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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161134
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】環境試験装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 17/00 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
G01N17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071311
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】593160529
【氏名又は名称】応用電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136674
【弁理士】
【氏名又は名称】居藤 洋之
(72)【発明者】
【氏名】松本 一喜
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄大
【テーマコード(参考)】
2G050
【Fターム(参考)】
2G050AA07
2G050BA10
2G050EC07
(57)【要約】
【課題】試験室内に対して被試験対象物を迅速に出し入れすることができる環境試験装置を提供する。
【解決手段】環境試験装置100は、被試験対象物WKに対して低温環境下での作動試験を行う試験室101を備えている。試験室101には、被試験対象物WKを出し入れするために2つの搬送軸130が互いに平行に延びている。各搬送軸130は、それぞれ棒状に延びて形成されており、各外表面にピン状の押し体133が突出した状態で設けられている。各押し体133は、上方に起立した状態で被試験対象物WKが載置されるワークパレット200の側面に接触する長さに形成されている。また、各搬送軸130は、回動機構135によって軸線周りに往復回動するとともに進退機構136によって軸線方向に進退するように支持されている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被試験対象物を収容する試験室を備えてこの試験室内の環境における前記被試験対象物に対して試験を行う環境試験装置であって、
前記被試験対象物を出し入れするために前記試験室に開口して設けられた出し入れ口と、
前記被試験対象物を前記出し入れ口側に押すための押し体と、
棒状に延びて形成されて前記押し体を外周部上に備える搬送軸と、
前記搬送軸を軸線周りに回動させる回動機構と、
前記搬送軸を前記出し入れ口に対して進退させる進退機構とを備えることを特徴とする環境試験装置。
【請求項2】
請求項1に記載した環境試験装置において、
前記搬送軸は、
2つ以上設けられていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項3】
請求項1に記載した環境試験装置において、さらに、
前記出し入れ口を開閉自在に閉じる閉塞体を備えていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項4】
請求項3に記載した環境試験装置において、
前記搬送軸は、
前記出し入れ口に常に跨った状態で配置されており、
前記閉塞体は、
前記搬送軸における前記出し入れ口に跨った部分が嵌る搬送軸嵌合部を有していることを特徴とする環境試験装置。
【請求項5】
請求項4に記載した環境試験装置において、
前記搬送軸は、
前記出し入れ口に跨った部分が同跨った部分の前後の部分を構成する材料よりも熱伝導率が低い材料で構成されていることを特徴とする環境試験装置。
【請求項6】
請求項1に記載した環境試験装置において、さらに、
前記出し入れ口に対する前後の位置で前記被試験対象物を支持するワーク支持体を有し、
前記搬送軸は、前記被試験対象物に対して非接触な状態で設けられていることを特徴とする環境試験装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験対象物を収容して密閉空間を形成する試験室を備えてこの試験室内の環境における被試験対象物に対して試験を行う環境試験装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被試験対象物を収容して密閉空間を形成する試験室を備えてこの試験室内の環境における被試験対象物に対して試験を行う環境試験装置がある。例えば、下記特許文献1には、0℃以下の雰囲気となる試験室としての低温槽内に被試験対象物としての電子部品を配置してこの電子部品の動作を検査する検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-76892号公報
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に記載された検査装置においては、チェーンコンベアを用いて低温槽内に被試験対象物を出し入れしているため、被試験対象物の出し入れを迅速に行うことが出来ず作業効率が低いという問題がある。
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記問題に対処するためなされたもので、その目的は、試験室内に対して被試験対象物を迅速に出し入れすることができる環境試験装置を提供することにある。
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の特徴は、被試験対象物を収容する試験室を備えてこの試験室内の環境における被試験対象物に対して試験を行う環境試験装置であって、被試験対象物を出し入れするために試験室に開口して設けられた出し入れ口と、被試験対象物を出し入れ口側に押すための押し体と、棒状に延びて形成されて押し体を外周部上に備える搬送軸と、搬送軸を軸線周りに回動させる回動機構と、搬送軸を出し入れ口に対して進退させる進退機構とを備えることにある。ここで、試験室内の環境とは、試験室内の温度、湿度、圧力および気体の濃度のうちの少なくとも一つである。
【0007】
これによれば、環境試験装置は、被試験対象物を押す押圧体を支持する搬送軸が回動機構によって軸線周りに回動するとともに進退機構によって出し入れ口に対して進退するため、試験室内に対して被試験対象物を迅速に出し入れすることができる。
【0008】
また、本発明の他の特徴は、前記環境試験装置において、搬送軸は、2つ以上設けられていることにある。
【0009】
これによれば、環境試験装置は、搬送軸が2つ以上設けられているため、被試験対象物に対して2つ以上の搬送軸によって出し入れ口に安定的に出し入れすることができる。
【0010】
また、本発明の他の特徴は、前記環境試験装置において、さらに、出し入れ口を開閉自在に閉じる閉塞体を備えていることにある。
【0011】
これによれば、環境試験装置は、出し入れ口を開閉自在に閉じる閉塞体を備えているため、試験室内の環境が変化することを抑えることができ、安定的で正確な環境試験を行うことができる。
【0012】
