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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023161186
(43)【公開日】2023-11-07
(54)【発明の名称】把持式穴掘建柱車の安全装置
(51)【国際特許分類】
   A01G 23/08 20060101AFI20231030BHJP
【FI】
A01G23/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022071382
(22)【出願日】2022-04-25
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(74)【代理人】
【識別番号】100218095
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(72)【発明者】
【氏名】岡安 良王
(57)【要約】
【課題】対象物の切断が完了したことを確認することのできる把持式穴掘建柱車の安全装置を提供する。
【解決手段】把持式穴掘建柱車の安全装置は、コントローラ40と、コントローラ40に接続された報知装置150と、把持部に把持された対象物を切断する切断位置と当該切断位置から離間する退避位置との間でカッター部材を往復移動させるカッターシリンダ131と、カッター部材が切断位置に到達したことを検出する切断位置検出器142とを有し、コントローラ40の報知制御部44は、切断位置検出器142においてカッター部材が切断位置に到達したことが検出された場合に報知装置150を作動させる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体上に少なくとも起伏動可能に設けられたブームと、
対象物を把持可能な把持部と、
前記ブームの先端部と前記把持部との間に設けられて、前記ブームの先端部に対する前記把持部の姿勢を変化させる支持機構と、
前記把持部に取り付けられる切断装置と、
前記ブーム、前記把持部、前記支持機構および前記切断装置の作動を制御する制御装置と、
前記制御装置に接続された報知装置とを備える把持式穴掘建柱車において、
前記切断装置は、前記把持部に把持された対象物を切断可能な切断部材と、前記把持部に把持された対象物を切断する切断位置と当該切断位置から離間する退避位置との間で前記切断部材を往復移動させる駆動装置と、前記切断部材が前記切断位置に到達したことを検出する切断位置検出器とを有し、
前記制御装置は、前記切断位置検出器において前記切断部材が前記切断位置に到達したことが検出された場合に前記報知装置を作動させることを特徴とする把持式穴掘建柱車の安全装置。
【請求項2】
前記把持部が対象物を把持したことを検出する把持検出器を備え、
前記制御装置は、前記把持検出器において前記把持部が対象物を把持していることが検出され、且つ、前記切断位置検出器において前記切断部材が前記切断位置に到達していることが検出されている場合には、前記ブームおよび前記支持機構の作動を許容する一方で、前記把持検出器において前記把持部が対象物を把持していることが検出され、且つ、前記切断位置検出器において前記切断部材が前記切断位置に到達していることが検出されていない場合には、前記ブームおよび前記支持機構の作動を規制することを特徴とする請求項1に記載の把持式穴掘建柱車の安全装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば柱状物などを把持する把持部を有した把持式穴掘建柱車の安全装置に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車の一つである穴掘建柱車として、車体上に旋回動自在に設けられた旋回台と、旋回台に起伏動および伸縮動自在に設けられたブームと、ブームに装着されて電柱を建て入れるための建柱穴を掘削するオーガ装置と、ブームの先端部に設けられて電柱などの柱状物を把持する把持装置とを備えた把持式の穴堀建柱車が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この把持式の穴掘建柱車を用いて地面に建柱穴を掘削する際には、オーガ装置をブームの先端部から吊り下げた状態でブームを適宜作動させ、そのオーガ装置を所定の掘削位置で回転作動させることで、所定の深さの建柱穴を形成することができる。この建柱穴の掘削が終了した後は、オーガ装置を引き上げてブームの側面に格納するとともに、ブームの先端部に設けられた把持装置により電柱を把持し、この電柱を把持した状態でブームを適宜作動させることで上記掘削された建柱穴に当該電柱を直接建て入れることができるようになっている。このような把持式の穴堀建柱車では、電柱をウィンチやクレーンなどを用いて吊り下げて作業を行う場合と比べて、一連の建柱作業を効率的に行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平2‐81892号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで近年では、把持式の穴掘建柱車の用途を本来の用途の掘削作業や建柱作業等に限らず、例えば災害時の復旧作業などの他の用途にも拡大することが求められている。そこで、把持装置の近傍に伐採装置を取り付けて、災害時の復旧作業として建造物などに倒れかかった樹木(倒木)を伐採する場合や、電線への接触を未然に防止するために電線付近の樹木を計画的に伐採する場合などに用いることが提案されている。しかしながら、把持装置に把持された樹木を伐採装置により伐採する際に、樹木の伐採が完了しているのか否かを目視で確認することが困難な場合があり、樹木を切り離していない状態でブーム等を作動させてしまうと、このブーム等の構造物が破損するおそれがあるとともに、車両に作用する転倒モーメントが増大して車両が不安定になるという問題がある。
