]
上述した実施形態2に係るフィルタの製造方法によれば、濾布がPTFE等のフッ素繊維を含み濾布が撥水性を有するものであっても、界面活性剤を添加することで有機溶媒を添加しなくても濾布に触媒を担持させることができる。また、触媒スラリーに添加する界面活性剤の添加濃度は、図5に示すように、1.0wt%以下であるので、触媒スラリーに有機溶媒を添加する場合に比べて触媒スラリーの製造原価を低減することができる。また、触媒スラリーに有機溶媒を添加する場合に必要となる排水や排気処理設備に要するコストも必要なくなる。
【0034】
また、触媒に添加する界面活性剤の添加濃度を接触角との関係で特定される界面活性剤の濃度以上とした触媒スラリーを濾布にスプレー塗布した場合に、触媒スラリーが濾布繊維の内部に浸透するので、触媒が濾布繊維の内部に分散しつつ濾布繊維に均一に担持されるので、触媒粒子と濾布繊維の密着性が良好となり、触媒が濾布から脱落し難くなる。また、フィルタの上流側と下流側の圧力差(圧力損失)が小さくなり、同じ触媒同じ担持量であっても触媒性能が向上する。
【0035】
また、フィルタの上流側と下流側の圧力差(圧力損失)が小さいので、このフィルタを内蔵した集塵装置の吸引動力を低減することができる。また、触媒が濾布から脱落し難くなるので、触媒性能(脱硝性能、ダイオキシン分解性能等)の低下を抑制できる。これにより、フィルタの交換期間を長くすることもできる。
【0036】
また、触媒が濾布繊維の内部に分散しつつ濾布繊維に均一に担持されるので、ガスに接触する触媒の表面積が大きくなり、同じ触媒同じ担持量でも触媒性能(脱硝性能、ダイオキシン分解性能等)を高くできる。これにより、担持する触媒量を減少させることができ、フィルタの上流側と下流側の圧力差(圧力損失)を更に小さくでき、フィルタの製造コストも低減できる。また、触媒性能を高くできることにより、排ガス処理装置をコンパクトにできる。
【0037】
[実施形態3]
図11は、実施形態3に係る触媒スラリーの接触角を調整するステップ(S12)を概略的に示すフローチャートである。実施形態3に係るフィルタの製造方法は、実施形態1に対して、触媒スラリーの接触角を調整するステップ(S12)を特定するものであり、触媒スラリーを調製するステップ(S11)、接触角が調整された触媒スラリーを濾布に塗布するステップ(S13)、及び触媒スラリーが塗布された濾布を乾燥させるステップ(S14)は、実施形態1に係るフィルタの製造方法と同じである。
【0038】
図11に示すように、実施形態3に係る触媒スラリーの接触角を調整するステップ(S12)は、界面活性剤の濃度と触媒スラリーの接触角との関係を取得するステップ(S31)と、触媒スラリーの接触角と触媒の脱落率との関係を取得するステップ(S52)と、触媒の脱落率を特定するステップ(S53)と、触媒の脱落率に相当する触媒スラリーの接触角を特定するステップ(S54)と、界面活性剤の濃度を特定するステップ(S35)と、界面活性剤を添加するステップ(S36)とを含んでいる。界面活性剤の濃度と触媒スラリーの接触角との関係を取得するステップ(S31)、界面活性剤の濃度を特定するステップ(S35)、及び界面活性剤を添加するステップ(S36)は、実施形態2に係る触媒スラリーの接触角を調整するステップ(S12)における界面活性剤の濃度と触媒スラリーの接触角との関係を取得するステップ(S31)、界面活性剤の濃度を特定するステップ(S35)、及び界面活性剤を添加するステップ(S36)と同じである。
【0039】
触媒の脱落率は、触媒を担持した濾布(フィルタ)に強制振動を与えて触媒が脱落する量を初期の質量で除したものである。触媒スラリーの接触角が大きいと触媒の脱落率が大きく、触媒スラリーの接触角が小さくなると触媒の脱落率が小さくなる傾向にある。
【0040】
