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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161172
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】ウエハ載置台
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/683 20060101AFI20231030BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20231030BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/31 C
H01L21/302 101G
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071356
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 靖也
(72)【発明者】
【氏名】久野 達也
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
5F131
【Fターム(参考)】
5F004BB13
5F004BB18
5F004BB22
5F004BB25
5F004BB26
5F004BB28
5F004BB29
5F004BD04
5F004DA22
5F045AA08
5F045AC17
5F045DP03
5F045EF05
5F045EJ03
5F045EJ09
5F045EK07
5F045EM02
5F045EM05
5F045EM07
5F045EM09
5F131AA02
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA32
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA03
5F131EA11
5F131EA15
5F131EA16
5F131EA17
5F131EA18
5F131EB78
5F131EB79
5F131EB82
(57)【要約】
【課題】セラミック基材の直上領域のプラズマ密度を高くする。
【解決手段】ウエハ載置台10は、上面にウエハ載置面22aを有し、電極26を内蔵するセラミック基材20と、セラミック基材20の下面側に設けられ、プラズマ発生電極を兼用し、セラミック基材20と同径の導電性基材30と、導電性基材30の下面側に設けられ、導電性基材30よりも径が大きく、導電性基材30と電気的に絶縁された支持基材40と、支持基材40のうち導電性基材30よりも半径方向外側にはみ出した部分である取付用フランジ42と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、
前記セラミック基材の下面側に設けられ、冷媒流路又は冷媒流路溝を有し、プラズマ発生電極を兼用し、前記セラミック基材と同径の導電性基材と、
前記導電性基材の下面側に設けられ、前記導電性基材よりも径が大きく、前記導電性基材と電気的に絶縁された支持基材と、
前記支持基材のうち前記導電性基材よりも半径方向外側にはみ出した部分である取付用フランジと、
を備えたウエハ載置台。
【請求項2】
前記支持基材は、絶縁性材料で形成されている、
請求項1に記載のウエハ載置台。
【請求項3】
前記セラミック基材と前記導電性基材とを接合する第1接合層及び前記導電性基材と前記支持基材とを接合する第2接合層は、いずれも金属接合層である、
請求項2に記載のウエハ載置台。
【請求項4】
前記導電性基材は、前記冷媒流路溝を有し、
前記冷媒流路溝は、前記導電性基材のうち前記支持基材に対向する面に開口を有している、
請求項2又は3に記載のウエハ載置台。
【請求項5】
前記支持基材は、金属で形成され、前記支持基材と前記導電性基材との間には絶縁層が設けられている、
請求項1に記載のウエハ載置台。
【請求項6】
前記支持基材の下面には、ネジ穴が設けられている、