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、対象物の切断が完了したことを確認することのできる把持式穴掘建柱車の安全装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る把持式穴掘建柱車の安全装置は、車体上に少なくとも起伏動可能に設けられたブームと、対象物を把持可能な把持部と、前記ブームの先端部と前記把持部との間に設けられて、前記ブームの先端部に対する前記把持部の姿勢を変化させる支持機構と、前記把持部に取り付けられる切断装置と、前記ブーム、前記把持部、前記支持機構および前記切断装置の作動を制御する制御装置と、前記制御装置に接続された報知装置とを備える把持式穴掘建柱車において、前記切断装置は、前記把持部に把持された対象物を切断可能な切断部材と、前記把持部に把持された対象物を切断する切断位置と当該切断位置から離間する退避位置との間で前記切断部材を往復移動させる駆動装
置と、前記切断部材が前記切断位置に到達したことを検出する切断位置検出器とを有し、前記制御装置は、前記切断位置検出器において前記切断部材が前記切断位置に到達したことが検出された場合に前記報知装置を作動させることを特徴とする。
【0007】
上記構成の把持式穴掘建柱車の安全装置において、前記把持部が対象物を把持したことを検出する把持検出器を備え、前記制御装置は、前記把持検出器において前記把持部が対象物を把持していることが検出され、且つ、前記切断位置検出器において前記切断部材が前記切断位置に到達していることが検出されている場合には、前記ブームおよび前記支持機構の作動を許容する一方で、前記把持検出器において前記把持部が対象物を把持していることが検出され、且つ、前記切断位置検出器において前記切断部材が前記切断位置に到達していることが検出されていない場合には、前記ブームおよび前記支持機構の作動を規制することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る把持式穴掘建柱車の安全装置によれば、切断位置検出器において切断部材が切断位置に到達したことが検出された場合に、報知装置を作動させて切断部材が切断位置に到達したことを報知することで、作業者が対象物の切断が完了したか否かを容易に認識することができるようになるため、対象物の切断が完了していない状態(対象物が切り離されていない状態)でブームおよび支持機構を作動させる事態を未然に防止して、作業の安全性を向上させることが可能となる。
【0009】
また、本発明に係る把持式穴掘建柱車の安全装置では、把持検出器において把持部に対象物が把持されていることが検出され、且つ、切断位置検出器において切断部材切断位置に到達していることが検出されていない場合に、ブームおよび支持機構の作動を規制するインターロックを作動させることで、作業者が誤操作等により対象物の切断が完了していない状態(対象物が切り離されていない状態)でブームおよび支持機構を作動させる事態を確実に防止することができ、作業の安全性を一層向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る把持式穴掘建柱車の側面図である。
図2】上記把持式穴掘建柱車の平面図である。
図3】上記把持式穴掘建柱車の使用状態を示す側面図である。
図4】上記把持式穴掘建柱車に設けられた把持装置の斜視図である。
図5】上記把持装置の要部を右方から見た斜視図である。
図6】上記把持装置の要部を左方から見た斜視図である。
図7】上記把持装置の横断面図である。
図8】上記把持装置の縦断面図である。
図9】上記把持式穴掘建柱車の機能ブロック図である。
図10】上記把持装置に伐採装置を装着した状態を示す斜視図である。
図11図10の要部を拡大して示す斜視図である。
図12】上記把持装置と上記伐採装置とを左方から見た斜視図である。
図13】上記伐採装置の上部側を見た斜視図である。
図14】上記伐採装置の下部側を見た斜視図である。
図15】上記伐採装置のカッター部材が閉位置(切断位置)にある状態を示す断面図である。
図16】上記伐採装置のカッター部材が開位置(退避位置)にある状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。まず、本実施形態
に係る把持式穴掘建柱車1の全体構成について図1図3を参照して説明する。
【0012】
把持式穴掘建柱車1は、図1に示すように、車体2の前部に運転キャビン7を有し、車体2の前後に配設された左右一対のタイヤ車輪5により走行可能なトラック車両をベースに構成されている。車体2の前後左右の四箇所には、車体2を持ち上げ支持するためのジャッキ9が配設されている。各ジャッキ9は、その内部に設けられたジャッキシリンダ(図示せず)を駆動させて下方に伸長させることで車体2を持ち上げ支持し、それにより車体2全体を安定させた状態とする。ジャッキ9の作動操作は、車体2の後部に設けられたジャッキ操作装置(図示せず)の操作により行われる。
【0013】
車体2における運転キャビン7後方の架装領域には、旋回モータ14(図9を参照)により駆動されて上下軸回りに水平旋回動自在に構成された旋回台12が設けられている。この旋回台12には、ブーム13の基端部が上下方向に揺動自在(起伏自在)に取り付けられている。
【0014】
ブーム13は、旋回台12側から順に、基端ブーム13a、中間ブーム13bおよび先端ブーム13cが入れ子式に組み合わされた構成を有しており、その内部に設けられた伸縮シリンダ15(図9を参照)の伸縮駆動により、ブーム13を軸方向(長手方向)に伸縮動させることができる。また、基端ブーム13aと旋回台12との間には起伏シリンダ16が跨設されており、この起伏シリンダ16を伸縮駆動させることにより、ブーム13全体を上下面(垂直面)内で起伏動させることができる。
【0015】
