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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161171
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】ハット型断面部品のプレス金型
(51)【国際特許分類】
   B21D 22/26 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
B21D22/26 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071355
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 義則
【テーマコード(参考)】
4E137
【Fターム(参考)】
4E137AA05
4E137AA11
4E137BA01
4E137BB01
4E137BC01
4E137CA09
4E137EA03
4E137EA06
4E137GA03
4E137GB03
4E137HA06
(57)【要約】
【課題】縦壁部に生じるスプリングバック等を低減させ、ロッキング機構付きダイクッション装置を用いることなく、曲げ成形後の縦壁部の変形を回避しつつ、生産性を向上できるハット型断面部品のプレス金型を提供する。
【解決手段】固定ポンチ11と可動ポンチ12とを有するポンチ型1と、曲げ刃21とパッド22とを有するダイ型2とを備え、ポンチ型とダイ型とが近接して鋼板をハット断面形状に曲げ成形し、可動ポンチが近接位置から離間位置へ移動するとき縦壁部に張力を付加するプレス金型10である。可動ポンチとパッドとの相対距離を制御する距離制御機構3を備え、可動ポンチが離間位置へ移動するまでに第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とを当接させて離間位置にて相対距離を所定距離に固定させ、曲げ成形完了後に、パッドが天頂部M1から離間する際に、第1ブロック部材と第2ブロック部材とを上下方向で分離させる。
【選択図】 図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
型台に固定されコの字状断面形状に形成された天頂成形部と縦壁成形部とを有する固定ポンチと、前記縦壁成形部の先端側で板外側へステップ状に突出する凸成形部とフランジ成形部とを有し前記固定ポンチと近接する近接位置と前記固定ポンチと離間する離間位置との間で上下動可能に形成された可動ポンチと、前記型台に支持され前記可動ポンチを前記固定ポンチ側へ加圧する加圧ユニットとを有するポンチ型と、
前記凸成形部に対向して形成された凹成形部を有する曲げ刃と、当該曲げ刃の内周側に配置され鋼板を前記天頂成形部に押圧可能に形成されたパッドとを有するダイ型とを備え、
前記可動ポンチが前記近接位置に移動した状態で、前記ポンチ型と前記ダイ型とが、近接して鋼板を天頂部とその両側に起立する縦壁部とを備えたハット断面形状に曲げ成形すると共に、前記曲げ刃と前記可動ポンチとが、前記縦壁部の先端部をステップ形状部に曲げ成形し、
前記曲げ刃と前記可動ポンチとが、前記ステップ形状部を把持した状態で、前記可動ポンチが前記曲げ刃に押されて前記近接位置から前記離間位置へ移動するときに、前記縦壁部に対して縦方向の張力を付加して曲げ成形を完了するように形成されたハット型断面部品のプレス金型であって、
前記ポンチ型には、前記可動ポンチと前記パッドとの上下方向の相対距離を制御する第1ブロック部材と第2ブロック部材とを有する距離制御機構を備え、
前記距離制御機構は、
前記第1ブロック部材と前記第2ブロック部材とが上下方向で分離した状態では、前記相対距離を規制せず、
前記可動ポンチが、前記曲げ刃に押されて前記近接位置から前記離間位置へ移動するまでに前記第1ブロック部材と前記第2ブロック部材とを上下方向で当接させて前記離間位置にて前記相対距離を所定距離に固定させ、曲げ成形完了後に、前記加圧ユニットに押されて前記離間位置から前記近接位置へ移動するまで、前記第1ブロック部材と前記第2ブロック部材とが上下方向で当接した状態を維持させ、
前記パッドが前記天頂部から離間する際に、前記第1ブロック部材と前記第2ブロック部材とを上下方向で分離させることを特徴とするハット型断面部品のプレス金型。
【請求項2】
請求項1に記載されたハット型断面部品のプレス金型において、
前記第1ブロック部材は、前記パッドに押されて上下方向へ移動可能に前記固定ポンチに支持され、
前記第2ブロック部材は、倒伏位置と起立位置との間で回動可能に前記可動ポンチに支持され、前記倒伏位置にて前記第1ブロック部材と上下方向で離間し、前記起立位置にて前記第1ブロック部材と上下方向で当接することを特徴とするハット型断面部品のプレス金型。
【請求項3】
請求項2に記載されたハット型断面部品のプレス金型において、
前記固定ポンチには、前記可動ポンチが前記曲げ刃に押されて前記近接位置から前記離間位置へ移動するときに、前記第2ブロック部材を前記倒伏位置から前記起立位置へ回動させる第1カム部を備えていることを特徴とするハット型断面部品のプレス金型。
【請求項4】
請求項3に記載されたハット型断面部品のプレス金型において、
前記固定ポンチには、前記第1ブロック部材を前記パッド側へ付勢する付勢部材を備え、
前記第1ブロック部材の上下方向のストローク長は、前記可動ポンチが前記近接位置と前記離間位置との間を移動する移動量より長く形成され、
前記第1ブロック部材には、前記可動ポンチが前記離間位置から前記近接位置へ移動した後、前記付勢部材に押されて前記パッド側へ更に移動する際に、前記第2ブロック部材を前記起立位置から前記倒伏位置へ回動させる第2カム部を備え、
前記第2ブロック部材には、前記第2カム部と係合する受動カム部を備えていることを特徴とするハット型断面部品のプレス金型。
【請求項5】
請求項4に記載されたハット型断面部品のプレス金型において、
前記可動ポンチには、前記第2ブロック部材を回動可能に支持する支持部材が固定され、当該支持部材と前記第2ブロック部材とが、ターンオーバーばねによって連結されていること、
前記ターンオーバーばねは、前記第2カム部が前記受動カム部から離間すると同時に、前記第2ブロック部材を倒伏位置へ回動させる付勢力が作用し、前記第2カム部が前記受動カム部と当接する同時に、前記第2ブロック部材を起立位置へ回動させる付勢力が作用するように配置されていることを特徴とするハット型断面部品のプレス金型。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載されたハット型断面部品のプレス金型において、
前記天頂成形部は、前記縦壁成形部に対して上下方向へ移動可能に分割され、前記固定ポンチに装着された付勢部材によって前記パッド側へ付勢されていること、
前記天頂成形部は、前記第1ブロック部材と連結されていることを特徴とするハット型断面部品のプレス金型。
【請求項7】
請求項1に記載されたハット型断面部品のプレス金型において、
前記天頂成形部は、前記縦壁成形部に対して上下方向へ移動可能に分割され、前記固定ポンチに装着された付勢部材によって前記パッド側へ付勢されていること、
前記第1ブロック部材は、前記天頂成形部に連結され前記パッドに押されて上下方向へ移動可能に形成され、
前記第2ブロック部材は、前進位置と後退位置との間で水平方向へ移動可能に前記可動ポンチに支持され、前記後退位置にて前記第1ブロック部材と上下方向で離間し、前記前進位置にて前記第1ブロック部材と上下方向で当接することを特徴とするハット型断面部品のプレス金型。
【請求項8】
請求項7に記載されたハット型断面部品のプレス金型において、
前記ポンチ型の型台には、前記可動ポンチが前記曲げ刃に押されて前記近接位置から前記離間位置へ移動するときに、前記第2ブロック部材を前記後退位置から前記前進位置へ移動させる第1カム部を備えていることを特徴とするハット型断面部品のプレス金型。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載されたハット型断面部品のプレス金型において、
前記第1ブロック部材の上下方向のストローク長は、前記可動ポンチが前記近接位置と前記離間位置との間を移動する移動量より長く形成され、
前記第1ブロック部材には、前記可動ポンチが前記離間位置から前記近接位置へ移動した後、前記パッドが前記天頂部から離間し、前記天頂成形部が前記付勢部材に押されて前記パッド側へ更に移動する際に、前記第2ブロック部材を前記前進位置から前記後退位置へ移動させる第2カム部を備え、
前記第2ブロック部材には、前記第2カム部と係合する受動カム部を備えていることを特徴とするハット型断面部品のプレス金型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハット型断面部品のプレス金型に関し、詳しくは、鋼板をハット型断面形状にプレス成形するハット型断面部品のプレス金型に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車の車体を構成するプレス部品の軽量化と高強度化とを両立させる方策の一つとして、鋼板の高ハイテン化が進められている。しかし、例えば、ハット型断面形状を有する車両用メンバー部品では、ハット型断面を構成する縦壁部にスプリングバックや反り等が発生しやすく、この縦壁部におけるスプリングバックや反り等は、鋼板のプレス成形(絞り成形又は曲げ成形)に伴って縦壁部に発生する残留応力が板内側と板外側で異なることに起因し、鋼板の高ハイテン化が進むほど、顕著に発生することが知られている。
【0003】
この縦壁部におけるスプリングバックや反り等の要因となる残留応力の板内側と板外側での差異を効率的に除去するプレス金型が、例えば、特許文献1に開示されている。すなわち、特許文献1には、図27に示すように、下型ポンチ101と下型クッション104とを有する下型100と、上型曲げ刃201と上型パッド202とを有する上型200とを備え、鋼板Wを曲げ加工して天頂部M1と縦壁部M2とを備えた車両用メンバー部品Mをプレス形成する車両用メンバー部品のプレス金型300であって、下型クッション104には、フランジ押え部103の内周縁に下型ポンチ101の縦壁成形部102より板外側へ突出する凸成形部102aを備え、上型曲げ刃201には、ダイR部201Rの上部で凸成形部102aと協働する凹成形部201aを備え、図27(b)に示すように、上型200が下死点の直前まで下降したとき、凸成形部102aと凹成形部201aとが鋼板Wの先端フランジ部W1をステップ状に屈曲させて縦壁部M2の先端側にステップ形状部M3を形成し、図27(c)に示すように、凸成形部102aと凹成形部201aとがステップ形状部M3を把持した状態で上型200が下死点まで微小距離d1を下降するように形成された車両用メンバー部品のプレス金型300が開示されている。
【0004】
そして、上記車両用メンバー部品のプレス金型300では、凸成形部102aと凹成形部201aとがステップ形状部M3を把持した状態で上型200が下死点まで微小距離d1を下降するときに縦壁部M2に付加する縦方向の張力Fによって、車両用メンバー部品Mにおける縦壁部M2の板内側と板外側に残留する残留応力同士の差異を除去させ、縦壁部M2を正規の断面形状に形状凍結させることができる。その結果、車両用メンバー部品Mの縦壁部M2に生じるスプリングバックや反り等の問題を解消させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-199539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された車両用メンバー部品のプレス金型300では、曲げ成形後に、上型パッド202が鋼板Wを下型ポンチ101に押圧している状態で、下型クッション104が加圧ピン106に押されて下型ポンチ101側へ移動して、プレス成形後の縦壁部M2を変形させることを防止するため、下死点で加圧ピン106の上昇を一時停止させるロッキング機構が装備された加圧装置が必要となる。そのため、上記車両用メンバー部品のプレス金型300を使用できるプレス機械が、ロッキング機構が装備された加圧装置(ダイクッション装置)を有する一部のプレス機械に限定されるという問題があった。そして、ロッキング機構付きダイクッション装置を有するプレス機械は、一般に台数が少なく、プレス金型の仕掛けが限定されて不便であった。
【0007】
また、ロッキング機構付きダイクッション装置では、下型クッション104の下型ポンチ101側への移動を、下死点で一時停止させる分、プレス成形のサイクルタイムが長くなり、その生産性が低下するという問題があった。
【0008】
さらに、下型クッション104の可動ストローク量(移動量)d1は、縦壁部M2における残留応力の差異を除去できる程度の微小距離d1(2~5mm程度)であるが、プレス機械のダイクッション装置では、通常、加圧用にエアシリンダを用いているため、微小な可動ストローク量で所要の加圧力を安定して発生させることが困難であるという問題があった。
【0009】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、ハット型断面部品のプレス成形に伴って縦壁部に生じるスプリングバックや反り等を低減させると共に、プレス機械のロッキング機構付きダイクッション装置を用いることなく、プレス成形完了後の縦壁部の変形を回避しつつ、生産性を向上できるハット型断面部品のプレス金型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係るハット型断面部品のプレス金型は、次のような構成を有している。
(1)型台に固定されコの字状断面形状に形成された天頂成形部と縦壁成形部とを有する固定ポンチと、前記縦壁成形部の先端側で板外側へステップ状に突出する凸成形部とフランジ成形部とを有し前記固定ポンチと近接する近接位置と前記固定ポンチと離間する離間位置との間で上下動可能に形成された可動ポンチと、前記型台に支持され前記可動ポンチを前記固定ポンチ側へ加圧する加圧ユニットとを有するポンチ型と、
前記凸成形部に対向して形成された凹成形部を有する曲げ刃と、当該曲げ刃の内周側に配置され鋼板を前記天頂成形部に押圧可能に形成されたパッドとを有するダイ型とを備え、
前記可動ポンチが前記近接位置に移動した状態で、前記ポンチ型と前記ダイ型とが、近接して鋼板を天頂部とその両側に起立する縦壁部とを備えたハット断面形状に曲げ成形すると共に、前記曲げ刃と前記可動ポンチとが、前記縦壁部の先端部をステップ形状部に曲げ成形し、