請求項5に記載のウエハ載置台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエハ載置台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ウエハ載置台として、ウエハ載置面を有すると共に電極を内蔵するセラミック基材と、セラミック基材の下面側に設けられた導電性の冷却基材とを備えたものが知られている。例えば、特許文献1には、この種のウエハ載置台として、セラミック基材よりも径の大きな冷却基材を備えたものが開示されている。ウエハ載置台の使用例の説明には、プラズマを発生させる際、高周波電圧を冷却基材に印加してもよいと記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6637184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、冷却基材はセラミック基材よりも径が大きいため、平面視でウエハと重複する領域のみならずウエハからはみ出した領域でもプラズマが発生する。ウエハからはみ出した領域で発生したプラズマは、ウエハの処理に使われないため、無駄になってしまう。そのため、セラミック基材の直上領域(設計上のプラズマ発生領域)のプラズマ密度が下がってしまうという問題があった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、セラミック基材の直上領域のプラズマ密度を高くすることを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明のウエハ載置台は、
上面にウエハ載置面を有し、電極を内蔵するセラミック基材と、
前記セラミック基材の下面側に設けられ、冷媒流路又は冷媒流路溝を有し、プラズマ発生電極を兼用し、前記セラミック基材と同径の導電性基材と、
前記導電性基材の下面側に設けられ、前記導電性基材よりも径が大きく、前記導電性基材と電気的に絶縁された支持基材と、
前記支持基材のうち前記導電性基材よりも半径方向外側にはみ出した部分である取付用フランジと、
を備えたものである。
【0007】
本発明のウエハ載置台では、支持基材のうち導電性基材よりも半径方向外側にはみ出した部分を取付用フランジとして使用するが、支持基材は導電性基材と電気的に絶縁されている。そのため、取付用フランジがプラズマ発生電極として機能することはなく、取付用フランジの直上領域でのプラズマの発生が抑制される。その結果、セラミック基材の直上領域のプラズマ密度を高くすることができる。
【0008】
なお、本明細書では、上下、左右、前後などを用いて本発明を説明することがあるが、上下、左右、前後は、相対的な位置関係に過ぎない。そのため、ウエハ載置台の向きを変えた場合には上下が左右になったり左右が上下になったりすることがあるが、そうした場合も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0009】
[2]上述したウエハ載置台(前記[1]に記載のウエハ載置台)において、前記支持基材は、絶縁性材料で形成されているものとしてもよい。こうすれば、比較的簡単に支持基材を導電性基材と電気的に絶縁することができる。
【0010】
[3]上述したウエハ載置台(前記[2]に記載のウエハ載置台)において、前記セラミック基材と前記導電性基材とを接合する第1接合層及び前記導電性基材と前記支持基材とを接合する第2接合層は、いずれも金属接合層であるものとしてもよい。こうすれば、セラミック基材と導電性基材との接合と、導電性基材と支持基材との接合を同じ工程で行うことができるため、製造コストを抑えることができる。
【0011】
[4]上述したウエハ載置台(前記[2]又は[3]に記載のウエハ載置台)において、前記導電性基材は、前記冷媒流路溝を有し、前記冷媒流路溝は、前記導電性基材のうち前記支持基材に対向する面に開口を有しているものとしてもよい。こうすれば、導電性基材が冷媒流路を備えている場合に比べて、冷媒流路の下面側の材料が不要になるため、その分製造コストを抑えることができる。
【0012】
[5]上述したウエハ載置台(前記[1]に記載のウエハ載置台)において、前記支持基材は、金属で形成され、前記支持基材と前記導電性基材との間には絶縁層が設けられていてもよい。こうすれば、支持基材が金属製であっても、支持基材と導電性基材とを電気的に絶縁することができる。
【0013】
[6]上述したウエハ載置台(前記[5]に記載のウエハ載置台)において、前記支持基材の下面には、ネジ穴が設けられていてもよい。支持基材が金属製つまり延性材料で作製されているため、支持基材の下面にネジ穴を設けることができる。一方、支持基材が脆性材料(例えばセラミックとか金属とセラミックとの複合材料)で作製されている場合には、支持基材にネジ穴を設けることは困難である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】チャンバ94に設置されたウエハ載置台10の縦断面図。
