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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161124
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】家禽の生産方法
(51)【国際特許分類】
   A23K 10/10 20160101AFI20231030BHJP
   A23K 10/20 20160101ALI20231030BHJP
   A23K 10/30 20160101ALI20231030BHJP
   A23K 50/75 20160101ALI20231030BHJP
【FI】
A23K10/10
A23K10/20
A23K10/30
A23K50/75
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071291
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000183484
【氏名又は名称】日本製紙株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113398
【弁理士】
【氏名又は名称】寺崎 直
(72)【発明者】
【氏名】把田 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 次郎
(72)【発明者】
【氏名】橋本 唯史
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005DA02
2B005DA03
2B005DA05
2B150AA05
2B150AB10
2B150AC25
2B150AC26
2B150AC27
2B150AC28
2B150AE02
2B150AE03
2B150AE04
2B150AE05
2B150AE08
2B150BA01
2B150BE04
2B150CD30
2B150CE02
2B150CE04
2B150CE05
2B150CE12
2B150CE13
(57)【要約】
【課題】家禽の生産において、抗生物質および抗菌物質の使用の代替手段を提供することを課題の1つとする。また、抗生物質および抗菌物質の摂餌量が少ない、又は摂餌されていない、市場価値の高い家禽を生産する方法を提供することを課題の1つとする。
【解決手段】 分子量5,000~100,000の酵母由来核酸および酵母細胞壁成分を含有する酵母調製組成物と、植物性飼料および/または動物性飼料を含有する基本飼料とを併用して前記家禽に給餌し、好ましい一実施形態においては、前記酵母調製組成物を給餌している期間は、抗生物質および/または抗菌物質を前記家禽に給餌せずに、家禽を生産する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
家禽の生産方法であって、分子量5,000~100,000の酵母由来核酸および酵母細胞壁成分を含有する酵母調製組成物と、植物性飼料および/または動物性飼料を含有する基本飼料とを併用して前記家禽に給餌する、前記生産方法。
【請求項2】
前記酵母調製組成物を、前記基本飼料に対して、0.15~0.47重量%の割合となるように給餌する、請求項1に記載の生産方法。
【請求項3】
前記酵母細胞壁成分は、βグルカンを含む、請求項1に記載の生産方法。
【請求項4】
前記酵母調製組成物は、更にリグニンスルホン酸を含有する、請求項1に記載の生産方法。
【請求項5】
前記家禽が、ニワトリである、請求項1に記載の生産方法。
【請求項6】
前記酵母調製組成物の給餌を、遅くとも孵化後の第10日から開始し、少なくとも孵化後第2週目まで行う、請求項1に記載の生産方法。
【請求項7】
前記酵母調製組成物を給餌している期間は、抗生物質および/または抗菌物質を前記家禽に給与しない、請求項1~6のいずれか一項に記載の生産方法。
【請求項8】
孵化後から孵化後第7週までの期間、抗生物質および/または抗菌物質を給与しない、請求項1~6のいずれか一項に記載の生産方法。
【請求項9】
前記家禽の飼養期間中、抗生物質および/または抗菌物質を給与せず、抗生物質および抗菌物質非摂取家禽を生産する、請求項1~6のいずれか一項に記載の生産方法。
【請求項10】
前記家禽は、ニワトリであり、
前記酵母細胞壁成分は、βグルカンを含有し、
前記酵母調製組成物は、更にリグニンスルホン酸を含有し、
前記酵母調製組成物を、前記基本飼料に対して、0.15~0.47重量%の割合となるように給餌し、
前記家禽の飼養期間中、前記酵母調製組成物を給餌し、抗生物質および抗菌物質を給与せず、抗生物質および抗菌物質非摂取ニワトリを生産する、請求項1に記載の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、家禽の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家禽の飼養、特にブロイラーの飼養では、相当数のブロイラーを1つのペンで平飼いするのが一般的である。この場合、大量生産等を目指す観点から密飼いとなる傾向もみられる。密飼いは、飼養環境の衛生状態の悪化を招き、結局、飼養成績が低下することにつながりかねない。そのため、市販の多くの前期用飼料には、飼養成績の改善を目的として抗生物質または抗菌性物質が添加されている。しかし、抗生物質または抗菌物質の使用は、耐性菌出現等の問題があり、これらの薬剤の使用はできるだけ低減または禁止しようとするのが世界的な趨勢である。また、抗生物質や抗菌性物質などの薬剤の摂餌量が少ない、またはこのような薬剤を摂餌していない家禽のほうが、一般的に言って、食用家禽としての市場価値は高い。
