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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161128
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】アーチ形建造物
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/32 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
E04B1/32 101B
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071297
(22)【出願日】2022-04-25
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年12月10日に撮影されたアーチ形建造物の竣工後の写真
(71)【出願人】
【識別番号】508184664
【氏名又は名称】株式会社江刺住建
(74)【代理人】
【識別番号】100093148
【弁理士】
【氏名又は名称】丸岡 裕作
(74)【復代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 務
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 強
(57)【要約】
【課題】 アーチ梁を構成する部材の接続強度の向上を図り、アーチ梁を強固にして全体の耐久性の向上を図る。
【解決手段】 2列の土台1間に架設されるとともに桁行方向Xに所要の間隔で設けられる複数のアーチ梁Aを備え、アーチ梁Aを、木製の上弦梁10と、木製の下弦梁11と、上弦梁10と下弦梁11との間に架設され所要の間隔で設けられる複数の木製の束材12と、斜めに設けられる木製の方杖13とー^を備えて構成し、上弦梁10を複数の上弦梁単体14で構成し、下弦梁11を複数の下弦梁単体15で構成し、束材12と上弦梁単体14との接続,束材12と下弦梁単体15との接続,方杖13とこれに対応する部材との接続を、ホゾ穴及びこれに嵌合するホゾの組で行う構成とした。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
桁行方向に沿って延び互いに平行な2列の土台と、該2列の土台間であって上記桁行方向に直交する直交面に沿って架設されるとともに上記桁行方向に所要の間隔で設けられる複数のアーチ梁とを備え、上記アーチ梁を、アーチ状の木製の上弦梁と、該上弦梁の下側に所定間隔離間して配置されるアーチ状の木製の下弦梁と、上記上弦梁と下弦梁との間に架設され所要の間隔で設けられる複数の木製の束材と、上記上弦梁,下弦梁及び隣接する束材で囲繞される一部若しくは全部の空間に斜めに設けられるとともに一端が上記上弦梁及び/または隣接する一方の束材に接続され他端が上記下弦梁及び/または隣接する他方の束材に接続される木製の方杖とを備えて構成したアーチ形建造物において、
上記上弦梁を、上記束材の上端側に接続される所要長さの複数の上弦梁単体で構成し、上記下弦梁を、上記束材の下端側に接続される所要長さの複数の下弦梁単体で構成し、上記束材の上端側と上記上弦梁単体との接続をホゾ穴及びこれに嵌合するホゾの組で行い、上記束材の下端側と上記下弦梁単体との接続をホゾ穴及びこれに嵌合するホゾの組で行い、上記方杖の一端とこれに対応する上弦梁単体及び/または一方の束材との接続をホゾ穴及びこれに嵌合するホゾの組で行い、上記方杖の他端とこれに対応する下弦梁単体及び/または他方の束材との接続をホゾ穴及びこれに嵌合するホゾの組で行うことを特徴とするアーチ形建造物。
【請求項2】
上記桁行方向に沿って延び各アーチ梁間を接続する複数の木製の小屋梁を備え、該小屋梁を上記上弦梁の上側であって束材の上端に対応した部位に設け、該束材をその上端が上記上弦梁から突出するように設け、上記小屋梁と束材の上端とをホゾ穴及びこれに嵌合するホゾの組で接続したことを特徴とする請求項1記載のアーチ形建造物。
【請求項3】
上記アーチ梁を、上記桁行方向に沿う頂部を境にして一方の土台側の一方アーチ梁と、該一方アーチ梁と対称に形成され他方の土台側の他方アーチ梁とで構成し、上記アーチ梁の頂部に上記束材を設け、上記一方アーチ梁及び他方アーチ梁に、夫々、上記頂部の束材から土台に向けて束材を所定間隔で複数設け、上記頂部の束材を含む各束材毎に小屋梁を設け、隣接する小屋梁間で構成される小屋梁空間を上記頂部から土台にかけて複数設けたことを特徴とする請求項2記載のアーチ形建造物。
【請求項4】
上記頂部の小屋梁を含み隣接する小屋梁間に、上記桁行方向に所要の間隔で架設される複数の木製の登り梁を設けたことを特徴とする請求項3記載のアーチ形建造物。
【請求項5】
上記一方アーチ梁及び他方アーチ梁において、夫々、上位の小屋梁空間に隣接する下位の小屋梁空間に設けられる登り梁を、上位の小屋梁空間に設けられる隣接する登り梁に対して、その桁行方向の中間に位置するようしたことを特徴とする請求項4記載のアーチ形建造物。
【請求項6】
上記各小屋梁空間の登り梁の数をアーチ梁の数より多く設け、隣接する小屋梁空間の何れか一方の小屋梁空間の登り梁を上記上弦梁単体に沿わせて設けたことを特徴とする請求項5記載のアーチ形建造物。
【請求項7】
上記各小屋梁空間において、該小屋梁空間に斜めに設けられるとともに一端部が上位の小屋梁に接続され他端部が下位の小屋梁に接続される複数の木製の小屋筋違を設けたことを特徴とする請求項4記載のアーチ形建造物。