触媒スラリーの接触角と触媒の脱落率との関係を取得するステップ(S52)は、触媒スラリーの濾布に対する接触角と濾布に担持された触媒の脱落率との関係を取得するステップである。ここでは、触媒粒子と濾布との密着性を相対的に評価することを目的とし、簡易的にフィルタに対して強制的に振動を与えることで、触媒脱落量と強制振動回数との関係を求めている。フィルタに強制振動を与える装置として超音波器を選定する。超音波器は、例えば、卓上型であり、発振出力が75W、周波数が28kHzである。触媒スラリーの接触角と触媒の脱落率との関係を取得するステップ(S52)は、図12に示すように、触媒が担持された濾布(フィルタ)をカットし大きさを計測するステップ(S61)、フィルタの質量を計測するステップ(S62)、フィルタに強制振動を加えるステップ(S63)、フィルタの質量を計測するステップ(S64)を含んでいる。
【0041】
フィルタをカットし大きさを計測するステップ(S61)では、例えば、フィルタが円形となるようにカットする。フィルタに強制振動を加えるステップ(S63)では、サンプルホルダに触媒スラリーの噴霧側(表面)を上にして強制振動を加えるとともに触媒スラリーの噴霧側(表面)を下にして強制振動を加える。
【0042】
図13は、触媒スラリーの接触角と触媒の脱落率との関係を取得するステップ(ステップS61からS64)によって取得された接触角と触媒の脱落率との関係を示している。例えば、接触角が50°の場合に脱落率が5%となる。
【0043】
図11に示す、触媒の脱落率を特定するステップ(S53)は、濾布に担持された触媒の脱落率を特定するステップであり、フィルタの要求性能に基づいて特定される。フィルタの要求性能は、例えば、フィルタの交換期間、逆洗頻度、逆洗圧力、触媒性能等である。
【0044】
触媒の脱落率に相当する触媒スラリーの接触角を特定するステップ(S54)は、特定された触媒の脱落率に相当する触媒スラリーの接触角を触媒の脱落率との関係に基づいて特定するステップである。例えば、触媒の脱落率が5%の場合には、図13に示した触媒スラリーの接触角と触媒の脱落率との関係から接触角が50°に特定される。このように触媒の脱落率が特定されると触媒スラリーの接触角が特定される。触媒スラリーの接触角が特定されると、実施形態2と同じ動作、すなわち、界面活性剤の濃度を特定するステップ(S35)及び界面活性剤を添加するステップ(S36)を経て、触媒スラリーの接触角が調整される。
【0045】
上述した実施形態3に係るフィルタの製造方法によれば、触媒の脱落率の小さなフィルタが製造されるので、フィルタの交換期間を長くすることができる。これにより、低コスト化が可能である。また、フィルタを逆洗できる装置にこのフィルタが採用された場合に、逆洗圧力を増加することができるので、ダストの払い落としを促進できる。
【0046】
上述した実施形態2に係るフィルタの製造方法と実施形態3に係るフィルタの製造方法では、触媒スラリーの接触角を調整するステップ(S12)が異なるものとして説明したが、触媒の担持量と脱落率とに基づいて界面活性剤の濃度を特定し、該濃度の界面活性剤を触媒スラリーに添加することで、触媒スラリーの接触角を調整するものとしてもよい。
【0047】
[フィルタが適用されるプラントの例1]
実施形態1から3のいずれかのフィルタの製造方法によって製造されたフィルタ125は、図14に示すような炉内脱硝装置120が設置されたプラント100に適用される。炉内脱硝装置120に設置されるフィルタ125は、脱硝兼用の触媒バグフィルタであり、焼却炉110を含み、焼却炉110に炉内脱硝用のアンモニア(NH3)を注入する一方、脱硝兼用の触媒バグフィルタで脱硝するとともにリークアンモニア(L-NH3)を除去する。
【0048】
このようなプラント100によれば、濾布内部に触媒が分散された状態で担持されるので、焼却灰との接触面積が低減され、フィルタの耐久性を向上させることができる(焼却灰に含まれる触媒被毒成分との接触を回避できる)。
