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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161175
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】風車設備および風車ブレード
(51)【国際特許分類】
   F03D 3/06 20060101AFI20231030BHJP
   F03D 7/06 20060101ALI20231030BHJP
【FI】
F03D3/06 G
F03D7/06 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071363
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】318001968
【氏名又は名称】株式会社OKYA
(72)【発明者】
【氏名】菅野優
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA16
3H178AA40
3H178AA43
3H178BB02
3H178BB31
3H178CC03
3H178CC05
3H178DD12Z
3H178DD37X
3H178EE06
3H178EE13
(57)【要約】
【課題】風車が静止、または低速回転時の起動トルクを得やすく、また高速回転時のブレードの空気抵抗を抑制することで高いエネルギー効率を得ることができる風車ブレードおよび風車設備を提供する。
【解決手段】回転軸が水平で、かつ風向と交差する位置関係にある風車設備であって、そのブレードは、回転軌道より外側にストッパーまで自由開閉できるフタが具備されており、風車の回転速度が小さいときには回転軸より下部にあるブレードのフタが開いて受風面となり起動トルクを発生させ、回転軸より上部にあるブレードのフタが閉じて回転の空気抵抗を減じる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸が水平で、かつ風向と交差する位置関係にあり、その回転軸まわりには少なくともひとつのブレードが具備される風車設備であって、
ブレードの回転外側面の少なくとも一部あるいは全てが回転外側に所定の範囲で自由開閉できる第一のフタが具備されており、回転軸より下部にあるブレードのフタが自重でストッパの位置まで開いて受風面となり起動トルクを発生させ、回転軸より上部にあるブレードの第一のフタは自重で閉じてフタが開いている状態より受風面積が小さくなり向かい風の抵抗を減じることを特徴とする風車ブレードとその風車設備。
【請求項2】
請求項1に記載の風車設備であって、ブレードの回転内側に開閉可能な第二のフタが風車に具備されたブレードと請求項1に記載のブレードを同じ回転軸の風車の中に組合せた風車設備。
【請求項3】
請求項2に記載の風車設備で、第一と第二のフタの幅は、それぞれの回転軸からの距離に応じて設計され、第一のフタの幅が第二のフタの幅より小さい風車設備。
【請求項4】
請求項2に記載の風車設備で、第一と第二のフタの幅は、それぞれの回転軸からの距離に応じて設計され、第二のフタの幅が第一のフタの幅より大きい風車設備。
【請求項5】
請求項2に記載の風車設備で、第一のフタを有する第一のブレードと、第二のフタを有する第二のブレードで構成された風車設備
【請求項6】
請求項2に記載の風車設備で、第一のフタと、第二のフタをともに有する第三のブレードで構成された風車設備
【請求項7】
フタを有するブレードは一対の風横抜け防止部が設けられ、
ブレードのフタが自重で下方に開いた状態では、ブレードと開いたフタと風横抜け低減部とによるブレードの受風部に袋状の空間が形成されることを特徴とする、
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の風車設備。
【請求項8】
請求項7に記載の風車設備を2式、それぞれの回転軸がほぼ直交する位置関係で配置させた風車設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風車用ブレード及びこれを備えた風車に関する。
【背景技術】
【0002】