前記曲げ刃と前記可動ポンチとが、前記ステップ形状部を把持した状態で、前記可動ポンチが前記曲げ刃に押されて前記近接位置から前記離間位置へ移動するときに、前記縦壁部に対して縦方向の張力を付加して曲げ成形を完了するように形成されたハット型断面部品のプレス金型であって、
前記ポンチ型には、前記可動ポンチと前記パッドとの上下方向の相対距離を制御する第1ブロック部材と第2ブロック部材とを有する距離制御機構を備え、
前記距離制御機構は、
前記第1ブロック部材と前記第2ブロック部材とが上下方向で分離した状態では、前記相対距離を規制せず、
前記可動ポンチが、前記曲げ刃に押されて前記近接位置から前記離間位置へ移動するまでに前記第1ブロック部材と前記第2ブロック部材とを上下方向で当接させて前記離間位置にて前記相対距離を所定距離に固定させ、曲げ成形完了後に、前記加圧ユニットに押されて前記離間位置から前記近接位置へ移動するまで、前記第1ブロック部材と前記第2ブロック部材とが上下方向で当接した状態を維持させ、
前記パッドが前記天頂部から離間する際に、前記第1ブロック部材と前記第2ブロック部材とを上下方向で分離させることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、ポンチ型には、可動ポンチとパッドとの上下方向の相対距離を制御する第1ブロック部材と第2ブロック部材とを有する距離制御機構を備え、距離制御機構は、第1ブロック部材と第2ブロック部材とが上下方向で分離した状態では、相対距離を規制せず、可動ポンチが、曲げ刃に押されて近接位置から離間位置へ移動するまでに第1ブロック部材と第2ブロック部材とを上下方向で当接させて離間位置にて相対距離を所定距離に固定させ、曲げ成形完了後に、加圧ユニットに押されて離間位置から近接位置へ移動するまで、第1ブロック部材と第2ブロック部材とが上下方向で当接した状態を維持させ、パッドが天頂部から離間する際に、第1ブロック部材と第2ブロック部材とを上下方向で分離させるので、ポンチ型とダイ型とが近接して鋼板をハット型断面部品に曲げ成形し縦壁部に縦方向の張力を付加して曲げ成形を完了した後に、加圧ユニットの加圧力によって可動ポンチを固定ポンチ側へ移動させる際、ハット型断面部品の縦壁部が、加圧ユニットの加圧力やパッドの押圧力によって変形することを回避できる。
【0012】
すなわち、ポンチ型には、可動ポンチとパッドとの上下方向の相対距離を制御する第1ブロック部材と第2ブロック部材とを有する距離制御機構を備え、距離制御機構は、第1ブロック部材と第2ブロック部材とが上下方向で分離した状態では、相対距離を規制せず、曲げ成形完了後に、パッドが天頂部から離間する際に、第1ブロック部材と第2ブロック部材とを上下方向で分離させるので、第1ブロック部材と第2ブロック部材とを上下方向で分離させ、可動ポンチとパッドとの上下方向の相対距離を規制しない状態で、次の曲げ成形を開始することができる。そのため、曲げ成形開始時において、加圧ユニットの加圧力によって可動ポンチが近接位置に移動した状態の天頂成形部に対してパッドが鋼板を押圧した状態で、ポンチ型とダイ型とが近接して、鋼板を天頂部とその両側に起立する縦壁部とを備えたハット断面形状に曲げ成形し、曲げ刃と可動ポンチとが縦壁部の先端部にステップ形状部を形成することができる。
【0013】
また、距離制御機構は、可動ポンチが、曲げ刃に押されて近接位置から離間位置へ移動するまでに第1ブロック部材と第2ブロック部材とを上下方向で当接させて離間位置にて相対距離を所定距離に固定させるので、可動ポンチが、曲げ刃に押されて近接位置から離間位置へ移動する途中では、可動ポンチとパッドとの上下方向の相対距離が規制されていない。そのため、パッドが天頂部を固定ポンチの天頂成形部に押圧した状態で、曲げ刃と可動ポンチとがステップ形状部を把持して縦壁部に対して縦方向の張力を付加して、縦壁部における残留応力の板内側と板外側との差異を除去させ、曲げ成形を完了させることができる。また、距離制御機構は、固定ポンチに対する可動ポンチの離間位置にて相対距離を所定距離に固定させるので、曲げ成形が完了するポンチ型とダイ型との型閉じ位置において、縦壁部に対して縦方向の張力を付加した状態を保持させ、正規の断面形状に形状凍結させることができる。そのため、ハット型断面部品の縦壁部に生じるスプリングバックや反り等を低減させることができる。
【0014】
また、距離制御機構は、曲げ成形完了後に、加圧ユニットに押されて離間位置から近接位置へ移動するまで、第1ブロック部材と第2ブロック部材とが上下方向で当接した状態を維持させるので、曲げ成形完了後のハット型断面部品を上下方向で挟持するパッドと可動ポンチとを、上下方向の相対距離を所定距離の状態に維持させつつ、固定ポンチに対する可動ポンチの離間位置から近接位置まで同時に移動させることができる。また、距離制御機構は、パッドが天頂部から離間する際に、第1ブロック部材と第2ブロック部材とを上下方向で分離させるので、可動ポンチが近接位置に停止した後も、パッドが天頂部から離間するまでパッドを規制し、ハット型断面部品の縦壁部が、パッドの押圧力によって変形することを回避できる。そのため、ハット型断面部品の縦壁部が、加圧ユニットの加圧力やパッドの押圧力によって変形することを回避できる。
【0015】
また、距離制御機構は、曲げ成形完了後に、加圧ユニットの加圧力によって可動ポンチを固定ポンチの近接位置へ移動させる際、パッドと可動ポンチとを、上下方向の相対距離を所定距離の状態に維持させつつ、同時に移動させるので、加圧ユニットには、可動ポンチを離間位置にて一時停止させるロッキング機構が装備された加圧装置を用いる必要がない。そのため、本ハット型断面部品のプレス金型を使用できるプレス機械が、ロッキング機構が装備された加圧装置を有する一部のプレス機械に限定されることはない。その結果、本ハット型断面部品のプレス金型の仕掛けが一部のプレス機械に限定されず、仕掛けの自由度、利便性を向上できる。さらに、曲げ成形完了後に、可動ポンチを固定ポンチの近接位置へ移動させる移動タイミングを遅らせる必要がなく、ハット型断面部品のプレス成形におけるサイクルタイムを短縮でき、その生産性を向上させることもできる。
【0016】
よって、本ハット型断面部品のプレス金型によれば、ハット型断面部品の縦壁部に生じるスプリングバックや反り等を低減させると共に、プレス機械のロッキング機構付きダイクッション装置を用いることなく、曲げ成形完了後の縦壁部の変形を回避しつつ、生産性を向上できるハット型断面部品のプレス金型を提供することができる。
【0017】
(2)(1)に記載されたハット型断面部品のプレス金型において、
前記第1ブロック部材は、前記パッドに押されて上下方向へ移動可能に前記固定ポンチに支持され、
前記第2ブロック部材は、倒伏位置と起立位置との間で回動可能に前記可動ポンチに支持され、前記倒伏位置にて前記第1ブロック部材と上下方向で離間し、前記起立位置にて前記第1ブロック部材と上下方向で当接することを特徴とする。
【0018】
本発明においては、第1ブロック部材は、パッドに押されて上下方向へ移動可能に固定ポンチに支持され、第2ブロック部材は、倒伏位置と起立位置との間で回動可能に可動ポンチに支持され、倒伏位置にて第1ブロック部材と上下方向で離間しているので、第2ブロック部材が倒伏位置に回動している場合、パッドは、曲げ成形時に、第1ブロック部材に邪魔されることなく、鋼板を固定ポンチの天頂成形部に押圧することができる。そのため、パッドは、曲げ成形時における鋼板に対する必要な押圧力を確保して、ハット型断面部品における天頂部の反り等を回避できる。
【0019】
また、第2ブロック部材は、起立位置にて第1ブロック部材と上下方向で当接するので、第2ブロック部材を倒伏位置から起立位置へ回動させるだけで、可動ポンチとパッドとの上下方向の相対距離を所定距離に簡単に固定することができる。
【0020】
したがって、曲げ成形開始前に、第2ブロック部材を倒伏位置へ回動させることによって、パッドが曲げ成形時における鋼板に対する必要な押圧力を確保して、ハット型断面部品における天頂部の反り等を簡単に回避できると共に、曲げ成形完了と同時に、第2ブロック部材を倒伏位置から起立位置へ回動させることによって、曲げ成形完了後のハット型断面部品の縦壁部が、加圧ユニットの加圧力やパッドの押圧力によって変形することを簡単に回避できる。
【0021】
(3)(2)に記載されたハット型断面部品のプレス金型において、
前記固定ポンチには、前記可動ポンチが前記曲げ刃に押されて前記近接位置から前記離間位置へ移動するときに、前記第2ブロック部材を前記倒伏位置から前記起立位置へ回動させる第1カム部を備えていることを特徴とする。
【0022】
本発明においては、固定ポンチには、可動ポンチが曲げ刃に押されて近接位置から離間位置へ移動するときに、第2ブロック部材を倒伏位置から起立位置へ回動させる第1カム部を備えているので、可動ポンチが曲げ刃に押されて近接位置から離間位置へ移動することに連動して、第1カム部によって第2ブロック部材を倒伏位置から起立位置へ確実に回動させることができる。
【0023】
そのため、パッドに押されて可動ポンチ側へ移動した第1ブロック部材は、第1カム部によって起立位置へ回動した第2ブロック部材と上下方向で当接でき、離間位置へ移動した可動ポンチとパッドとの上下方向の相対距離を所定距離に確実に固定できる。その結果、曲げ成形完了後に、可動ポンチが加圧ユニットに押されて離間位置から近接位置へ移動する際、パッドと可動ポンチとに挟持されたハット型断面部品の縦壁部が、加圧ユニットの加圧力やパッドの押圧力によって変形することを、安定して回避できる。
【0024】
(4)(2)又は(3)に記載されたハット型断面部品のプレス金型において、
前記固定ポンチには、前記第1ブロック部材を前記パッド側へ付勢する付勢部材を備え、
前記第1ブロック部材の上下方向のストローク長は、前記可動ポンチが前記近接位置と前記離間位置との間を移動する移動量より長く形成され、
前記第1ブロック部材には、前記可動ポンチが前記離間位置から前記近接位置へ移動した後、前記付勢部材に押されて前記パッド側へ更に移動する際に、前記第2ブロック部材を前記起立位置から前記倒伏位置へ回動させる第2カム部を備え、
前記第2ブロック部材には、前記第2カム部と係合する受動カム部を備えていることを特徴とする。
【0025】
本発明においては、固定ポンチには、第1ブロック部材をパッド側へ付勢する付勢部材を備え、第1ブロック部材の上下方向のストローク長は、可動ポンチが近接位置と離間位置との間を移動する移動量より長く形成され、第1ブロック部材には、可動ポンチが離間位置から近接位置へ移動した後、付勢部材に押されてパッド側へ更に移動する際に、第2ブロック部材を起立位置から倒伏位置へ回動させる第2カム部を備え、第2ブロック部材には、第2カム部と係合する受動カム部を備えているので、可動ポンチが近接位置にて停止した後に、パッドが型開き位置へ移動する際、第1ブロック部材は、付勢部材の付勢力によって第1ブロック部材のストローク長と可動ポンチの移動量との差分だけ、更に移動することができる。そして、第1ブロック部材が付勢部材の付勢力によってパッド側へ更に移動するとき、第1ブロック部材の第2カム部が第2ブロック部材の受動カム部を押して、第2ブロック部材を起立位置から倒伏位置へ自動的に回動させることができる。
【0026】
そのため、次に曲げ成形するときには、倒伏位置へ回動させた第2ブロック部材が第1ブロック部材と上下方向で分離して、パッドと可動ポンチとの上下方向の相対距離を規制しないので、加圧ユニットの加圧力によって可動ポンチが近接位置に移動した状態の固定ポンチに対してパッドが鋼板を押圧した状態で、ポンチ型とダイ型とが近接して鋼板を天頂部とその両側に起立する縦壁部とを備えたハット断面形状に曲げ成形し、曲げ刃と可動ポンチとが縦壁部の先端部にステップ形状部を形成することができる。その結果、本ハット型断面部品のプレス金型を用いて、連続的にプレス成形でき、ハット型断面部品のプレス成形におけるサイクルタイムを短縮でき、その生産性を更に向上させることができる。
【0027】
(5)(4)に記載されたハット型断面部品のプレス金型において、
前記可動ポンチには、前記第2ブロック部材を回動可能に支持する支持部材が固定され、当該支持部材と前記第2ブロック部材とが、ターンオーバーばねによって連結されていること、
前記ターンオーバーばねは、前記第2カム部が前記受動カム部から離間すると同時に、前記第2ブロック部材を倒伏位置へ回動させる付勢力が作用し、前記第2カム部が前記受動カム部と当接する同時に、前記第2ブロック部材を起立位置へ回動させる付勢力が作用するように配置されていることを特徴とする。
【0028】
本発明においては、可動ポンチには、第2ブロック部材を回動可能に支持する支持部材が固定され、当該支持部材と第2ブロック部材とが、ターンオーバーばねによって連結され、また、ターンオーバーばねは、第2カム部が受動カム部から離間すると同時に、第2ブロック部材を倒伏位置へ回動させる付勢力が作用するように配置されているので、第1ブロック部材が付勢部材の付勢力によってストローク長と移動量との差分だけ更に移動する際、第2カム部が受動カム部を離間する方向へ押すと同時に、ターンオーバーばねの付勢力が作用することによって、第2ブロック部材を倒伏位置へより確実に回動させることができる。
【0029】
また、ターンオーバーばねは、第2カム部が受動カム部と当接すると同時に、第2ブロック部材を起立位置へ回動させる付勢力が作用するように配置されているので、可動ポンチが近接位置から離間位置へ移動し、第1カム部によって第2ブロック部材を倒伏位置から起立位置へ回動させる際、第2カム部が受動カム部と当接すると同時に、ターンオーバーばねの付勢力が作用することによって、第2ブロック部材を起立位置へより確実に回動させることができる。
【0030】
そのため、可動ポンチが加圧ユニットに押されて近接位置に移動し、曲げ成形を開始するときには、第1ブロック部材と第2ブロック部材とを上下方向でより一層確実に分離させることができる。また、曲げ成形完了後に、可動ポンチが加圧ユニットの加圧力に押されて離間位置から近接位置へ移動し、パッドが天頂部から離間するまで、第1ブロック部材と第2ブロック部材とを上下方向でより一層確実に当接させ、可動ポンチとパッドとの上下方向の相対距離を所定距離の状態に維持させることができる。
【0031】
(6)(1)乃至(5)のいずれか1つに記載されたハット型断面部品のプレス金型において、
前記天頂成形部は、前記縦壁成形部に対して上下方向へ移動可能に分割され、前記固定ポンチに装着された付勢部材によって前記パッド側へ付勢されていること、
