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  • 特開-発電システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161129
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】発電システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04 20160101AFI20231030BHJP
   H01M 8/04111 20160101ALI20231030BHJP
   H01M 8/0662 20160101ALI20231030BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/04111
H01M8/0662
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071302
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100130052
【弁理士】
【氏名又は名称】大阪 弘一
(72)【発明者】
【氏名】平野 覚
(72)【発明者】
【氏名】東 壽志
【テーマコード(参考)】
5H127
【Fターム(参考)】
5H127AB04
5H127AB28
5H127AB29
5H127AC07
5H127AC15
5H127BA02
5H127BA33
5H127BB02
5H127BB18
(57)【要約】
【課題】構造の複雑化及びコストの増加を避けつつ、発電出力及び発電効率を向上させることができる発電システムを提供する。
【解決手段】発電システム1は、FCスタック2と、FCスタック2から排出された排水が流通する排水流路3と、排水流路3に設けられ、排水の少なくとも一部を気化させることにより水蒸気を発生させる気化部5と、排水流路3において気化部5の下流側に設けられたタービン61を有し、水蒸気によってタービン61を回転させて発電する発電部6と、排水流路3においてタービン61の下流側に設けられ、タービン61を通過した排水を外部に排出する排出部9と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックから排出された排水が流通する排水流路と、
前記排水流路に設けられ、前記排水の少なくとも一部を気化させることにより水蒸気を発生させる気化部と、
前記排水流路において前記気化部の下流側に設けられたタービンを有し、前記水蒸気によって前記タービンを回転させて発電する発電部と、
前記排水流路において前記タービンの下流側に設けられ、前記タービンを通過した前記排水を外部に排出する排出部と、
を備える、
発電システム。
【請求項2】
前記排水流路において前記タービンの下流側且つ前記排出部の上流側に設けられ、前記タービンを通過した前記排水のイオンを吸着するイオン交換部を更に備える、
請求項1に記載の発電システム。
【請求項3】
前記気化部は、前記排水を加熱するためのヒータを含み、前記燃料電池スタックからの伝熱及び前記ヒータによる加熱により、前記排水の少なくとも一部を気化させる、
請求項2に記載の発電システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水素を含む改質ガスを生成し、生成した改質ガスと空気とを反応させることによって発電を行う燃料電池モジュールが公知である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-125099号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような手法で発電を行う場合には、水素と空気とが反応する際に、反応生成物として水が発生する。当該水は、例えば、排水として燃料電池から排出されるが、このとき、排水が有する熱を有効に活用する手法が望まれている。その一方で、当該熱を活用することによる構造の複雑化及びコストの増加は望ましくない。
【0005】
本開示は、構造の複雑化及びコストの増加を避けつつ、発電出力及び発電効率を向上させることができる発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の発電システムは、燃料電池スタックと、燃料電池スタックから排出された排水が流通する排水流路と、排水流路に設けられ、排水の少なくとも一部を気化させることにより水蒸気を発生させる気化部と、排水流路において気化部の下流側に設けられたタービンを有し、水蒸気によってタービンを回転させて発電する発電部と、排水流路においてタービンの下流側に設けられ、タービンを通過した排水を外部に排出する排出部と、を備える。