図2】ウエハ載置台10の平面図。
図3】ウエハ載置台10の製造工程図。
図4】チャンバ94に設置されたウエハ載置台210の縦断面図。
図5】ウエハ載置台210の製造工程図。
図6】ウエハ載置台10の別例の縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。図1はチャンバ94に設置されたウエハ載置台10の縦断面図(ウエハ載置台10の中心軸を含む面で切断したときの断面図)、図2はウエハ載置台10の平面図である。
【0016】
ウエハ載置台10は、ウエハWにプラズマを利用してCVDやエッチングなどを行うために用いられるものであり、半導体プロセス用のチャンバ94の内部に設けられた設置板96に固定されている。ウエハ載置台10は、セラミック基材20と、導電性基材30と、支持基材40とを備えている。
【0017】
セラミック基材20は、上面に円形のウエハ載置面22aを有する円板である。ウエハ載置面22aには、ウエハWが載置される。セラミック基材20は、アルミナ、窒化アルミニウムなどに代表されるセラミック材料で形成されている。
【0018】
セラミック基材20は、ウエハ載置面22aに近い側に、ウエハ吸着用電極26を内蔵している。ウエハ吸着用電極26は、例えばW、Mo、WC、MoCなどを含有する材料によって形成されている。ウエハ吸着用電極26は、円板状又はメッシュ状の単極型の静電吸着用電極である。セラミック基材20のうちウエハ吸着用電極26よりも上側の層は誘電体層として機能する。ウエハ吸着用電極26には、ウエハ吸着用直流電源52が給電端子54を介して接続されている。給電端子54は、導電性基材30、支持基材40、第1接合層46及び第2接合層48を上下方向に貫通する貫通穴に配置された絶縁管55を通過して、セラミック基材20の下面からウエハ吸着用電極26に至るように設けられている。ウエハ吸着用直流電源52とウエハ吸着用電極26との間には、ローパスフィルタ(LPF)53が設けられている。
【0019】
導電性基材30は、セラミック基材20と同じ直径の円板であり、セラミック基材20の下面側に設けられている。導電性基材30は、セラミック基材20を冷却する冷却基材として用いられるものであり、熱伝導率が良好なものである。導電性基材30の内部には、冷媒が循環する冷媒流路32が形成されている。冷媒流路32は、平面視で導電性基材30の全体にわたって一端(入口)から他端(出口)まで一筆書きの要領で形成されている。冷媒流路32の一端及び他端には、図示しない外部冷媒装置の供給口及び回収口がそれぞれ接続される。外部冷媒装置の供給口から冷媒流路32の一端に供給された冷媒は、冷媒流路32を通過したあと冷媒流路32の他端から外部冷媒装置の回収口に戻り、温度調整されたあと再び供給口から冷媒流路32の一端に供給される。冷媒流路32を流れる冷媒は、液体が好ましく、電気絶縁性であることが好ましい。電気絶縁性の液体としては、例えばフッ素系不活性液体などが挙げられる。
【0020】
導電性基材30の材料は、例えば、金属材料や金属とセラミックとの複合材料などが挙げられる。金属材料としては、Al、Ti、Mo又はそれらの合金などが挙げられる。金属とセラミックとの複合材料としては、金属マトリックス複合材料(MMC)やセラミックマトリックス複合材料(CMC)などが挙げられる。こうした複合材料の具体例としては、Si,SiC及びTiを含む材料(SiSiCTiともいう)、SiC多孔質体にAl及び/又はSiを含浸させた材料、Al23とTiCとの複合材料などが挙げられる。導電性基材30の材料としては、セラミック基材20の材料と熱膨張係数の近いものを選択するのが好ましい。導電性基材30は、プラズマ発生電極を兼ねるものであり、RF電源62に給電端子64を介して接続されている。給電端子64は、支持基材40及び第2接合層48を貫通する貫通穴に配置された絶縁管65を通過して、導電性基材30の下面に至るように設けられている。給電端子64は、チャンバ94に設けられており、図示しないバネによって下から上に向かって付勢されている。そのため、給電端子64の上端は、導電性基材30の下面と弾性接触している。なお、第1実施形態では、絶縁管65を省略してもよい。導電性基材30とRF電源62との間には、ハイパスフィルタ(HPF)63が配置されている。
【0021】