前記天頂成形部は、前記第1ブロック部材と連結されていることを特徴とする。
【0032】
本発明においては、天頂成形部は、縦壁成形部に対して上下方向へ移動可能に分割され、固定ポンチに装着された付勢部材によってパッド側へ付勢され、天頂成形部は、第1ブロック部材と連結されているので、曲げ成形完了後に、可動ポンチが加圧ユニットに押されて離間位置から近接位置へ移動する際、可動ポンチが縦壁部を固定ポンチから離型する方向へ押圧すると同時に、固定ポンチに装着された付勢部材の付勢力によって天頂成形部が天頂部を同方向へ押圧することができる。そのため、曲げ成形完了後のハット型断面部品を固定ポンチから離型させるときに、ハット型断面部品の縦壁部が変形することをより一層回避させることができる。
【0033】
また、天頂成形部は、第1ブロック部材と連結されているので、距離制御機構を固定ポンチの成形領域に内蔵することができる。この場合、距離制御機構を固定ポンチにおける長手方向両端部に装着する必要がなく、本ハット型断面部品のプレス金型をよりコンパクトに形成することができると共に、天頂成形部に鋼板を安定して載置することができ、そのプレス作業性を向上させることができる。
【0034】
(7)(1)に記載されたハット型断面部品のプレス金型において、
前記天頂成形部は、前記縦壁成形部に対して上下方向へ移動可能に分割され、前記固定ポンチに装着された付勢部材によって前記パッド側へ付勢されていること、
前記第1ブロック部材は、前記天頂成形部に連結され前記パッドに押されて上下方向へ移動可能に形成され、
前記第2ブロック部材は、前進位置と後退位置との間で水平方向へ移動可能に前記可動ポンチに支持され、前記後退位置にて前記第1ブロック部材と上下方向で離間し、前記前進位置にて前記第1ブロック部材と上下方向で当接することを特徴とする。
【0035】
本発明においては、天頂成形部は、縦壁成形部に対して上下方向へ移動可能に分割され、固定ポンチに装着された付勢部材によってパッド側へ付勢され、第1ブロック部材は、天頂成形部に連結されパッドに押されて上下方向へ移動可能に形成され、第2ブロック部材は、前進位置と後退位置との間で水平方向へ移動可能に可動ポンチに支持され、後退位置にて第1ブロック部材と上下方向で離間しているので、第2ブロック部材が後退位置に移動している場合、パッドは、曲げ成形時に、第1ブロック部材に邪魔されることなく、鋼板を縦壁成形部に当接した天頂成形部に押圧することができる。そのため、パッドは、曲げ成形時における鋼板に対する必要な押圧力を確保して、ハット型断面部品における天頂部の反り等を回避できる。
【0036】
また、第2ブロック部材は、前進位置にて第1ブロック部材と上下方向で当接するので、第2ブロック部材を後退位置から前進位置へ移動させるだけで、可動ポンチとパッドとの上下方向の相対距離を所定距離に簡単に固定することができる。
【0037】
したがって、曲げ成形開始前に、第2ブロック部材を後退位置へ移動させることによって、パッドが曲げ成形時における鋼板に対する必要な押圧力を確保して、ハット型断面部品における天頂部の反り等を簡単に回避できると共に、曲げ成形完了と同時に、第2ブロック部材を後退位置から前進位置へ移動させることによって、曲げ成形完了後のハット型断面部品の縦壁部が、加圧ユニットの加圧力やパッドの押圧力によって変形することを簡単に回避できる。
【0038】
(8)(7)に記載されたハット型断面部品のプレス金型において、
前記ポンチ型の型台には、前記可動ポンチが前記曲げ刃に押されて前記近接位置から前記離間位置へ移動するときに、前記第2ブロック部材を前記後退位置から前記前進位置へ移動させる第1カム部を備えていることを特徴とする。
【0039】
本発明においては、ポンチ型の型台には、可動ポンチが曲げ刃に押されて近接位置から離間位置へ移動するときに、第2ブロック部材を後退位置から前進位置へ移動させる第1カム部を備えているので、可動ポンチが曲げ刃に押されて近接位置から離間位置へ移動することに連動して、第1カム部によって第2ブロック部材を後退位置から前進位置へ確実に移動させることができる。
【0040】
そのため、パッドに押されて型台側へ移動した第1ブロック部材は、第1カム部によって前進位置へ移動した第2ブロック部材と上下方向で当接でき、離間位置へ移動した可動ポンチとパッドとの上下方向の相対距離を所定距離に確実に固定できる。そして、曲げ成形完了後に、可動ポンチが加圧ユニットに押されて離間位置から近接位置へ移動する際、パッドと天頂成形部とが天頂部を上下で挟持した状態で、可動ポンチと一緒に移動する。その結果、パッドと可動ポンチとに挟持されたハット型断面部品の縦壁部が、加圧ユニットの加圧力やパッドの押圧力によって変形することを、より一層安定して回避できる。
【0041】
(9)(7)又は(8)に記載されたハット型断面部品のプレス金型において、
前記第1ブロック部材の上下方向のストローク長は、前記可動ポンチが前記近接位置と前記離間位置との間を移動する移動量より長く形成され、
前記第1ブロック部材には、前記可動ポンチが前記離間位置から前記近接位置へ移動した後、前記パッドが前記天頂部から離間し、前記天頂成形部が前記付勢部材に押されて前記パッド側へ更に移動する際に、前記第2ブロック部材を前記前進位置から前記後退位置へ移動させる第2カム部を備え、
前記第2ブロック部材には、前記第2カム部と係合する受動カム部を備えていることを特徴とする。
【0042】
本発明においては、第1ブロック部材の上下方向のストローク長は、可動ポンチが近接位置と離間位置との間を移動する移動量より長く形成され、第1ブロック部材には、可動ポンチが離間位置から近接位置へ移動した後、パッドが天頂部から離間し、天頂成形部が付勢部材に押されてパッド側へ更に移動する際に、第2ブロック部材を前進位置から後退位置へ移動させる第2カム部を備え、第2ブロック部材には、第2カム部と係合する受動カム部を備えているので、可動ポンチが近接位置にて停止した後に、パッドが天頂部から離間して型開き位置へ移動する際、天頂成形部に連結された第1ブロック部材は、付勢部材の付勢力によって第1ブロック部材のストローク長と可動ポンチの移動量との差分だけ、更に移動することができる。そして、付勢部材の付勢力によって第1ブロック部材がパッド側へ更に移動するとき、第1ブロック部材の第2カム部が第2ブロック部材の受動カム部を押して、第2ブロック部材を前進位置から後退位置へ自動的に移動させることができる。
【0043】
そのため、次に曲げ成形するときには、後退位置へ移動させた第2ブロック部材が第1ブロック部材と上下方向で分離して、パッドと可動ポンチとの上下方向の相対距離を規制しない。したがって、加圧ユニットの加圧力によって可動ポンチが近接位置に移動した状態において、縦壁成形部に当接した天頂成形部に対してパッドが鋼板を押圧した状態で、ポンチ型とダイ型とが近接して鋼板を天頂部とその両側に起立する縦壁部とを備えたハット断面形状に曲げ成形し、曲げ刃と可動ポンチとが縦壁部の先端部にステップ形状部を形成することができる。その結果、本ハット型断面部品のプレス金型を用いて、連続的にプレス成形でき、ハット型断面部品のプレス成形におけるサイクルタイムを短縮でき、その生産性を更に向上させることができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、ハット型断面部品の縦壁部に生じるスプリングバックや反り等を低減させると共に、プレス機械のロッキング機構付きダイクッション装置を用いることなく、曲げ成形完了後の縦壁部の変形を回避しつつ、生産性を向上できるハット型断面部品のプレス金型を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】本実施形態に係るハット型断面部品のプレス金型によって曲げ成形したハット型断面部品の概略斜視図である。
図2】本実施形態に係る第1実施例のハット型断面部品のプレス金型の断面図であって、曲げ成形開始位置における図1に示すA-A断面図である。
図3図2に示す本ハット型断面部品のプレス金型において、可動ポンチが近接位置の状態でハット型断面部品の曲げ成形を行う型閉じ直前位置における断面図である。
図4図2に示す本ハット型断面部品のプレス金型において、可動ポンチが近接位置から離間位置へ移動して縦壁部に縦方向の張力を付加し、曲げ成形を完了した型閉じ位置における断面図である。
図5図2に示す本ハット型断面部品のプレス金型において、曲げ成形完了後に可動ポンチが離間位置から近接位置へ移動した型閉じ直前位置における断面図である。
図6図4に示すB-B断面図である。
図7図6に示すC-C断面図である。
図8図6に示す距離制御機構の構成部品における分解斜視図である。
図9図6に示すD部詳細断面図において、曲げ成形開始前に固定ポンチに鋼板を載置した状態の断面図である。
図10図6に示すD部詳細断面図において、曲げ成形開始時に固定ポンチに載置した鋼板をパッドが押圧した状態の断面図である。
図11図6に示すD部詳細断面図において、可動ポンチが近接位置の状態でハット型断面部品の曲げ成形を行う型閉じ直前位置における断面図である。
図12図6に示すD部詳細断面図において、曲げ刃に押された可動ポンチが近接位置から離間位置へ移動する途中における断面図である。
図13図6に示すD部詳細断面図において、可動ポンチが離間位置へ移動してハット型断面部品の曲げ成形を完了した型閉じ位置における断面図である。
図14図6に示すD部詳細断面図において、曲げ成形完了後に可動ポンチが離間位置から近接位置に移動した型閉じ直前位置における断面図である。
図15図6に示すD部詳細断面図において、可動ポンチが近接位置に停止した状態で第1ブロック部材がパッドに追従して更に移動する途中の断面図である。
図16図6に示すD部詳細断面図において、第1ブロック部材がパッド側の停止位置に停止し第2ブロック部材が倒伏位置へ回動した状態の断面図である。
図17図6に示す断面図において、パッドが曲げ成形完了後のハット型断面部品から離間した状態の断面図である。
図18図2に示す本ハット型断面部品のプレス型における動作説明図であって、(a)は、ポンチ型に対するダイ型の高さの変化を表す動作曲線を示し、(b)は、パッドと可動ポンチの上下方向の相対距離の変化を表す動作曲線を示す。
図19図6に示す本ハット型断面部品のプレス型において、固定ポンチの天頂成形部と縦壁成形部とを分割する変形例の断面図である。
図20図19に示すE-E断面図である。
図21図8に示す距離制御機構において、第2ブロック部材と支持部材との間にターンオーバーばねを追加した変形例の側面図である。
図22図21に示すF矢視図である。
図23】本実施形態に係る第2実施例のハット型断面部品のプレス金型の断面図であって、可動ポンチが近接位置の状態で曲げ成形開始前の断面図である。
図24図23に示す本ハット型断面部品のプレス金型の断面図において、(a)は可動ポンチが近接位置の状態で曲げ成形開始時の断面図を示し、(b)は可動ポンチが近接位置の状態でハット型断面部品の曲げ成形を行う型閉じ直前位置における断面図を示す。
図25図23に示す本ハット型断面部品のプレス金型の断面図において、(a)は可動ポンチが離間位置へ移動してハット型断面部品の曲げ成形を完了した型閉じ位置における断面図を示し、(b)は曲げ成形完了後に可動ポンチが離間位置から近接位置に移動した型閉じ直前位置における断面図を示す。
図26図23に示す本ハット型断面部品のプレス金型の断面図において、(a)は可動ポンチが近接位置に停止し、パッドが天頂部を天頂成形部に押圧した状態で曲げ刃が可動ポンチから離間する方向へ移動する断面図を示し、(b)は可動ポンチが近接位置に停止した状態でパッドが天頂部から離間し第1ブロック部材がパッドに追従して更に移動した断面図を示す。
図27】特許文献1に記載された車両用メンバー部品のプレス金型の要部を示す断面模式図であって、(a)は、曲げ成形を開始した状態を示し、(b)は、上型が下死点の直前まで下降した状態を示し、(c)は、上型が下死点まで下降した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
次に、本発明の実施形態に係るハット型断面部品のプレス金型の一態様について、図面を参照して詳細に説明する。はじめに、本実施形態に係る第1実施例のハット型断面部品のプレス金型の構成と動作方法について詳細に説明する。その後、ハット型断面部品のプレス金型の変形例と、距離制御機構における変形例について説明する。また、本実施形態に係る第2実施例のハット型断面部品のプレス金型の構成と動作方法について第1実施例との相違点を中心に説明する。
【0047】
<本第1実施例のハット型断面部品のプレス金型の構成と動作方法>
まず、本実施形態に係る第1実施例のハット型断面部品のプレス金型の構成と動作方法を、図1図18を用いて詳細に説明する。図1に、本実施形態に係るハット型断面部品のプレス金型によって曲げ成形したハット型断面部品の概略斜視図を示す。図2に、本実施形態に係る第1実施例のハット型断面部品のプレス金型の断面図であって、曲げ成形開始位置における図1に示すA-A断面図を示す。図3に、図2に示す本ハット型断面部品のプレス金型において、可動ポンチが近接位置の状態でハット型断面部品の曲げ成形を行う型閉じ直前位置における断面図を示す。図4に、図2に示す本ハット型断面部品のプレス金型において、可動ポンチが近接位置から離間位置へ移動して縦壁部に縦方向の張力を付加し、曲げ成形を完了した型閉じ位置における断面図を示す。図5に、図2に示す本ハット型断面部品のプレス金型において、曲げ成形完了後に可動ポンチが離間位置から近接位置へ移動した型閉じ直前位置における断面図を示す。図6に、図4に示すB-B断面図を示す。図7に、図6に示すC-C断面図を示す。図8に、図6に示す距離制御機構の構成部品における分解斜視図を示す。図9に、図6に示すD部詳細断面図において、曲げ成形開始前に固定ポンチに鋼板を載置した状態の断面図を示す。図10に、図6に示すD部詳細断面図において、曲げ成形開始時に固定ポンチに載置した鋼板をパッドが押圧した状態の断面図を示す。図11に、図6に示すD部詳細断面図において、可動ポンチが近接位置の状態でハット型断面部品の曲げ成形を行う型閉じ直前位置における断面図を示す。図12に、図6に示すD部詳細断面図において、曲げ刃に押された可動ポンチが近接位置から離間位置へ移動する途中における断面図を示す。図13に、図6に示すD部詳細断面図において、可動ポンチが離間位置へ移動してハット型断面部品の曲げ成形を完了した型閉じ位置における断面図を示す。図14に、図6に示すD部詳細断面図において、曲げ成形完了後に可動ポンチが離間位置から近接位置に移動した型閉じ直前位置における断面図を示す。図15に、図6に示すD部詳細断面図において、可動ポンチが近接位置に停止した状態で第1ブロック部材がパッドに追従して更に移動する途中の断面図を示す。図16に、図6に示すD部詳細断面図において、第1ブロック部材がパッド側の停止位置に停止し第2ブロック部材が倒伏位置へ回動した状態の断面図を示す。図17に、図6に示す断面図において、パッドが曲げ成形完了後のハット型断面部品から離間した状態の断面図を示す。図18に、図2に示す本ハット型断面部品のプレス型における動作説明図であって、(a)は、ポンチ型に対するダイ型の高さの変化を表す動作曲線を示し、(b)は、パッドと可動ポンチの上下方向の相対距離の変化を表す動作曲線を示す。