【請求項8】
上記小屋梁に、上記小屋筋違の端部が嵌合する嵌合凹部を形成したことを特徴とする請求項7記載のアーチ形建造物。
【請求項9】
上記各小屋梁空間において、上記小屋筋違を、上記桁行方向に沿って順次略同角度で傾斜方向を変えて連続するように設けたことを特徴とする請求項7記載のアーチ形建造物。
【請求項10】
上記一方アーチ梁及び他方アーチ梁において、夫々、
上記隣接する小屋梁空間の何れか一方の小屋梁空間においては、上記小屋筋違を隣接する登り梁間に1本設け、
上記隣接する小屋梁空間の何れか他方の小屋梁空間においては、これに設ける小屋筋違を、上記隣接する小屋梁空間の何れか一方の小屋梁空間にある各小屋筋違とは、小屋梁を中心にして鏡面対称になるように設けたことを特徴とする請求項9記載のアーチ形建造物。
【請求項11】
上記一方アーチ梁の孤形を構成する円弧の水平線上の中心をP1、上記他方アーチ梁の孤形を構成する円弧の水平線上の中心をP2としたとき、上記頂点を通る垂線を境にして、中心P1を他方アーチ梁側に位置させ、中心P2を一方アーチ梁側であって中心P1と対称位置に位置させて、上記一方アーチ梁及び他方アーチ梁を形成したことを特徴とする請求項1乃至10何れかに記載のアーチ形建造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、種々の用途に用いることができるアーチ構造をしたアーチ形建造物に係り、特に、2列の土台間に桁行方向に所要の間隔で架設され主要な部材を木製の部材で構成した複数のアーチ梁を備えたアーチ形建造物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、実公昭18-3155号公報(特許文献1)等で示されるように、この種のアーチ形建造物はよく知られている。図9(a)に示すように、このアーチ形建造物Kaの基本的構成は、桁行方向(紙面の前後方向)に沿って延び互いに平行な2列の土台101間であって桁行方向に直交する直交面に沿って架設されるとともに桁行方向に所要の間隔で設けられる複数のアーチ梁100を備えて構成されている。アーチ梁100には屋根(図示せず)が付設される。このアーチ梁100は、アーチ状の木製の上弦梁102と、上弦梁102の下側に所定間隔離間して配置されるアーチ状の木製の下弦梁103と、上弦梁102と下弦梁103との間に架設され所要の間隔で設けられる複数の木製の束材104と、上弦梁102,下弦梁103及び隣接する束材104で囲繞される空間に斜めに設けられるとともに一端が上弦梁102側に接続され他端が下弦梁103側に接続される木製の方杖105とを備えて構成され、所謂トラス構造に形成されている。これら上弦梁102,下弦梁103,束材104及び方杖105の接合は、ボルトや、接続金具を用いて行われている。
【0003】
また、従来においては、例えば、実用新案登録第3168378号公報(特許文献2)に掲載されたアーチ形建造物も知られている。図9(b)に示すように、このアーチ形建造物Kbは、上記と同様に土台111間であって桁行方向に直交する直交面に沿って架設されるとともに桁行方向に所要の間隔で設けられる複数のアーチ梁110を備えて構成されている。このアーチ梁110は、棒状の木材を三角形枠状に接合して形成される三角形素材112を、順次ボルト等で接合して構成され、所謂トラス構造に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭18-3155号公報
【特許文献2】実用新案登録第3168378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のアーチ形建造物Ka,Kbにおいては、アーチ梁100,110をトラス構造にしてはいるものの、これを構成する木製の部材をボルトや接続金具で接続しているので、それだけ、接続強度に劣り、全体の耐久性が悪いという問題があった。
本発明は上記の点に鑑みて為されたもので、アーチ梁を構成する部材の接続強度の向上を図り、アーチ梁を強固にして全体の耐久性の向上を図ったアーチ形建造物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するための本発明のアーチ形建造物は、桁行方向に沿って延び互いに平行な2列の土台と、該2列の土台間であって上記桁行方向に直交する直交面に沿って架設されるとともに上記桁行方向に所要の間隔で設けられる複数のアーチ梁とを備え、上記アーチ梁を、アーチ状の木製の上弦梁と、該上弦梁の下側に所定間隔離間して配置されるアーチ状の木製の下弦梁と、上記上弦梁と下弦梁との間に架設され所要の間隔で設けられる複数の木製の束材と、上記上弦梁,下弦梁及び隣接する束材で囲繞される一部若しくは全部の空間に斜めに設けられるとともに一端が上記上弦梁及び/または隣接する一方の束材に接続され他端が上記下弦梁及び/または隣接する他方の束材に接続される木製の方杖とを備えて構成したアーチ形建造物において、
上記上弦梁を、上記束材の上端側に接続される所要長さの複数の上弦梁単体で構成し、上記下弦梁を、上記束材の下端側に接続される所要長さの複数の下弦梁単体で構成し、上記束材の上端側と上記上弦梁単体との接続をホゾ穴及びこれに嵌合するホゾの組で行い、上記束材の下端側と上記下弦梁単体との接続をホゾ穴及びこれに嵌合するホゾの組で行い、上記方杖の一端とこれに対応する上弦梁単体及び/または一方の束材との接続をホゾ穴及びこれに嵌合するホゾの組で行い、上記方杖の他端とこれに対応する下弦梁単体及び/または他方の束材との接続をホゾ穴及びこれに嵌合するホゾの組で行う構成としている。