また、本発明の他の特徴は、前記環境試験装置において、搬送軸は、出し入れ口に常に跨った状態で配置されており、閉塞体は、搬送軸における出し入れ口に跨った部分が嵌る搬送軸嵌合部を有していることにある。
【0013】
これによれば、環境試験装置は、閉塞体が搬送軸における出し入れ口に跨った部分が嵌る搬送軸嵌合部を有しているため、出し入れ口から搬送軸を撤去することなく搬送軸が出し入れ口に跨った状態で閉塞体を開閉することができ、被試験対象物の出し入れ作業を効率的に行うことができる。
【0014】
また、本発明の他の特徴は、前記環境試験装置において、搬送軸は、出し入れ口に跨った部分が同跨った部分の前後の部分を構成する材料よりも熱伝導率が低い材料で構成されていることにある。
【0015】
これによれば、環境試験装置は、搬送軸における出し入れ口に跨った部分が同跨った部分の前後の部分を構成する材料よりも熱伝導率が低い材料で構成されているため、試験室の内部と外部との間で熱の移動を抑えることができ、環境試験の精度を効率的に向上させることができる。
【0016】
また、本発明の他の特徴は、前記環境試験装置において、さらに、出し入れ口に対する前後の位置で被試験対象物を支持するワーク支持体を有し、搬送軸は、被試験対象物に対して非接触な状態で設けられていることにある。
【0017】
これによれば、環境試験装置は、搬送軸が被試験対象物に対して非接触な状態で設けられているため、搬送軸の移動に伴って被試験対象物の位置が変化することを防止することができ、被試験対象物の搬送精度および環境試験の精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る環境試験装置の主要部の外観構成の概略を被試験対象物の投入側から示す斜視図である。
図2図1に示す環境試験装置の主要部の外観構成の概略を被試験対象物の排出側から示す斜視図である。
図3図1に示す環境試験装置の作動を制御する制御システムのブロック図である。
図4図1に示す環境試験装置において投入側閉塞体を閉めた状態を示す斜視図である。
図5図1に示す環境試験装置において押し体を傾斜状態とした状態を示す斜視図である。
図6図1に示す環境試験装置の基本状態を模式的に示す断面図である。
図7】(A)~(C)は図6に示す環境試験装置の経時的な状態の変化をそれぞれ示しており、(A)は図6に示す環境試験装置の作動を進めた状態を模式的に示す断面図であり、(B)は(A)に示す環境試験装置の作動を進めた状態を模式的に示す断面図であり、(C)は(B)に示す環境試験装置の作動を進めた状態を模式的に示す断面図である。
図8】(A)~(C)は図7に示す環境試験装置の経時的な状態の変化をそれぞれ示しており、(A)は図7(C)に示す環境試験装置の作動を進めた状態を模式的に示す断面図であり、(B)は(A)に示す環境試験装置の作動を進めた状態を模式的に示す断面図であり、(C)は(B)に示す環境試験装置の作動を進めた状態を模式的に示す断面図である。
図9】(A)~(C)は図8に示す環境試験装置の経時的な状態の変化をそれぞれ示しており、(A)は図8(C)に示す環境試験装置の作動を進めた状態を模式的に示す断面図であり、(B)は(A)に示す環境試験装置の作動を進めた状態を模式的に示す断面図であり、(C)は(B)に示す環境試験装置の作動を進めた状態を模式的に示す断面図である。
図10図9(C)に示す環境試験装置の作動を進めた状態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る環境試験装置の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係る環境試験装置100の主要部の外観構成の概略を被試験対象物WKの投入側から示す斜視図である。また、図2は、図1に示す環境試験装置100の主要部の外観構成の概略を被試験対象物WKの排出側から示す斜視図である。また、図3は、図1に示す環境試験装置100の作動を制御する制御システムのブロック図である。なお、図1においては、搬送軸受け105の形状を明らかにするために、2つの搬送軸130のうちの一方の搬送軸130の一部を省略して示している。
【0020】
この環境試験装置100は、電子回路基板で構成された被試験対象物WKを0℃以下の雰囲気中に配置して被試験対象物WKの電気的な動作を確認する装置である。なお、本明細書においては、被試験対象物WKの動作を確認するための構成および作動については本発明に直接関らないため、それらの説明は適宜省略する。
【0021】
(環境試験装置100の構成)
環境試験装置100は、試験室101を備えている。試験室101は、被試験対象物WKを気密的に収容して低温環境を生成する容器であり、水平方向に延びる箱状に形成されている。より具体的には、試験室101は、金属板を水平方向に延びる直方体状に組み付けて構成されている。この場合、試験室101は、内壁面が断熱材(図示せず)で覆われており、試験室101の内部の冷気が外部に漏れることが抑えられている。
【0022】
この試験室101には、試験室101の内部を所定の温度環境にするための冷却装置(図示せず)および試験室101内に配置された被試験対象物WKに対して所定の電気的な試験を行うワーク試験装置(図示せず)がそれぞれ設けられている。ここで、冷却装置は、試験室101内に冷気を供給するための機械装置であり、図示しないコンプレッサ、凝縮器、膨張機構、蒸発器および送風機などを備えて構成されている。また、ワーク試験装置は、被試験対象物WKに電気的に接続される接続端子のほか、この接続端子を被試験対象物WKに接続または離隔させるアプローチ機構などを備えている。
【0023】
これらの冷却装置およびワーク試験装置については、本発明に直接関らないため、これらの詳しい説明は省略する。また、試験室101には、長手方向の両側面101a,101bに投入側開口部102および排出側開口部103がそれぞれ形成されている。
【0024】
ここで、試験室101の長手方向とは、試験室101に対して被試験対象物WKが水平方向に搬送される方向である。また、試験室101の幅方向とは、前記長手方向に対して同一面内にて直交する方向である。
【0025】
投入側開口部102は、被試験対象物WKを試験室101内に入れるための開口部分であり、試験室101の長手方向の2つの側面101a,101bのうちの一方の側面101aに方形状に開口して形成されている。この投入側開口部102は、後述する投入側閉塞体110によって開閉自在に構成されている。また、投入側開口部102の前方には、投入側ワーク支持体140が設けられている。
【0026】
排出側開口部103は、試験室101内の被試験対象物WKを試験室101の外に出すための開口部分であり、試験室101の長手方向の2つの側面101a,101bのうちの他方の側面101bに方形状に開口して形成されている。この排出側開口部103は、後述する排出側閉塞体120によって開閉自在に構成されている。また、排出側開口部103の後方には、排出側ワーク支持体150が設けられている。また、試験室101の内部には、室内側ワーク支持体104および搬送軸受け105がそれぞれ設けられている。
【0027】