ブーム13には、基端ブーム13aと先端ブーム13cとに選択的に連結可能なオーガサポート17を介して、建柱穴の掘削を行うためのオーガ装置20が取り付けられている。オーガ装置20は、減速機付きのオーガモータ21と、オーガモータ21を回転駆動させることにより軸周りに回転されるアースオーガ22とを有して構成される。また、基端ブーム13aの側面には、オーガ装置20を格納状態で保持するオーガ格納装置18が配設されている。オーガ装置20は、オーガサポート17に垂直面内で上下に揺動可能に取り付けられており、オーガ装置20をオーガ格納装置18により基端ブーム13aの側方に沿って格納した格納位置と、オーガ装置20をオーガ格納装置18から外してアースオーガ22を地面に対して略垂直姿勢にした作業位置との間で揺動させることが可能である。
【0016】
オーガ装置20を使用するときは、図3のIに示すように、オーガサポート17を先端ブーム13cに連結させて、オーガ格納装置18から外したオーガ装置20を作業位置に揺動させた状態(アースオーガ22を地面に対して略垂直姿勢にした状態)で、アースオーガ22を回転させながらブーム13の倒伏動と縮小動とを連動させて直線的に下方へ移動させることで、建柱穴の掘削作業が可能である。一方、オーガ装置20を使用しないときは、図3のIIに示すように、オーガサポート17を基端ブーム13aに連結させて、オーガ装置20をオーガ格納装置18により基端ブーム13aの側方に沿った格納位置に格納保持する。オーガ装置20が格納位置にある状態においては、後述の把持装置50を用いて、電柱(図3に符号Pで示す)の建柱作業や抜柱作業、樹木の伐採作業、障害物の移設作業などの各種の作業を行うことができるようになっている。
【0017】
先端ブーム13cの先端部には、アームブラケット19が固定されている。このアームブラケット19には、例えば電柱や樹木などの対象物(把持対象物)を把持する把持装置50が取り付けられている。この把持装置50の構成について図4図8を追加参照して説明する。なお、図7図8では、図を見易くするために、断面を示すハッチングを省略している。また、以下では、説明の便宜上、図4に示す把持装置50の姿勢を基準として、図示する前後、左右、上下の矢印方向を、前後方向、左右方向、上下方向と呼称して説
明する。
【0018】
把持装置50は、アームブラケット19に上下方向に揺動(屈伸動)可能に取り付けられたアーム51と、アーム51の先端部に上下方向に揺動(縦首振り)可能に取り付けられた第1ジョイント部材60と、第1ジョイント部材60に左右方向に揺動(横首振り)可能に取り付けられた第2ジョイント部材70と、第2ジョイント部材70に回転可能に取り付けられたグリッパ80とを備えて構成される。なお、本実施形態では、アーム51、第1ジョイント部材60、第2ジョイント部材70、後述の縦首振りシリンダ62、横首振りシリンダ71、グリッパモータ79などにより、グリッパ80の把持部81の姿勢を変化させる支持機構が構成されている。
【0019】
アーム51は、軸方向(長手方向)の一端部が連結ピン52を介してアームブラケット19に枢結され、軸方向(長手方向)の他端部が連結ピン53を介して第1ジョイント部材60に枢結されている。アームブラケット19と第1ジョイント部材60との間には、アームシリンダ55が取り付けられている。アームシリンダ55のロッド側端部は、アームブラケット19に連結ピン56を介して枢結されている。アームシリンダ55のボトム側端部は、第1ジョイント部材60に連結ピン57を介して枢結されている。このアームシリンダ55を伸縮作動させることで、アーム51をアームブラケット19に対して連結ピン52を中心に上下方向に揺動自在(屈伸動自在)に構成されている。
【0020】
第1ジョイント部材60は、先端側が開放された上下二股状に形成されており、この二股状の両端部に第2ジョイント部材70が上下一対の連結ピン61を介して枢結されている。第1ジョイント部材60とアーム51との間には、縦首振りシリンダ62が設けられている。縦首振りシリンダ62のボトム側端部は、アーム51の基端側に連結ピン63を介して枢結されている。縦首振りシリンダ62のロッド側端部は、第1ジョイント部材60の上端側に連結ピン64を介して枢結されている。この縦首振りシリンダ62を伸縮作動させることで、第1ジョイント部材60をアーム51に対して連結ピン53を中心に上下方向に揺動自在(縦首振り自在)に構成されている。
【0021】
第2ジョイント部材70は、第1ジョイント部材60によって上下から挟まれるように支持されている。また、第1ジョイント部材60の上端部には、横首振りシリンダ71が設けられている。横首振りシリンダ71は、ボトム側端部が第1ジョイント部材60の先端部に枢結され、ロッド側端部が第2ジョイント部材70の後端部に枢結されている。この横首振りシリンダ71を伸縮作動させることで、第2ジョイント部材70を第1ジョイント部材60に対して連結ピン61を中心に左右方向に揺動自在(横首振り自在)に構成されている。
【0022】
グリッパ80は、対象物を把持する把持部81と、把持部81を支持して第2ジョイント部材70に回転自在に設けられたグリッパハウジング86と、把持部81を開閉作動する開閉機構93とを備えて構成される。
【0023】
把持部81は、一対の把持爪82と、この一対の把持爪82を開閉自在に支持する上下一対の支持板部83とを備えている。把持爪82は、例えば電柱や樹木などの種々の対象物(柱状物)を把持可能に構成されている。この把持爪82の基端部は、上下の支持板部83に連結ピン84を介して枢結されている。把持爪82の先端部には、互い違いに切欠き82a,82bが形成されており、この先端部同士が互いに交差(オーバーラップ)可能に構成されている。支持板部83には、後述の伐採装置(アタッチメント)100を着脱自在に装着するための平板状の上側ブラケット85が設けられている。この上側ブラケット85の詳細については後述する。
【0024】
グリッパハウジング86は、上下の支持板部83に連結されて第2ジョイント部材70に回転自在に支持された支持筒部87と、この支持筒部87の基端側に固定されて第1ジョイント部材60と第2ジョイント部材70との間に配設されたシリンダブラケット部92とを備えている。