風を受けて動力を得る風車としては、例えばプロペラ型風車に代表される水平軸風車と、ダリウス型風車やジャイロミル風車などがある垂直軸風車が挙げられる。それぞれ回転軸と、回転軸の周囲に具備された1枚または複数のブレードを有している。
【0003】
風車のブレードの種類については、風によりブレードに発生する揚力を利用して回転する揚力型と、ブレードを風が押す力を利用して回転する抗力型とに分類される。
【0004】
風車の性能を特徴づける重要な特性係数のひとつにソリディティ(solidity)がある。ソリディティは「風車の掃過面積に対するロータ・ブレードの全投影面積の比」として定義される。ただし、ここでの投影面積は風向に垂直な面への投影を意味している。
【0005】
一般に抗力型風車は揚力型風車よりソリディティが大きいためブレードに発生するトルクが揚力型風車よりも大きい。そのため静止状態から弱風の起動性も抗力型風車の方が良い。
【0006】
一方で揚力型風車はソリディティは小さいものの、ブレードに生じる揚力を利用するため、風速の数倍以上の高い周速比で回転することが可能である。したがって得られるエネルギー効率は揚力型風車の方が抗力型風車よりも高い。ところが、例えば揚力型風車に属する垂直型のダリウス形風車は起動性に乏しいというデメリットがある。抗力型風車のサボニウス形と組み合わせるなどの工夫をされることが多い(特許文献1)。
【0007】
垂直軸風車において、揚力型風車部と抗力型風車部を回転軸の上下に配置し、機械的に連結したり解除する方法が提案されている(特許文献2)。
【0008】
垂直軸風車であるサボニウス形風車の改良として、受風面を縦長の複数の羽に分割し、各々の羽がその縦辺の一方に回転軸を有し、受風面の回転進行方向うしろ側において自由に開閉でき、受風面が追い風の場合は各々の羽が閉まり風を受け、向かい風の場合は各々の羽が開くことで風の抵抗を減じる方法が提案されている(特許文献3)。抗力型風車は、受風面は風速より速くは動けないため、大きなエネルギー効率を得ることはできない。
【0009】
特許文献3の提案に揚力型風車翼を組み合わせた提案がされている(特許文献4)。高速回転風域では、前記縦型翼は風向によらず開放状態となる。しかし、前記縦型翼はわずかながらでも回転の抵抗となりエネルギー効率を低減させてしまう。
【0010】
拡縮可能な受風体を、同受風体を両側から支持する向き合う梁が各々の回転軸との接合部において鋭角であって、回転軸に対して鉛直下側では支持梁が平行となり、上側では受風面を最大に広がることができる風力回転装置の技術が記載されている(特許文献5)。水上浮体構造物上に設置する例示がされているが、浮体構造物が外乱により動揺、または傾斜すると鉛直上部受風面が受風面積最大とはならない。
【0011】
風車ブレードの回転軸側の一部が開閉可能なフタが具備され、回転速度が小さい場合に自重で開き起動トルクを得る風車設備の技術が記載されている(特許文献6、7)。ブレードが大きな起動トルクを得られるのは、ブレードが回転軸より上部に位置し、ブレードとフタにより構成される受風部で風を受ける場合のみである。また、ブレードの回転軌道より内側で風を受けるため得られる起動トルクが小さい。より大きな起動トルクが得られるとよい。さらに、風向は一定でないため、風車はより広い範囲の風向で起動トルクを得られることが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭56-143367号公報
【特許文献2】特開2016-205255
【特許文献3】特開2012-017729
【特許文献4】特開2015-7417
【特許文献5】韓国登録特許第10-1034924号報
【特許文献6】特許第7028395号
【特許文献7】特開2022-059242号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、起動性に優れ、かつエネルギー効率が高い風車を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
風車は回転軸を水平、かつ風向と交差する構成とし、例えば直線翼垂直軸風車を横に倒した形とする。
【0015】
風車ブレードには、ブレードの回転外側に自由開閉可能なフタを設ける。例えばフタを支軸を利用して開閉する形体においてはフタ開閉の支軸が回転進行側、自由側が回転後方側とする。フタの開き角度は所望の範囲で制約する。
【0016】