室内側ワーク支持体104は、試験室101内において被試験対象物WKが載置されたワークパレット200を支持しながら投入側開口部102側から排出側開口部103側に導くための部品である。具体的には、室内側ワーク支持体104は、金属材料を断面形状がL字状の棒状に形成して構成されている。この室内側ワーク支持体104は、試験室101における幅方向で互いに対向し合う2つの側面101c,101dの各内側面に投入側開口部102と排出側開口部103との間で水平に延びる姿勢で取り付けられている。すなわち、室内側ワーク支持体104は、試験室101の幅方向において2つの室内側ワーク支持体104が一対で構成されている。なお、図1および図2においては、一対の室内側ワーク支持体104のうちの一方の一部のみを示している。
【0028】
搬送軸受け105は、試験室101内において後述する2つの搬送軸130を下方側から受けて各搬送軸130が下方に下がることを防止するための部品である。より具体的には、搬送軸受け105は、2つの搬送軸130をそれぞれ受けることができるように試験室101の幅方向に延びた板状体に形成されている。この搬送軸受け105は、試験室101内における投入側開口部102および排出側開口部103にそれぞれ隣接する位置に設けられている。また、各搬送軸受け105の上面には、試験室101の長手方向に沿って摺動嵌合部105aが2つずつ形成されている。
【0029】
摺動嵌合部105aは、2つの搬送軸130をそれぞれ摺動自在に受ける部分であり、各搬送軸130の各下半分がそれぞれ嵌まり込む溝状に形成されている。この搬送軸受け105は、搬送軸130を摺動自在に支持できればどのような材料で構成してもよいが、樹脂材などの熱伝導率が低い材料で構成するとよい。なお、この搬送軸受け105は、各搬送軸130に接した状態で受けてもよいし、各搬送軸130から荷重を受ける状態(つまり支持する状態)で受けてもよい。
【0030】
投入側閉塞体110は、投入側開口部102を閉じるための部品であり、投入側開口部102を覆うことができる大きさの板状に形成されている。本実施形態においては、投入側閉塞体110は、金属製の板状態の両面に樹脂製の板状体を貼り付けて構成されている。この投入側閉塞体110は、試験室101における投入側開口部102が開口する側面の外側面に上下方向にスライド変位可能な状態で支持されている。より具体的には、投入側閉塞体110は、閉塞体駆動機構111によって支持されている。
【0031】
閉塞体駆動機構111は、投入側閉塞体110を投入側開口部102に対して上下方向にスライド変位させるための機械装置であり、主として、ガイド体112,上下動駆動装置113および連結具114をそれぞれ備えて構成されている。
【0032】
ガイド体112は、投入側閉塞体110を上下方向に案内するとともに投入側閉塞体110を側面101aに押し付けるための部品である。具体的には、ガイド体112は、図示上下方向に延びる金属製の板状体に2つの長孔状のガイド溝112aを直列に形成して構成されている。この場合、2つのガイド溝112aは、それぞれ上下方向に直線状に延びるとともに各下端部が側面101a側に屈曲した接近部112bを有して形成されている。
【0033】
これら2つのガイド溝112aは、投入側閉塞体110の両側面にそれぞれ2つずつ設けられたローラ110aが回転自在または摺動自在に嵌合する貫通孔である。そして、このガイド体112は、側面101aの外側面における投入側開口部102の両側にそれぞれ取り付けられている。すなわち、ガイド体112は、投入側閉塞体110に対して試験室101の幅方向において2つのガイド体112が一対で構成されている。
【0034】
したがって、ガイド体112は、ローラ110aがガイド溝112a内における接近部112b以外の位置に位置している場合には投入側閉塞体110を側面101aに対して離隔した位置に位置するように案内する(図1参照)。また、ガイド体112は、図4に示すように、ローラ110aがガイド溝112a内における接近部112bに位置している場合には投入側閉塞体110を側面101aに接近させて密着する位置に位置するように案内する。
【0035】
上下動駆動装置113は、投入側閉塞体110を上下方向に変位させるためのアクチュエータであり、後述する制御装置160によって作動が制御される。本実施形態においては、上下動駆動装置113は、エアシリンダによって構成されている。この上下動駆動装置113は、試験室101の上面に取り付けられており、連結具114を介して投入側閉塞体110に連結されている。なお、上下動駆動装置113は、投入側閉塞体110を上下動させることができるアクチュエータで構成されていればよいため、エアシリンダ以外のアクチュエータ、例えば、油圧シリンダまたは電動機で構成することもできる。
【0036】
連結具114は、上下動駆動装置113のピストンの先端部に対して投入側閉塞体110を回動自在に連結するヒンジ状の継手である。具体的には、連結具114は、上下動駆動装置113のピストンの先端部と投入側閉塞体110の上面とを回動自在に連結するヒンジ状に形成されている。これにより、連結具114は、投入側閉塞体110が下降して投入側開口部102を閉じる際に投入側閉塞体110を側面101a側に変位させるとともに、投入側閉塞体110が上昇して投入側開口部102を開口させる際に投入側閉塞体110を側面101aから離隔する側に変位することを許容する。また、投入側閉塞体110の下端部には、2つの搬送軸嵌合部115がそれぞれ形成されている。
【0037】
各搬送軸嵌合部115は、投入側閉塞体110が下降して投入側開口部102を閉じる際に2つの搬送軸130に対する物理的な干渉を避けるための部分である。具体的には、各搬送軸嵌合部115は、各搬送軸130が入り込んで嵌合するように下方に向かって開口する逆U字状に形成されている。
【0038】
この場合、各搬送軸嵌合部115は、上端部分が各搬送軸130の凸状の曲面形状に密着する凹状の曲面形状に形成されており、投入側閉塞体110が投入側開口部102を閉じた際における気密性の低下を抑制している。また、各搬送軸嵌合部115は、上下方向に延びて長孔状の調整孔115aが形成されており、この調整孔115aを貫通したボルト115bによって投入側閉塞体110に対して上下方向の位置が調整できるように構成されている。また、各搬送軸嵌合部115は、搬送軸130を逃げる形状に形成されていればどのような材料で構成してもよいが、樹脂材などの熱伝導率が低い材料で構成するとよい。また、各搬送軸嵌合部115は、投入側閉塞体110に取り付ける構成ではなく直接形成することもできる。
【0039】
排出側閉塞体120は、投入側閉塞体110と同様に、排出側開口部103を閉じるための部品であり、排出側開口部103を覆うことができる大きさの板状に形成されている。本実施形態においては、排出側閉塞体120は、金属製の板状態の両面に樹脂製の板状体を貼り付けて構成されている。この排出側閉塞体120は、試験室101における排出側開口部103が開口する側面の外側面に上下方向にスライド変位可能な状態で支持されている。より具体的には、排出側閉塞体120は、閉塞体駆動機構121によって支持されている。
【0040】
閉塞体駆動機構121は、閉塞体駆動機構111と同様に、排出側閉塞体120を排出側開口部103に対して上下方向にスライド変位させるための機械装置であり、主として、ガイド体122,上下動駆動装置123および連結具124をそれぞれ備えて構成されている。
【0041】