【0025】
支持筒部87は、中空の角筒状に形成された内側筒部88と、この内側筒部88の外周側に設けられて中空の円筒状に形成された外側筒部89とを有した二重構造となっている。内側筒部88の内周側には、後述の開閉機構93の摺動部材95が前後方向にスライド自在に取り付けられている。外側筒部89の外周側には、この外側筒部89と同心状にウォームホイール90が取り付けられている。このウォームホイール90は、第2ジョイント部材70の内側に回転自在に支持されたウォームピニオン91と噛合している。第2ジョイント部材70の上端部には、グリッパモータ79が取り付けられており、このグリッパモータ79の出力軸にウォームピニオン91が減速機を介して連結されている。このグリッパモータ79を正転方向に回転作動すると、ウォームピニオン91およびウォームホイール90を介して、グリッパ80全体が軸線X(図7を参照)を中心に所定方向に回転する。一方、グリッパモータ79を逆転方向に回転作動すると、ウォームピニオン91およびウォームホイール90を介して、グリッパ80全体が軸線X(図7を参照)を中心に所定方向とは逆方向に回転する。なお、図5に示した把持装置50の姿勢においては、グリッパ80(把持部81)の回転軸線X方向は前後方向に対応し、把持部81の開閉方向(把持方向)は左右方向に対応する。
【0026】
開閉機構93は、一対のリンク部材94と、この一対のリンク部材94にリンク結合される摺動部材95と、この摺動部材95を前後にスライドさせるグリッパシリンダ99とを備えている。各リンク部材94の一端部は、把持爪81の中間部に連結ピン96を介して枢結されている。また、一対のリンク部材94は、各リンク部材94の他端部同士が上下に重なった状態で摺動部材95の先端部に連結ピン97を介して枢結されている。この摺動部材95は、内側筒部88の中空部に挿入されて、当該内側筒部88の内周面に沿って摺動自在(往復動自在)に取り付けられている。この摺動部材95の外周面と内側筒部88の内周面との間には、摺動部材95のスライド(往復移動)を案内するための合成樹脂製のスライダ98が取り付けられている。この摺動部材95の基端部には、グリッパシリンダ99のロッド側端部が連結されている。なお、このグリッパシリンダ99のボトム側端部は、グリッパハウジング86のシリンダブラケット部92に連結されている。このグリッパシリンダ99を伸長作動すると、当該伸長方向に摺動部材95が摺動してリンク部材94が互いに離反する方向に揺動する。それにより、把持爪82が連結ピン84を支点として開方向に揺動することで(把持爪82が開作動することで)対象物の把持を解放することができる。一方、グリッパシリンダ99を縮小作動すると、当該縮小方向に摺動部材95が摺動してリンク部材94が互いに接近する方向に揺動する。それにより、把持爪82が連結ピン84を支点として閉方向に揺動することで(把持爪82が閉作動することで)対象物を把持することができる。なお、開閉機構93は、左右対称に構成されているため、一対の把持爪82は左右対称に開閉作動するようになっている。
【0027】
車体2における旋回台12の側部には、図2に示すように、各作業装置(旋回台12、ブーム13、オーガ装置20、把持装置50)の作動を操作するための操作席30が設けられている。この操作席30の前方には、作業者が座ったままの姿勢で操作が可能な操作装置31が配設されている。操作装置31には、旋回台12の旋回操作を行うための操作レバー、ブーム13の伸縮操作を行うための操作レバー、ブーム13の起伏操作を行うための操作レバー、アースオーガ22の回転操作を行うための操作レバー、把持装置50の各種操作(アーム51の揺動操作、把持部81の縦首振り操作、把持部81の横首振り操作、把持部81の回転操作、把持部81の開閉操作)を行うための操作レバーなどが設けられている。また、この操作装置31には、オプションの油圧機器として装着されるアタ
ッチメント(後述の伐採装置100)の作動操作を行うための操作レバーも設けられている。
【0028】
ここで、旋回台12,ブーム13、オーガ装置20、把持装置50、伐採装置100などの作動機構は、図9に示すように、操作装置31からの操作信号を受けて、旋回モータ14、伸縮シリンダ15、起伏シリンダ16、オーガモータ21、アームシリンダ55、縦首振りシリンダ62、横首振りシリンダ71、グリッパモータ79、グリッパシリンダ99、後述のカッターシリンダ131(以下、まとめて「油圧アクチュエータ」とも呼称する)を制御するコントローラ40と、この油圧アクチュエータを駆動するための作動油を供給する油圧ユニット46とを備えて構成される。
【0029】
操作装置31の操作により出力された操作信号は、コントローラ40に入力される。コントローラ40の作動制御部41は、その操作信号に応じた指令信号を油圧ユニット46(制御バルブ48)に出力する。
【0030】
油圧ユニット46は、作動油を吐出する油圧ポンプ47と、油圧ポンプ47から各油圧アクチュエータに供給する作動油の供給方向及び供給量を制御する制御バルブ48とを有して構成される。油圧ポンプ47は、車両のエンジンからPTO機構(図示せず)を介して取り出した動力により駆動される。制御バルブ48は、旋回モータ14に対応する電磁比例制御バルブV1、伸縮シリンダ15に対応する電磁比例制御バルブV2、起伏シリンダ16に対応する電磁比例制御バルブV3、オーガモータ21に対応する電磁比例制御バルブV4、アームシリンダ55に対応する電磁比例制御バルブV5、縦首振りシリンダ62に対応する電磁比例制御バルブV6、横首振りシリンダ71に対応する電磁比例制御バルブV7、グリッパモータ79に対応する電磁比例制御バルブV8、グリッパシリンダ99に対応する電磁比例制御バルブV9、カッターシリンダ131に対応する電磁比例制御バルブV10を有している。この制御バルブ48は、コントローラ40の作動制御部41からの指令信号に基づき、各電磁比例制御バルブV1~V10のスプールを電磁駆動して、油圧ポンプ47から各油圧アクチュエータに供給される作動油の供給方向及び供給量を制御し、各油圧アクチュエータの作動方向及び作動速度を制御する(旋回台12,ブーム13、オーガ装置20、把持装置50、伐採装置100の作動方向及び作動速度を制御する)。