【0007】
ここで、木製とは木材を用いて製作された意味であり、木材としては、木造建築物で一般的に使用され、丸太から切り出した木材である所謂無垢材や集成材を使用することができるが、無垢材が適している。無垢材の樹種としては、特に限定されず、赤松、檜、唐松、杉、栗、栂、ヒバ等の一般的なものを挙げることができる。
また、各アーチ梁において、上弦梁単体と下弦梁単体との数は必ずしも同じでなくても良いが、束材の数とその位置は同じにする。各アーチ梁は同じ形態に形成する。
【0008】
これにより、上弦梁を構成する各上弦梁単体と対応する束材とはホゾ穴及びこれに嵌合するホゾの組で行なわれ、下弦梁を構成する各下弦梁単体と対応する束材とはホゾ穴及びこれに嵌合するホゾの組で行なわれ、各方杖と対応する上弦梁単体及び/または束材とはホゾ穴及びこれに嵌合するホゾの組で行なわれるので、ホゾ穴及びホゾでの接合は強固であることから、アーチ梁を構成する部材の接続強度が向上してアーチ梁が強固になり、そのため、全体の耐久性を向上させることができる。尚、ホゾ穴及びホゾでの接合に加えて、釘や各種接続金具を用いて更に接合強度を増すことは一向に差支えない。
【0009】
そして、必要に応じ、上記桁行方向に沿って延び各アーチ梁間を接続する複数の木製の小屋梁を備え、該小屋梁を上記上弦梁の上側であって束材の上端に対応した部位に設け、該束材をその上端が上記上弦梁から突出するように設け、上記小屋梁と束材の上端とをホゾ穴及びこれに嵌合するホゾの組で接続した構成としている。この場合、小屋梁の束材の上端に対応した部位にホゾ穴を設け、束材の上端にホゾを設けることになる。
【0010】
これにより、各アーチ梁が複数の小屋梁で接続されるので、それだけ、アーチ梁の強度が増す。特に、小屋梁と束材の上端とをホゾ穴及びこれに嵌合するホゾの組で接続したので、ホゾ穴及びホゾでの接合は強固であることから、アーチ梁が強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。
【0011】
また、必要に応じ、上記アーチ梁を、上記桁行方向に沿う頂部を境にして一方の土台側の一方アーチ梁と、該一方アーチ梁と対称に形成され他方の土台側の他方アーチ梁とで構成し、上記アーチ梁の頂部に上記束材を設け、上記一方アーチ梁及び他方アーチ梁に、夫々、上記頂部の束材から土台に向けて束材を所定間隔で複数設け、上記頂部の束材を含む各束材毎に小屋梁を設け、隣接する小屋梁間で構成される小屋梁空間を上記頂部から土台にかけて複数設けた構成としている。これにより、各アーチ梁において、全ての束材を小屋梁で接続することになるので、各アーチ梁がより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。
【0012】
更に、必要に応じ、上記頂部の小屋梁を含み隣接する小屋梁間に、上記桁行方向に所要の間隔で架設される複数の木製の登り梁を設けたことが有効である。これにより、小屋梁の動きを規制でき、特に、アーチ梁の弧方向への動きを規制できるので、各アーチ梁がより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。
【0013】
この場合、上記一方アーチ梁及び他方アーチ梁において、夫々、上位の小屋梁空間に隣接する下位の小屋梁空間に設けられる登り梁を、上位の小屋梁空間に設けられる隣接する登り梁に対して、その桁行方向の中間に位置するようしたことが有効である。登り梁がバランスよく配置されるので、小屋梁のアーチ梁の動きを確実に規制でき、各アーチ梁がより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。
【0014】
また、この場合、上記各小屋梁空間の登り梁の数をアーチ梁の数より多く設け、隣接する小屋梁空間の何れか一方の小屋梁空間の登り梁を上記上弦梁単体に沿わせて設けたことが有効である。隣接する小屋梁空間の何れか一方の小屋梁空間の登り梁が上弦梁単体に沿って配置されるので、上弦梁を補強することができ、この点でも各アーチ梁がより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。
【0015】
更に、必要に応じ、上記各小屋梁空間において、該小屋梁空間に斜めに設けられるとともに一端部が上位の小屋梁に接続され他端部が下位の小屋梁に接続される複数の木製の小屋筋違を設けた構成としている。これにより、更に小屋梁の動きを規制できるので、各アーチ梁がより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。
【0016】
この場合、上記小屋梁に、上記小屋筋違の端部が嵌合する嵌合凹部を形成したことが有効である。小屋筋違が嵌合凹部に嵌合するので、小屋筋違の接続強度を増すことができ、この点でも、各アーチ梁がより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。
【0017】
また、この場合、上記各小屋梁空間において、上記小屋筋違を、上記桁行方向に沿って順次略同角度で傾斜方向を変えて連続するように設けたことが有効である。小屋筋違の配置バランスが良くなり、この点でも、各アーチ梁がより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。
【0018】
この構成にあっては、必要に応じ、上記一方アーチ梁及び他方アーチ梁において、夫々、
上記隣接する小屋梁空間の何れか一方の小屋梁空間においては、上記小屋筋違を隣接する登り梁間に1本設け、
