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  • 特開-スプレーノズル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161164
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】スプレーノズル
(51)【国際特許分類】
   B05B 15/68 20180101AFI20231030BHJP
   B22D 17/20 20060101ALI20231030BHJP
   B22C 23/02 20060101ALI20231030BHJP
   B05B 1/34 20060101ALN20231030BHJP
【FI】
B05B15/68
B22D17/20 D
B22C23/02 D
B05B1/34 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071344
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】315007433
【氏名又は名称】株式会社エーユー
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】青木 文吾
【テーマコード(参考)】
4D073
4E094
4F033
【Fターム(参考)】
4D073AA01
4D073BB03
4D073CB23
4E094CC56
4F033AA01
4F033BA03
4F033DA01
4F033EA01
4F033KA02
4F033LA12
4F033NA01
(57)【要約】
【課題】 噴霧発生機能を有すると共に噴射方向を任意に可変でき、小型化が可能なスプレーノズルを提供すること。
【解決手段】 金型内の流体流路に接続された取り付け穴に取り付け可能で貫通孔2aを有する継手部2と、継手部の貫通孔内に挿入された状態で基端部が継手部に固定され先端側が任意の角度に曲げ可能で曲げた状態を保持可能なフレキシブル管3と、フレキシブル管の先端部に固定され流体の噴霧発生機能を有したノズル先端部4とを備えている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型内の流体流路に接続された取り付け穴に取り付け可能で貫通孔を有する継手部と、
前記継手部の貫通孔内に挿入された状態で基端部が前記継手部に固定され先端側が任意の角度に曲げ可能で曲げた状態を保持可能なフレキシブル管と、
前記フレキシブル管の先端部に固定され流体の噴霧発生機能を有したノズル先端部とを備えていることを特徴とするスプレーノズル。
【請求項2】
請求項1に記載のスプレーノズルにおいて、
前記フレキシブル管の基端部を固定している部分以外の前記貫通孔の内径が、前記フレキシブル管の直径よりも大きく設定され、少なくとも前記フレキシブル管の先端側と前記継手部との間に前記フレキシブル管が曲げ可能な可動用空間が形成されていることを特徴とするスプレーノズル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスプレーノズルにおいて、
前記貫通孔が、前記継手部の先端部内で先端側に向けて内径が漸次大きく設定されたテーパ部を有していることを特徴とするスプレーノズル。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のスプレーノズルにおいて、
前記フレキシブル管が、銅管であることを特徴とするスプレーノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイカスト等に用いる金型に離型剤等を塗布・噴射するためのスプレーノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ダイカスト鋳造や射出成形等に用いられる金型には、離型剤を噴霧して塗布するスプレーノズルが使用されている。
このスプレーノズルには、ロボットヘッドに装着するものや、金型に埋め込んで使用するものがある。この金型埋込型スプレーノズルは、特に省スペースが求められ、小型化が要望されている。
【0003】
従来、金型の決められた狭いスペース内にスプレーノズルを設置するためには、以下の様な場合がある。