【0003】
家禽、家畜などの飼料成分として、核酸などの成分を用いることが報告されている。例えば、5’―ヌクレオチドに摂餌促進作用、下痢症状抑制作用、免疫増強作用があることを見出し、5’―ヌクレオチドを家畜、家禽類に給餌することが報告されている(例えば、特許文献1)。また、豚の生産において、抗生物質やワクチンなどの薬剤にできるだけ依存することなく、健康な豚の飼養に寄与することができる飼料添加剤として核酸成分を用いることが報告されている(例えば、特許文献2)。また、核酸など成分の供給源として酵母エキスを用いることも報告されている(例えば、特許文献1、2、3、4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001-34005号公報
【特許文献2】国際公開第2020/189746号
【特許文献3】特開平7-184595号公報
【特許文献4】国際公開第2021/193907号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
家禽の飼養において、抗生物質や抗菌物質の使用を減らすことが求められているが、家禽の飼養においては、これらの使用が必要となる場面は現実にありうる。そのため、抗生物質や抗菌性物質の使用を減らす手段、更にはこれらの使用の代替手段が求められている。
【0006】
酵母エキスなどを利用し、核酸などの作用により家畜および家禽の免疫増強効果を報告したものはあるが、家禽の飼養においては、抗生物質および抗菌物質の代替手段となり得るか否かを含め、未だ具体的な知見はない。現実に抗生物質または抗菌物質が必要とされる現状下において、抗生物質または抗菌物質を用いずに、これらを用いた場合と同等の飼養が可能な方法については研究の余地があった。
【0007】
以上のような状況に鑑み、解決しようとする課題の1つは、家禽の生産において、抗生物質および抗菌物質の使用を減らす手段、または抗生物質および抗菌物質の使用しない代替手段を提供することにある。
また、解決しようとする更なる課題の1つは、抗生物質および抗菌物質の摂餌量が少ない、又は摂餌されていない、市場価値の高い家禽を生産する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示中に提示される発明は、多面的にいくつかの態様として把握することができる。本開示中に提示される発明のことを「本発明」ともいう。本開示においては、課題を解決するための手段として、少なくとも以下に示すような態様の発明が提供される。
【0009】
〔1〕 家禽の生産方法であって、分子量5,000~100,000の酵母由来核酸および酵母細胞壁成分を含有する酵母調製組成物と、植物性飼料および/または動物性飼料を含有する基本飼料とを併用して前記家禽に給餌する、前記生産方法。
〔2〕 前記酵母調製組成物を、前記基本飼料に対して、0.15~0.47重量%の割合となるように給餌する、上記〔1〕に記載の生産方法。
〔3〕 前記酵母細胞壁成分は、βグルカンを含む、上記〔1〕または〔2〕に記載の生産方法。
〔4〕 前記酵母調製組成物は、更にリグニンスルホン酸を含有する、上記〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の生産方法。
〔5〕 前記家禽が、ニワトリである、上記〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の生産方法。
〔6〕 前記酵母調製組成物の給餌を、遅くとも孵化後の第10日から開始し、少なくとも孵化後第2週目まで行う、上記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の生産方法。
〔7〕 前記酵母調製組成物を給餌している期間は、抗生物質および/または抗菌物質を前記家禽に給与しない、上記〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の生産方法。
〔8〕 孵化後から孵化後第7週までの期間、抗生物質および/または抗菌物質を給与しない、上記〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の生産方法。
〔9〕 前記家禽の飼養期間中、抗生物質および/または抗菌物質を給与せず、抗生物質および抗菌物質非摂取家禽を生産する、上記〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の生産方法。
〔10〕 前記家禽は、ニワトリであり、
前記酵母細胞壁成分は、βグルカンを含有し、
前記酵母調製組成物は、更にリグニンスルホン酸を含有し、
前記酵母調製組成物を、前記基本飼料に対して、0.15~0.47重量%の割合となるように給餌し、