上記隣接する小屋梁空間の何れか他方の小屋梁空間においては、これに設ける小屋筋違を、上記隣接する小屋梁空間の何れか一方の小屋梁空間にある各小屋筋違とは、小屋梁を中心にして鏡面対称になるように設けた構成としている。
【0019】
これにより、小屋梁間にトラス構造が連続して形成されるので、他方からの加圧で全体が変形しにくくなり、各アーチ梁がより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。また、隣接する小屋梁空間の何れか一方の小屋梁空間における何れか他方側の2つの小屋筋違の端部の接続部位と、隣接する小屋梁空間の何れか他方の小屋梁空間における何れか一方側の2つの小屋筋違の端部の接続部位が、一つの小屋梁の略同じ部位に集合して位置することになるので、この部位における傾斜方向を同じにする小屋筋違が略同一線上に位置することになり、そのため、小屋筋違に作用する小屋筋違の軸線方向に作用する力の受けが強固になり、この点でも、各アーチ梁がより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。
【0020】
また、必要に応じ、上記桁行方向に沿って延び各アーチ梁間であって対峙する束材間に架設される複数の棒状の木製の振れ止めを備えた構成としている。小屋梁に加えて振れ止めも設けるので、各アーチ梁がより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。
【0021】
そしてまた、必要に応じ、上記一方アーチ梁の孤形を構成する円弧の水平線上の中心をP1、上記他方アーチ梁の孤形を構成する円弧の水平線上の中心をP2としたとき、上記頂点を通る垂線を境にして、中心P1を他方アーチ梁側に位置させ、中心P2を一方アーチ梁側であって中心P1と対称位置に位置させて、上記一方アーチ梁及び他方アーチ梁を形成した構成としている。これにより、アーチ梁全体が1つの中心を中心とした弧状になるのではなく、中心位置の異なる一方アーチ梁と他方アーチ梁とが中央の束材において突合せになるので、上からの荷重に対して強固になり、この点でも、各アーチ梁がより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、アーチ梁を構成する部材を、ホゾ穴及びこれに嵌合するホゾの組で行なう接続にしたので、その接続強度の向上を図ることができ、アーチ梁を強固にして全体の耐久性を向上させることができる。また、小屋梁を設けて、これもホゾ穴及びこれに嵌合するホゾの組で行なう接続にすれば、更にアーチ梁を強固にしてより一層全体の耐久性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施の形態に係るアーチ形建造物の骨組み構造を示す斜視図である。
図2】本発明の実施の形態に係るアーチ形建造物の骨組み構造を示す妻側から見た図である。
図3】本発明の実施の形態に係るアーチ形建造物の骨組み構造を示す平面図である。
図4】本発明の実施の形態に係るアーチ形建造物において、主要な部材の接続部の構成を示す分解斜視図である。
図5】本発明の実施の形態に係るアーチ形建造物において、主要な部材の接続部の構成を示す別の分解斜視図である。
図6】本発明の実施の形態に係るアーチ形建造物において、主要な部材の接続状態を示す要部図である。
図7】本発明の実施の形態に係るアーチ形建造物において、小屋梁の連設部の接続状態を示し、(a)は平面図、(b)は正面図である。
図8】本発明の実施の形態に係るアーチ形建造物において、頂部から見た小屋梁に対する登り梁及び小屋筋違の接続状態を示す要部平面図である。
図9】従来のアーチ形建造物を示し、(a)は一般的な木製のアーチ梁の構造を示す図、(b)は三角形素材を連設した木製のアーチ梁の構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付図面に基づいて、本発明の実施の形態に係るアーチ形建造物について詳細に説明する。
図1乃至図8には、本発明の実施の形態に係るアーチ形建造物Kを示している。このアーチ形建造物Kは、桁行方向Xに沿って延び互いに平行な2列のコンクリート製の土台1と、2列の土台1間であって桁行方向Xに直交する直交面に沿って架設されるとともに桁行方向Xに所要の間隔で設けられる複数のアーチ梁Aとを備えて構成されている。各アーチ梁Aは、同じ形態に形成されている。また、図1及び図6に示すように、複数のアーチ梁Aの上には、屋根壁2が設けられるとともに、妻側端部のアーチ梁Aにはその開口を塞ぐ妻壁(図示せず)が設けられる。
【0025】
図3に示すように、アーチ梁Aは、建造物の桁行方向Xに直交する中心線Qを境にして左右に夫々5つずつ設けられている。図3中、右側のアーチ梁をA1~A5で示し、左側のアーチ梁をA6~A10で示す。左右5つのアーチ梁A間は基準幅Lに設定され、中心線Q側のアーチ梁A間(アーチ梁A5とアーチ梁A6との間)は(4/3)Lに設定されている。基準幅Lは、例えば、L=3000mmに設定されている。中心線Q側のアーチ梁A間に設ける屋根壁2の一方の土台1側には、扉(図示せず)で開閉可能な入口開口3が形成されている。
【0026】
また、アーチ梁Aは、桁行方向Xに沿う頂部4を境にして一方の土台1側の一方アーチ梁Aaと、一方アーチ梁Aaと対称に形成され他方の土台1側の他方アーチ梁Abとで構成されている。そして、図2に示すように、一方アーチ梁Aa及び他方アーチ梁Abは、一方アーチ梁Aaの孤形を構成する円弧Caの水平線H上の中心をP1、他方アーチ梁Abの孤形を構成する円弧Cbの水平線H上の中心をP2としたとき、頂点を通る垂線Vを境にして、中心P1を他方アーチ梁Ab側に位置させ、中心P2を一方アーチ梁Aa側であって中心P1と対称位置に位置させて形成されている。実施の形態では、地面からアーチ梁Aの頂部4までの高さは、約6000mmにしている。