例えば、ノズルの噴射角度可変機構(ボールジョイント等)を省略した小型の固定スプレーノズルを使用する場合、噴射角度可変機構の部分のみを金型に埋め込み、噴霧発生機構の部分を別置きにしたシステムの場合等が知られている。
【0004】
また、噴霧角度可変機構としてボールジョイントを用いたスプレーノズルには、例えば以下の様なものが知られている。
特許文献1には、ノズル先端部がボールジョイントのような球面座で形成されて首振り自在に設置されたスプレーノズルが記載されている。また、特許文献1には、ノズル先端部が動くものではなくても、スプレーユニットの向きを調整可能な銅パイプ式のスプレーノズルでも適用可能な点についても記載がある。なお、これら特許文献1のスプレーノズル自体には、噴霧発生機構を内蔵していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-179145号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の技術において、以下の課題が残されている。
すなわち、ボールジョイントを採用したスプレーノズルでは、ボールジョイントが追加されると共にボール径が大きいため、小型化が難しく、外径が大きくなってしまうと共に、金型取付面からノズル先端までの距離が大きくなってしまう不都合があった。また、噴射角度可変機構の部分のみを金型に埋め込み、噴霧発生機構の部分を別置きにした従来の技術では、別置きで噴霧発生機構の部分を設置する必要があり、設置スペースが必要なことやスプレーされた離型剤粒子が大きくなる傾向があるなどの問題があった。なお、先端に曲げ易い銅管を用いてスプレーユニットの向きを調整する従来の銅パイプ式のスプレーノズルでも、金型に埋め込んで使用するようなサイズにコンパクト化することや、細かな離型剤粒子をスプレーすることが困難であった。
なお、噴射角度可変機構である従来のボールジョイントを用いたスプレーノズル101に対し、噴霧発生機構を組み合わせたものを考えると、例えば図2に示すように、金型に埋め込まれる継手部102と、継手部102の貫通孔102a内に設けられた球面座であるボールジョイント部103と、ボールジョイント部103の先端に取り付けられ流体を旋回させる旋回子105が収納され先端にオリフィス部104aを有して流体を噴霧可能なノズル先端部104とを備えたものとなる。この場合でも、ボールジョイント部103があるために、やはり外径が大きく、また躯金型取付面からノズル先端までの距離が大きくなってしまい、小型化が困難である。
【0007】
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたもので、噴霧発生機能を有すると共に噴射方向を任意に可変でき、小型化が可能なスプレーノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係るスプレーノズルは、金型内の流体流路に接続された取り付け穴に取り付け可能で貫通孔を有する継手部と、前記継手部の貫通孔内に挿入された状態で基端部が前記継手部に固定され先端側が任意の角度に曲げ可能で曲げた状態を保持可能なフレキシブル管と、前記フレキシブル管の先端部に固定され流体の噴霧発生機能を有したノズル先端部とを備えていることを特徴とする。
【0009】
このスプレーノズルでは、継手部の貫通孔内に挿入された状態で基端部が継手部に固定され先端側が任意の角度に曲げ可能で曲げた状態を保持可能なフレキシブル管と、フレキシブル管の先端部に固定され流体の噴霧発生機能を有したノズル先端部とを備えているので、フレキシブル管を曲げることで、噴霧発生機能を有したノズル先端部自体の向きを任意に変えることができ、噴射角度を可変することができる。
また、ボールジョイントを内蔵しない噴霧機能一体型の噴射方向可変スプレーノズルであるため、金型取付面からノズル先端までの距離を短縮することができると共に外径も小さくでき、省スペース化及び小型化が可能である。
なお、フレキシブル管を短くしても先端側が曲げ可能であるため、噴霧発生機能を有したノズル先端部と共に先端側の向きを変えることができる。
さらに、向きが可変なノズル先端部が噴霧発生機構を有しているので、流体として離型剤の細かな粒子を任意の方向にスプレーすることが可能になる。
【0010】
第2の発明に係るスプレーノズルは、第1の発明において、前記フレキシブル管の基端部を固定している部分以外の前記貫通孔の内径が、前記フレキシブル管の直径よりも大きく設定され、少なくとも前記フレキシブル管の先端側と前記継手部との間に前記フレキシブル管が曲げ可能な可動用空間が形成されていることを特徴とする。