前記家禽の飼養期間中、前記酵母調製組成物を給餌し、抗生物質および抗菌物質を給与せず、抗生物質および抗菌物質非摂取ニワトリを生産する、上記〔1〕に記載の生産方法。
【発明の効果】
【0010】
本開示中に提示される発明の一又は複数の態様において、抗生物質または抗菌物質の使用を減らすことができる家禽の生産方法、または抗生物質および抗菌物質の使用しないくてもよい家禽の生産方法を提供することができる。
また、本開示中に提示される発明の一又は複数の態様において、抗生物質および抗菌物質の摂餌量が少ない、又は摂餌されていない、市場価値の高い家禽を生産する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、酵母調製組成物の配合割合を変えて飼料をブロイラーに給餌したときの第1週目における家禽体重を示す図である。
図2図2は、酵母調製組成物の配合割合を変えて飼料をブロイラーに給餌したときの第2週目における家禽体重を示す図である。
図3図3図1は、酵母調製組成物の配合割合を変えて飼料をブロイラーに給餌したときの第3週目における家禽体重を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について説明する。本開示中、「本発明の一実施形態」との用語は、特に断らない限り、本発明の範疇に含まれる複数の実施形態のうちの任意の一実施形態であり、他の又は複数の実施形態の存在を否定または制限するものではなく、したがって本発明がその一実施形態に限定されるものではない。また、本開示において、単に「実施形態」と記載している場合は、特に断らない限り、一又は複数の実施形態を含みうる。
【0013】
本開示において、特に断らない限り、数値範囲に関し、「AA~BB」という記載は、「AA以上BB以下」を示すこととする(ここで、「AA」および「BB」は任意の数値を示す)。また、下限および上限の単位は、特に断りない限り、双方共に後者(すなわち、ここでは「BB」)の直後に付された単位と同じである。また、「Xおよび/またはY」との表現は、XおよびYの双方、またはこれらのうちのいずれか一方のことを意味する。
【0014】
本発明の一実施形態として、家禽の生産方法が提供される。本開示において、「家禽」との用語は、肉、卵、羽毛などを利用するために飼養する鳥類のことをいう。家禽としては、例えば、主に肉用、卵用、卵肉兼用のニワトリ、アヒル、シチメンチョウ、ハト、およびガチョウなど、愛玩又は鑑賞用のオナガドリ、チャボ、及び東天紅など、並びに、競技用のシャモなどが挙げられる。本開示の生産方法の実施形態においては、抗生物質及び抗菌物質の使用量を低減又は未使用とすることができるため、生産対象となる家禽として好ましくは、用途の観点からは、肉用、卵用、卵肉兼用の家禽が挙げられ、より好ましくは肉用の家禽が挙げられる。また、家禽の種類の観点を加味すると、より好ましくはニワトリが挙げられ、更に好ましくは肉用のニワトリなどが挙げられる。
【0015】
本発明の一実施形態である家禽の生産方法では、所定の期間、酵母調製組成物を、一般に用いられる飼料と併用して家禽に給餌する。本開示において、「酵母調製組成物」との用語は、酵母に由来する1又は2以上の成分を含む組成物のことをいう。酵母に由来する1又は2以上の成分が含まれている限り、酵母調製組成物には、酵母に由来しない他の成分が添加されていてもよい。酵母調製組成物は、酵母の菌体を調製して得られる組成物、または酵母由来の個々の成分を、個別に準備し、それらを混合したものであってもよい。酵母調製組成物中には、一種の酵母に由来する成分の組成物であってもよいし、二種以上の酵母に由来する成分の組成物であってもよい。
【0016】
また、本開示においては、酵母調製組成物以外に家禽に供与する飼料のことを基本飼料ともいう。基本飼料は、典型的には、家禽の主食となる栄養成分を提供する組成物であり、本発明の一実施形態において、基本飼料は、植物性飼料および/または動物性飼料を含有する組成物でありうる。
【0017】
1.酵母調製組成物
本発明の好ましい一実施形態において、酵母調製組成物は、酵母由来の核酸と、酵母細胞壁成分とを含有する。
核酸は、高分子としての核酸だけではなく、核酸の構成単位であるヌクレオチドであってもよいが、ある程度大きい分子が好適である。好ましい一実施形態としては、例えば、重量平均分子量(Mw)5,000~100,000の範囲内である核酸分子が酵母調製組成物中に含まれていることが挙げられる。
核酸の重量平均分子量の下限は、より好ましくは6,000、7,000、8,000、または9,000以上、更に好ましくは10,000、15,000、または20,000以上でありうる。
核酸の重量平均分子量の上限は、より好ましくは80,000以下、更に好ましくは、70,000、60,000、または50,000以下でありうる。
なお、ここでいう核酸の分子量分布は、例えばGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により求めることができる。
【0018】