ガイド体122は、ガイド体112と同様に、排出側閉塞体120を上下方向に案内するとともに排出側閉塞体120を側面101bに押し付けるための部品である。具体的には、ガイド体122は、図示上下方向に延びる金属製の板状体に2つの長孔状の調整孔125aを直列に形成して構成されている。この場合、2つのガイド溝122aは、それぞれ上下方向に直線状に延びるとともに各下端部が側面101b側に屈曲した接近部122bを有して形成されている。
【0042】
これら2つのガイド溝112aは、排出側閉塞体120の両側面にそれぞれ2つずつ設けられたローラ120aが回転自在または摺動自在に嵌合する貫通孔である。そして、このガイド体122は、側面101bの外側面における排出側開口部103の両側にそれぞれ取り付けられている。すなわち、ガイド体122は、排出側閉塞体120に対して試験室101の幅方向において2つのガイド体122が一対で構成されている。
【0043】
したがって、ガイド体122は、ガイド体112と同様に、ローラ120aがガイド溝122a内における接近部122b以外の位置に位置している場合には排出側閉塞体120を側面101bに対して離隔した位置に位置するように案内する(図2参照)。また、ガイド体122は、ローラ120aがガイド溝122a内における接近部122bに位置している場合には排出側閉塞体120を側面101bに接近させて密着する位置に位置するように案内する。
【0044】
上下動駆動装置123は、上下動駆動装置113と同様に、排出側閉塞体120を上下方向に変位させるためのアクチュエータであり、制御装置160によって作動が制御される。本実施形態においては、上下動駆動装置123は、エアシリンダによって構成されている。この上下動駆動装置123は、試験室101の上面に取り付けられており、連結具124を介して排出側閉塞体120に連結されている。なお、上下動駆動装置123は、排出側閉塞体120を上下動させることができるアクチュエータで構成されていればよいため、エアシリンダ以外のアクチュエータ、例えば、油圧シリンダまたは電動機で構成することもできる。
【0045】
連結具124は、連結具114と同様に、上下動駆動装置123のピストンの先端部に対して排出側閉塞体120を回動自在に連結するヒンジ状の継手である。具体的には、連結具124は、上下動駆動装置123のピストンの先端部と排出側閉塞体120の上面とを回動自在に連結するヒンジ状に形成されている。これにより、連結具124は、排出側閉塞体120が下降して排出側開口部103を閉じる際に排出側閉塞体120を側面101b側に変位させるとともに、排出側閉塞体120が上昇して排出側開口部103を開口させる際に排出側閉塞体120を側面101bから離隔する側に変位することを許容する。また、排出側閉塞体120の下端部には、2つの搬送軸嵌合部125がそれぞれ形成されている。
【0046】
各搬送軸嵌合部125は、前記各搬送軸嵌合部115と同様に、排出側閉塞体120が下降して排出側開口部103を閉じる際に2つの搬送軸130に対する物理的な干渉を避けるための部分である。具体的には、各搬送軸嵌合部125は、各搬送軸130が入り込んで嵌合するように下方に向かって開口する逆U字状に形成されている。
【0047】
この場合、各搬送軸嵌合部125は、上端部部分が各搬送軸130の凸状の曲面形状に密着する凹状の曲面形状に形成されており、排出側閉塞体120が排出側開口部103を閉じた際における気密性の低下を抑制している。また、各搬送軸嵌合部125は、上下方向に延びて長孔状の調整孔125aが形成されており、この調整孔125aを貫通したボルト125bによって排出側閉塞体120に対して上下方向の位置が調整できるように構成されている。また、各搬送軸嵌合部125は、搬送軸130を逃げる形状に形成されていればどのような材料で構成してもよいが、樹脂材などの熱伝導率が低い材料で構成するとよい。また、各搬送軸嵌合部125は、排出側閉塞体120に取り付ける構成ではなく直接形成することもできる。
【0048】
搬送軸130は、被試験対象物WKを試験室101内に出し入れするための部品であり、試験室101の長手方向に延びる棒状に形成されている。この場合、搬送軸130は、試験室101を長手方向に貫通する長さに形成されている。また、搬送軸130は、本実施系形態においては、断面形状が円形の丸棒状に形成されている。この搬送軸130は、本体部131a,131b,131cと断熱部132a,132bとで構成されている。
【0049】
本体部131a~131cは、搬送軸130の剛性を確保する部分であり、金属製のパイプ材で構成されている。これらの本体部131a~131cのうち、本体部131aは主として試験室101の内部に配置される部分であり、本体部131aは主として試験室101に対して投入側開口部102の外側に配置される部分であり、本体部131bは主として試験室101に対して排出側開口部103の外側に配置される部分である。そして、これらの本体部131a~131cは、2つの断熱部132a,132bを介して連結されて一本の搬送軸130を構成している。
【0050】
断熱部132a,132bは、本体部131aと本体部131b,131cとの間で熱伝導を抑えるための部品であり、本体部131a~131cを構成する材料よりも熱伝導率が比較的低い材料で構成されている。本実施形態においては、断熱部132a,132bは、樹脂製のパイプ材で構成されている。これらの断熱部132a,132bは、断熱部132aが本体部131aと本体部131bとの間に配置されるとともに、断熱部132bが本体部131aと本体部131cとの間に配置される。すなわち、断熱部132aは試験室101における投入側開口部102に跨る位置に配置されるとともに、断熱部132bは試験室101における排出側開口部103に跨る位置に配置される。
【0051】
この搬送軸130は、試験室101内において一対で設けられた室内側ワーク支持体104よりも下方の位置に2つの搬送軸130が互いに平行に設けられている。この場合、2つの搬送軸130は、搬送軸受け105の上面に形成された2つの摺動嵌合部105aにそれぞれ嵌合している。すなわち、2つの搬送軸130は、室内側ワーク支持体104上を搬送される被試験対象物WKに対して接触しない位置に設けられている。この2つの搬送軸130の外周面上には、押し体133がそれぞれ形成されている。
【0052】
押し体133は、被試験対象物WKが載せられたワークパレット200を押すための部品であり、細い丸棒状のピンで構成されている。この場合、押し体133は、樹脂材などの熱伝導率が低い材料で構成するとよいし、剛性を重視して金属材料で構成することもできる。
【0053】
この押し体133は、各搬送軸130の外周面上に径方向外側に起立した状態で設けられている。この場合、押し体133は、上方に起立した状態で被試験対象物WKが載置されるワークパレット200の側面に接触する長さに形成されている。また、押し体133は、ワークパレット200の側面における押す部分に対してワークパレット200の搬送方向(押す方向)に対して下流側に設けられる。
【0054】
また、押し体133は、同時に搬送するワークパレット200の数に応じた数だけ設けられる。本実施形態においては、押し体133は、2つの搬送軸130にそれぞれ4つずつ形成されている。各搬送軸130は、排出側開口部103から張り出す側の端部が軸支持体134によって支持されている。
【0055】