【0027】
アーチ梁Aは、図1図2及び図6に示すように、アーチ状の木製の上弦梁10と、上弦梁10の下側に所定間隔離間して配置されるアーチ状の木製の下弦梁11と、上弦梁10と下弦梁11との間に架設され所要の間隔で設けられる複数の木製の束材12と、上弦梁10,下弦梁11及び隣接する束材12で囲繞される一部若しくは全部の空間に斜めに設けられる木製の方杖13とを備えて構成されている。実施の形態では、方杖13は、一部の空間に設けられているが、後述の最下端の空間e以外の他の全部の空間に設けられている。方杖13は、一端が上弦梁10及び/または隣接する一方の束材12(実施の形態では束材12)に接続され、他端が下弦梁11及び/または隣接する他方の束材12(実施の形態では下弦梁11)に接続される。
【0028】
ここで、木製とは木材を用いて製作された意味であり、木材としては、木造建築物で一般的に使用され、丸太から切り出した木材である所謂無垢材や集成材を使用することができる。実施の形態では、無垢材からなる主に角材を用いている(以下同じ)。無垢材の樹種としては、特に限定されず、赤松、檜、唐松、杉、栗、栂、ヒバ等の一般的なものを挙げることができる。
【0029】
上弦梁10は、束材12の上端側に接続される所要長さの複数の上弦梁単体14で構成され、下弦梁11は、束材12の下端側に接続される所要長さの複数の下弦梁単体15で構成されている。束材12は、アーチ梁Aの頂部4に設けられており、一方アーチ梁Aa及び他方アーチ梁Abには、夫々、頂部4の束材12から土台1に向けて束材12が所定間隔で複数設けられている。実施の形態では、一方アーチ梁Aa及び他方アーチ梁Abには、夫々、頂部4の束材12に対して、略等間隔で6つの束材12が設けられており、図2及び図5に示すように、土台1側の最下端の束材12(g)は、土台1に接合させられてアンカーボルト5で固定されている。一方アーチ梁Aa及び他方アーチ梁Abにおいて、夫々、上弦梁単体14は、6本設けられ、各束材12間に夫々設けられている。一方、下弦梁単体15は5本設けられ、最下端の下弦梁単体15(g)は、土台1に接合した束材12(g)とこの束材12より2つ上の束材12間に設けられ、他の下弦梁単体15はその他の各束材12間に設けられている。土台1に接合した束材12より1つ上の束材12は、その下端が下弦梁単体15に接合され、他の束材12は、その下端が下弦梁単体15の下面よりもわずかに突設されている。
【0030】
図4乃至図6に示すように、束材12の上端側と上弦梁単体14との接続は、ホゾ穴f及びこれに嵌合するホゾmの組で行われ、束材12の下端側と下弦梁単体15との接続は、ホゾ穴f及びこれに嵌合するホゾmの組で行われている。実施の形態では、上弦梁単体14の両端にはホゾmが形成され、これに対応する束材12の弧方向の側面にはホゾ穴fが形成されている。一方、下弦梁単体15の両端にはホゾmが形成され、これに対応する束材12の弧方向の側面にはホゾ穴fが形成されている。図5に示すように、土台1に接合した束材12より1つ上の束材12の下端にはホゾm(a)が形成され、これに対応する最下端の下弦梁単体15(g)にはホゾ穴f(a)が形成されている。
【0031】
また、方杖13の一端とこれに対応する上弦梁単体14及び/または一方の束材12(実施の形態では束材12)との接続は、方杖13に形成したホゾ穴f及びこれに嵌合する束材12に形成したホゾmの組で行われ、方杖13の他端とこれに対応する下弦梁単体15及び/または他方の束材12(実施の形態では下弦梁11)との接続は、方杖13に形成したホゾ穴f及びこれに嵌合する下弦梁11に形成したホゾmの組で行われている。実施の形態では、一方アーチ梁Aa及び他方アーチ梁Abにおいて、夫々、図1図2及び図5に示すように、方杖13は、上弦梁10,下弦梁11及び隣接する束材12で囲繞される空間の内、土台1に隣接する最下端の空間(e)には設けられていない。
【0032】
更に、図6に示すように、実施の形態においては、隣接する上弦梁単体14間、下弦梁単体15間を、互いに連結する所謂羽子板金物6でも連結している。その他、適宜、釘、ボルト及びナット、種々の金物を用いて各部材を固定することができる。
【0033】
また、実施の形態に係るアーチ形建造物Kにおいて、図1乃至図4図6乃至図8に示すように、桁行方向Xに沿って延び各アーチ梁A間を接続する複数の木製の小屋梁20が備えられている。小屋梁20は、頂部4の束材12を含む各束材12毎に設けられている。これにより、隣接する小屋梁20間で構成される小屋梁空間が、頂部4から土台1にかけて複数設けられる。小屋梁20は、上弦梁10の上側であって束材12の上端に対応した部位に設けられ、束材12は、その上端が上弦梁10から突出するように設けられ、小屋梁20と束材12の上端とは、ホゾ穴f及びこれに嵌合するホゾmの組で接続されている。即ち、小屋梁20の束材12の上端に対応した部位には、ホゾ穴fが設けられ、束材12の上端にはホゾmが設けられている。
【0034】
小屋梁20は桁行方向Xに沿って長いので、何本か連設して構成されている。図7にはその連設構造を示す。左右の小屋梁20を木製の連結部材20aで連結する。接続部に束材12のホゾmを位置させ、この部位にホゾ穴fを形成している。
【0035】