支持基材40は、導電性基材30よりも径の大きな円板であり、導電性基材30の下面側に設けられている。支持基材40は、導電性基材30と同径の中央部41と、導電性基材30よりも半径方向外側にはみ出した部分である取付用フランジ42とを有している。支持基材40は、絶縁性材料で形成されている。そのため、支持基材40は、導電性基材30と電気的に絶縁されている。絶縁性材料としては、例えば、アルミナ、窒化アルミニウムなどに代表されるセラミック材料が挙げられる。支持基材40の材料としては、導電性基材30と熱膨張係数が近い、つまりセラミック基材20の材料と熱膨張係数の近いものを選択するのが好ましい。
【0022】
セラミック基材20と導電性基材30とは、第1接合層46を介して接合されている。また、導電性基材30と支持基材40とは、第2接合層48を介して接合されている。第1接合層46及び第2接合層48は、いずれも金属接合層である。金属接合層は、例えば、はんだや金属ロウ材で形成された層であってもよい。金属接合層は、例えばTCB(Thermal compression bonding)により形成される。TCBとは、接合対象の2つの部材の間に金属接合材を挟み込み、金属接合材の固相線温度以下の温度に加熱した状態で2つの部材を加圧接合する公知の方法をいう。
【0023】
セラミック基材20の側面、第1接合層46の外周、導電性基材30の側面、第2接合層48の外周及び支持基材40の取付用フランジ42の上面と側面は、絶縁膜50で被覆されている。絶縁膜50としては、例えばアルミナやイットリアなどの溶射膜が挙げられる。なお、第1実施形態では、絶縁膜50のうち、セラミック基材20の側面及び取付用フランジ42の上面と側面に設けられた一部又は全部を省略してもよい。
【0024】
こうしたウエハ載置台10は、チャンバ94の内部に設けられた設置板96にクランプ部材70を用いて取り付けられる。ウエハ載置台10と設置板96との間には、シールリング78が配置される。シールリング78は、金属製又は樹脂製であり、支持基材40の外縁のやや内側に配置されている。クランプ部材70は、断面が略逆L字状の環状部材であり、内周段差面70aを有する。ウエハ載置台10と設置板96とは、クランプ部材70によって一体化されている。ウエハ載置台10の取付用フランジ42に、クランプ部材70の内周段差面70aを載置した状態で、クランプ部材70の上面からボルト72が差し込まれて設置板96の上面に設けられたネジ穴に螺合されている。ボルト72は、クランプ部材70の円周方向に沿って等間隔に設けられた複数箇所(例えば8箇所とか12箇所)に取り付けられる。クランプ部材70やボルト72は、絶縁材料で作製されていてもよいし、導電材料(金属など)で作製されていてもよい。ボルト72は、延性材料(例えばTi,Mo,Wなど)で形成されていることが好ましい。
【0025】
次に、ウエハ載置台10の製造例を図3を用いて説明する。図3はウエハ載置台10の製造工程図である。ここでは、導電性基材30をMMCで作製し、支持基材40をセラミックで作製する場合を例示する。まず、ウエハ吸着用電極26を内蔵するセラミック基材20を準備する(図3A)。例えば、ウエハ吸着用電極26を内蔵するセラミック粉末の成形体を作製し、その成形体をホットプレス焼成することにより、セラミック基材20を得る。次に、セラミック基材20の下面からウエハ吸着用電極26まで穴27をあけ(図3B)、その穴27に給電端子54を挿入して給電端子54とウエハ吸着用電極26とを接合する(図3C)。
【0026】
これと並行して、2つのMMC円板部材131,136を作製し(図3D)、上側のMMC円板部材131の下面に最終的に冷媒流路32となる溝132を形成すると共に、両方のMMC円板部材131,136に上下方向に貫通する貫通穴134,138を形成する(図3E)。セラミック基材20がアルミナ製の場合、MMC円板部材131,136はSiSiCTi製かAlSiC製であることが好ましい。アルミナの熱膨張係数とSiSiCTiやAlSiCの熱膨張係数とは、概ね同じだからである。
【0027】
SiSiCTi製の円板部材は、例えば以下のように作製することができる。まず、炭化珪素と金属Siと金属Tiとを混合して粉体混合物を作製する。次に、得られた粉体混合物を一軸加圧成形により円板状の成形体を作製し、その成形体を不活性雰囲気下でホットプレス焼結させることにより、SiSiCTi製の円板部材を得る。
【0028】
さらにこれらと並行して、セラミック材料製の支持基材40を準備する(図3F)。例えば、セラミック粉末の成形体を作製し、その成形体をホットプレス焼成することにより、支持基材40を得る。セラミック基材20がアルミナ製の場合、支持基材40はアルミナ製であることが好ましい。支持基材40のアルミナは、コスト低減の観点から、セラミック基材20のアルミナよりも純度が低いものとしてもよい。次に、支持基材40を上下方向に貫通する貫通穴43,45を形成する(図3G)。