また、プラント起動停止時に水分等で灰が固着し、固着した灰と触媒が脱落するのを抑制することができ、潮解性物質との接触も回避できる。
また、プラント100が低負荷運転等で、炉内に還元剤を噴霧することができない場合、フィルタの上流に還元剤を噴霧することで脱硝が可能である。
また、炉内脱硝と組み合わせた窒素酸化物(NOx)濃度の低減が可能となり、脱硝反応塔が不要となる。
【0049】
[フィルタが適用されるプラントの例2]
実施形態1から3のいずれかのフィルタの製造方法によって製造されたフィルタ225は、図15に示すような炉内脱硝装置220と排ガス再循環装置230とが設置されたプラント200に適用される。炉内脱硝装置220に設置されるフィルタ225は、脱硝兼用の触媒バグフィルタであり、焼却炉210を含み、焼却炉に炉内脱硝用のアンモニアを注入する一方、脱硝兼用の触媒バグフィルタで脱硝された排ガスは排ガス再循環装置230を通り循環する。
【0050】
このようなプラントによれば、従来よりもフィルタの上流側と下流側の圧力差(圧力損失)が小さくなるので、排ガス再循環装置230によって再循環させる排ガスのガス量を増大させることができる。これにより、窒素酸化物(NOx)の低減が可能となる。
また、排ガスの循環経路に還元剤を吹き込むことも可能であり、炉内の拡散混合促進により炉内の脱硝効率を向上することができる。また、蒸発やガス化が必要なアンモニア水や尿素水などの還元剤を適用することができる。
【0051】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば、以下のように把握される。
【0052】
[1]の態様に係るフィルタの製造方法は、
濾布に触媒が担持されたフィルタの製造方法であって、
触媒スラリーを調製するステップ(S11)と、
前記触媒スラリーに界面活性剤を添加することで、前記濾布に対する前記触媒スラリーの接触角を調整するステップ(S12)と、
前記接触角が調整された触媒スラリーを前記濾布に塗布するステップ(S13)と
を含む。
【0053】
このような製造方法によれば、濾布に対する触媒スラリーの接触角が小さくなるように触媒スラリーを調整することで、濾布に対する触媒スラリーの濡れ性がよくなる。このため、接触角を調整する前の触媒スラリーと調整した後の触媒スラリーを同じ体積で比較すると、調整した後の触媒スラリーの方が濾布繊維との接触面積が増える。これにより、接触角が小さくなるように調整した後の触媒スラリーでは、触媒スラリーが濾布繊維に万遍なく接触するようになり、濾布の内部に触媒スラリーが浸透し、触媒は濾布繊維に分散された状態で担持される。
【0054】
[2]別の態様に係るフィルタの製造方法は、[1]に記載のフィルタの製造方法であって、
前記触媒スラリーの接触角を調整するステップ(S12)は、
前記触媒スラリーに含まれる界面活性剤の濃度と前記接触角との関係を取得するステップ(S31)と、
前記接触角と前記濾布に担持される触媒の担持量との関係を取得するステップ(S32)と、
前記濾布に担持される触媒の担持量を特定するステップ(S33)と、
特定された前記触媒の担持量に相当する接触角を前記触媒の担持量との関係に基づいて特定するステップ(S34)と、
特定された前記接触角に相当する濃度を前記接触角との関係に基づいて特定するステップ(S35)と、
特定された前記濃度となるように前記界面活性剤を前記触媒スラリーに添加するステップ(S36)と
を含む。
【0055】
このような製造方法によれば、特定された濃度となるように界面活性剤を触媒スラリーに添加することで、特定された担持量の触媒を濾布に担持させることができる。
【0056】
[3]別の態様に係るフィルタの製造方法は、[1]に記載のフィルタの製造方法であって、