【0007】
この発電システムでは、燃料電池スタックから排出される排水の少なくとも一部が気化されることにより発生した水蒸気によって、発電部においてタービンが回転させられて発電が行われ、タービンを通過した排水が外部に排出される。これにより、燃料電池スタックによる発電に加えて、燃料電池スタックから排出された排水が有する熱を利用して発電部によっても発電が行われるので、コストの増加を抑制しつつ、発電出力及び発電効率を向上させることができる。また、排水は発電システム内で循環することなく排出部において外部に排出されるので、排水を冷却するための大型のラジエータを設置したり、排水を再利用するための熱サイクルを構成したりする必要が無く、構造の複雑化が抑制される。よって、本開示の発電システムによれば、構造の複雑化及びコストの増加を避けつつ、発電出力及び発電効率を向上させることができる。
【0008】
本開示の発電システムは、排水流路においてタービンの下流側且つ排出部の上流側に設けられ、タービンを通過した排水のイオンを吸着するイオン交換部を更に備えてもよい。これにより、排水に含まれるイオン等の不純物を取り除くことができるので、燃料電池スタックと、発電システムにおける他の電子部品との間において絶縁性能の低下を抑制することができる。
【0009】
本開示の発電システムでは、気化部は、排水を加熱するためのヒータを含み、燃料電池スタックからの伝熱及びヒータによる加熱により、排水の少なくとも一部を気化させてもよい。この場合、燃料電池スタックからの伝熱を排水の気化に利用することにより、発電効率をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、構造の複雑化及びコストの増加を避けつつ、発電出力及び発電効率を向上させることができる発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本実施形態に係る発電システムを示す模式的な図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する部分を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る発電システム1を示す模式的な図である。図1に示されるように、発電システム1は、FC(Fuel Cell)スタック(燃料電池スタック)2と、排水流路3と、ポンプ4と、気化部5と、発電部6と、凝縮器7と、イオン交換器(イオン交換部)8と、排出部9と、を備えている。本実施形態では、発電システム1は、車両(図示せず)に搭載されている。当該車両は、燃料電池車である。
【0014】
FCスタック2は、電池セルが複数積層されて構成されている。水素と空気中の酸素とを反応させて発電するFCスタック2で発電された電力は、例えば、車両が有するバッテリを充電するための電力として利用される。FCスタック2には、車両が有する供給流路(図示せず)から、水素及び空気のそれぞれが供給される。FCスタック2は、供給された水素と空気とを反応させることによって、発電を行う。FCスタック2による発電については、公知の技術を用いて実行可能なので、詳細な説明を省略する。ここで、水素と空気とが反応する際には、反応生成物として水が発生する。発生した水は、排水WとしてFCスタック2から排水流路3に排出される。
【0015】
FCスタック2には、FCスタック2から排出された排水Wが流通する排水流路3が接続されている。ここでいう排水とは、液体の水に加えて気体の水(水蒸気)を含む場合がある。排水流路3には、排水Wの流路の上流側から、ポンプ4、気化部5、発電部6、凝縮器7、イオン交換器8、及び排出部9が設けられている。すなわち、発電システム1では、排水流路3を介して、FCスタック2から排出された排水Wが、ポンプ4、気化部5、発電部6、凝縮器7、イオン交換器8、及び排出部9をこの順に通るように構成されている。ポンプ4は、FCスタック2から排出された排水Wを気化部5に向けて圧送する。
【0016】
気化部5は、ポンプ4の下流側に設けられており、排水流路3を介してポンプ4と接続されている。気化部5は、ポンプから供給された排水Wの少なくとも一部を気化させることにより水蒸気を発生させる。気化部5は、伝熱部51と、ヒータ52と、を有している。