【0029】
次に、下側のMMC円板部材136の下面と支持基材40の上面との間に金属接合材を配置する。金属接合材には、貫通穴43に連通する貫通穴や貫通穴45に連通する貫通穴を設けておく。また、上側のMMC円板部材131の下面と下側のMMC円板部材136の上面との間に金属接合材を配置すると共に、上側のMMC円板部材131の上面に金属接合材を配置する。各金属接合材には、貫通穴134,138に連通する貫通穴を設けておく。セラミック基材20の給電端子54をMMC円板部材131,136の貫通穴134,138及び支持基材40の貫通穴43に挿入し、セラミック基材20を上側のMMC円板部材131の上面に配置された金属接合材の上に載せる。これにより、支持基材40と金属接合材と下側のMMC円板部材136と金属接合材と上側のMMC円板部材131と金属接合材とセラミック基材20とを下からこの順に積層した積層体を得る。この積層体を加熱しながら加圧することにより(TCB)、接合体110を得る(図3H)。接合体110は、支持基材40の上面に、金属接合層である第2接合層48を介して、導電性基材30が接合され、この導電性基材30の上面に、金属接合層である第1接合層46を介してセラミック基材20が接合されたものである。導電性基材30は、上側のMMC円板部材131と下側のMMC円板部材136とが金属接合層135を介して接合されたものである。導電性基材30は、内部に冷媒流路32を有する。
【0030】
TCBは、例えば以下のように行われる。すなわち、金属接合材の固相線温度以下(例えば、固相線温度から20℃引いた温度以上固相線温度以下)の温度で積層体を加圧して接合し、その後室温に戻す。これにより、金属接合材は金属接合層になる。このときの金属接合材としては、Al-Mg系接合材やAl-Si-Mg系接合材を使用することができる。例えば、Al-Si-Mg系接合材を用いてTCBを行う場合、真空雰囲気下で加熱した状態で積層体を加圧する。金属接合材は、厚みが100μm前後のものを用いるのが好ましい。
【0031】
続いて、貫通穴134,138,43及び金属接合材の穴に、給電端子54を挿通する絶縁管55を配置する。また、貫通穴45及び金属接合材の穴に、給電端子64を挿通する絶縁管65を配置する。更に、セラミック基材20の側面、第1接合層46の周囲、導電性基材30の側面、第2接合層48の周囲、及び支持基材40の取付用フランジ42の上面と側面を、セラミック粉末を用いて溶射することにより絶縁膜50を形成する(図3I)。これにより、ウエハ載置台10を得る。
【0032】
なお、図1の導電性基材30は、一体品として記載したが、図3Iに示すように2つの部材が金属接合層で接合された構造であってもよいし、3つ以上の部材が金属接合層で接合された構造であってもよい。
【0033】
次に、ウエハ載置台10の使用例について図1を用いて説明する。チャンバ94の設置板96には、上述したようにウエハ載置台10がクランプ部材70によって固定されている。チャンバ94の天井面には、プロセスガスを多数のガス噴射孔からチャンバ94の内部へ放出するシャワーヘッド98が配置されている。
【0034】
ウエハ載置台10のウエハ載置面22aには、円盤状のウエハWが載置される。この状態で、ウエハ吸着用電極26にウエハ吸着用直流電源52の直流電圧を印加してウエハWをウエハ載置面22aに吸着させる。そして、チャンバ94の内部を所定の真空雰囲気(又は減圧雰囲気)になるように設定し、シャワーヘッド98からプロセスガスを供給しながら、導電性基材30にRF電源62からのRF電圧を印加する。すると、ウエハWとシャワーヘッド98との間でプラズマが発生する。そして、そのプラズマを利用してウエハWにCVD成膜を施したりエッチングを施したりする。
【0035】
ハイパワープラズマでウエハWを処理する場合には、ウエハWを効率的に冷却する必要がある。ウエハ載置台10では、セラミック基材20と導電性基材30との間の第1接合層46として、熱伝導率の低い樹脂層ではなく、熱伝導率の高い金属接合層を用いている。そのため、ウエハWから熱を引く能力(抜熱能力)が高い。また、セラミック基材20と導電性基材30との熱膨張差は小さいため、第1接合層46の応力緩和性が低くても、支障が生じにくい。
【0036】