軸支持体134は、2つの搬送軸130をそれぞれ軸線周りに回動自在な状態で支持する部品であり、金属材料を板状に形成して構成されている。この軸支持体134には、各搬送軸130のそれぞれ一方の端部が貫通しており、これらの貫通した各端部に連結した状態で回動機構135が取り付けられている。
【0056】
回動機構135は、各搬送軸130を軸線周りに回動させるための機械装置である。具体的には、回動機構135は、上下方向に往復変位するエアシリンダのピストンの先端部がヒンジ状の継手を介して搬送軸130に連結されて構成されている。すなわち、回動機構135は、エアシリンダのピストンが上下動することで搬送軸130を軸線周りに往復回動させることができる。
【0057】
これにより、押し体133は、図5に示すように、上方に起立した起立姿勢と、試験室101の幅方向で一対を構成する搬送軸130における各外側に傾斜した傾斜姿勢との2つの姿勢状態を選択的にとることができる。なお、一対の押し体133における傾斜姿勢は、一対の搬送軸130に対して少なくとも一方が内側に傾斜した姿勢であってもよいことは当然である。
【0058】
この回動機構135は、2つの搬送軸130ごとに設けられている。また、回動機構135を構成しているエアシリンダは、制御装置160によって作動が制御される。なお、回動機構135における搬送軸130を回動駆動するアクチュエータは、エアシリンダ以外のアクチュエータ、例えば、油圧シリンダまたは電動機で構成することもできる。軸支持体134は、進退機構136によって支持されている。
【0059】
進退機構136は、軸支持体134を試験室101の長手方向に沿って往復変位させるための機械装置である。本実施形態においては、進退機構136は、主として、ガイド137とアクチュエータ138とを備えたリニアガイドアクチュエータで構成されている。
【0060】
ガイド137は、軸支持体134を支持して試験室101の長手方向に沿って往復摺動自在に保持する部品である。具体的には、ガイド137は、試験室101の長手方向に沿って延びる送りネジ機構およびこの送りネジ機構を覆う筐体をそれぞれ備えている。ここで、送りネジ機構は、軸支持体134の上面に連結されてこの軸支持体134を試験室101の長手方向に沿って往復摺動自在に保持する。このガイド137は、環境試験装置100における図示しない支持部材によって支持されている。
【0061】
アクチュエータ138は、搬送軸130を搬送軸130の軸線方向(試験室101の長手方向)に沿って往復変位させるための駆動源である。より具体的には、アクチュエータ138は、ガイド137における送りネジ機構を駆動させるための電動機によって構成されている。このアクチュエータ138は、制御装置160によって作動が制御される。また、このアクチュエータ138は、ガイド137に支持部材によって支持されている。
【0062】
投入側ワーク支持体140は、試験室101に対して被試験対象物WKを案内するための部品である。具体的には、投入側ワーク支持体140は、断面形状がL字状に形成された一対の棒状体によって構成されており、これら2つの棒状体によって被試験対象物WKが載置されたワークパレット200を摺動自在に支持する。この投入側ワーク支持体140は、前記した室内側ワーク支持体104と同じ高さ位置に形成されている。
【0063】
この場合、投入側ワーク支持体140は、一方の端部が試験室101の投入側開口部102の直前の位置まで延びているが、室内側ワーク支持体104の先端部に対して離隔して連結されていない。一方、投入側ワーク支持体140における他方の端部側には、被試験対象物WKが載置されたワークパレット200を投入側ワーク支持体140上に供給するワーク供給装置(図示せず)が設けられている。この投入側ワーク支持体140は、脚部材を有しており、環境試験装置100が設置される床面上に設置されている。
【0064】
排出側ワーク支持体150は、試験室101から排出される被試験対象物WKを次工程に案内するための部品である。具体的には、排出側ワーク支持体150は、投入側ワーク支持体140と同様に、断面形状がL字状に形成された一対の棒状体によって構成されており、これら2つの棒状体によって被試験対象物WKが載置されたワークパレット200を摺動自在に支持する。この排出側ワーク支持体150は、前記した室内側ワーク支持体104および投入側ワーク支持体140と同じ高さ位置に形成されている。
【0065】
この場合、排出側ワーク支持体150は、一方の端部が試験室101の排出側開口部103の直前の位置まで延びているが、室内側ワーク支持体104の先端部に対して離隔して連結されていない。一方、排出側ワーク支持体150における他方の端部側には、被試験対象物WKが載置されたワークパレット200を次工程に供給するワーク排出装置(図示せず)が設けられている。この排出側ワーク支持体150は、脚部材を有しており、環境試験装置100が設置される床面上に設置されている。
【0066】
制御装置160は、CPU、ROM、RAMなどからなるマイクロコンピュータによって構成されており、上下動駆動装置113、上下動駆動装置123、回動機構135および進退機構136(アクチュエータ138)の各作動を制御する。また、制御装置160は、前記した冷却装置およびワーク試験装置の各作動も制御する。すなわち、制御装置160は、環境試験装置100の全体の作動を総合的に制御する。この場合、制御装置160は、作業者からの指示を入力するとともに制御装置160の作動状態を表示するための液晶のタッチディスプレイからなる操作パネル161を備えており、作業者からの支持に従って図示しない制御プログラムを実行することにより被試験対象物WKに対して環境試験を行う。
【0067】
なお、環境試験装置100は、電源から導入した電力を上下動駆動装置113、上下動駆動装置123、回動機構135、進退機構136(アクチュエータ138)、冷却装置、ワーク試験装置および制御装置160などの各種電気機器に供給するための電源部のほか、冷却装置内の霜取りを行うデフロスターなどを備えているが、これらについては、本発明に直接関わらないため、その説明は省略する。
【0068】
ワークパレット200は、試験室101内に対して出し入れする被試験対象物WKを安定的に保持するための部品であり、被試験対象物WKを載置可能な平板状に形成されている。このワークパレット200は、主として、本体部201、載置部202および受圧部203をそれぞれ備えて構成されている。
【0069】
本体部201は、前記した室内側ワーク支持体104、投入側ワーク支持体140および排出側ワーク支持体150にそれぞれ配置される部分であり、樹脂材料などの熱伝導率が低い材料を平板状に形成して構成されている。本実施形態においては、本体部201は、平面視で長方形状の貫通孔を有した長方形状の枠状体に形成されている。
【0070】
載置部202は、被試験対象物WKが載置されて支持する部分であり、本体部201の上面上に突出して形成されている。具体的には、載置部202は、被試験対象物WKの四隅がそれぞれ嵌まり込む凹部を備える樹脂製のブロック状に形成されており、本体部201の上面上に取り付けられている。
【0071】