更に、頂部4の小屋梁20を含み隣接する小屋梁20間には、桁行方向Xに所要の間隔で架設される複数の木製の登り梁21が設けられている。図4に示すように、登り梁21の端部をホゾm(b)として構成し、小屋梁20には、この端部のホゾm(b)が嵌合するホゾ穴f(b)が形成されている。
【0036】
図1及び図3に示すように、一方アーチ梁Aa及び他方アーチ梁Abにおいて、夫々、上位の小屋梁空間に隣接する下位の小屋梁空間に設けられる登り梁21は、上位の小屋梁空間に設けられる隣接する登り梁21に対して、その桁行方向Xの中間に位置するよう設けられている。各小屋梁空間の登り梁21の数は、アーチ梁Aの数より多く設けられ、隣接する小屋梁空間の何れか一方の小屋梁空間の登り梁21は、上弦梁単体14に沿わせて設けられている。
【0037】
実施の形態では、図1及び図3に示すように、一方アーチ梁Aa及び他方アーチ梁Abにおいて、夫々、最下位の小屋梁空間,これから2つ上の小屋梁空間,更にこれから2つ上の小屋梁空間において、登り梁21は、上弦梁単体14に沿わせて設けられているとともに、この上弦梁単体14に沿わせて設けた隣接する登り梁21間の中央に、1つの登り梁21を設けている。一方、最上位の小屋梁空間,これから2つ下の小屋梁空間,更にこれから2つ下の小屋梁空間において、登り梁21は、上位の小屋梁空間に設けられる隣接する登り梁21に対して、その桁行方向Xの中央に対応した位置に設けられている。
【0038】
要するに、図3に示すように、建造物の桁行方向Xに直交する中心線Qを境にして左右に夫々設けられる5つのアーチ梁A間において、登り梁21は、一方アーチ梁Aa及び他方アーチ梁Abにおいて、夫々、上位の小屋梁空間に設けられる複数の登り梁21の位相と、上位の小屋梁空間に隣接する下位の小屋梁空間に設けられる複数の登り梁21の位相とが1/2ずらした関係になるように配置されている。中心線Q側のアーチ梁A間(A5とA6との間)においても、同様に、登り梁21は、一方アーチ梁Aa及び他方アーチ梁Abにおいて、夫々、上位の小屋梁空間に設けられる複数の登り梁21の位相と、上位の小屋梁空間に隣接する下位の小屋梁空間に設けられる複数の登り梁21の位相とが1/2ずらした関係になるように配置されている。
【0039】
更にまた、実施の形態に係るアーチ形建造物Kにおいて、各小屋梁空間には、この小屋梁空間に斜めに設けられるとともに一端部が上位の小屋梁20に接続され他端部が下位の小屋梁20に接続される複数の木製の小屋筋違22が設けられている。図4及び図8に示すように、小屋梁20には、小屋筋違22の端部23が嵌合する嵌合凹部24が形成され、小屋筋違22の端部23は、この端部23を嵌合凹部24に嵌合した状態で、小屋梁20に釘25で止着されている。
【0040】
また、各小屋梁空間において、小屋筋違22は、桁行方向Xに沿って順次略同角度で傾斜方向を変えて連続するように設けられている。更に、図3に示すように、一方アーチ梁Aa及び他方アーチ梁Abにおいて、夫々、隣接する小屋梁空間の何れか一方の小屋梁空間においては、小屋筋違22を隣接する登り梁21間に1本設け、隣接する小屋梁空間の何れか他方の小屋梁空間においては、これに設ける小屋筋違22を、隣接する小屋梁空間の何れか一方の小屋梁空間にある各小屋筋違22とは、小屋梁20を中心にして鏡面対称になるように設けられている。
【0041】
更に、実施の形態に係るアーチ形建造物Kにおいて、図2及び図4に示すように、桁行方向Xに沿って延び対峙する束材12間に架設される複数の棒状の木製の振れ止め30が設けられている。振れ止め30は、頂部4の束材12間、一方アーチ梁Aa及び他方アーチ梁Abにおいて、夫々、頂部4の束材12から3つ下の束材12間に架設されている。また、振れ止め30と小屋梁20との間には、図示外の筋違が設けられる。
【0042】
従って、この実施の形態に係るアーチ形建造物Kを施工するときは、例えば、以下のようにして行う。予め土台1を構築し、この土台1に順次アーチ梁Aを構築して行く。この場合、束材12の上端側と上弦梁単体14との接続、束材12の下端側と下弦梁単体15との接続、方杖13の一端とこれに対応する束材12との接続、方杖13の他端とこれに対応する下弦梁11との接続は、ホゾ穴f及びこれに嵌合するホゾmの組で行うので、確実に組み立てを行うことができる。また、図6に示すように、実施の形態においては、隣接する上弦梁単体14間、下弦梁単体15間を、互いに連結する所謂羽子板金物6でも連結する。次に、振れ止め30を各アーチ梁A間に架設し、アーチ梁Aを押えておく。
【0043】
この状態で、小屋梁20及び登り梁21を構築する。この場合も、束材12と小屋梁20との接続,小屋梁20と登り梁21との接続は、ホゾ穴f及びこれに嵌合するホゾmの組で行うので、確実に組み立てを行うことができる。次にまた、小屋梁20に対して小屋筋違22を構築する。この場合、小屋梁20と小屋筋違22との接続は、小屋筋違22の端部23を嵌合凹部24に嵌合するので、確実に組み立てを行うことができる。また、小屋筋違22は、小屋梁20に対して釘25でも止める。それから、最後に、垂木や野地板を用いた屋根壁2及び妻壁(図示せず)を構築する。尚、上記の形態においては、隣接する上弦梁単体14間、下弦梁単体15間を、互いに連結する所謂羽子板金物6でも連結したが、その他、適宜、釘、ボルト及びナット、種々の金物を用いて各部材を固定することができる。尚また、組立順序は、上記に限定されるものではなく、可能な部分においては、各部材の組み立てを並行して進めるようにしても良く、適宜変更して差支えない。
【0044】