以上説明したウエハ載置台10では、支持基材40のうち導電性基材30よりも半径方向外側にはみ出した部分を取付用フランジ42として使用するが、支持基材40は絶縁性材料で形成されているため、導電性基材30と電気的に絶縁されている。そのため、取付用フランジ42がプラズマ発生電極として機能することはなく、取付用フランジ42の直上領域でのプラズマの発生が抑制される。その結果、セラミック基材20の直上領域のプラズマ密度を高くすることができる。
【0037】
また、支持基材40は、絶縁性材料で形成されているため、比較的簡単に支持基材40を導電性基材30と電気的に絶縁することができる。
【0038】
更に、第1接合層46及び第2接合層48は、いずれも金属接合層であるため、セラミック基材20と導電性基材30との接合と、導電性基材30と支持基材40との接合を同じ工程で行うことができる。これにより製造コストを抑えることができる。
【0039】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。図4はチャンバ94に設置されたウエハ載置台210の縦断面図(ウエハ載置台210の中心軸を含む面で切断したときの断面図)である。ウエハ載置台210は、ウエハWにプラズマを利用してCVDやエッチングなどを行うために用いられるものであり、半導体プロセス用のチャンバ94の内部に設けられた設置板96に固定されている。ウエハ載置台210は、セラミック基材20と、導電性基材30と、支持基材240とを備えている。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成要素については同じ符号を付して説明を省略する。
【0040】
支持基材240は、導電性基材30よりも径の大きな円板であり、導電性基材30の下面に設けられている。支持基材240は、導電性基材30と同径の中央部241と、導電性基材30よりも半径方向外側にはみ出した部分である取付用フランジ242とを有している。支持基材240は、金属材料で形成されている。金属材料としては、例えば、Al、Ti、Mo又はそれらの合金などが挙げられる。支持基材240の下面には、複数のネジ穴244が設けられている。複数のネジ穴244は、支持基材240の中央部241に、支持基材240の同心円(例えばウエハWの直径の1/2とか1/3の円)にほぼ沿うように、概ね等間隔に複数(例えば6個とか8個)設けられている。複数のネジ穴244は、内周面に雌ネジが切られており、支持基材240の下面に開口している。支持基材240の取付用フランジ242には、複数の貫通穴246が設けられている。複数の貫通穴246は、支持基材240の同心円にほぼ沿うように、概ね等間隔に複数(例えば8個とか12個)設けられている。複数の貫通孔246は、取付用フランジ242を上下方向に貫通し、取付用フランジ242の上面及び下面に開口している。
【0041】
導電性基材30と支持基材240との間には、絶縁層である第2接合層248が設けられている。この第2接合層248により、支持基材240は導電性基材30と電気的に絶縁されている。この第2接合層248は、シリコーン樹脂やアクリル樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂などに代表される絶縁性を有する樹脂製の接着シートで形成された層であり、導電性基材30の下面と直径が同じ円形の層である。第2接合層248は、単層構造でもよいし、多層構造でもよい。第2接合層248は、ポリプロピレン製の芯材の両面にアクリル樹脂層を備えたシートや、ポリイミド製の芯材の両面にシリコーン樹脂層を備えたシート、エポキシ樹脂単独のシートなどとしてもよい。
【0042】
こうしたウエハ載置台210は、チャンバ94の内部に設けられた設置板96に、ボルト274及びボルト276を用いて取り付けられる。ウエハ載置台210と設置板96との間には、シールリング278が配置される。シールリング278は、金属製又は樹脂製であり、支持基材240の中央部241の外縁のやや内側に配置されている。ボルト274は、足部の外周面に雄ネジが切られており、設置板96のうちネジ穴244に対向する位置に設けられた貫通穴に設置板96の下面から挿通され、支持基材240のネジ穴244に螺合されている。ボルト276は、足部の外周面に雄ネジが切られており、取付用フランジ242に設けられた貫通穴246に取付用フランジ242の上面から挿通され、設置板96のうち貫通穴246に対向する位置に設けられたネジ穴に螺合されている。このネジ穴は、内周面に雌ネジが切られており、設置板96の上面に開口している。ボルト274やボルト276は、絶縁材料で作製されていてもよいし、導電材料(金属など)で作製されていてもよい。ボルト274やボルト276は、延性材料(例えばTi,Mo,Wなど)で形成されていることが好ましい。