受圧部203は、押し体133が押し付けられる部分であり、金属材料などの耐摩耗性を有する材料を板状に形成して構成されている。この受圧部203は、室内側ワーク支持体104、投入側ワーク支持体140および排出側ワーク支持体150にそれぞれ載置された本体部201における押し体133が押し付けられる位置にそれぞれ取り付けられている。
【0072】
(環境試験装置100の作動)
次に、上記のように構成した環境試験装置100の作動について図6ないし図12を参照しながら説明する。なお、図6ないし図12においては、環境試験装置100の作動説明に直接必要な構成のみ図示して作動説明に直接関らない構成については図示を適宜省略している。この環境試験装置100は、被試験対象物WKであるプリント配線基板の製造工場内における床面上に設置される。
【0073】
被試験対象物WKの環境試験を行う作業者は、環境試験装置100における図示しない電源スイッチをONにすることにより制御装置160を起動させる。これにより、制御装置160は、ROMなどの記憶装置に予め記憶された制御プログラムを実行することによって作動を開始して作業者からの指示を待つ待機状態となる。この場合、制御装置160は、試験室101を基本状態とする。ここで、基本状態とは、一対の搬送軸130における断熱部132aが投入側開口部102の真下の位置に位置するとともに断熱部132bが排出側開口部103の真下の位置に位置した状態で投入側閉塞体110および排出側閉塞体120がそれぞれ閉じられて試験室101が閉じられた閉状態である。
【0074】
まず、制御装置160は、上下動駆動装置113および上下動駆動装置123の各作動を制御して投入側閉塞体110および排出側閉塞体120をそれぞれ上昇させて投入側開口部102および排出側開口部103をそれぞれ開口するとともに、回動機構135の作動を制御して一対の搬送軸130における各押し体133を傾斜姿勢とする。次いで、制御装置160は、進退機構136(アクチュエータ138)の作動を制御して一対の搬送軸130を進退させることによって各搬送軸130における断熱部132aが投入側開口部102の真下の位置に位置するとともに断熱部132bが排出側開口部103の真下の位置に位置するように位置決めする。
【0075】
次いで、制御装置160は、上下動駆動装置113および上下動駆動装置123の各作動を制御して投入側閉塞体110および排出側閉塞体120をそれぞれ下降させて投入側開口部102および排出側開口部103をそれぞれ塞ぐ。この場合、投入側閉塞体110および排出側閉塞体120は、搬送軸嵌合部115,125がそれぞれ搬送軸130の上側半分に嵌合する。また、投入側閉塞体110および排出側閉塞体120は、ローラ110a,120aがそれぞれガイド溝112a,122aの下端部に形成された接近部112b,122bにそれぞれ案内されることで試験室101の側面101a,101bにそれぞれ強く押圧される。
【0076】
これらにより、試験室101は、図6に示すように、試験室101内の冷気の外部への漏れが抑制されて高い気密性が確保された閉状態となる。なお、試験室101の閉状態は、完全な気密状態であってもよいが、試験室101の内外で僅かな空気の流通を許容する気密性であってもよい。
【0077】
次に、作業者は、試験室101内を被試験対象物WKの環境試験を行う温度環境に設定する。具体的には、作業者は、操作パネル161を操作して制御装置160に対して試験室101内の温度を設定する。これにより、制御装置160は、冷却装置の作動を制御して試験室101内に冷却風を冷気として導入して試験室101内を冷却する。本実施形態においては、制御装置160は、試験室101内を-40℃に設定する。
【0078】
次に、作業者は、試験室101内が所定の温度環境に設定された場合には、試験室101に対して被試験対象物WKの供給を行う。具体的には、作業者は、操作パネル161を介して制御装置160に対して被試験対象物WKの環境試験のための一連の作動の開始を指示する。この指示に応答して、制御装置160は、ROMなどの記憶装置に予め記憶された制御プログラムを実行することによって作動を開始する。具体的には、制御装置160は、投入側ワーク支持体140に対する被試験対象物WKの供給を待つ。
【0079】
次に、作業者は、ワーク供給装置の作動を開始させて投入側ワーク支持体140に対する被試験対象物WKの供給を開始させる。この場合、ワーク供給装置は、図7(A)に示すように、被試験対象物WKが載置されたワークパレット200を投入側ワーク支持体140における被試験対象物WKの投入エリアE1に供給する。ここで、投入エリアE1は、投入側ワーク支持体140におけるワーク供給装置側の領域である。
【0080】
制御装置160は、投入側ワーク支持体140に対する被試験対象物WKの供給を図示しないセンサで検出した場合には、被試験対象物WKの試験室101内への位置決め処理を実行する。具体的には、制御装置160は、図7(B)に示すように、上下動駆動装置113および上下動駆動装置123の各作動を制御して投入側閉塞体110および排出側閉塞体120をそれぞれ上昇させて投入側開口部102および排出側開口部103をそれぞれ開口する。
【0081】
次いで、制御装置160は、図7(C)に示すように、回動機構135の作動を制御して一対の搬送軸130における各押し体133を起立姿勢とした後、進退機構136(アクチュエータ138)の作動を制御して搬送軸130を試験室101側に変位させる。これにより、投入側ワーク支持体140上に載置されたワークパレット200は、一対の押し体133が受圧部203を押すことで投入側ワーク支持体140上を滑って試験室101側に変位する。
【0082】
この場合、ワークパレット200は、投入側開口部102の前後の領域で投入側ワーク支持体140から室内側ワーク支持体104上に乗り移る。また、制御装置160は、図8(A)に示すように、ワークパレット200を試験室101内における環境試験を行う所定の試験エリアE2に位置決めするように進退機構136(アクチュエータ138)の作動を制御する。これにより、ワークパレット200は、試験室101内における環境試験を行う試験エリアE2に位置決めされる。
【0083】
次に、制御装置160は、回動機構135の作動を制御して一対の搬送軸130における各押し体133を傾斜姿勢とする。次いで、制御装置160は、進退機構136(アクチュエータ138)の作動を制御して搬送軸130をワーク供給装置側に変位させる。この場合、制御装置160は、搬送軸130における断熱部132aが投入側開口部102の真下の位置に位置するとともに断熱部132bが排出側開口部103の真下の位置に位置するように進退機構136(アクチュエータ138)の作動を制御する。
【0084】
そして、制御装置160は、上下動駆動装置113および上下動駆動装置123の各作動を制御して投入側閉塞体110および排出側閉塞体120をそれぞれ下降させて投入側開口部102および排出側開口部103をそれぞれ塞ぐ。すなわち、環境試験装置100は、投入側閉塞体110および排出側閉塞体120がそれぞれ開いている時間を最小限に抑えて試験室101内の冷気の漏出および湿気の進入を抑えることができる。これにより、試験室101は、試験室101内の冷気の外部への漏れが抑制されて高い気密性が確保された閉状態となる。
【0085】