核酸を構成する糖の種類は、デオキシリボースおよびリボースのいずれでもよい。すなわち、核酸はデオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)のいずれでもよい。核酸を構成する塩基の種類としては、主にアデニン、グアニン、チミン、シトシン、ウラシルが挙げられ、すなわち核酸を構成するヌクレオシドの種類としては、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウリジン、チミジンが挙げられる。ヌクレオチドを構成するリン酸は、一リン酸であっても、複数のリン酸で構成されていてもよい。核酸として、市販品を用いてもよい。核酸は、1種を単独で配合してもよいし、複数種を混合して配合してもよい。核酸としては、好ましくは、リボ核酸およびヌクレオチドを用いうる。
【0019】
本発明の実施形態において用いうる核酸は、酵母に由来するもの、すなわち酵母由来核酸が用いられる。例えば、酵母から抽出または精製など調製をしたものを用いることができる。本発明の好ましい一実施形態において、酵母由来核酸は、酵母の細胞壁内から抽出され、酵母の菌体外に露出していることが好適である。核酸が酵母の菌体外へ抽出されていることにより、酵母菌体内に保持されているよりも、吸収利用されやすい形態とすることができる。更に、吸収利用のされやすさは、核酸が有する様々な飼料添加物としての効能、例えば、免疫活性化作用、摂餌促進作用、体重増進作用などの発揮しやすさに寄与しうる。
【0020】
酵母由来の成分は、酵母自体を入手してもよいし、または酵母を培養して得てもよい。酵母の培養には、特に制限はなく、一般的な方法で培養しうる。本発明の好ましい一実施形態としては、例えば、廃材とされた生物資源、例えば廃材とされた木材に含まれる木質糖分を用いて酵母などの微生物を増殖してもよい。このようにして培養された酵母から核酸を得て、酵母調製組成物に用いることにより、廃材とされていたものを有用物質に転換することができ、持続可能な循環型社会の形成に寄与することもできる。
【0021】
酵母調製組成物中における酵母由来核酸の含有量は、酵母調製組成物の用途に応じて適宜調整してよい。本発明の実施形態において、酵母調製組成物は、基本飼料に添加される飼料用添加剤のように使用しうる。飼料用添加剤としての酵母調製組成物の核酸の含有量の目安を示すと、次のとおりである。
【0022】
酵母調製組成物中における酵母由来核酸の含有量は、好ましくは3~50重量%でありうる。
酵母調製組成物中における酵母由来核酸の含有量の下限は、より好ましくは5、6、または7重量%以上であり、さらに好ましくは8、9、または10重量%以上でありうる。
酵母調製組成物中における酵母由来核酸の含有量の上限は、より好ましくは30重量%以下であり、さらに好ましくは20重量%以下でありうる。
本発明の好ましい一実施形態としては、上記にて示した好ましい分子量(例えば、5,000~100,000)を有する酵母由来核酸を、ここに示す好ましい含有量含んでいる酵母調製組成物を例示しうる。この場合において、上記にて示した好ましい分子量以外の分子量を有する核酸分子が、飼料組成物中にまったく含まれていないということまでは要しないが、その含有量は少ないことが好ましく、具体的には、上記の好ましい分子量の核酸分子の含有量よりは少ないことが好ましく、より好ましくは1重量%以下でありうる。
【0023】
本発明の一実施形態において、酵母調製用組成物は酵母細胞壁成分を含有する。酵母細胞壁成分はカビ毒を吸着することができる。若干雑菌が繁殖した飼料を動物(家禽を含む。)が摂食してしまったとしても、酵母細胞壁成分のカビ毒吸着作用により、雑菌から生じる毒素が動物に吸収されることを抑制し、動物から排出させることに寄与しうる。
【0024】
「酵母細胞壁成分」との用語は、酵母に由来する細胞壁の一部若しくは全体、または繊維質成分を意味する。酵母細胞壁成分は、酵母菌体から核酸を脱核処理して得られる脱核酵母であってもよいし、酵母の外殻形状を留めた細胞壁であってもよし、または外殻形状を留めない程度にまで細胞壁を粉砕したものであってもよい。本発明で用いられる細胞壁成分は、酵母細胞壁の一部でありうるが、少なくとも繊維質を残していることが望ましい。少なくとも繊維質を留めていることにより、カビ毒吸着性に優れる。他方、繊維質が残らないほど分解が進んでしまうと、カビ毒吸着性が低下する傾向が強まる。
【0025】
酵母調製組成物中における酵母細胞壁成分の含有量は、飼料用組成物の用途に応じて適宜調整してよい。例えば、飼料用添加剤としての酵母調製組成物の酵母細胞壁成分の含有量の目安を示すと、次のとおりである。
【0026】
酵母調製組成物中における酵母細胞壁成分の含有量は、好ましくは3~30重量%でありうる。
酵母細胞壁成分の含有量の下限は、より好ましくは5重量%以上であり、さらに好ましくは10重量%以上でありうる。
酵母細胞壁成分の含有量の上限は、より好ましくは25重量%以下であり、さらに好ましくは20重量%以下でありうる。
【0027】
酵母調製組成物における、酵母由来核酸および酵母細胞壁成分の原料として、酵母の菌体を用いうる。用いうる酵母の種類は、有胞子酵母類であっても無胞子酵母類であってもよい。酵母として、具体的には下記のような種類が例示される。
【0028】