風車は静止状態か低い回転速度の状態では、回転軸より下側のブレードのフタはストッパーで制限された範囲内で自重により下側に開き、開いたフタは受風面となり風車の起動トルクを発生させる。
【0017】
風車は静止状態か回転速度が小さいときにブレードが回転軸より上側にある状態では、フタは自重により閉じる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によると、開いたフタが受風面となりソリディティが大きくなり風車の機動性が向上する。一方で、ブレードが向かい風側に運動する際はフタが閉じ、受風面が小さくなる。
【0019】
風車の回転数が十分に大きくなると、回転の進行風により、回転軸との位置関係によらずブレードのフタは常にブレード側に閉じた状態となる。ソリディティが小さくブレードは揚力を発生させ続けるため高速回転できエネルギー効率が良くなる。
【0020】
本発明によると、同じ回転軌道半径のブレードからなる風車において、回転軌道内側のフタが開いた場合より、回転軌道外側のフタが開いた場合の方が、回転軸からの距離が大きいため単位ブレード長さ当たりの回転トルクが大きくなる。
【0021】
本発明によると、回転軌道の内側に開くフタを有するブレードと外側に開くフタを有するブレードを併用するため、回転軸に対して交差するいずれの風向の風でも起動トルクを生じることができる。したがって従来技術より広い方向からの風を利用して風車の起動トルクを得ることができる。
【0022】
本発明によると、自重で下方に開いたフタとブレード、および風横抜け低減部とで構成される袋状の受風部は、風車の回転軸に直交する向きだけでなく、水平方向に角度がついた風でも起動トルクを生じることができる。したがって従来技術より広い方向からの風を利用して風車の起動させることができる。
【0023】
本発明によると、風車の回転軸は両端と、必要に応じてその間で支持される。回転軸を片持ち支持する風車に対して構造的に強度を上げられ強風時にも稼働し続ける風車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の第1の実施形態であって、風車が静止、または低速度回転域であり、回転軸より下にあるブレードであって、ブレードの回転軌道外側面の支軸からブレード風下側のフタが自重で開いている状態の斜視図
図2】本発明の第1の実施形態であって、風車が高速度回転状態であって、回転軸より下にあるブレードの回転軌道の外側のフタがブレード側に閉じている状態の斜視図
図3】本発明の第1の実施形態であって、風車が静止、または低速度回転域であって、回転軸より下にあるブレードの回転軌道より外側面のフタが自重で開き、ストッパーの位置まで下がっていて、回転軸より上にあるブレードのフタは自重により閉じている状態の斜視図。
図4】本発明の第1の実施形態であって、風車が静止、または回転軸を中心に図中反時計回りに低速度回転しており、回転軸より上にあるブレードのアームが鉛直上方に位置している状態であって、回転軌道より外側面のフタは自重により閉じており、回転軸より下にあるブレードのフタが自重で開き、鉛直下方またはストッパーの位置まで下がっている状態の側面図。
図5】本発明の第1の実施形態であって、風車が静止、または回転軸を中心に図中反時計回りに低速度回転しており、回転軸より下にあるブレードのアームが鉛直下方にある状態であって、回転軌道より外側面のフタは自重により開いており、回転軸より上にあるブレードのフタが自重で閉じている状態の側面図。
図6】本発明の第1の実施形態であって、風車が回転軸を中心に図中反時計回りに高速度で回転しており、すべてのブレードの回転軌道外側面のフタが閉じている状態の模式的構成例の側面図。分かり易いようにフタがブレードからわずかに離れて示しているが、実運用時はブレードと一体化して回転の抵抗にならない状態となる。
図7】本発明の第2の実施形態であって、回転外側に開くフタを有するブレードと回転内側に開くフタを有するブレードとを組み合わせた風車設備の斜視図。
図8】本発明の第2の実施形態であって、回転外側に開くフタを有するブレードと回転内側に開くフタを有するブレードとを組み合わせた、回転軸より上側のブレードが回転軸の鉛直上方にある状態の風車設備のブレードより下のフタが自重で開いている状態の側面図。
図9】本発明の第2の実施形態であって、回転外側に開くフタを有するブレードと回転内側に開くフタを有するブレードとを組み合わせた、回転軸より下側のブレードが回転軸の鉛直下方にある状態の風車設備のブレードより下のフタが自重で開いている状態の側面図。