次に、制御装置160は、ワーク試験装置の作動を制御して被試験対象物WKに対して環境試験を実行する。ここで、環境試験は、-40℃の雰囲気中における被試験対象物WKの電気的な作動内容を確認するものである。この環境試験は、被試験対象物WKの仕様に応じて適宜試験内容が設定されるものであるとともに公知のものであるため、その説明は省略する。
【0086】
次に、制御装置160は、被試験対象物WKの環境試験が終了した場合には、試験室101内から被試験対象物WKを取り出す。具体的には、制御装置160は、図8(B)に示すように、上下動駆動装置113および上下動駆動装置123の各作動を制御して投入側閉塞体110および排出側閉塞体120をそれぞれ上昇させて投入側開口部102および排出側開口部103をそれぞれ開口する。なお、この場合、投入エリアE1には、試験室101内の被試験対象物WKの環境試験中に新たな被試験対象物WKが供給されている。
【0087】
次いで、制御装置160は、回動機構135の作動を制御して一対の搬送軸130における各押し体133を起立姿勢とした後、進退機構136(アクチュエータ138)の作動を制御して搬送軸130をワーク排出装置側に変位させる。これにより、室内側ワーク支持体104上に載置されたワークパレット200は、一対の押し体133が受圧部203を押すことで室内側ワーク支持体104上を滑って排出側開口部103側に変位する。
【0088】
この場合、ワークパレット200は、排出側開口部103の前後の領域で室内側ワーク支持体104から排出側ワーク支持体150上に乗り移る。また、制御装置160は、ワークパレット200を排出側ワーク支持体150上におけるワーク排出御装置によるワークパレット200の把持位置に位置決めするように進退機構136(アクチュエータ138)の作動を制御する。これにより、ワークパレット200は、図8(C)に示すように、排出側ワーク支持体150上におけるワーク排出御装置によるワークパレット200の把持位置である排出エリアE3に位置決めされる。この場合、投入エリアE1に配置されたワークパレット200は、試験室101内における試験エリアE2の直前の待機エリアE4に位置決めさる。
【0089】
次に、制御装置160は、回動機構135の作動を制御して一対の搬送軸130における各押し体133を傾斜姿勢とする。次いで、制御装置160は、進退機構136(アクチュエータ138)の作動を制御して搬送軸130をワーク供給装置側に変位させる。この場合、搬送軸130は、各押し体133が傾斜姿勢となっているため、室内側ワーク支持体104および排出側ワーク支持体150にそれぞれ載置されているワークパレット200を変位させることはない。
【0090】
そして、制御装置160は、図9(A)に示すように、搬送軸130における断熱部132aが投入側開口部102の真下の位置に位置するとともに断熱部132bが排出側開口部103の真下の位置に位置するように進退機構136(アクチュエータ138)の作動を制御する。これにより、投入エリアE1に新たな被試験対象物WKを配置できる状態となる。したがって、制御装置160は、図9(B)に示すように、投入エリアE1にワーク供給装置によって直ちに新たなワークパレット200が配置されると、回動機構135の作動を制御して搬送軸130における各押し体133を起立姿勢とした後、進退機構136(アクチュエータ138)の作動を制御して搬送軸130をワーク排出装置側に変位させる。
【0091】
すなわち、制御装置160は、図9(C)に示すように、投入エリアE1に存在するワークパレット200を待機エリアE4に移送するとともに、待機エリアE4に存在するワークパレット200を試験エリアE2に移送する。次いで、制御装置160は、図10に示すように、回動機構135の作動を制御して搬送軸130における各押し体133を傾斜姿勢とした後、進退機構136(アクチュエータ138)の作動を制御して搬送軸130をワーク供給装置側に変位させる。この場合、制御装置160は、搬送軸130における断熱部132aが投入側開口部102の真下の位置に位置するとともに断熱部132bが排出側開口部103の真下の位置に位置するように進退機構136(アクチュエータ138)の作動を制御する。
【0092】
そして、制御装置160は、上下動駆動装置113および上下動駆動装置123の各作動を制御して投入側閉塞体110および排出側閉塞体120をそれぞれ下降させて試験室101を閉状態とした後、試験エリアE2内の被試験対象物WKの環境試験を実行する。一方、空になった投入エリアE1においては、ワーク供給装置によって新たなワークパレット200が供給される。また、排出エリアE3においては、ワーク排出装置によって環境試験が実行された被試験対象物WKを載置するワークパレット200が排出側ワーク支持体150から取り除かれる。排出側ワーク支持体150から取り除かれた被試験対象物WKは、次の工程に案内される。
【0093】
この後、制御装置160は、試験エリアE2内の被試験対象物WKの環境試験を実行するごとに投入エリアE1へのワークパレット200の供給、投入エリアE1内のワークパレット200の待機エリアE4への移送、待機エリアE4内のワークパレット200の試験エリアE2への移送、試験エリアE2内の排出エリアE3への移送および排出エリア内のワークパレット200の除去の各作業を実行する。これにより、制御装置160は、被試験対象物WKを断続的に試験室101内に供給して環境試験を行うことができる。
【0094】
上記作動説明からも理解できるように、上記実施形態によれば、被試験対象物WKを押す押し体133を支持する搬送軸130が回動機構135によって軸線周りに回動するとともに進退機構136(アクチュエータ138)によって投入側開口部102および排出側開口部103に対してそれぞれ進退するため、試験室101内に対して被試験対象物WKを迅速に出し入れすることができる。特に、低温試験を行う環境試験装置100においては、試験室101内の冷気の漏出および試験室101内への湿気の進入の抑制は試験作業の効率および試験精度を大幅に向上させることができる。
【0095】
さらに、本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて種々の変更が可能である。
【0096】
例えば、上記実施形態においては、試験室101は、投入側開口部102および排出側開口部103をそれぞれ備えて、被試験対象物WKが試験室101内を一方向に通過するように構成した。すなわち、投入側開口部102および排出側開口部103は、本発明における出し入れ口に相当する。しかし、試験室101は、1つの開口部で構成された出し入れ口を介して被試験対象物WKを出し入れするように構成することもできる。この場合、出し入れ口が1つであるため、投入側閉塞体110および排出側閉塞体120は、1つの出し入れ口を開閉する1つの閉塞体で構成することができる。また、この場合、搬送軸130は、試験室101に対して往復変位することでワークパレット200を出し入れするため、ワークパレット200に対して搬送軸130の往復変位方向の両側にワークパレット200を挟むように押し体133を設けるとよい。
【0097】
また、上記実施形態においては、環境試験装置100は、室内側ワーク支持体104、投入側ワーク支持体140および排出側ワーク支持体150を備えてワークパレット200を支持するように構成した。しかし、環境試験装置100は、室内側ワーク支持体104、投入側ワーク支持体140および排出側ワーク支持体150を省略して搬送軸130によって直接ワークパレット200を支持するように構成することもできる。この場合、ワークパレット200は、搬送軸130と常に一体的に往復変位することになる。また、搬送軸130は、軸線周りに回転する場合にはワークパレット200に対して摺動することになる。