このようにして構築されたアーチ形構造物においては、上弦梁10を構成する各上弦梁単体14と対応する束材12とはホゾ穴f及びこれに嵌合するホゾmの組で行なわれ、下弦梁11を構成する各下弦梁単体15と対応する束材12とはホゾ穴f及びこれに嵌合するホゾmの組で行なわれ、各方杖13と対応する上弦梁単体14及び/または束材12とはホゾ穴f及びこれに嵌合するホゾmの組で行なわれるので、ホゾ穴f及びホゾmでの接合は強固であることから、アーチ梁Aを構成する部材の接続強度が向上してアーチ梁Aが強固になり、そのため、全体の耐久性を向上させることができる。また、ホゾ穴f及びホゾmでの接合に加えて、羽子板金具6や釘などでも固定しているので、更に接合強度を増すことができる。
【0045】
また、各アーチ梁Aは、複数の小屋梁20で接続されるので、それだけ、アーチ梁Aの強度が増す。特に、小屋梁20と束材12の上端とをホゾ穴f及びこれに嵌合するホゾmの組で接続したので、ホゾ穴f及びホゾmでの接合は強固であることから、アーチ梁Aが強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。更に、各アーチ梁Aにおいて、全ての束材12を小屋梁20で接続することになるので、各アーチ梁Aがより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。更にまた、桁行方向Xに沿って延び各アーチ梁A間であって対峙する束材12間に架設される複数の振れ止め30を備えたので、小屋梁20に加えて振れ止め30も設けることになることから、各アーチ梁Aがより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。
【0046】
そしてまた、小屋梁20間に登り梁21を設けたので、小屋梁20の動きを規制でき、特に、アーチ梁Aの弧方向への動きを規制できるので、各アーチ梁Aがより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。この場合、小屋梁20と登り梁21とをホゾ穴f及びこれに嵌合するホゾmの組で接続したので、ホゾ穴f及びホゾmでの接合は強固であることから、小屋梁20及び登り梁21が強固になり、それだけ、アーチ梁Aも強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。
【0047】
また、上位の小屋梁空間に隣接する下位の小屋梁空間に設けられる登り梁21を、上位の小屋梁空間に設けられる隣接する登り梁21に対して、その桁行方向Xの中間に位置するようしたので、登り梁21がバランスよく配置されることになり、そのため、小屋梁20のアーチ梁Aの動きを確実に規制でき、それだけ、各アーチ梁Aがより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。また、各小屋梁空間の登り梁21の数をアーチ梁Aの数より多く設け、隣接する小屋梁空間の何れか一方の小屋梁空間の登り梁21を上弦梁単体14に沿わせて設けたので、隣接する小屋梁空間の何れか一方の小屋梁空間の登り梁21が上弦梁単体14に沿って配置されることになることから、上弦梁10を補強することができ、この点でも各アーチ梁Aがより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。
【0048】
更に、各小屋梁空間において、小屋筋違22を設けたので、更に小屋梁20の動きを規制できることから、各アーチ梁Aがより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。この場合、小屋梁20に、小屋筋違22の端部23が嵌合する嵌合凹部24を形成したので、小屋筋違22が嵌合凹部24に嵌合することから、小屋筋違22の接続強度を増すことができ、この点でも、各アーチ梁Aがより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。また、この場合、各小屋梁空間において、小屋筋違22を桁行方向Xに沿って順次略同角度で傾斜方向を変えて連続するように設けたので、小屋筋違22の配置バランスが良くなり、この点でも、各アーチ梁Aがより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。
【0049】
そしてまた、一方アーチ梁Aa及び他方アーチ梁Abにおいて、これらは、互いに対称に形成されるとともに、夫々、隣接する小屋梁空間の何れか一方の小屋梁空間においては、小屋筋違22を隣接する登り梁21間に1本設け、隣接する小屋梁空間の何れか他方の小屋梁空間においては、これに設ける小屋筋違22を、隣接する小屋梁空間の何れか一方の小屋梁空間にある各小屋筋違22とは、小屋梁20を中心にして鏡面対称になるように設けたので、図3に示すように、小屋梁20間にトラス構造が連続して形成されることから、多方からの加圧で全体が変形しにくくなり、各アーチ梁Aがより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。
【0050】
また、図8に示すように、隣接する小屋梁空間の何れか一方の小屋梁空間における何れか他方側の2つの小屋筋違22の端部23の接続部位と、隣接する小屋梁空間の何れか他方の小屋梁空間における何れか一方側の2つの小屋筋違22の端部23の接続部位が、一つの小屋梁20の略同じ部位に集合して位置することになるので、この部位における傾斜方向を同じにする小屋筋違22が略同一線上に位置することになり、そのため、小屋筋違22に作用する小屋筋違22の軸線Y方向に作用する力の受けが強固になり、この点でも、各アーチ梁Aがより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。