図10】回転軌道外側に開くフタがあるブレードと、回転軌道内側に開くフタがあるブレードとに風を受けて生じる力と回転軸中心からの位置関係を示した側面図。
図11】本発明の第3の実施形態であって、ひとつのブレードは回転軌道外側も回転軌道内側も開閉可能であるフタを有する風車設備の斜視図。
図12】本発明の第3の実施形態であって、ひとつのブレードは回転外側も回転内側も開閉可能であり、回転軸より上側のブレードが回転軸の鉛直上方にある状態の風車設備のブレードより下のフタが自重で開いている状態の側面図。
図13】本発明の第3の実施形態であって、ひとつのブレードは回転軌道外側も回転軌道内側も開閉可能であるフタを有し、回転軸より下側のブレードが回転軸の鉛直下方にある状態の風車設備のブレードより下のフタが自重で開いている状態の側面図。
図14】本発明の第4の実施形態であって、第1の実施形態で自由開閉なフタが開いた状態のブレードに一対の風横抜け低減部が設けられたブレードを示す斜視図。
図15】本発明の第4の実施形態であって、第1の実施形態で自由開閉なフタが閉じた状態のブレードに一対の風横抜け低減部が設けられたブレードを示す斜視図。
図16図2のa-a’断面図。揚力型ブレードの受風面を鉛直上方から見た状態を示す。
図17図16に示した回転軸に直交する向きで風が吹き込む状態と、ブレードにあたった後の気流を模擬した断面図を示す。
図18図16のブレードに、水平方向に斜め45°に風が吹き込む状態と、ブレードにあたった後の気流を模擬した断面図を示す。
図19図14のb-b’断面図。図16のブレードに風横抜け低減部を設置したブレードを模擬した、鉛直上方から見た状態を示す。
図20図19に示したブレードに直交する向きで風が吹き込む状態と、ブレードと風横抜け低減部とで囲われた袋状の構造に風溜りが発生している状態を模擬した断面図を示す。
図21図19のブレードに、水平方向斜め45°に風が吹き込む状態と、風溜りができている状態を模擬した断面図を示す。
図22図26のc-c’断面図。図19のブレードの長さを半分にし、2つ連結させた状態を示す。
図23図22のブレードに、水平方向に斜め45°に風が吹き込む状態を模擬した断面図を示す。
図24図22のブレードに、水平方向に斜め60°に風が吹き込む状態を模擬した断面図を示す。
図25】本発明の第6の実施形態であって、第3の実施形態のブレードに、一対の図14で示すブレードが回転軸方向に2つ連結された状態の斜視図。
図26】本発明の第4の実施形態のひとつであって、図14で示すブレードが回転軸方向に2つ連結された状態の斜視図。
図27】本発明の第4の実施形態の斜視図。
図28】本発明の第5の実施形態の斜視図。
図29】本発明の第6の実施形態の斜視図。
図30】本発明の第7の実施形態の斜視図。
図31】本発明の第8の実施形態の斜視図。
図32】風速のべき乗則の概念図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1、2は本発明のブレードとフタの開閉状態について示す。
【0026】
本発明の風車設備に適用されるブレード2は、翼型断面形状をしている。開いたフタ4aは基線6でブレードと連結されており、自由開閉ができる。基線6のブレード上の位置は自由であり、ブレードの前縁部に近くてもよく、後縁部に近くてもよい。基線6のブレード上の位置は、回転軸側にあることも含まれる。フタの自由端の位置も自由であり、ブレード後縁部でもよく、後縁部と支軸の間の任意の位置でよい。
【0027】
フタの回転軸長手方向に対する長さは、全長に渡って一枚でもよく、複数枚に分割しても、断続的に配置してもよい。
【0028】
フタが閉じた状態では、空気抵抗を生じさせないように凹凸が極力ないこととする。
【0029】
フタが閉じた状態では、フタの表面はブレード全体の翼型プロファイルの一部となる形状となることが望ましい。
【0030】
フタはブレードを覆うひとつながりの部材の一部が基線から後縁部にかけてブレードから離れる構造でもよい。
(第1の実施の形態)
【0031】
図3は本発明の第1の実施形態の斜視図を示す。
【0032】