【0048】
(本第1実施例のハット型断面部品のプレス金型の構成)
図1図4に示すように、本実施形態に係る第1実施例のハット型断面部品のプレス金型10は、型台13に固定されコの字状断面形状に形成された天頂成形部111と縦壁成形部112とを有する固定ポンチ11と、縦壁成形部112の先端側で板外側へステップ状に突出する凸成形部121とフランジ成形部122とを有し固定ポンチ11と近接する近接位置K1と固定ポンチ11と離間する離間位置K2との間で上下動可能に形成された可動ポンチ12と、型台13に支持され可動ポンチ12を固定ポンチ11側へ加圧する加圧ユニット14とを有するポンチ型1と、凸成形部121に対向して形成された凹成形部211を有する曲げ刃21と、当該曲げ刃21の内周側に配置され鋼板Wを天頂成形部111に押圧可能に形成されたパッド22とを有するダイ型2とを備え、可動ポンチ12が近接位置K1に移動した状態で、ポンチ型1とダイ型2とが、近接して鋼板Wを天頂部M1とその両側に起立する縦壁部M2とを備えたハット断面形状に曲げ成形すると共に、曲げ刃21と可動ポンチ12とが、縦壁部M2の先端部をステップ形状部M21に曲げ成形し、曲げ刃21と可動ポンチ12とが、ステップ形状部M21を把持した状態で、可動ポンチ12が曲げ刃21に押されて近接位置K1から離間位置K2へ移動するときに、縦壁部M2に対して縦方向の張力Fを付加して曲げ成形を完了するように形成されたハット型断面部品のプレス金型10である。
【0049】
ここでは、固定ポンチ11は、長手方向で間欠的に配置された複数の脚部11Rを介して型台13に固定されている。可動ポンチ12は、脚部11Rの隙間において左右一体に連結されている。また、加圧ユニット14には、可動ポンチ12に当接する複数の加圧ピン143と、加圧ピン143を上下動可能に支持する可動板142と、可動板142と型台13に固定した固定板144との間に挿入された複数の加圧ばね141とを備えている。なお、加圧ユニット14は、加圧ばね141を型台13に挿入して、加圧ばね141によって可動ポンチ12を直接加圧しても良い。また、可動ポンチ12が近接位置K1と離間位置K2との間を移動する移動量d1は、縦壁部M2における残留応力の差異を除去できる程度の微小距離(例えば、2~5mm程度)である。
【0050】
また、パッド22には、鋼板Wを固定ポンチ11の天頂成形部111に押圧する加圧部材(例えば、シリンダロッド221Rを伸縮させる加圧シリンダ)221を複数備えている。パッド22の加圧部材221は、曲げ刃21が固定されたダイ型2の型台23に固定されている。加圧部材221の押圧力P1は、加圧ユニット14の加圧力P2より小さく形成されている。
【0051】
なお、ハット型断面部品Mは、例えば、自動車の床周りに配置される車両用メンバー部品等に代表されるが、特に車両用メンバー部品に限定されることはない。また、鋼板Wは、引張強度が590~980Mpa程度の高張力鋼板を用いることができるが、特に上記高張力鋼板に限定する必要はない。また、ステップ形状部M21は、ハット型断面部品Mの長手方向に沿って同一断面で形成されていることが好ましいが、特に同一断面に限定する必要はない。
【0052】
また、図5図17に示すように、本ハット型断面部品のプレス金型10において、ポンチ型1には、可動ポンチ12とパッド22との上下方向の相対距離Hを制御する第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とを有する距離制御機構3を備えている。そして、距離制御機構3は、第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とが上下方向で分離した状態では、相対距離Hを規制せず、可動ポンチ12が、曲げ刃21に押されて近接位置K1から離間位置K2へ移動するまでに第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とを上下方向で当接させて離間位置K2にて相対距離Hを所定距離H1に固定させ、曲げ成形完了後に、加圧ユニット14に押されて離間位置K2から近接位置K1へ移動するまで、第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とが上下方向で当接した状態を維持させ、パッド22が天頂部M1から離間する際に、第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とを上下方向で分離させるように形成されている。
【0053】
したがって、ポンチ型1とダイ型2とが近接して鋼板Wをハット型断面部品Mに曲げ成形し縦壁部M2に縦方向の張力Fを付加して曲げ成形を完了した後に、加圧ユニット14の加圧力P2によって可動ポンチ12を固定ポンチ11側へ移動させる際、ハット型断面部品Mの縦壁部M2が、加圧ユニット14の加圧力P2やパッド22の押圧力P1によって変形することを回避できる。
【0054】
具体的には、図6図8に示すように、ポンチ型1には、可動ポンチ12とパッド22との上下方向の相対距離Hを制御する第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とを有する距離制御機構3を備えている。そして、図9図11図15図17に示すように、距離制御機構3は、第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とが上下方向で分離した状態では、相対距離Hを規制せず、曲げ成形完了後に、パッド22が天頂部M1から離間する際に、第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とを上下方向で分離させるので、第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とを上下方向で分離させた状態で、ダイ型2が型開き位置へ移動し、次の曲げ成形を開始することができる。そのため、曲げ成形開始時において、加圧ユニット14の加圧力P2によって可動ポンチ12が近接位置K1に移動した状態の天頂成形部111に対してパッド22が鋼板Wを押圧した状態で、ポンチ型1とダイ型2とが近接して、鋼板Wを天頂部M1とその両側に起立する縦壁部M2とを備えたハット断面形状に曲げ成形し、曲げ刃21と可動ポンチ12とが縦壁部M2の先端部にステップ形状部M21を形成することができる。
【0055】
また、図12図13に示すように、距離制御機構3は、可動ポンチ12が、曲げ刃21に押されて近接位置K1から離間位置K2へ移動するまでに第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とを上下方向で当接させて離間位置K2にて相対距離Hを所定距離H1に固定させるので、可動ポンチ12が、曲げ刃21に押されて近接位置K1から離間位置K2へ移動する途中では、可動ポンチ12とパッド22との上下方向の相対距離Hが規制されていない。そのため、図4に示すように、パッド22が天頂部M1を固定ポンチ11の天頂成形部111に押圧した状態で、曲げ刃21と可動ポンチ12とがステップ形状部M21を把持して縦壁部M2に対して縦方向の張力Fを付加して、縦壁部M2における残留応力の板内側と板外側との差異を除去させ、曲げ成形を完了させることができる。また、図6に示すように、距離制御機構3は、固定ポンチ11に対する可動ポンチ12の離間位置K2にて相対距離Hを所定距離H1に固定させるので、曲げ成形が完了するポンチ型1とダイ型2との型閉じ位置において、縦壁部M2に対して縦方向の張力Fを付加した状態を保持させ、正規の断面形状に形状凍結させることができる。そのため、ハット型断面部品Mの縦壁部M2に生じるスプリングバックや反り等を低減させることができる。
【0056】
また、図5図14に示すように、距離制御機構3は、曲げ成形完了後に、可動ポンチ12が加圧ユニット14に押されて離間位置K2から近接位置K1へ移動するまで、第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とが上下方向で当接した状態を維持させるので、曲げ成形完了後のハット型断面部品Mを上下方向で挟持するパッド22と可動ポンチ12とを、上下方向の相対距離Hを所定距離H1の状態に維持させつつ、固定ポンチ11に対する可動ポンチ12の離間位置K2から近接位置K1まで同時に移動させることができる。また、図15図17に示すように、距離制御機構3は、パッド22が天頂部M1から離間する際に、第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とを上下方向で分離させるので、可動ポンチ12が近接位置K1に停止した後も、パッド22が天頂部M1から離間するまでパッド22を規制し、ハット型断面部品Mの縦壁部M2が、パッド22の押圧力P1によって変形することを回避できる。そのため、ハット型断面部品Mの縦壁部M2が、加圧ユニット14の加圧力P2やパッド22の押圧力P1によって変形することを回避できる。
【0057】
また、曲げ成形完了後に、加圧ユニット14の加圧力P2によって可動ポンチ12を固定ポンチ11の近接位置K1へ移動させる際、パッド22と可動ポンチ12とを、上下方向の相対距離Hを所定距離H1の状態に維持させつつ、同時に移動させるので、加圧ユニット14には、可動ポンチ12を離間位置K2にて一時停止させるロッキング機構が装備された加圧装置を用いる必要がない。そのため、本ハット型断面部品のプレス金型10を使用できるプレス機械が、ロッキング機構が装備された加圧装置を有する一部のプレス機械に限定されることはない。その結果、本ハット型断面部品のプレス金型10の仕掛けが一部のプレス機械に限定されず、仕掛けの自由度、利便性を向上できる。さらに、曲げ成形完了後に、可動ポンチ12を固定ポンチ11の近接位置K1へ移動させる移動タイミングを遅らせる必要がなく、ハット型断面部品Mのプレス成形におけるサイクルタイムを短縮でき、その生産性を向上させることもできる。
【0058】
よって、本ハット型断面部品のプレス金型10によれば、ハット型断面部品Mの縦壁部M2に生じるスプリングバックや反り等を低減させると共に、プレス機械のロッキング機構付きダイクッション装置を用いることなく、曲げ成形完了後の縦壁部M2の変形を回避しつつ、生産性を向上できるハット型断面部品のプレス金型10を提供することができる。
【0059】
また、図6図17に示すように、本ハット型断面部品のプレス金型10において、第1ブロック部材31は、パッド22に押されて上下方向へ移動可能に固定ポンチ11に支持され、第2ブロック部材32は、倒伏位置L1と起立位置L2との間で回動可能に可動ポンチ12に支持され、倒伏位置L1にて第1ブロック部材31と上下方向で離間し、起立位置L2にて第1ブロック部材31と上下方向で当接するように形成されていることが好ましい。
【0060】
この場合、第1ブロック部材31は、パッド22に押されて上下方向へ移動可能に固定ポンチ11に支持され、第2ブロック部材32は、倒伏位置L1と起立位置L2との間で回動可能に可動ポンチ12に支持され、倒伏位置L1にて第1ブロック部材31と上下方向で離間しているので、第2ブロック部材32が倒伏位置L1に回動している場合、パッド22は、曲げ成形時に、第1ブロック部材31に邪魔されることなく、鋼板Wを固定ポンチ11の天頂成形部111に押圧することができる。そのため、パッド22は、曲げ成形時における鋼板Wに対する必要な押圧力P1を確保して、ハット型断面部品Mにおける天頂部M1の反り等を回避できる。
【0061】
また、第2ブロック部材32は、起立位置L2にて第1ブロック部材31と上下方向で当接するので、第2ブロック部材32を倒伏位置L1から起立位置L2へ回動させるだけで、可動ポンチ12とパッド22との上下方向の相対距離Hを所定距離H1に簡単に固定することができる。
【0062】
したがって、曲げ成形開始前に、第2ブロック部材32を倒伏位置L1へ回動させることによって、パッド22が曲げ成形時における鋼板Wに対する必要な押圧力P1を確保して、ハット型断面部品Mにおける天頂部M1の反り等を簡単に回避できると共に、曲げ成形完了と同時に、第2ブロック部材32を倒伏位置L1から起立位置L2へ回動させることによって、曲げ成形完了後のハット型断面部品Mの縦壁部M2が、加圧ユニット14の加圧力P2やパッド22の押圧力P1によって変形することを簡単に回避できる。
【0063】
また、図12図13に示すように、本ハット型断面部品のプレス金型10において、固定ポンチ11には、可動ポンチ12が曲げ刃21に押されて近接位置K1から離間位置K2へ移動するときに、第2ブロック部材32を倒伏位置L1から起立位置L2へ回動させる第1カム部33を備えていることが好ましい。
【0064】
この場合、可動ポンチ12が曲げ刃21に押されて近接位置K1から離間位置K2へ移動することに連動して、第1カム部33によって第2ブロック部材32を倒伏位置L1から起立位置L2へ確実に回動させることができる。そのため、パッド22に押されて可動ポンチ12側へ移動した第1ブロック部材31は、第1カム部33によって起立位置L2へ回動した第2ブロック部材32と上下方向で当接でき、離間位置K2へ移動した可動ポンチ12とパッド22との上下方向の相対距離Hを所定距離H1に確実に固定できる。
【0065】
その結果、図5図14に示すように、曲げ成形完了後に、可動ポンチ12が加圧ユニット14に押されて離間位置K2から近接位置K1へ移動する際、パッド22と可動ポンチ12とに挟持されたハット型断面部品Mの縦壁部M2が、加圧ユニット14の加圧力P2やパッド22の押圧力P1によって変形することを、安定して回避できる。
【0066】