すなわち、このスプレーノズルでは、フレキシブル管の基端部を固定している部分以外の貫通孔の内径が、フレキシブル管の直径よりも大きく設定され、少なくともフレキシブル管の先端側と継手部との間にフレキシブル管が曲げ可能な可動用空間が形成されているので、フレキシブル管を可動用空間内で曲げた際に、継手部の貫通孔内径(可動用空間の外径)により曲げ角度の範囲が制限されることで、必要以上にフレキシブル管を曲げてしまい損傷等が生じることを抑制することができる。
【0011】
第3の発明に係るスプレーノズルは、第1又は第2の発明において、前記貫通孔が、前記継手部の先端部内で先端側に向けて内径が漸次大きく設定されたテーパ部を有していることを特徴とする。
すなわち、このスプレーノズルでは、貫通孔が、継手部の先端部内で先端側に向けて内径が漸次大きく設定されたテーパ部を有しているので、貫通孔の先端部を矩形状に掘り込んだ場合に比べて、テーパ部の方が継手部の先端部の肉厚を多くでき、継手部の強度を維持することができる。
また、フレキシブル管の先端部を大きく曲げてもフレキシブル管とテーパ部とが面接触又は線接触して点接触し難くなる。このため、噴射時の振動によってフレキシブル管とテーパ部とが点接触を繰り返すことで、フレキシブル管に局所的な損傷等が生じることを抑制することができる。
【0012】
第4の発明に係るスプレーノズルは、第1又は第2の発明において、前記フレキシブル管が、銅管であることを特徴とする。
すなわち、このスプレーノズルでは、フレキシブル管が、銅管であるので、銅管(特に、なまし銅管)が比較的曲げ易いと共に、任意の噴射角度で安定した曲げ状態を保持することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明のスプレーノズルによれば、継手部の貫通孔内に挿入された状態で基端部が継手部に固定され先端側が任意の角度に曲げ可能で曲げた状態を保持可能なフレキシブル管と、フレキシブル管の先端部に固定され流体の噴霧発生機能を有したノズル先端部とを備えているので、フレキシブル管を曲げることで、噴霧発生機能を有したノズル先端部自体の向きを任意に変えることができ、噴射角度を可変することができると共に、ボールジョイントを内蔵しない噴霧機能一体型の噴射方向可変スプレーノズルであるため、省スペース化及び小型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係るスプレーノズルの一実施形態を示す断面図(a),斜視図(b)及び側面図(c)である。
図2】ボールジョイント部と噴霧発生機構とを単に組み合わせたスプレーノズルの例を示す断面図(a),斜視図(b)及び側面図(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明におけるスプレーノズルの一実施形態を、図1に基づいて説明する。
【0016】
本実施形態におけるスプレーノズル1は、図1に示すように、金型内の離型剤等の流体流路に接続された取り付け穴(図示略)に取り付け可能で貫通孔2aを有する継手部2と、継手部2の貫通孔2a内に挿入された状態で基端部が継手部2の基端部2bに固定され先端側が任意の角度に曲げ可能で曲げた状態を保持可能なフレキシブル管3と、フレキシブル管3の先端部に固定され流体の噴霧発生機能を有したノズル先端部4とを備えている。
【0017】
フレキシブル管3の基端部を固定している部分以外の貫通孔2aの内径は、フレキシブル管3の直径よりも大きく設定され、少なくともフレキシブル管3の先端側と継手部2との間にフレキシブル管3が曲げ可能な可動用空間Sが形成されている。
上記貫通孔2aは、継手部2の先端部内で先端側に向けて内径が漸次大きく設定されたテーパ部2cを有している。
【0018】
上記フレキシブル管3は、銅管である。本実施形態では、フレキシブル管3として曲がり易いなまし銅管を採用している。
上記ノズル先端部4は、基端がフレキシブル管3の先端に接続されていると共に先端の開口径が基端側よりも小さく設定されたオリフィス部4aとなった噴射孔4bを有している。
また、ノズル先端部4は、噴射孔4b内に流体を旋回させる旋回子5が挿入されている。
【0019】
ノズル先端部4は、フレキシブル管3の先端に取付用ナット部6を介して接続されている。