本発明の風車設備に適用されるブレード2は、支柱7で支えられている風車の回転軸1の周囲にアーム3を介してひとつ、または複数が等間隔に敷設される。回転軸は水平に、かつ風11の風向と交差する位置関係にある。ブレードの前縁部はブレードが回転の下部にあるとき風下を向くようにする。ブレードの回転軌道外側の面には、回転軸と平行な向きの線を基線とし、回転外側に自由開閉するフタ4が取り付けられている。閉じた状態のフタ4bはブレードと一体化し、開いた状態のフタ4bは最大開き角度はストッパー5までとなる。風車が回転すると回転軸に接続された発電機8で電気を発生する。
【0033】
ここでいう回転軸が水平とは、厳密な意味での水平だけではなく、回転軸と水平軸のなす角度が0度から90度であらわすと、45度以下の寝ている状態を指している。例えば山の斜面に回転軸が傾斜して設置する場合などを含む、概念としての水平を指している。
【0034】
ストッパーは例えばアーム3に取り付けてよい。フタとブレードをワイヤでつなぎ、フタの最大開き角度を制限する方法でもよい。ストッパーなどでフタの最大開き角度を制限することで、適切な受風面を得られる。
【0035】
図4は本実施例1の風が弱く風車が停止している、または回転速度が小さい場合の側面図を示している。回転軸より下にあるブレードのフタ4aは自重で開く。最大開き角度はストッパー5の位置で制限する。フタが開いていない状態と比較して、フタが開く分受風面積が増えるためソリディティが大きくなり、風車回転の起動トルクが増大する。
【0036】
図5は本実施例1の風が弱く風車が停止している、または回転速度が小さい場合の側面図を示している。回転軸の鉛直下方にあるブレードのフタ4aは自重で開く。最大開き角度はストッパー5の位置で制限する。フタが開いていない状態と比較して、フタが開く分受風面積が増えるためソリディティが大きくなり、風車回転の起動トルクが増大する。
【0037】
図4図5とも回転軸より上に位置するブレードのフタ4bは自重によりブレード側に閉じる。フタが開いている状態より受風面積が小さくなるため、ブレードが風上側に戻る際の風の抵抗を小さくすることができる。
【0038】
図6は風速が十分に大きい場合の状態を示す。風車の回転の進行風によりブレードのフタ4bはブレードに押し付けられ、位置にかかわらず常に閉じた状態となる。すなわちソリディティが小さくなる。抗力型風車にみられるような受風部の回転進行風の抵抗による回転速度の制約を低減することができる。
【0039】
風車が回転すると、回転軸1と連結した発電機8を回して電気を発生する。また風車の回転は直接動力として利用してもよい。
(第2の実施形態)
【0040】
図7図8図9は本発明の第2の実施形態を表す。
【0041】
図7のブレードの長さ方向中央部2aには、ブレードの回転軌道外側面が開くフタがあり、開いたフタが4a、閉じたフタが4bである。ブレードの長さ方向両端側2bには、ブレードの回転軌道内側面が開くフタがある。開いたフタが4c、閉じたフタが4dである。フタ4a、4cの回転軸長さ方向の総幅長さをそれぞれW4a、W4cとする。
【0042】
風が弱く風車が停止している、または回転速度が小さい状況において、フタはそれぞれ自重によって回転軸より高い位置にあるフタ4cが下方に開き、フタ4bはブレード側に閉じる。回転軸より低い位置にあるブレードはフタ4aが開き、フタ4dがブレード側に閉じる。
【0043】
風11’が吹く場合は、ブレード2bとフタ4cからなる受風部が起動トルクを発生させ、風11が吹く場合は、ブレード2aとフタ4aからなる受風部が起動トルクを発生させ、どちらの方向から風が吹いても風車を反時計周りに回転させる。
【0044】
図8は本実施例2の風が弱く風車が停止している、または回転速度が小さい場合の、回転軸より上にあるブレードは回転軸の鉛直上方にある状態の側面図を示している。回転軸より下にあるブレードのフタ4aは自重で開く。最大開き角度はストッパー5の位置で制限する。フタが開いていない状態と比較して、フタが開く分受風面積が増えるためソリディティが大きくなり、風車回転の起動トルクが増大する。
【0045】
図9は本実施例2の風が弱く風車が停止している、または回転速度が小さい場合の、回転軸より下にあるブレードは回転軸の鉛直下方にある状態の側面図を示している。回転軸より下にあるブレードのフタ4aは自重で開く。最大開き角度はストッパーの位置で制限する。フタが開いていない状態と比較して、フタが開く分受風面積が増えるためソリディティが大きくなり、風車回転の起動トルクが増大する。
【0046】