【0031】
次に、本実施形態の伐採装置100について図10図16を追加参照して説明する。本実施形態の伐採装置100は、前述の把持装置50に着脱可能なアタッチメントとして構成されている。なお、この伐採装置100は、災害時の復旧作業として建造物などに倒れかかった樹木(倒木)を伐採する場合や、電線への接触を未然に防止するために電線付近の樹木を計画的に伐採する場合などに用いられる。
【0032】
伐採装置100は、把持部81の下端に取り付けられる横長のフレーム110と、把持装置50に把持された対象物(樹木:図10図11および図16に符号Tで示す)を切断するカッター部材120と、このカッター部材120を揺動させる揺動機構130とを備えて構成される。なお、図10および図11では、図を見易くするため、符号Tで示す対象物(樹木)を透過した状態で表している。
【0033】
フレーム110は、天板部111と、天板部111と相対向する底板部112と、天板部111と底板部112とを連結する側板部113とを備え、これらの各板部111,112,113に囲まれて前方に開放された中空の箱状に形成されている。天板部111および底板部112の前端側には、把持装置50に把持された対象物(柱状物)を受け入れるための円弧状に窪んだ凹部111a,112aが形成されている。この凹部111a,112aの壁面は、把持装置50に把持された対象物と接触可能になっている。
【0034】
天板部111の上面側には、当該天板部111に立設された縦板片111bを介して下側ブラケット115が取り付けられている。下側ブラケット115は、矩形の平板状に形成されており、その四隅に円形のボルト孔115aが貫通形成されている。この下側ブラケット115の前端側には、前述の把持装置50の上側ブラケット85との位置決めを行うための位置決め突起115bが設けられている。また、把持装置50の上側ブラケット85は、下側ブラケット115と略同一サイズの矩形の平板状に形成されており、その四隅(下側ブラケット115のボルト孔115aと対応する位置)に不図示のボルト孔が貫通形成されている。この上側ブラケット85の左右の端部には、下側ブラケット115との位置決めを行うための位置決め突起85bが設けられている。そのため、両ブラケット85,115を互いの位置決め突起85b,115bに突き当てて、ブラケット85,115同士を上下に重ね合わせることで、上側ブラケット85のボルト孔(図示せず)の位置と下側ブラケット115のボルト孔115aの位置とが整合し、そこに締結用のボルトを挿通させてナットと螺合させることでブラケット85,115同士を締結させることが可能となる。
【0035】
揺動機構130は、フレーム110に設けられたカッターシリンダ131と、カッターシリンダ131とカッター部材120とを連動させる上下一対のリンク部材132とを備えている。カッターシリンダ131は、ボトム側端部がフレーム110に連結ピン133を介して枢結され、ロッド側端部がリンク部材132の基端部に連結ピン134を介して枢結されている。各リンク部材132は、略舌片状に延びる板状に形成されている。各リンク部材132の先端部は、フレーム110に連結ピン135を介して枢結されている。上下のリンク部材132の間には、カッター部材120の基端部が挟持されている。
【0036】
カッター部材120は、緩やかに湾曲して延びる板状に形成されている。カッター部材120は、例えばステンレス鋼などの金属製である。このカッター部材120は、揺動方向の一端側に円弧凸状に湾曲して延びる鋭利な刃先部121を有しており、この刃先部121を内向きにした姿勢でフレーム110に取り付けられている。このカッター部材120は、フレーム110とリンク部材132との上記枢結部に対して同一の連結ピン135によって同軸的に枢結されている。なお、カッター部材120の基端部は上下のリンク部材132の先端部に固定されているため、カッター部材120と上下のリンク部材132は一体的に揺動するように構成されている。
【0037】
かかる構成の伐採装置100では、カッターシリンダ131が縮小作動することで、リンク部材132を介して、カッター部材120が連結ピン135を中心に開方向(図15および図16の時計回り方向)に揺動する。一方、カッターシリンダ131が伸長作動することで、リンク部材132を介して、カッター部材120が連結ピン135を中心に閉方向(図15および図16の反時計回り方向)に揺動する。つまり、カッター部材120は、カッターシリンダ131の伸縮作動に応じて、刃先部121がフレーム110の凹部111a,112a内に格納される閉位置(図15を参照)と、この閉位置から約90度開方向に揺動して刃先部121がフレーム110の外方に張り出す開位置(図16を参照)との間で揺動変位可能であり、開位置から閉位置に移動する過程で対象物を切断する。ここで、開位置は、カッターシリンダ131が縮小側のストロークエンドに達したときのカッター部材120の位置であり、刃先部121と凹部111a,112aとの間に対象物(樹木)を配置できる距離までカッター部材120を開方向に変位させた位置(退避位置)となる。閉位置は、カッターシリンダ131が伸長側のストロークエンドに達したときのカッター部材120の位置であり、把持部81に把持された対象物(樹木)が刃先部121により切断される距離までカッター部材120を閉方向に変位させた位置(切断位置)となる。
【0038】
次に、本実施形態の穴掘建柱車1に備えられた安全装置について説明する。本実施形態の安全装置は、グリッパシリンダ圧力検出器141と、切断位置検出器142と、コントローラ40と、報知装置150とを主体に構成される。