有胞子酵母類としては、例えば、シゾサッカロミセス(Shizosaccharomyces)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、クリヴェロミセス(Kluyveromyces)属、ハンゼヌラ(Hansenula)属、ピヒア(Pichia)属、デバリオミセス(Debaryomyces)属、およびリポミセス(Lipomyces)属の酵母が挙げられ、より具体的には、シゾサッカロミセス・ポンビ(Shizosaccharomyces pombe)、シゾサッカロミセス・オクトスポルス(Shizosaccharomyces octosporus);サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ウバルム(Saccharomyces uvarum)、サッカロミセス・ルーキシイ(Saccharomyces rouxii);クリヴェロミセス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis)、クリヴェロミセス・ラクチス(Kluyveromyces lactis);ハンゼヌラ・アノマラ(Hansenula anomala);ピヒア・メンブラネファシエンス(Pichia membranaefaciens);デバリオミセス・ハンセニ(Debaryomyces hansenii);およびリポミセス・スタルケイ(Lipomyces starkeyi)などが挙げられる。
【0029】
無胞子酵母類としては、例えば、トルロプシス(Torulopsis)属、カンジダ(Candida)属、およびロードトルラ(Rhodotorula)属の酵母が挙げられ、より具体的には、トルロプシス・ヴェルサテリス(Torulopsis versatilis);カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・リポリティカ(Candida lipolytica)、カンジダ・ユチリス(Candida utilis);ロードトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)などが挙げられる。
なお、カンジダ(Candida)属の酵母は、分類学上、トルラ酵母(torula yeast)とも言われ、サイバリンドネラ(Cyberlindnera)属の酵母として分類されることがある。
【0030】
用いうる酵母として好ましくは、例えば、ビール酵母、ワイン酵母、パン酵母、トルラ酵母等が挙げられ、より具体的にはサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ウバルム(Saccharomyces uvarum)、サッカロミセス・ルーキシイ(Saccharomyces rouxii);クリヴェロミセス・フラギリス(Kluyveromyces fragilis)、トルロプシス・ヴェルサテリス(Torulopsis versatilis)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、カンジダ・リポリティカ(Candida lipolytica)、カンジダ・ユチリス(Candida utilis)、ロードトルラ・グルチニス(Rhodotorula glutinis)などが挙げられる。
なお、カンジダ・ユチリス(Candida utilis)は、分類学上、トルラ酵母の1種として、(Cyberlindnera jadinii)に分類されることがある。
【0031】
本発明の一実施形態において、酵母調製組成物には、酵母細胞壁成分が含まれるうる。酵母細胞壁成分としては、酵母の細胞壁を形成している成分である、βグルカンやマンナンなどが挙げられる。酵母調製組成物にβグルカンが含まれていることにより、免疫活性作用を増強することに資する。
【0032】
本発明の一実施形態において、酵母調製組成物は、更に、リグニンスルホン酸を含有しうる。リグニンスルホン酸を配合することにより、酵母を原料とする酵母調製組成物におけるカビの発生又は繁殖を抑制し、腐敗を抑制することができる。
【0033】
リグニンスルホン酸は、リグニンのヒドロキシフェニルプロパン構造の側鎖α位の炭素が開裂してスルホ基が導入された骨格を有する化合物である。リグニンスルホン酸は、塩の形態でありうる。酵母調製組成物にリグニンスルホン酸を添加するために、リグニンスルホン酸塩を添加してもよい。リグニンスルホン酸塩としては、例えば、カルシウム塩、マグネシウム塩、ナトリウム塩、カルシウム・ナトリウム混合塩、アンモニウム塩、有機アンモニウム塩などが挙げられる。リグニンスルホン酸は、例えば、製紙産業で生じる亜硫酸パルプ廃液などから得ることができる。また、本発明において用いられるリグニンスルホン酸は、スルホン基、カルボキシル基、およびフェノール性水酸基等の官能基を有する高分子電解質で変性されたリグニンスルホン酸であってもよい。
【0034】
酵母調製組成物中におけるリグニンスルホン酸の含有量は、酵母調製組成物の用途に応じて適宜調整してよい。本発明の好ましい一実施形態としては、酵母調製組成物中のリグニンスルホン酸の含有量の目安は、例えば、1~30重量%でありうる。
酵母調製組成物中におけるリグニンスルホン酸の含有量の下限は、より好ましくは3重量%以上であり、さらに好ましくは5、6、7、または8重量%以上でありうる。