図10はブレードが開いたフタに風を受けて力がかかっている状態を示している。風11’が吹く場合には、ブレード2aと、回転軸長さ方向の幅W4aである自重で開いたフタ4aからなる受風面に風溜り41ができ、回転軸中心からR4aの位置に力43がかかる。風11が吹く場合には、ブレード2bと、回転軸長さ方向の幅W4cである自重で開いたフタ4cからなる受風面に風溜り42ができ、回転軸中心からR4cの位置に力44がかかる。風車の回転半径が十分に大きくなく、風速が風車の上部と下部でほぼ同程度の場合において、以下の式
【数1】
が成り立つとき図10に示す通り風11が吹いても、風11’が吹いても風車は同程度の起動トルクを見込む設計ができる。R4aはR4cより大きいため、前式が成り立つ場合はW4aはW4cより小さくなる。逆をいえば、W4cはW4aより大きくなる。
【0047】
風車の回転半径が十分に大きくない場合という断りについては、図32の通り一般的に高さ方向の風速Vは以下の式
【数2】
の通り地表からの高さhのべき乗αに比例すると表される。風車の回転半径が十分に大きい場合、ブレードの回転軌道の上側と下側で風速が異なる。そのためフタの幅W4aとW4cの設計比率は適宜設定が必要となる。
【0048】
風車の回転速度が大きくなると、ブレードのフタは回転の進行風により常にブレード側に閉じた状態となる。高速回転による高いエネルギー係数の風車として機能することが期待できる。
(第3の実施形態)
【0049】
図11図12図13は本発明の第3の実施形態を表す。
【0050】
ブレード2cは回転軌道外側面に開くフタと内側面に開くフタが両面にある。
【0051】
風が弱く風車が停止している、または回転速度が小さい状況において、フタはそれぞれ自重によって回転軸より高い位置にあるフタ4cが下方に開き、フタ4dはブレード側に閉じる。回転軸より低い位置にあるブレードはフタ4aが開き、フタ4bがブレード側に閉じる。
【0052】
図12は本実施例3の風が弱く風車が停止している、または回転速度が小さい場合の、回転軸より上にあるブレードは回転軸の鉛直上方にある状態の側面図を示している。回転軸より下にあるブレードのフタ4aは自重で開く。最大開き角度はストッパーの位置で制限する。フタが開いていない状態と比較して、フタが開く分受風面積が増えるためソリディティが大きくなり、風車回転の起動トルクが増大する。
【0053】
図13は本実施例3の風が弱く風車が停止している、または回転速度が小さい場合の、回転軸より下にあるブレードは回転軸の鉛直下方にある状態の側面図を示している。フタが開いていない状態と比較して、フタが開く分受風面積が増えるためソリディティが大きくなり、風車回転の起動トルクが増大する。
【0054】
風車の回転速度が大きくなると、ブレードのフタは回転の進行風により常にブレード側に閉じた状態となる。高速回転による高いエネルギー係数の風車として機能することが期待できる。
(第4の実施形態)
【0055】
図14から図24までは本発明の第4の実施形態を表す。
【0056】
ブレードのひとつひとつのフタには、回転軸方向に一対の風横抜け低減部9が具備される。
【0057】
図14は、自重で開閉可能な開いた状態のフタ4aと、風横抜け低減部9とを具備したブレード2を示す。風横抜け低減部はブレードの両端に接合され、少なくともブレードのフタの開閉可動範囲と同等の形状4Sを覆うことができる。風横抜け防止板とフタとの間には、フタの自由開閉に支障がない程度の隙間はあってよい。
【0058】
ブレード4の開く限度はストッパー5で制約される。ストッパーは風横抜け低減部9に設置されてもよく、アーム3に設置されてもよい。
【0059】
ブレード2とフタ4との開く限度の制約は、前記ストッパーの形式でなく、例えばブレードとフタをワイヤで連結する形式でもよい。
【0060】
風車が静止状態、または低速回転状態において、回転軸より下部にあるブレード2は自由開閉可能なフタ4が下方に開いて4aとなる。ブレードとフタと両端の風横抜け低減部9とで囲われた部分が袋状の空間30を構成する。
【0061】
ブレード2、フタ4a、風横抜け低減部9で構成される袋状の空間30は、風が風車回転軸に直交する場合のみならず、風が風車回転軸に水平方向斜めに吹き込む場合も風を受け止める機能をし、風車に回転トルクを生じさせる。すなわち、斜めに吹く風に対しては、ブレードもフタも風横抜け低減部も、斜め風受部とみなすことができる。
【0062】