【0039】
グリッパシリンダ圧力検出器141は、電磁比例制御バルブV9とグリッパシリンダ99のロッド側油室とを結ぶ油路に設けられており、グリッパシリンダ99のロッド側油室に供給される作動油の圧力(ロッド側油室の圧力)を検出する。このグリッパシリンダ圧力検出器141は、グリッパシリンダ99のロッド側油室の圧力を検出して、その検出した圧力に応じた電圧信号(検出信号)をコントローラ40に出力する。なお、このグリッパシリンダ圧力検出器141において検出される圧力は、把持部81の把持力(把持部81が対象物を把持する力)と比例関係にある。そのため、詳細後述するが、コントローラ40は、このグリッパシリンダ圧力検出器141において検出される圧力に基づき、把持部81が対象物を把持しているか否か(所定の把持力で把持しているか否か)を判定する。
【0040】
切断位置検出器142は、カッター部材120が対象物を切断した後の位置(切断位置)である閉位置にあることを検出する。切断位置検出器142は、ローラ形に形成された可動式の接触子を有してオンオフ信号を出力可能なリミットスイッチから構成される。切断位置検出器142は、カッター部材120が閉位置(切断位置)に位置する状態のときは、接触子がリンク部材132に当接して押し込まれることでスイッチがオンとなり、カッター部材120が閉位置(切断位置)に位置する状態であることを示すオン信号をコントローラ40に出力する。一方、切断位置検出器142は、カッター部材120が閉位置(切断位置)に位置していない状態のときは、接触子がリンク部材132との押圧から解放されて内蔵バネの弾性力によって押し出されることでスイッチがオフとなり、カッター部材120が閉位置(切断位置)に位置していない状態であることを示すオフ信号をコントローラ40に出力する。
【0041】
なお、本実施形態では、カッターシリンダ131のストロークエンドに対応する閉位置を切断位置(切断完了位置)として検出しているが、対象物の切断が完了する位置が、開位置から閉位置までの中途の位置にある場合には、この中途の位置から閉位置までの何れかの位置を切断位置として設定し、この切断位置を検出するように構成してもよい。また、本実施形態では、切断位置検出器142をリミットスイッチにより構成しているが、この構成に限定されるものではなく、例えばカッターシリンダ131の伸長側のストロークエンドを検出するストロークセンサや、カッター部材120の揺動軸(連結ピン135)に設けられてカッター部材120の動作位置(揺動位置)をリニアに検出するロータリセンサ(角度センサ)などの他の検出器(接触式または非接触式の検出器)を適用してもよい。
【0042】
コントローラ40は、作動制御部41と、把持判定部42と、切断判定部43と、報知制御部44と、インターロック制御部45とを備えている。
【0043】
作動制御部41は、操作装置31からの操作信号に基づいて、制御バルブ48(電磁比例制御バルブV1~V10)を電磁駆動して各油圧アクチュエータを作動させることで、各作業装置(ブーム13、オーガ装置20,把持装置50、伐採装置100)などの作動を制御する。
【0044】
把持判定部42は、グリッパシリンダ圧力検出器141において検出される圧力が予め設定された所定圧力以上まで上昇した場合に、把持部81が対象物を把持していることを判定する。なお、把持判定部42は、グリッパシリンダ圧力検出器141において所定値以上の圧力変化を検出した場合に、把持部81が対象物を把持したことを判定してもよい
【0045】
切断判定部43は、把持判定部42において把持部81に対象物が把持されていることが判定されている場合に、切断位置検出器142からオン信号を入力したとき、把持部81に把持された対象物が伐採装置100により切断されたことを判定する。
【0046】
報知制御部44は、切断判定部43において把持部81に把持された対象物が伐採装置100により切断されたことが判定された場合に、報知装置150を作動させる。
【0047】
報知装置150は、操作装置31の操作パネル上に取り付けられている。この報知装置150は、例えば、LEDランプ、表示モニタ、音声スピーカ等から構成されており、報知制御部44からの指令信号に応じて作動して、伐採装置100により対象物が切断されたこと(樹木の伐採が完了したこと)を作業者に報知するようになっている。例えば、この報知装置150をLEDランプにより構成した場合には、報知制御部44からの指令信号に応じてLEDランプが点灯又は点滅することで(LEDランプが消灯状態から点灯状態又は点滅状態に切換えられることで)、操作装置31を操作する作業者に対して対象物の切断が完了したことを報知する。
【0048】
インターロック制御部45は、把持判定部42において把持部81に対象物が把持されていることが判定されている場合に、切断位置検出器142からオフ信号が出力されているとき(カッター部材120が閉位置に位置していないとき)は、操作装置31の操作に応じたブーム13および把持装置50の支持機構の作動を規制し、切断位置検出器142からオン信号が出力されているとき(カッター部材120が閉位置に位置しているとき)は、操作装置31の操作に応じたブーム13および把持装置50の支持機構の作動を許容する。つまり、インターロック制御部45は、把持部81が対象物を把持している状態で、カッター部材120が閉位置にない場合には、対象物の切断が完了していないことを判定し、カッター部材120が閉位置(切断位置)に到達するまでは、ブーム13等の作動を規制する。これは、対象物の切断が完了していない状態(例えば樹木が切り離されていない状態)で、ブーム13等を作動させると、車両に作用する転倒モーメントが過大となり、車両が不安定になるおそれがあるからである。そして、インターロック制御部45は、把持部81が対象物を把持している状態で、カッター部材120が閉位置に到達した場合には、対象物の切断が完了したことを判定し、ブーム13等の作動を許容する。それにより、ブーム13等を適宜作動させて、切断した樹木を別の場所に移動させることができる。