【0051】
また、図2に示すように、一方アーチ梁Aaの孤形を構成する円弧の水平線H上の中心をP1、他方アーチ梁Abの孤形を構成する円弧の水平線H上の中心をP2としたとき、頂点を通る垂線Vを境にして、中心P1を他方アーチ梁Ab側に位置させ、中心P2を一方アーチ梁Aa側であって中心P1と対称位置に位置させて、一方アーチ梁Aa及び他方アーチ梁Abを形成したので、アーチ梁A全体が1つの中心を中心とした弧状になるのではなく、中心位置の異なる一方アーチ梁Aaと他方アーチ梁Abとが中央の束材12において突合せになることから、上からの荷重に対して強固になり、この点でも、各アーチ梁Aがより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。
【0052】
尚、上記の実施の形態において、アーチ梁Aの数や間隔は上述したものに限定されるものではなく、建造物Kの大きさや用途に応じて適宜変更して差支えない。特に、アーチ梁Aの数を増すことにより、桁行方向Xに順に建造物を大きく構築できることから、施工性を大幅に向上させることができる。また、各部材の大きさや数なども上述したものに限定されるものではなく、適宜変更して差支えない。また、この建造物は種々の用途に用いて良いことは勿論である。要するに、本発明は、上述した本発明の実施の形態に限定されず、当業者は、本発明の新規な教示及び効果から実質的に離れることなく、これら例示である実施の形態に多くの変更を加えることが容易であり、これらの多くの変更は本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0053】
K アーチ形建造物
X 桁行方向
A(A1~A10) アーチ梁
Aa 一方アーチ梁
Ab 他方アーチ梁
Q 中心線
1 土台
2 屋根壁
3 入口開口
4 頂部
5 アンカーボルト
6 羽子板金物
Ca,Cb 円弧
H 水平線
V 垂直線
P1,P2 中心
10 上弦梁
11 下弦梁
12 束材
13 方杖
14 上弦梁単体
15 下弦梁単体
f ホゾ穴
m ホゾ
20 小屋梁
20a 連結部材
21 登り梁
22 小屋筋違
23 端部
24 嵌合凹部
25 釘
30 振れ止め
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-10-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項11
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項11】
上記一方アーチ梁の孤形を構成する円弧の水平線上の中心をP1、上記他方アーチ梁の孤形を構成する円弧の水平線上の中心をP2としたとき、上記頂部を通る垂線を境にして、中心P1を他方アーチ梁側に位置させ、中心P2を一方アーチ梁側であって中心P1と対称位置に位置させて、上記一方アーチ梁及び他方アーチ梁を形成したことを特徴とする請求項3乃至10何れかに記載のアーチ形建造物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
そしてまた、必要に応じ、上記一方アーチ梁の孤形を構成する円弧の水平線上の中心をP1、上記他方アーチ梁の孤形を構成する円弧の水平線上の中心をP2としたとき、上記頂部を通る垂線を境にして、中心P1を他方アーチ梁側に位置させ、中心P2を一方アーチ梁側であって中心P1と対称位置に位置させて、上記一方アーチ梁及び他方アーチ梁を形成した構成としている。これにより、アーチ梁全体が1つの中心を中心とした弧状になるのではなく、中心位置の異なる一方アーチ梁と他方アーチ梁とが中央の束材において突合せになるので、上からの荷重に対して強固になり、この点でも、各アーチ梁がより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
また、アーチ梁Aは、桁行方向Xに沿う頂部4を境にして一方の土台1側の一方アーチ梁Aaと、一方アーチ梁Aaと対称に形成され他方の土台1側の他方アーチ梁Abとで構成されている。そして、図2に示すように、一方アーチ梁Aa及び他方アーチ梁Abは、一方アーチ梁Aaの孤形を構成する円弧Caの水平線H上の中心をP1、他方アーチ梁Abの孤形を構成する円弧Cbの水平線H上の中心をP2としたとき、頂部4を通る垂線Vを境にして、中心P1を他方アーチ梁Ab側に位置させ、中心P2を一方アーチ梁Aa側であって中心P1と対称位置に位置させて形成されている。実施の形態では、地面からアーチ梁Aの頂部4までの高さは、約6000mmにしている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
また、図2に示すように、一方アーチ梁Aaの孤形を構成する円弧の水平線H上の中心をP1、他方アーチ梁Abの孤形を構成する円弧の水平線H上の中心をP2としたとき、頂部4を通る垂線Vを境にして、中心P1を他方アーチ梁Ab側に位置させ、中心P2を一方アーチ梁Aa側であって中心P1と対称位置に位置させて、一方アーチ梁Aa及び他方アーチ梁Abを形成したので、アーチ梁A全体が1つの中心を中心とした弧状になるのではなく、中心位置の異なる一方アーチ梁Aaと他方アーチ梁Abとが中央の束材12において突合せになることから、上からの荷重に対して強固になり、この点でも、各アーチ梁Aがより確実に強固になり、より一層全体の耐久性を向上させることができる。