図15は、ブレード2のフタが閉じた状態4bと風横抜け低減部9を示す。回転軸より高い位置のブレードは、フタが自重で下方に落ち閉じるため、本図の状態となる。また、風車が高速回転状態で、フタが回転進行風でブレードに押し付けられている状態も、本図の状態となる。フタが閉じた状態のブレードは、進行風の抵抗が小さい。風横抜け低減部は単体では、回転進行風の抵抗にはならない。また風車の回転軸に直交する向きで風が吹き込むときも風の抵抗にならない。風車に水平方向に斜めに風が吹き込む場合も風横抜け低減部に沿ってすり抜けるため、大きな抵抗にならない。
【0063】
図16は、図2のA-A’断面であり、開閉可能なフタ4と、風横抜け低減部9がない、一般的な揚力型ブレードの受風面を模擬したもの、図17図16のブレードに風11が回転軸に直交する向きで吹き込んでいる状態を示している。ブレードに当たった風はブレードを押す力を与えつつ、ブレードの上下左右から気流12の通りすり抜けていく。
【0064】
図18は、図16のブレードに風11が水平方向に45°斜めに吹き込んでいる状態を示している。ブレードに当たった風は向きを変え、気流13の通り、または上下左右からすり抜けていく。
【0065】
図19は、図14のB-B’断面であり、ブレード2に風横抜け低減部9が取付けられたブレードの断面を模擬したもの、図20は、図19のブレードに直交する向きで風11が吹き込んでいる状態を模擬したものである。
【0066】
図20では、ブレード2とフタと両端の風横抜け低減部9で袋状の空間が構成されているため、ブレードに吹き込んだ風は風溜り31を生じ、ブレードを押す力21を発生させる。風がブレードの横からすり抜けにくいため、ブレードは風から大きな力を受けることができる。
【0067】
図21は、図19のブレードに、水平方向に45°斜めに風が吹き込んでいる状態を示している。ブレードとフタと風横抜け低減部が、斜め風受け部となることで、風溜り32が生じ、ブレードが風で押される力22が発生する。力22は風車の回転方向の分力23と、風車回転軸方向の分力24とに分けることができ、分力23が風車を回転させる。
【0068】
図21での風溜り32は、図20の風溜り31に対して容積が小さくなり、またブレードにはたらく抗力のうちの、ブレード回転方向への分力のみ回転に寄与するため、風車を回転させる力は図20の状態に比べて小さくなる。
【0069】
図22は、図19のブレードを半分の長さにして2つ連結したものである。ブレードの幅方向の総長としては同等となる。図23図22のブレードに、水平方向に斜めに風が吹き込んでいる状態を示している。風溜り32と風溜り33が生じている。このことにより、風車の回転方向に働く力は図21の上体に比べて2倍になる。
【0070】
図24は、図22のブレードに水平方向斜め60°で風が吹き込んでいる状態を示している。風溜り34、35が生じている。風溜り34では、抗力25が生じ、風車回転方向の分力26と風車回転軸方向の分力27が発生している。分力26は分力27に対して小さくなる。風車に対して水平方向の角度が45°より大きくなると、風車回転方向の力が小さくなる。風横抜け防止板が斜めの風に有効なのは片側45°までが妥当と考える。
【0071】
本発明の実施形体の風車は、ひとつひとつのブレードの幅W2に合わせて風横抜け低減部の長さの最適値L9がある。また各風横抜け低減部およびブレードの長さが揃っている方が風車はバランスよく回転できる。ブレードと風横抜け低減部の長さの比率は一定の割合で構成されるべきである。
【0072】
図27は第4の実施形態であり、第1の実施形態のブレードに風横抜け低減部を追加したものである。
(第5の実施形態)
【0073】
図28は第5の実施形態であり、第2の実施形態のブレードに風横抜け低減部を追加したものである。フタ4a、4cにはそれぞれ一対の風横抜け低減部9a、9cが取付けられる。
(第6の実施形態)
【0074】
図29は第6の実施形態であり、第3の実施形態のブレードに風横抜け低減部を追加したものである。
(第7の実施形態)
【0075】
図30は第7の実施形態であり、第5の実施形態のブレードを同じ回転軸状に隣接して並べて配置し、かつ隣接する風車同志ではアームの角度がずらしてある。このことにより、フタが開いたブレードの袋状の構造が風を正面で受け止める機会を増やし、回りだしやすい風車設備を実現できる。
【0076】