【0043】
次に、ウエハ載置台210の製造例を図5を用いて説明する。図5はウエハ載置台210の製造工程を示す製造工程図である。ここでは、導電性基材30をMMCで作製し、支持基材240を金属で作製する場合を例示する。このウエハ載置台210を製造する際には、まず、図3A~Eと同様の工程を行う(図5A~E)。また、これと並行して、金属材料製の支持基材240を準備し(図5F)、支持基材240を上下方向に貫通する貫通穴243,245や、支持基材240の下面に設けられたネジ穴244、支持基材240の外周部を上下方向に貫通する貫通穴246を形成する(図5G)。
【0044】
次に、上側のMMC円板部材131の下面と下側のMMC円板部材136の上面との間に金属接合材を配置すると共に、上側のMMC円板部材131の上面に金属接合材を配置する。各金属接合材には、貫通穴134,138に連通する貫通穴を設けておく。セラミック基材20の給電端子54をMMC円板部材131,136の貫通穴134,138に挿入し、セラミック基材20を上側のMMC円板部材131の上面に配置された金属接合材の上に載せる。これにより、下側のMMC円板部材136と金属接合材と上側のMMC円板部材131と金属接合材とセラミック基材20とを下からこの順に積層した積層体を得る。この積層体を加熱しながら加圧することにより(TCB)、接合体305を得る(図5H)。接合体305は、導電性基材30の上面に、金属接合層である第1接合層46を介してセラミック基材20が接合されたものである。
【0045】
続いて、支持基材240の上面に第2接合層248となる接着シートを配置する。接着シートには、貫通穴134,138,243に連通する貫通穴や貫通穴245に連通する貫通穴を設けておく。接合体305の給電端子54を支持基材240の貫通穴243に挿入し、接合体305を支持基材240の上面に配置された接着シートの上に載せる。これにより、支持基材240と接着シートと接合体305とを下からこの順に積層した積層体を得る。この積層体を加熱しながら真空プレスによる加圧を行い、接着シートを硬化させて、接合体305と支持基材240とを絶縁層である第2接合層248で接合することで、接合体310を得る(図5I)。
【0046】
続いて、貫通穴134,138,243及び金属接合材や接着シートの穴に、給電端子54を挿通する絶縁管55を配置する。また、貫通穴245及び接着シートの穴に、給電端子64を挿通する絶縁管65を配置する。更に、セラミック基材20の側面、第1接合層46の周囲、導電性基材30の側面、第2接合層248の周囲、及び支持基材240の取付用フランジ242の上面と側面を、セラミック粉末を用いて溶射することにより絶縁膜50を形成する(図5J)。これにより、ウエハ載置台210を得る。なお、第2実施形態では、絶縁膜50のうち、セラミック基材20の側面及び第2接合層248の周囲に設けられた一部又は全部を省略してもよい。絶縁膜50の形成タイミングは接合体310を形成する前としてもよく、例えば、接合体305と支持基材240とのそれぞれに絶縁膜50を形成してから両者を接合してもよい。
【0047】
このウエハ載置台210は、ウエハ載置台10の使用例と同様に使用できる。
【0048】
以上説明したウエハ載置台210では、支持基材240のうち導電性基材30よりも半径方向外側にはみ出した部分を取付用フランジ242として使用するが、支持基材240は絶縁層である第2接合層248を介して導電性基材30と接合されているため、導電性基材30と電気的に絶縁されている。そのため、取付用フランジ242がプラズマ発生電極として機能することはなく、取付用フランジ242の直上領域でのプラズマの発生が抑制される。その結果、セラミック基材20の直上領域のプラズマ密度を高くすることができる。
【0049】
また、支持基材240と導電性基材30との間には絶縁層である第2接合層248が設けられているため、支持基材240が金属製であっても、支持基材240と導電性基材30とを電気的に絶縁することができる。また、支持基材240は、金属製つまり延性材料で作製されているため、支持基材240の下面にネジ穴244を設けることができる。支持基材240の下面にネジ穴244を設けることができるため、支持基材240の中央部241でウエハ載置台210を設置板96に取り付けることもできる。
【0050】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0051】