【0017】
伝熱部51は、FCスタック2との間の熱交換によって、FCスタック2からの伝熱Hにより排水Wを加熱する部分である。伝熱部51は、気化部5においてヒータ52の上流側に設けられている。ヒータ52は、排水Wを加熱する加熱装置であって、例えば、PTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータである。気化部5は、FCスタック2からの伝熱H及びヒータ52による加熱により、排水Wの少なくとも一部(例えば略全体)を気化させる。図1に示されるように、気化部5によって生じた水蒸気を含む排水Wは、排水流路3を介して発電部6に供給される。
【0018】
発電部6は、タービン61と、発電機62と、を有している。タービン61は、排水流路3において気化部5の下流側に設けられており、排水流路3を介して気化部5に接続されている。タービン61は、排水Wに含まれる気化部5で発生した水蒸気の膨張エネルギーによって回転する。また、タービン61は、発電機62に接続されており、タービン61の回転に応じて発電を行う。発電機62により生じた電力は、バッテリー(図示せず)に蓄電される。以上のように、発電部6は、排水Wに含まれる水蒸気によってタービン61を回転させて発電する。タービン61を通過した排水Wは、凝縮器7に供給される。
【0019】
ここで、発電システム1での発電効率(電費)の向上について説明する。高温側温度をT1(K)、タービン61を通過直後の温度をT2(K)とすると、カルノーサイクルに起因するエネルギーの回収率ηは、η=(T1-T2)/T1と表すことができる。
【0020】
例えば、FCスタック2から排出された排水の温度が105℃であって、車両の外部の気温が30℃である条件下では、エネルギーの回収率ηは、η=(105-30)/(273+105)=0.198と表すことができる。このように、上記条件下では、熱エネルギーの約20%が電力として回生可能な最大値となる。この値を理論上の最大回生電力とおくと、FCスタック2での電費を50%とした場合、当該電費の20%の電力である10%の電力(すなわち、0.5×0.2=0.1)が発電部6において回収できるため、発電システム1のトータルの電費は50+10=60%に向上することになる。以上のように、発電システム1によれば、発電出力及び発電効率を向上させることが可能となる。
【0021】
凝縮器7は、排水流路3においてタービン61の下流側に設けられており、排水流路3を介してタービン61に接続されている。凝縮器7は、タービン61から供給された排水Wに含まれる水蒸気を液化し、イオン交換器8に供給する。
【0022】
イオン交換器8は、排水流路3において凝縮器7の下流側に設けられており、排水流路3を介して凝縮器7に接続されている(すなわち、凝縮器7を介してタービンに61に接続されている)。イオン交換器8は、凝縮器7から供給された排水Wのイオンを吸着する。これにより、高温にされされた部材から溶出した不純物が排水Wから取り除かれる。イオン交換器8によって不純物が取り除かれた排水Wは、排出部9に供給される。なお、本実施形態では、イオン交換器8は、排水流路3に加えて、車両における発電システム1とは異なる他のシステム(図示せず)の流路Sにも接続されている。流路Sには、当該他のシステムで用いられる冷媒(例えば水)が流通している。イオン交換器8は、当該冷媒に含まれるイオンを吸着する。すなわち、イオン交換器8は、発電システム1と他のシステムとの間で共用される。
【0023】
排出部9は、排水流路3においてイオン交換器8の下流側に設けられ、排水流路3を介してイオン交換器8に接続されている(すなわち、凝縮器7及びイオン交換器8を介してタービン61に接続されている)。排出部9は、イオン交換器8から供給された排水Wを発電システム1の外部に排出する。ここでは、排出部9は、排水Wを車両の外部に排出する。
【0024】
以上説明したように、発電システム1では、FCスタック2から排出される排水Wの少なくとも一部が気化されることにより発生した水蒸気によって、発電部6においてタービン61が回転させられて発電が行われ、タービン61を通過した排水Wが外部に排出される。
【0025】
これにより、FCスタック2による発電に加えて、FCスタック2から排出された排水が有する熱を利用して発電部6によっても発電が行われるので、コストの増加を抑制しつつ、発電出力及び発電効率を向上させることができる。また、排水は発電システム1内で循環することなく排出部9において外部に排出されるので、排水を冷却するための大型のラジエータを設置したり、排水を再利用するための熱サイクルを構成したりする必要が無く、構造の複雑化が抑制される。よって、発電システム1によれば、構造の複雑化及びコストの増加を避けつつ、発電出力及び発電効率を向上させることができる。