酵母調製用組成物中におけるリグニンスルホン酸の含有量の上限は、より好ましくは28重量%以下であり、さらに好ましくは25、24、または23重量%以下でありうる。
【0035】
酵母調製組成物の他の好ましい形態として、亜硫酸塩を配合してもよい。亜硫酸塩を配合することは、酸化抑制、または雑菌の繁殖抑制などに寄与しうる。
【0036】
その他、酵母調製組成物には、必要に応じ任意成分として、水分、油分、pH調整剤、酸化防止剤、防腐剤、色材、香料、賦形剤、ビタミン類、ホルモン類、アミノ酸類、抗生物質、抗菌剤などを配合してもよい。
【0037】
本発明の実施形態において、酵母調製組成物は、通常、飼料用添加物として採用される形状でありうる。酵母調製組成物の形状としては、例えば、粉体、顆粒、マッシュ、ペレット、クランブル、およびフレークなどが挙げられる。飼料用組成物の形態は、単一形態であってもよいし、上記のような形態のうちの2つ以上の形態のものの混合形態、例えば、ペレットとフレークの混合物、マッシュとペレットの混合物などとしてもよい。
【0038】
2.基本飼料
家禽に対する主たる栄養成分を含有する基本飼料の成分としては、植物性飼料および/または動物性飼料などが挙げられる。植物性飼料は、植物由来の飼料であり、例えば、トウモロコシ、マイロ、大麦、小麦、キャッサバ、米ぬか、ふすま、大豆かす、菜種かす、米、米ぬか、およびビート、並びにこれらの加工品などが挙げられる。また、動物性飼料は、動物由来の飼料であり、例えば、魚粉、ポークミール、チキンミール、脱脂粉乳、および濃縮ホエーなどが挙げられる。これらは一種を単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。
【0039】
3.家禽の生産方法
上述の酵母調製組成物を用いることにより、抗生物質および/または抗菌物質の使用を低減、または未使用とする家禽の生産方法を提供することができる。本発明の生産方法における基本的な一実施形態は、上述の酵母調製組成物と基本飼料とを併用して家禽に給餌することでありうる。そして、本発明の好ましい一実施形態として、酵母調製組成物と基本飼料とを併用して家禽に給餌しつつ、家禽に対する抗生物質および/または抗菌物質の給与頻度または給与量を通常よりも減らす、あるいは抗生物質および/または抗菌物質を家禽に給与しない、家禽の生産方法が挙げられる。本開示において、抗生物質及び抗菌物質について「給与」という用語は、家禽に対しこれらの物質を投与することを広く意味し、例えば、餌などにより経口投与すること、注射などにより接種することなどを含む。
【0040】
酵母調製組成物は、(1)基本飼料に添加して混合飼料として給餌する形態を採用してもよいし、または、(2)酵母調製組成物と他の飼料成分とを直接混合せずに、別々に用意しておき、酵母調製組成物と基本飼料とをそれぞれ給餌して、併用給餌する形態を採用してもよい。なお、本開示において、特に限定なく単に「併用」という場合、上記(1)および(2)の両方の形態を包含する用語として用いる。
【0041】
本発明の好ましい一実施形態において、酵母調製組成物は、基本飼料に対して、好ましくは0.15~0.47重量%の割合となるように給餌しうる。
酵母調製組成物は、基本飼料に対する割合の下限は、より好ましくは0.2重量%以上、更に好ましくは0.25重量%以上でありうる。上記のような下限値以上とすることにより、抗生物質等の薬剤の代替物質として寄与が向上しうる。
酵母調製組成物は、基本飼料に対する割合の上限は、より好ましくは0.45重量%以下、更に好ましくは0.43重量%以上でありうる。酵母調製組成物の添加量の上限は、抗生物質等の薬剤の代替物質としての利用の観点からは特に限定はなく、任意でありうるが、ここに示した以上に添加しても添加量に比した効果の増強は得にくくなる傾向がある。
【0042】
上述の酵母調製組成物は、抗生物質および/または抗菌物質(以下、抗生物質等の薬剤ともいう。)と同等又はそれ以上の効果を示す。そのため、酵母調製組成物を給餌している期間中は、抗生物質等の薬剤の給与頻度もしくは給与量を減らす、またはこれらの薬剤を給与しないこととすることにより、家禽の孵化から解体または出荷までの飼養期間中における抗生物質等の薬剤の使用量を低減、より好ましくは抗生物質等の薬剤の給与を使用せずに、家禽を生産することができる。
【0043】
本発明の好ましい一実施形態としては、酵母調製組成物の給餌を、遅くとも孵化の第10日から開始し、少なくとも孵化後第2週目まで行う方法がありうる。家禽類の飼養においては、孵化後から数週間はまだ弱く、病気等にも罹患しやすい状態であり、且つ、体重が速やかに増加する時期でもある。そのため孵化後約2週間程度の初期の期間における健全な生育は、家禽生産において重要視されている。また、下記に示す試験結果によれば、酵母調製組成物の給餌効果は、孵化後2週目前後に最大の効果を発揮しうることがわかる。
【0044】
本発明の一実施形態としては、酵母調製組成物と、抗生物質および/または抗菌物質とを併用してもよいが、酵母調製組成物の給与頻度または給与量に応じて、抗生物質および/または抗菌物質の給与頻度または給与量を減らして飼養することが望ましい。
【0045】