すなわち、取付用ナット部6の基端側に挿入されたフレキシブル管3の先端部と取付用ナット部6とは、ロウ付け等で固定されており、取付用ナット部6の先端側に形成された雌ねじ孔に、ノズル先端部4の基端部外周に形成された雄ねじ部を螺着させてノズル先端部4を取り付けている。
【0020】
なお、上記フレキシブル管3の基端部は、継手部2の基端部2bにロウ付け等で固定されている。
上記テーパ部2cは、内周面の傾斜角度θが中心軸Cに対して±45°に形成されている。なお、フレキシブル管3は、太さや柔軟性に応じて、上記テーパ部2cの傾斜角度θ内で曲げ可能であるが、本実施形態では、中心軸Cに対して±12°の範囲で曲げ可能に設定されている。
なお、取付用ナット部6は、基端側外周面がテーパ部2cの傾斜した内周面形状に対応してテーパ状に形成されている。
【0021】
上記継手部2は、ブッシングであり、基端側外周面には、金型の取り付け穴内に形成された雌ねじ部に螺着可能な雄ねじ部2dが形成されている。
なお、継手部2,取付用ナット部6及びノズル先端部4は、例えば真鍮やステンレスで形成されている。
上記旋回子5は、いわゆる中子といわれる整流子であって、X形ワーラー等の既知のものが採用可能である。
【0022】
このように本実施形態のスプレーノズル1では、継手部2の貫通孔2a内に挿入された状態で基端部が継手部2に固定され先端側が任意の角度に曲げ可能で曲げた状態を保持可能なフレキシブル管3と、フレキシブル管3の先端部に固定され流体の噴霧発生機能を有したノズル先端部4とを備えているので、フレキシブル管3を曲げることで、噴霧発生機能を有したノズル先端部4自体の向きを任意に変えることができ、噴射角度を可変することができる。
【0023】
また、本実施形態のスプレーノズル1は、ボールジョイントを内蔵しない噴霧機能一体型の噴射方向可変スプレーノズルであるため、金型取付面からノズル先端までの距離を短縮することができると共に外径も小さくでき、省スペース化及び小型化が可能である。
例えば、本実施形態のスプレーノズル1では、ボールジョイントを採用し同等の噴射性能を持つ噴射角度可変機構付きのスプレーノズルに比べて、金型取付面からノズル先端までの距離が約2/3に短縮可能である。
【0024】
なお、フレキシブル管3を短くしても先端側が曲げ可能であるため、噴霧発生機能を有したノズル先端部4と共に先端側の向きを変えることができる。
特に、フレキシブル管3が、銅管であるので、銅管(特に、なまし銅管)が比較的曲げ易いと共に、任意の噴射角度で安定した曲げ状態を保持することができる。
さらに、向きが可変なノズル先端部4が噴霧発生機構を有しているので、離型剤の細かな粒子を任意の方向にスプレーすることが可能になる。
【0025】
また、フレキシブル管3の基端部を固定している部分以外の貫通孔2aの内径が、フレキシブル管3の直径よりも大きく設定され、少なくともフレキシブル管3の先端側と継手部2との間にフレキシブル管3が曲げ可能な可動用空間Sが形成されているので、フレキシブル管3を可動用空間S内で曲げた際に、継手部2の貫通孔2a内径(可動用空間Sの外径)により曲げ角度の範囲が制限されることで、必要以上にフレキシブル管3を曲げてしまい損傷等が生じることを抑制することができる。
【0026】
また、貫通孔2aが、継手部2の先端部内で先端側に向けて内径が漸次大きく設定されたテーパ部2cを有しているので、貫通孔2aの先端部を矩形状に掘り込んだ場合に比べて、テーパ部2cの方が継手部2の先端部の肉厚を多くでき、継手部2の強度を維持することができる。
また、フレキシブル管3の先端部を大きく曲げてもフレキシブル管3とテーパ部2cとが面接触又は線接触して点接触し難くなる。このため、噴射時の振動によってフレキシブル管3とテーパ部2cとが点接触を繰り返すことで、フレキシブル管3に局所的な損傷等が生じることを抑制することができる。
【0027】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、フレキシブル管として銅管を採用しているが、曲げ状態を保持可能な管であれば、他のものを採用しても構わない。例えば、フレキシブル管として、アルミニウム管や、線材を織り込んだフレキシブルチューブ等が採用可能である。
【符号の説明】
【0028】
1…スプレーノズル、2…継手部、2a…貫通孔、2c…テーパ部、3…フレキシブル管、4…ノズル先端部、4a…オリフィス部、4b…噴射孔、S…可動用空間
図1
図2