また、図13図17に示すように、本ハット型断面部品のプレス金型10において、固定ポンチ11には、第1ブロック部材31をパッド22側へ付勢する付勢部材(付勢ばね)34を備え、第1ブロック部材31の上下方向のストローク長d2は、可動ポンチ12が近接位置K1と離間位置K2との間を移動する移動量d1より長く形成され、第1ブロック部材31には、可動ポンチ12が離間位置K2から近接位置K1へ移動した後、パッド22が天頂部M1から離間し、第1ブロック部材31が付勢部材34に押されてパッド22側へ更に移動する際に、第2ブロック部材32を起立位置L2から倒伏位置L1へ回動させる第2カム部311を備え、第2ブロック部材32には、第2カム部311と係合する受動カム部321を備えていることが好ましい。
【0067】
この場合、可動ポンチ12が近接位置K1にて停止した後に、パッド22が型開き位置へ移動する際、第1ブロック部材31は、付勢部材43の付勢力によって第1ブロック部材31のストローク長d2と可動ポンチ12の移動量d1との差分だけ、更に移動することができる。そして、第1ブロック部材31が付勢部材43の付勢力によってパッド22側へ更に移動するとき、第1ブロック部材31の第2カム部311が第2ブロック部材32の受動カム部321を押して、第2ブロック部材32を起立位置L2から倒伏位置L1へ自動的に回動させることができる。
【0068】
そのため、次に曲げ成形するときには、倒伏位置L1へ回動させた第2ブロック部材32が第1ブロック部材31と上下方向で分離して、パッド22と可動ポンチ12との上下方向の相対距離Hを規制しないので、加圧ユニット14の加圧力P2によって可動ポンチ12が近接位置K1に近接した状態の固定ポンチ11の天頂成形部111に対してパッド22が鋼板Wを押圧した状態で、ポンチ型1とダイ型2とが近接して鋼板Wを天頂部M1とその両側に起立する縦壁部M2とを備えたハット断面形状に曲げ成形し、曲げ刃21と可動ポンチ12とが縦壁部M2の先端部にステップ形状部M21を形成することができる。その結果、本ハット型断面部品のプレス金型10を用いて、連続的にプレス成形でき、ハット型断面部品Mのプレス成形におけるサイクルタイムを短縮でき、その生産性を更に向上させることができる。
【0069】
ここでは、図6図8図10図13に示すように、距離制御機構3は、固定ポンチ11の長手方向両端部11aに装着されている。距離制御機構3には、固定ポンチ11に対して上下動可能に形成された第1ブロック部材31と、第1ブロック部材31をパッド22側へ付勢する付勢ばね(付勢部材)34と、付勢ばね34を固定ポンチ11の長手方向両端部11aに支持する支持板35と、支持板35に固定された第1カム部33とストッパ部37と、倒伏位置L1と起立位置L2との間で回動可能に形成された第2ブロック部材32と、可動ポンチ12に固定され第2ブロック部材32を回動可能に支持する支持部材36とを備えている。
【0070】
また、第1ブロック部材31には、パッド22と当接する円柱部313と、第2ブロック部材32と当接する当接座312と、当接座312から第2ブロック部材32側へ起立する第2カム部311と、付勢ばね34と当接する矩形フランジ部314とを備えている。また、支持板35には、当接座312と第2カム部311とを挿通させる貫通孔351が形成されている。第1カム部33には、倒伏位置L1の第2ブロック部材32の一方の側壁325と当接する傾斜部331と、起立位置L2の第2ブロック部材32の一方の側壁325と当接する垂直部332とを備え、傾斜部331と垂直部332とが鈍角状に交差している。ストッパ部37には、倒伏位置L1の第2ブロック部材32の他方の側壁326と当接する傾斜部371を備えている。
【0071】
また、第2ブロック部材32には、第1ブロック部材31の当接座312と当接する頭部323と、頭部323と隣接する位置で第2カム部311と係合する円弧状の受動カム部321と、回動中心に突出する軸部322とを備えている。支持部材36には、第2ブロック部材32の軸部322を回動可能に支持する一対の支持部361と、両支持部361を可動ポンチ12に固定する固定部362とを備えている。なお、第2ブロック部材32の脚部324は、支持部材36の固定部362と干渉しないように円弧状に形成されている。
【0072】
(本ハット型断面部品のプレス金型の動作方法)
次に、本ハット型断面部品のプレス金型10の動作方法を、ポンチ型1を下型とし、ダイ型2を上型として、図18に示すように、ダイ型2が上死点(型開き位置)から下死点(型閉じ位置)へ下降した後、上死点(型開き位置)へ上昇する際の動作方法について説明する。
【0073】
なお、図18(a)において、縦軸は、ポンチ型1に対するダイ型2の高さを示し、横軸は、ダイ型2を上下動させるプレス機械のラムの回転角度を示す。図18(b)において、縦軸は、パッド22と可動ポンチ12との上下方向の相対距離Hを示し、横軸は、ダイ型2を上下動させるプレス機械のラムの回転角度を示す。
【0074】
ここで、高さh2は、曲げ成形開始時にパッド22が鋼板Wを固定ポンチ11の天頂成形部111に押圧したときのダイ型2の高さを示す。また、高さh1は、パッド22が鋼板Wを天頂成形部111に押圧した状態で、曲げ刃21が鋼板Wを天頂部M1とその両側に起立する縦壁部M2とを備えたハット断面形状に曲げ成形すると共に、縦壁部M2の先端部をステップ形状部M21に曲げ成形する型閉じ直前位置(下死点直前)まで下降したときのダイ型2の高さを示す。高さh3は、曲げ成形完了後に、パッド22がハット型断面部品Mの天頂部M1から離間する位置まで曲げ刃21が上昇したときのダイ型2の高さを示す。
【0075】
はじめに、図2図9に示すように、固定ポンチ11の天頂成形部111に鋼板Wを載置した後、型開き位置のダイ型2を下降させる。このとき、可動ポンチ12は、加圧ユニット14の加圧力P2によって固定ポンチ11に近接した近接位置K1に上昇している。また、第1ブロック部材31は、付勢ばね34に押されて固定ポンチ11の長手方向両端部11a内における上昇端111aに上昇している。また、第2ブロック部材32は、第1カム部33の傾斜部331とストッパ部37の傾斜部371に当接する倒伏位置L1に回動している。したがって、第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とは、上下方向で分離し、当接していない。
【0076】
次に、図2図10に示すように、ダイ型2が下降して、パッド22が鋼板Wを固定ポンチ11の天頂成形部111に押圧する。このとき、第1ブロック部材31の円柱部313がパッド22に押されて下降端まで下降するが、第2ブロック部材32は倒伏位置L1に回動しているので、第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とは、上下方向で分離し、当接していない。したがって、この段階では、距離制御機構3は、パッド22と可動ポンチ12との上下方向の相対距離H(H2)を規制せず、パッド22が鋼板Wを固定ポンチ11の天頂成形部111に押圧した状態を保持でき、可動ポンチ12は、近接位置K1に上昇した状態を保持できる。
【0077】
次に、図3図11に示すように、パッド22が鋼板Wを固定ポンチ11の天頂成形部111に押圧した状態で、ダイ型2が型閉じ直前位置まで下降して、天頂部M1とその両側に起立する縦壁部M2とを備えたハット型断面部品Mを形成すると共に、縦壁部M2の先端部にステップ形状部M21を形成する。このとき、第2ブロック部材32は、まだ、倒伏位置L1に回動しているので、第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とは、上下方向で分離し、当接していない。そのため、距離制御機構3は、パッド22と可動ポンチ12との上下方向の相対距離Hを規制せず、パッド22が天頂部M1を固定ポンチ11の天頂成形部111に押圧した状態を保持でき、可動ポンチ12は、近接位置K1に上昇した状態を保持できる。したがって、図18(b)に示すように、パッド22と可動ポンチ12との上下方向の相対距離H2は、一定の状態に維持されている。また、曲げ刃21と可動ポンチ12とが、ステップ形状部M21を挟持することができる。
【0078】
次に、図4図6図7図12図13に示すように、ダイ型2が型閉じ直前位置から型閉じ位置まで下降するとき、パッド22が天頂部M1を固定ポンチ11の天頂成形部111に押圧した状態で、曲げ刃21に押された可動ポンチ12は、近接位置K1から離間位置K2へ移動する。このとき、曲げ刃21と可動ポンチ12とがステップ形状部M21を挟持しながら、縦壁部M2に縦方向の張力Fを付加することによって、曲げ成形を完了する。また、可動ポンチ12が近接位置K1から離間位置K2へ移動するときに、第1カム部33が第2ブロック部材32の一方の側壁325を押圧することによって、第2ブロック部材32を倒伏位置L1から起立位置L2へ回動させる。第2ブロック部材32は、可動ポンチ12が離間位置K2に到達したとき、第2ブロック部材32の一方の側壁325と第1カム部33の垂直部332とが当接して、起立位置L2の状態になる。そして、パッド22に押された第1ブロック部材31の当接座312と、起立位置L2の第2ブロック部材32の頭部323とが、上下方向で当接する。また、第1ブロック部材31の第2カム部311と、第2ブロック部材32の受動カム部321とが、互いに係合する。そのため、図18(b)に示すように、ダイ型2の型閉じ位置(下死点)で、離間位置K2へ移動した可動ポンチ12とパッド22との上下方向の相対距離Hは、所定距離H1に固定される。
【0079】
次に、図5図14図18(b)に示すように、曲げ成形完了後に、ダイ型2が型閉じ位置(下死点)から型閉じ直前位置へ上昇するとき、加圧ユニット14の加圧力P2に押された可動ポンチ12は、パッド22との上下方向の相対距離Hを所定距離H1に固定した状態で、離間位置K2から近接位置K1へ移動する。その際、ハット型断面部品Mは、固定ポンチ11に対して、可動ポンチ12の移動量d1だけ上昇するが、パッド22も可動ポンチ12の移動量d1だけ上昇するので、ハット型断面部品Mの縦壁部M2を変形させることがない。
【0080】
次に、図15図17図18(b)に示すように、ダイ型2が型閉じ直前位置から型開き位置へ上昇するとき、パッド22の加圧シリンダ221のシリンダロッド221Rが伸長端まで伸びた後、パッド22は天頂部M1から離間してダイ型2と同期して上昇する。パッド22が天頂部M1から離間して上昇するとき、パッド22に押された第1ブロック部材31は、付勢ばね34に押されて固定ポンチ11の長手方向両端部11a内における上昇端111aまで上昇する。このとき、第1ブロック部材31の第2カム部311が、第2ブロック部材32の受動カム部321を押し出して、第2ブロック部材32を倒伏位置L1へ回動させ、第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とを上下方向で分離させる。
【0081】
以上の動作方法に基づいて、次に曲げ成形するときには、倒伏位置L1へ回動させた第2ブロック部材32が第1ブロック部材31と上下方向で分離して、パッド22と可動ポンチ12との上下方向の相対距離Hを規制しないので、加圧ユニット14の加圧力P2によって可動ポンチ12が近接位置K1に移動した状態の固定ポンチ11の天頂成形部111に対してパッド22が鋼板Wを押圧した状態で、ポンチ型1とダイ型2とが近接してハット型断面部品Mを形成し、縦壁部M2の先端部にステップ形状部M21を形成することができる。その結果、本ハット型断面部品のプレス金型10を用いて、連続的にプレス成形できる。
【0082】
<変形例>
本発明は、要旨を変更しない範囲であれば、様々な形態に変更できることは言うまでもない。例えば、本実施形態では、ポンチ型1には、可動ポンチ12とパッド22との上下方向の相対距離Hを制御する第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とを有する距離制御機構3を備え、距離制御機構3は、固定ポンチ11の長手方向両端部11aに装着されている。そして、第1ブロック部材31は、パッド22と直接当接するように形成されている。しかし、第1ブロック部材31は、必ずしも、パッド22と直接当接するように形成されている必要はない。
【0083】
例えば、図19図20に示すように、ハット型断面部品のプレス金型10Bでは、天頂成形部111Bは、縦壁成形部112Bに対して上下方向へ移動可能に分割され、固定ポンチ11Bに装着された付勢部材113Bによってパッド22側へ付勢され、天頂成形部111Bは、第1ブロック部材31Bと連結されていても良い。
【0084】
この場合、第1ブロック部材31Bは、上下動可能に分割された天頂成形部111Bと連結されているので、曲げ成形完了後に、可動ポンチ12が加圧ユニット14に押されて離間位置K2から近接位置K1へ移動する際、可動ポンチ12が縦壁部M2を固定ポンチ11Bから離型する方向へ押圧すると同時に、固定ポンチ11Bに装着された付勢部材113Bの付勢力によって天頂成形部111Bが天頂部M1を同方向へ押圧することができる。そのため、曲げ成形完了後のハット型断面部品Mを固定ポンチ11Bから離型させるときに、ハット型断面部品Mの縦壁部M2が変形することを、より一層回避させることができる。
【0085】
また、天頂成形部111Bは、第1ブロック部材31と連結されているので、距離制御機構3Bを固定ポンチ11Bの成形領域に内蔵することができる。この場合、距離制御機構3Bを固定ポンチ11における長手方向両端部11aに装着する必要がなく、本ハット型断面部品のプレス金型10Bをよりコンパクトに形成することができる。また、天頂成形部111Bに鋼板Wを安定して載置することができ、そのプレス作業性を向上させることができる。
【0086】
また、本実施形態では、第1ブロック部材31には、可動ポンチ12が離間位置K2から近接位置K1へ移動した後、付勢部材34に押されてパッド22側へ更に移動する際に、第2ブロック部材32を起立位置L2から倒伏位置L1へ回動させる第2カム部311を備え、第2ブロック部材32には、第2カム部311と係合する受動カム部321を備えているが、必ずしも、これに限る必要はない。
【0087】
例えば、図21図22に示すように、ハット型断面部品のプレス金型10Cの距離制御機構3Cにおいて、可動ポンチ12には、第2ブロック部材32を回動可能に支持する支持部材36が固定され、当該支持部材36と第2ブロック部材32とが、ターンオーバーばね38によって連結され、ターンオーバーばね38は、第2カム部311が受動カム部321から離間すると同時に、第2ブロック部材32を倒伏位置L1へ回動させる付勢力Q11が作用し、第2カム部311が受動カム部321と当接する同時に、第2ブロック部材32を起立位置L2へ回動させる付勢力Q21が作用するように配置されていても良い。
【0088】