回転軸方向に長手に連結された風車の回転から生み出される力を、一端の発電機8で電力に変えることで、出力が大きい発電機を使用することができる。発電機出力あたりの費用は、一般的に出力が大きくなると小さくなるため、発電設備としても出力あたりの費用を低減させることができる。
(第8の実施形態)
【0077】
図31は第8の実施形態であり、第7の実施形態の風車設備が2式、それぞれの回転軸がほぼ直交する位置関係で配置されている。第7の実施形態の風車設備は、風車の回転軸方向の風向では風車は回らないが、ほぼ直交する2式の設備を配置することで、いずれの風向でもどちらかの風車を回すことができる。
【0078】
本発明の風車設備はいずれの実施形態においても風車の回転軸は両端で支持され、また中間で支持する場合もある。風車設備の構造強度を強くすることができ、強風環境下で稼働する風車設備を提供することができる。
【0079】
本発明の風車設備は、風や水面の波による外乱の影響で動揺する浮体構造物上への設置に適する。ブレードに具備されたフタの開閉は自重と進行風圧により発生するため、風車の傾斜状態に影響されず鉛直方向上下の位置関係によって機能する。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本発明の風車設備および風車ブレードは、浮体式洋上風力発電設備において、浮体が動揺しても風車の回転軸と風向との交差関係が変わらない水平横軸風車に利用されていく可能性がある。
【0081】
複数本の支柱で設置できることから、細長い土地を利用した陸上風車設備に利用されていく可能性がある。
【0082】
複数本の支柱で設置できることから風車設備として構造強度の増強が容易であり、風向に追従する機構がなく故障リスクが小さいことから、他の風車がカットアウトするような強風域でも稼働できる陸上風車設備に利用されていく可能性がある。
【符号の説明】
【0083】
1 回転軸
2 ブレード
2a 回転軌道外側が開くフタを有するブレード
2b 回転軌道内側が開くフタを有するブレード
2c 回転軌道内側が開くフタと外側に開くフタのどちらも有するブレード
3 アーム
4 フタ
4a 回転軌道外側面の開いたフタ
4b 回転軌道外側面の閉じたフタ
4c 回転軌道内側面の開いたフタ
4d 回転軌道内側面の閉じたフタ
4S フタの可動範囲
5 ストッパー
6 フタ基線
7 支柱
8 発電機
9 風横抜け低減部
9a 4aのフタの風横抜け低減部
9c 4cのフタの風横抜け低減部
11 風
11’ 風
12 回転軸に直交する角度でブレードに風が当たったあとの気流
13 回転軸に斜めの角度でブレードに風が当たったあとの気流
21 回転軸に直交する角度の風がブレードを押す力
22 回転軸に斜めの角度の風がブレードを押す力
23 回転軸に斜めの角度で風がブレードを押す力の風車回転方向の分力
24 回転軸に斜めの角度で風がブレードを押す力の風車回転軸方向の分力
25 回転軸に60°の角度の風がブレードを押す力
26 回転軸に60°の角度で風がブレードを押す力の風車回転方向の分力
27 回転軸に60°の角度で風がブレードを押す力の風車回転軸方向の分力
30 ブレードと開いたフタと一対の風横抜け低減部に囲まれた袋状の空間
31 回転軸に直交する角度の風による風溜り
32 回転軸に斜め45°の角度の風による風溜り
33 32の隣のブレードの斜め45°の角度の風による風溜り
34 回転軸に斜め60°の角度の風による風溜り
35 34の隣の回転軸に斜め60°の角度の風による風溜り
41 回転軸鉛直下方のブレードの回転軌道外側に開いたフタが風11’が吹いているときに受けて生じる風溜り
42 回転軸鉛直上方のブレードの回転軌道内側に開いたフタが風11が吹いているときに受けて生じる風溜り
43 回転軸鉛直下方のブレードの回転軌道外側に開くフタが風11’が吹いているときに受けて生じる力
44 回転軸鉛直上方のブレードの回転軌道内側に開くフタが風11が吹いているときに受けて生じる力
R4a 回転軸中心から力43までの距離
R4c 回転軸中心から力44までの距離
W4a フタ4aの回転軸長さ方向の総幅長さ
W4c フタ4cの回転軸長さ方向の総幅長さ
W2 一対の風横抜け防止部を有するブレードの回転軸長さ方向の幅
L9 風横抜け防止部の翼弦長方向の長さ
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