【0098】
また、上記実施形態においては、室内側ワーク支持体104、投入側ワーク支持体140および排出側ワーク支持体150は、投入側開口部102および排出側開口部103の前後にそれぞれ配置して互いに非連結状態で構成した。しかし、室内側ワーク支持体104、投入側ワーク支持体140および排出側ワーク支持体150は、一体的に連結して1つのワーク支持体として構成することもできる。この場合、投入側閉塞体110および排出側閉塞体120は、一体化したワーク支持体との物理的な干渉を避けるために搬送軸嵌合部115,125のような凹状の嵌合部を設けるとよい。
【0099】
また、上記実施形態においては、搬送軸130は、ワークパレット200に対して非接触の配置関係で構成した。これにより、環境試験装置100は、搬送軸130の移動に伴ってワークパレット200の位置が変化することを防止することができ、被試験対象物WKの搬送精度および環境試験の精度を向上させることができる。しかし、搬送軸130は、ワークパレット200に対して接触する配置関係で構成することもできる。
【0100】
また、上記実施形態においては、環境試験装置100は、ワークパレット200の幅方向に2つの搬送軸130を備えて構成した。これにより、環境試験装置100は、ワークパレット200を搬送方向に対して安定的に搬送することができる。しかし、環境試験装置100は、少なくとも1つの搬送軸130を備えて構成されていればよい。なお、環境試験装置100は、少なくとも2つ以上の搬送軸130を備えて構成することでワークパレット200の搬送の安定性を向上させることができる。
【0101】
また、上記実施形態においては、搬送軸130は、3つの本体部131a,131b,131cと2つの断熱部132a,132bとで構成した。この場合、断熱部132a,132bは、本体部131a~131cを構成する材料(金属材)よりも熱伝導率が低い材料(樹脂材)で構成されている。このため、搬送軸130は、試験室101の内部と外部との間で熱の移動を抑えることができ、環境試験の精度を効率的に向上させることができる。しかし、搬送軸130は、金属材料または樹脂材料などの1つの材料で一体的な一つの棒状に形成することもできる。
【0102】
また、上記実施形態においては、試験室101は、投入側閉塞体110および排出側閉塞体120を備えて開閉自在に構成した。しかし、試験室101は、投入側閉塞体110および排出側閉塞体120をそれぞれ省略して常に開口した状態で構成することもできる。
【0103】
また、上記実施形態においては、投入側閉塞体110および排出側閉塞体120は、上下方向に変位する板状に形成されている。しかし、投入側閉塞体110および排出側閉塞体120は、水平方向にスライド変位するように構成されていてもよいし、投入側閉塞体110および排出側閉塞体120における各一辺を回動中心として扉のように開閉するように構成することもできる。また、投入側閉塞体110および排出側閉塞体120は、金属材料のみまたは樹脂材料のみなど単一の材料で構成することができるほか、1つまたは複数のシート体で構成することもできる。
【0104】
また、上記実施形態においては、投入側閉塞体110および排出側閉塞体120は、搬送軸嵌合部115,125をそれぞれ備えて構成した。これにより、投入側閉塞体110および排出側閉塞体120は、投入側開口部102および排出側開口部103から搬送軸130を撤去することなく搬送軸130が投入側開口部102および排出側開口部103にそれぞれ跨った状態で投入側閉塞体110および排出側閉塞体120を開閉することができ、被試験対象物WKの出し入れ作業を効率的に行うことができる。しかし、投入側閉塞体110および排出側閉塞体120は、搬送軸嵌合部115,125をそれぞれ省略して構成することもできる。この場合、投入側閉塞体110および排出側閉塞体120は、下端部が搬送軸130に接触した状態または接触する直前の位置まで閉じることができる。また、投入側閉塞体110および排出側閉塞体120は、搬送軸130に接触することで弾性変形する材料で構成することもできる。
【0105】
また、上記実施形態においては、回動機構135は、押し体133を搬送軸130の軸線周りに往復回動させるように構成した。しかし、回動機構135は、押し体133を搬送軸130の軸線周りの一方向に回転させて回動させることもできる。
【0106】
また、上記実施形態においては、進退機構136は、リニアガイドアクチュエータによって構成されている。しかし、進退機構136は、搬送軸130を被試験対象物WKの搬送方向に往復変位させることできるように構成されていればよい。したがって、進退機構136は、送りネジ機構に代えて、ベルト送り機構、リニアガイド送り機構、エアシリンダまたは油圧シリンダなどによって構成することができる。
【0107】
また、上記実施形態においては、環境試験装置100は、被試験対象物WKをワークパレット200上に載置して搬送および環境試験を行うように構成した。しかし、環境試験装置100は、被試験対象物WKをワークパレット200を用いることなく直接搬送および環境試験を行うように構成することもできる。
【0108】
また、上記実施形態においては、環境試験装置100は、被試験対象物WKを-40℃の雰囲気で環境試験を行うように構成した。しかし、環境試験装置100は、被試験対象物WKを高温の雰囲気で環境試験を行うように構成してもよいし、温度環境以外の環境、例えば、湿度、圧力および気体の濃度のうちの少なくとも一つの環境での試験を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0109】
WK…被試験対象物、E1…投入エリア、E2…試験エリア、E3…排出エリア、E4…待機エリア、
100…環境試験装置、101…試験室、101a,101b,101c,101d…側面、102…投入側開口部、103…排出側開口部、104…室内側ワーク支持体、105…搬送軸受け、105a…摺動嵌合部、
110…投入側閉塞体、110a…ローラ、111…閉塞体駆動機構、112…ガイド体、112a…ガイド溝、112b…接近部、113…上下動駆動装置、114…連結具、115…搬送軸嵌合部、115a…調整孔、115b…ボルト、
120…排出側閉塞体、120a…ローラ、121…閉塞体駆動機構、122…ガイド体、122a…ガイド溝、122b…接近部、123…上下動駆動装置、124…連結具、125…搬送軸嵌合部、125a…調整孔、125b…ボルト、
130…搬送軸、131a,131b,131c…本体部、132a,132b…断熱部、133…押し体、134…軸支持体、135…回動機構、136…進退機構、137…ガイド、138…アクチュエータ、
140…投入側ワーク支持体、
150…排出側ワーク支持体、
160…制御装置、161…操作パネル、
200…ワークパレット、201…本体部、202…載置部、203…受圧部。
図1
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図10