ここで、ターンオーバーばね38は、円形巻き線部383と、円形巻き線部383の両端部から延設された一対の脚部381、382とを備え、一方の脚部381が支持部材36の支持部361に係止され、他方の脚部382が連結棒384を介して第2ブロック部材32の受動カム部321の近傍に係止されている。ターンオーバーばね38は、第2ブロック部材32の左右両側に配置されている。第2ブロック部材32が、第2カム部311と受動カム部321とが離間又は当接する位置へ回動したときには、両脚部381、382の係止位置と第2ブロック部材32の回転中心CLとが一直線上に配置される。この状態では、ターンオーバーばね38の付勢力Q3は、上記一直線上の方向に作用し、第2ブロック部材32を回動させる方向には作用しない。
【0089】
しかし、第2カム部311が受動カム部321から離間すると同時に、ターンオーバーばね38は、第2ブロック部材32に対して倒伏位置L1へ回動させる付勢力Q11(付勢力Q1の回転方向の分力)が作用するので、第1ブロック部材31が付勢部材43の付勢力によってストローク長d2と移動量d1との差分だけ更に移動する際、第2カム部311が受動カム部321を離間する方向へ押すと同時に、ターンオーバーばね38の付勢力Q11が作用することによって、第2ブロック部材32を倒伏位置L1へより確実に回動させることができる。
【0090】
また、第2カム部311が受動カム部321と当接すると同時に、ターンオーバーばね38は、第2ブロック部材32に対して起立位置L2へ回動させる付勢力Q21(付勢力Q2の回転方向の分力)が作用するので、可動ポンチ12が近接位置K1から離間位置K2へ移動し、第1カム部33によって第2ブロック部材32を倒伏位置L1から起立位置L2へ回動させる際、第2カム部311が受動カム部321と当接すると同時に、ターンオーバーばね38の付勢力Q21が作用することによって、第2ブロック部材32を起立位置L2へより確実に回動させることができる。
【0091】
そのため、可動ポンチ12が加圧ユニット14に押されて近接位置K1に移動し、曲げ成形を開始するときには、第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とを上下方向でより一層確実に分離させることができる。また、曲げ成形完了後に、可動ポンチ12が加圧ユニット14の加圧力P2に押されて離間位置K2から近接位置K1へ移動し、パッド22が天頂部M1から離間するまで、第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とを上下方向でより一層確実に当接させ、可動ポンチ12とパッド22との上下方向の相対距離Hを所定距離H1の状態に維持させることができる。
【0092】
また、本実施形態では、固定ポンチ11には、可動ポンチ12が曲げ刃21に押されて近接位置K1から離間位置K2へ移動するときに、第2ブロック部材32を倒伏位置L1から起立位置L2へ回動させる第1カム部33を備えているが、必ずしもこれに限る必要はなく、例えば、固定ポンチ11には、可動ポンチ12が曲げ刃21に押されて近接位置K1から離間位置K2へ移動するときに、第2ブロック部材32を倒伏位置L1から起立位置L2へ回動させる方向に圧縮エアを噴出するエアブロー装置(図示しない)を固定ポンチ11に装着しても良い。
【0093】
また、本実施形態では、第1ブロック部材31には、可動ポンチ12が離間位置K2から近接位置K1へ移動した後、付勢部材34に押されてパッド22側へ更に移動する際に、第2ブロック部材32を起立位置L2から倒伏位置L1へ回動させる第2カム部311を備え、第2ブロック部材32には、第2カム部311と係合する受動カム部321を備えているが、必ずしもこれに限る必要はなく、例えば、可動ポンチ12が離間位置K2から近接位置K1へ移動した後、第2ブロック部材32を起立位置L2から倒伏位置L1へ回動させる方向に圧縮エアを噴出するエアブロー装置(図示しない)を固定ポンチ11に装着しても良い。
【0094】
<本第2実施例のハット型断面部品のプレス金型の構成と動作方法>
次に、本実施形態に係る第2実施例のハット型断面部品のプレス金型の構成と動作方法を、図23図26を用いて、主に第1実施例との相違点を中心に説明する。図23に、本実施形態に係る第2実施例のハット型断面部品のプレス金型の断面図であって、可動ポンチが近接位置の状態で曲げ成形開始前の断面図を示す。図24に、図23に示す本ハット型断面部品のプレス金型の断面図において、(a)は可動ポンチが近接位置の状態で曲げ成形開始時の断面図を示し、(b)は可動ポンチが近接位置の状態でハット型断面部品の曲げ成形を行う型閉じ直前位置における断面図を示す。図25に、図23に示す本ハット型断面部品のプレス金型の断面図において、(a)は可動ポンチが離間位置へ移動してハット型断面部品の曲げ成形を完了した型閉じ位置における断面図を示し、(b)は曲げ成形完了後に可動ポンチが離間位置から近接位置に移動した型閉じ直前位置における断面図を示す。図26に、図23に示す本ハット型断面部品のプレス金型の断面図において、(a)は可動ポンチが近接位置に停止し、パッドが天頂部を天頂成形部に押圧した状態で曲げ刃が可動ポンチから離間する方向へ移動する断面図を示し、(b)は可動ポンチが近接位置に停止した状態でパッドが天頂部から離間し第1ブロック部材がパッドに追従して更に移動した断面図を示す。
【0095】
図23図26に示すように、本実施形態に係る第2実施例のハット型断面部品のプレス金型10Dは、型台13Dに固定されコの字状断面形状に形成された天頂成形部111Dと縦壁成形部112Dとを有する固定ポンチ11Dと、縦壁成形部112Dの先端側で板外側へステップ状に突出する凸成形部121とフランジ成形部122とを有し固定ポンチ11Dと近接する近接位置K1と固定ポンチ11Dと離間する離間位置K2との間で上下動可能に形成された可動ポンチ12Dと、型台13Dに支持され可動ポンチ12Dを固定ポンチ11D側へ加圧する加圧ユニット14Dとを有するポンチ型1Dと、凸成形部121に対向して形成された凹成形部211を有する曲げ刃21と、当該曲げ刃21の内周側に配置され鋼板Wを天頂成形部111Dに押圧可能に形成されたパッド22とを有するダイ型2とを備え、可動ポンチ12Dが近接位置K1に移動した状態で、ポンチ型1Dとダイ型2とが、近接して鋼板Wを天頂部M1とその両側に起立する縦壁部M2とを備えたハット断面形状に曲げ成形すると共に、曲げ刃21と可動ポンチ12Dとが、縦壁部M2の先端部をステップ形状部M21に曲げ成形し、曲げ刃21と可動ポンチ12Dとが、ステップ形状部M21を把持した状態で、可動ポンチ12Dが曲げ刃21に押されて近接位置K1から離間位置K2へ移動するときに、縦壁部M2に対して縦方向の張力Fを付加して曲げ成形を完了するように形成されたハット型断面部品のプレス金型10Dである。
【0096】
また、ポンチ型1Dには、可動ポンチ12Dとパッド22との上下方向の相対距離Hを制御する第1ブロック部材31Dと第2ブロック部材32Dとを有する距離制御機構3Dを備えている。そして、距離制御機構3Dは、第1ブロック部材31Dと第2ブロック部材32Dとが上下方向で分離した状態では、相対距離Hを規制せず、可動ポンチ12Dが、曲げ刃21に押されて近接位置K1から離間位置K2へ移動するまでに第1ブロック部材31Dと第2ブロック部材32Dとを上下方向で当接させて離間位置K2にて相対距離Hを所定距離H1に固定させ、曲げ成形完了後に、加圧ユニット14Dに押されて離間位置K2から近接位置K1へ移動するまで、第1ブロック部材31Dと第2ブロック部材32Dとが上下方向で当接した状態を維持させ、パッド22が天頂部M1から離間する際に、第1ブロック部材31Dと第2ブロック部材32Dとを上下方向で分離させるように形成されている。なお、加圧ユニット14Dは、型台13Dに挿入された加圧ばね141が直接に可動ポンチ12を加圧するように形成されている。
【0097】
これによって、ポンチ型1Dとダイ型2Dとが近接して鋼板Wをハット型断面部品Mに曲げ成形し縦壁部M2に縦方向の張力Fを付加して曲げ成形を完了した後に、加圧ユニット14Dの加圧力P2によって可動ポンチ12Dを固定ポンチ11D側へ移動させる際、ハット型断面部品Mの縦壁部M2が、加圧ユニット14Dの加圧力P2やパッド22の押圧力P1によって変形することを回避できる。以上の内容は、前述した第1実施例のハット型断面部品のプレス金型10と共通する。
【0098】
また、第2実施例のハット型断面部品のプレス金型10Dは、以下の内容において第1実施例と相違する。すなわち、図23に示すように、天頂成形部111Dは、縦壁成形部112Dに対して上下方向へ移動可能に分割され、固定ポンチ11Dに装着された付勢部材113Dによってパッド22側へ付勢されている。また、第1ブロック部材31Dは、天頂成形部111Dに連結されパッド22に押されて上下方向へ移動可能に形成されている。ここでは、第1ブロック部材31Dは、天頂成形部111Dの幅方向中央部から固定ポンチ11D及び可動ポンチ12Dを貫通して型台13Dまで垂直状に延設され、円柱状又は角柱状に形成されている。第1ブロック部材31Dの先端部には、上下のストローク端において、型台13Dと当接するストッパ部316Dが形成されている。
【0099】
また、図23図25に示すように、第2ブロック部材32Dは、前進位置T1と後退位置T2との間で水平方向へ移動可能に可動ポンチ12Dに支持され、後退位置T2にて第1ブロック部材31Dと上下方向で離間している。ここでは、可動ポンチ12Dには、第2ブロック部材32Dを水平方向へ移動可能に支持する支持板123Dが形成されている。また、第1ブロック部材31Dの上下方向中間部には、水平状に形成された当接座312Dを有する切欠き溝315Dが形成されている。第1ブロック部材31Dの当接座312Dは、前進位置T1へ移動した第2ブロック部材32Dの頭部323Dと上下方向で当接するように形成されている。
【0100】
上記構成によって、図24に示すように、第2ブロック部材32Dが後退位置T2に移動している場合、パッド22は、曲げ成形時に、第1ブロック部材31Dに邪魔されることなく、鋼板Wを縦壁成形部112Dに当接した天頂成形部111Dに押圧することができる。そのため、パッド22は、曲げ成形時における鋼板Wに対する必要な押圧力P1を確保して、ハット型断面部品Mにおける天頂部M1の反り等を回避できる。また、第2ブロック部材32Dは、前進位置T1にて第1ブロック部材31Dと上下方向で当接するので、第2ブロック部材32Dを後退位置T2から前進位置T1へ移動させるだけで、可動ポンチ12Dとパッド22との上下方向の相対距離Hを所定距離H1に簡単に固定することができる。
【0101】
したがって、曲げ成形開始前に、第2ブロック部材32Dを後退位置T2へ移動させることによって、曲げ成形時におけるパッド22による鋼板Wに対する必要な押圧力P1を確保して、ハット型断面部品Mにおける天頂部M1の反り等を簡単に回避できると共に、曲げ成形完了と同時に、第2ブロック部材32Dを後退位置T2から前進位置T1へ移動させることによって、曲げ成形完了後のハット型断面部品Mの縦壁部M2が、加圧ユニット14の加圧力P2やパッド22の押圧力P1によって変形することを簡単に回避できる。
【0102】
また、天頂成形部111Dは、第1ブロック部材31Dと連結されているので、距離制御機構3Dを固定ポンチ11Dの成形領域に内蔵することができる。この場合、距離制御機構3Dを固定ポンチ11Dにおける長手方向両端部に装着する必要がなく、本ハット型断面部品のプレス金型10Dをよりコンパクトに形成することができる。また、天頂成形部111Dに鋼板Wを安定して載置することができ、そのプレス作業性を向上させることができる。
【0103】
また、第2実施例のハット型断面部品のプレス金型10Dにおいて、図24図25に示すように、ポンチ型1Dの型台13Dには、可動ポンチ12Dが曲げ刃21に押されて近接位置K1から離間位置K2へ移動するときに、第2ブロック部材32Dを後退位置T2から前進位置T1へ移動させる第1カム部33Dを備えていることが好ましい。ここでは、第1カム部33Dは、第2ブロック部材32Dの後端側傾斜面324Dと当接する前端側傾斜面331Dを有し、型台13Dの可動ポンチ側に固定されている。この場合、可動ポンチ12Dが曲げ刃21に押されて近接位置K1から離間位置K2へ移動することに連動して、第1カム部33Dの前端側傾斜面331Dが第2ブロック部材32Dの後端側傾斜面324Dを押し出すことによって、第2ブロック部材32Dを後退位置T2から前進位置T1へ確実に移動させることができる。
【0104】
そのため、パッド22に押されて型台13D側へ移動した第1ブロック部材31Dは、第1カム部33Dによって前進位置T1へ移動した第2ブロック部材32Dと上下方向で当接でき、離間位置K2へ移動した可動ポンチ12Dとパッド22との上下方向の相対距離Hを所定距離H1に確実に固定できる。そして、曲げ成形完了後に、可動ポンチ12Dが加圧ユニット14に押されて離間位置K2から近接位置K1へ移動する際、パッド22と天頂成形部111Dとが天頂部M1を上下で挟持した状態で、可動ポンチ12Dと一緒に移動する。その結果、パッド22と可動ポンチ12Dとに挟持されたハット型断面部品Mの縦壁部M2が、加圧ユニット14の加圧力P2やパッド22の押圧力P1によって変形することを、より一層安定して回避できる。
【0105】
また、第2実施例のハット型断面部品のプレス金型10Dにおいて、図23図26に示すように、第1ブロック部材31Dの上下方向のストローク長d2は、可動ポンチ12Dが近接位置K1と離間位置K2との間を移動する移動量d1より長く形成され、第1ブロック部材31Dには、可動ポンチ12Dが離間位置K2から近接位置K1へ移動した後、パッド22が天頂部M1から離間し、天頂成形部111Dが付勢部材113Dに押されてパッド22側へ更に移動する際に、第2ブロック部材32Dを前進位置T1から後退位置T2へ移動させる第2カム部311Dを備え、第2ブロック部材32Dには、第2カム部311Dと係合する受動カム部321Dを備えていることが好ましい。
【0106】
この場合、可動ポンチ12Dが近接位置K1にて停止した後に、パッド22が天頂部M1から離間して型開き位置へ移動する際、天頂成形部111Dに連結された第1ブロック部材31Dは、付勢部材113Dの付勢力によって第1ブロック部材31Dのストローク長d2と可動ポンチ12Dの移動量d1との差分だけ、更に移動することができる。そして、付勢部材113Dの付勢力によって第1ブロック部材31Dがパッド22側へ更に移動するとき、第1ブロック部材31Dの第2カム部311Dが第2ブロック部材32Dの受動カム部321Dを押して、第2ブロック部材32Dを前進位置T1から後退位置T2へ自動的に移動させることができる。