前記触媒スラリーの接触角を調整するステップ(S12)は、
前記触媒スラリーに含まれる界面活性剤の濃度と前記接触角との関係を取得するステップ(S51)と、
前記接触角と前記濾布に担持された触媒の脱落率との関係を取得するステップ(S52)と、
前記濾布に担持された触媒の脱落率を特定するステップ(S53)と、
特定された前記触媒の脱落率に相当する接触角を前記触媒の脱落率との関係に基づいて特定するステップ(S54)と、
特定された前記接触角に相当する濃度を前記接触角との関係に基づいて特定するステップ(S55)と、
特定された前記濃度となるように前記界面活性剤を前記触媒スラリーに添加するステップ(S56)と
を含む。
【0057】
このような製造方法によれば、特定された濃度となるように界面活性剤を触媒スラリーに添加することで、特定された脱落率の触媒を濾布に担持させることができる。
【0058】
[4]別の態様に係るフィルタの製造方法は、[1]から[3]のいずれか一つに記載のフィルタの製造方法であって、
前記界面活性剤は、エーテル型界面活性剤である。
【0059】
エーテル型界面活性剤は、陰イオン性界面活性剤よりも低濃度域での接触角低減効果が大きいので、界面活性剤をエーテル型界面活性剤とすることで、触媒スラリーに添加する活性剤を少なくできる。
【0060】
[5]別の態様に係るフィルタの製造方法は、[4]に記載のフィルタの製造方法であって、
前記エーテル型界面活性剤は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、又はポリアルキレンアルキルエーテルである。
【0061】
[6]別の態様に係るフィルタの製造方法は、[1]から[5]のいずれか一つに記載のフィルタの製造方法であって、
前記濾布は、フッ素繊維を含む。
【0062】
このような製造方法によれば、フッ素繊維を含む濾布に触媒スラリーを浸透させ易くできる。そして、フッ素繊維を含む濾布に触媒を浸透させることで、フッ素繊維を含む濾布に触媒が分散された状態で触媒を担持させることができる。
【0063】
[7]別の態様に係るフィルタの製造方法は、[1]から[6]のいずれか一つに記載のフィルタの製造方法であって、
前記触媒スラリーを濾布に塗布するステップ(13)では、スプレーノズルによって前記触媒スラリーを前記濾布に噴霧する。
【0064】
このような製造方法によれば、スプレーノズルによって触媒スラリーを濾布に噴霧するので、触媒スラリーを濾布に均等に塗布することができる。
【0065】
[8]別の態様に係るフィルタの製造方法は、[1]から[7]のいずれか一つに記載のフィルタの製造方法であって、
前記濾布に触媒が担持されたフィルタは、炉内脱硝装置(120)が設置されたプラント(100)に適用されるフィルタ(125)である。
【0066】
このような製造方法によれば、窒素酸化物(NOx)の低減が可能となる。
【0067】
[9]別の態様に係るフィルタの製造方法は、[1]から[7]のいずれか一つに記載のフィルタの製造方法であって、
前記濾布に触媒が担持されたフィルタは、排ガス再循環装置(230)が設置されたプラント(200)に適用されるフィルタ(225)である。
【0068】
このような製造方法によれば、窒素酸化物(NOx)の低減が可能となる。
【符号の説明】
【0069】
1 濾布
3 触媒スラリー(液滴)
10 エーテルを添加した触媒スラリーをスプレー塗布したフィルタ
14 凝集した触媒
20 界面活性剤を添加した触媒スラリーをスプレー塗布したフィルタ
22 濾布繊維
24 触媒
100,200 プラント
110,210 焼却炉
120,220 炉内脱硝装置
125,225 フィルタ(脱硝兼用の触媒バグフィルタ)
230 再循環装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15