例えば、本発明の好ましい一実施形態としては、少なくとも酵母調製組成物を給餌している期間は、抗生物質および/または抗菌物質を前記家禽に給与しない方法がありうる。酵母調製組成物を抗生物質および/または抗菌物質の代替手段として用いることにより、抗生物質等の薬剤の給与量を大幅に減らしたり、またはこれらの薬剤を用いずに、家禽を飼養することが可能となる。
【0046】
家禽の種類の中には、孵化後第7週にて飼養期間が終了するものもある。例えば、ブロイラーは、孵化後第7週にて出荷又は解体時期を迎えるのが一般的である。よって、本発明の他の好ましい一実施形態としては、孵化後第7週までの期間、抗生物質および/または抗菌物質を給与しない方法がありうる。すなわち、当該実施形態は、ブロイラーなどに好適である。
【0047】
更に、本発明の他の好ましい一実施形態として、家禽の飼養期間中、抗生物質および/または抗菌物質を給与せず、抗生物質および抗菌物質非摂取家禽を生産する方法がありうる。構成物質等の薬剤を非給与とするため、新たな耐性菌の発生などの問題を生じにくく、また、抗生物質および抗菌物質非摂取家禽は一般に市場価値が高いことから、優れた家禽生産方法でありうる。
【0048】
本開示の酵母調製組成物を利用した家禽の生産方法として、特に効果的な好ましい一実施形態は、例えば、次のような(a)~(e)の特徴を有する実施形態でありうる。
(a)家禽としてニワトリ(より好ましくはブロイラー)を生産する。
(b)酵母調製組成物に含まれる酵母細胞壁成分として、βグルカンを含有している。
(c)酵母調製組成物は、酵母由来核酸およびβグルカンの他に、リグニンスルホン酸も含有している。
(d)酵母調製組成物を、基本飼料に対して、0.15~0.47重量%の割合となるように給餌する。
(e)ニワトリの飼養期間中、酵母調製組成物を給餌し、抗生物質および抗菌物質を給与せず、抗生物質および抗菌物質非摂取ニワトリを生産する。
【0049】
本開示の酵母調製組成物を利用した家禽の生産方法は、いわゆる「特別飼育鶏」として定義され、「無薬鶏」または「無投薬鶏」として厳格に要件を満たした場合に表示可能な鶏の生産方法の実施にも大いに役立つことが十分に期待される。
【実施例0050】
以下に実施例を挙げて本発明について更に具体的に説明するが、本開示における本発明の技術的範囲が下記の実施例に限定されるものではない。
【0051】
<酵母調製組成物1>
RNA製剤として「RNA-M」(製品名、日本製紙社製)」と、脱核酵母(製品名「カビトルラ」日本製紙社製)とを1:9の混合比で10重量%の濃度になるように水懸濁し、ドラムドライヤーで乾燥させ、100gを調製し、得られた混合物を酵母調製組成物1とした。なお、「カビトルラ」の脱核酵母にはリグニンスルホン酸が含まれている。
【0052】
酵母調製組成物1中の核酸の重量平均分子量(Mw)は、10%懸濁液をホモディスパーで1hr、5,000rpmの条件にて攪拌し、その後高速遠心分離機で10,000rpm、10分処理して得られた上澄み液のGPC測定により算出したところ、20,000であった。
【0053】
核酸の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定し得る。GPCの測定は、プルラン換算する公知の方法にて、例えば、下記の条件にて行えばよい。
【0054】
測定装置:東ソー製
使用カラム:Shodex Column OH-pak SB-806HQ、SB-804HQ、SB-802.5HQ
溶離液:四ホウ酸Na1.0%、イソプロピルアルコール0.3%の水溶液
溶離液流速:1.00ml/min
カラム温度:50℃
測定サンプル濃度:0.2質量%
標準物質:プルラン(昭和電工製)
検出器:RI検出器(東ソー製)
検量線:プルラン基準
【0055】
<酵母調製組成物2>
原料酵母(Cyberlindnera jadinii)を糖濃度3%、リグニンスルホン酸濃度10%の亜硫酸パルプ排液培地を用いて培養し、酵母を集菌した。リグニンスルホン酸は重量あたり20%含有されていた。その後、得られた酵母3000gを95℃の沸騰浴内で10分間攪拌して、菌体内酵素を失活させた。その後、55℃に温度調整したウォーターバス内で48%NaOH水溶液にてpH=8.5に調整後、2時間攪拌にてアルカリ抽出反応を実施した。反応後、35%HClでpHを7.0に調整した。その後、ダブルドラムドライヤー(表面温度120℃、3rpm)にて乾燥し、フィルム化した乾燥物を乳鉢ですりつぶして乾燥品(粉末)を得た。当該粉末は、当該酵母に由来する核酸と、脱核した酵母細胞壁と、培養に用いたリグニンスルホン酸を含む。当該粉末を酵母調製組成物2とした。
【0056】
酵母調製組成物2中の核酸の重量平均分子量(Mw)を、酵母調製組成物1における方法と同様にして算出したところ、45,000であった。
【0057】
<酵母調製組成物3>
RNA製剤として「RNA-FN(製品名、日本製紙社製)」を用いた以外は実施例1と同様にして酵母調製組成物3を調製した。酵母調製組成物3中の核酸の重量平均分子量(Mw)を、酵母調製組成物1における方法と同様にして算出したところ、11,000であった。
【0058】
<評価試験1>
以下の要領に従って、酵母調製組成物について、抗生物質の効能と対比する試験、評価を行った。
【0059】
(1)供試添加剤および飼料