【0107】
そのため、次に曲げ成形するときには、後退位置T2へ移動させた第2ブロック部材32Dが第1ブロック部材31Dと上下方向で分離して、パッド22と可動ポンチ12Dとの上下方向の相対距離Hを規制しないので、加圧ユニット14Dの加圧力P2によって可動ポンチ12Dが近接位置K1に移動した状態において、縦壁成形部112Dに当接した天頂成形部111Dに対してパッド22が鋼板Wを押圧した状態で、ポンチ型1Dとダイ型2とが近接して鋼板Wを天頂部M1とその両側に起立する縦壁部M2とを備えたハット断面形状に曲げ成形し、曲げ刃21と可動ポンチ12Dとが縦壁部M2の先端部にステップ形状部M21を形成することができる。その結果、本ハット型断面部品のプレス金型10Dを用いて、連続的にプレス成形でき、ハット型断面部品Mのプレス成形におけるサイクルタイムを短縮でき、その生産性を更に向上させることができる。
【0108】
(本ハット型断面部品のプレス金型の動作方法)
はじめに、図23に示すように、ポンチ型1Dの天頂成形部111Dに鋼板Wを載置した後、型開き位置のダイ型2を型閉じ方向へ移動させる。このとき、可動ポンチ12Dは、加圧ユニット14D(加圧ばね141D)の加圧力P2によって固定ポンチ11Dに近接した近接位置K1に移動している。また、天頂成形部111Dに連結された第1ブロック部材31Dは、付勢部材113Dに押されてパッド22側のストローク端に移動している。また、第2ブロック部材32Dは、後端側傾斜面324Dが第1カム部33Dの前端側傾斜面331Dと当接する後退位置T2に移動している。したがって、第1ブロック部材31Dと第2ブロック部材32Dとは、上下方向で分離し、当接していない。
【0109】
次に、図24(a)に示すように、ダイ型2が移動して、パッド22が鋼板Wを固定ポンチ11Dの天頂成形部111Dに押圧する。このとき、第1ブロック部材31Dがパッド22に押されて型台13D側へ移動するが、第2ブロック部材32Dは後退位置T2に移動しているので、第1ブロック部材31Dと第2ブロック部材32Dとは、上下方向で分離し、当接しない。したがって、この段階では、距離制御機構3Dは、パッド22と可動ポンチ12Dとの上下方向の相対距離Hを規制せず、パッド22が鋼板Wを縦壁成形部112Dに当接した天頂成形部111Dに押圧した状態を保持でき、可動ポンチ12Dは、近接位置K1に移動した状態を保持できる。
【0110】
次に、図24(b)に示すように、パッド22が鋼板Wを天頂成形部111Dに押圧した状態で、ダイ型2が型閉じ直前位置まで移動して、天頂部M1とその両側に起立する縦壁部M2とを備えたハット型断面部品Mを形成すると共に、縦壁部M2の先端部にステップ形状部M21を形成する。このとき、第2ブロック部材32Dは、まだ、後退位置T2に移動しているので、第1ブロック部材31Dと第2ブロック部材32Dとが、上下方向で分離し、当接していない。そのため、距離制御機構3Dは、パッド22と可動ポンチ12Dとの上下方向の相対距離Hを規制せず、パッド22が天頂部M1を天頂成形部111Dに押圧した状態を保持でき、可動ポンチ12Dは、近接位置K1に移動した状態を保持できる。したがって、曲げ刃21と可動ポンチ12Dとが、ステップ形状部M21を挟持することができる。
【0111】
次に、図25(a)に示すように、ダイ型2が型閉じ直前位置から型閉じ位置まで移動するとき、パッド22が天頂部M1を天頂成形部111Dに押圧した状態で、曲げ刃21に押された可動ポンチ12Dは、近接位置K1から離間位置K2へ移動する。このとき、曲げ刃21と可動ポンチ12Dとがステップ形状部M21を挟持しながら、縦壁部M2に縦方向の張力Fを付加することによって、曲げ成形を完了する。また、可動ポンチ12Dが近接位置K1から離間位置K2へ移動するときに、第1カム部33Dの前端側傾斜面331Dが第2ブロック部材32Dの後端側傾斜面324Dを押圧することによって、第2ブロック部材32Dを後退位置T2から前進位置T1へ移動させる。第2ブロック部材32Dは、可動ポンチ12Dが離間位置K2に到達したとき、受動カム部321Dが第1ブロック部材31Dの第2カム部311Dと係合して、前進位置T1に到達する。そして、パッド22に押され型台側のストローク端まで移動した第1ブロック部材31Dの当接座312Dと、前進位置T1の第2ブロック部材32Dの頭部323Dとが、上下方向で当接する。そのため、ダイ型2の型閉じ位置(下死点)で、離間位置K2へ移動した可動ポンチ12Dとパッド22との上下方向の相対距離Hは、所定距離H1に固定される。
【0112】
次に、図25(b)に示すように、曲げ成形完了後に、ダイ型2が型閉じ位置(下死点)から型閉じ直前位置へ移動するとき、加圧ユニット14Dの加圧力P2に押された可動ポンチ12Dは、パッド22との上下方向の相対距離Hを所定距離H1に固定した状態で、離間位置K2から近接位置K1へ移動する。その際、ハット型断面部品Mは、固定ポンチ11Dに対して、可動ポンチ12Dの移動量d1だけ移動するが、パッド22も可動ポンチ12Dの移動量d1だけ移動するので、ハット型断面部品Mの縦壁部M2を変形させることがない。また、パッド22と天頂成形部111Dとが天頂部M1を上下で挟持した状態で、可動ポンチ12Dが移動量d1だけ移動するので、縦壁部M2がスプリングゴウして固定ポンチ11Dの縦壁成形部112Dに食い付いている場合でも、離型時において、ハット型断面部品Mの縦壁部M2は変形しにくい。
【0113】
次に、図26(a)に示すように、ダイ型2が型閉じ直前位置から型開き位置へ移動するとき、パッド22の加圧シリンダ221がストローク端まで伸びた後、図26(b)に示すように、パッド22はダイ型2と同期して移動する。パッド22が天頂部M1から離間して、型開き位置へ移動するとき、第1ブロック部材31Dは、付勢部材113Dに押されてパッド22側のストローク端まで更に移動する。このとき、第1ブロック部材31Dの第2カム部311Dが、第2ブロック部材32Dの受動カム部321Dを押し出して、第2ブロック部材32Dを後退位置T2へ移動させる。
【0114】
以上の動作方法に基づいて、次に曲げ成形するときには、後退位置T2へ移動した第2ブロック部材32Dが第1ブロック部材31Dと上下方向で分離して、パッド22と可動ポンチ12Dとの上下方向の相対距離Hを規制しないので、加圧ユニット14Dの加圧力P2によって可動ポンチ12Dが近接位置K1に移動した状態の天頂成形部111Dに対してパッド22が鋼板Wを押圧した状態で、ポンチ型1Dとダイ型2とが近接してハット型断面部品Mを形成し、縦壁部M2の先端部にステップ形状部M21を形成することができる。その結果、本ハット型断面部品のプレス金型10Dを用いて、連続的にプレス成形できる。
【0115】
<作用効果>
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係るハット型断面部品のプレス金型10、10B、10C、10Dによれば、ポンチ型1、1B、1Dには、可動ポンチ12、12Dとパッド22との上下方向の相対距離Hを制御する第1ブロック部材31、31B、31Dと第2ブロック部材32、32Dとを有する距離制御機構3、3B、3C、3Dを備え、距離制御機構3、3B、3C、3Dは、第1ブロック部材31、31B、31Dと第2ブロック部材32、32Dとが上下方向で分離した状態では、相対距離Hを規制せず、可動ポンチ12、12Dが、曲げ刃21に押されて近接位置K1から離間位置K2へ移動するまでに第1ブロック部材31、31B、31Dと第2ブロック部材32、32Dとを上下方向で当接させて離間位置K2にて相対距離Hを所定距離H1に固定させ、曲げ成形完了後に、加圧ユニット14、14Dに押されて離間位置K2から近接位置K1へ移動するまで、第1ブロック部材31、31B、31Dと第2ブロック部材32、32Dとが上下方向で当接した状態を維持させ、パッド22が天頂部M1から離間する際に、第1ブロック部材31、31B、31Dと第2ブロック部材32、32Dとを上下方向で分離させるので、ポンチ型1、1Dとダイ型2とが近接して鋼板Wをハット型断面部品Mに曲げ成形し縦壁部M2に縦方向の張力Fを付加して曲げ成形を完了した後に、加圧ユニット14、14Dの加圧力P2によって可動ポンチ12、12Dを固定ポンチ11、11D側へ移動させる際、ハット型断面部品Mの縦壁部M2が、加圧ユニット14、14Dの加圧力P2やパッド22の押圧力P1によって変形することを回避できる。
【0116】
すなわち、ポンチ型1、1B、1Dには、可動ポンチ12、12Dとパッド22との上下方向の相対距離Hを制御する第1ブロック部材31、31B、31Dと第2ブロック部材32、32Dとを有する距離制御機構3、3B、3C、3Dを備え、距離制御機構3、3B、3C、3Dは、第1ブロック部材31、31B、31Dと第2ブロック部材32、32Dとが上下方向で分離した状態では、相対距離Hを規制せず、曲げ成形完了後に、パッド22が天頂部M1から離間する際に、第1ブロック部材31、31B、31Dと第2ブロック部材32、32Dとを上下方向で分離させるので、第1ブロック部材31、31B、31Dと第2ブロック部材32、32Dとを上下方向で分離させた状態で、ダイ型2が型開き位置に移動し、次の曲げ成形を開始することができる。そのため、曲げ成形開始時において、加圧ユニット14、14Dの加圧力P2によって可動ポンチ12、12Dが近接位置K1に移動した状態の天頂成形部111、111Dに対して、パッド22が第1ブロック部材31、31B、31Dに邪魔されることなく鋼板Wを押圧した状態で、ポンチ型1、1B、1Dとダイ型2とが近接して、鋼板Wを天頂部M1とその両側に起立する縦壁部M2とを備えたハット断面形状に曲げ成形し、曲げ刃21と可動ポンチ12、12Dとが縦壁部M2の先端部にステップ形状部M21を形成することができる。
【0117】
また、距離制御機構3、3B、3C、3Dは、可動ポンチ12、12Dが、曲げ刃21に押されて近接位置K1から離間位置K2へ移動するまでに第1ブロック部材31、31B、31Dと第2ブロック部材32、32Dとを上下方向で当接させて離間位置K2にて相対距離Hを所定距離H1に固定させるので、可動ポンチ12、12Dが、曲げ刃21に押されて近接位置K1から離間位置K2へ移動する途中では、可動ポンチ12、12Dとパッド22との上下方向の相対距離Hが規制されていない。そのため、パッド22が天頂部M1を固定ポンチ11、11B、11Dの天頂成形部111、111B、111Dに押圧した状態で、曲げ刃21と可動ポンチ12、12Dとがステップ形状部M21を把持して縦壁部M2に対して縦方向の張力Fを付加して、縦壁部M2における残留応力の板内側と板外側との差異を除去させ、曲げ成形を完了させることができる。また、距離制御機構3、3B、3C、3Dは、固定ポンチ11,11B、11Dに対する可動ポンチ12、12Dの離間位置K2にて相対距離Hを所定距離H1に固定させるので、曲げ成形が完了するポンチ型1、1B、1Dとダイ型2との型閉じ位置において、縦壁部M2に対して縦方向の張力Fを付加した状態を保持させ、正規の断面形状に形状凍結させることができる。そのため、ハット型断面部品Mの縦壁部M2に生じるスプリングバックや反り等を低減させることができる。
【0118】
また、距離制御機構3、3B、3C、3Dは、曲げ成形完了後に、可動ポンチ12、12Dが加圧ユニット14、14Dに押されて離間位置K2から近接位置K1へ移動するまで、第1ブロック部材31、31B、31Dと第2ブロック部材32、32Dとが上下方向で当接した状態を維持させるので、曲げ成形完了後のハット型断面部品Mを上下方向で挟持するパッド22と可動ポンチ12、12Dとを、上下方向の相対距離Hを所定距離H1の状態に維持させつつ、固定ポンチ11、11B、11Dに対する可動ポンチ12、12Dの離間位置K2から近接位置K1まで同時に移動させることができる。また、距離制御機構3、3B、3C、3Dは、パッド22が天頂部M1から離間する際に、第1ブロック部材31、31B、31Dと第2ブロック部材32、32Dとを上下方向で分離させるので、可動ポンチ12、12Dが近接位置K1に停止した後も、パッド22が天頂部M1から離間するまでパッド22を規制し、ハット型断面部品Mの縦壁部M2が、パッド22の押圧力P1によって変形することを回避できる。そのため、ハット型断面部品Mの縦壁部M2が、加圧ユニット14、14Dの加圧力P2やパッド22の押圧力P1によって変形することを回避できる。
【0119】
また、曲げ成形完了後に、加圧ユニット14、14Dの加圧力P2によって可動ポンチ12、12Dを固定ポンチ11、11B、11Dの近接位置K1へ移動させる際、パッド22と可動ポンチ12、12Dとを、上下方向の相対距離Hを所定距離H1の状態に維持させつつ、同時に移動させるので、加圧ユニット14、14Dには、可動ポンチ12、12Dを離間位置K2にて一時停止させるロッキング機構が装備された加圧装置を用いる必要がない。そのため、本ハット型断面部品のプレス金型10、10B、10C、10Dを使用できるプレス機械が、ロッキング機構が装備された加圧装置を有する一部のプレス機械に限定されることはない。その結果、本ハット型断面部品のプレス金型10、10B、10C、10Dの仕掛けが一部のプレス機械に限定されず、仕掛けの自由度、利便性を向上できる。さらに、曲げ成形完了後に、可動ポンチ12、12Dを固定ポンチ11、11B、11Dの近接位置K1へ移動させる移動タイミングを遅らせる必要がなく、ハット型断面部品Mのプレス成形におけるサイクルタイムを短縮でき、その生産性を向上させることもできる。
【0120】
よって、本ハット型断面部品のプレス金型10、10B、10C、10Dによれば、ハット型断面部品Mの縦壁部M2に生じるスプリングバックや反り等を低減させると共に、プレス機械のロッキング機構付きダイクッション装置を用いることなく、曲げ成形完了後の縦壁部M2の変形を回避しつつ、生産性を向上できるハット型断面部品のプレス金型10、10B、10C、10Dを提供することができる。
【0121】
また、本実施形態によれば、第1ブロック部材31、31Bは、パッド22に押されて上下方向へ移動可能に固定ポンチ11、11Bに支持され、第2ブロック部材32は、倒伏位置L1と起立位置L2との間で回動可能に可動ポンチ12に支持され、倒伏位置L1にて第1ブロック部材31、31Bと上下方向で離間しているので、第2ブロック部材32が倒伏位置L1に回動している場合、パッド22は、曲げ成形時に、第1ブロック部材31、31Bに邪魔されることなく、鋼板Wを固定ポンチ11、11Bの天頂成形部111、111Bに押圧することができる。そのため、パッド22は、曲げ成形時における鋼板Wに対する必要な押圧力P1を確保して、ハット型断面部品Mにおける天頂部M1の反り等を回避できる。