【0026】
発電システム1の効果について更に述べる。従来、ランキンサイクルによる発電システムが知られている。具体的には、当該発電システムは、排水流路を通る液状の冷媒を、気化部においてFCスタックからの電熱によって気化させることにより高温の高圧ガスを発生させ、発電部において、当該高圧ガスによってタービンを回転させて発電を行うものである。タービンを通過した高圧ガスは、排水流路において発電機の下流側に設けられた復水器等によって再び液化され、ポンプ等によって再び気化部に供給される。しかしながら、このようなランキンサイクルを構成する発電システムでは、発電システム内で冷媒を循環させる構成をとるため、冷媒を再利用する系統が複雑となってしまう。これに対し、発電システム1では、FCスタック2において反応生成物として生成される排水を利用すると共に、発電に供された排水を外部に排出するため、ランキンサイクル等、排水を再利用するための熱サイクルを構成する必要がないので、構成の複雑化が抑制される。
【0027】
発電システム1では、イオン交換器8が、排水流路3においてタービン61の下流側且つ排出部9の上流側に設けられ、タービン61を通過した排水のイオンを吸着する。例えば、上記ランキンサイクルを用いた発電システムにおいては、高温下となる車両内において、発電システムを循環する冷媒内にイオンが溶出しやすいため、導電率が高くなる場合がある。そうすると、FCスタックと他の電子部品との間において絶縁性能の低下が起こり、その結果、漏電のリスクが生じる。発電システム1によれば、排水に含まれるイオン等の不純物を取り除くことができるので、FCスタック2と、発電システム1における他の電子部品との間において絶縁性能の低下を抑制することができる。つまり、発電システム1では、FCスタック2からの排水を利用して発電を行う際に生じる上記絶縁性能の低下のリスクをイオン交換器8によって回避できるので、安全性と発電効率の向上との両立を図ることができる。
【0028】
また、発電システム1では、発電システム1とは異なる他のシステムに用いられているイオン交換器8を発電システム1にも利用することで、新たなイオン交換器を導入する必要がなく、構造の複雑化を低減することができる。
【0029】
発電システム1では、気化部5が、排水を加熱するためのヒータ52を含み、FCスタック2からの伝熱及びヒータ52による加熱により、排水の少なくとも一部を気化させる。この場合、FCスタック2からの伝熱を排水の気化に利用することにより、発電効率をより向上させることができる。
【0030】
発電システム1では、気化部5が、伝熱部51と、ヒータ52と、を有している。例えば、車両が寒冷地で運用される場合等、外気温が低い場合には、FCスタック2からの伝熱Hのみでは十分に排水Wを気化させられない場合がある。上記構成によれば、伝熱部51のみならず、ヒータ52によっても排水Wを気化させるため、排水Wを十分に気化させ、タービン61を十分に回転させる水蒸気を確保することができる。
【0031】
以上の実施形態は、本開示の一側面を説明したものである。したがって、本開示は、上述した発電システム1に限定されることなく、任意に変形され得る。
【0032】
例えば、気化部5は、上記実施形態の構成に限定されない。気化部5は、例えば、伝熱部51のみを備えていてもよく、また例えば、ヒータ52のみを備えていてもよい。また、気化部5は、伝熱部51及びヒータ52に加えて或いは代えて、例えば、FCスタック2において発生した余剰電力を利用して排水を加熱するヒータ等を備えていてもよい。或いは、ヒータ52で当該余剰電力が利用されてもよい。
【0033】
また、発電システム1は、他のシステムとの共用のイオン交換器8ではなく、発電システム1専用のイオン交換器を備えていてもよい。また、発電システム1は、イオン交換器を備えていなくてもよい。その場合、発電システム1は、凝縮器7を備えていなくてもよく、排出部9は、タービン61を通過した排水Wをそのまま外部に排出してもよい。また、発電システム1は、車両に搭載されていなくてもよい。
【符号の説明】
【0034】
1…発電システム、2…FCスタック(燃料電池スタック)、3…排水流路、5…気化部、6…発電部、8…イオン交換器(イオン交換部)、9…排出部、52…ヒータ、61…タービン、W…排水。

図1