【0049】
また、インターロック制御部45は、把持判定部42において把持部81に対象物が把持されていることが判定されていない場合には、カッター部材120の動作位置の如何に関わらず(切断位置検出器142からオン信号が出力されているか否かに関わらず)、操作装置31の操作に応じたブーム13および把持装置50の支持機構の作動を許容する。それにより、把持部81が対象物を把持していない状態では、ブーム13等を適宜作動させて、カッター部材120を閉位置(格納状態)から開位置(張出状態)へ揺動させながら把持部81を対象物にアプローチしたり、カッター部材120を予め開位置に位置させた状態にしてから把持部81を対象物にアプローチしたりすることができる。
【0050】
次に、本実施形態の把持式穴掘建柱車1において把持装置50に伐採装置(アタッチメント)100を装着する手順について説明する。なお、この伐採装置(アタッチメント)100は、例えば車両走行時や建柱作業時、抜柱作業時などの不使用時には、車体2上の所定の格納場所(例えば車両荷台部)に収納されている。
【0051】
まず、伐採装置100を把持装置50に装着するには、この伐採装置100を車体2上
に設けられた所定の格納場所から取り出す。続いて、伐採装置100の下側ブラケット115と把持装置50の上側ブラケット85とを互いの位置決め突起85b,115bに突き当てることで位置合わせし、両ブラケット85,115同士を上下に重ね合わせた状態とする。次いで、下側ブラケット115のボルト孔115aと上側ブラケット85のボルト孔(図示せず)とに下方からボルトを挿通し、この挿通したボルトのネジ部にナットを螺合させる。それにより、両ブラケット85,115同士がボルト・ナットにより締結され、アタッチメントとしての伐採装置100が把持装置50に取り付けられる。そして、カッターシリンダ131の各油室(ボトム側油室、ロッド側油室)にそれぞれ接続された油圧ホースを把持装置50側に設けられた電磁比例制御バルブV10の各ポートとセルフシールカップリング(ワンタッチ継手)にて接続することで、電磁比例制御バルブV10とカッターシリンダ131との間で作動油(圧油)の給排が可能となる。なお、伐採装置100を用いた作業が終了して、この伐採装置100を把持装置50から取り外すには、基本的には、前述の手順(取り付ける手順)と逆の手順を行えばよい。
【0052】
次に、本実施形態の伐採装置(アタッチメント)100を使用して樹木を伐採する手順について説明する。
【0053】
まず、把持装置50のグリッパシリンダ99を伸長作動させて両把持爪82を全開状態にする。続いて、カッター部材120を閉位置から開位置に揺動させながら、ブーム13やアーム51等を適宜作動させて、把持部を伐採対象の樹木に近付けていく。続いて、アーム51の屈伸動や、把持部81の縦首振り、把持部81の横首振り、把持部81の回転などを行い、伐採対象の樹木に対して把持部81の位置や向きを調節して、把持部81と当該樹木との位置合わせをする。この樹木との位置合わせにより、全開状態の一方の把持爪82と他方の把持爪82との間(つまり、カッター部材120の刃先部121とフレーム110の凹部111a、112aとの間)に樹木を配置する。続いて、両把持爪82を閉方向に揺動させて、伐採対象の樹木を把持部81により把持する。把持部81が樹木を把持すると、インターロックが作動して、樹木の切断が完了するまで、もしくは、樹木の把持が解放されるまで、ブーム13やアーム51等の作動が規制される。次いで、カッター部材120を開位置から閉位置へ揺動させることで、このカッター部材120の刃先部121を把持部81に把持された樹木に押し当てて切断していく。そして、カッター部材120が閉位置に到達すると、把持部81に把持された樹木が完全に切断された状態(切り離された状態)となる。このとき、切断位置検出器142によりカッター部材120が閉位置にあることが検出されるとともに、コントローラ40の切断判定部43により樹木が切断されたことが判定される。それにより、コントローラ40の報知制御部44が報知装置150に指令信号を出力して、報知装置150を作動させる(例えばLEDランプを点灯又は点滅させる)ことで、伐採装置100により樹木が切断されたことが作業者に報知される。また、カッター部材120が閉位置に到達することで、インターロックが解除され、ブーム13やアーム51等の作動が許容される。そのため、樹木を切断した後は、そのまま当該樹木を把持した状態で、ブーム13やアーム51等を適宜作動させて、当該樹木を目的の場所まで移動させる。そして、当該樹木を目的の場所で徐々に降下させて、両把持爪82を開方向に揺動させ、把持部81による樹木の把持を解放することで、当該樹木を目的の場所に置くことができる。
【0054】
以上、本実施形態の安全装置によれば、切断位置検出器142においてカッター部材120が閉位置(切断位置)に到達したことが検出された場合に、報知装置150を作動させてカッター部材120が閉位置(切断位置)に到達したことを報知することで、作業者が対象物の切断が完了したか否かを容易に認識することができるようになるため、対象物の切断が完了していない状態(対象物が切り離されていない状態)でブーム13や把持装置50の支持機構を作動させる事態を未然に防止して、作業の安全性を向上させることが可能となる。
【0055】
また、本実施形態の安全装置によれば、グリッパシリンダ圧力検出器141において把持部81に対象物が把持されていることが検出され、且つ、切断位置検出器142においてカッター部材120が閉位置(切断位置)に到達していることが検出されていない場合に、ブーム13および把持装置50の支持機構の作動を規制するインターロックを作動させることで、作業者が誤操作等により対象物の切断が完了していない状態(対象物が切り離されていない状態)でブーム13および把持装置50の支持機構を作動させる事態を確実に防止することができ、作業の安全性を一層向上させることが可能となる。さらに、本実施形態の安全装置では、グリッパシリンダ圧力検出器141において把持部81に対象物が把持されていることが検出され、且つ、切断位置検出器142においてカッター部材120が閉位置(切断位置)に到達していることが検出されている場合には、インターロックを解除してブーム13および把持装置50の支持機構の作動を許容することで、対象物の切断が完了した後においては、この切断した対象物を任意の場所に移動させることができるため、安全性と作業性とを両立させることができる。