【0122】
また、第2ブロック部材32は、起立位置L2にて第1ブロック部材31、31Bと上下方向で当接するので、第2ブロック部材32を倒伏位置L1から起立位置L2へ回動させるだけで、可動ポンチ12とパッド22との上下方向の相対距離Hを所定距離H1に簡単に固定することができる。
【0123】
したがって、曲げ成形開始前に、第2ブロック部材32を倒伏位置L1へ回動させることによって、パッド22が曲げ成形時における鋼板Wへの必要な押圧力P1を確保して、ハット型断面部品Mにおける天頂部M1の反り等を簡単に回避できると共に、曲げ成形完了と同時に、第2ブロック部材32を倒伏位置L1から起立位置L2へ回動させることによって、曲げ成形完了後のハット型断面部品Mの縦壁部M2が、加圧ユニット14の加圧力P2やパッド22の押圧力P1によって変形することを簡単に回避できる。
【0124】
また、本実施形態によれば、固定ポンチ11、11Bには、可動ポンチ12が曲げ刃21に押されて近接位置K1から離間位置K2へ移動するときに、第2ブロック部材32を倒伏位置L1から起立位置L2へ回動させる第1カム部33を備えているので、可動ポンチ12が曲げ刃21に押されて近接位置K1から離間位置K2へ移動することに連動して、第1カム部33によって第2ブロック部材32を倒伏位置L1から起立位置L2へ確実に回動させることができる。
【0125】
そのため、パッド22に押されて可動ポンチ12側へ移動した第1ブロック部材31、31Bは、第1カム部33によって起立位置L2へ回動した第2ブロック部材32と上下方向で当接でき、離間位置K2へ移動した可動ポンチ12とパッド22との上下方向の相対距離Hを所定距離H1に確実に固定できる。その結果、曲げ成形完了後に、可動ポンチ12が加圧ユニット14に押されて離間位置K2から近接位置K1へ移動する際、パッド22と可動ポンチ12とに挟持されたハット型断面部品Mの縦壁部M2が、加圧ユニット14の加圧力P2やパッド22の押圧力P1によって変形することを、安定して回避できる。
【0126】
また、本実施形態によれば、固定ポンチ11、11Bには、第1ブロック部材31、31Bをパッド22側へ付勢する付勢部材34を備え、第1ブロック部材31、31Bの上下方向のストローク長d2は、可動ポンチ12が近接位置K1と離間位置K2との間を移動する移動量d1より長く形成され、第1ブロック部材31、31Bには、可動ポンチ12が離間位置K2から近接位置K1へ移動した後、付勢部材34に押されてパッド22側へ更に移動する際に、第2ブロック部材32を起立位置L2から倒伏位置L1へ回動させる第2カム部311を備え、第2ブロック部材32には、第2カム部311と係合する受動カム部321を備えているので、可動ポンチ12が近接位置K1にて停止した後に、パッド22が型開き位置へ移動する際、第1ブロック部材31、31Bは、付勢部材43の付勢力によって第1ブロック部材31、31Bのストローク長d2と可動ポンチ12の移動量d1との差分だけ、更に移動することができる。そして、第1ブロック部材31、31Bが付勢部材43の付勢力によってパッド22側へ更に移動するとき、第1ブロック部材31、31Bの第2カム部311が第2ブロック部材32の受動カム部321を押して、第2ブロック部材32を起立位置L2から倒伏位置L1へ自動的に回動させることができる。
【0127】
そのため、次に曲げ成形するときには、倒伏位置L1へ回動させた第2ブロック部材32が第1ブロック部材31、31Bと上下方向で分離して、パッド22と可動ポンチ12との上下方向の相対距離Hを規制しないので、加圧ユニット14の加圧力P2によって可動ポンチ12が近接位置K1に近接した状態の固定ポンチ11、11Bに対してパッド22が鋼板Wを押圧した状態で、ポンチ型1、1Bとダイ型2とが近接して鋼板Wを天頂部M1とその両側に起立する縦壁部M2とを備えたハット断面形状に曲げ成形し、曲げ刃21と可動ポンチ12とが縦壁部M2の先端部にステップ形状部M21を形成することができる。その結果、本ハット型断面部品のプレス金型10、10B、10Cを用いて、連続的にプレス成形でき、ハット型断面部品Mのプレス成形におけるサイクルタイムを短縮でき、その生産性を更に向上させることができる。
【0128】
また、本実施形態によれば、可動ポンチ12には、第2ブロック部材32を回動可能に支持する支持部材36が固定され、当該支持部材36と第2ブロック部材32とが、ターンオーバーばね38によって連結され、また、ターンオーバーばね38は、第2カム部311が受動カム部321から離間すると同時に、第2ブロック部材32を倒伏位置L1へ回動させる付勢力Q11が作用するように配置されているので、第1ブロック部材31、31Bが付勢部材43の付勢力によってストローク長d2と移動量d1との差分だけ更に移動する際、第2カム部311が受動カム部321を離間する方向へ押すと同時に、ターンオーバーばね38の付勢力Q11が作用することによって、第2ブロック部材32を倒伏位置L1へより確実に回動させることができる。
【0129】
また、ターンオーバーばね38は、第2カム部311が受動カム部321と当接すると同時に、第2ブロック部材32を起立位置L2へ回動させる付勢力Q21が作用するように配置されているので、可動ポンチ12が近接位置K1から離間位置K2へ移動し、第1カム部33によって第2ブロック部材32を倒伏位置L1から起立位置L2へ回動させる際、第2カム部311が受動カム部321と当接すると同時に、ターンオーバーばね38の付勢力Q21が作用することによって、第2ブロック部材32を起立位置L2へより確実に回動させることができる。
【0130】
そのため、可動ポンチ12が加圧ユニット14に押されて近接位置K1に移動し、曲げ成形を開始するときには、第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とを上下方向でより一層確実に分離させることができる。また、曲げ成形完了後に、可動ポンチ12が加圧ユニット14の加圧力P2に押されて離間位置K2から近接位置K1へ移動し、パッド22が天頂部M1から離間するまで、第1ブロック部材31と第2ブロック部材32とを上下方向でより一層確実に当接させ、可動ポンチ12とパッド22との上下方向の相対距離Hを所定距離H1の状態に維持させることができる。
【0131】
また、本実施形態によれば、天頂成形部111Bは、縦壁成形部112Bに対して上下方向へ移動可能に分割され、固定ポンチ11Bに装着された付勢部材113Bによってパッド22側へ付勢され、天頂成形部111Bは、第1ブロック部材31Bと連結されているので、曲げ成形完了後に、可動ポンチ12が加圧ユニット14に押されて離間位置K2から近接位置K1へ移動する際、可動ポンチ12が縦壁部M2を固定ポンチ11Bから離型する方向へ押圧すると同時に、固定ポンチ11Bに装着された付勢部材113Bの付勢力によって天頂成形部111Bが天頂部M1を同方向へ押圧することができる。そのため、曲げ成形完了後のハット型断面部品Mを固定ポンチ11Bから離型させるときに、ハット型断面部品Mの縦壁部M2が変形することをより一層回避させることができる。
【0132】
また、天頂成形部111Bは、第1ブロック部材31Bと連結されているので、距離制御機構3Bを固定ポンチ11Bの成形領域に内蔵することができる。この場合、距離制御機構3Bを固定ポンチ11Bにおける長手方向両端部11aに装着する必要がなく、本ハット型断面部品のプレス金型10Bをよりコンパクトに形成することができると共に、天頂成形部111Bに鋼板Wを安定して載置することができ、そのプレス作業性を向上させることができる。
【0133】
また、本実施形態によれば、天頂成形部111Dは、縦壁成形部112Dに対して上下方向へ移動可能に分割され、固定ポンチ11Dに装着された付勢部材113Dによってパッド22側へ付勢され、第1ブロック部材31Dは、天頂成形部111Dに連結されパッド22に押されて上下方向へ移動可能に形成され、第2ブロック部材32Dは、前進位置T1と後退位置T2との間で水平方向へ移動可能に可動ポンチ12Dに支持され、後退位置T2にて第1ブロック部材31Dと上下方向で離間しているので、第2ブロック部材32Dが後退位置T2に移動している場合、パッド22は、曲げ成形時に、第1ブロック部材31Dに邪魔されることなく、鋼板Wを縦壁成形部112Dに当接した天頂成形部111Dに押圧することができる。そのため、パッド22は、曲げ成形時における鋼板Wに対する必要な押圧力P1を確保して、ハット型断面部品Mにおける天頂部M1の反り等を回避できる。
【0134】
また、第2ブロック部材32Dは、前進位置T1にて第1ブロック部材31Dと上下方向で当接するので、第2ブロック部材32Dを後退位置T2から前進位置T1へ移動させるだけで、可動ポンチ12Dとパッド22との上下方向の相対距離Hを所定距離H1に簡単に固定することができる。
【0135】
したがって、曲げ成形開始前に、第2ブロック部材32Dを後退位置T2へ移動させることによって、パッド22が曲げ成形時における鋼板Wに対する必要な押圧力P1を確保して、ハット型断面部品Mにおける天頂部M1の反り等を簡単に回避できると共に、曲げ成形完了と同時に、第2ブロック部材32Dを後退位置T2から前進位置T1へ移動させることによって、曲げ成形完了後のハット型断面部品Mの縦壁部M2が、加圧ユニット14Dの加圧力P2やパッド22の押圧力P1によって変形することを簡単に回避できる。
【0136】
また、本実施形態によれば、ポンチ型1Dの型台13Dには、可動ポンチ12Dが曲げ刃21に押されて近接位置K1から離間位置K2へ移動するときに、第2ブロック部材32Dを後退位置T2から前進位置T1へ移動させる第1カム部33Dを備えているので、可動ポンチ12Dが曲げ刃21に押されて近接位置K1から離間位置K2へ移動することに連動して、第1カム部33Dによって第2ブロック部材32Dを後退位置T2から前進位置T1へ確実に移動させることができる。
【0137】
そのため、パッド22に押されて型台13D側へ移動した第1ブロック部材31Dは、第1カム部33Dによって前進位置T1へ移動した第2ブロック部材32Dと上下方向で当接でき、離間位置K2へ移動した可動ポンチ12Dとパッド22との上下方向の相対距離Hを所定距離H1に確実に固定できる。そして、曲げ成形完了後に、可動ポンチ12Dが加圧ユニット14Dに押されて離間位置K2から近接位置K1へ移動する際、パッド22と天頂成形部111Dとが天頂部M1を上下で挟持した状態で、可動ポンチ12Dと一緒に移動する。その結果、パッド22と可動ポンチ12Dとに挟持されたハット型断面部品Mの縦壁部M2が、加圧ユニット14Dの加圧力P2やパッド22の押圧力P1によって変形することを、より一層安定して回避できる。
【0138】
また、本実施形態によれば、第1ブロック部材31Dの上下方向のストローク長d2は、可動ポンチ12Dが近接位置K1と離間位置K2との間を移動する移動量d1より長く形成され、第1ブロック部材31Dには、可動ポンチ12Dが離間位置K2から近接位置K1へ移動した後、パッド22が天頂部M1から離間し、天頂成形部111Dが付勢部材113Dに押されてパッド22側へ更に移動する際に、第2ブロック部材32Dを前進位置T1から後退位置T2へ移動させる第2カム部311Dを備え、第2ブロック部材32Dには、第2カム部311Dと係合する受動カム部321Dを備えているので、可動ポンチ12Dが近接位置K1にて停止した後に、パッド22が天頂部M1から離間して型開き位置へ移動する際、天頂成形部111Dに連結された第1ブロック部材31Dは、付勢部材113Dの付勢力によって第1ブロック部材31Dのストローク長d2と可動ポンチ12Dの移動量d1との差分だけ、更に移動することができる。そして、付勢部材113Dの付勢力によって第1ブロック部材31Dがパッド22側へ更に移動するとき、第1ブロック部材31Dの第2カム部311Dが第2ブロック部材32Dの受動カム部321Dを押して、第2ブロック部材32Dを前進位置T1から後退位置T2へ自動的に移動させることができる。
【0139】
そのため、次に曲げ成形するときには、後退位置T2へ移動させた第2ブロック部材32Dが第1ブロック部材31Dと上下方向で分離して、パッド22と可動ポンチ12Dとの上下方向の相対距離Hを規制しない。したがって、加圧ユニット14Dの加圧力P2によって可動ポンチ12Dが近接位置K1に移動した状態において、縦壁成形部112Dに当接した天頂成形部111Dに対してパッド22が鋼板Wを押圧した状態で、ポンチ型1Dとダイ型2とが近接して鋼板Wを天頂部M1とその両側に起立する縦壁部M2とを備えたハット断面形状に曲げ成形し、曲げ刃21と可動ポンチ12Dとが縦壁部M2の先端部にステップ形状部M21を形成することができる。その結果、本ハット型断面部品のプレス金型10Dを用いて、連続的にプレス成形でき、ハット型断面部品Mのプレス成形におけるサイクルタイムを短縮でき、その生産性を更に向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0140】
本発明は、鋼板をハット型断面形状にプレス成形するハット型断面部品のプレス金型として利用できる。
【符号の説明】
【0141】
1、1B、1D ポンチ型
2 ダイ型
3、3B、3C、3D 距離制御機構
10A、10B、10C、10D ハット型断面部品のプレス金型
11、11B、11D 固定ポンチ
12、12D 可動ポンチ
13、13D 型台
14、14D 加圧ユニット
21 曲げ刃
22 パッド
31、31B、31D 第1ブロック部材
32、32D 第2ブロック部材
33、33D 第1カム部
34 付勢部材
36 支持部材
38 ターンオーバーばね
111、111B、111D 天頂成形部
112、112B、112D 縦壁成形部
113B、113D 付勢部材
121 凸成形部
122 フランジ成形部
211 凹成形部
311、311D 第2カム部
321、321D 受動カム部
d1 移動量
d2 ストローク長
F 張力
H 相対距離
H1 所定距離
K1 近接位置
K2 離間位置
L1 倒伏位置
L2 起立位置
M ハット型断面部品
M1 天頂部
M2 縦壁部
M21 ステップ形状部
Q11、Q21 付勢力
T1 前進位置
T2 後退位置
W 鋼板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図9
図10
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