上記酵母調製組成物1を供試添加剤として用いた。他方、供試添加剤を配合する基本飼料として、ブロイラー向けの前期用飼料を用いた。下記の対照飼料AおよびBの配合組成を表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
なお、対照飼料(B)において、抗生物質としての配合量は0.10重量%であるが、その有効成分であるサリノマイシンの含有量は50mg/kgまたは50ppmである。
【0062】
(2)供試動物
9又は10日齢のブロイラー雄(品種名:チャンキー308(Ross308))を試験に供した。
【0063】
(3)対照区および試験区
対照区および試験区として、以下の3つの区を設定した。
対照区(-):対照飼料A(基本飼料のみ、抗生物質を未添加)を給餌した。
対照区(+):対照飼料B(基本飼料に抗生物質であるサリノマイシンの含有量が50ppmとなるように添加)を給餌した。
試験区:上記対照区(-)において用いた飼料(対照飼料A)に、酵母調製組成物の含有割合が0.5重量%となるように酵母調製組成物を添加した飼料を給餌した。
各試験区には、16羽(8羽×2ペン)を配置した。但し、第一週終了後に対照区(+)で1羽へい死したため、同区ではデータは15羽とした。
【0064】
(4)試験
試験期間は3週間とした(試験実施時期:2021年6~7月)。1週ごとに飼料摂取量、増体量を測定した。試験終了日に屠畜解体し、むね肉重及びもも肉重を測定した。
【0065】
(5)結果及び考察
評価試験1の結果を表2に示す。
表2からわかるように、対照区(-)での体重に対して、対照区(+)での体重は、第1週、第2週で明らかに優れていた。すなわち、抗生物質による成長促進効果が認められる。
【0066】
同様に、試験区での体重においても、対照区(-)に対して、明らかに第1週では高く、第2週においても高い傾向がみられる。対照区(+)と試験区との間では、体重差はほとんど認められない。本試験においては、第2週目が3週齢にあたり、一般市販飼料には抗生物質が含まれる時期である。この時期に、試験区が、対照区(+)と同等の体重を示したことは、酵母調製組成物が、抗生物質とほぼ同等の効能を有すると認められる。
【0067】
なお、むね肉ともも肉の重量については、有意差は見られなかった。
【0068】
【表2】
【0069】
<評価試験2>
下記の要領にて、基本飼料に対する酵母調製組成物の添加量を変えて、その効果について試験、評価した。
(1)供試添加剤および飼料
上記評価試験1と同じ、酵母調製組成物および前期用飼料(対照飼料A)を用いた。
【0070】
(2)供試動物
上記評価試験1と同様に、9又は10日齢のブロイラー雄(品種名:チャンキー308(Ross308))を試験に供した。
【0071】
(3)対照区および試験区
対照区および試験区として、以下の4つの区を設定した。
対照区(0区):対照飼料(基本飼料のみ、抗生物質を未添加)を給餌した。
試験区(0.1区):上記対照区(0区)において用いた飼料(基本飼料)に、酵母調製組成物の含有割合が0.1重量%となるように酵母調製組成物を添加した飼料を給餌した。
試験区(0.3区):上記対照区(0区)において用いた飼料(基本飼料)に、酵母調製組成物の含有割合が0.3重量%となるように酵母調製組成物を添加した飼料を給餌した。
試験区(0.5区):上記対照区(0区)において用いた飼料(基本飼料)に、酵母調製組成物の含有割合が0.5重量%となるように酵母調製組成物を添加した飼料を給餌した。
各試験区には、12羽(6羽×2ペン)を配置した。
【0072】
(4)試験
試験期間は3週間とした(試験実施時期:2021年10~11月)。1週ごとに飼料摂取量、増体量を測定した。試験終了日に屠畜解体し、右むね肉重を測定した。
【0073】
(5)結果および考察
評価試験2の結果を表3および図1~3に示す。
表3に増体量(g/週)の結果を示した。最初の1週目(0-1週)で、対照区(0区)に対して試験区(0.3区)で有意に高くなった(p<0.05)。また、試験区(0.5区)では高くなる傾向がみられた(p<0.10)。しかし、2週目および3週目では、対照区(0区)に対して、試験区(0.3区)および試験区(0.5区)で高くはなるものの、統計的な有意差までは見られなかった。
【0074】
体重の変化を、図1(1週目)、図2(2週目)および図3(3週目)に示した。2週目および3週目の体重では2次曲線がよくあてはまる結果となった。これらのことは酵母調製組成物の添加量は0.5重量%で効果として飽和気味の傾向が現れ、0.3重量%近辺で十分に効果が高いことを示している。
【0075】
評価試験1の結果も含めてまとめて考察すると、酵母調製組成物の効能は、3週齢程度までは、明確に増体効果が認められる。3週齢までは肥育前期とされ、一般に、この期間の飼料には抗生物質の添加は許されている。したがって、酵母調製組成物は、抗生物質の効果が強く現れる肥育前期と同時期に効果的であり、このことからも抗生物質の代替物質として有効であると言い得る。
【0076】
右むね肉重を測定したところ、対照区(0区)に対して、試験区(0.3区)および試験区(0.5区)でむね肉重(g)は高くなる傾向(p<0.10)が認められた(不図示)。
【0077】
【表3】
図1
図2
図3