【0056】
また、本実施形態では、カッター部材120が開位置から閉位置へ移動する過程において、把持部81に把持された対象物をフレーム110とカッター部材120との間に挟み込んだ状態で切断するため、当該対象物を安定的に切断することが可能となる。また、対象物を切断した後にカッター部材120は閉位置(格納位置)にあるため、作業の終了時に改めてカッター部材120を閉位置(格納位置)に戻す手間が要らず(カッター部材120の格納忘れが防止され)、使い勝手が向上するとともに、伐採装置100の脱着時の安全性が高められる。
【0057】
さらに、本実施形態では、カッター部材120を格納したときに、カッター部材120の刃先部121がフレーム110に覆われて隠蔽されることになるため、伐採装置100の着脱時や持ち運び時に作業者が刃先部121に触れることがなく、作業の安全性を向上させることが可能となる。
【0058】
また、本実施形態では、把持部81に把持された対象物をフレーム110の凹部111a,112a内に受け入れることができるため、この凹部111a,112aの分だけ対象物の切断に要する移動距離を拡大することができるとともに、フレーム110の無駄なスペースを削減して伐採装置(アタッチメント)100を小型化することができる。
【0059】
加えて、本実施形態では、把持部81の下端に伐採装置100が装着されており、この把持装置50と伐採装置100とが各アクチュエータの作動に応じて一体的に姿勢変更(屈伸、縦首振り、横首振り、回転)するため、いかなる姿勢の樹木も確実に把持して切断することが可能となる。
【0060】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば適宜改良可能である。
【0061】
上記実施形態では、切断部材としてカッター部材120を例示して説明したが、この構成に限定されるものではなく、例えば、切断部材としてチェーンソーや丸鋸切りなどを適用してもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、1枚のカッター部材120が可動して対象物を切断する構成であったが、この構成に限定されるものではなく、例えば、一対の可動刃を開閉させて対象物を切断する構成や、可動刃と固定刃との組合せにより対象物を切断するように構成してもよい。
【0063】
また、上記実施形態では、カッター部材120が閉位置(切断位置)にあることのみを検出したが、この構成に限定されるものではなく、カッター部材120が閉位置(切断位置)にあることと、カッター部材120が開位置(退避位置)にあることとを検出するようにしてもよい。その場合には、把持部81が対象物を把持しているか否かに関らず、カッター部材120が閉位置(切断位置)または開位置(退避位置)にある場合に、ブーム13や把持装置50の支持機構の作動を許容するように構成してもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、把持部81の把持力(把持爪82が対象物を把持する力)をグリッパシリンダ99のロッド側油室の圧力に基づき間接的に検出しているが、この構成に限定されるものではなく、例えば、把持爪82の内側にロードセルや歪ゲージを設けて把持部81の把持力を直接的に検出してもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、操作装置31に報知装置150が設けられているが、この構成に限定されるものではなく、例えば、操作席30の近傍や車両の後部などの他の位置に報知装置150が設けられていてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、車体2上の操作席30に操作装置31が設けられているが、この構成に限定されるものではなく、例えば、操作装置31を有線式または無線式のリモコン操作装置(可搬型の操作装置)により構成してもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、エンジンの動力をPTO機構(パワーテイクオフ機構)によって取り出して油圧ポンプを駆動するPTO駆動型の穴堀建柱車を例示したが、この構成に限定されるものではなく、電気駆動型(バッテリ駆動型)の穴掘建柱車や、その両者を具備して動力源を選択的に切り替えるハイブリッド型の穴掘建柱車であってもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 把持式穴掘建柱車
2 車体
12 旋回台
13 ブーム
20 オーガ装置
31 操作装置
40 コントローラ
41 作動制御部
42 把持判定部
43 切断判定部
44 報知制御部
45 インターロック制御部
50 把持装置
51 アーム(支持機構)
60 第1ジョイント部材(支持機構)
70 第2ジョイント部材(支持機構)
62 縦首振りシリンダ(支持機構)
71 横首振りシリンダ(支持機構)
79 グリッパモータ(支持機構)
80 グリッパ
81 把持部
82 把持爪
100 伐採装置(切断装置)
120 カッター部材(切断部材)
130 揺動機構(駆動装置)
131 カッターシリンダ(駆動装置)
141 グリッパシリンダ圧力検出器(把持検出器)
142 切断位置検出器
150 報知装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16