例えば、上述した第1,2実施形態では、導電性基材30は、内部に冷媒流路32を有するものとしたが、特にこれに限定されない。例えば、図6に示すように、導電性基材30は、下面に冷媒流路溝34を有してもよく、導電性基材30の下面側に配置された第2接合層48によって冷媒流路溝34の下部開口が閉鎖されて冷媒流路32を構成するようにしてもよい。こうすれば、導電性基材30が、内部に冷媒流路32を備えている場合に比べて、冷媒流路32の下面側の材料(MMC円板部材136)が不要になるため、その分製造コストを抑えることができる。図6では、上述した実施形態と同じ構成要素については同じ符号を付した。また、例えば、導電性基材30は、上面に冷媒流路溝を有してもよいし、冷媒流路も冷媒流路溝も有さないものとしてもよい。
【0052】
上述した第1,2実施形態において、導電性基材30の下面からウエハ載置面22aに至るようにウエハ載置台10,210を貫通する穴を設けてもよい。こうした穴としては、ウエハWの裏面に熱伝導ガス(例えばHeガス)を供給するためのガス供給穴や、ウエハ載置面22aに対してウエハWを上下させるリフトピンを挿通するためのリフトピン穴などが挙げられる。熱伝導ガスは、ウエハ載置面22aに設けれられた図示しない多数の小突起(ウエハWを支持する)とウエハWとによって形成される空間に供給される。リフトピン穴は、ウエハWを例えば3本のリフトピンで支持する場合には3箇所に設けられる。支持基材40,240の下面と設置板96の上面との間には、こうした穴に対向する位置に樹脂製又は金属製のシールリング(例えばOリング)を配置してもよい。
【0053】
上述した第1,2実施形態では、セラミック基材20にウエハ吸着用電極26を内蔵したが、これに代えて又は加えて、ヒータ電極(抵抗発熱体)を内蔵してもよい。この場合、ヒータ電極にヒータ電源を接続する。セラミック基材20は、電極を1層内蔵していてもよいし、間隔を空けて2層以上内蔵していてもよい。
【0054】
上述した第1,2実施形態では、セラミック基材20と導電性基材30とを金属接合層である第1接合層46で接合したが、第1接合層46は、樹脂接合層としてもよい。
【0055】
上述した第1実施形態では、第2接合層48を金属接合層としたが、第2接合層48を樹脂接合層としてもよい。
【0056】
上述した第1実施形態では、導電性基材30の下面に給電端子64の上端が接触しているものとしたが、第2接合層48が金属接合層の場合、第2接合層48の下面に給電端子64の上端が接触しているものとしてもよい。その場合、第2接合層48やその元となる金属接合材において、給電端子64を挿入する貫通穴(貫通穴45に連通する貫通穴)を省略すればよい。
【0057】
上述した第2実施形態では、支持基材240は、ネジ穴244及び貫通穴246が形成されているものとしたが、これらの一方又は両方を省略してもよい。また、貫通穴246を設ける代わりに、第1実施形態と同様にクランプ部材70を用いて取付用フランジ242を載置板96に取り付けてもよい。また、ネジ穴244を中央部241の下面ではなく取付用フランジ242の下面に形成してもよい。
【0058】
上述した第1,2実施形態では、セラミック基材20はセラミック粉末の成形体をホットプレス焼成することにより作製したが、そのときの成形体は、テープ成形体を複数枚積層して作製してもよいし、モールドキャスト法によって作製してもよいし、セラミック粉末を押し固めることによって作製してもよい。第1実施形態の支持基材40も同様である。
【符号の説明】
【0059】
10 ウエハ載置台、20 セラミック基材、22a ウエハ載置面、26 ウエハ吸着用電極、27 穴、30 導電性基材、32 冷媒流路、40 支持基材、41 中央部、42 取付用フランジ、43 貫通穴、45 貫通穴、46 第1接合層、48 第2接合層、50 絶縁膜、52 ウエハ吸着用直流電源、53 ローパスフィルタ、54 給電端子、55 絶縁管、62 RF電源、63 ハイパスフィルタ、64 給電端子、65 絶縁管、70 クランプ部材、70a 内周段差面、72 ボルト、94 チャンバ、96 設置板、98 シャワーヘッド、110 接合体、131,136 MMC円板部材、132 溝、134,138 貫通穴、135 金属接合層、210 ウエハ載置台、240 支持基材、241 中央部、242 取付用フランジ、243 貫通穴、244 ネジ穴、245 貫通穴、246 貫通穴、248 第2接合層、274 ボルト、276 ボルト、278 シールリング、305 接合体、310 接合体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6